説明

多機能表面処理

低ホルムアルデヒド放出性木質パネルを記載する。これらの木質パネルは、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に化学結合している天然成分又はその誘導体(ncPF)を含む樹脂組成物から構成される外表面層を有する。ncPFを含む樹脂組成物の外表面層を有することの有利性は、外表面層を、木質パネルのコアから表面への成分の移動を減少させる表面封止剤として機能させることができることである。外表面層は、木質パネル上に明るい色の面を形成するので、消費者に満足される。また、これは、アミノ又はフェノール樹脂と比較して、例えば塗装のような後処理のために優れた表面でもある。更に、ncPFを含む本発明の樹脂組成物を含む外表面層は、木質パネルに対して更なる難燃性を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然成分又はその誘導体を含む樹脂組成物を含む最終木材製品の独特の表面層のために優れた表面特性及び低ホルムアルデヒド放出性を有する木質パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
家屋及び他の建築物の建設には、壁、床、及び他の表面用に種々の材料を用いることが含まれる。かかる表面のためには固い硬木又は軟木の板材が非常に望ましいが、固い板材はしばしば極めて高価である。壁面用の代替物としてベニヤパネルがしばしば用いられているが、かかるパネルはそれらの独自の問題点を有する。必要なタイプ、寸法、及び品質の樹木はますます欠乏してきており、多層ベニヤ又は合板の製造は高価であり、高品質のベニヤパネルは得るのが困難になってきている。
【0003】
妥当な建設コストと高品質の建築物との競合する必要性のために、代替木材製品に関する用途が拡大している。例えば、パーティクルボード、ファイバーボード、配向性ストランドボード(OSB)、ハードボード、及び他の同様の板材は、建設産業において使用できない可能性のある木材から形成される。また、板材は、木材の粒子、チップ、フレーク、又は他の破片からも形成される。これらの板材原料は、建築物の建設において、特に壁及び床の表面並びに下層用にますます用いられている。かかる板材は、かかる用途のために適当な程度を超える品質及び完全性を有する。
【0004】
これらの代替板材の幾つかは、湿分又は水に曝露すると膨潤しやすい。これらの板材は、ワックスで被覆するか、又は水による問題点を回避するための他の方法で処理している。Lundの米国特許第4,241,133号においては、木材フレークをバインダーと一緒に結合させることができることが開示されている。バインダーの例としては、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、及びポリイソシアネートが挙げられる。5〜12%の間のバインダー濃度が開示されている。耐水性のためにワックスを用いることができ、防腐剤を添加することもできる。パーティクルボード及び同様の板材を製造する他の方法は、A. Elmendorfの米国特許第3,164,511号;B. Polovtseffの米国特許第3,391,233号;及びE. Potterの米国特許第3,940,230号;に開示されている。
【0005】
メラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂のようなアミノプラスト樹脂は、繊維を中密度ハードボードにプレスする直前の樹脂含有木材繊維上への表面噴霧として用いられる。バインダー樹脂が熱及び圧力下で硬化するにつれて、板材にその構造特性が与えられる。同時に、表面噴霧樹脂が硬化して、硬質保護被覆によって表面が封止される。以下の参考文献:Carleton Ellisによる"The Chemistry of Synthetic Resins", Reinhold Publishing Co., 1935;N.J.L. Megsonによる"Phenolic Resin Chemistry", Academic Press Inc., New York, 1958;C.P. Valeによる"Aminoplasts", Cleaver-Hume Press, Ltd., London, England;及び英国特許第480,316号;において、用いる熱硬化性樹脂を製造する方法が開示されている。
【0006】
しばしば、処理工程中に板材の表面中に木目模様を形成する。しかしながら、メラミン−尿素−ホルムアルデヒドのような表面噴霧を含む最終板材の表面中に木目模様又は他のパターンをエンボス加工することが望ましい場合がある。Bookの米国特許第4,266,925号(参照として本明細書に包含する)を参照。エンボス加工プロセスは、板材の表面に熱及び圧力を加えることを含むが、これにより、硬質で脆性のメラミン−尿素−ホルムアルデヒド被覆が破壊される。得られる表面は許容できず、このためにセルロールパネルが弱体化し、表面が湿度に対して脆弱になる。水抽出性リグニンが破片を通して表面に移動し、これによって表面の変色及び黄化が引き起こされる。
【0007】
産業界においては、これらの樹脂のホルムアルデヒド放出の有害な影響が注目され始めており、低ホルムアルデヒド放出性に関する標準規格がますます厳しくなり始めている。したがって、高い強度特性及び製造効率を維持しながら低ホルムアルデヒド放出性を有する板材を提供することが課題である。上記に記載のアミノ(プラスト)樹脂と異なってフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を用いると、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂よりも低いホルムアルデヒド放出性の製品を形成する有利性を有するが、製造効率の低下を伴う。低い特性を克服するために、天然成分のような材料を用いて樹脂の特性を変性することが公知の手法である。例えば、表面噴霧被覆の脆性は当該技術における幾つかの関心事である。熱硬化性樹脂の脆性を低下させる試みにおいて、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、及びメラミン−尿素−ホルムアルデヒドポリマーを、グリコール、糖類、及び種々のラテックスによって変性することが当該技術において公知である。幾つかの試みは成功しているが、変性物質を用いることを伴っており、これは、表面被覆からエンボス加工温度において揮発するか、或いは他の機構で移動して、プレスの表面又はエンボス加工ダイの表面上に未硬化の低分子量残留物を残留させる可能性がある。この堆積によって、非生産的な洗浄のためのメンテナンス時間が頻繁になる。この情報に基づいて、天然成分を加えることによってフェノールホルムアルデヒド樹脂を変性することは、物理的及び/又は化学的特性(例えば粘度又は緩衝能)を、元の組成物と比較して、変性した組成物の潜在的用途を限定するような程度まで大きく不利に変化させる可能性もあると考えられている。
【0008】
US−2003/0148084号では、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、又はフェノールホルムアルデヒド組成物中において天然成分を用いることに関係する問題点の幾つかを、加水分解大豆タンパク質を用いて克服することが試みられている。また、EP−1318000号においては、小麦及びトウモロコシ誘導タンパク質組成物とフェノールホルムアルデヒド樹脂を共縮合することによって、フェノールホルムアルデヒド組成物中で天然成分を用いることを提案している。しかしながら、これらの参考文献は、接着剤バインダーとして組成物を使用することを教示するのに限定されており、表面噴霧として樹脂組成物を用いることは教示も示唆もしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,241,133号
【特許文献2】米国特許第3,164,511号
【特許文献3】米国特許第3,391,233号
【特許文献4】米国特許第3,940,230号
【特許文献5】英国特許第480,316号
【特許文献6】米国特許第4,266,925号
【特許文献7】US−2003/0148084号
【特許文献8】EP−1318000号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Carleton Ellis, "The Chemistry of Synthetic Resins", Reinhold Publishing Co., 1935
【非特許文献2】N.J.L. Megson, "Phenolic Resin Chemistry", Academic Press Inc., New York, 1958
【非特許文献3】C.P. Vale, "Aminoplasts", Cleaver-Hume Press, Ltd., London, England
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、天然成分又はその誘導体を含む樹脂組成物を与えることによって、表面噴霧又は被覆のための公知の樹脂組成物の上記記載の問題点を克服することである。この樹脂組成物は、高固形分、低粘度、及び非常に大きな水希釈性を形成することができる。かかる組成物は、ファイバーボードの製造などの操作において望ましい良好な噴霧可能性及びより明るい色調を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本組成物は、迅速な架橋及び高度の硬化、並びに製造後の低いホルムアルデヒド放出性を与えるようにバランスが取られている。
更に、本発明の組成物は、表面封止剤のために重要で、適用における適切な時点で利用できる有効なホルムアルデヒドスキャベンジャーの有利性を有する、加水分解抵抗性ネットワーク中に高度に迅速架橋させるために利用できる十分な量のホルムアルデヒドを有することによって、良好な反応性を有し、低いホルムアルデヒド放出性の製品を達成する。
【0013】
また、原材料の品揃えが拡大されることで、表面噴霧又は被覆の原材料コストを低下させる点で商業的な有利性を有する可能性があり、既存の原材料市場への依存性を減少させるのを助けることができる。
【0014】
発明の概要:
本発明は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に化学結合している天然成分又はその誘導体(ncPF)を含む樹脂組成物から構成される外表面層を含む木質パネルに関する。また本発明は、低ホルムアルデヒド放出性木質パネルを形成する方法にも関する。
【0015】
本発明の更なる適用範囲は、以下に与える詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、発明の精神及び範囲内での種々の変更及び修正はこの詳細な説明から当業者には明らかとなるので、詳細な説明及び特定の実施例は、発明の好ましい態様を示しているが、例示のみの目的で与えられることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明:
低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物:
本発明の一態様は、複合ボードのような木質パネルの外表面層として用いられ、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に直接又は間接的に化学結合(即ち、イオン結合、ファンデルワールス力による結合、及び/又は共有結合、好ましくは共有結合)するように縮合した天然成分又はその誘導体(以下、「ncPF」と称する)を含む低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物である。
【0017】
「天然成分又はその誘導体」という句は、本明細書においては、タンパク質、及び場合によってはリグニン、有機酸、脂肪酸、及びポリオール(例えば、炭水化物、スターチ、及び糖類)の少なくとも1つを含む組成物を特定する単一の総称として用いる。天然成分又はその誘導体は、植物性、動物性、又は微生物由来のものであってよい。
【0018】
天然成分又はその誘導体は、抽出工程、及び/又は結合分解反応(例えば加水分解)を行う工程において植物又は動物の天然タンパク質試料中の総分子量を減少させて総材料の粘度を減少させ、それによって水性タンパク質を有する天然成分又はその誘導体を形成するプロセスで形成することが好ましい。本明細書においては、「水性」タンパク質という用語は、(i)水溶性タンパク質;(ii)微酸性(例えば約4〜6.9のpH)の媒体中に可溶のタンパク質;及び(iii)塩に可溶のタンパク質;の少なくとも1つから構成される1種類又は複数のタンパク質を指す。好ましくは、水性タンパク質は、(i)水溶性タンパク質;(ii)微酸性(例えば約4〜6.9のpH)の媒体中に可溶のタンパク質;及び(iii)塩に可溶のタンパク質;の全てから構成される。天然成分又はその誘導体は、エタノール中に可溶であるが、水、微酸性の媒体、及び塩水媒体中では実質的に可溶でないタンパク質を実質的に含まない(即ち、天然成分又はその誘導体の重量を基準として1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の微量を含んでいてもよい)。グリアジンは、微酸性条件下で可溶のグルテニンと一緒にグルテンを形成するエタノール可溶タンパク質である。
【0019】
天然成分又はその誘導体は、トウモロコシの湿式粉砕として知られている方法に類似の方法で得ることができる。トウモロコシの湿式粉砕は、トウモロコシ穀粒を、スターチ、タンパク質、繊維、及び油脂のような製品に分離するために用いられている。トウモロコシの湿式粉砕は、(a)トウモロコシの穀粒を軟化させて次の工程を容易にするための浸漬プロセス;(b)精製スターチ、並びに、油脂、繊維、及びタンパク質のような異なる副生成物を得る湿式粉砕プロセス;の2段階プロセスである。一般に、スターチの回収率は90〜96%の間である。スターチの残りは異なる副生成物中に見られる。天然成分又はその誘導体として用いることができるのは、この残りの部分である。
【0020】
天然成分又はその誘導体を形成する他の方法は、WO−2005/074704(その全てを参照として本明細書中に包含する)に記載されている。天然成分又はその誘導体が植物性材料から誘導される場合には、抽出手順及び/又は結合分解反応を行った後に、材料中に、タンパク質、並びに炭水化物、リグニン、有機酸、脂肪酸、及び糖類の少なくとも1つが残留する可能性がある。この最終組成物(「天然成分又はその誘導体」)は、天然成分がそれから得られる植物種のタイプ、及び抽出法によって変化する。天然成分が植物性材料から誘導される場合には、抽出手順及び/又は結合分解反応を行った後に、材料中に、タンパク質、並びに炭水化物、有機酸、脂肪酸、及び糖類の少なくとも1つが残留する可能性がある。
【0021】
最も好ましい態様においては、天然成分又はその誘導体は、水抽出及び場合によっては粉砕/摩砕によって植物源から単離されるタンパク質材料である。好ましくは、単離物は、ペプチド結合を加水分解し、それによってタンパク質の主構造に影響を与える相当量の化学物質(例えばアルカリ)には曝露しないが、単離物は、タンパク質の二次構造及び三次構造に影響を与える程度まで、化学的又は機械的に変性することができる。抽出プロセスにおいては、単離物の形成において、(機械的手段によって分解されたペプチド結合の割合にかかわらず)ペプチド結合の10%未満が化学的に分解される。好ましくは、単離物の形成において、(機械的手段によって分解されたペプチド結合の割合にかかわらず)ペプチド結合の3%未満、より好ましくは0.1%未満が化学的に分解される。例えば、小麦を誘導体化する方法は、水(純水、塩水、又は微酸性水)中で成分を溶解度に基づいて分離して、グルテン中の高分子量タンパク質(例えばグリアジン及び場合によってはグルテニン)並びに高分子量炭水化物(不溶部分)を、アルブミンのようなより低分子量のタンパク質及び低分子量の炭水化物(可溶部分)から分離する工程を含む。
【0022】
この天然成分又はその誘導体は、重量が安定するまでオーブン内で揮発分を加熱除去し、加熱前の試料の重量パーセントとして最終組成物の重量を計算することによって測定して、40〜60重量%、好ましくは44〜56重量%の固形分濃度を有する。天然成分又はその誘導体の粘度は、100〜3000mPas、好ましくは100〜300mPasである。本発明の好ましい態様においては、粘度は300mPas未満である。本発明において用いる粘度測定値は、1000s−1の剪断速度及び25℃の温度でスピンドルPP50を用いて回転粘度計(Physica MCR301)によって測定する。天然成分又はその誘導体中のタンパク質の量は、固形分の全重量を基準として、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは5〜20重量%の固形分であり、炭水化物の量は、固形分の全重量を基準として、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜55重量%である。天然成分のpHは、<7、好ましくは6未満、より好ましくは4.5未満である。
【0023】
好ましくは、天然成分又はその誘導体は、小麦、トウモロコシ、菜種(キャノーラ)、大豆、コメ等からなる群から選択される少なくとも1つから形成する。より好ましくは、天然成分又はその誘導体は、小麦及び/又はトウモロコシから形成する。最も好ましくは、天然成分又はその誘導体は大豆又はカゼインからは形成しない。
【0024】
芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂成分としては、例えばフェノール−アルデヒド樹脂、レゾルシノール−アルデヒド樹脂などのような硬化性アルデヒド縮合樹脂が挙げられる。これらの縮合タイプの樹脂を製造するのに用いることのできる芳香族ヒドロキシル化合物(本明細書において、時には記号「P」を用いて示す)は、フェノール、並びに、アミノフェノール、オルト、メタ、及びパラクレゾール、クレシル酸、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、キノール(ヒドロキノン)、ピロガロール(焦性没食子酸)、フロログルシノール、又はこれらの組み合わせなどをはじめとする種々の変性フェノールを含む。好ましくは、芳香族ヒドロキシル化合物は、レゾルシノール、ヒドロキノン、フェノール、又はビスフェノールAである。より好ましくは、芳香族ヒドロキシル化合物はフェノールである。これらの化合物又はこれらの組み合わせは、種々のアルデヒド化合物(本明細書において、時には記号「F」を用いて示す)、1つの種類としては脂肪族又は脂環式又は芳香族或いは混合形態の好ましくは1〜約10個の炭素原子を有するものと反応させて、本発明において有用な縮合タイプの樹脂を製造することができる。かかるアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフルアルデヒドなどが挙げられる。現時点ではホルムアルデヒドが好ましい。
【0025】
一態様においては、天然成分又はその誘導体は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂の骨格に直接又は間接的に化学結合(即ち、イオン結合、ファンデルワールス力による結合、及び/又は共有結合、好ましくは共有結合)している(ncPF)。更に、天然成分又はその誘導体は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂中におけるポリマー間の架橋剤として作用させることができる。好ましくは、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド成分の骨格に直接又は間接的に結合しているものは、天然成分又はその誘導体中のタンパク質である。
【0026】
ncPFの粘度は、20〜3500mPas、好ましくは20〜3000mPasである。ncPF中の固形分の量は、41〜80%、好ましくは45〜60%である。ncPFのモル比は、1.0:0.1P/F〜1.0:4.0P/Fである。ncPF中の天然成分又はその誘導体の量は、ncPF樹脂の全重量を基準として、1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%である。
【0027】
本発明の一態様においては、樹脂組成物中の(芳香族ヒドロキシル化合物の)ヒドロキシル基とアルデヒドとのモル比は1:0.1〜1:400である。好ましくは、このモル比は1:0.9〜1:80である。
【0028】
本発明の樹脂組成物には、添加剤、増量剤、硬化剤(例えば硝酸アンモニウムのようなアンモニウム塩)、軟化剤、ポリウレタン(例えばMDI)、他のホルムアルデヒド樹脂(例えば、尿素ホルムアルデヒド、メラミン(尿素)ホルムアルデヒド)等のような当該技術において通常用いられる成分を含ませることができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、濃縮形態で保管して、その後、外面被覆又は表面噴霧として木材に適用する前に希釈することができる。これは、保管コストの低減を考慮すると有利である。組成物の粘度は少なくとも10mPas(保管用)である。好ましくは、粘度は10〜3500mPasである。好ましくは、固形分の濃度は、樹脂組成物の重量を基準として75%以下である。より好ましくは、濃度は5〜70%である。これに対して、希釈組成物の粘度は1〜3500mPas(適用時)である。好ましくは、この粘度は1〜700mPasである。より好ましくは、1〜500mPasである。
【0030】
低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を形成する方法:
木質パネルの外表面層用の樹脂組成物は、種々の方法で製造することができる。例えば、樹脂組成物は、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、及びアルデヒド化合物を、任意の順番で、水性媒体(即ち、全ての成分が必ずしも溶解しない水溶液)中において、成分を共縮合させるのに十分な条件下で化合させることを含むプロセスで製造する。
【0031】
天然成分又はその誘導体、及びその製造方法の説明は、「低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物」と題した上記の節において与える。
一態様においては、本方法は、水性媒体中において、少なくとも200g/モル、好ましくは12,000g/モル以下、より好ましくは200〜12,000g/モルの重量平均分子量を有するPF樹脂を形成する第1の工程;続いて、水性媒体に天然成分又はその誘導体を加えて、それによって天然成分又はその誘導体を芳香族ヒドロキシル−アルデヒド樹脂と縮合させる第2の工程;によってncPF樹脂を形成する工程を含む。
【0032】
好ましい態様においては、縮合工程の前に、天然成分又はその誘導体及び芳香族ヒドロキシル化合物の少なくとも1つをメチロール化する。
芳香族ヒドロキシル化合物とアルデヒド化合物を縮合する工程は、好ましくは、中性〜アルカリ性条件下、即ち7〜13のpHにおいて水性媒体中で行う。必要な場合には、有機及び/又は無機塩基を用いてpHを制御することができる。
【0033】
本発明方法においては、塩基は、量(触媒量で存在すること以外には)又はタイプにおいて特に限定されないが、好ましくは、エタノールアミン類(例えばジメチルエタノールアミン又はジエタノールアミン)のような含窒素塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、スズ化合物(ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、及びジブチルスズジアセテート)などからなる群から選択される。含窒素塩基は、より少ない灰分を与え、生成物を希釈せず(アルカリは1N以下の濃度で用いなければならない)、総最終生成物がより良好な機械特性を有するので、含窒素塩基を用いることが特に好ましい。
【0034】
1種類又は複数の更なる溶媒が反応物質と反応しない限りにおいて、1種類又は複数の更なる溶媒を水性媒体に加えて反応物質の溶解を助けることができる。
本発明の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む木材製品及びそれを形成する方法:
ncPFを含む樹脂組成物は、複合ボード、即ちパーティクルボード、ファイバーボード、MDF、及び配向性ストランドボードなどの木質パネルのための外表面層において用いる。
【0035】
特定の製造法においては、まず、外面木材含有層を形成するのに用いるマットを製造する。このマットは、木材粒子、フレーク、又は繊維の層(バインダーを用いるか又は用いない)であり、熱を加えずに一緒に予備プレス(即ち、製品をその最終密度にプレスする最終熱プレスの前)される。ncPFを含む樹脂組成物は、マットを最終熱プレスにおいて固化させる前の任意の段階においてプレスにかけることができる。一態様においては、ncPFを含む樹脂組成物は、プレスの前にマットの表面に適用することができ、マットの1面又は両面に適用することができる。ncPFを含む樹脂組成物は、任意の方法でマットの表面に適用することができる。好適な方法としては、噴霧、湿式被覆、浸漬、ローラーの使用などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
ncPFを含む樹脂組成物は、マットの形成から最終熱プレスでマットを固化させるまでの任意の段階において基材及び/又は樹脂加工基材に適用することができる。必要な場合には、ncPFを含む樹脂組成物を、被覆又は表面噴霧用途に適当な濃度に希釈する。ncPFを含む本発明の樹脂組成物は、ncPF樹脂の乾燥固形分重量を基準として1〜50%、好ましくは1〜35%、より好ましくは1〜25%の乾燥重量の濃度で、マットに外側被覆又は表面噴霧として加える。
【0037】
本発明の木質パネルは、ncPF、及び場合によっては木材粒子、フレーク、又は繊維を含む本発明の樹脂組成物を含む外表面層を含む。好ましくは、木質パネルは、ncPFを含まないコア内の少なくとも1つの層を有する。好ましくは、ncPFを含まない木質パネルのコア内の少なくとも1つの層は、木質パネルの全体積の少なくとも30体積%を構成する。より好ましくは、ncPFを含まないコア内の少なくとも1つの層は、木質パネルの全体積の少なくとも50体積%を構成する。最も好ましくは、ncPFを含まない木質パネルのコア内の少なくとも1つは、木質パネルの全体積の少なくとも80体積%を構成する。好ましくは、外表面層は、外表面から測定して少なくとも0.1mmの厚さで、ncPFを含み他のバインダーを含まないパネルの表面に対して垂直方向の部分を有する。
【0038】
一態様においては、本発明の木質パネルは、外表面層として適用され、2001年3月に発行されたJIS A1460にしたがって0.5mg/L未満、好ましくは0.01〜0.3mg/Lの低いホルムアルデヒド放出性を有し、或いはホルムアルデヒド放出性は、EN 717−1によって測定して0.1mg/mより低い低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含み;
パネルがパーティクルボードである場合には、パーティクルボードは、2003年10月に発行された標準規格EN 312にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
パネルがファイバーボードである場合には、ファイバーボードは、2003年6月に発行された標準規格EN 622−1にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
パネルがMDFである場合には、MDFは、1997年12月に発行された標準規格EN 622−5にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
パネルが配向性ストランドボードである場合には、配向性ストランドボードは、1997年9月に発行された標準規格EN 300にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足する。
【0039】
ncPFを含む本発明の樹脂組成物の外表面層を有することの有利性は、外表面層が、木質パネルのコアから表面への成分の移動を減少させる表面封止剤として機能できることである。また、本発明の外表面層はホルムアルデヒド放出性を減少させることができる。本発明の外表面層は、木質パネル上に明るい色の面を形成するので、消費者に満足される。また、これは、アミノ又はフェノール樹脂と比較して例えば塗装のような後処理のために優れた表面でもある。更に、ncPFを含む本発明の樹脂組成物を含む外表面層は、木質パネルに対して更なる難燃性を与えることができる。
【実施例】
【0040】
実施例1(樹脂の調製):
まず、ncPFを調製した。小麦の水性誘導体(50%の濃度(固形分含量)、いずれも固形分含量を基準として7.6%の量のタンパク質及び47.3%の量の糖類を有する)を、アルカリ性条件下で、フェノール及びホルムアルデヒドと縮合して、2.8:1.0のF:P比、及び20重量%の小麦誘導体の含量を与えた。
【0041】
実施例2(表面処理する複合ボードにおいて用いるのに好適なアミノ樹脂の説明):
当業者に周知の方法で、約0.43のF:NHのモル比を有し、樹脂液分を基準として約6%のメラミンを含むメラミン尿素ホルムアルデヒド樹脂を調製した。樹脂の粘度は約250〜350mPasであった。濃度(固形分含量)は約66.5〜68.0%であった。樹脂のpHは8〜10の間であった。樹脂は複合ボードの製造のために好適であった。
【0042】
実施例3(表面処理する複合ボードにおいて用いるのに好適なアミノ樹脂の説明):
当業者に周知の方法で、約0.47のF:NHのモル比を有する尿素ホルムアルデヒド樹脂を調製した。樹脂の粘度は約200〜400mPasであった。濃度(固形分含量)は約65〜68%であった。樹脂のpHは9〜11の間であった。樹脂は複合ボードの製造のために好適であった。
【0043】
実施例4(最終ボードからのホルムアルデヒド放出性を減少させるための単一層CBの製造における表面噴霧としてのncPFの適用):
同じ操作条件下で製造した板材を、マットの予備形成の後でプレスの前にマットの両面について表面処理し、最終ボードの特性に対する効果を試験し、非処理板材と比較した。
【0044】
実験用プレス内で、205℃のプレスプラテン温度及び30〜40barの圧力において、14mmで670kg/mの密度の単層複合ボードを製造した。プレス時間は7.5s/mmであった。板材は、当業者に公知の標準的な手順にしたがって実験用プレス内で製造した。表面噴霧の前にマットを予備形成した。実施例2又は3による樹脂を用いて木材繊維を樹脂加工した。樹脂装填量はオーブン乾燥木材を基準として12%であった。オーブン乾燥樹脂を基準として3%の量の硝酸アンモニウム水溶液を加えて、樹脂の硬化速度を加速させた。
【0045】
マットをプレスして複合ボードを形成する前に、予備形成したマットを、マットの両面にncPFを噴霧することによって表面処理した。
【0046】
【表1】

【0047】
上表のデータは、複合ボードにおいてバインダーとして用いる異なるタイプのアミノ樹脂に関して、表面噴霧として少量の本発明のncPF樹脂組成物を加えると、同等のプレス時間で板材のホルムアルデヒド放出性が減少することを示す。
【0048】
実施例5(表面処理する複合ボードにおいて用いるのに好適なメラミンを含むアミノ樹脂の説明):
当業者に周知の方法で、約0.48のF:NHのモル比を有し、樹脂液分を基準として約3.2重量%のメラミンを含むメラミン尿素ホルムアルデヒド樹脂を調製した。樹脂の粘度は約180〜220mPasであった。濃度(固形分含量)は約66%であった。樹脂のpHは8〜10の間であった。樹脂は複合ボードの製造のために好適であった。
【0049】
実施例6(最終ボードからのホルムアルデヒド放出性を減少させるための単一層CBの製造における表面噴霧としてのncPFの適用):
同じ操作条件下で製造した板材を、マットの予備形成の後でプレスの前にマットの両面について表面処理し、最終ボードの特性に対する効果を試験し、非処理板材と比較した。
【0050】
実験用プレス内で、205℃のプレスプラテン温度において、12mmで640kg/mの密度の単層複合ボードを製造した。プレス時間は7.5s/mmであった。板材は、当業者に公知の標準的な手順にしたがって実験用プレス内で製造した。表面噴霧の前にマットを予備形成した。実施例5による樹脂を用いて木材繊維を樹脂加工した。樹脂装填量はオーブン乾燥木材を基準として12%であった。オーブン乾燥樹脂を基準として3%の量の硝酸アンモニウム水溶液を加えて、樹脂の硬化速度を加速させた。
【0051】
マットをプレスして複合ボードを形成する前に、予備形成したマットを、マットの両面にncPFを噴霧することによって表面処理し、この複合ボードを、ncPFによる表面処理を行わないで製造した同様の板材と比較した。
【0052】
【表2】

【0053】
上表のデータは、表面噴霧としてのメラミン樹脂組成物中に含ませた少量の本発明のncPF樹脂組成物を加えると、同等のプレス時間で板材のホルムアルデヒド放出性が減少することを示す。
【0054】
上記で本発明を説明したが、これを多くの方法で変更できることは明らかである。かかる変更は発明の精神及び範囲から逸脱するものとはみなすべきではなく、当業者に明らかな全てのかかる修正は特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質パネルの外表面に、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及び天然成分又はその誘導体の共縮合生成物(ncPF)を含む樹脂組成物を適用することを含み、天然成分又はその誘導体が芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に直接又は間接的に化学結合している、低ホルムアルデヒド放出性木質パネルを形成する方法。
【請求項2】
樹脂組成物を噴霧として木質パネルの外表面に適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
木材粒子、フレーク、及び/又は繊維を、熱を加えずにプレスしてマットを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
熱を加えずにプレスする前に、木材粒子、フレーク、及び/又は繊維にバインダーを適用することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ncPFを含む樹脂組成物をマットの表面に適用し、熱を加えてマットをプレスすることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ncPFを含む樹脂組成物を、マット中の樹脂固形分含量に対するncPFの固形分を基準として1〜25重量%の濃度でマットに加える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水抽出及び場合によっては粉砕/摩砕を用いる植物源からの単離によって、水性単離物として天然成分又はその誘導体を得て;
芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び水性単離物を任意の順番で縮合してncPFを形成する;
工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
天然成分又はその誘導体が、大豆、小麦、トウモロコシ、菜種、及びコメからなる群から選択される少なくとも1つから形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
天然成分又はその誘導体が小麦及び/又はトウモロコシから形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂が、フェノール−アルデヒド樹脂及びレゾルシノール−アルデヒド樹脂の少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に直接又は間接的に化学結合している天然成分又はその誘導体(ncPF)を含む樹脂組成物から構成される外表面層を含む木質パネル。
【請求項12】
2001年3月のJIS A1460にしたがって0.01〜0.3mg/Lの低いホルムアルデヒド放出性を有する、請求項11に記載の木質パネル。
【請求項13】
2001年3月のJIS A1460にしたがって0.01〜0.5mg/Lの低いホルムアルデヒド放出性を有する、請求項11に記載の木質パネル。
【請求項14】
EN 717−7にしたがって0.1mg/m以下の低いホルムアルデヒド放出性を有する、請求項11に記載の木質パネル。
【請求項15】
ncPFを含まない木質パネルのコア内の少なくとも1つの層を含む、請求項11に記載の木質パネル。
【請求項16】
ncPFを含まない木質パネルのコア内の少なくとも1つの層が、木質パネルの全体積の少なくとも30体積%を構成する、請求項15に記載の木質パネル。
【請求項17】
外表面層が、外表面から測定して少なくとも0.1mmの厚さであり、ncPFを含み他のバインダーを含まないパネルの表面に対して垂直方向の部分を有する、請求項11に記載の木質パネル。

【公表番号】特表2010−502474(P2010−502474A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526191(P2009−526191)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002501
【国際公開番号】WO2008/026052
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509056629)
【Fターム(参考)】