説明

多機能型電子部品

【課題】取付台とケース間の取り付けを容易且つ確実に行うことができる多機能型電子部品を提供すること。
【解決手段】多機能型電子部品1のケース70にその外周側壁76から半径方向外方に突出して回転つまみ10の外周よりも半径方向外方にまで突出する取付部77を設ける。取付台130のケース70の取付部77に対向する位置にケース取付部137を設ける。ケース70と取付台130間の取り付けは、取付部77に設けた突起からなる係止部80を、ケース取付部137に設けた孔からなる取付固定部139に挿入し、取付部77(その上面)を受け面として、係止部80の先端を熱かしめすることによって行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも回転式電子部品の機能を持つ多機能型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用ナビゲーションシステム、コンピュータ、各種携帯機器、各種OA機器、ゲーム機などを操作するデバイスとして回転式電子部品や揺動式電子部品や押圧式電子部品などが用いられている。そしてこの種の電子部品の中には、特許文献1の図1に示す多機能型電子部品(1)のように、回転式電子部品の回転つまみ(20)の中央に押圧式電子部品の押釦つまみ(10)を設置することで回転式電子部品と押圧式電子部品の機能を併せ持たせ、さらに前記回転つまみ(20)をその上面から押圧・揺動させて操作させることで揺動式電子部品の機能を併せ持たせた構造のものがある。
【0003】
そして特許文献1の図1に示す従来の構造の多機能型電子部品(1)の場合は、ケース(40)と取付台(90)間を固定するためにケース(40)の外周側壁(43)の下端辺から突出する取付台固定部(45)(特許文献1の図2参照)の先端を取付台(90)に貫通させてその下面で熱かしめする方法をとっており、この場合は回転つまみ(20)の上面を受け面として取付台(90)の下面で前記取付台固定部(45)先端を押しつぶして熱かしめしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−335191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、取付台とケース間の取り付けを、容易且つ確実に行うことができる多機能型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の発明は、少なくとも、ケースと、前記ケースの上部を覆う回転つまみと、前記ケースの下面側に設置されて前記回転つまみと一体に連結される回転体と、前記回転つまみ及び回転体の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部と、前記ケースを載置して取り付ける取付台と、を具備する多機能型電子部品において、前記ケースにはその外周側壁から半径方向外方に突出して前記回転つまみの外周よりも半径方向外方にまで突出する取付部を設け、一方前記取付台の前記ケースの取付部に対向する位置にはケース取付部を設け、前記ケースと取付台間の取り付けは、前記取付部又はケース取付部の何れか一方に設けた突起からなる係止部を、他方に設けた孔からなる取付固定部に挿入することにより行うことを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0007】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多機能型電子部品において、前記取付固定部に挿入した前記係止部の先端は熱かしめされることを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0008】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の多機能型電子部品において、前記係止部を設けた取付部又はケース取付部を、熱かしめする際の受け面としたことを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0009】
本願請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の多機能型電子部品において、前記多機能型電子部品はさらに、前記取付台を揺動自在に支持する支持部材と、前記取付台の揺動によって押圧される押圧スイッチと、を具備することを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0010】
本願請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の多機能型電子部品において、前記多機能型電子部品はさらに、前記回転つまみの中央に設けた開口部内に設置される押釦つまみと、前記押釦つまみによってオンオフされる中央スイッチと、を具備することを特徴とする多機能型電子部品にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケースと取付台間の取り付けを、ケース70の外周から半径方向外方に突出する取付部と、この取付部に対向する位置に設けた取付台のケース取付部との間で行うこととしたので、取付台とケース間の取り付けが容易且つ確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】多機能型電子部品1の概略側断面図である。
【図2】多機能型電子部品1を上側から見た斜視図である。
【図3】多機能型電子部品1を下側から見た斜視図である。
【図4】多機能型電子部品1の上側の部品を上側から見た分解斜視図である。
【図5】多機能型電子部品1の下側の部品を上側から見た分解斜視図である。
【図6】多機能型電子部品1の上側の部品を下側から見た分解斜視図である。
【図7】多機能型電子部品1の下側の部品を下側から見た分解斜視図である。
【図8】ケース70の取付部77と取付台130のケース取付部137との取付状態を示す要部拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態にかかる多機能型電子部品1の概略側断面図、図2は多機能型電子部品1を上側から見た斜視図、図3は多機能型電子部品1を下側から見た斜視図、図4は多機能型電子部品1の上側の部品を上側から見た分解斜視図、図5は多機能型電子部品1の下側の部品を上側から見た分解斜視図、図6は多機能型電子部品1の上側の部品を下側から見た分解斜視図、図7は多機能型電子部品1の下側の部品を下側から見た分解斜視図である。なお以下の説明において、「上」とはケース70から見てその上に覆うように設置される回転つまみ10の方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0014】
これらの図に示すように多機能型電子部品1は、回転つまみ10と、クリック板30と、押釦つまみ50と、ケース70と、回転体90と、摺動子110と、取付台130と、回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)150と、支持部材170とを具備して構成されている。
【0015】
回転つまみ10は合成樹脂の成形品(この実施形態ではABS樹脂を用いているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂を用いても良い)であり、略円板状の本体部11の外周から下方に向けて筒状に側壁部13を突出し、また本体部11の中央に円形の開口部15を設けて構成されている。本体部11の下面の開口部15の周囲には下方向に突出する筒状の軸支部17が設けられている。軸支部17の内径寸法は下記する押釦つまみ50のつば部55をちょうど上下動自在に収納できる寸法であり、軸支部17の外径寸法は下記するケース70の開口73に挿入されて回動自在に軸支される寸法である。軸支部17の180°対向する2ヶ所には凹状に凹むとともに半径方向外方に向かって延びる平面状のクリック板設置部19が設けられており、これらクリック板設置部19の面からは下方向に向かって小突起状のクリック板係止部21が突設されている。また軸支部17の下面上の等間隔の3ヶ所には下方向に向かって突出する小突起状の回転体取付部23が設けられている。また回転つまみ10下面の軸支部17の外周側には前記一対のクリック板設置部19を除く部分にリング状(一対の半円弧状)に凹む弾接部挿入部25が形成されている。
【0016】
クリック板30は弾性金属板(たとえばステンレス板)をリング形状に形成して構成されており、その内周辺の180°対向する位置から内側(中心)方向に向けて一対の舌片状の取付部31を突設して構成されている。各取付部31の先端近傍位置には前記回転つまみ10のクリック板取付部21を挿入する回転つまみ取付部33が設けられている。一対の取付部31の両側に位置する円弧状部分は一対のアーム部35であり、両アーム部35のそれぞれ中央には下方向に突出するように湾曲してなるクリック弾接部37が設けられている。
【0017】
押釦つまみ50は合成樹脂(この実施形態ではABS樹脂を用いているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂を用いても良い)の成形品であり、略円板状の本体部51と、本体部51の下面中央から下方向に突出する柱状の押圧部53とを具備し、また本体部51の外周下部から薄板状のつば部55を突出して構成されている。押圧部53の外周面には上下方向(軸方向)に沿う突条からなる回り止め係合部57が設けられている。
【0018】
ケース70は合成樹脂(この実施形態ではポリカーボネート(PC)樹脂を用いているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂を用いても良い)の成形品であり、略円板状であってその中央に前記回転つまみ10の軸支部17を回動自在に挿入する上下に貫通する円形の開口73を設けて構成されている。ケース70下面の開口73の周囲には、回転体90を収納する深さを有する円形凹状の回転体収納部75が設けられ、この回転体収納部75の周囲を囲むケース70の外周側壁76の外周下部からは等間隔に4つの舌片状の取付部77が半径方向外方に向けて突出している。各取付部77は略平板矩形状であり、その下面からは小突起状の係止部80が突出している。またケース70の上面の外周縁部分(外周側壁76の上面の部分)にはリング状の凹凸からなるクリック係合部79が設けられている。クリック係合部79を構成する各凹凸はケース70の上面の外周縁部分からケース70の外周側面を切り欠く位置まで形成されている。外周側壁76の下面の所定位置には下方向に突出する一対の第1回路基板部係止部81が設けられている。
【0019】
回転体90は合成樹脂(この実施形態ではPC樹脂を用いているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂を用いても良い)の成形品であり、円形の平板状に形成され、中央に下記する取付台130の筒状突出部131を回転自在に挿入(軸支)する円形の開口部91を設け、また回転つまみ10の各回転体取付部23に対向する3ヶ所の位置に貫通孔からなる挿入部93を設け、また回転つまみ10の軸支部17中に設けた凹状の一対のクリック板設置部19に対向する位置にクリック板押え部95を設けて構成されている。一対ずつのクリック板押え部95はそれぞれこれらに対向する回転つまみ10の軸支部17中の凹状となっているクリック板設置部19の部分にぴったり挿入される寸法に形成され、一対のクリック板押え部95の間には前記回転つまみ10のクリック板係止部21を挿入する溝からなる係止部挿入部97が設けられている。回転体90の下面は摺動子110を設置する摺動子設置部99となっており、摺動子設置部99の面の同一円周上の等間隔(120°間隔)の3ヶ所の位置には、小突起状の摺動子固定部101が設けられている。
【0020】
電気的機能部を構成する摺動子110は弾性金属板製であり、回転体90の外径寸法よりも若干小さな外径寸法を有する略円形の平板状でリング状に形成され、中央に円形の開口部111を設けるとともに、等間隔(120°間隔)の複数位置(3ヶ所)に、前記回転体90の摺動子固定部101を挿入する貫通孔からなる取付固定部113を設け、各取付固定部113の側部から3本ずつの摺接ブラシ115を摺動子110の円形の外形に沿うように突出して配置し、また各取付固定部113の近傍位置(回転つまみ10の各回転体取付部23に対向する位置)に摺動子110の内周辺を凹状に切り欠いてなる取付部挿通部119を設けて構成されている。各組の摺接ブラシ115の先端近傍部分は接点部117となっている。
【0021】
取付台130は合成樹脂(この実施形態ではPC樹脂を用いているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂を用いても良い)を略矩形平板状(略正方形板状)に成形して構成されており、その中央には上方向に向かって突出する筒状突出部131が設けられ、筒状突出部131の中央には略円形で上下に貫通する開口部133が設けられている。開口部133は押釦つまみ50の押圧部53を上下動自在に挿通させるものであり、その内周面には、押釦つまみ50の回り止め係合部57を係合する軸方向(上下方向)に伸びる溝(上部はスリット)からなる回り止め135が形成されている。取付台130の4つの角部の前記ケース70の各取付部77に対向する部分はケース取付部137となっており、各ケース取付部137中の前記ケース70の各係止部80に対向する位置には上下に貫通する小孔からなる取付固定部139が形成されている。各ケース取付部137の先端部分は舌片状に突出する係合片141となっている。取付台130の下面の各取付固定部139の間の所定位置(下記する各押圧スイッチ165に対向する位置)には下方向に向かって柱状に突出する押圧部143が形成されている。また取付台130の1外周辺近傍(前記ケース70の各第1回路基板部係止部81に対向する位置)には2つの上下に貫通する小孔からなるケース係止部145が形成されている。
【0022】
フレキシブル回路基板150は、可撓性を有する合成樹脂フイルム上に所望の回路パターンを形成して構成されており、細帯状の連結部155によって第1回路基板部151と第2回路基板部153とを連結し、さらに第2回路基板部153に細帯状の引出部158を接続して構成されている。合成樹脂フイルムの材質は、可撓性のある合成樹脂フイルムであれば熱可塑性フイルムでも熱硬化性フイルムでも光硬化性フイルムでもよく、この実施形態では熱可塑性のポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムを用いているが、それ以外にもたとえばポリフェニレンスルフイド(PPS)フイルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フイルム、ポリエーテルイミド(PEI)フイルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フイルム、ポリエーテルケトン(PEK)フイルム、ポリカーボネート(PC)フイルム、ポリブチレンナフタレート(PBN)フイルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フイルム等を使用しても良い。
【0023】
フレキシブル回路基板150の第1回路基板部151は略円形の外形を有し、中央に前記取付台130の筒状突出部131を挿通する円形の開口部157を設け、またその外周近傍の所定位置(前記取付台130の各ケース係止部145に対向する2か所)に貫通する小孔からなる挿通部159を設け、さらに第1回路基板部151の下面の開口部157の周囲を囲む位置に電気的機能部である摺接パターン161を形成して構成されている。摺接パターン161の具体的構成は図示していないが、スイッチパターンであってもよいし、抵抗体パターンであってもよいし、それら以外の各種機能を有するパターンであってもよい。摺接パターン161は導電塗料を塗布することで形成してもよいし、貼り付けた金属箔をエッチングすることによって形成してもよいし、蒸着などの手段によって形成してもよい。第2回路基板部153は略矩形状であり、その上面の中央に中央スイッチ163を設置し、中央スイッチ163の周囲を囲む位置に等間隔(90°間隔)に複数(4つ)の押圧スイッチ165を設置して構成されている。中央スイッチ163及び押圧スイッチ165は、第2回路基板部153上に形成した図示しないスイッチパターン上に弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板(この実施形態では可動接点板)163a、165aを設置して構成されている。第2回路基板部153の押圧スイッチ165の外側周囲を等間隔に囲む4か所の位置(下記する支持部材170に設ける挿通部177に対向する位置)には、貫通孔または切り欠きからなる挿通部167が設けられ、貫通孔となっている2つの挿通部167の外周側(下記する支持部材170に設ける係合片取付部173に対向する位置)には直線状に延びる貫通孔からなる貫通挿通部169が設けられている。引出部158には前記摺接パターン161や中央スイッチ163や押圧スイッチ165と接続されている回路パターンが引き出されている。
【0024】
支持部材170は金属製の硬質板(例えば鉄板)の外形を略矩形状(略正方形状)としてなる支持部材基部171を有し、支持部材基部171の外周の4つの角部(すなわち略等間隔の4か所)から外方に向けて舌片状の係合片取付部173を突出し、その根元部分を上方に向けて折り曲げてほぼ垂直に立設して構成されている。各係合片取付部173には前記取付台130に設けた各係合片141を挿入して係止する略矩形状の開口からなる係合片挿入部175が設けられている。係合片挿入部175の下部から支持部材基部171内に向かっては、係合片挿入部175に連続するように矩形状の開口からなる挿通部177が設けられている。各挿通部177は前記第2回路基板部153の各挿通部167に対向する位置に各挿通部167と略同一形状寸法に形成されている。
【0025】
多機能型電子部品1を組み立てるには、まず予め回転体90の摺動子設置部99に摺動子110を設置し、その際回転体90の各摺動子固定部101を摺動子110の各取付固定部113に挿入してその先端を熱かしめして固定しておく。次に回転つまみ10の下面にクリック板30を設置し、その際クリック板30の一対の取付部31を回転つまみ10の一対のクリック板設置部19上に当接し、その際回転つまみ10の一対のクリック板係止部21をクリック板30の各回転つまみ取付部33に挿入する。このときクリック板30の一対のアーム部35は回転つまみ10の一対の弾接部挿入部25の下側に対向して位置する。
【0026】
次に回転つまみ10の開口部15にその下面側から押釦つまみ50の本体部51を挿入し、本体部51の上面を開口部15から回転つまみ10の上面側に露出させる。次に回転つまみ10の下面側にケース70を設置する。このときケース70の開口73内に回転つまみ10の軸支部17が回動自在に挿入され、また回転つまみ10の側壁部13の内側にケース70の各取付部77を除く外周部分全体が入り込み、同時にケース70の各取付部77は回転つまみ10の外周から半径方向外方に突出する。
【0027】
次に前記摺動子110を取り付けた回転体90をケース70の回転体収納部75内に収納し、その際、押釦つまみ50の押圧部53を回転体90の開口部91に挿通させるとともに、回転つまみ10の各回転体取付部23を回転体90の各挿入部93とクリック板30の各取付部挿通部119に挿入し、各回転体取付部23の先端を熱かしめし、これによって回転つまみ10と回転体90とをケース70を介して回動自在に一体化する。このとき回転体90のクリック板押え部95は回転つまみ10の軸支部17中の凹状になっているクリック板設置部19内に挿入され(このとき回転つまみ10のクリック板係止部21は回転体90の係止部挿入部97内に挿入・係合している)、その先端がクリック板30の取付部31をクリック板設置部19に押し付けてクリック板30を回転つまみ10に固定している。
【0028】
次にフレキシブル回路基板150の第1回路基板部151をその下面(摺接パターン161を設けた側の面)を上向きとした状態で取付台130の上面に載置し、その際その開口部157に取付台130の筒状突出部131を挿通する。このとき取付台130の各ケース係止部145と第1回路基板部151の各挿通部159の位置を一致させておく。そして第1回路基板部151を設置した取付台130を前記ケース70の下側に設置する。このとき回転体90の開口部91内に筒状突出部131を挿入し、同時に押釦つまみ50の押圧部53をその回り止め係合部57を回り止め135に係合させながら開口部133内に挿入し、押圧部53の下端を取付台130の下面側に突出させる。同時にケース70の各第1回路基板部係止部81を第1回路基板部151の各挿通部159と取付台130の各ケース係止部145とに挿通し、同時に取付台130の各取付固定部139にケース70の各係止部80を挿入し、各係止部80の先端を取付台130の下面で熱かしめし、これによってケース70の各取付部77と取付台130の各ケース取付部137間を取り付けて固定する。このとき回転体90に取り付けた摺動子110の接点部117は第1回路基板部151上の摺接パターン161に弾接している。
【0029】
次に前記フレキシブル回路基板150の連結部155の部分を下方に折り返すことで、第2回路基板部153を取付台130の下側に配置し、さらに第2回路基板部153の下面側に第2回路基板部153と重なるように支持部材170を設置する。このとき支持部材170の各係合片取付部173を第2回路基板部153の貫通挿通部169または第2回路基板部153の外周辺の外側を通して第2回路基板部153の上面側に突出させ、同時にこれら各係合片取付部173に設けた係合片挿入部175内に取付台130の各係合片141をスナップイン係合によって挿入して取り付ける。このとき取付台130の各押圧部143はそれぞれ各押圧スイッチ165の反転板165a上に当接し、この状態で各係止片141が各係合片挿入部175の内周上辺に当接することで、取付台130が支持部材170によって揺動自在に支持された状態となる。同時に押釦つまみ50の押圧部53の下端面も中央スイッチ163の反転板163a上に当接する。またこのとき図3,図8に示すように、前記熱かしめしたケース70の係止部80の下部は、支持部材170の挿通部177の部分に露出している。以上により図1に示す多機能型電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。たとえば前記ケース70の係止部80先端の熱かしめは、ケース70の下面に取付台130を設置したときではなく、さらに取付台130の下面側に第2回路基板部153と支持部材170を設置した後に、前記第2回路基板部153の挿通部167と支持部材170の挿通部177の部分に露出している係止部80の先端に対して行ってもよい。
【0030】
ところでこの多機能型電子部品1のようにケース70と取付台130間の取り付けを、ケース70の外周から半径方向外方に突出する取付部77と、この取付部77に対向する位置に設けた取付台130のケース取付部137との間で行ったのは、以下の理由による。すなわちたとえば特許文献1の図1に示す従来の構造の多機能型電子部品(1)の場合は、クリック機構がケース(40)の内部に収納されているので、ケース(40)と取付台(90)間を固定するためにケース(40)の外周側壁(43)の下端辺から突出する取付台固定部(45)(特許文献1の図2参照)の先端を取付台(90)に貫通させてその下面で熱かしめする方法をとっており、この場合は回転つまみ(20)の上面を受け面として取付台(90)の下面で前記取付台固定部(45)先端を押しつぶして熱かしめしている。しかしながら本発明にかかる多機能型電子部品1の場合は、図1に示すように回転つまみ10の下面とケース70の上面の外周縁近傍部分との間にクリック機構を設置しているので、回転つまみ10とケース70の間に空隙があり、このため特許文献1のように外周側壁76下部において取付台130との取り付けを行うために回転つまみ10の上面を受け面とすると、熱かしめ時にケース70がぐらつきやすくなり、安定した熱かしめができなくなる恐れがある。そこで本発明にかかる多機能型電子部品1においては上述のように、ケース70と取付台130間の取り付けを、図8に示すようにケース70の外周から半径方向外方に突出する取付部77と、この取付部77に対向する位置に設けた取付台130のケース取付部137との間で行うこととし(この実施形態の場合は取付部77の上面が受け面になる)、これによって取付台130とケース70間の取り付けを、クリック機構によって阻害されることなく、容易且つ確実に行うこととしたのである。
【0031】
次に多機能型電子部品1の動作を説明する。まず回転つまみ10を回転すると、これと一体にクリック板30及び回転体90及び摺動子110が回転し、これによってクリック板30のクリック弾接部37がケース70のクリック係合部79に弾接係合してクリック感触が生じるとともに、摺動子110の接点部117が第1回路基板部151の摺接パターン161上を摺動して摺接パターン161の電気的出力が変化する。なおクリック板30のクリック弾接部37がクリック係合部79の凸の部分に乗り上げた際、そのクリック弾接部37及びその両側のアーム部35は弾接部挿入部25に入り込む。
【0032】
一方押釦つまみ50の本体部51の上面を押圧すると、押釦つまみ50が下降してその押圧部53が中央スイッチ163の反転板163aを押圧して反転させ、これによって中央スイッチ163がオンする。押釦つまみ50への押圧を解除すれば、反転板163aは元の形状に自動復帰し、押釦つまみ50は押し上げられ、中央スイッチ163はオフする。一方回転つまみ10の本体部11上面の、前記取付台130の何れかの押圧部143に対応する部分を下方向に押圧すると、取付台130上に設置している各構成部品(ケース70や回転体90や回転つまみ10など)が取付台130と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部143がこれに対向する押圧スイッチ165の反転板165aを押圧して反転させてその押圧スイッチ165がオンする。前記回転つまみ10への押圧を解除すれば、反転板165aの自動復帰力によって取付台130上の回転つまみ10を含む各構成部品が一体に元の位置に自動復帰し、押圧スイッチ165はオフする。
【0033】
そして上記多機能型電子部品1は、回転つまみ10を回転した際にクリック感触を生じるクリック機構を、ケース70の上面の外周縁部分に設けた凹凸からなるクリック係合部79と、回転つまみ10の下面に取り付けられクリック係合部79に弾接するクリック弾接部37を有するクリック板30とを具備して構成させたので、ケース70の外周側壁76の上部の部分をクリック係合部79に利用できる。言い換えればケース70の外周側壁76の半径方向の厚みの中にクリック係合部79を含ませることができ、その分ケース70の中央部分のスペースを拡大でき、ケース70に設ける開口73の内径を容易に大きくすることができ、これによってケース70や回転つまみ10の外径寸法を大きくすることなく回転つまみ10の中央に設置する押釦つまみ50の外径寸法を大型化することができる。
【0034】
特に上記実施形態においては、クリック係合部79をケース70の上面の外周縁部分からケース70の外周側面を切り欠く位置まで形成しているので、ケース70の最も外周の位置にクリック係合部79を設けることができ、上記効果をさらに効果的に発揮させることができる。
【0035】
またクリック係合部79をケース70上面の外周縁部に設けたので、クリック係合部79を容易に回転体90の外周の外側に設置でき、したがって回転体90の上面と同等位置または回転体90の上面よりも下方の位置にクリック係合部79の底面を配置でき、その分ケース70の上下方向の厚みを薄くでき、多機能型電子部品1の上下方向の厚みの薄型化が図れる。
【0036】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば前記クリック機構を構成するクリック係合部79は、ケース70の上面の外周縁部分の全周ではなくその一部の部分のみに設けてもよく、その凹凸形状も種々の変形が可能である。またクリック板30の形状・構造なども種々の変形が可能である。また上記実施形態ではケース70の取付部77に設けた小突起状の係止部80を取付台130のケース取付部137に設けた小孔からなる取付固定部139に挿入して係止部80の先端を熱かしめしたが、逆にケース取付部137に設けた小突起を取付部77に設けた小孔に挿入して小突起の先端を熱かしめしてもよい。また場合によっては熱かしめ以外の取付構造によってケース70の取付部77と取付台130のケース取付部137間を取り付けてもよい。また上記実施形態では取付台130を揺動自在として揺動式電子部品の機能を持たせているが、場合によっては押圧スイッチ165の設置を省略して取付台130を支持部材170に対して揺動しない構成とし、これによって揺動式電子部品の機能を省略してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 多機能型電子部品
10 回転つまみ
13 側壁部
15 開口部
17 軸支部
30 クリック板(クリック機構)
37 クリック弾接部
50 押釦つまみ
70 ケース
73 開口
76 外周側壁
77 取付部
79 クリック係合部(クリック機構)
80 係止部
90 回転体
110 摺動子(電気的機能部)
130 取付台
137 ケース取付部
150 フレキシブル回路基板(回路基板)
151 第1回路基板部
153 第2回路基板部
161 摺接パターン(電気的機能部)
163 中央スイッチ
165 押圧スイッチ
170 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ケースと、前記ケースの上部を覆う回転つまみと、前記ケースの下面側に設置されて前記回転つまみと一体に連結される回転体と、前記回転つまみ及び回転体の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部と、前記ケースを載置して取り付ける取付台と、を具備する多機能型電子部品において、
前記ケースにはその外周側壁から半径方向外方に突出して前記回転つまみの外周よりも半径方向外方にまで突出する取付部を設け、一方前記取付台の前記ケースの取付部に対向する位置にはケース取付部を設け、
前記ケースと取付台間の取り付けは、前記取付部又はケース取付部の何れか一方に設けた突起からなる係止部を、他方に設けた孔からなる取付固定部に挿入することにより行うことを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の多機能型電子部品において、
前記取付固定部に挿入した前記係止部の先端は熱かしめされることを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の多機能型電子部品において、
前記係止部を設けた取付部又はケース取付部を、熱かしめする際の受け面としたことを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項4】
請求項1に記載の多機能型電子部品において、
前記多機能型電子部品はさらに、前記取付台を揺動自在に支持する支持部材と、前記取付台の揺動によって押圧される押圧スイッチと、を具備することを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項5】
請求項1に記載の多機能型電子部品において、
前記多機能型電子部品はさらに、前記回転つまみの中央に設けた開口部内に設置される押釦つまみと、前記押釦つまみによってオンオフされる中央スイッチと、を具備することを特徴とする多機能型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−101964(P2013−101964A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−9900(P2013−9900)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2008−313959(P2008−313959)の分割
【原出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】