説明

多結晶シリコン製造装置

【課題】多結晶シリコンの製造に用いられる反応炉内の電極回りに付着した微粒子の除去作業を簡略化すること。
【解決手段】シリコン芯線11が炭素製の芯線ホルダ15に保持され、この芯線ホルダ15が金属性の電極10の頂部に保持されている。電極10はシリコン芯線11に通電するための電極であって、反応炉の底板部5に設けられた貫通孔を介して反応炉内に挿入されている。カバー18は、反応炉内に挿入された電極10の表面のうち、少なくとも、底板部5の近傍部の表面を被覆している。カバー18は、原料として供給される反応ガスが多結晶シリコンとしてシリコン芯線の上に析出する際に発生する微粒子が、反応炉内において比較的温度の低い部材表面に直接付着するのを防止するためのものである。つまり、微粒子をカバー18の表面に付着させ、電極10、絶縁部材13、或いは、アダプタ14の表面に直接付着するのを防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用単結晶シリコンあるいは太陽電池用シリコンの原料となる多結晶シリコンの製造方法として、シーメンス法が知られている。シーメンス法は、クロロシランを含む原料ガスを加熱されたシリコン芯線に接触させることにより、該シリコン芯線の表面に多結晶シリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて気相成長させる方法である。
【0003】
シーメンス法により多結晶シリコンを気相成長する際の反応炉は、ベルジャーと呼ばれる上部構造体とベースプレートと呼ばれる下部構造体(底板)により構成される空間内にシリコン芯線を鉛直方向2本、水平方向1本の鳥居型に組み立て、該鳥居型のシリコン芯線の両端を一対のカーボン製の芯線ホルダを介してベースプレート上に配置した一対の金属製の電極に固定する。この構成は、例えば特開2010−235440号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
電極は、絶縁物を挟んでベースプレートを貫通し、配線を通して別の電極に接続されるか、反応炉外に配置された電源に接続される。気相成長中に多結晶シリコンが析出することを防止するために、電極とベースプレートとベルジャーは水などの冷媒を用いて冷却される。電極と芯線ホルダは直接接合してもかまわないが、特許文献1に開示されているように、電極の損傷を防止目的から、電極と芯線ホルダの間にカーボン製のアダプタを設けることが多い。
【0005】
反応炉を構成する部材の反応炉内表面温度は、各部材の特性に応じて、それぞれ制御されている。ベルジャーとベースプレートは金属製であり、特開平8−259211号公報(特許文献2)に開示されているように、高温において析出シリコンの汚染原因となるアウトガスを発生する場合があるため、通常は、水などの冷媒を用いて冷却され、一定温度以下に制御される。
【0006】
また、金属製の電極も水などの冷媒において冷却されている。例えば、導電性の高い銅を用いた電極の場合、その表面温度が400℃程度以下になるように制御される。シリコン芯線の温度はシリコンの析出反応温度である900℃〜1200℃であるから、金属製電極とシリコン芯線の間に配置されることになる芯線ホルダ及びアダプタの温度は、400℃から1200℃の間の温度になっているものと推定される。そのため、その材質には、高温特性に優れるカーボンが選定されることが多い。
【0007】
原料として供給される反応ガスは反応炉内において、熱分解や水素ガスとの反応により多結晶シリコンとしてシリコン芯線の上に析出するが、特開平6−216036号公報(特許文献3)に記載されているように、比較的温度の低いベルジャー表面には気相中において発生する微粒子が付着することが知られている。
【0008】
この微粒子は、ほぼ同じような表面温度をもつ他部材の表面、具体的には、電極表面、ベースプレート表面、絶縁部材表面、アダプタ表面の一部にも付着する。一方、アダプタ表面のうち、比較的高温となる部分の表面や芯線ホルダ表面には、このような微粒子の付着は認められない。このような微粒子は、特許文献3において指摘されているように、最終製品である多結晶シリコンの重金属汚染の原因にもなる。
【0009】
従って、反応炉で複数回のバッチの繰り返しにより多結晶シリコンの製造を行う場合、反応バッチ間において付着微粒子を清掃除去することが必要である。
【0010】
付着微粒子を除去するには、ベルジャーについては、ベースプレートから取り外し、高圧水や炭酸ガスペレットなどを用いて洗浄される。一方、ベースプレートは取り外しができないため、純水を用いた拭き取り清掃やブラシによる清掃、或いは、吸い込み式の掃除機による清掃を行うのが一般的である。
【0011】
しかし、ベースプレートの上には、電極、原料ガス供給ノズル、反応排ガス出口などが配置されているため、拭き取りによる清掃作業は煩雑であり効率化することが難しい作業である。加えて、電極、絶縁部材、ベースプレートの間に進入した水分と絶縁部材の表面に残存する微量の付着微粒子と電極とベースプレートの間等の隙間に進入した水分とが反応すると、付着微粒子に含まれる塩素分が作用して絶縁部材の絶縁性の低下を招く。このため、絶縁性を回復するための乾燥に長時間を要し、清掃に要する時間が長くなるという不都合も生じてしまう。
【0012】
特に、カーボン材であるアダプタ表面は、金属部材の表面よりも高温になるため、アダプタ表面の微粒子は強固に付着しておりその除去は容易ではない。カーボン部材表面の付着微粒子は、純水を用いた拭き取り清掃ではまったく除去できないため、旋盤を用いてバイト等で研削除去するかグラインダー等で研磨除去することとなる。しかし、このような除去方法では、バイトやグラインダーからの金属汚染が懸念されるため、除去作業後のアダプタを塩化水素ガス中で高温処理して清浄化を図る必要があるなど、一連の清掃作業が長時間化しコストも高くなってしまう。
【0013】
また、電極に導電性に優れた銅を用いた場合などは、微粒子内に微量に含まれた塩素と銅の反応により塩化銅が発生する。塩化銅は300℃程度の温度領域において昇華し、多結晶シリコン中に取り込まれることが知られており、多結晶シリコンの品質維持のためには、電極廻りを清浄に保つことが極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−235440号公報
【特許文献2】特開平8−259211号公報
【特許文献3】特開平6−216036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、多結晶シリコンの品質維持のためには、多結晶シリコン製造用反応炉内を清浄に維持することが必要であり、特に、電極廻りの付着微粒子の除去は最も重要な作業のひとつであるが、この清掃作業は非常に手間やコストがかかり、更なる改善を要する。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、多結晶シリコンの製造に用いられる反応炉内の電極回りに付着した微粒子の除去作業を簡略化し、作業時間短縮による生産性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る第1の態様の多結晶シリコン製造装置は、反応炉内で加熱されたシリコン芯線に原料ガスを供給することにより前記シリコン芯線の表面に多結晶シリコンを析出させるための多結晶シリコン製造装置であって、前記シリコン芯線を保持する炭素製の芯線ホルダと、前記シリコン芯線に通電するための金属性の電極であって前記反応炉の底板部に設けられた貫通孔を介して前記反応炉内に挿入されている電極と、前記電極の表面を被覆するカバーであって少なくとも前記反応炉内への挿入部のうちの前記底板部の近傍部の表面を被覆する着脱可能なカバーとを備えている。
【0018】
本発明に係る第2の態様の多結晶シリコン製造装置は、反応炉内で加熱されたシリコン芯線に原料ガスを供給することにより前記シリコン芯線の表面に多結晶シリコンを析出させるための多結晶シリコン製造装置であって、前記シリコン芯線を保持する炭素製の芯線ホルダと、前記シリコン芯線に通電するための金属性の電極であって前記反応炉の底板部に設けられた貫通孔を介して前記反応炉内に挿入されている電極と、前記貫通孔に挿入され前記電極を前記底板部から電気的に絶縁する絶縁部材と、前記絶縁部材の表面を被覆するカバーであって少なくとも前記反応炉内への挿入部のうちの前記底板部の近傍部の表面を被覆する着脱可能なカバーとを備えている。
【0019】
本発明に係る多結晶シリコン製造装置は、更に、前記芯線ホルダと前記電極の間に、前記芯線ホルダを保持し且つ該芯線ホルダに前記電極からの電力を供給するためのアダプタを備えている態様としてもよい。
【0020】
その場合、前記カバーは、前記アダプタの表面のうちの少なくとも前記底板部側の表面を被覆することが好ましい。
【0021】
また、好ましくは、前記カバーにより被覆される前記電極、前記絶縁部材、または、前記アダプタの外表面と、前記カバーの内表面との隙間が、0.5mm以上で3mm以下である。
【0022】
前記カバーの材質は、例えば、石英、窒化珪素、又は、アルミナの何れかである。
【発明の効果】
【0023】
本発明で用いられるカバーにより、電極、絶縁部材、または、アダプタの外表面への微粒子の付着が防止され、多結晶シリコンの製造に用いられる反応炉内の電極回りに付着した微粒子の除去作業が簡略化され、作業時間短縮による生産性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の多結晶シリコン製造のための反応炉の構成の一例を示す概略説明図である。
【図2】本発明の多結晶シリコン製造装置が備えるカバーを説明するための電極廻りの断面図の例である。
【図3】本発明の多結晶シリコン製造装置が備えるカバーを説明するための電極廻りの断面図の例である。
【図4】本発明の多結晶シリコン製造装置が備えるカバーを説明するための電極廻りの断面図の例である。
【図5】本発明の多結晶シリコン製造装置が備えるカバーを説明するための電極廻りの断面図の例である。
【図6】カバーを設けなかった場合の微粒子の付着の様子を説明するための図である。
【図7】カバーを設けなかった場合の微粒子の付着の様子を説明するための図である。
【図8】カバーが、微粒子の付着を防止するために、電極、絶縁部材、或いは、アダプタの外表面を被覆している様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための好ましい形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の多結晶シリコン製造のための反応炉100の構成の一例を示す概略説明図である。
【0027】
図1は、多結晶シリコン製造のための反応炉100の構成の一例を示す概略断面図である。反応炉100は、シーメンス法によりシリコン芯線11の表面に多結晶シリコンを気相成長させて多結晶シリコン棒12を得るための装置であり、ベースプレート5とベルジャー1により構成される。
【0028】
ベースプレート5には、シリコン芯線11に電流を供給する金属電極10と、窒素ガス、水素ガス、トリクロロシランガスなどのプロセスガスを供給するガスノズル9と、排気ガスを排出する排気口8が配置されている。また、ベースプレート5には、自身を冷却するための冷媒の入口部6と出口部7を有している。
【0029】
ベルジャー1は、自身を冷却するための冷媒の入口部3と出口部4を有し、さらに、外部から内部を目視確認するためののぞき窓2を有している。
【0030】
金属製の電極10は、自身を冷却するための冷媒の入口16と出口17を有しており、上部には、電極10と芯線ホルダ15との間に設けられるアダプタ14を載置できる構造になっている。このアダプタ14は、芯線ホルダを保持し且つ該芯線ホルダに電極10からの電力を供給するためのもので、アダプタ14の上部には芯線ホルダ15が固定され、この芯線ホルダ15にシリコン芯線11が固定される。なお、アダプタ14と芯線ホルダ15は別の部材として設ける必要はなく、アダプタ14と芯線ホルダ15が単一の部材としてある、一体型の芯線ホルダとしてもよい。
【0031】
電極10、アダプタ14、芯線ホルダ15、およびシリコン芯線11は、通電のために必要な接触面積を有することが必要とされる。また、多結晶シリコンの析出反応により得られる多結晶シリコン棒を保持するための十分な強度を有することが必要である。
【0032】
符号18で示したものは、本発明において設けられるカバーであり、その材質は、例えば、石英や窒化珪素或いはアルミナ等の高温に耐えるものが選択される。以下に、このカバー18の詳細について説明する。
【0033】
図2および図3は、本発明の多結晶シリコン製造装置が備えるカバー18を説明するための、電極廻りの断面図の例である。
【0034】
先ず、図2に例示した態様について説明すると、シリコン芯線11が炭素製の芯線ホルダ15に保持され、この芯線ホルダ15が金属性の電極10の頂部に保持されている。電極10はシリコン芯線11に通電するための電極であって、反応炉の底板部5に設けられた貫通孔を介して反応炉内に挿入されている。カバー18は、反応炉内に挿入された電極10の表面のうち、少なくとも、底板部5の近傍部の表面を被覆している。
【0035】
カバー18は、原料として供給される反応ガスが多結晶シリコンとしてシリコン芯線の上に析出する際に発生する微粒子が、反応炉内において比較的温度の低い部材表面に直接付着するのを防止するためのものである。つまり、微粒子をカバー18の表面に付着させ、電極10の表面や絶縁部材13の表面に直接付着するのを防止している。なお、このようなカバー18は、電極10の周りを清掃する際に取り外しが可能なように、着脱可能なものとなっている。
【0036】
この図に示した例では、底板部5に形成された貫通孔に挿入され、電極10を底板部5から電気的に絶縁するための絶縁部材13が設けられている。上述のカバー18は、反応炉内に挿入されている絶縁部材13の部分のうち、少なくとも底板部5の近傍部の表面も被覆している。
【0037】
図3に例示した態様のものは、図1に例示した態様と同様に、芯線ホルダ15と電極10の間に、芯線ホルダ15を保持し且つ該芯線ホルダ15に電極10からの電力を供給するためのアダプタ14を備えている。そして、アダプタ14の表面のうち、少なくとも底板部側の表面が、カバー18により被覆されている。
【0038】
カバー18は例えば石英製のものとされるが、これに限らず、窒化珪素製やアルミナ製とすることもできる。ただし、石英は他のセラミック類に比べて安価である上に純度も高く、取扱や管理も簡単である。なお、電極10に対する輻射熱の影響が出ないようにカバー18は不透明であることが好ましいが、透明タイプの石英を用いても、析出反応の進行に伴いカバー18の表面にはシリコンが付着して不透明となるため、透明タイプの石英を用いても不都合はない。
【0039】
なお、本発明に用いられる絶縁部材13の形状等については、種々の態様があり得る。
【0040】
図4および図5に例示した態様のように、絶縁部材13の内面が、反応炉内に挿入されている電極10の部分の外表面を全て被覆するような態様のものとしてもよい。この場合には、絶縁部材13の反応炉内への挿入部の表面のうち、少なくとも底板部5の近傍部の表面がカバー18により被覆される。
【0041】
上述したようなカバー18を設けない場合、電極10の近傍には、原料として供給される反応ガスが多結晶シリコンとしてシリコン芯線の上に析出する際に発生する微粒子が付着してしまう。
【0042】
図6および図7はそれぞれ、図2および図3の態様においてカバー18を設けなかった場合の微粒子の付着の様子を説明するための図である。金属製の電極10は冷媒により冷却されているため、電極10の近傍は、反応炉内において比較的温度の低い領域となっている。このため、当該領域にある電極10、絶縁部材13、或いは、アダプタ14の外表面には、微粒子19が直接付着してしまう。
【0043】
本発明では、このような微粒子19をカバー18の表面に付着させ、電極10、絶縁部材13、或いは、アダプタ14の表面に直接付着するのを防止している。
【0044】
図8は、カバー18が、微粒子の付着を防止するために、電極10、絶縁部材13、或いは、アダプタ14の表面を被覆している様子を説明するための図である。なお、上記の意味での被覆とは、被覆される側の表面にカバー18の裏面が接している状態はもとより、微粒子の付着阻害が実現し得る程度に隙間gが設けられている状態をも包含する意味で用いている。
【0045】
このような隙間gは、0.5mm以上で3mm以下であることが好ましい。隙間が全くない場合(d=0)には、カバー18と被覆される側の材質の熱膨張差に起因して、カバー18が破損してしまう場合がある。一方、隙間gが3mmを超えると被覆効果が小さくなり、電極10、絶縁部材13、或いは、アダプタ14の表面に微粒子が付着してしまう場合がある。より好ましくは、隙間gは1mm以上で3mm以下である。
【0046】
また、カバー18が石英製である場合は、十分な強度を確保するために、カバー18の厚みdを3mm以上とすることが好ましい。また、取扱の容易さの観点から、厚みdの上限は20mmとすることが好ましい。通常、dは10mm程度とする。
【0047】
なお、電極10、絶縁部材13、アダプタ14の外径寸法は一定とは限らないが、例えば、上部となるにつれて外形寸法が小さくなるような形状である場合には、カバー18の外形寸法もこれに合わせて変化させることが好ましい。また、カバー18は一体型のものとする必要はなく、分割可能な形態のものとしてもよい。
【0048】
カバー18は、電極10、絶縁部材13、アダプタ14の、炉内に挿入されている部分の外表面の全体を被覆している必要はない。析出反応中、シリコン芯線11はCVD反応のための適切な温度に保たれている一方、電極10は冷媒によって冷却されている。このため、電極の近傍、特に、芯線ホルダ15と電極10の冷却部との間に温度勾配が生じる。微粒子は表面温度の低いところに付着し易く、とりわけ、電極10、絶縁部材13、アダプタ14の、底板部5の近傍部の表面温度が低くなる部分に付着し易い。従って、このような相対的に表面温度が低くなる部分を被覆することが重要である。
【0049】
被覆部分をどの程度とするかは、炉内構造や析出反応条件に依存するが、例えば、予備的実験として、電極10、絶縁部材13、或いは、アダプタ14の、炉内に挿入されている部分の外表面の全体を被覆し得るカバー18を用いて析出反応を実行し、その反応でカバー18に付着する微粒子の部位を確認してみる等の方法があり得る。
【0050】
このようなカバー18を用いることとすると、析出反応終了後の清浄化作業において、このカバー18を取り外して洗浄を行って微粒子の除去を行えばよく、しかも、このカバー清浄化は例えば下記のような方法により短時間で終えることが可能なため、炉内部材の清浄化作業の効率を高めることができる。なお、カバー18を複数準備しておき、バッチ毎に取り替えながら使用することとすれば、次のバッチに移る際に微粒子除去のための作業をわざわざ行う必要がないから、バッチ間時間の短縮化を図ることができ、多結晶シリコンの生産性の向上が図れる。なお、カバー18が石英製である場合、微粒子の除去は、フッ酸と硝酸の混合液を用いることで簡単に行うことができる。例えば、10%HF/56%HNO3の混酸に2分間浸漬した後に、3MΩcmの純水で10分間程度のかけ流し洗浄を行う。
【実施例】
【0051】
[実施例1]
実施例として図3に示した態様で石英製のカバー18を用いて10回のバッチで繰り返し析出反応を行った。なお、比較例として図7に示した態様の電極廻りの状態でも同様の析出反応を行った。なお、実施例で用いたカバー18は、厚さが8mmで、アダプタ14の下から3分の2の高さまでを被覆しており、電極10およびアダプタ14との隙間は1mmである。また、カバー18は、一回の析出反応が終了する毎に洗浄済みの別のカバー18に取り替えた。析出反応に用いた反応炉は図1に示した態様のものであり、炉内には、鳥居型のシリコン芯線11が60本立てられた状態でトリクロロシランを用いた多結晶シリコンの成長反応を行った。
【0052】
析出反応の終了の後に清浄化作業を行い、要した時間を比較した。なお、ベルジャー1の内側表面は自動高圧ジェット洗浄機を用いて比抵抗3MΩcm以上の純水を用いて洗浄した。ベースプレート5は比抵抗3MΩcm以上の純水によりブラシ清掃と拭取り清掃を実施した。実施例ではカバー18の取り替えのみで電極廻りの清浄化は行わなかった一方、比較例では電極廻りの微粒子付着を含めた付着物の除去を行った。
【0053】
このような清浄化作業に要した平均時間は、実施例では1.8時間であったのに対し、比較例では3.8時間であった。つまり、本発明のようにカバー18を用いることで、清浄化に要する作業時間は半分以下に短縮化された。
【0054】
[実施例2]
アダプタ14がカーボン製である場合、表面に付着した微粒子はブラシを用いて洗浄することとなるが、ブラシ洗浄で除去できなかった微粒子が堆積し、析出反応の工程中に剥がれ落ちやすくなる。一般に、アダプタ14からの微粒子の剥がれ落ちのおそれの有無を判断するために、写真による管理限度見本を作成して工程管理が行われる。そして、微粒子の剥がれ落ちのおそれが有ると判断された場合には、微粒子除去のために旋盤により表面を切削した後に、熱処理炉により純化処理を行って再生処理がなされる。なお、このような再生処理は約10日間の時間を要する。
【0055】
本実施例では、図3に示した態様で石英製のカバー18を用いて析出反応を繰り返し、何バッチ目で再生処理が必要な状態となるかを調べた。なお、比較例として図7に示した態様の電極廻りの状態でも同様の実験を行った。析出反応に用いた反応炉は図1に示した態様のものであり、炉内には、鳥居型のシリコン芯線11が60本立てられた状態でトリクロロシランを用いた多結晶シリコンの成長反応を行った。
【0056】
その結果、石英製のカバー18を用いた場合には20バッチ目で再生処理が必要な状態となったのに対し、石英製のカバー18を用いなかった場合では6バッチ目で再生処理が必要な状態となった。つまり、石英製のカバー18を用いることで、再生処理が必要な状態となるまでのバッチ数が3倍以上となった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、多結晶シリコンの製造に用いられる反応炉内の電極回りに付着した微粒子の除去作業が簡略化され、作業時間短縮による生産性の向上が図られる。
【符号の説明】
【0058】
1 ベルジャー
2 のぞき窓
3 冷媒入口(ベルジャー)
4 冷媒出口(ベルジャー)
5 ベースプレート
6 冷媒入口(ベースプレート)
7 冷媒出口(ベースプレート)
8 反応排ガス出口
9 原料ガス供給ノズル
10 電極
11 シリコン芯線
12 シリコン棒
13 絶縁部材
14 アダプタ
15 芯線ホルダ
16 冷媒入口(電極)
17 冷媒出口(電極)
18 カバー
19 微粒子
100 反応炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉内で加熱されたシリコン芯線に原料ガスを供給することにより前記シリコン芯線の表面に多結晶シリコンを析出させるための多結晶シリコン製造装置であって、
前記シリコン芯線を保持する炭素製の芯線ホルダと、
前記シリコン芯線に通電するための金属性の電極であって前記反応炉の底板部に設けられた貫通孔を介して前記反応炉内に挿入されている電極と、
前記電極の表面を被覆するカバーであって少なくとも前記反応炉内への挿入部のうちの前記底板部の近傍部の表面を被覆する着脱可能なカバーと、
を備えている多結晶シリコン製造装置。
【請求項2】
反応炉内で加熱されたシリコン芯線に原料ガスを供給することにより前記シリコン芯線の表面に多結晶シリコンを析出させるための多結晶シリコン製造装置であって、
前記シリコン芯線を保持する炭素製の芯線ホルダと、
前記シリコン芯線に通電するための金属性の電極であって前記反応炉の底板部に設けられた貫通孔を介して前記反応炉内に挿入されている電極と、
前記貫通孔に挿入され前記電極を前記底板部から電気的に絶縁する絶縁部材と、
前記絶縁部材の表面を被覆するカバーであって少なくとも前記反応炉内への挿入部のうちの前記底板部の近傍部の表面を被覆する着脱可能なカバーと、
を備えている多結晶シリコン製造装置。
【請求項3】
更に、前記芯線ホルダと前記電極の間に、前記芯線ホルダを保持し且つ該芯線ホルダに前記電極からの電力を供給するためのアダプタを備えている、
請求項1又は2に記載の多結晶シリコン製造装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記アダプタの表面のうちの少なくとも前記底板部側の表面を被覆する、
請求項3に記載の多結晶シリコン製造装置。
【請求項5】
前記カバーにより被覆される前記電極、前記絶縁部材、または、前記アダプタの外表面と、前記カバーの内表面との隙間が、0.5mm以上で3mm以下である、請求項1乃至4の何れか1項に記載の多結晶シリコン製造装置。
【請求項6】
前記カバーの材質は、石英、窒化珪素、又は、アルミナの何れかである、請求項1乃至5の何れか1項に記載の多結晶シリコン製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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