説明

多機能型電子部品

【課題】回転式電子部品の構成に加えて他の種類の電子部品の構成も備えたコンパクトな多機能型電子部品を提供する。
【解決手段】回転つまみ20と、回転つまみ20の下部に設置され回転つまみ20の内周突出部24を回動自在に挿入する開口部42を有するケース40と、ケース40の開口部42の下部に設置され回転つまみ20と一体に回転する回転つまみ取付板16と、回転つまみ20の開口部22内に設置され下面に押圧部12を設けてなる押釦つまみ10と、ケース40の下部に設置され回転つまみ20の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部55と、回転つまみ20を揺動することで下降する回転つまみ20の下方に設置されて押圧操作される押圧スイッチ78と、押釦つまみ10の押圧部12によって押圧操作される中央スイッチ80とを具備する。押圧部12は回転つまみ取付板16の開口部16aを挿通してその先端が中央スイッチ80に対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式電子部品の構成の外に他の電子部品の構成を一体に備えた多機能型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用ナビゲーションシステム、コンピュータ、各種携帯機器、各種OA機器、ゲーム機などを操作するデバイスとして多機能型電子部品がある。この多機能型電子部品には、回転つまみと該回転つまみの回転により電気的出力が変化する電気的機能部とによる回転式電子部品の構成の他に、押圧式電子部品等の構成を一体に備えたものがある。このような多機能型電子部品は、回転つまみを回転させることで電気的機能部の電気的出力の変化によって所定の操作内容を選択し、押圧式電子部品の押圧操作でこの選択した操作内容を確定するなどして用いられる。
【0003】
しかしながら、電子機器の小型化・多機能化のため、操作デバイスのさらなる高集積化が要求されており、各種機能の電子部品をさらにコンパクトに一体化して設ける構造の多機能型電子部品が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−184967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回転式電子部品の構成に加えてさらに他の種類の電子部品の構成も備えてこれらをコンパクトに一体化することが可能な多機能型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本願の請求項1に記載の発明は、中央に開口部を有する回転つまみと、前記回転つまみの下部に設置され、この回転つまみの下面の開口部の周囲から突出して設けられる内周突出部を回動自在に挿入する開口部を有するケースと、前記ケースの開口部の下部に設置され、この開口部を通して前記回転つまみに取り付けられてこの回転つまみと一体に回転する回転つまみ取付板と、前記回転つまみの開口部内に設置され下面に押圧部を設けてなる押釦つまみと、前記ケースの下部に設置され、前記回転つまみの回転とともに回転する摺動子及びこの摺動子が摺接することで電気的出力を変化する摺接パターンを有する電気的機能部と、前記回転つまみを揺動することで下降する回転つまみの下方に設置されて押圧操作される押圧スイッチと、前記押釦つまみの押圧部によって押圧操作される中央スイッチと、を具備し、前記押釦つまみの押圧部は前記回転つまみ取付板に設けた開口部を挿通してその先端が前記中央スイッチに対向していることを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0007】
本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多機能型電子部品において、前記回転つまみ取付板は平板であり、その外径寸法を前記ケースの開口部の内径寸法よりも大きく形成し、前記ケースの開口部に回動自在に挿入した前記回転つまみの内周突出部の下端に前記回転つまみ取付板を取り付けたことを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0008】
本願の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の多機能型電子部品において、前記回転つまみの内周突出部の下端から小突起を突設し、この小突起を回転つまみ取付板の前記開口部の外側に形成した取付固定部に挿入して小突起の先端をかしめることで、回転つまみに回転つまみ取付板を取り付けたことを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0009】
本願の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の多機能型電子部品において、前記押圧スイッチと前記中央スイッチは同一の回路基板上に配置され、且つ前記押圧スイッチは前記中央スイッチの外側の同一円周上の複数の位置に形成され、さらに前記回路基板は平板状の支持部材上に載置されていることを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0010】
本願の請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の多機能型電子部品において、前記押釦つまみには回り止め係合部が設けられていることを特徴とする多機能型電子部品にある。
【発明の効果】
【0011】
本願の請求項1に記載の発明によれば、回転式電子部品の構成と揺動式電子部品の構成とを兼ね備えた多機能型電子部品をコンパクトに構成することができる。さらに本願の請求項1に記載の発明によれば、押釦つまみと中央スイッチとを備えたことで、多機能型電子部品の機能をさらに多くすることができる。また押釦つまみを回転つまみの中央に設けた開口部内に設置しているので、多機能型電子部品の外径寸法を大きくせずに押釦つまみを設置することが可能となる。
【0012】
本願の請求項4に記載の発明によれば、中央スイッチと押圧スイッチを同一平面内に配置するので、多機能型電子部品の構造が簡単になってその薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる多機能型電子部品の側断面図である。
【図2】多機能型電子部品の上段側の構成部品を上側から見た分解斜視図である。
【図3】多機能型電子部品の下段側の構成部品を上側から見た分解斜視図である。
【図4】多機能型電子部品の上段側の構成部品を下側から見た分解斜視図である。
【図5】多機能型電子部品の下段側の構成部品を下側から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる多機能型電子部品1の概略側断面図であり、図2はこの多機能型電子部品1の上段側の構成部品を上側から見た分解斜視図で、図3は下段側の構成部品を上側から見た分解斜視図である。また、図4はこの多機能型電子部品1の上段側の構成部品を下側から見た分解斜視図で、図5は下段側の構成部品を下側から見た分解斜視図である。これらの図に示すように多機能型電子部品1は、押釦つまみ10と、回転つまみ20と、板ばね35と、ケース40と、回転体(以下「摺動型物」という。)60と、摺動子66と、第1回路基板部(第1の回路基板)71と第2回路基板部(第2の回路基板)73を備えたフレキシブル回路基板70と、取付台90と、支持部材100とを具備して構成されている。以下各構成部品について順に説明する。
【0015】
押釦つまみ10は成形樹脂製であり、略円板状の本体部11と、該本体部11の下面中央から下方向に延びる円柱軸状の押圧部12とを具備し、本体部11の上面が指などで押圧操作する操作部13になっていて、本体部11の外周側面にはつば部14が形成されている。また、押圧部12の側面には軸方向に沿う溝状に形成された回り止め係合部12aが設けられている。
【0016】
回転つまみ20は成形樹脂製であり、略円板状の本体部21の中央に円形の開口部22を有し、本体部21の上面の開口部22の周囲には指などで回転操作する操作部23が設けられている。開口部22は、内部に押釦つまみ10の本体部11を設置できるように本体部11の外径寸法よりも若干大きな内径寸法であって、且つ本体部11に設けたつば部14が上方に抜け出ないようにつば部14の外径寸法よりも若干小さい内径寸法に形成されている。一方、本体部21の下面の外周には下方に突出する円筒状の外周突出部27が形成され、下面の開口部22の周囲には外周突出部27よりも小さな突出寸法で下方に突出する円筒状の内周突出部24が形成されている。内周突出部24の下端の複数の位置(本実施形態では4箇所の位置)には、この回転つまみ20に板ばね35を固定する円柱状の小突起からなる板ばね固定部25が設けられている。さらに内周突出部24の下端の板ばね固定部25の間の複数の位置(本実施形態では180°対向する2箇所の位置)には、この回転つまみ20に摺動型物60を取り付ける摺動型物取付部26が設けられている。摺動型物取付部26は、内周突出部24の下端面に設置した断面が略扇形の基部26aと、該基部26aの下端面から下方に向かって延びる円柱状の軸部26bとを備えて構成されている。
【0017】
ケース40は成形樹脂製であり、円形平板状の上面部41を備え、該上面部41の中央に回転つまみ20の内周突出部24をその内部に配置する円形の開口部42を有している。また上面部41の外周の下面には下方に突出する円筒状の突出部43が形成され、この突出部43の下端面の複数の位置(本実施形態では等間隔(90°間隔)の4箇所の位置)には、下記する取付台90を固定する円柱軸状の取付台固定部45を設けている。また上面部41の下面の突出部43と開口部42の間には、下記する板ばね35のクリック弾接部39を弾接係合させる凹凸を所定間隔で環状に配置してなるクリック係合部47が形成されている。
【0018】
またスペーサ部材15は、回転つまみ20の本体部21の下面とケース40の上面部41の上面との間に設置して回転つまみ20の回転時のケース40に対する回転摺動性を良好にするための部材である。スペーサ部材15はABSなどの摺動性に優れた成形樹脂製の薄板状部材で、ケース40の上面部41の外形と略一致する円形の外形を有し、中央には回転つまみ20の内周突出部24を挿通させる円形の開口部15aが形成されている。
【0019】
回転つまみ取付板16は金属製又は成形樹脂製の硬質平板であり、その外形が円形でケース40の開口部42の内径よりも若干大きな外径寸法を有し、中央に押釦つまみ10の押圧部12を挿通させる円形の開口部16aが設けられ、開口部16aの両外側の180°を隔てて対向する2箇所の位置には、回転つまみ20の摺動型物取付部26の基部26aを挿通させる扇形の貫通孔からなる挿通部16bが形成され、開口部16aの外側の4箇所の位置には、回転つまみ20の板ばね固定部25を固定する貫通孔からなる取付固定部16cが形成されている。
【0020】
板ばね35は、弾性金属板を円形に形成した本体部36と、該本体部36の外周を囲む位置に設置された一対の半円弧状のアーム部37,37とを一体に形成している。本体部36は回転つまみ取付板16と略同一の外径寸法を有し、中央に開口部16aと同形の開口部36aを設けると共に、挿通部16bに対応する位置には扇形の貫通孔からなる挿通部36bが形成され、取付固定部16cに対応する位置には円形の貫通孔からなる取付固定部36cが形成されている。本体部の挿通部36b,36bの両外側の外周部には、外方に突出して両アーム部37,37の根元部分に連結する一対の連結部38,38が設けられ、両アーム部37,37がこれら連結部38,38からそれぞれ本体部の外周に沿って円周方向に延伸して半円弧形状に形成され、両アーム部37,37の中間部付近には板ばね35の上面側に突出する突起状のクリック弾接部39,39が形成されている。
【0021】
摺動型物60は成形樹脂製であり、円形平板状に形成されてその中央に下記する取付台90の筒状突出部93を挿通させる円形の開口部61を設けている。開口部61は、その内周面が筒状突出部93の外周面に摺接することで摺動型物60の回転がガイドされるように、内径寸法が筒状突出部93の外径寸法とほぼ同一かそれよりも僅かに大きな寸法に形成されている。一方、回転つまみ20の摺動型物取付部26に対応する2箇所の位置には貫通孔からなる挿入部62を設け、回転つまみ20の板ばね固定部25に対応する4箇所の位置には、板ばね35の下面に突出する板ばね固定部25の先端部を収納配置する収納凹部63が形成されている。一方、摺動型物60の下面の開口部61の周囲には下方に突出する円筒状の突出部64が形成されており、突出部64の周囲には、下記する摺動子66を設置する凹部状の摺動子設置部69が形成され、この摺動子設置部69の底面の同一円周上の等間隔(120°間隔)の3箇所の位置には、小突起状の摺動子固定部65が設けられている。
【0022】
摺動子66は弾性金属板製であり、摺動型物60よりも若干小さな外径寸法を有する略円形の平板状に形成され、中央に円形の開口部66aを設けると共に、開口部66aの外周の等間隔(120°間隔)の3箇所の位置には、摺動子固定部65を固定する貫通穴からなる取付固定部66bが設けられている。そして各取付固定部66bの側部から3本の摺接ブラシ67a,67b,67cを備えた摺動接点67が突出して摺動子66の円周方向に沿って延伸し、その先端が隣接する取付固定部66bの近傍まで達している。各組の摺接ブラシ67a,67b,67cはそれらの根元部分が摺動子66の下面側に向かって若干折り曲げられていると共に、各摺接ブラシ67a,67b,67cの先端近傍には、摺動子66の下面側に突出する突起状の接点部68が形成されている。なお、各摺動接点67が備える3本の摺接ブラシ67a,67b,67cのうち、外側の1本の摺接ブラシ67aが下記する摺接パターン75のコモンパターン76に摺接し、内側の2本の摺接ブラシ67b,67cが接点パターン77(77a,77b)に摺接するようになっている。
【0023】
フレキシブル回路基板70は可撓性を有する合成樹脂フイルム製で、下記する摺接パターン75が形成された第1回路基板部(第1の回路基板)71と、第1回路基板部71の外周から突出する連結アーム72と、連結アーム72の先方に接続されて下記する押圧スイッチ78と中央スイッチ80が形成された第2回路基板部(第2の回路基板)73とを一体に備えている。第1回路基板部71は略円形の外形を有し、中央に下記する取付台90の筒状突出部93を挿通する円形の開口部74を設け、下面71bの開口部74の周囲に銀などの導電ペーストを印刷形成してなる摺接パターン75が設けられている。摺接パターン75は、一本の円弧状のコモンパターン76と、該コモンパターン76の内側に同一円周上で開口部74の両側に分割配置された二本の櫛歯状の接点パターン77(77a,77b)とで構成されている。上記したようにコモンパターン76には摺接ブラシ67aが摺接し、接点パターン77には摺接ブラシ67b,67cが摺接する。なお接点パターン77aの櫛歯状部分と接点パターン77bの櫛歯状部分は、互いの位置が120°間隔よりも若干ずれた位置になるように形成されている。また、この第1回路基板部71のケース40の取付台固定部45に対応する4箇所の位置には、貫通穴からなる挿通部79が形成されている。
【0024】
そして第1回路基板部71の外周から突出する連結アーム72は帯状で、その先端に第2回路基板部73が接続されている。第2回路基板部73は、第1回路基板部71よりも若干大きい寸法の略円形の外形を有し、その上面73a(第1回路基板部71の摺接パターン75を設けた下面71bとは反対側の面)の中央に中央スイッチ80が設置されている。中央スイッチ80は、上面73aに銀などの導電ペーストを印刷形成してなる接点パターン80aと、該接点パターン80a上に取り付けられた弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板(可動接点板)80b(図1参照)とを備えている。
【0025】
またこの第2回路基板部73の上面73aの中央スイッチ80の外側の複数の位置(本実施形態では同一円周上の等間隔(90°間隔)の4箇所の位置)に押圧スイッチ78が形成されている。各押圧スイッチ78はいずれも中央スイッチ80と同様の構成であり、第2回路基板部73の上面73aに形成した接点パターン78aと、接点パターン78a上に取り付けられた反転板(可動接点板)78b(図1参照)とを備えている。なお、上記摺接パターン75や接点パターン78a,80aはフレキシブル基板70上に設けた図示しない回路パターンと接続され、複数の回路パターンが第2回路基板部73の外周から引き出されているリードアウト部82に集約されている。
【0026】
取付台90は成形樹脂製の略円形の硬質平板であり、回転つまみ20とほぼ同一の外径寸法を備え、中央には押釦つまみ10の押圧部12を挿通させる略円形の開口部91を設け、上面90aの開口部91の周囲には上方に向かって突出する円筒状の突起からなる筒状突出部93が形成されている。筒状突出部93の内側面には、押釦つまみ10の押圧部12の回り止め係合部12aに係合する軸方向に伸びる突起からなる回り止め93aが形成されている。一方、開口部91の外側のケース40の取付台固定部45に対応する複数の位置(本実施形態では4箇所の位置)には、貫通孔からなる取付固定部92を設け、外周部の所定位置(本実施形態では各取付固定部92の外側の4箇所の位置)には、外方に向かって舌片状に突出する係合片94が形成されている。各係合片94の両側面には小突起状の係止部94aが形成されている。一方、下面90bの各取付固定部92の間の所定位置(本実施形態では互いに等間隔(90°間隔)の4箇所の位置(各取付固定部92と45°を隔てた位置))には、下方に向かって突出する円柱状の突起からなる押圧部95が形成されている。
【0027】
支持部材100は金属製の硬質平板であり、その外形が取付台90とほぼ同一寸法を有する略円形に形成されている。そして取付台90の各係合片94に対応する外周部の複数の位置(本実施形態では等間隔(90°間隔)の4箇所の位置)には、外周部から上方に向かって折り曲げられてほぼ垂直に立設された舌片状の係合片取付部101が設けられている。各係合片取付部101には、係合片94の先端部を挿入させて係合片94を取り付けるための矩形状の開口からなる係合片挿入部101aが形成されている。
【0028】
次にこの多機能型電子部品1の組み立て方法を説明する。まず、回転つまみ20の開口部22内に下側から押釦つまみ10の本体部11を挿入し、操作部13を開口部22から回転つまみ20の上面側に露出させた状態で設置する。そしてケース40の上面部41の上面と回転つまみ20の本体部21の下面との間にスペーサ部材15を介在させて、ケース40の開口部42内に上側から回転つまみ20の内周突出部24を挿入することで、ケース40の上部に回転つまみ20を載置する。そして回転つまみ20の内周突出部24の下端面に回転つまみ取付板16と板ばね35とをこの順に取り付けて固定する。この際、押釦つまみ10の押圧部12を回転つまみ取付板16の開口部16aと板ばね35の開口部36aとに挿通させる。また、回転つまみ20の摺動型物取付部26を回転つまみ取付板16の挿通部16bと板ばね35の挿通部36bとに挿通すると共に、板ばね固定部25を回転つまみ取付板16の取付固定部16cと板ばね35の取付固定部36cとに挿通して、板ばね35の下面側に突出する板ばね固定部25の先端を熱カシメして固定する。
【0029】
一方で、摺動型物60の摺動子固定部65を摺動子66の取付固定部66bに挿通させて、摺動子66の下面側に突出する摺動子固定部65の先端を熱カシメすることで、摺動型物60の摺動子設置部69内に摺動子66を取り付ける。そしてこの摺動子66を取り付けた摺動型物60を、板ばね35の下面側に設置する。この際、押釦つまみ10の押圧部12を摺動型物60の開口部61に挿通させると共に、挿通部36bから板ばね35の下面側に突出する摺動型物取付部26の軸部26bを摺動型物60の挿入部62に挿入する。なおここでは摺動型物取付部26の軸部26bを摺動型物60の挿入部62に挿入するだけで、摺動型物取付部26の熱カシメは行っていないが、取付固定部62に挿通した軸部26bの先端を摺動型物60の下面側に突出させてこの先端を熱カシメすることで固定してもよい。その場合は、熱カシメをした後で上記の摺動型物60への摺動子66の取り付けを行うようにする。
【0030】
一方で、フレキシブル回路基板70の第1回路基板部71をその下面71bを上に向けた状態で、開口部74に取付台90の筒状突出部93を挿通して、該第1回路基板部71を取付台90の上面90aに載置する。そしてこの取付台90の上部に前記のケース40を設置する。この際、押釦つまみ10の押圧部12をその回り止め係合部12aを回り止め93aに係合させて筒状突出部93の内部(開口部91内)に挿通することで、摺動型物60の開口部61の内周と押圧部12の外周との間に筒状突出部93を挿入配置し、押圧部12の下端を取付台90の下面側に突出させる。その状態でケース40の取付台固定部45を、第1回路基板部71の挿通部79と取付台90の取付固定部92とに挿通し、取付台90の下面側に突出する取付台固定部45の先端を熱カシメすることで、取付台90の上面90aに第1回路基板部71を介在させてケース40を一体に固定する。これによりケース40の上部に設置した回転つまみ20と、ケース40の下部に設置した板ばね35及び摺動型物60とが、ケース40の上下で該ケース40に対して一体に回転自在に設置される。またこのとき板ばね35のクリック弾接部39がケース40のクリック係合部47に弾接係合した状態になり、摺動型物60に取り付けた摺動子66の摺動接点67が、第1回路基板部71上の摺接パターン75に当接した状態になる。
【0031】
さらにそこからフレキシブル回路基板70の連結アーム72を下方に折り返すことで、第2回路基板部73をその上面73aを上に向けた状態で取付台90の下側に配置し、この第2回路基板部73の下面73b側に、支持部材100を重ねて設置する。その際、取付台90の各係合片94の係止部94aより先端側の部分を支持部材100の各係合片取付部101の係合片挿入部101a内に挿入してスナップイン係合によって取り付ける。これにより、取付台90の各押圧部95が対応する押圧スイッチ78の反転板78b上に載置され、この状態で各係合片94が各係合片挿入部101aの内周上面に当接することで、取付台90が支持部材100によって揺動自在に支持された状態になる。以上により多機能型電子部品1の組み立てが完了する。
【0032】
このようにして組み立てられた多機能型電子部品1は、図1に示すように、ケース40と、ケース40の上部に設置した回転つまみ20と、回転つまみ20の中央に設けた開口部22内に設置した押釦つまみ10と、ケース40の下部に設置した回転つまみ20と一体に回転する摺動型物60と、取付台90上に設置した第1回路基板部71に設けた摺接パターン75と摺動型物60に取り付けた摺動子66の摺接接点67とで構成される電気的機能部55と、ケース40を載置している取付台90と、取付台90の下側に設置されて取付台90を揺動自在に支持する支持部材100とを備えている。また支持部材100上に設置した第2回路基板部73上の押釦つまみ10に設けた押圧部12に対向する位置に配置された中央スイッチ80と、第2回路基板部73上の取付台90の下面90bに設けた押圧部95に対向する位置に配置された押圧スイッチ78とを備えている。
【0033】
次にこの多機能型電子部品1の動作を説明する。まず回転つまみ20の操作部23を指などで操作して回転させることで、板ばね35及び摺動型物60が回転つまみ20と一体に回転する。これにより板ばね35のクリック弾接部39がケース40のクリック係合部47に弾接係合してクリック感覚が生じると共に、摺動型物60に取り付けた摺動子66の摺動接点67が摺接パターン75上を摺接し、摺接パターン75の電気的出力が変化する。この際、3組の摺動接点67(図8参照)のうちの何れかの組の摺動接点67の外側の摺接ブラシ67aが常にコモンパターン76(図9参照)に摺接する一方、内側の摺接ブラシ67b,67cが接点パターン77a,77b(図9参照)に摺接してこれをオンオフするが、上記したように両接点パターン77a,77bの櫛歯状部は120°の間隔よりも若干ずれた位置に設けられているので、いずれかの摺動接点67が何れか一方の接点パターン77a又は77bに摺接してこれをオンするタイミングと、他の摺動接点67が他方の接点パターン77b又は77aに摺接してこれをオンするタイミングの位相が少しずれるので、両接点パターン77a,77bから出力されるオンオフ信号の位相が若干ずれるようになっている。これにより、例えば摺動子66が左右いずれの向きに回転しているかを検出できるようになっている。
【0034】
一方、押釦つまみ10の操作部13を押圧操作することで、押釦つまみ10が下降してその押圧部12が中央スイッチ80の反転板80bを押圧して反転させ、中央スイッチ80がオンする。押釦つまみ10への押圧を解除すれば反転板80bの復帰力で中央スイッチ80がオフする。また一方で、回転つまみ20の操作部23の取付台90の4箇所の押圧部95のうちのいずれかに対応する部分を押圧操作すると、ケース40や摺動型物60や押釦つまみ10など取付台90上に設置されている各構成部品が取付台90と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部95が対向する押圧スイッチ78の反転板78bを押圧して反転させて、押圧スイッチ78をオンする。回転つまみ20を揺動させている力を解除すれば、反転板78bの復帰力で回転つまみ20及び取付台90上の各構成部品が一体に元の位置に自動復帰して、押圧スイッチ78がオフする。
【0035】
この多機能型電子部品1は、携帯型端末装置等に設置して用いる場合には、一例として回転つまみ20の回転操作によって所定の操作内容を順に携帯型端末装置の表示部に表示させ、回転つまみ20を揺動させる操作でこの表示させた操作内容のうちのいずれかを選択し、さらに押釦つまみ10を押圧する操作でこの選択した操作内容を確定するなどして用いることができる。
【0036】
上記構成の多機能型電子部品1は、ケース40と、ケース40の上部に設置した回転つまみ20と、ケース40の下部に設置した回転つまみ20と一体に回転する摺動型物60と、該摺動型物60の回転によってその電気的出力が変化する電気的機能部55と、ケース40を載置する取付台90と、該取付台90の下側に設置されて該取付台90を揺動自在に支持する支持部材100と、取付台90の揺動によって押圧される押圧スイッチ78とを備えたので、回転式電子部品の構成と揺動式電子部品の構成とを兼ね備えた多機能型電子部品1をコンパクトに構成することができる。また回転つまみ20や摺動型物60を取り付けたケース40を、押圧スイッチ78を押圧する揺動自在に設置された取付台90上に載置していることで、回転つまみ20を回転させて電気的機能部55の電気的出力を変化させる操作と、回転つまみ20を介して取付台90を揺動させて押圧スイッチ78を押圧する操作の両方を連動してスムーズに行うことができるので、多機能型電子部品1の操作性を向上させることができる。
【0037】
またこの多機能型電子部品1は、取付台90上に設置した第1回路基板部71を備え、該第1回路基板部71上に設けた摺接パターン75と、摺動型物60の下面に取り付けられて摺接パターン75上を摺接する摺動子66とで電気的機能部55を構成しているので、電気的機能部55を取付台90の上部のケース40の下側にコンパクトに配置することができ、多機能型電子部品1の小型化、薄型化を図ることができる。
【0038】
またこの多機能型電子部品1では、回転つまみ20の中央に設けた開口部22内に押釦つまみ10を設置すると共に、押釦つまみ10によって押圧される中央スイッチ80を備えたので、回転つまみ20だけを備えている場合よりも多機能型電子部品1の機能をさらに多くすることができる。また押釦つまみ10を回転つまみ20の中央に設けた開口部22内に設置しているので、多機能型電子部品1の外径寸法を大きくせずに押釦つまみ10を設置することが可能となる。
【0039】
さらにこの多機能型電子部品1では、支持部材100上に設置した第2回路基板部73を備え、該第2回路基板部73上の押釦つまみ10に設けた押圧部12に対向する位置に中央スイッチ80を配置し、該第2回路基板部73上の取付台90の下面に設けた押圧部95に対向する位置に押圧スイッチ78を配置しているので、中央スイッチ80と押圧スイッチ78を取付台90の下側の同一平面内に収まるように配置することができるので、多機能型電子部品1の構造が簡単になってその薄型化を図ることができる。
【0040】
さらにこの多機能型電子部品1では、第1回路基板部71と第2回路基板部73とを連結アーム72を介して一体に連結されたフレキシブル回路基板70とすることで、摺接パターン75と押圧スイッチ78及び中央スイッチ80を同一のフレキシブル回路基板70上に設けているので、多機能型電子部品1の部品点数を少なくすることができる。また摺接パターン75を第1回路基板部71上に設置し、中央スイッチ80を第2回路基板部73上に設置していることで、摺接パターン75と同一平面内の摺接パターン75の内側位置に中央スイッチ80を設ける必要がなく、その分摺接パターン75の外径寸法を小型化でき、多機能型電子部品1の外形寸法の小型化を図ることができる。
【0041】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記各実施形態では、多機能型電子部品1に押釦つまみ10と中央スイッチ80を設置した場合を説明したが、これら押釦つまみ10と中央スイッチ80は必ずしも設ける必要はなく、これらを省略して多機能型電子部品1を構成することも可能である。
【0042】
また上記実施形態では、第1回路基板部71と第2回路基板部73は、連結アーム72を介して一体に連結されたフレキシブル回路基板70である場合を説明したが、これ以外にも第1回路基板部71と第2回路基板部73をそれぞれ別個の回路基板として構成してもよい。その場合の第1回路基板部71と第2回路基板部73は、少なくともそのいずれかを硬質回路基板で構成することもできる。
【0043】
また上記実施形態では、摺動型物60に取り付けた摺動子66と取付台90上に設置した第1回路基板部71上の摺接パターン75とで電気的機能部55を構成しているが、電気的機能部55としては、回転つまみ20の回転によりその電気的出力が変化する構成であれば他の構成を採用してもよい。即ち、図示は省略するが例えば上記実施形態とは逆に摺動型物60側に摺接パターンを設け、取付台90側に摺動子を設置することも可能である。
【0044】
また上記実施形態では、フレキシブル回路基板70上に形成した中央スイッチ80や押圧スイッチ78などの各スイッチを、1枚の合成樹脂フイルムに形成した接点パターン上に反転板を取り付けることで構成しているが、これらのスイッチは二枚の合成樹脂フイルムを重ね合わせて両合成樹脂フイルムに設けた一対の接点パターンを隙間を介して対向させ、一方の合成樹脂フイルムに設けた接点パターンの裏面側に反転板を設置することで構成されるスイッチ(メンブレンスイッチ)としても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 多機能型電子部品
10 押釦つまみ
12 押圧部
16 回転つまみ取付板
20 回転つまみ
24 内周突出部
35 板ばね
40 ケース
55 電気的機能部
60 摺動型物(回転体)
66 摺動子(電気的機能部)
67 摺動接点(電気的機能部)
70 フレキシブル回路基板
71 第1回路基板部(第1の回路基板)
72 連結アーム
73 第2回路基板部(第2の回路基板)
75 摺接パターン(電気的機能部)
78 押圧スイッチ
80 中央スイッチ
90 取付台
95 押圧部
100 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口部を有する回転つまみと、
前記回転つまみの下部に設置され、この回転つまみの下面の開口部の周囲から突出して設けられる内周突出部を回動自在に挿入する開口部を有するケースと、
前記ケースの開口部の下部に設置され、この開口部を通して前記回転つまみに取り付けられてこの回転つまみと一体に回転する回転つまみ取付板と、
前記回転つまみの開口部内に設置され下面に押圧部を設けてなる押釦つまみと、
前記ケースの下部に設置され、前記回転つまみの回転とともに回転する摺動子及びこの摺動子が摺接することで電気的出力を変化する摺接パターンを有する電気的機能部と、
前記回転つまみを揺動することで下降する回転つまみの下方に設置されて押圧操作される押圧スイッチと、
前記押釦つまみの押圧部によって押圧操作される中央スイッチと、を具備し、
前記押釦つまみの押圧部は前記回転つまみ取付板に設けた開口部を挿通してその先端が前記中央スイッチに対向していることを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の多機能型電子部品において、
前記回転つまみ取付板は平板であり、その外径寸法を前記ケースの開口部の内径寸法よりも大きく形成し、
前記ケースの開口部に回動自在に挿入した前記回転つまみの内周突出部の下端に前記回転つまみ取付板を取り付けたことを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の多機能型電子部品において、
前記回転つまみの内周突出部の下端から小突起を突設し、この小突起を回転つまみ取付板の前記開口部の外側に形成した取付固定部に挿入して小突起の先端をかしめることで、回転つまみに回転つまみ取付板を取り付けたことを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項4】
請求項3に記載の多機能型電子部品において、
前記押圧スイッチと前記中央スイッチは同一の回路基板上に配置され、且つ前記押圧スイッチは前記中央スイッチの外側の同一円周上の複数の位置に形成され、
さらに前記回路基板は平板状の支持部材上に載置されていることを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項5】
請求項4に記載の多機能型電子部品において、
前記押釦つまみには回り止め係合部が設けられていることを特徴とする多機能型電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−219062(P2010−219062A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127445(P2010−127445)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【分割の表示】特願2006−164637(P2006−164637)の分割
【原出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】