説明

多積式デミスター装置を備えた大容量圧縮空気の除湿装置

【課題】大型のデミスター装置を運搬可能なサイズで提供することが可能になり、しかも、外気が汚染されている場所で使用する場合でも除湿装置の腐食を防止することができる多積式デミスター装置を備えた大容量圧縮空気の除湿装置を提供する。
【解決手段】圧縮空気を送り込むように構成された冷却筒体10を設ける。該冷却筒体10の内部に冷却水を循環せしめて圧縮空気を冷却する冷却器20を設ける。該冷却筒体10内部で冷却された圧縮空気の気液を分離するデミスター装置30をもうける。圧縮空気に接触して気液を分離する金属網製の除沫器31を複数個形成する。該除沫器31を積重ね自在に設置する多積式のデミスター装置30を設ける。各除沫器31をトラックの荷台に積載可能なサイズに形成し、複数の除沫器31除沫器31を積重ねて連結したデミスター装置30の空気処理量が大容量の圧縮空気を処理するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の圧縮空気の除湿装置として使用されるもので、特に、デミスター装置をモジュール化して積重ねることで、運搬が容易で設置環境に対応可能な多積式デミスター装置を備えた大容量圧縮空気の除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型プラントの大規模な除湿には、大型の除湿装置が必要とされる。この除湿装置には、圧縮空気が冷却されたときに生じる水分等を圧縮空気中から分離するために気液分離器として使用されるデミスター装置が装着されている。ところが、デミスター装置があまり大きすぎると製作場所から使用場所へ搬出するのに困難が生じる。すなわち除湿装置は、通常トラックで搬送されるが、トラックの積載量及び荷台の幅や長さに制限があり、デミスター装置を大型サイズにした場合、輸送が困難になる不都合があった。
【0003】
一方、当発明者は先に、特許文献1により広い設置スペースも要せずに済む圧縮空気除湿用デミスター装置を提案している。このデミスター装置によると、内筒の内部に間隔を開けて気液を分離するデミスターを複数段に形成したもので、該デミスター間に、上部のデミスターにて分離された液体を受け取るドレンパンを設置すると共に、該ドレンパンにて下部のデミスターを通過した圧縮空気が上部のデミスターへの再通過を防止するように配置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3148980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のデミスター装置によると、デミスターを複数段に形成することで、通常のデミスター装置に比べて直径がコンパクトになり、広い設置スペースを要しないといった利点がある。ところが、大容量の除湿装置に適用するには、このデミスター装置を大型にする必要があるので、直径や高さなど除湿装置自体のサイズが大型にならざるを得ず、輸送時に不都合が生じる場合もある。
【0006】
しかも、大容量の除湿装置では、大量の外気を使用することから、亜流酸ガスや窒素酸化物などの汚染物質が混入するなど外気が汚染されている場所に設置されると、この汚染物質が除湿装置で凝縮されて装置自体に悪影響を与え、除湿装置が腐食するおそれもあった。このように、大容量の除湿装置には、運搬時の課題や設置環境の課題などが残されている。
【0007】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、大規模なプラント等に適したサイズのデミスター装置を運搬可能なサイズで提供することが可能になり、しかも、外気が汚染されている場所で使用する場合でも除湿装置の腐食を防止することができる多積式デミスター装置を備えた大容量圧縮空気の除湿装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、圧縮空気を送り込むように構成された冷却筒体10と、該冷却筒体10の内部に冷却水を循環せしめて圧縮空気を冷却する冷却器20と、該冷却筒体10内部で冷却された圧縮空気の気液を分離するデミスター装置30と、を備えた冷却式の大容量除湿装置において、圧縮空気に接触して気液を分離する除沫器31を複数個形成し、該除沫器31を積重ね自在に設置する多積式のデミスター装置30を設け、各除沫器31をトラックの荷台に積載可能なサイズに形成し、複数の除沫器31を積重ねて連結したデミスター装置30の空気処理量が大容量の圧縮空気を処理するように構成したことにある。
【0009】
第2の手段において、前記デミステター装置30は、冷却筒体10の内部に固定され冷却した圧縮空気を取り入れる空気取入口11Aが下部に形成されると共に、上部に気液が分離された後の圧縮空気を排出する空気排出口11Bが形成された外筒体10の内部に積み重ね自在に形成された複数の除沫器31にて構成され、該除沫器31は、通気性の内筒31Aの内部に固定された金属網材31Bと、該金属網材31Bの下部に設けられ金属網材31Bにて分離された液体を受け取るドレンパン31Cとで設けられ、空気取入口11Aから取り入れられた圧縮空気が各除沫器31に分配されるように構成している。
【0010】
第3の手段は、貯水タンク41の上方にアルカリ材を収納した中和器42を配置し、中和器42の上部からアルカリ材に水を噴射するシャワー装置43が設置され、前記冷却筒体10の内部に送風した酸化外気を中和せしめる外気中和器40を構成し、該外気中和器40を前記デミスター装置30の下方に設置し、中和した外気をデミスター装置30で気液分離するように設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の如く、圧縮空気に接触して気液を分離する除沫器31を複数個形成し、該除沫器31を積重ね自在に設置する多積式のデミスター装置30を設けた大容量の除湿装置において、各除沫器31をトラックの荷台に積載可能なサイズに形成し、複数の除沫器31を積重ねて連結したデミスター装置30の空気処理量が大容量の圧縮空気を処理するように構成したことにより、除湿しようとするプラントが大規模になっても、大型プラントの空気処理量に適応した除湿装置の提供が可能になる。
【0012】
しかも、デミスター装置30は、トラックの荷台に積載可能な除沫器31を積重ねて使用するものであるから、どのような場所でも大型のデミスター装置30を運搬することが容易になる。したがって、これまでデミスター装置の大きさで除湿装置の容量が制限されていた場合でも、複数の除沫器31を組合せることによって、従来よりも大容量の除湿装置を製造することが可能になった。
【0013】
また、請求項2に記載のように、前記デミステター装置30は、空気取入口11Aから取り入れられた圧縮空気が各除沫器31に分配されるように設けられているので、除湿装置の圧縮空気の風量や風速の増加に対し、積層するデミスター5の数を増やすことで対応可能になる。
【0014】
更に、請求項3に記載の如く、前記冷却筒体10の内部に送風した酸化外気を中和せしめる外気中和器40を構成し、中和した外気をデミスター装置30で気液分離するように設けたことから、外気が汚染されている場所で使用する場合でも除湿装置の腐食等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示す正断面図である。
【図2】本発明の除沫器の一実施例を示す正断面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す平断面図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によると、運搬に適したサイズのデミスター装置を運搬可能なサイズで提供することで、従来の除湿装置の容量を大容量に増大せしめることが可能になり、しかも、外気が汚染されている場所で使用する場合でも除湿装置の腐食を防止することができるなどといった目的を実現した。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の一実施例を説明する。本発明の除湿装置の基本構成は、圧縮空気を送り込むように構成された冷却筒体1に、該冷却筒体1の内部に冷却水を循環せしめて圧縮空気を冷却する冷却器20と、該冷却筒体1内部で冷却された圧縮空気の気液を分離するデミスター装置30とを備えた除湿装置である(図1参照)。
【0018】
この冷却筒体1は筒状部材で形成されたもので、冷却した圧縮空気を取り入れる空気取入口2と、気液が分離された後の圧縮空気を排出する空気排出口3が形成されている。この冷却筒体1の内部に外筒体10が装着されており、この外筒体10の外側に冷却器20が設置され、外筒体10の内がわにデミスター装置30が設置されるものである(図3参照)。
【0019】
図示の外筒体10は、冷却筒体1の内部に外筒11が固定されており、この外筒11の内側に、圧縮空気の流れを規制する上部通路規制板12と下部通路規制板13とが設けられている(図1参照)。そして、これら上部通路規制板12と下部通路規制板13との間にデミスター装置30を装着している。
【0020】
冷却器20は、外筒体10の周囲に螺旋状に巻き付けられたパイプ上を成し、この冷却器20に冷却水を循環させることで、冷却筒体1内に送風された圧縮空気を冷却するものである(図3参照)。
【0021】
デミスター装置30は、トラックの荷台に積載可能なサイズに形成した除沫器31を複数個積み重ねることで、大容量の圧縮空気を処理するように構成したものである。すなわち、このデミステター装置30は、外筒体10の内部に積み重ね自在に設けた複数の除沫器31にて構成されている(図2参照)。
【0022】
この除沫器31は、内筒31Aと、金属網材31Bと、ドレンパン31Cとで構成される。内筒31Aは、通気性の材質で形成されており、この内筒31Aの内部に金属網材31Bが固定されている(図2参照)。この気液分離材31Bは、ステンレス製の多層網で設けられたもので、この気液分離材31Bに冷却された圧縮空気が接触すると気液が分離する。更に、金属網材31Bの下部にドレンパン31Cを設け、このドレンパン31Cにより、金属網材31Bで分離された液体を受け取るようにしている。
【0023】
また、このドレンパン31Cは、前記外筒11の上部通路規制板12や下部通路規制板13と共に、空気取入口11Aから取り入れられた圧縮空気の流れを規制するもので、冷却された圧縮空気が各除沫器31に分配されるように設けている(図1参照)。このとき、図示例の如く、内筒31A内部に一組の金属網材31B及びドレンパン31Cを設けることで、最も小型の除沫器31を形成することができる(図2参照)。また、図示例のほか、二組以上の金属網材31B及びドレンパン31Cを連設した除沫器31を形成し、これらを積重ねることも可能である(図示せず)。
【0024】
図4は、本発明の他の実施例を示すもので、同図中、符号40は、冷却筒体10の内部に送風した酸化外気を中和せしめる外気中和器40である。この外気中和器40は、アルカリ材を使用して酸性の外気を中和せしめるものである。このとき、アルカリ材は、特に牡蠣ガラ等の貝殻を砕いたものなどが好適であるが、このアルカリ材は適宜に選択できる。図示例の外気中和器40は、貯水タンク41の上方に牡蠣ガラを収納した中和器42を配置し、中和器42の上部から牡蠣ガラに水を噴射するシャワー装置43を設置している。そして、この外気中和器40に冷却筒体10の内部に送風した外気を通すことにより、中和した外気をデミスター装置30で気液分離するように設けたものである。
【0025】
尚、本発明の冷却筒体10や冷却器20の形状、あるいはデミスター装置30、外気中和器40等の構成などは図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によると、運搬が困難な現場で使用するほか、大気が汚染しているような現場などでも大容量の除湿装置として使用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 冷却筒体
2 空気取入口
3 空気排出口
10 外筒体
11 外筒
12 上部通路規制板
13 下部通路規制板
20 冷却器
30 デミスター装置
31 除沫器
31A 内筒
31B 金属網材
31C ドレンパン
40 外気中和器
41 貯水タンク
42 中和器
43 シャワー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を送り込むように構成された冷却筒体と、該冷却筒体の内部に冷却水を循環せしめて圧縮空気を冷却する冷却器と、該冷却筒体内部で冷却された圧縮空気の気液を分離するデミスター装置と、を備えた冷却式の大容量除湿装置において、圧縮空気に接触して気液を分離する金属網製の除沫器を複数個形成し、該除沫器を積重ね自在に設置する多積式のデミスター装置を設け、各除沫器をトラックの荷台に積載可能なサイズに形成し、複数の除沫器を積重ねて連結したデミスター装置の空気処理量が大容量の圧縮空気を処理するように構成したことを特徴とする多積式デミスター装置を備えた大容量圧縮空気の除湿装置。
【請求項2】
前記デミステター装置は、冷却筒体の内部に固定され冷却した圧縮空気を取り入れる空気取入口が下部に形成されると共に、上部に気液が分離された後の圧縮空気を排出する空気排出口が形成された外筒体の内部に積み重ね自在に形成された複数の除沫器にて構成され、該除沫器は、通気性の内筒の内部に固定された金属網材と、該金属網材の下部に設けられ金属網材にて分離された液体を受け取るドレンパンとで設けられ、空気取入口から取り入れられた圧縮空気が各除沫器に分配されるように構成した請求項1記載の多積式デミスター装置を備えた大容量圧縮空気の除湿装置。
【請求項3】
貯水タンクの上方にアルカリ材を収納した中和器を配置し、中和器の上部からアルカリ材に水を噴射するシャワー装置が設置され、前記冷却筒体の内部に送風した酸化外気を中和せしめる外気中和器を構成し、該外気中和器を前記デミスター装置の下方に設置し、中和した外気をデミスター装置で気液分離するように設けた請求項1又は2記載の多積式デミスター装置を備えた大容量圧縮空気の除湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20038(P2011−20038A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166592(P2009−166592)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000120283)
【Fターム(参考)】