説明

多糖解重合物の製造方法

【課題】多糖類を分解した多糖解重合物を製造するにあたり、疎水性アルコールの使用量を抑えつつ、多糖解重合物の水溶液から重合度に拘わらず多糖解重合物を十分に析出させて、多糖解重合物の回収率を向上させる。
【解決手段】多糖解重合物の水溶液を、酸を含む酸水溶液とし、この酸水溶液に炭素数5〜8である疎水性アルコールを添加して前記酸水溶液と前記疎水性アルコールを相溶させることで、前記多糖解重合物を析出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多糖類を分解した多糖解重合物の析出物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖類であるセルロース、澱粉、キシラン、グルコマンナン、キチン、キトサンやそれらを含むパルプ、木材、稲わら、バガスなどのバイオマス原料を、酸や酵素等により分解し、分子量の小さい多糖解重合物として利用することが一般に行われている。この多糖解重合物は、分解しただけでは溶液の中に混在しているので、多糖解重合物を精製したり、溶液中から多糖解重合物を取り出したりするための種々の方法が検討されている。その方法としては、C1からC4までの親水性アルコールや、プロパノンやメチルエチルケトンなどの有機溶媒を多糖解重合物の溶液に添加することで、多糖解重合物を沈殿させ、溶液を相分離させて、重合度の違いにより精製した溶液を得ることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セルロースを濃塩酸と濃硫酸との混合溶液、又は濃蟻酸と濃硫酸の混合溶液中で処理した後、その溶液にアセトン、メタノール、エタノールなどを添加して、多糖解重合物を沈殿させることで酸と分離する方法が記載されている(第2頁左欄25行目〜33行目)。
【0004】
特許文献2には、多糖解重合物の中でも分子量の小さいオリゴ糖を精製するために、炭素数の多いアルコールを加えることが記載されており、そのようなアルコールの例としてイソプロパノール、ブタノール等が挙げられている(第3頁右上欄)。多糖解重合物の溶液にこれらのアルコールを加えると、高重合度成分が沈殿、析出し、そのまま静置すると、オリゴ糖等の濃度が向上した上層と、高重合度成分の濃度が向上した下層とに分離できる。
【0005】
特許文献3には、多糖解重合物であるオリゴ糖類含有シロップにメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類やプロパノン、メチルエチルケトン等のケトン類などの有機溶媒を添加し、一旦加熱した後で、冷却させることにより、液層を、単糖類や二糖類の多い上層と、三糖類以上のオリゴ糖が多く含まれる下層とに分離して、下層を取り出すことにより、三糖類以上のオリゴ糖類含有率を向上させる方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特公昭57−53801号公報
【特許文献2】特開昭62−118894号公報
【特許文献3】特開平7−82287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2のように、多糖解重合物の水溶液に、炭素数が1〜4の、親水性であるアルコールを添加した場合には、特許文献2に記載のように、多糖解重合物のうち高重合度成分を沈殿させることができても、単糖類や二糖類などの低重合度成分は水溶液中に溶解したままで、析出物として得ることは難しかった。特許文献3の方法では、重合度ごとのシロップに分離することはできても、それらを全て析出物として得るには別の工程が必要であった。
【0008】
これに対して、炭素数が5以上である疎水性アルコールを添加すると、重合度の低い多糖解重合物も析出させることは可能である。この析出は、多糖解重合物が溶解している水溶液が、疎水性アルコールと相溶することで、多糖解重合物を溶かしておくことができなくなることで起こる。しかし、これらの疎水性アルコールは水との相溶性が低いため、多糖解重合物の水溶液から充分な量の多糖解重合物を析出させるには、大量の疎水性アルコールを添加する必要があった。
【0009】
そこでこの発明は、多糖類を分解した多糖解重合物を製造するにあたり、疎水性アルコールの使用量を抑えつつ、多糖解重合物の水溶液から重合度に拘わらず多糖解重合物を十分に析出させて、多糖解重合物の回収率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、多糖解重合物の水溶液を、酸を含む酸水溶液とし、この酸水溶液に炭素数5〜8である疎水性アルコールを添加して前記酸水溶液と前記疎水性アルコールを相溶させることで、前記多糖解重合物を析出させて、上記の課題を解決したのである。
【0011】
この解決手段は、炭素数5〜8の疎水性アルコールが有する、新たに見出した性質を利用している。その性質とは、これらの疎水性アルコールは、純水や希酸との相溶性は低いが、濃酸の酸水溶液に対しては、相溶性が大きく向上するというものである。このため、多糖解重合物が溶解している水溶液を十分な濃度の酸水溶液にすると、従来、析出のために水と相溶させるのに要した疎水性アルコールの量に比べて十分に少ない量の疎水性アルコールで、酸水溶液と相溶させて、酸水溶液に溶解している多糖解重合物のほとんどを析出させることができる。
【0012】
この発明で用いる酸としては、特に限定されないが、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、蟻酸を用いることができる。これらの酸が、水と酸との質量比が80:20〜15:85程度の濃酸であると、多糖解重合物の析出が十分に可能である程度に疎水性アルコールへの溶解度が高いものとなり、上記疎水性アルコールとの相溶性が十分に向上するものとなる。
【0013】
また、酸として塩酸を用いることもできるが、その場合は上記の酸とは異なり、多糖解重合物の水溶液に含まれる塩化水素の量を、水と塩化水素との質量比が90:10〜63:37とすることで、上記疎水性アルコールへの溶解度が高いものとなり、上記疎水性アルコールとの相溶性が十分に向上して、多糖解重合物の析出が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明により、セルロース等の多糖類を分解した多糖解重合物の析出物を、単糖類や二糖類などの重合度の低いものも含めて、効率よく析出させて回収することができる。従来の方法よりも使用する疎水性アルコールの量を抑えることが出来、より小さい装置での実施が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、多糖類を分解した多糖解重合物の水溶液から、多糖解重合物の析出物を得る製造方法である。
【0016】
原料として用いる上記の多糖類とは、グルコースなどの単糖類が2つ以上重合したものをいい、セルロース、澱粉、キシラン、グルコマンナン、キチン、キトサンやそれらを含むパルプ、木材、古紙、稲わら、バガスなどのバイオマス原料などが挙げられる。これらはいわゆるバイオマス燃料として使用可能なものである。この発明ではこれら多糖類を分解して、単糖類、二糖類、又は三糖類以上の糖類であって、元の多糖類より重合度が低下した多糖解重合物を得る。多糖類を分解する方法としては、酸、酵素、超臨界水や亜臨界水を用いる方法などが挙げられる。
【0017】
上記多糖類の分解に用いる酸としては、上記多糖解重合物の酸水溶液とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、酢酸、蟻酸などが挙げられる。一定量のアルコールに対するそれぞれの酸水溶液の濃度の差による溶解量を測定すると、上記の酸の中でも硫酸及びリン酸が濃度による溶解度の変化が顕著であり、特にこれらを好適に用いることができる。ただし、炭素数が3以上である有機酸は、疎水性が高くなりすぎて、他の酸と同様の挙動を示さず、析出が不十分になる可能性があるため、好ましくない。
【0018】
上記多糖類の分解に用いる酵素としては、糖のグリコシド結合を切断できるものであればよく、例えばアミラーゼやセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等が挙げられる。
【0019】
上記多糖解重合物を水溶液から析出させるにあたっては、まず、当該水溶液を、水と酸との質量比が80:20〜15:85である酸水溶液とする。80:20よりも水が多いと、後述する疎水性アルコールに対する溶解度を向上させる効果が不十分である。一方、15:85よりも酸が多いと、酸によっては不具合が生じるおそれがある。硫酸を用いる場合は、水と酸との質量比が20:80よりも酸過剰であると、生成した多糖解重合物が過分解を起こし、収率が低下する場合がある。ただし、リン酸の場合は通常試薬の濃度である85質量%(水と酸との質量比15:85)でも多糖解重合物の過分解が起こらず、加水分解を行うことができる。なお、上記酸として硫酸、リン酸を用いる場合、60:40よりも酸が多い酸水溶液とすると、十分に疎水性アルコールと相溶可能となるのでより好ましい。
【0020】
水と酸との質量比を上記の範囲とするには、一旦多糖類を分解して上記の多糖解重合物の水溶液を得た後で上記の酸を添加して前記の範囲の質量比としてもよいし、多糖類を分解し多糖解重合物を得る段階で前記の範囲の質量比としておいてもよい。
【0021】
ただし、上記酸として塩酸を用いる場合は、当該水溶液を10質量%以上37質量%以下の酸水溶液(水と酸との質量比が90:10〜63:37である。)とする。これは、塩酸を構成する塩化水素が他の酸よりも薄い10質量%以上で、後述する疎水性アルコールに対する溶解度の著しい上昇を起こすためである。なお、37質量%は塩化水素の飽和濃度である。
【0022】
上記の範囲の質量比とした酸水溶液に、炭素数5〜8である疎水性アルコールを添加して、上記の範囲の質量比である酸水溶液と相溶させる。酸の割合が低い酸水溶液は、上記疎水性アルコールとの相溶性が低いが、上記に示す範囲の十分に高い酸濃度である酸水溶液であれば、上記疎水性アルコールとの相溶性が高い。上記疎水性アルコールと相溶していくに従って、酸水溶液は含有する上記多糖解重合物を溶解し続けていることができなくなり、上記多糖解重合物が析出していく。
【0023】
上記の疎水性アルコールの疎水性であるとは、具体的には、その疎水性アルコールに対する純水の溶解度が10質量%以下であることをいい、水と酸との質量比が80:20より酸過剰である酸水溶液(塩酸の場合は、水と酸との質量比が90:10より酸過剰である酸水溶液)の溶解度が10質量%以上であるものを、この発明で用いることができる。その中でも、水と酸との質量比が60:40(塩酸の場合は80:20)よりも酸過剰である酸水溶液の溶解度が、30質量%以上であると、特に多糖解重合物を析出させやすくなりより好ましい。また、上記疎水性アルコールは、極性が低いものであるのが好ましい。極性が高くなると、多糖解重合物が疎水性アルコールにも溶解しやすくなるため、析出物の収率が低下してしまう場合があるからである。このため、2価アルコールよりも1価アルコールの方が好ましく、第2級アルコールよりも第1級アルコールの方が好ましい。
【0024】
上記疎水性アルコールの炭素数は、5〜8の範囲であることが必要であり、炭素数が5〜6であるとより好ましい。具体的には,1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノールなどが挙げられる。炭素数が多い方が疎水性アルコールの極性が低くなるために、析出させる上記多糖解重合物の回収量が多くなる。しかし、炭素数が8を超えると十分に極性が低くなるため、析出させる上記多糖解重合物の回収量の向上はほとんど見込めない。一方、極性が低くなる、すなわち疎水性が高くなると、その分上記多糖解重合物を析出させる際に必要となる上記疎水性アルコールの量が多くなってしまうという問題がある。このため、上記多糖解重合物の析出と疎水性アルコールの使用量を総合すると、上記疎水性アルコールとして炭素数5の1−ペンタノール又は炭素数6の1−ヘキサノールを用いるのが最も好ましい。なお、炭素数が10のデカノールでは、融点が常温に近づき、固体化しやすく、この発明の実施に差し支える場合があり、炭素数が10を超えるアルコールではこの発明の実施が極めて難しくなる。
【0025】
上記酸水溶液に上記疎水性アルコールを加えて析出させた上記多糖解重合物の析出物は、濾過、遠心分離等の一般的な固液分離法により、酸水溶液と上記疎水性アルコールの混合溶液から分離して回収することができる。ただし、この析出物には、多糖解重合物以外の不純物が含まれる場合がある。この不純物は原料となる多糖類の種類によって異なるが、例えば多糖類を含むバイオマス原料として木材を用いた場合におけるリグニンのような、水に不溶性の不純物である。上記析出物がこのような不純物を多く含む場合は、得られた析出物に水を添加して、多糖解重合物を一旦溶解させた後、水に溶解しない不純物を濾過などで固液分離する。分離した後の溶液に、再度酸を添加して水と酸との質量比を80:20よりも酸過剰にした後、再度上記疎水性アルコールを添加して上記多糖解重合物を析出させることにより、純度の高い上記多糖解重合物の析出物を得ることができる。なお、得られた上記多糖解重合物の析出物が水分を多く含有している場合には、炭素数4以下の親水性アルコールを添加して洗浄することにより、多糖解重合物の回収率を損なうことなく脱水を行うことができる。
【0026】
こうして得られた上記多糖解重合物の析出物は、単糖類、二糖類、三糖類以上のオリゴ糖などからなり、原料の多糖類に比して高い収率でこれらの上記多糖解重合物を得ることができる。この析出物はバイオマスとしてそのまま利用してもよいし、さらに発酵等を行い、バイオエタノールの製造に用いてもよい。
【実施例】
【0027】
以下、この発明についての具体例を挙げて説明する。
【0028】
(参考例1)
まず、参考例として、酸として硫酸を用いた場合に、水との質量比によってアルコールへの溶解度がどのように変化するかを示す。
【0029】
本参考例で用いるアルコールの詳細を以下に示す。
・1−ペンタノール(ナカライテスク(株)製:特級)
・1−ヘキサノール(ナカライテスク(株)製:特級)
・1−オクタノール(ナカライテスク(株)製:特級)
・1−デカノール(ナカライテスク(株)製:特級)
これらのアルコール100gに対して、30℃の環境で濃度の異なる硫酸水溶液が何g溶けるかを溶解度(質量%)として測定した。硫酸としてはナカライテスク(株)製:特級を用いて、10質量%ずつ濃度を高めていった硫酸水溶液を用意し、溶解度が急激に高まる濃度付近ではより細かい濃度幅で濃度を上げた硫酸水溶液を用いて測定を行った。その結果を図1のグラフ及び表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
いずれのアルコールの場合も、10質量%から20質量%にかけて溶解度が大きく向上し、特に1−ペンタノールと1−ヘキサノールでその傾向が顕著であった。さらに濃度が高い硫酸水溶液では、50〜60質量%付近で急激に溶解度が向上し、溶解度が120質量%を超えて、アルコールと酸水溶液とが全部相溶するようになった。
【0032】
(参考例2)
次に、参考例として、1−ペンタノールに対する酸水溶液の濃度ごとの溶解度の変化を、リン酸、硝酸、塩酸、硫酸について測定した。その結果を図2のグラフ及び表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
塩酸は酸濃度が10質量%を超えたところで急激に溶解度が向上した。その他の酸は塩酸よりも低いものの、20〜30質量%で溶解度が20質量%を超えるようになり、濃度が上がるほど溶解度が向上する傾向であることが示された。特に硫酸、リン酸は低濃度では他の酸に比べて比較的溶解度が低いものの、途中から急激に溶解度が向上し、硫酸では50質量%を超えたところ、リン酸では70質量%を超えたところで完全に1−ペンタノールと相溶するようになった。従って、測定したいずれの酸でも溶解度の差を利用し、少ない疎水性アルコールの添加量で、多糖解重合物の析出が可能であることがわかり、特に高濃度の硫酸、リン酸を用いると溶解度の差が顕著であるのでこの発明に好適であることがわかった。
【0035】
(実施例1)
多糖類として結晶性セルロース(MERCK社製:アビセル)10gを用い、これと75%硫酸水溶液40g(水:酸の質量比が25:75)とを、40℃で攪拌しながら30分間加水分解して、セルロースの解重合物(平均分子量1700)の酸水溶液を得た。なお、平均分子量の測定はTOSOH製:GPC−8020により行った。
【0036】
この酸水溶液に1−ヘキサノール80gを添加して攪拌し、セルロース解重合物を沈殿析出させた。この析出物を、濾紙を用いて濾過することにより、1−ヘキサノールと硫酸との混合溶液と固液分離した後、濾紙上に1−ヘキサノールを供給して析出物を洗浄した。その後、減圧乾燥により1−ヘキサノールを除去して得られた析出物を濾紙上から取り出して、セルロースの解重合物9.4g(収率94%)を得た。
【0037】
(実施例2)
多糖類としてコーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製:含有水分率12.5%)11.4g(コーンスターチ固形分:10g)を、2規定の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7に調整しつつ、20質量%の水溶液とした。次に酵素としてα−アミラーゼ(ノボザイム社製:BAN−240L)をコーンスターチ固形分に対して0.084%分添加して、70℃で10分間加水分解した。その後、加温して溶液温度95℃以上で10分間保持してα−アミラーゼを失活させ、澱粉の解重合物(平均分子量3300)の溶液を得た。この溶液に85質量%リン酸(ナカライテスク(株)製:特級)40gを添加し、水とリン酸との質量比が58:42である澱粉の解重合物の溶液90gを得た。
【0038】
この溶液に1−ペンタノール286gを添加して攪拌し、澱粉の解重合物を沈殿析出させた。この析出物を、濾紙を用いて濾過し、リン酸を含むペンタノール溶液と固液分離した後、1−ペンタノールで洗浄した。洗浄後、減圧乾燥して1−ペンタノールを除去し、澱粉の解重合物9.6g(収率96%)を得た。
【0039】
(実施例3)
多糖類を含むバイオマス原料として段ボール古紙(セルロース含有率70%)10gを用い、これと75質量%硫酸40g(水:酸の質量比が25:75)とを40℃で攪拌しながら30分間かけて加水分解し、セルロースの解重合物(平均分子量1100)を得た。ただし、加水分解反応後の溶液には不溶の残渣が分散しており、ペースト状に近い溶液となった。
【0040】
第一の回収操作として、この溶液に1−ペンタノール160gを添加して攪拌し、セルロースの解重合物を沈殿析出させた。ただし、元から不溶の残渣分を含んでいたため、析出した沈殿物と残渣分とが混在した状態となった。この混在した沈殿物を濾過により、硫酸を含む1−ペンタノール溶液と固液分離した後、1−ペンタノールで洗浄した。洗浄後、減圧乾燥して1−ペンタノールを除去し、セルロースの解重合物と残渣分との混合物9.1gを得た。
【0041】
第二の回収操作として、得られた混合物に水34gを添加して、混合物のうちのセルロースの解重合物のみを再溶解させ、不溶のままの残渣分を濾過により除去して、セルロースの解重合物を6.8g含有するセルロースの解重合物の溶液41gを得た。この溶液に硫酸を41g添加して、水と酸との質量比が34:41=45:55(溶液全体に対しては硫酸濃度50質量%)となる溶液を82g得た。この溶液に1−ペンタノール137gを添加して攪拌し、セルロースの解重合物を析出させた。この析出物を濾過により、硫酸を含む1−ペンタノール溶液と固液分離させ、1−ペンタノールで洗浄した。洗浄後、減圧乾燥させて1−ペンタノールを除去し、セルロースの解重合物6.7g(収率96%、段ボール古紙中に含有させるセルロース分に対して)を得た。
【0042】
(実施例4)
多糖類としてコーンスターチ(同上)11.4g(コーンスターチ固形分:10g)に、75%硫酸水溶液20g(水と酸との質量比が25:75)を添加して、40℃で攪拌しながら1時間加水分解して、平均分子量1200の澱粉の解重合物の酸水溶液を得た。この酸水溶液に1−ペンタノール(ナカライテスク(株)製:特級)80gを添加して攪拌し、澱粉の解重合物を沈殿析出させ、この析出物を、濾紙を用いて濾過することにより、1−ペンタノールと硫酸との混合溶液と固液分離した後に、濾紙上に1−ペンタノールを供給して析出物を洗浄した。その後、減圧乾燥により1−ペンタノールを除去して得られた析出物を濾紙上から取り出し、澱粉の解重合物9.4g(収率94%)を得た。
【0043】
(実施例5)
多糖類を含むバイオマス原料として段ボール古紙(同上)を10g用い、これと75%硫酸水溶液20g(水:酸の質量比が25:75)とを、40℃で撹拌しながら1時間加水分解した。ついでこの反応物に水を30g添加して(水:酸の質量比が25:75から70:30になった。)、90℃で撹拌しながら1時間加水分解し、セルロースの解重合物(平均分子量175)の酸水溶液を得た。この酸水溶液から濾過により、残渣分を除去した。濾過により得られた濾液は55gとなった(セルロースの解重合物:7g、硫酸水溶液:48g)。この濾液に1−ペンタノール(ナカライテスク(株)製:特級)245gを添加して撹拌し、セルロースの解重合物を沈殿析出させた。この析出物を、濾紙を用いて濾過することにより、1−ペンタノールと硫酸の混合溶液と固液分離した後に、濾紙上に1−ペンタノールを供給して析出物を洗浄した。その後、減圧乾燥により1−ペンタノールを除去して得られた析出物を濾紙上から取り出して、セルロースの解重合物5g(収率70%)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】参考例1の結果を示すグラフ
【図2】参考例2の結果を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類を分解した多糖解重合物と酸とを含有する酸水溶液に、炭素数5〜8である疎水性アルコールを添加して、前記多糖解重合物の析出物を得る、多糖解重合物の製造方法。
【請求項2】
上記酸水溶液と上記疎水性アルコールとが相溶するように、上記酸水溶液中の酸濃度を調整したことを特徴とする請求項1に記載の多糖解重合物の製造方法。
【請求項3】
上記酸水溶液の水と酸との質量比が80:20〜15:85であることを特徴とする請求項2に記載の多糖解重合物の製造方法。
【請求項4】
上記酸が硫酸、硝酸、リン酸、酢酸及び蟻酸の少なくとも一種類からなることを特徴とする、請求項3に記載の多糖解重合物の製造方法。
【請求項5】
上記酸が塩酸であり、上記酸水溶液の水と塩化水素との質量比が90:10〜63:37であることを特徴とする請求項2に記載の多糖解重合物の製造方法。
【請求項6】
上記疎水性アルコールが、1−ペンタノール又は1−ヘキサノールであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の多糖解重合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−263481(P2009−263481A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113939(P2008−113939)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】