説明

多波長半導体レーザ素子

【課題】端面劣化の発生を抑制しつつ、波長変化に対する反射率の変動量を小さくし、それぞれの波長素子におけるモニター電流の温度変化を抑制することの可能な多波長半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】端面発光型の2波長半導体レーザ素子1の後端面に後端面膜40が設けられている。後端面膜40は、屈折率がn1の低屈折率層と屈折率がn3(n1<n3)の高屈折率層の組み合わせを1組とする層がN組(N≧2)積層された層と、屈折率がn2(n1<n2<n3)の中間屈折率層とを後端面側から順に含んでいる。低屈折率層、高屈折率層および中間屈折率層の光学膜厚は、後端面に下地層が設けられていない場合には、λ1とλ2の間の波長をλ3としたときに、λ3/4となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、モノリシック構造の多波長半導体レーザ素子に係り、特に高反射率側の反射膜が改良された多波長半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体レーザ素子(LD;laser diode)の分野では、同一基板上に、発光波長が異なる複数の発光部がモノリシックに形成された多波長レーザ素子の開発が活発に行われている。この多波長レーザ素子は、例えば光ディスク装置の光源として用いられる。
【0003】
このような光ディスク装置では、790nm帯のレーザ光がCD(Compact Disk)の再生に用いられると共に、CD−R(CD Recordable),CD−RW(CD Rewritable)あるいはMD(Mini Disk)などの記録可能な光ディスクの記録・再生に用いられる。また、650nm帯のレーザ光がDVD(Digital Versatile Disk)の記録・再生に用いられている。多波長レーザ素子を光ディスク装置に搭載することにより、既存の複数種類の光ディスクのいずれに関しても、記録または再生が可能となる。このように多波長化することにより,より用途を拡げることが可能となる。
【0004】
モノリシック構造の多波長レーザ素子では、一般に、単波長レーザ素子と同様、レーザ素子の前端面にそれぞれのレーザ光の波長に適合させた低反射膜が前端面全体に一括に形成され、レーザ素子の後端面にそれぞれのレーザ光の波長に適合させた高反射膜が後端面全体に一括に形成されている。このとき、高反射膜は、高反射率を得るために、一般に、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層させた多層構造を有しており、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が大きくなる材料の組み合わせにより構成されている(特許文献1、2参照)。
【0005】
通常、光ディスクの再生に用いられる多波長レーザ素子では、前端面から出射される光出力を調整するため、後端面からの出射光をフォトダイオードによって電流に変換しモニターしている。このモニター電流は、後端面の反射率に大きく依存する。一方で、レーザ素子は温度変化に伴って、波長が変動するため、この後端面側の反射率の波長に対する変動量が大きければ大きいほど、素子の温度変化に対するモニター電流の変化が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、従来から、波長変化に対する高反射膜の反射率の変動量をできるだけ小さくするために、高反射膜の材料として、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が大きくなる材料が用いられてきた。例えば、低屈折率層の材料としてAl23(屈折率1.64)が用いられ、高屈折率層の材料としてSi(屈折率3.3)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−16799号公報
【特許文献2】特開2010−171182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、Siのような屈折率が3.0を超える材料では、発振波長650nmにおける光吸収が大きく、膜損傷が発生する。そのため、CODやESDなどの端面劣化が生じ易いという問題があった。そこで、Siの代わりに、光吸収の少ないTa25(屈折率2.1)を用いることが考えられる。しかし、そのようにした場合には、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が高屈折率層にSiを用いたときほど大きくならないので、高反射膜の反射率の波長変化に対する変動量が大きくなってしまう。その結果、レーザ素子の温度変化に伴うモニター電流の変動が大きくなるという問題があった。
【0009】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、端面劣化の発生を抑制しつつ、波長変化に対する反射率の変動量を小さくし、それぞれの波長素子におけるモニター電流の温度変化を抑制することの可能な多波長半導体レーザ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術による第1の多波長半導体レーザ素子は、基板上にモノリシックに形成された第1素子部および第2素子部と、第1素子部および第2素子部のそれぞれの後端面に一括形成された後端面膜とを備えたものである。第1素子部は、発振波長がλ1の発光素子部であり、第2素子部は、発振波長がλ2(λ1<λ2)の発光素子部である。後端面膜は、屈折率がn1の低屈折率層と屈折率がn3(n1<n3)の高屈折率層の組み合わせを1組とする層がN組(N≧2)積層された層と、屈折率がn2(n1<n2<n3)の中間屈折率層とを後端面側から順に含んだものである。後端面膜は、Si膜とは異なる膜で構成されている。低屈折率層、高屈折率層および中間屈折率層の光学膜厚は、λ1とλ2の間の波長をλ3としたときに、λ3/4となっている。
【0011】
本技術による第1の多波長半導体レーザ素子では、後端面に低屈折率層と高屈折率層が交互に積層された層の表面に、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率の間の屈折率を有する中間屈折率層が形成されている。さらに、これらの光学膜厚がλ3/4となっている。これにより、λ1およびλ2を含む波長帯での後端面膜の波長に対する反射率の関係をより平坦化することができる。
【0012】
本技術による第1の多波長半導体レーザ素子において、屈折率n1が、1.4以上1.5未満の値となっており、屈折率n2が、1.5以上1.7以下の値となっており、かつ屈折率n3が、2.0以上2.5以下の値となっていることが要求される。例えば、低屈折率層の材料としては、SiO2等が挙げられる。高屈折率層の材料としては、Ta25、TiO2、ZnO、HfO2、CeO2またはNb2O等が挙げられる。中間屈折率層の材料としては、Al23またはMgO等が挙げられる。
【0013】
本技術による第1の多波長半導体レーザ素子において、低屈折率層が、SiO2層と、Al23層またはMgO層とが合算された層となっており、かつ合算された層の光学膜厚がλ3/4なっていてもよい。また、本技術の第1の多波長半導体レーザ素子において、低屈折率層が、Al23層またはMgO層と、Ta25層、TiO2層、ZnO層、HfO2層、CeO2層またはNb2O層とが合算された層となっており、かつ合算された層の光学膜厚がλ3/4なっていてもよい。
【0014】
本技術による第2の多波長半導体レーザ素子は、基板上にモノリシックに形成された第1素子部および第2素子部と、第1素子部および第2素子部のそれぞれの後端面に一括形成された後端面膜とを備えたものである。第1素子部は、発振波長がλ1の発光素子部であり、第2素子部は、発振波長がλ2(λ1<λ2)の発光素子部である。後端面膜は、屈折率がn1の第1低屈折率層と屈折率がn3(n1<n3)の高屈折率層の組み合わせを1組とする層がN組(N≧2)積層された層と、屈折率がn1の第2低屈折率層とを後端面側から順に含んだものである。後端面膜は、Si膜とは異なる膜で構成されている。第1低屈折率層、高屈折率層および第2低屈折率層の光学膜厚は、λ1とλ2の間の波長をλ3としたときに、λ3/4となっている。
【0015】
本技術による第2多波長半導体レーザ素子では、後端面に第1低屈折率層と高屈折率層が交互に積層された層の表面に、第1低屈折率層の屈折率と同じ屈折率を有する第2低屈折率層が形成されている。さらに、これらの光学膜厚がλ3/4となっている。これにより、λ1およびλ2を含む波長帯での後端面膜の波長に対する反射率の関係をより平坦化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本技術による第1および第2の多波長半導体レーザ素子によれば、λ1およびλ2を含む波長帯での後端面膜の反射率が波長に対しより平坦な特性となるようにしたので、波長変動に対する反射率変動を軽減でき、後端面からの出射光をモニターするモニター電流の温度変化を抑制することができる。さらに、本技術では、後端面膜はSi膜を含んでいないので、Si膜に起因する端面劣化は発生しない。以上のことから、本技術では、端面劣化の発生を抑制しつつ、素子の温度変化に伴うモニター電流変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本技術による一実施の形態に係る2波長半導体レーザ素子の構成の一例を表す上面図および断面図である。
【図2】図1の後端面膜の内部構成の一例を表す図である。
【図3】比較例に係る後端面膜を備えたレーザ素子の後端面側の反射率分布の一例を表す図である。
【図4】比較例に係る後端面膜を備えたレーザ素子の後端面側の反射率分布の他の例を表す図である。
【図5】比較例に係る後端面膜の構成の一例を表す図である。
【図6】図5の後端面膜を備えたレーザ素子の後端面側の反射率分布の一例を表す図である。
【図7】図2の後端面膜を備えたレーザ素子の後端面側の反射率分布の一例を表す図である。
【図8】図1の2波長半導体レーザ素子の構成の一変形例を表す上面図である。
【図9】図8の後端面膜の構成の一例を表す図である。
【図10】図8の後端面膜の構成の他の例を表す図である。
【図11】図1の2波長半導体レーザ素子の構成の他の変形例を表す上面図である。
【図12】図11の後端面膜の構成の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態
中間屈折率層が後端面膜の最表面側に設けられている例
2.変形例
低屈折率層が複数層で構成されている例
中間屈折率層が後端面膜の後端面側にも設けられている例
【0019】
<1.実施の形態>
図1(A)は、本技術による一実施の形態に係る2波長半導体レーザ素子1の平面構成を表すものである。図1(B)は、図1(A)の2波長半導体レーザ素子1のA−A矢視方向の断面構成を表すものである。図1(A),(B)は模式的に表したものであり、実際の寸法,形状とは異なっている。なお、2波長半導体レーザ素子1は、特許請求の範囲の「多波長半導体レーザ素子」の一具体例に相当する。
【0020】
この2波長半導体レーザ素子1は、基板10上にモノリシックに形成された第1素子部20Aおよび第2素子部20Bを備えている。
【0021】
(第1素子部20A)
第1素子部20Aは、発振波長がλAの半導体レーザ素子である。λAは、具体的には、650nm帯の波長である。第1素子部20Aは、アルミニウム・ガリウム・インジウム・リン(AlGaInP)系III−V族化合物半導体により構成されている。ここでいうアルミニウム・ガリウム・インジウム・リン系III−V族化合物半導体とは、短周期型周期表における3B族元素のうちの少なくともアルミニウム(Al),ガリウム(Ga)およびインジウム(In)と、短周期型周期表における5B族元素のうちの少なくともリン(P)とを含むものを指す。
【0022】
この第1素子部20Aは、基板10上に半導体層21Aを成長させたものである。この半導体層21A内には、n型クラッド層、活性層22A、p型クラッド層およびp側コンタクト層が含まれる。なお、活性層22A以外の層は特に図示していない。
【0023】
具体的には、基板10は、例えば、n型GaAsにより構成されている。n型クラッド層は、例えば、n型AlGaInPにより構成されている。活性層22Aは、例えば、井戸層とバリア層とを交互に積層してなる多重量子井戸構造を有する。井戸層およびバリア層は、それぞれ、例えば、組成比の互いに異なるAlxGayIn1-x-yP(但し、x≧0かつy≧0)により構成されている。p型クラッド層は、例えば、p型AlGaInPにより構成されている。p側コンタクト層は、例えば、p型GaAsにより構成されている。p型クラッド層の一部およびp側コンタクト層は、共振器方向に延在するストライプ状のリッジ部23Aとなっており、これにより電流狭窄がなされるようになっている。なお、活性層22Aのうちリッジ部23Aの直下に対応する領域が発光領域24Aとなっている。
【0024】
リッジ部23Aの側面からp型クラッド層の表面までの連続した表面上には、絶縁層25が設けられている。絶縁層25は、例えば、SiO2、ZrOxまたはSiNなどの絶縁材料により構成され、第1素子部20Aの半導体層21Aと、第2素子部20Bの半導体層21B(後述)とを電気的に絶縁すると共に、リッジ部23Aおよびリッジ部23B(後述)の上面からしか電流が活性層22Aへ流れ込めないようになっている。したがって、絶縁層25は、素子分離機能と電流狭窄機能を有する。
【0025】
リッジ部23Aの上面(p側コンタクト層の表面)から絶縁層25の表面までの連続した表面上には上部電極26Aが設けられており、p側コンタクト層と電気的に接続されている。一方、基板10の裏面には下部電極27が設けられており、基板10と電気的に接続されている。
【0026】
上部電極26Aは、配線(図示せず)と電気的に接続されており、その配線を介して正側電源(図示せず)に接続されている。下部電極27は、配線(図示せず)と電気的に接続されており、その配線を介して負側電源(図示せず)に接続されている。ここで、上部電極26Aおよび下部電極27は、例えば、チタン(Ti)、白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層してなる多層構造を有する。上部電極26Aおよび下部電極27に接続された配線は、例えば、Auにより構成されている。
【0027】
(第2素子部20B)
第2素子部20Bは、発振波長がλB(λA<λB)の半導体レーザ素子である。λBは、具体的には、790nm帯の波長である。第2素子部20Bは、ガリウム・ヒ素(GaAs)系III−V族化合物半導体により構成されている。ここでいうガリウム・ヒ素系III−V族化合物半導体とは、短周期型周期表における3B族元素のうちの少なくともガリウム(Ga)と、短周期型周期表における5B族元素のうちの少なくともヒ素(As)とを含むものを指す。
【0028】
この第2素子部20Bは、第1の発光素子20Aと同様、基板10上に半導体層21Bを成長させたものである。この半導体層21Bは、n型クラッド層,活性層22B,p型クラッド層およびp側コンタクト層を含んで構成されている。なお、活性層22B以外の層は特に図示していない。
【0029】
具体的には、n型クラッド層は、例えば、n型AlGaAsにより構成されている。活性層22Bは、例えば、井戸層とバリア層とを交互に積層してなる多重量子井戸構造を有する。井戸層およびバリア層は、それぞれ、例えば、互いに組成の異なるAlx Ga1−x As(但し、x≧0)により構成されている。p型クラッド層は、例えば、p型AlGaAsにより構成されている。p側コンタクト層は、例えば、p型GaAsにより構成されている。p型クラッド層の一部およびp側コンタクト層は、共振器方向に延在するストライプ状のリッジ部23Bを有しており、これにより電流狭窄がなされるようになっている。なお、活性層22Bのうちリッジ部23Bに対応する領域が発光領域24Bとなっている。
【0030】
リッジ部23Bの側面からp型クラッド層の表面までの連続した表面(以下、表面Bとする。)上には、上記した絶縁層25が設けられている。
【0031】
リッジ部23Bの上面(p側コンタクト層の表面)から絶縁層25の表面までの連続した表面上には上部電極26Bが設けられており、p側コンタクト層と電気的に接続されている。一方、基板10の裏面には上記した下部電極27が設けられており、基板10と電気的に接続されている。
【0032】
上部電極26Bは、配線(図示せず)を介して正側電源(図示せず)に接続されている。ここで、上部電極26Bは、例えば、Ti、PtおよびAuをこの順に積層して構成されている。配線層28Bは、例えば、Auにより構成されている。
【0033】
(前端面膜、後端面膜)
2波長半導体レーザ素子1は、さらに、図1(A)に示したように、第1素子部20Aおよび第2素子部20Bの延在方向(共振器方向)に対して垂直な面(前端面S1および後端面S2)に、一対の前端面膜30および後端面膜40を備える。
【0034】
前端面膜30は、前端面S1全体に一括形成されたものである。前端面膜30は、2波長半導体レーザ素子1の前端面S1の反射率が第1素子部20Aおよび第2素子部20Bから発せられた光の波長帯において例えば35%以下となるように構成されている。前端面膜30は、例えば、前端面S1上に、低屈折率層および高屈折率層を交互に積層して構成されている。
【0035】
一方、後端面膜40は、後端面S2全体に一括形成されたものである。後端面膜40は、2波長半導体レーザ素子1の後端面S2の反射率が第1素子部20Aおよび第2素子部20Bから発せられた光の波長帯において例えば50%以上85%以下となるように構成されている。
【0036】
後端面膜40は、後端面S2に接する下地層41を有する。この後端面膜40は、さらに、下地層41上に、低屈折率層42および高屈折率層43を1組とする層を複数積層して構成された積層膜と、中間屈折率層44とを後端面S2側から順に含んで構成されている。後端面膜40は、シリコン(Si)膜を含んでおらず、Si膜とは異なる膜で構成されている。下地層41は、必要に応じて省略することも可能である。なお、下地層41が省略されている場合、後端面S2に最も近い低屈折率層42が後端面S2に接している。なお、後端面膜40は、中間屈折率層44の上に、保護膜などの何らかの層を有していてもよい。
【0037】
低屈折率層42は、特許請求の範囲の「低屈折率層」の一具体例に相当する。高屈折率層43は、特許請求の範囲の「高屈折率層」の一具体例に相当する。中間屈折率層42は、特許請求の範囲の「中間屈折率層」の一具体例に相当する。
【0038】
下地層41は、後端面S2に対して悪影響を及ぼすことのない安定性の高い材料で構成されており、例えば、Al23で構成されている。下地層41の屈折率は、例えば、低屈折率層42の屈折率と高屈折率層43の屈折率との間の値となっている。下地層41の光学膜厚は、当該下地層41および当該下地層41に接する低屈折率層42の合計の光学膜厚がλC/4となるように調整された厚さとなっている。ここで、λCは、λAよりも大きく、λBよりも小さい波長であり、例えば、(λA+λB)/2である。
【0039】
低屈折率層42、高屈折率層43および中間屈折率層44の屈折率と光学膜厚は以下のようになっている。
(下地層41が省略されている場合)
屈折率 光学膜厚
低屈折率層42: nA λC/4
高屈折率層43: nB λC/4
中間屈折率層44: nC λC/4
λA<λC<λB
A<nC<nB
(下地層41が設けられている場合)
屈折率 光学膜厚
下地層41に接する低屈折率層42: nA (λC/4)−(下地層41の光学膜厚)
下地層41に接しない低屈折率層42: nA λC/4
高屈折率層43: nB λC/4
中間屈折率層44: nC λC/4
【0040】
ここで、屈折率nAは、1.4以上1.5未満の値である。屈折率nBは、2.0以上2.5以下の値である。屈折率nCは、1.5以上1.7以下の値である。低屈折率層42は、SiO2膜(屈折率1.45)である。高屈折率層43は、Ta25膜(屈折率2.1)、TiO2膜、ZnO膜、HfO2膜、CeO2膜またはNb2O膜である。中間屈折率層44は、Al23膜(屈折率1.64)またはMgO膜である。
【0041】
図2は、後端面膜40の構成の一例を表したものである。図2には、2つの構成が例示されているが、いずれの例でも、低屈折率層42および高屈折率層43を1組とする層が3組、積層されている場合が例示されている。図2の上段の例では、下地層41がAl23で構成され、低屈折率層42がSiO2膜で構成され、高屈折率層43がTa25膜で構成され、中間屈折率層44がAl23膜で構成されている。一方、図2の下段の例は、図2の上段の例において下地層41が省略されたものである。図2の下段の例では、低屈折率層42が直接、後端面S2に接している。
【0042】
[製造方法]
このような構成を有する2波長半導体レーザ素子1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0043】
まず、第1素子部20Aのレーザ構造を製造する。そのためには、基板10上の半導体層21Aを、例えば、MOCVD法により形成する。この際、AlGaInP系半導体の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMIn)、ホスフィン (PH3) を用い、ドナー不純物の原料としては、例えばセレン化水素(H2Se)を用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えばジメチル亜鉛(DMZn)を用いる。
【0044】
具体的には、まず、基板10上に、n側コンタクト層、n型クラッド層、活性層22A、p型クラッド層およびp型コンタクト層をこの順に積層して半導体層21Aを形成する。続いて、p側コンタクト層およびp型クラッド層を例えばドライエッチング法により細い帯状の凸部となるようにパターンニングし、リッジ部23Aを形成する。
【0045】
次に、第2素子部20Bのレーザ構造を製造する。そのためには、基板10上の半導体層21Bを、例えば、MOCVD法により形成する。この際、GaAs系半導体の原料としては、例えば、TMA、TMG、TMIn、アルシン (AsH3)を用い、ドナー不純物の原料としては、例えばH2Seを用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えばDMZnを用いる。
【0046】
具体的には、まず、基板10上に、n側コンタクト層、n型クラッド層、活性層22B、p型クラッド層およびp型コンタクト層をこの順に積層して半導体層21Bを形成する。続いて、p側コンタクト層およびp型クラッド層を例えばドライエッチング法により細い帯状の凸部となるようにパターンニングし、リッジ部23Bを形成する。これにより、図1(B)に示したように、基板10上に、第1素子部20Aのレーザ構造と、第2素子部20Bのレーザ構造とが配列される。
【0047】
次に、リッジ部23A,23Bの上面を含む表面上に絶縁材料、例えばSiNを蒸着またはスパッタリングにより形成したのち、絶縁材料のうちリッジ部23A,23Bの上面に対応する領域をエッチングにより除去する。これにより、絶縁層25が形成される。
【0048】
次に、図1(A),(B)に示したように、リッジ部23Aのp側コンタクト層の表面から絶縁層25の表面までの連続した表面上に上部電極26Aを形成する。さらに、リッジ部23Bのp側コンタクト層の表面から絶縁層25の表面までの連続した表面上に上部電極26Bを形成する。また、基板10の裏面に下部電極27を形成する。
【0049】
次に、リッジ部23A,23Bの延在方向と垂直な面でへき開して前端面S1および後端面S2を形成したのち、前端面S1に前端面膜30を一括形成するとともに後端面S2に後端面膜40を一括形成する。このようにして、本実施の形態の2波長半導体レーザ素子1が製造される。
【0050】
[作用、効果]
次に、本実施の形態の2波長半導体レーザ素子1の作用および効果について説明する。
【0051】
本実施の形態の2波長半導体レーザ素子1では、上部電極26A,26Bと下部電極27との間に所定の電圧が印加されると、活性層22A,22Bに電流が注入され、電子−正孔再結合によって発光が生じる。それぞれの活性層22A,22Bで発光した光は、前端面膜30および後端面膜40によって反射されてレーザ発振し、前端面膜30のうち第1素子部20A側から波長650nmのレーザ光が、前端面膜30のうち第2素子部20B側から波長790nmのレーザ光がそれぞれ外部に射出される。このように、第1素子部20Aおよび第2素子部20Bから、互いに異なる波長のレーザ光が出射される。
【0052】
ところで、光ディスクの再生に用いられる多波長レーザ素子では、前端面から出射される光出力を調整するため、後端面からの出射光をフォトダイオードによって電流に変換しモニターしており、このモニター電流は、後端面の反射率に大きく依存する。一方で、レーザ素子は温度変化に伴って、波長が変動するため、この後端面側の反射率の波長に対する変動量が大きければ大きいほど、素子の温度変化に対するモニター電流の変化が大きくなってしまう。
【0053】
そこで、従来から、波長変化に対する高反射膜の反射率の変動量をできるだけ小さくするために、高反射膜の材料として、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が大きくなる材料が用いられてきた。例えば、低屈折率層の材料としてAl23(屈折率1.64)が用いられ、高屈折率層の材料としてSi(屈折率3.3)が用いられている。なお、このときの高反射膜の反射率は、例えば、図3に示したようなプロファイルとなっている。
【0054】
しかし、Siのような屈折率が3.0を超える材料では、発振波長650nmにおける光吸収が大きく、膜損傷が発生する。そのため、CODやESDなどの端面劣化が生じ易い。そこで、Siの代わりに、光吸収の少ないTa25(屈折率2.1)を用い、屈折率差を大きくするためにAl23の代わりに、SiO2を用いることが考えられる。しかし、このようにした場合には、例えば、図4に示したように、高反射膜の反射率の波長変化に対する変動量が図3における変動量よりも大きくなってしまい、レーザ素子の温度変化に伴うモニター電流の変動が大きくなるという問題があった。
【0055】
また、特許文献1,2では、図5に示したように、1層目にAl23を、2層目にTa25を、3層目にSiO2を、4層目にTa25を、5層目にSiO2を、6層目にTa25を、7層目にSiO2を、8層目にTa25を用いることが提案されている。なお、図5の例では、1層目から7層目までの光学膜厚はλ/4となっており、8層目の光学膜厚だけがλ/2となっている。しかし、このようにした場合には、例えば、図6に示したように、高反射膜の反射率の波長変化に対する変動量が依然として大きく、レーザ素子の温度変化に伴うモニター電流の変動が大きくなるという問題があった。
【0056】
一方、本実施の形態では、後端面S2に低屈折率層42と高屈折率層43が交互に積層された層の表面に、低屈折率層42の屈折率nAと高屈折率層43の屈折率nBの間の屈折率nCを有する中間屈折率層44が形成されている。さらに、下地層41が省略されている場合には、これらの光学膜厚がλC/4となっている。また、下地層41が設けられている場合には、下地層41に接しない低屈折率層42と、高屈折率層43と、中間屈折率層44とにおいて、それぞれの光学膜厚がλC/4となっており、下地層41に接する低屈折率層42の光学膜厚が(λC/4)−(下地層41の光学膜厚)となっている。これにより、例えば、図7に示したように、発振波長λA,λBを含む波長帯での後端面膜40の反射率の波長変化を図4、図6の反射率の波長変化よりも平坦化することができる。その結果、レーザ素子の温度変化に伴うモニター電流の変動を低減することができる。さらに、本実施の形態では、後端面膜40はSi膜を含んでいないので、Si膜の光吸収に起因する端面劣化は発生しない。以上のことから、本実施の形態では、端面劣化の発生を抑制しつつ、素子の温度変化に伴うモニター電流変化を抑制することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、後端面膜40は、上記したように後端面S2に一括形成された単一の構成を有するものであり、レーザ光が出射される部位に応じて材料や、膜厚、層構造などが調整された複数の構成を有するものではない。これにより、少ないプロセスステップで後端面膜40を形成することができるので、2波長半導体レーザ素子1を安価に製造することができる。
【0058】
<2.変形例>
(第1変形例)
上記実施の形態では、第1素子部20Aの発振波長λAが650nm帯となっており、第2素子部20Bの発振波長λBが790nm帯となっていたが、第1素子部20Aおよび第2素子部20Bの発振波長λA,λBが上記とは異なる波長帯となっていてもよい。ただし、発振波長λA,λBは、後端面膜40に含まれる各層の光学膜厚λC/4を調整することにより、発振波長λA,λBを含む波長帯での後端面膜40の反射率を平坦化することができる範囲内となっていることが必要である。実際に、出願人は、発振波長λA,λBが300nm以上900nm以下となっていれば、発振波長λA,λBを含む波長帯での後端面膜40の反射率を均一にすることができることを確認している。
【0059】
なお、原理的には、発振波長λA,λBを900nmよりも大きくした場合であっても、λAおよびλBを含む波長帯での後端面膜40の反射率を平坦化することができる。また、後端面膜40に含まれる各層の光学膜厚λC/4が厚くなるにつれて、後端面膜40の反射率が平坦となる波長帯の幅が広くなる。従って、後端面膜40に含まれる各層の光学膜厚λC/4を厚くなるにつれて、発振波長λA,λBの波長差を大きくすることが可能である。
【0060】
(第2変形例)
上記実施の形態では、低屈折率層42が単層で構成されていたが、複数の層で構成されていてもよい。例えば、図8に示したように、低屈折率層42が、屈折率がnAの第1屈折率層42Aと、屈折率がnCの第2屈折率層42Bとを後端面S2側から積層してなる積層体となっていてもよい。下地層41が省略されている場合には、第1屈折率層42Aおよび第2屈折率層42Bの合計の光学膜厚は、λC/4となっている。なお、下地層41が省略されている場合、後端面S2に最も近い第1屈折率層42Aが後端面S2に接している。また、下地層41が設けられている場合には、下地層41に接しない低屈折率層42において、第1屈折率層42Aおよび第2屈折率層42Bの合計の光学膜厚は、λC/4となっており、下地層41に接する低屈折率層42においては、第1屈折率層42Aおよび第2屈折率層42Bの合計の光学膜厚が(λC/4)−(下地層41の光学膜厚)となっている。このとき、第1屈折率層42AがSiO2膜で構成され、第2屈折率層42BがAl23膜またはMgO膜で構成されている。例えば、図9の上段および下段に例示したように、第1屈折率層42AがSiO2膜で構成され、第2屈折率層42BがAl23膜で構成されていてもよい。また、例えば、図10の上段および下段に例示したように、第1屈折率層42AがAl23膜で構成され、第2屈折率層42BがTa25膜で構成されていてもよい。
【0061】
後端面膜40がこのような構成となっている場合であっても、上記実施の形態と同様、発振波長λA,λBを含む波長帯での後端面膜40の反射率の波長変化を図4、図6の反射率の波長変化よりも平坦化することができる。その結果、レーザ素子の温度変化に伴うモニター電流の変動を低減することができる。さらに、本変形例でも、後端面膜40はSi膜を含んでいないので、Si膜の光吸収に起因する端面劣化は発生しない。以上のことから、本変形例でも、端面劣化の発生を抑制しつつ、素子の温度変化に伴うモニター電流変化を抑制することができる。
【0062】
(第3変形例)
上記実施の形態において、例えば、図11に示したように、低屈折率層42の代わりに、中間屈折率層45が設けられていてもよい。この場合には、図11に示したように、下地層41を省略することが可能である。なお、以下の説明では、下地層41が省略されており、後端面S2に最も近い中間屈折率層45が後端面S2に接しているものとする。
【0063】
なお、本変形例において、中間屈折率層45は、特許請求の範囲の「第1低屈折率層」の一具体例に相当する。高屈折率層43は、特許請求の範囲の「高屈折率層」の一具体例に相当する。中間屈折率層42は、特許請求の範囲の「第2低屈折率層」の一具体例に相当する。
【0064】
中間屈折率層45、高屈折率層43および中間屈折率層44の屈折率と光学膜厚は以下のようになっている。
屈折率 光学膜厚
中間屈折率層45: nD λC/4
高屈折率層43: nB λC/4
中間屈折率層44: nC λC/4
D=nC<nB
【0065】
ここで、屈折率nC,nDはともに、互いに同一となっており、かつ1.5以上1.7以下の値である。屈折率nBは、2.0以上2.5以下の値である。中間屈折率層44,45がともに、互いに同一の材料で構成されており、具体的には、Al23膜またはMgO膜である。高屈折率層43は、Ta25膜、TiO2膜、ZnO膜、HfO2膜、CeO2膜またはNb2O膜である。
【0066】
図12は、後端面膜40の構成の一例を表したものである。図11には、中間屈折率層45および高屈折率層43を1組とする層が3組、積層されている場合が例示されている。図12の例では、中間屈折率層44,45がSiO2膜で構成され、高屈折率層43がTa25膜で構成されている。
【0067】
後端面膜40がこのような構成となっている場合であっても、上記実施の形態と同様、発振波長λA,λBを含む波長帯での後端面膜40の反射率の波長変化を図4、図6の反射率の波長変化よりも平坦化することができる。その結果、レーザ素子の温度変化に伴うモニター電流の変動を低減することができる。さらに、本変形例でも、後端面膜40はSi膜を含んでいないので、Si膜の光吸収に起因する端面劣化は発生しない。以上のことから、本変形例でも、端面劣化の発生を抑制しつつ、素子の温度変化に伴うモニター電流変化を抑制することができる。
【0068】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記の実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【0069】
例えば、上記実施の形態および変形例において、p型、n型の導電型が上記の記載とは反対になっていてもよい。また、上記実施の形態および変形例では、本技術を2波長半導体レーザ素子に適用した場合についての説明がなされていたが、3波長以上の半導体レーザ素子に適用することももちろん可能である。
【0070】
また、例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
基板上にモノリシックに形成された第1素子部および第2素子部と、
前記第1素子部および前記第2素子部のそれぞれの後端面に一括形成された後端面膜と
を備え、
前記第1素子部は、発振波長がλ1の発光素子部であり、
前記第2素子部は、発振波長がλ2(λ1<λ2)の発光素子部であり、
前記後端面膜は、屈折率がn1の低屈折率層と屈折率がn3(n1<n3)の高屈折率層の組み合わせを1組とする層がN組(N≧2)積層された層と、屈折率がn2(n1<n2<n3)の中間屈折率層とを後端面側から順に含んでおり、かつSi膜とは異なる膜で構成され、
前記低屈折率層、前記高屈折率層および前記中間屈折率層の光学膜厚は、λ1とλ2の間の波長をλ3としたときに、λ3/4となっている
多波長半導体レーザ素子。
(2)
屈折率n1は、1.4以上1.5未満の値であり、
屈折率n2は、1.5以上1.7以下の値であり、
屈折率n3は、2.0以上2.5以下の値である
(1)に記載の多波長半導体レーザ素子。
(3)
前記低屈折率層は、SiO2層であり、
前記高屈折率層は、Ta25層、TiO2層、ZnO層、HfO2層、CeO2層またはNb2O膜であり、
前記中間屈折率層は、Al23層またはMgO層である
(2)に記載の多波長半導体レーザ素子。
(4)
前記低屈折率層は、SiO2層と、Al23層またはMgO層とが積層されたものであり、
前記高屈折率層は、Ta25層、TiO2層、ZnO層、HfO2層、CeO2層またはNb2O層であり、
前記中間屈折率層は、Al23層またはMgO層である
(2)に記載の多波長半導体レーザ素子。
(5)
前記後端面に最も近い前記低屈折率層は、前記後端面に接している
(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の多波長半導体レーザ素子。
(6)
前記後端面膜は、前記後端面と前記後端面に最も近い低屈折率層との間に、屈折率がn4(n1<n4<n3)の下地層と、屈折率がn1の第2低屈折率層と、屈折率がn3の第2高屈折率層とを前記後端面側から順に含み、
前記第2高屈折率層の光学膜厚は、λ3/4となっており、
前記第2低屈折率層の光学膜厚は、(λ3/4)−(前記下地層の光学膜厚)となっており、
前記下地層の光学膜厚は、当該下地層および前記第2低屈折率層の合計の光学膜厚がλ3/4となるように調整された厚さとなっている
(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の多波長半導体レーザ素子。
(7)
基板上にモノリシックに形成された第1素子部および第2素子部と、
前記第1素子部および前記第2素子部のそれぞれの後端面に一括形成された後端面膜と
を備え、
前記第1素子部は、発振波長がλ1の発光素子部であり、
前記第2素子部は、発振波長がλ2(λ1<λ2)の発光素子部であり、
前記後端面膜は、屈折率がn1の第1低屈折率層と屈折率がn3(n1<n3)の高屈折率層の組み合わせを1組とする層をN組(N≧2)積層させたものと、屈折率がn1の第2低屈折率層とを後端面側から順に含んでおり、かつSi膜とは異なる膜で構成され、
前記第1低屈折率層、前記高屈折率層および前記第2低屈折率層の光学膜厚は、λ1とλ2の間の波長をλ3としたときに、λ3/4となっている
多波長半導体レーザ素子。
(8)
屈折率n1は、1.5以上1.7以下の値であり、
屈折率n3は、2.0以上2.5以下の値であり、
(7)に記載の多波長半導体レーザ素子。
(9)
前記第1低屈折率層および前記第2低屈折率層はともに、Al23層またはMgO層であり、
前記高屈折率層は、Ta25層、TiO2層、ZnO層、HfO2層、CeO2層またはNb2O層である
(8)に記載の多波長半導体レーザ素子。
(10)
前記後端面に最も近い第1低屈折率層は、前記後端面に接している
(7)に記載の多波長半導体レーザ素子。
【符号の説明】
【0071】
1…2波長半導体レーザ素子、10…基板、20A…第1素子部、20B…第2素子部、21A,21B…半導体層、22A,22B……活性層、23A,23B…リッジ部、24A,24B…発光領域、25…絶縁層、26A,26B…上部電極、27…下部電極、30…前端面膜、40…後端面膜、41…下地層、42…低屈折率層、43…高屈折率層、44,45…中間屈折率層、S1…前端面、S2…後端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にモノリシックに形成された第1素子部および第2素子部と、
前記第1素子部および前記第2素子部のそれぞれの後端面に一括形成された後端面膜と
を備え、
前記第1素子部は、発振波長がλ1の発光素子部であり、
前記第2素子部は、発振波長がλ2(λ1<λ2)の発光素子部であり、
前記後端面膜は、屈折率がn1の低屈折率層と屈折率がn3(n1<n3)の高屈折率層の組み合わせを1組とする層がN組(N≧2)積層された層と、屈折率がn2(n1<n2<n3)の中間屈折率層とを後端面側から順に含んでおり、かつSi膜とは異なる膜で構成され、
前記低屈折率層、前記高屈折率層および前記中間屈折率層の光学膜厚は、λ1とλ2の間の波長をλ3としたときに、λ3/4となっている
多波長半導体レーザ素子。
【請求項2】
屈折率n1は、1.4以上1.5未満の値であり、
屈折率n2は、1.5以上1.7以下の値であり、
屈折率n3は、2.0以上2.5以下の値である
請求項1に記載の多波長半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記低屈折率層は、SiO2層であり、
前記高屈折率層は、Ta25層、TiO2層、ZnO層、HfO2層、CeO2層またはNb2O膜であり、
前記中間屈折率層は、Al23層またはMgO層である
請求項2に記載の多波長半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記低屈折率層は、SiO2層と、Al23層またはMgO層とが積層されたものであり、
前記高屈折率層は、Ta25層、TiO2層、ZnO層、HfO2層、CeO2層またはNb2O層であり、
前記中間屈折率層は、Al23層またはMgO層である
請求項2に記載の多波長半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記後端面に最も近い低屈折率層は、前記後端面に接している
請求項1に記載の多波長半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記後端面膜は、前記後端面と前記後端面に最も近い低屈折率層との間に、屈折率がn4(n1<n4<n3)の下地層と、屈折率がn1の第2低屈折率層と、屈折率がn3の第2高屈折率層とを前記後端面側から順に含み、
前記第2高屈折率層の光学膜厚は、λ3/4となっており、
前記第2低屈折率層の光学膜厚は、(λ3/4)−(前記下地層の光学膜厚)となっており、
前記下地層の光学膜厚は、当該下地層および前記第2低屈折率層の合計の光学膜厚がλ3/4となるように調整された厚さとなっている
請求項1に記載の多波長半導体レーザ素子。
【請求項7】
基板上にモノリシックに形成された第1素子部および第2素子部と、
前記第1素子部および前記第2素子部のそれぞれの後端面に一括形成された後端面膜と
を備え、
前記第1素子部は、発振波長がλ1の発光素子部であり、
前記第2素子部は、発振波長がλ2(λ1<λ2)の発光素子部であり、
前記後端面膜は、屈折率がn1の第1低屈折率層と屈折率がn3(n1<n3)の高屈折率層の組み合わせを1組とする層をN組(N≧2)積層させたものと、屈折率がn1の第2低屈折率層とを後端面側から順に含んでおり、かつSi膜とは異なる膜で構成され、
前記第1低屈折率層、前記高屈折率層および前記第2低屈折率層の光学膜厚は、λ1とλ2の間の波長をλ3としたときに、λ3/4となっている
多波長半導体レーザ素子。
【請求項8】
屈折率n1は、1.5以上1.7以下の値であり、
屈折率n3は、2.0以上2.5以下の値であり、
請求項7に記載の多波長半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記第1低屈折率層および前記第2低屈折率層はともに、Al23層またはMgO層であり、
前記高屈折率層は、Ta25層、TiO2層、ZnO層、HfO2層、CeO2層またはNb2O層である
請求項8に記載の多波長半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記後端面に最も近い第1低屈折率層は、前記後端面に接している
請求項7に記載の多波長半導体レーザ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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