説明

多能性成体前駆細胞の免疫調節性とその使用

胚幹細胞、胚生殖細胞、及び生殖細胞ではない単離された細胞が記載される。この細胞は、内胚葉性、外胚葉性、中胚葉性の系統の少なくとも2種それぞれの少なくとも1種の細胞種に分化することができる。この細胞は有害な免疫応答を誘発しない。この細胞は免疫応答を調節することができる。例えば、この細胞は、同種異系細胞、組織、及び臓器により生じる宿主の免疫応答を抑制することができる。被験体を治療するために細胞自体又は補助的にこの細胞を使用する方法が記載される。例えばこの細胞は、移植治療法において免疫抑制のために補助的に使用することができる。この細胞及びこれを使用するための組成物を得る方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、米国出願第11/269,736号(2005年11月9日出願)の一部継続出願であり、この出願は、米国出願第11/151,689号(2005年6月13日出願)の一部継続出願であり、この出願は、米国出願第10/963,444(2004年10月11日出願)(放棄)の一部継続出願であり、この出願は、米国出願第10/048,757号(2002年2月1日出願)の一部継続出願であり、この出願は、PCT/US00/21387(2000年8月4日出願)の米国国内段階の出願であり、2001年2月15日にWO01/11011として英語で公開され、この出願は、35 U.S.C. §119(e)により米国仮出願第60/147,324号(1999年8月5日出願)と第60/164,650号(1999年11月10日出願)の優先権を主張し、かつ米国出願第10/467,963号(2003年8月11日出願)の一部継続出願であり、この出願はPCT/US02/04652(2002年2月14日出願)の米国国内段階の出願であり、2002年8月22日にWO02/064748として英語で公開され、この出願は、35 U.S.C. §119(e)により米国仮出願第60/268,786号(2001年2月14日出願)、第60/269,062号(2001年2月15日出願)、第60/310,625号(2001年8月7日出願)、及び第60/343,836号(2001年10月25日出願)の優先権を主張する(これらすべての出願と刊行物は参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、その優先権の完全な利益が本出願で主張される)。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、多能性成体前駆細胞(「MAPCs」)による免疫調節と、一次療法と補助療法において免疫応答を調節するためのその使用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
臓器移植(骨髄移植を含む)の治療的使用は、その開始初期から着実に増加している。これは、多くの疾患(特に限定されないが、血液疾患、免疫疾患、及び悪性疾患を含む)の重要な治療選択肢になった。
【0004】
残念ながら移植の治療的使用はしばしば複雑であり、効果がないままであり、又は移植により生ずる有害な免疫応答により妨げられる。移植治療の結果として遭遇する最も顕著な有害反応には、(i)宿主対移植片反応(「HVG」)(免疫担当宿主による移植片の拒絶)、及び(ii)移植片対宿主病(「GVHD」)(移植片が免疫担当細胞により非自己と認識されるとき、主に免疫不全宿主で起きるプロセス)がある。
【0005】
もちろんドナーと宿主とを完全に一致させることにより、宿主の移植片拒絶を避けることができる。しかし自己組織を除くと、一卵性双生児のみが真に同系であると考えられる。ある個体ドナーと別の個体宿主/レシピエントとの完全な一致は実質的に存在しない。すなわち自己由来組織のみが完全な一致のための唯一の他の方法である。残念ながら宿主組織は典型的には適していないか、又は必要に先立って単離されてはいない。実際、移植治療法の必要性は、宿主の傷害された組織を置換することであることが多い。従って、同系の組織の使用は、移植組織に対する有害な宿主応答の問題に対する有効な解決ではあるが、実際の応用では一般にあまり有用ではない。
【0006】
同系一致が不可能な場合、移植治療法で発生する有害な免疫作用は、同種異系ドナーと宿主とをできる限り一致させることにより軽減することができる。治療の成功の可能性を最大にするために、血液型判定及び/又は組織型判定を使用してドナーと宿主とを一致させる。しかし同種異系組織が最もよく一致しても深刻なHVGを防ぐことができず、従って、移植治療法には後述のように免疫抑制や免疫抑制剤が使用される。
【0007】
移植治療法におけるHVGの合併症を避けるための別のアプローチは、レシピエントである宿主の免疫系を不能にすることである。これは、放射線療法、及び/又は免疫抑制化学療法、及び/又は抗体療法を使用して行われる。その結果生じた宿主免疫応答の抑制は、しばしば極めて有効に宿主での移植片(例えば骨髄)の樹立を助ける。しかし免疫除去又は免疫抑制は宿主の免疫防御を損なう。これにより感染物質へのほんのわずかの曝露でも、容易に感染症に罹りやすくなる。こうして生じた感染症が、移植患者の罹患率と死亡率の大きな原因である。
【0008】
宿主の免疫系を減弱することはまた、移植治療法で遭遇する別の深刻な問題である移植片対宿主病(「GVHD」)を引き起こすか又は悪化させる。GVHDは、ドナー細胞がレシピエントのMHCタンパク質を非自己として認識する免疫担当細胞を含むときに発生する。この免疫担当細胞はT細胞を活性化し、T細胞がサイトカイン、例えばIL-2(インターロイキン2)、IFNγ(インターフェロンガンマ)、及びTNFα(腫瘍壊死因子アルファ)を分泌する。これらのシグナルは、レシピエントの標的(皮膚、消化管、肝臓、及びリンパ器官を含む)に対する免疫攻撃を誘発する(Ferrara and Deeg, 1991)。GVHDは骨髄移植において特に問題であり、主にTリンパ球により仲介されることが示されている(Grebe and Streilein, 1976)。実際、骨髄移植患者の約50%は急性GVHDを発症する。これらの患者の多くは死亡する(15%〜45%)。
【0009】
また一次病態として、並びに他の病態及び/又はその治療の二次作用として発生する他の免疫系の機能障害、障害、及び疾患がある。これらには、新生物、骨髄の異常、血液の異常、自己免疫疾患、及びいくつかの炎症性疾患(後述される)などがある。これらの障害や疾患の一次療法と補助療法は、HVGやGVHDの一次療法と補助療法のように、しばしば免疫抑制剤の使用を含む。現在のすべての治療法は、不利益も副作用も有する。
【0010】
免疫抑制剤
これらの免疫系の機能障害を治療して、追加の有害な副作用を引き起こすことなく、その有害作用を改善又は排除する薬剤を開発することに、多大な努力が向けられている。この目標のためにある程度の進歩があり、多くの薬剤が開発され、これらの機能障害を予防及び/または治療するために使用されている。より有効なこれらの薬剤の導入は移植治療の医療における大きな進歩となったが、いずれも理想的ではない。実際、現在移植治療において臨床的用途に利用できる免疫抑制剤はいずれも完全には有効ではない。後に簡単に要約されるように、すべての薬剤が深刻な欠点と有害な副作用とを有する。総説については非特許文献1を参照されたい。
【0011】
主に炎症と炎症性疾患の治療に使用されるコルチコステロイドは免疫抑制性であることが知られており、HVGやGVHDの最適な一次治療法であると多くの人に考えられている。これは少なくとも一部には、T細胞活性化やT細胞依存性免疫応答に関与する特定のサイトカイン遺伝子の発現を阻害することにより、T細胞増殖やT細胞依存性免疫応答を阻害する。
【0012】
シクロスポリンは、免疫抑制及びHVGやGVHDの予防に最も頻繁に使用される薬剤の1つである。これは一般に免疫抑制性が強い。シクロスポリンは移植患者の有害な免疫応答を低下させるのに有効となり得るが、免疫系をも弱めるため、患者は非常に感染症に罹りやすくなる。従って、患者は暴露された病原体にはるかに容易に感染され、感染症に対する有効な免疫応答を示す能力がほとんど無い。弱い病原体でさえ生命に危険となり得る。シクロスポリンもまた、種々の他の好ましくない副作用を引き起こす。
【0013】
メトトレキセートも、HVGとGVHDの予防と治療に単独又は他の薬剤と組合せて広く使用されている。メトトレキセートは仮に有効であっても明らかにシクロスポリンほど有効ではないことが研究で証明されている。シクロスポリンと同様にメソトレキセートは種々の副作用を引き起こし、その一部は患者の健康に有害となり得る。
【0014】
FK-506はマクロライド様化合物である。シクロスポリンと同様にこれは真菌源に由来する。シクロスポリンとFK-506の免疫抑制作用は似ている。これらは、それぞれ各細胞質受容体タンパク質(すなわち、シクロフィリン及びFK-結合タンパク質)とヘテロダイマー複合体を形成することにより、T細胞活性化の早期事象を阻止する。これは次にカルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害し、こうして最終的に核調節タンパク質やT細胞活性化遺伝子の発現を阻害する。
【0015】
免疫抑制に使用されてきた他の薬剤には、抗胸腺細胞グロブリン、アザチオプリン、及びシクロホスファミドなどがある。これらは有効であることが証明されていない。IL-2に対するT細胞の応答を妨害する別のマクロライド様化合物であるラパマイシンもまた、T細胞活性化免疫応答を阻止するのに使用されている。ミコフェノール酸の誘導体であるRS-61443は、実験動物で同種移植片拒絶を阻害することがわかっている。イミダゾールヌクレオシドであるミゾリビンはプリン生合成経路を阻止し、分裂促進因子に刺激されたT細胞及びB細胞増殖をアザチオプリンやRS-61443と同様の様式で阻害する。スペルグアリンの合成類似体であるデオキシスペルグアリンは、前臨床移植モデルで免疫抑制性を示すことがわかっている。代謝拮抗剤であるブレキナールナトリウムはジヒドロオロチン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤であり、ピリミジン合成の阻害を介してヌクレオチドウリジンとシチジンの生成を阻止する。ベルベリンとその薬剤学的に許容される塩は、リウマチなどの自己免疫疾患を治療するための、アレルギーを治療するための、及び移植片拒絶を治療するための免疫抑制剤として使用されている。ベルベリンはB細胞抗体産生を阻害し、一般に体液性免疫応答を抑制するが、T細胞増殖に影響を与えないと報告されている。特許文献1及び2を参照されたい。
【0016】
これらの免疫抑制剤は、単独で又は他の薬剤と組合せて使用しても、いずれも十分には有効ではない。これらのすべては一般に、患者をHVGやGVHDに罹りやすくしたままであり、感染に対するその防御能を弱める。これが彼らをより感染に罹りやすくし、感染症が生じた際に感染症をより撃退できなくする。さらにこれらの薬剤はすべて重篤な副作用(例えば、胃腸毒性、腎毒性、高血圧、骨髄抑制、肝毒性、高血圧、及び歯肉肥厚など)を引き起こす。これらのいずれも、十分に許容されかつ有効な治療であると証明されていない。要約すると、これらの欠点のために、有害な免疫系機能障害及び/又は応答(例えばHVG及びGVHD)用の、完全に満足できる医薬ベースの治療は現在のところ存在しない。
【0017】
これらの欠点の無い、より特異的な種類の免疫抑制を開発し得ると長い間考えられている。例えば同種反応性T細胞を抑制したか又は排除した物質は、特に、免疫系を全体的に攻撃し、弱める物質によって起こる有害な副作用無く、HVGやGVHD(少なくとも同種異系移植片について)に対して有効であろう。しかし現在のところ、このような物質は開発されていない。
【0018】
移植における限定された幹細胞の使用
免疫抑制剤の代わりに又はこれと一緒に幹細胞を使用することが最近注目されている。この分野でいくつかの有望な観察結果がある。最近、種々の幹細胞が単離され特徴付けられている。これらは、非常に限定された分化能や培養で増殖する限定された能力を有するものから、明らかに無制限の分化能や培養で増殖する無制限の能力を有するものにわたる。前者は一般に入手が容易で、種々の成体組織から得られる。後者は生殖細胞や胚から得る必要があり、胚幹(「ES」)細胞、胚生殖(「EG」)細胞、及び生殖細胞と呼ばれる。胚幹(「ES」)細胞は無制限の自己再生能を有し、すべての種類の組織に分化することができる。ES細胞は胚盤胞の内細胞塊から得られる。胚生殖(「EG」)細胞は、卵着床後の胚の始原生殖細胞から得られる。成体組織から得られる幹細胞は免疫原性で、分化能力が限定されており、かつ培養で増幅する能力が限定されているため、価値が限定されている。ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞はこれらの欠点が無いが、同種異系宿主で奇形腫を生成する顕著な傾向があり、医療での使用には当然懸念される。このため、その有利な広い分化能にもかかわらず、臨床用途での有用性には悲観的である。胚由来の幹細胞も疾患治療への使用を妨げ得る倫理的議論がある。
【0019】
ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞の代わりを見つける試みは、成体組織由来の細胞に焦点を当てている。ほとんどの哺乳動物の組織で成体幹細胞が同定されているが、その分化能は限定されており、ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞の分化能よりかなり狭い。実際、多くのそのような細胞は、1個又は数個の分化細胞種を与えることができるが、他の多くは単一の胚系統に限定される。
【0020】
例えば、造血幹細胞は分化して造血系の細胞のみを生成することができ、神経幹細胞は神経外胚葉起源の細胞のみに分化し、間充織幹細胞(「MSCs」)は間葉起源の細胞に限定される。ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞自体の、及びこれらに関連する限界、リスク、及び議論について上記した理由により、移植治療法における幹細胞の使用に関する研究の大部分は、MSCを使用してきた。最近数年間の結果は、MSCの同種移植片はHVG免疫応答(他の組織を同種異系個体間で移植するときに必ず見られる応答)を引き起こさないことを示しているようである。さらにこれらの結果は、少なくともある状況において、MSCがリンパ球の免疫応答を弱めることを示唆する。
【0021】
これらの結果は直ちに同種異系移植に通常伴うHVG及び/又はGVHDを低下させるのにMSCが有用であることを示唆するが、観察されたMSCの免疫抑制作用は用量依存性が高く、免疫抑制作用を観察するには比較的高用量が必要であった。実際、in vitroでの混合リンパ球アッセイにおけるリンパ球の増殖低下は、MSC対リンパ球の比が1:10又はそれ以上でのみ「顕著」であった。さらにMSCの用量が低下すると、観察された阻害作用は低下して観察されなくなり、1:100より低い比率では、MSCの存在が実際にT細胞の増殖を刺激するようであった。同じ用量作用が、分裂促進因子で刺激されたリンパ球の増殖アッセイでも観察された。総説については、非特許文献2〜4を参照されたい。さらなる結果を以下に要約する。
【0022】
例えば、Bartholomewと共同研究者は、ヒヒのMSCが同種異系リンパ球をin vitroで増殖するように刺激せず、MSCが分裂促進因子で刺激されたリンパ球の増殖をin vitroでの混合リンパ球アッセイで50%以上低下させることを見いだした。彼らはさらに、in vivoでのMSCsの投与が皮膚移植片の生存を(対照と比較して)延長させることを示した。in vitroの結果とin vivoの結果とも、高用量のMSCs(in vitroの結果についてはリンパ球と1:1の比)を必要とした。ヒトにおいてin vivoでこのような比率に近づけるのに必要なMSCの量を達成するのは、実際問題としてあまりにも高すぎるかもしれない。これは、MSCsの有用性を限定し得る。非特許文献5を参照されたい。
【0023】
Maitraと共同研究者は、致死量以下で放射線照射したNOD-SCIDマウスへの同種異系のヒト臍帯血細胞の共注入後に、該細胞の生着に対するヒトMSCの作用を調べた。彼らは、ヒトMSCsが生着を促進し、in vitroでの増殖アッセイで同種異系T細胞を活性化しないことを見いだした。彼らはまた、ヒトMSCが分裂促進因子による同種異系ヒトT細胞のin vitro活性化を抑制することを見いだした。この作用は用量依存的であり、抑制には比較的高い比が必要であった(非特許文献6)。
【0024】
最近、Le Blancと共同研究者は、通常致死的であるグレードIVの急性GVHD患者1人を「第三者のハプロアイデンティカル(third party haploidentical)」MSCの投与により治療することに成功したことを報告した。患者は、急性リンパ芽球性白血病を患う9才の少年で、3回目の寛解期であった。まず患者は放射線とシクロホスファミドで治療され、次にHLA-A、HLA-B、及びHLA-DRβ1遺伝子座が彼自身の細胞と同じであった所与の血球が投与された。これらは無関係の女性ドナーから得られていた。積極的治療(種々の免疫抑制の投与を含む)にもかかわらず、移植後70日目までに患者はグレードIVの急性GVHDを発症した。彼はしばしば、侵襲性の細菌、ウイルス、及び真菌感染症に侵された。
【0025】
これらの明らかに緊急の状況下で、代替的な血液幹細胞移植が試みられた。患者の母親からハプロアイデンティカルMSCが単離され、in vitroで3週間増大された。細胞が回収され、患者に2x106細胞/kgで静脈内投与された。MSCに関連する毒性の兆候は無く、大きな副作用は無かった。移植後数日以内に多くの症状が消失したが、疾患が残っていることは明らかであった。同じ方法を使用してMSCがさらに複数回静脈内注射された後、患者の症状とGVHDは完全に消失した。退院の1年後でも、患者は無症状であった。著者によれば、彼らの経験上、この患者はこの重症のGVHDを生き延びた点で他に類がない。Le Blancらにより報告された結果は、有望かつ感動的なものであり、幹細胞を利用する有効な治療法の開発に拍車をかけるはずである。非特許文献7。
【0026】
しかし、これらの結果(Le Blancと共同研究者の結果を含む)は、MSCの潜在的な短所を明らかにしている。細胞は従来の免疫抑制様式で投与する必要があり、これは次に有害な免疫応答を引き起こし続けるであろう。MSCの投与量必要条件は有効であるために非常に高い必要があり、これはより大きなコスト、投与のさらなる困難性、より大きな毒性リスク及び他の有害な副作用、並びに他の欠点を招くであろう。
【特許文献1】特開平07-316051号
【特許文献2】米国特許第6,245,781号
【非特許文献1】Farag (2004) 「Chronic graft-versus-host disease: where do we go from here?」 Bone Marrow Transplantation 33: 569-577
【非特許文献2】Ryan et al. (2005) 「Mesenchymal stem cells avoid allogeneic rejection」 J. Inflammation 2: 8
【非特許文献3】Le Blanc (2003) 「Immunomodulatory effects of fetal and adult mesenchymal stem cells」 Cytotherapy 5(6): 485-489
【非特許文献4】Jorgensen et al. (2003) 「Engineering mesenchymal stem cells for immunotherapy」 Gene Therapy 10: 928-931
【非特許文献5】Bartholomew et al. (2002): 「Mesenchymal stem cells suppress lymphocyte proliferation in vitro and prolong skin graft survival in vito」 Experimental Hematology 30: 42-48
【非特許文献6】Maitra et al. (2004) Bone Marrow Transplantation 33: 597-604
【非特許文献7】Le Blanc et al. (2004) 「Treatment of severe acute graft-versus-host disease with third party haploidentical mesenchymal stem cells」 Lancet 363: 1439-41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
現在の幹細胞ベースの移植関連治療法におけるこれらの制限を考慮すると、宿主−レシピエントのハプロタイプ適合を必要とせず、すべての又は少なくともほとんどのレシピエント宿主に使用できる前駆細胞についての大きなニーズが明らかに存在する。さらに、低用量で治療効果があり、その投与がMSCの使用による有利な結果に必要な高用量レジメンに関連する問題を引き起こさないようにするために、より「特異的な活性」の細胞についてのニーズがある。そして、目的の生物中で生じる細胞を生成する、本質的に無制限の分化能力を有する細胞についてのニーズがある。
【0028】
従って、ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞の自己再生能と分化能とを有するが免疫原性ではない細胞;宿主に同種移植又は異種移植したとき奇形腫を生成しない細胞;ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞に関連する他の安全性の問題を生じない細胞;ES細胞、EG細胞及び生殖細胞の他の利点を保持する細胞;容易に入手できる供給源(例えば、胎盤、臍帯、臍帯血、血液、及び骨髄)から単離し易い細胞;長期間安全に保存できる細胞;容易に得られ、かつ志願者、ドナー又は患者、及び承諾した他の者にリスクの無い細胞;及びES細胞、EG細胞、及び生殖細胞を得る際及びこれらを扱う際に関連する技術的かつロジスティックな困難性を伴わない細胞、についてのニーズがある。
【0029】
最近、本明細書中で多能性成体前駆細胞(「MAPCs」)と称するある種の細胞が単離され、特徴付けられている(例えば、米国特許第7,015,037号参照、これは参照によりその全体を本明細書に組み込まれる)。(「MAPCs」はまた「MASCs」とも呼ばれる。)これらの細胞は、ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞の多くの利点を提供し、かつこれらの欠点の多くが無い。例えばMAPCsは分化能を消失することなく無限に培養することができる。MAPCsは、NOD-SCIDマウスで効率的な長期の生着、及び複数の発生系統に沿った分化を、奇形腫を生成する証拠(ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞でしばしば見られる)なく示す(Reyes, M. and C.M. Verfaillie (2001) Ann N Y Acad Sci. 938: 231-5)。
【課題を解決するための手段】
【0030】
発明の概要
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、(i)胚幹細胞、胚生殖細胞、及び生殖細胞ではなく;(ii)内胚葉性、外胚葉性、中胚葉性の胚系統の少なくとも2種それぞれの少なくとも1種の細胞種に分化することができ;(iii)非同系の被験体に導入したとき、有害な免疫応答を誘発せず;そして(iv)被験体に導入したとき、免疫応答を調節することができる細胞、を提供する。この関連で、特定の実施形態において本発明は、上記に加えて、免疫抑制性である細胞を提供する。さらに、本発明の種々の実施形態は、上記に従って、宿主における有害な免疫応答及び/又はプロセスを治療する(例えば排除、予防、改善、縮小、低減、最小化、除去、及び/又は治癒するなど)のに有用な免疫調節性を有する細胞を提供する。この関連で、本発明のいくつかの実施形態において、前記細胞は、一次治療様式として単独で又は他の治療薬や治療様式とともに使用される。本発明のいくつかの実施形態において、前記細胞は補助的治療様式で使用され、その際、該細胞は単独の治療薬として又は他の治療薬とともに使用してもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記細胞は、1又はそれ以上の一次治療様式において、及び1又はそれ以上の補助的治療様式において、単独で又は他の治療薬もしくは治療様式とともに使用される。
【0031】
本発明の細胞は本明細書においてさらに詳細に説明され、本明細書において一般に「多能性成体前駆細胞」、及び頭文字を取って「MAPC」(単数)及び「MAPCs」(複数)と称される。これらの細胞はES細胞、EG細胞、及び生殖細胞ではなく、かつ3種の原始胚葉系統(外胚葉、中胚葉、及び内胚葉)の少なくとも2種の細胞種、例えば3種すべての原始系統の細胞に、分化する能力を有すると理解される。
【0032】
例えば、MAPCsは、以下の細胞及びその系統の他の細胞を生成することができる:内臓板中胚葉細胞、筋肉細胞、骨細胞、軟骨細胞、内分泌細胞、外分泌細胞、内皮細胞、毛髪形成細胞、歯形成細胞、臓側中胚葉細胞、造血細胞、間質細胞、骨髄間質細胞、神経細胞、神経外胚葉細胞、上皮細胞、眼細胞、膵細胞、及び肝細胞様細胞など。MAPCsにより形成される細胞には、骨芽細胞、軟骨芽細胞、脂肪細胞、骨格筋細胞(skeletal muscle cell)、骨格筋細胞(skeletal myocyte)、胆管上皮細胞、膵腺房細胞、メサンギウム細胞、平滑筋細胞、心筋細胞(cardiac muscle cell)、心筋細胞(cardiomyocyte)、骨細胞、血管形成細胞、乏突起神経膠細胞、ニューロン(セロトニン作動性、GABA作動性、ドパミン作動性ニューロンを含む)、グリア細胞、小グリア細胞、膵上皮細胞、消化管上皮細胞、肝上皮細胞、皮膚上皮細胞、腎(kidney)上皮細胞、腎(renal)上皮細胞、膵島細胞、繊維芽細胞、肝細胞、及び上記と同じ系統の他の細胞などがある。
【0033】
MAPCsは、自己再生に必要であり、かつ未分化状態を維持するのに必要であると考えられているテロメラーゼ活性を有する。一般にこれらはまたoct-3/4を発現する。oct-3/4(ヒトのoct-3A)は、本来ES細胞、EG細胞、及び生殖細胞に特異的である。これは、広い分化能力を有する未分化細胞のマーカーであると考えられている。oct-3/4はまた一般に、未分化状態で細胞を維持するのに役割を有すると考えられている。oct-4(ヒトのoct-3)は、原腸形成前の胚、初期卵割段階の胚、胚盤胞の内部細胞塊の細胞、及び胚性癌腫(「EC」)細胞で発現される転写因子であり(Nichols, J. et al. (1998) Cell 95: 379-91)、細胞が誘導されて分化するときにダウンレギュレートされる。oct-4遺伝子(ヒトのoct-3)はヒトで少なくとも2つのスプライス変異体(oct-3Aとoct-3B)に転写される。oct-3Bスプライス変異体は多くの分化細胞でみられるが、oct-3Aスプライス変異体(以前はoct-3/4と呼ばれた)は未分化胚幹細胞に特異的であると報告された。Shimozaki et al. (2003) Development 130: 2505-12を参照されたい。oct-3/4の発現は、胚形成と分化の初期段階を決定する上で重要な役割を果たす。oct-3/4はrox-1と組合せると、Zn-フィンガータンパク質rex-1(これもES細胞を未分化状態に維持するのに必要である)の転写活性化を引き起こす(Rosfjord, E. and Rizzino, A. (1997) Biochem.Biophys.Res.Com.203: 1795-802; Ben-Shushan, E. et al. (1998) Mol.Cell Biol. 18: 1866-78)。
【0034】
MAPCsも、一般に、始原幹細胞に特異的であると考えられる他のマーカーを発現する。これらには、rex-1、rox-1、及びsox-2がある。rex-1はoct-3/4により制御され、これはrex-1の下流の発現を活性化した。rox-1とsox-2は非ES細胞で発現される。
【0035】
本発明の種々の実施形態は、被験体における疾患及び/又は有害な免疫応答及び/又はプロセスを排除、予防、治療、改善、縮小、低減、最小化、除去、及び/又は治癒するためにMAPCsを使用する方法を提供する。本発明の特定の実施形態は、細胞自体を一次治療様式として使用する方法を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記細胞は、一次治療様式として1又はそれ以上の他の物質及び/又は治療様式とともに使用される。本発明のいくつかの実施形態において、前記細胞は補助的治療様式として、すなわち他の一次治療様式の補助として使用される。いくつかの実施形態において、前記細胞は、補助的治療様式の単独の活性物質として使用される。別の実施形態では、前記細胞は、1又はそれ以上の他の物質又は治療様式とともに、補助的治療様式として使用される。いくつかの実施形態において、前記細胞は、一次及び補助的治療薬及び/又は様式の両方として使用される。両者に関して、前記細胞は、一次及び/又は補助的様式において単独で使用することができる。前記細胞はまた、一次若しくは補助的様式又はその両方において、他の治療薬又は治療様式とともに使用することができる。
【0036】
上記したように、一次治療(例えば、治療薬、治療法、及び/又は治療様式)は、治療されるべき主要な機能障害(例えば疾患)を標的とする(すなわち、それに対して作用させることが意図される)。補助的治療(例えば、治療法及び/又は治療様式)は、一次治療(例えば治療薬、治療法、及び/又は治療様式)とともに施すことにより、主要な機能障害(例えば疾患)に作用させ、一次治療の作用を補足し、その結果、治療レジメンの全体的な有効性を増加させることができる。補助的治療(例えば、治療薬、治療法及び/又は治療様式)をさらに施すことにより、主要な機能障害(例えば疾患)の合併症及び/又は副作用、並びに/又は治療(例えば、治療薬、治療法及び/又は治療様式)により引き起こされるものに作用させることができる。これらの使用のいずれかについて、1、2、3、またはそれ以上の一次治療は、1、2、3、またはそれ以上の補助的治療とともに使用することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、MAPCsは、機能障害(例えば疾患、副作用、及び/又は有害な免疫応答)の開始前に被験体に投与される。いくつかの実施形態において、この細胞は、機能障害が進行している間に投与される。いくつかの実施形態において、この細胞は、機能障害が確立された後に投与される。細胞は、機能障害の進行、存続、及び/又は増幅の任意の段階で、又は機能障害が後退した後に投与することができる。
【0038】
上記したように、本発明の実施形態は、一次治療法又は補助的治療法のための細胞と方法とを提供する。本発明の特定の実施形態において、この細胞は同種異系の被験体に投与される。いくつかの実施形態において、この細胞は被験体に対して自己由来である。いくつかの実施形態において、この細胞は被験体に対して同系である。いくつかの実施形態において、この細胞は被験体に対して異種である。同種異系であっても、自己由来であっても、同系であっても、又は異種であっても、本発明の種々の実施形態において、MAPCsは被験体において弱い免疫原性であるか又は非免疫原性である。いくつかの実施形態において、MAPCsは十分に低い免疫原性を有するか又は非免疫原性であり、一般に有害な免疫応答は十分にはなく、同種異系の被験体に投与されるとき、これらは組織型判定や適合をすることなく「普遍的」ドナー細胞として使用することができる。本発明の種々の実施形態に従って、MAPCsは細胞バンクで保存し維持することができ、その結果、必要な時に利用できるように維持することができる。
【0039】
これらの及び他のすべての関連で、本発明の実施形態は、哺乳動物(ある実施形態においてヒトを含む)由来のMAPC、及び他の実施形態で非ヒト霊長類、ラット及びマウス、並びにイヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、及びウシ由来のMAPCsを提供する。上記した哺乳動物から調製したMAPCsは、本明細書に記載した本発明の方法及び態様の全てで使用することができる。
【0040】
本発明の種々の実施形態のMAPCsは、そのような哺乳動物の種々のコンパートメントや組織(特に限定されないが、骨髄、血液、脾臓、肝臓、筋肉、脳、及び他の後述のもの)から単離することができる。いくつかの実施形態においてMAPCsは使用前に培養される。
【0041】
いくつかの実施形態において、MAPCsは、免疫調節性を改善するために遺伝子的に操作される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたMAPCsはin vitro培養で製造される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたMAPCsはトランスジェニック生物から製造される。
【0042】
種々の実施形態において、MAPCsは、細胞療法の有効な送達のための任意の経路により被験体に投与される。いくつかの実施形態において、この細胞は注射(局所的及び/又は全身注射を含む)により投与される。特定の実施形態において、この細胞は、治療が意図される機能障害の部位内及び/又はその近傍で投与される。いくつかの実施形態において、この細胞は、機能障害の部位の近傍ではなくその部位で注射により投与される。いくつかの実施形態において、前記細胞は、全身注射(例えば静脈内注射)により投与される。
【0043】
いくつかの実施形態において、MAPCsは、所望の治療効果が達成されるまで又は投与が被験体に利益を与えるであろうと思われなくなるまで、1回、2回、3回、又はそれ以上投与される。いくつかの実施形態において、MAPCsは、ある期間連続的に、例えば点滴静注により投与される。MAPCsの投与は、短期間、数日、数週間、数ヶ月、数年、又はそれ以上の期間でもよい。
【0044】
以下、番号を付けた段落は、本発明の実施形態のいくつかを例示し、その態様及び特徴の一部を例示する。これらは、多くの態様及び実施形態を網羅的に説明するものではなく、従って、決して本発明を限定するものではない。本発明の多くの他の態様、特徴、及び実施形態が本明細書に記載される。本出願を読み、この分野の先行技術や知識を十分に考慮することにより、他の多くの態様や実施形態が当業者には容易に明らかであろう。
【0045】
以下、番号を付けた段落は、自己参照である。「上記又は下記のいずれかに記載の」という言い回しは、前記すべての及び下記すべての番号を付けた段落とその内容を意味する。「#に記載の」という形式のすべての言い回しは、その番号を付けた段落を直接参照し、例えば「46に記載の」は、番号を付けた段落の集合の中で段落46に記載されることを意味する。すべての相互参照は組合せであるが、ただし範囲の重複と不一致は除く。相互参照は、主題の互いの種々の組合せを含むことを示す簡潔な記載を明示的に提供するために使用される。
【0046】
1. 被験体の免疫機能障害を治療する方法であって、免疫機能障害に罹る可能性があるか、罹っているか、又は罹った被験体に、該免疫機能障害を治療するのに有効な経路と有効な量で、細胞(MAPCs)(胚幹細胞、胚生殖細胞、又は生殖細胞ではなく;内胚葉性、外胚葉性、中胚葉性の胚系統の少なくとも2種それぞれの少なくとも1種の細胞種に分化することができ;被験体において有害な免疫応答を誘発せず;かつ免疫機能障害を治療するのに有効な細胞)を投与することを含んでなる方法。
【0047】
2. 被験体の補助的治療の方法であって、免疫機能障害に罹る可能性があるか、罹っているか、又は罹った被験体に、該免疫機能障害を治療するのに有効な経路と有効な量で、細胞(MAPCs)(胚幹細胞、胚生殖細胞、生殖細胞ではなく;内胚葉性、外胚葉性、中胚葉性の胚系統の少なくとも2種それぞれの少なくとも1種の細胞種に分化することができ;該被験体において有害な免疫応答を誘発せず;かつ免疫機能障害を治療するのに有効な細胞)を投与することを含んでなり、ここで前記細胞は、免疫機能障害を治療するために、別の疾患を治療するために、又はこれらの両方を治療するために施される1又はそれ以上の治療に対して補助的に投与されることを特徴とする方法。
【0048】
3. 前記細胞は、内胚葉性、外胚葉性、及び中胚葉性の胚系統それぞれの少なくとも1種の細胞種に分化することができる、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0049】
4. 前記細胞はテロメラーゼを発現する、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0050】
5. 前記細胞はoct-3/4について陽性である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0051】
6. 前記細胞は、被験体への投与の前に培養で少なくとも10〜40回の細胞倍加を受けている、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0052】
7. 前記細胞は哺乳動物細胞である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0053】
8. 前記細胞は、ヒト、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラット、又はマウス細胞である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0054】
9. 前記細胞は、ヒト、ラット、又はマウス細胞である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0055】
10. 前記細胞はヒト細胞である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0056】
11. 前記細胞は、胎盤組織、臍帯組織、臍帯血、骨髄、血液、脾臓組織、胸腺組織、脊髄組織、脂肪組織、及び肝臓組織のいずれかから単離された細胞に由来する、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0057】
12. 前記細胞は、胎盤組織、臍帯組織、臍帯血、骨髄、血液、及び脾臓組織のいずれかから単離された細胞に由来する、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0058】
13. 前記細胞は、胎盤組織、臍帯組織、臍帯血、骨髄、又は血液のいずれかから単離された細胞に由来する、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0059】
14. 前記細胞は、骨髄又は血液のいずれか1つ以上から単離された細胞に由来する、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0060】
15. 前記細胞は被験体に対して同種異系である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0061】
16. 前記細胞は被験体に対して異種である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0062】
17. 前記細胞は被験体に対して自己由来である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0063】
18. 被験体は哺乳動物である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0064】
19. 被験体は、哺乳動物のペット動物、哺乳動物の家畜動物、哺乳動物の研究動物、又は非ヒト霊長類である、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0065】
20. 被験体はヒトである、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0066】
21. 前記細胞は、被験体の質量1kgあたり104〜108個の前記細胞を含む1以上の回分で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0067】
22. 前記細胞は、被験体の質量1kgあたり105〜107個の前記細胞を含む1以上の回分で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0068】
23. 前記細胞は、被験体の質量1kgあたり5x106〜5x107個の前記細胞を含む1以上の回分で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0069】
24. 前記細胞は、被験体の質量1kgあたり2x107〜4x107個の前記細胞を含む1以上の回分で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0070】
25. 前記細胞に加えて、1又はそれ以上の因子が前記被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0071】
26. 前記細胞に加えて、1又はそれ以上の成長因子、分化因子、シグナル伝達因子、及び/又はホーミングを増加させる因子が前記被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0072】
27. 前記細胞に加えて、1又はそれ以上のサイトカインが前記被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0073】
28. 前記細胞は、該細胞の投与前、同時、又は後に施される別の治療に対して補助的に被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0074】
29. 前記細胞は、1つ又はそれ以上の免疫抑制剤の被験体への投与に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0075】
30. 前記細胞による治療に加えて、被験体は移植を受ける予定であるか又は受けており、該細胞は移植に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0076】
31. 前記細胞による治療に加えて、被験体は、腎臓、心臓、肺、肝臓、又は他の臓器の移植を受ける予定であるか又は受けており、該細胞は移植に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0077】
32. 前記細胞による治療に加えて、被験体は、骨髄、静脈、動脈、筋肉、又は他の組織の移植を受ける予定であるか又は受けており、該細胞は移植に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0078】
33. 前記細胞による治療に加えて、被験体は、血球、島細胞、又は他の組織もしくは臓器再生細胞の移植を受ける予定であるか又は受けており、該細胞は移植に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0079】
34. 前記細胞による治療に加えて、被験体は血球移植を受ける予定であるか又は受けており、該細胞は移植に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0080】
35. 前記細胞による治療に加えて、被験体は骨髄移植を受ける予定であるか又は受けており、該細胞は移植に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0081】
36. 前記細胞による治療に加えて、被験体は1又はそれ以上の免疫抑制剤により治療されたか、将来治療されるか、又は治療されており、該細胞は免疫抑制剤による治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0082】
37. 前記細胞による治療に加えて、被験体はコルチコステロイド、シクロスポリンA、シクロスポリン様免疫抑制剤、シクロホスファミド、抗胸腺細胞グロブリン、アザチオプリン、ラパマイシン、FK-506、FK-506及びラパマイシン以外のマクロライド様免疫抑制剤、並びに免疫抑制性モノクローナル抗体剤(すなわち、免疫抑制性モノクローナル抗体である免疫抑制剤、或いは全体もしくは1以上の部分でモノクローナル抗体を含む作用物質、例えばモノクローナル抗体のFcもしくはAg結合部位を含むキメラタンパク質)の1種以上により治療されたか、将来治療されるか、又は治療されており、該細胞はこれに対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0083】
38. 前記細胞による治療に加えて、被験体はコルチコステロイド、シクロスポリンA、アザチオプリン、ラパマイシン、シクロホスファミド、FK-506、又は免疫抑制性モノクローナル抗体剤の1種以上により治療されたか、将来治療されるか、又は治療されており、該細胞はこれに対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0084】
39. 前記細胞は、被験体への1又はそれ以上の抗生物質の投与に対して補助的に被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0085】
40. 前記細胞は、被験体への1又はそれ以上の抗真菌剤の投与に対して補助的に被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0086】
41. 前記細胞は、被験体への1又はそれ以上の抗ウイルス剤の投与に対して補助的に被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0087】
42. 前記細胞は、被験体への免疫抑制剤及び/又は抗生物質及び/又は抗真菌剤及び/又は抗ウイルス剤のいずれか2またはそれ以上の任意の組合せの投与に対して、補助的に被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0088】
43. 前記細胞は、移植の治療効果を損なうか若しくは損なう可能性がある、及び/又は移植拒絶を引き起こすか若しくは引き起こす可能性がある被験体の宿主対移植片反応を治療するために、移植治療法に対して補助的に被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0089】
44. 前記細胞は、機能低下した免疫系及び/又は除去された免疫系の1又はそれ以上などの、弱まった免疫系を有する被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0090】
45. 前記細胞は、被験体に施されたか、施されているか、又は将来施される放射線療法もしくは化学療法、又は放射線と化学療法の組合せに対して補助的に被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0091】
46. 前記細胞は、放射線療法、化学療法、又は放射線及び化学療法の組合せの継続的なレジメンに対して補助的に被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0092】
47. 被験体の免疫系は、放射線療法、化学療法、又は放射線と化学療法との組合せにより、弱められているか、低下しているか、及び/又は除去されている、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0093】
48. 被験体は同系ではない血球又は骨髄移植片のレシピエントであり、被験体の免疫応答は放射線療法、化学療法、又は放射線と化学療法との組合せにより、弱められているか又は除去されており、被験体は移植片対宿主病を発症するリスクがあるか又はこれを発症している、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0094】
49. 被験体は同系ではない血球又は骨髄移植片のレシピエントであり、被験体の免疫応答は放射線療法、化学療法、又は放射線療法と化学療法との組合せにより、弱められているか又は除去されており、免疫抑制剤が被験体に投与されており、ここで被験体は移植片対宿主病を発症するリスクがあるか又はこれを発症しており、前記細胞は1又はそれ以上の他の治療(すなわち、移植、放射線療法、化学療法、及び/又は免疫抑制剤)に対して補助的に、移植片対宿主病を治療するために該被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0095】
50. 被験体は非同系移植片のレシピエントとなる予定であるか又は非同系移植片のレシピエントであり、宿主対移植片反応を発症するリスクがあるか又はこれを発症しており、前記細胞は宿主対移植片反応を治療するために投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0096】
51. 被験体は新生物のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0097】
52. 被験体は血液又は骨髄細胞の新生物のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0098】
53. 被験体は骨髄細胞の良性新生物、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、又は急性白血球のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0099】
54. 被験体は骨髄細胞の良性新生物のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0100】
55. 被験体は骨髄増殖性疾患のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0101】
56. 被験体は慢性骨髄性白血病(「CML」)(慢性顆粒球性白血病(「CGL」)とも呼ぶ)、原発性骨髄繊維症、本態性血小板減少症、真性赤血球増加症、又は他の骨髄増殖性疾患の1以上のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0102】
57. 被験体は骨髄異形成症候群のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0103】
58. 被験体は急性白血球のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0104】
59. 被験体は、急性多発性骨髄腫、骨髄芽球性白血病、慢性骨髄性白血病(「CML」)、急性前骨髄性白血病、前B急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(「CLL」)、B細胞リンパ腫、ヘアリーセル白血病、骨髄腫、T-急性リンパ芽球性白血病、末梢T細胞リンパ腫、他のリンパ性白血病、他のリンパ腫、又は他の急性白血病の1又はそれ以上のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0105】
60. 被験体は貧血又は他の血液疾患のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0106】
61. 被験体は異常ヘモグロビン症、サラセミア、骨髄機能不全症候群、鎌状赤血球貧血、再生不良性貧血、ファンコーニ貧血、又は免疫性溶血性貧血のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0107】
62. 被験体は、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰芽細胞を伴う不応性貧血、移行期の過剰芽細胞を伴う不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病、又は他の骨髄異形成症候群の1又はそれ以上のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0108】
63. 被験体はファンコーニ貧血のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0109】
64. 被験体は免疫機能障害のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0110】
65. 被験体は先天性免疫不全症のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0111】
66. 被験体は自己免疫機能不全、障害、又は疾患のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0112】
67. 被験体は以下の自己免疫機能不全:クローン病、ギラン-バレー症候群、紅斑性狼瘡(「SLE」及び全身性エリテマトーデスとも呼ばれる)、多発性硬化症、重症筋無力症、視神経炎、乾癬、慢性関節リウマチ、グレーブス病、橋本病、Ord甲状腺炎、糖尿病(I型)、ライター症候群、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、抗リン脂質抗体症候群(「APS」)、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(「OMS」)、側頭動脈炎、急性播種性脳脊髄炎(「ADEM」及び「ADE」)、グッドパスチャー症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、セリアック病、天疱瘡、多発性関節炎、及び温暖型自己免疫性溶血性貧血の1又はそれ以上のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0113】
68. 被験体は以下の自己免疫機能不全:クローン病、紅斑性狼瘡(「SLE」及び全身性エリテマトーデスとも呼ばれる)、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、慢性関節リウマチ、グレーブス病、橋本病、糖尿病(I型)、ライター症候群、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病、多発性関節炎、及び温暖型自己免疫性溶血性貧血)の1又はそれ以上のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0114】
69. 被験体は、自己免疫成分を有すると考えられる以下の疾患:子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経ミオトニー、強皮症、進行性全身性硬化症、白斑、慢性外陰病変、シャーガス病、サルコイドーシス、慢性疲労症候群、及び自律神経障害の1又はそれ以上のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0115】
70. 被験体は炎症性疾患のリスクがあるか又はこれに罹患しており、前記細胞はその治療に対して補助的に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0116】
71. 前記細胞は、1又はそれ以上の他の薬剤活性物質を含む製剤で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0117】
72. 前記細胞は、1又はそれ以上の他の免疫抑制剤を含む製剤で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0118】
73. 前記細胞は、コルチコステロイド、シクロスポリンA、シクロスポリン様免疫抑制剤、シクロホスファミド、抗胸腺細胞グロブリン、アザチオプリン、ラパマイシン、FK-506、FK-506及びラパマイシン以外のマクロライド様免疫抑制剤、並びに免疫抑制性モノクローナル抗体剤の1つ又はそれ以上を含む製剤で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0119】
74. 前記細胞は、コルチコステロイド、シクロスポリンA、アザチオプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、FK-506、及び免疫抑制性モノクローナル抗体剤の1つ又はそれ以上を含む製剤で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0120】
75. 前記細胞は、1つ又はそれ以上の抗生物質を含む製剤で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0121】
76. 前記細胞は、1つ又はそれ以上の抗真菌剤を含む製剤で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0122】
77. 前記細胞は、1つ又はそれ以上の抗ウイルス剤を含む製剤で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0123】
78. 前記細胞は、非経口経路で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0124】
79. 前記細胞は、以下の非経口経路のいずれか1以上で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法:静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内、くも膜下内、骨内、関節内、滑液包内、皮内(intracutaneous)、皮内(intradermal)、皮下、及び筋肉内注射。
【0125】
80. 前記細胞は、以下の非経口経路のいずれか1以上で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法:静脈内、動脈内、皮内(intracutaneous)、皮内(intradermal)、皮下、及び筋肉内注射。
【0126】
81. 前記細胞は、以下の非経口経路のいずれか1以上で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法:静脈内、動脈内、皮内(intracutaneous)、皮下、及び筋肉内注射。
【0127】
82. 前記細胞は、注射器により皮下注射針を介して被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0128】
83. 前記細胞は、カテーテルを介して被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0129】
84. 前記細胞は、外科的移植により投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0130】
85. 前記細胞は、関節鏡視下の処置による移植法により被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0131】
86. 前記細胞は、支持体内又は支持体上で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0132】
87. 前記細胞は、封入形態で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0133】
88. 前記細胞は、以下の経路のいずれか1以上による投与に適するように調製される、上記又は下記のいずれかに記載の方法:経口、直腸、経皮、眼内、鼻内、及び肺内。
【0134】
89. 前記細胞は、1回で被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0135】
90. 前記細胞は、2回またはそれ以上の組で連続して被験体に投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0136】
91. 前記細胞は、1回で、2回で、または3回以上で投与され、投与量は同じかまたは異なり、等しい間隔又は等しくない間隔で投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0137】
92. 前記細胞は、1日未満〜1週間、1週間〜1ヶ月、1ヶ月〜1年、1年〜2年、又は2年より長い期間にわたって投与される、上記又は下記のいずれかに記載の方法。
【0138】
93. 被験体の免疫機能障害の治療法であって、免疫機能障害に罹った被験体に、被験体の免疫機能障害を治療するのに有効な経路と量で、細胞(胚幹細胞、胚生殖細胞、又は生殖細胞ではなく;内胚葉性、外胚葉性、及び中胚葉の胚系統の少なくとも2種それぞれの少なくとも1種の細胞種に分化することができ;被験体において有害な免疫応答を誘発せず;かつ被験体の免疫機能障害を治療するのに有効な細胞)を投与することを含んでなる方法。
【0139】
94. 被験体の免疫機能障害の補助的治療の方法であって、免疫機能障害に罹った被験体に、被験体の免疫機能障害を治療するのに有効な経路と量で、細胞(胚幹細胞、胚生殖細胞、又は生殖細胞ではなく;内胚葉性、外胚葉性、中胚葉性の胚系統の少なくとも2種それぞれの少なくとも1種の細胞種に分化することができ;被験体において有害な免疫応答を誘発せず;かつ被験体の免疫機能障害を治療するのに有効な細胞)を投与することを含んでなり、該細胞は、同じ免疫機能障害を治療するために、1又はそれ以上の他の機能障害を治療するために、又はその両方を治療するために、被験体に施されている1又はそれ以上の他の治療に対して補助的に被験体に投与される方法。
【0140】
本発明の他の態様は、以下の開示に記載されているか又はそこから明らかであり、これらは本発明の範囲内である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0141】
定義
本明細書において、特定の用語は以下に示す意味を有する。
【0142】
「A」又は「a」は、1又はそれ以上で、すなわち、少なくとも1を指す。
【0143】
「補助的」は、共同で、一緒に、加えて、組合せてなどを意味する。
【0144】
「共投与する」は、2つまたはそれ以上の作用物質の同時又は連続的投与を含むことができる。
【0145】
「サイトカイン」は、MAPCs又は他の幹細胞、前駆細胞、又は分化した細胞のホーミングなどの細胞挙動を誘導又は増強する細胞因子を指す。サイトカインはまた、そのような細胞が分裂するように刺激し得る。
【0146】
「有害な」とは害があることを意味する。例えば、本明細書において「有害な免疫応答」とは、害がある免疫応答、例えば欠如しているか又は弱過ぎる免疫応答、強すぎる免疫応答、及び/又は標的を誤った免疫応答を意味する。有害な免疫応答には、免疫疾患で起きる害のある免疫応答がある。例としては、免疫不全疾患における免疫応答の欠如、及び自己免疫疾患における拡大した及び/又は標的を誤った免疫応答などがある。また有害な免疫応答には、医療を妨害する免疫応答(正常な免疫応答を含む)がある。例としては、移植及び移植片の拒絶、移植片対宿主病を引き起こす移植及び移植片における免疫担当細胞の応答などがある。
【0147】
「分化因子」とは、系統の決定を誘導する細胞因子(例えば増殖因子)を指す。
【0148】
「機能障害」は、本明細書において、障害、疾患、又は正常なプロセスによる有害作用を意味する。例えば、免疫機能障害には、免疫疾患、例えば自己免疫疾患及び免疫不全症などがある。これはまた、医療を妨害する免疫応答(医療を妨害する正常な免疫応答を含む)を含む。かかる機能障害の例には、移植や移植片の拒絶に関与する免疫応答、及び移植片対宿主病を引き起こす移植や移植片における免疫担当細胞の応答などがある。
【0149】
「EC細胞」は胚癌細胞を指す。
【0150】
「有効量」は一般に、所望の局所的又は全身的効果を与える量を意味する。例えば有効量は、有益な又は所望の臨床結果を実現するのに十分な量である。有効量は、全てを1回の投与で一度に提供することもできるし、又は数回の投与で有効量を提供する分割量で提供することもできる。例えば、MAPCsの有効量は1回又はそれ以上で投与することができ、あらかじめ選択された任意の量の細胞を含むことができる。有効量とみなされる量の正確な決定は、各被験体に対する個々の要因(その大きさ、年齢、傷害を含む)、及び/又は治療される疾患又は傷害、及び傷害が発生してから又は疾患が始まってからの時間を基礎とすることができる。当業者は所与の被験体についての有効量を、当該分野で慣用的であるこれらの検討事項に基づいて決定できるであろう。すなわち、例えば当業者(例えば医師)は、本明細書に開示の及び当該分野におけるMAPCsの既知の性質に基づいて、前記要因を考慮しながら、所与の被験体のMAPCsの有効量を決定できるであろう。本明細書で使用する「有効用量」は、「有効量」と同じことを意味する。
【0151】
「EG細胞」は胚生殖細胞を指す。
【0152】
「生着」は、目的の既存の組織にin vivoで細胞を接触及び組み込むプロセスを指す。
【0153】
「富化集団」は、開始集団中の他の細胞又は成分と比較したMAPCsの数の相対的増加、例えば培養物(例えば初代培養物など)又はin vivoにおける1以上の非MAPC細胞と比較したMAPCsの数の増加を意味する。
【0154】
「ES細胞」は胚幹細胞を指す。
【0155】
「増大」は、分化を伴わない細胞の増幅を指す。
【0156】
本明細書で使用する「ファンコーニの貧血」は、遺伝疾患であるファンコーニ貧血と同じものを意味する。
【0157】
「GVHD」は移植片対宿主病を指し、これは、移植片の免疫担当細胞により非自己として認識されるとき、主に免疫担当宿主で起こるプロセスを意味する。
【0158】
「HVG」は、宿主対移植片反応を指し、これは、宿主が移植片を拒絶するときに起こるプロセスを意味する。典型的には、HVGは、移植片が宿主の免疫担当細胞により外来(非自己)として認識されるときに誘発される。
【0159】
「単離された」とは、1つ又はそれ以上の細胞と会合していないか、又はin vivoで細胞と会合している1つ又はそれ以上の細胞の成分と会合していない細胞を指す。
【0160】
「MAPC」は、「多能性成体前駆細胞(multipotent adult progenitor cell)」の頭文字を取ったものである。これは、2つ以上の胚葉、例えば3種すべての胚葉(すなわち、内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)の細胞系統を生じることができる非ES細胞、非EG細胞、非生殖細胞を指す。MAPCsはまたテロメラーゼ活性を有する。これらはoct-3/4(例えばヒトoct-3/4)について陽性であり得る。MAPCsはまた、rex-1及びrox-1を発現し得る。さらにこれは、sox-2、SSEA-4、及び/又はその類似体(nanog)を発現し得る。MAPC中の用語「成体」は限定的ではない。これは、単に、これらの細胞がES細胞、EG細胞、又は生殖細胞ではないことを意味するものである。本明細書で使用するように、典型的には、MAPCは単数であり、MAPCsは複数である。MAPCsはまた、多能性成体幹細胞(MASCs)とも呼ばれる。例えば米国特許第7,015,037号(これは、MAPC/MASC、並びにその単離及び増殖の方法の開示に関し、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0161】
「MASC」、MAPCを参照されたい。
【0162】
「MNC」は単核細胞を指す。
【0163】
「様式(modality)」は、種類、アプローチ、手段、又は方法、例えば治療様式は、治療法の種類を意味する。
【0164】
「MSC」は、間充織幹細胞の頭文字を取ったものである。
【0165】
MAPCsについて「多能性」は、分化により2種以上の胚葉、例えば3種すべての胚葉(すなわち内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)の細胞系統を生じる能力を指す。
【0166】
「存続(persistence)」は、細胞が拒絶に抵抗し、in vivoで長期的(例えば、数日、数週間、数ヶ月、又は数年)に数を維持する及び/又は増加する能力を指す。
【0167】
多能性成体前駆細胞(MAPCs)で使用される「前駆」は、これらの細胞が他の細胞(例えばさらに分化した細胞)を生じることができることを指す。この用語は限定的ではなく、これらの細胞を特定の系統に限定しない。
【0168】
「自己再生」とは、元々の細胞と同一の分化能を有する娘幹細胞を産生(複製)する能力を指す。この関連で使用される同様の用語は「増殖」である。
【0169】
「被験体」は脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばヒトである。哺乳動物は、特に限定されないが、ヒト、家畜、競技動物、及びペットなどを含む。本発明の方法により治療が必要な被験体は、障害、機能障害、又は疾患(例えば、免疫不全又は機能障害、例えばHVG及びGVHD)、或いはこれらの又はその治療の副作用を患っており、一次治療又は補助的治療としてのMAPCsの投与から利益を受けることができる被験体を含む。
【0170】
本明細書で使用する「移植」は、被験体に細胞、組織、又は臓器を導入することを意味する。移植物は、被験体から、培養物から、又は非被験体供給源から得ることができる。
【0171】
「治療する」、「治療している」又は「治療」は、不全、機能障害、疾患、又は有害作用を与える他のプロセス(例えば免疫系の不全、機能障害、疾患、又は免疫系の機能もしくは性質に有害な影響を与えるか又は治療を妨害する他のプロセスなど)を治療、予防、改善、阻害、又は治癒することを含む。
【0172】
発明の詳細な説明
イントロダクション
MAPCsは、単独で使用したとき及び他の治療と組合せて使用したとき、細胞移植法(例えば組織及び臓器再生のため)により疾患を治療するのに非常に有望である。疾患を治療するための、及び組織や臓器再生のためのMAPCsの見込みを実現するのに妨害になる可能性のあるものは、典型的に移植治療(例えば血液や骨髄移植治療及び固体臓器移植)の成功を困難にするか又は妨害する、有害な免疫応答である。これらの免疫合併症の中で顕著なものは、宿主の免疫系による移植片拒絶(本明細書において宿主対移植片反応及び「HVG」と呼ぶ)、及び移植片中の免疫担当細胞が宿主の非自己成分との接触により活性化されるときに生じる免疫障害をもつ宿主への全身性損傷(本明細書において移植片対宿主病及び「GVHD」と呼ぶ)である。
【0173】
MAPCsは同種異系宿主で免疫応答を引き起こさないことがわかった(本明細書で詳述される)。すなわち、同種異系宿主へのMAPCsの移植は、同種異系移植片拒絶(すなわちHVG)を引き起こさないはずである。
【0174】
さらに、同種異系MAPCsは、呼吸に対する有害な影響なく高濃度で宿主に投与することができることが見出されており、これは、肺で過度の凝集及び/又は沈着が起きないことを示唆する。
【0175】
さらに、MAPCsは免疫応答を調節できることがわかった(本明細書で詳述される)。特にこの点で、MAPCsは免疫応答(例えば、これに限定されるものではないが、HVGやGVHDに関与する免疫応答)を抑制できることが見出された。さらに特にこの点で、MAPCsは、強力なT細胞刺激物質(例えばコンカナバリンA及び同種異系刺激細胞)の存在下でも、T細胞の増殖を抑制できることがわかった。
【0176】
さらに、比較的少量のMAPCsでさえ、これらの応答を抑制することができることがわかった。実際、混合リンパ球反応においてわずか3%のMAPCsは、強力な刺激物質に対するT細胞応答をin vitroで50%低下させるのに十分である。
【0177】
従って、これに関連する本発明の特定の態様において、特定の実施形態は、有害な免疫反応(例えば移植治療で起こる反応)を治療、改善、及び/又は治癒又は排除するための組成物や方法などを提供する。
【0178】
同種異系MAPCsの低免疫原性、有害な免疫応答を抑制するこれらの能力、及びこれらの高特異的活性は、これらを有害免疫成分による疾患の治療における補助的治療法に特に価値のあるものにする。かかる疾患には、典型的には被験体自身の免疫系の機能障害が疾患を引き起こす自己免疫疾患がある。MAPCsはまた、移植治療法で起こる有害免疫応答を治療するための免疫抑制補助的治療法として有用である。例としては、免疫担当宿主におけるHVGや免疫欠陥のある宿主におけるGVHDなどがある。MAPCsはさらに、種々の新生物、貧血、及び血液疾患の治療、及び特定の炎症性疾患の治療における補助的免疫抑制治療において有用であり得る。この点で疾患を下記でさらに詳細に議論する。
【0179】
MAPC単離、特徴付け、及び増大のために本明細書に記載される方法を、MAPCsの免疫抑制性に関する本明細書の開示とともに使用することにより、免疫障害、機能障害、又は疾患(例えば、有害な免疫反応、例えば他の治療法により生じる免疫反応(移植治療法を困難にする免疫反応、例えばHVGやGVHDを含む)を含む)を予防、抑制、又は縮小するために、MAPCsを使用することができる。かかる障害、機能障害、及び疾患には、特に、先天性免疫疾患及び自己免疫疾患も含まれる。
【0180】
MAPCsはこれらの点及び他の点で、一次治療物質及び治療様式として有用である。MAPCsは、治療上、単独で又は他の作用物質と共に使用することができる。MAPCsは、かかる作用物質の投与前、投与中、及び/又は投与後に投与することができる。同様に、単独で使用されても他の物質とともに使用されても、MAPCsは、移植前、移植中、及び/又は移植後に投与することができる。移植中に投与される場合、MAPCsは移植材料と一緒に又は別々に投与することができる。別々に投与される場合、MAPCsは移植体と連続して又は同時に投与することができる。さらにMAPCsは移植体の前に及び/又は移植体の後に投与してもよい。
【0181】
特に移植治療法でMAPCsとともに使用できる他の物質として免疫調節剤などが挙げられる。様々なそのような物質が本明細書に記載されている。本発明の特定の実施形態において、免疫調節剤は、例えば本明細書で記載されるような免疫抑制剤である。かかる免疫抑制剤には、コルチコステロイド、シクロスポリンA、シクロスポリン様免疫抑制化合物、アザチオプリン、シクロホスファミド、及びメソトレキセートがある。
【0182】
MAPCsは本明細書で記載される種々の方法により宿主に投与することができる。特定の実施形態において、MAPCsは、静脈内注射などの、注射により投与される。いくつかの実施形態において、MAPCsは投与のためにカプセル化される。いくつかの実施形態において、MAPCsはin situで投与される。例としては、固体臓器移植及び臓器修復におけるMAPCsのin situ投与などがある。これら及び他の投与形態は以下に説明される。
【0183】
本発明のいくつかの実施形態において、MAPCsは、MAPCs(細胞)対身体質量(体重)の比率で測定される用量で投与される。あるいは、MAPCsは一定数の細胞の用量で投与することができる。用量、投与経路、製剤化などは、本明細書で詳述される。
【0184】
作用機構
MAPCsの免疫調節性及び他の性質、活性、及び作用についていずれか1以上の説明的機構に限定されることなく、MAPCsが種々の様式を介して免疫応答を調節することができることは注目に値する。例えば、MAPCsは移植片又は宿主に対して直接的な作用を有することができる。かかる直接的な作用は主に、MAPCsと宿主又は移植片の細胞とが直接的に接触することである。接触は、細胞の構造メンバー又はこれらのすぐ近くの環境中の成分との接触でもよい。かかる直接的な機構は、直接的な接触、拡散、取り込み、又は当業者に周知の他のプロセスなどを含み得る。MAPCsの直接的な活性及び作用は、局所的沈着の領域又は注射により接触される身体コンパートメントなどに、空間的に限定されてよい。
【0185】
MAPCsはまた、「ホーミング」シグナル(例えば傷害又は疾患の部位で放出されるシグナル)に応答して「帰巣する」ことができる。ホーミングは、その天然の機能が修復が必要な部位に細胞を動員することであるシグナルにより仲介されることが多いため、ホーミング挙動はMAPCsを治療標的に濃縮するための強力手段であることができる。この作用は、特異的な因子(後述)により刺激することができる。
【0186】
MAPCsはまた因子へのその応答により免疫プロセスを調節し得る。これは、直接的な調節に加えて又はその代わりに生じ得る。かかる因子には、ホーミング因子、分裂促進因子、及び他の刺激因子などが含まれ得る。これらにはまた、分化因子、及び特定の細胞プロセスを誘発する因子も含まれ得る。後者には、細胞に他の特異的因子(例えば、傷害又は疾患の部位に細胞、例えば幹細胞(MAPCsを含む)を動員する際に関与する因子)を分泌させる因子がある。
【0187】
上記に加えて又はその代わりに、MAPCsは、内因性細胞(例えば幹細胞又は前駆細胞)に作用する因子を分泌し得る。この因子は他の細胞に作用して、それらの活性を引き起こすか、増強するか、低下させるか、又は抑制し得る。MAPCsは、幹細胞、前駆細胞、分化細胞に作用してこれらの細胞を分裂及び/又は分化させる因子を分泌し得る。修復が必要な部位に帰巣するMAPCsは、その部位に他の細胞を誘引する栄養因子を分泌し得る。こうして、MAPCsは幹細胞、前駆細胞又は分化細胞を必要な部位に誘引し得る。MAPCsはまた、そのような細胞を分裂又は分化させる因子を分泌し得る。
【0188】
かかる因子(栄養因子を含む)の分泌は、MAPCsの効力(例えば、炎症性損傷を制限する、血管透過性を制限する、細胞生存を改善する、及び傷害部位への修復細胞のホーミングを引き起こすか及び/又は増強する)に寄与することができる。かかる因子はまた、直接T細胞増殖に影響を与えるかもしれない。かかる因子はまた、その食作用活性及び抗原提示活性(これもT細胞活性に影響し得る)を低下させることにより、樹状細胞に影響し得る。
【0189】
これら及び他の機構により、MAPCsは、有益な免疫調節作用(限定されないが、好ましくない及び/又は有害な免疫反応、応答、機能、疾患などの抑制を含む)を与えることができる。本発明の種々の実施形態において、MAPCsは、有害な免疫プロセス及び/又は症状を排除、予防、縮小、低下、改善、緩和、治療、除去、及び/又は治癒するための、それ自体で又は補助的治療法において有用である有益な免疫調節性及び免疫調節作用を提供する。かかるプロセスや症状には、例えば自己免疫疾患、貧血、新生物、HVG、GVHD、及び特定の炎症性疾患(本明細書で詳述される)などがある。MAPCsはこれらの他の点で、特に哺乳動物で有用である。この関連で本発明の種々の実施形態において、MAPCsはヒト患者で治療上、しばしば他の治療法に対して補助的に使用される。
【0190】
MAPC投与
MAPC調製物
MAPCsは種々の組織、例えば骨髄細胞(本明細書で詳述される)から調製することができる。
【0191】
多くの実施形態において、MAPC調製物はクローニングにより得られる。原則として、これらの調製物中のMAPCsは、互いに遺伝子的に同一であり、適切に調製されかつ維持される場合には、他の細胞を含まない。
【0192】
いくつかの実施形態において、これらより純度が低いMAPC調製物を使用することができる。まれではあるが、最初のクローニング工程で2つ以上の細胞が必要な場合、純度が低い集団が生じる。これらの全てがMAPCsではない場合、増大により、MAPCsが少なくとも2種類の細胞のうちの1つである混合集団が製造される。1つ又はそれ以上の種類の細胞との混合物でMAPCsが投与されるとき、より頻繁に混合集団が生じる。
【0193】
多くの実施形態において、被験体に投与するためのMAPCsの純度は約100%である。別の実施形態において、これは95%〜100%である。いくつかの実施形態において、これは85%〜95%である。特に他の細胞との混合物の場合、MAPCsの%は、25%〜30%、30%〜35%、35%〜40%、40%〜45%、45%〜50%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、又は90%〜95%であることができる。
【0194】
所与の容量中のMAPCsの数は、周知かつ慣用の手順及び装置により測定することができる。所与の容量の細胞混合物におけるMAPCsの%は、ほとんどこれと同じ手順により測定することができる。細胞は、手動で又は自動化細胞カウンターを使用して容易に計測することができる。特異的細胞は、所与の容量中で特異的染色と視覚的検査により、及び特異的結合試薬(典型的には抗体)、蛍光タグ、及び蛍光活性化セルソーターを使用して自動化法で測定することができる。
【0195】
MAPC免疫調節は、未分化MAPCsを含んでもよい。これは、ある分化経路に決定されているMAPCsを含んでもよい。かかる免疫調節はまた、分化能が限定されたあまり強力ではない幹細胞に分化したMAPCsを含んでもよい。これはまた、最終分化細胞種に分化したMAPCsを含んでもよい。MAPCsの最適な種類又は混合物は、その特定の使用状況により決定され、当業者がMAPCsの効果的な種類又は組合せを決定することは慣用の設計事項であろう。
【0196】
製剤化
所与の用途のためのMAPCs投与用の製剤の選択は、種々の要因に依存する。これらの中で顕著なものは、被験体の種、治療する障害、機能障害、又は疾患の性質とその状態、及び被験体における分布、施される他の治療や物質の性質、MAPCs投与のための最適経路、その経路を介するMAPCsの生存性、投与レジメン、及び当業者に自明の他の因子であろう。特に、例えば適切な担体及び他の添加物の選択は、正確な投与経路及び特定の剤形、例えば液体剤形(例えば、組成物を溶液、懸濁液、ゲル、又は他の液体形態、例えば時間放出型もしくは液体充填型に製剤化すべきであるか否か)に依存するであろう。
【0197】
例えば、細胞の生存は、細胞ベースの治療法の効力の重要な決定要因となり得る。これは、一次治療法及び補助的治療法の両方で確かである。標的部位が細胞接種及び細胞増殖に適さない場合、別の懸念が生じる。これは、治療用MAPCsのその部位への接近及び/又はそこでの生着を妨害し得る。本発明の種々の実施形態は、細胞生存を増加させるための、並びに/又は、接種及び/若しくは増殖に対するバリアにより生じる問題を克服するための方法を含む。
【0198】
MAPCsを含む組成物の例には、筋肉内又は静脈内投与(例えば注射投与)のための懸濁液及び調製物を含む、液体調製物、例えば無菌懸濁液又はエマルジョンが含まれる。かかる組成物は、MAPCsと適当な担体、希釈剤、又は賦形剤(例えば、無菌水、生理食塩水、グルコース、ブドウ糖など)との混合物を含み得る。この組成物は凍結乾燥することもできる。この組成物は、所望の投与経路及び調製物に応じて、補助物質(例えば湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤、ゲル化剤、又は粘度増強添加物、保存剤、香味剤、着色剤など)を含むことができる。過度に実験することなく適切な調製物を調製するために、標準的テキスト、例えば「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE」 第17版、1985(参照により本明細書に組み込まれる)を参照してもよい。
【0199】
本発明の組成物はしばしば、液体調製物、例えば等張水溶液、懸濁液、エマルジョン、又は粘性組成物として提供することが都合よく、これは選択されたpHに緩衝化してもよい。液体調製物は通常、ゲル、他の粘性組成物、及び固体組成物より調製するのが容易である。さらに、液体組成物は、特に注射による投与にいくらかより好都合である。一方、粘性組成物は、特定の組織との長い接触期間を与えるように、適切な粘度範囲で製剤化することができる。
【0200】
組成物の安定性、無菌性、及び等張性を増強するために、しばしば種々の添加物、例えば抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤、及び緩衝剤が含まれる。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤や抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより保証することができる。多くの場合に、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含むことが好ましいであろう。注射可能な医薬形態の吸収の延長は、吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することにより達成することができる。しかし、本発明に従って、使用されるビヒクル、希釈剤、又は添加物はいずれも前記細胞と適合性である必要があろう。
【0201】
MAPC溶液、懸濁液、及びゲルは通常、前記細胞に加えて多量の水(好ましくは精製された無菌水)を含有する。少量の他の成分、例えばpH調整剤(例えばNaOHなどの塩基)、乳化剤又は分散剤、緩衝化剤、保存剤、湿潤剤、ゲル化剤(例えばメチルセルロース)も存在してもよい。
【0202】
典型的に、前記組成物は等張であり、すなわちこれらは、投与用に適切に調製されたとき、血液や涙液と同じ浸透圧を有する。
【0203】
本発明の組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム又は他の薬剤学的に許容される物質、例えばブドウ糖、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、又は他の無機もしくは有機溶質を使用して達成される。塩化ナトリウムは、特にナトリウムイオンを含有するバッファーに好適である。
【0204】
所望であれば、組成物の粘度は、薬剤学的に許容される増粘剤を使用して、選択したレベルで維持することができる。メチルセルロースは容易にかつ経済的に入手でき、取り扱いが容易であるため好ましい。他の適切な増粘剤には、例えばキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カーボマーなどがある。増粘剤の好適な濃度は、選択される物質に依存する。重要な点は、選択された粘度を達成する量を使用することである。粘性の組成物は通常、かかる増粘剤を添加して溶液から調製される。
【0205】
MAPC組成物の寿命を延ばすために、薬剤学的に許容される保存剤又は細胞安定化剤を使用することができる。かかる保存剤が含まれる場合、MAPCsの生存率又は効力に影響を与えない組成物を選択することは、十分に当業者の技術範囲内である。
【0206】
組成物の成分が化学的に不活性であるべきことを当業者は認識するであろう。化学的及び薬剤学的原理の当業者には、これは問題は無いであろう。標準的テキストを参照して、又は本明細書の開示、引用文献に提供される情報、及び当該分野で一般に入手できる情報を使用した簡単な実験(過度の実験を含まない)により問題は容易に回避することができる。
【0207】
無菌の注射可能な溶液は、必要量の適切な溶媒中に、必要に応じて種々の量の他の成分とともに、本発明を実施するのに使用される前記細胞を組み込むことにより調製することができる。
【0208】
いくつかの実施形態において、MAPCsは注射可能な単位投与形態(溶液、懸濁液、又はエマルジョンなど)で製剤化される。MAPCsの注射に適した医薬製剤は、典型的には無菌の水溶液及び分散液である。注射可能な製剤の担体は、例えば水、食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体であることができる。
【0209】
本発明の方法で投与されるべき組成物中の前記細胞及び任意の添加物、ビヒクル、及び/又は担体の量を、当業者は容易に決定できる。典型的には、任意の添加物(細胞に加えて)は、リン酸緩衝化生理食塩水などの溶液中に0.001〜50重量%の量で存在する。活性成分はマイクログラム〜ミリグラムのオーダー、例えば約0.0001〜約5重量%、好ましくは約0.0001〜約1重量%、最も好ましくは約0.0001〜約0.05重量%、又は約0.001〜約20重量%、好ましくは約0.01〜約10重量%、そして最も好ましくは約0.05〜約5重量%で存在する。
【0210】
動物又はヒトに投与されるべき任意の組成物について、及び特定の任意の投与方法について、例えば適当な動物モデル(例えば、マウス又はラットのようなげっ歯動物)で致死用量(LD)やLD50を測定することにより、毒性を決定し;そして組成物の投与量、その中の成分の濃度、及び適切な応答を誘発する組成物投与のタイミングを決定することが好ましい。かかる決定は、当業者の知識、本開示、及び本明細書で引用された文献から、過度の実験を必要としない。そして、連続投与の時間は過度の実験なく確認できるであろう。
【0211】
いくつかの実施形態において、特にカプセル化が治療法の有効性を増強するか又は取り扱い及び/又は貯蔵寿命で利点を提供する場合、MAPCsは投与用にカプセル化される。MAPC介在免疫抑制の効力が増加するいくつかの実施形態では、カプセル化の結果、免疫抑制剤療法の必要性も低下するかもしれない。
【0212】
またいくつかの実施形態においてカプセル化は、被験体の免疫系に対するバリアを与え、これはMAPCsに対する被験体の免疫応答をさらに低下させることができ(これは、一般的に、同種異系移植において免疫原性ではないか、又は弱い免疫原性のみである)、その結果、細胞の投与により生じ得る任意の移植片拒絶又は炎症を低下させる。
【0213】
別の種類の細胞との混合物でMAPCsが投与される(これは同種異系又は異種移植ではより典型的に免疫原性である)種々の実施形態において、カプセル化は、混合された細胞が免疫担当でありかつ宿主を非自己として認識する場合、免疫障害をもつ宿主で生じ得る非MAPC細胞に対する宿主の有害な免疫応答及び/又はGVHDを低下又は排除することができる。
【0214】
MAPCsは移植前に、膜ならびにカプセルでカプセル化してもよい。細胞カプセル化に利用できる多くの方法のいずれかを使用できることが意図される。いくつかの実施形態において、細胞は個々にカプセル化される。いくつかの実施形態において、多くの細胞が同じ膜内にカプセル化される。細胞が移植後に除去される予定の実施形態において、多くの細胞をカプセル化する比較的大きなサイズの構造(例えば単一の膜内)が、便利な回収手段を提供し得る。
【0215】
MAPCsのマイクロカプセル化のために、種々の実施形態において、広範な材料を使用することができる。かかる材料には、例えばポリマーカプセル、アルギナート-ポリ-L-リジン-アルギナートマイクロカプセル、バリウムポリ-L-リジンアルギナートカプセル、アルギン酸バリウムカプセル、ポリアクリロニトリル/ポリ塩化ビニル(PAN/PVC)中空繊維、及びポリエーテルスルホン(PES)中空繊維などがある。
【0216】
MAPCsの投与のために使用し得る細胞のマイクロカプセル化技術は当業者に公知であり、例えばChang, P., et al., 1999; Matthew, H.W., et al., 1991; Yanagi, K., et al., 1989; Cai Z.H., et al., 1988; Chang, T.M., 1992、及び米国特許第5,639,275号(これは、例えば、生物活性分子を安定に発現する細胞の長期維持のための生体適合性カプセルを記載する)に記載されている。更なるカプセル化方法は、ヨーロッパ特許公報第301,777号、及び米国特許第4,353,888号;4,744,933号;4,749,620号;4,814,274号;5,084,350号;5,089,272号;5,578,442号;5,639,275号;及び5,676,943号に記載されている。前記のすべては、MAPCsのカプセル化に関する部分で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0217】
特定の実施形態はMAPCsをポリマー(例えばバイオポリマー又は合成ポリマー)に組み込む。バイオポリマーの例には、特に限定されないが、フィブロネクチン、フィビン、フィブリノゲン、トロンビン、コラーゲン、及びプロテオグリカンなどがある。他の因子(例えば、上記サイトカイン)もまたポリマーに組み込むことができる。本発明の他の実施形態において、MAPCsは3次元ゲルのすき間に組み込まれてもよい。大きなポリマー又はゲルは典型的には外科的に移植される。充分に小さい粒子又は繊維中で製剤化され得るポリマーもしくはゲルは、他の一般的なより便利で外科的ではない経路で投与することができる。
【0218】
本発明の医薬組成物は、錠剤、硬又は軟ゼラチンカプセル、水溶液、懸濁液、及びリポソーム並びに他の持続放出製剤(例えば成形ポリマーゲル)を含む多くの形態で調製し得る。経口液体医薬組成物は、例えば水性もしくは油性懸濁液、液剤、エマルジョン、シロップ剤、エリキシル剤の形態であってもよいし、使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供してもよい。かかる液体医薬組成物は、一般的な添加物、例えば懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル(これは食用油を含み得る)、又は保存剤を含有してもよい。胃を通過した後に細胞が腸内に放出されるように、経口投与剤型を調製してもよい。かかる製剤は米国特許第6,306,434号及びそこに含まれる文献に記載されている。
【0219】
直腸投与に適した医薬組成物を単位投与坐剤として調製することができる。適切な担体には食塩水や当該分野で一般的に使用される他の物質がある。
【0220】
吸入による投与のために、細胞は吸入器、ネブライザー、若しくは加圧パック又はエアゾルスプレーを送達するための他の便利な手段から送達されることが好都合である。加圧パックは、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロエタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスを含むことができる。加圧エアゾル剤の場合、投与単位は計量された量を送達するための弁を備えることにより決定することができる。
【0221】
あるいは、吸入又はガス注入による投与のために、乾燥粉末組成物、例えば変調物質と適切な粉末基剤(例えば乳糖又はデンプン)の粉末ミックスの形態の手段を採ることもできる。粉末組成物は、例えばカプセル、又はカートリッジ中で、或いは例えばゼラチンもしくはブリスターパック(ここから、粉末は吸入器又はガス注入器を用いて投与される)中で、単位投与剤型で提供してもよい。鼻内投与のために、細胞は液体スプレーを介して、例えばプラスチックボトルの噴霧器を介して投与してもよい。
【0222】
他の活性成分
MAPCsは他の薬剤学的に活性な物質とともに投与することができる。いくつかの実施形態において、1つ又はそれ以上のかかる物質は、投与のためにMAPCsとともに製剤化される。いくつかの実施形態において、MAPCs及び1つ又はそれ以上の物質は別の製剤中に存在する。いくつかの実施形態において、MAPCs及び/又は1つ又はそれ以上の物質を含む組成物は、互いの補助的使用について調製される。
【0223】
MAPCsは、免疫抑制剤(例えばコルチコステロイド、シクロスポリンA、シクロスポリン様免疫抑制剤、シクロホスファミド、抗胸腺細胞グロブリン、アザチオプリン、ラパマイシン、FK-506、並びにFK-506及びラパマイシン以外のマクロライド様免疫抑制剤の任意数の任意の組合せなど)を含む製剤で投与することができる。特定の実施形態において、かかる物質は、コルチコステロイド、シクロスポリンA、アザチオプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、及び/又はFK-506を含む。上記の免疫抑制剤はそのような追加物質のみであってもよいし、他の物質(例えば本明細書に記載の他の物質)と組合せてもよい。他の免疫抑制剤には、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、及びシロリムスなどがある。
【0224】
本発明の実施形態で使用し得る他の薬剤学的活性物質や組成物を少し列挙すると、かかる物質はまた、抗生物質製剤、抗真菌剤、及び抗ウイルス剤などがある。
【0225】
典型的な抗生物質又は抗真菌化合物は、特に限定されないが、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシン、アンピシリン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ミコフェノール酸、ナリジクス酸、ネオマイシン、ニスタチン、パロモマイシン、ポリミキシン、プロマイシン、リファンピシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、タイロシン、ゼオシン、及びセファロスポリン、アミノグリコシド、及びエキノカンジンなどがある。
【0226】
この種のさらなる添加物は、MAPCsが他の幹細胞のように、被験体への投与後に、その増殖と機能に適した環境に「帰巣(ホーミング)」し得るという事実に関する。かかる「ホーミング」はしばしば細胞をこれらが必要な部位(例えば免疫疾患、機能障害、又は疾患の部位)で濃縮する。ホーミングを刺激する多くの物質が知られている。これらには、成長因子や栄養シグナル伝達物質、例えばサイトカインなどがある。これらは、治療標的部位へのMAPCsのホーミングを促進するために使用することができる。これらは、MAPCsで治療する前、MAPCsと一緒に、又はMAPCsの投与後に被験体に投与することができる。
【0227】
特定のサイトカインは、例えば、治療の必要な部位(例えば免疫障害のある部位)へのMAPCs又は分化したその対応物の移動を改変するか又はこれに影響を与える。この点で使用し得るサイトカインには、特に限定されないが、ストロマ細胞由来因子-1(SDF-1)、幹細胞因子(SCF)、アンジオポエチン-1、胎盤由来増殖因子(PIGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ICAMやVCAMなどの内皮細胞接着分子の発現を刺激するサイトカイン、及びホーミングを引き起こすか又は促進するサイトカインなどがある。
【0228】
これらは被験体に、前治療としてMAPCsとともに、又はMAPCsが投与された後に投与されて、改善されたホーミングにより又は他の機構により、所望の部位へのホーミングを促進し、治療効果を改善し得る。かかる因子は、一緒に投与されるべきこれらに適した製剤中でMAPCsと組合せることができる。あるいは、かかる因子は別々に製剤化し投与してもよい。
【0229】
因子(例えば上記サイトカイン)やMAPCsの投与順序、製剤化、用量、投与頻度、及び投与経路は一般に、治療される障害又は疾患、その重症度、被験体、行われている他の治療法、障害又は疾患のステージ、及び予後因子により変動する。他の治療法について確立された一般的なレジメンは、MAPC介在の直接治療法又は補助的治療法において適切な投与を決定するためのフレームワークを提供する。これらは本明細書に記載の追加の情報とともに、当業者が、過度の実験なく本発明の実施形態の適切な投与処置を決定することを可能にする。
【0230】
経路
MAPCsは、細胞を被験体に投与するために使用し得る当業者に公知の種々の経路のいずれかにより被験体に投与することができる。
【0231】
本発明の実施形態においてこの点で使用し得る方法には、非経口経路によりMAPCsを投与する方法がある。本発明の種々の実施形態で有用な非経口投与経路には、特に静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内、くも膜下内、骨内、関節内、滑液包内、皮内(intracutaneous)、皮内(intradermal)、皮下、及び/又は筋肉内注射による投与などがある。いくつかの実施形態において、静脈内、動脈内、皮内(intracutaneous)、皮内(intradermal)、皮下及び/又は筋肉内注射が使用される。いくつかの実施形態において、静脈内、動脈内、皮内(intracutaneous)、皮下及び/又は筋肉内注射が使用される。
【0232】
本発明の種々の実施形態において、MAPCsは全身性注射により投与される。全身性注射(例えば静脈内注射)は、MAPCsを投与するための最も単純で侵襲性の小さい経路の1つである。一部の場合に、これらの経路は、最適な有効性及び/又は標的部位へのMAPCsのホーミングのために高用量のMAPCを必要とすることがある。種々の実施形態において、MAPCsは、標的部位での最適な作用を確実にするために、標的化及び/又は局所的注射により投与してもよい。
【0233】
MAPCsは、本発明のいくつかの実施形態において、注射器による皮下注射針を介して被験体に投与することができる。種々の実施形態において、MAPCsはカテーテルを介して被験体に投与される。種々の実施形態において、MAPCsは外科的移植により投与される。さらにこの点で、本発明の種々の実施形態において、MAPCsは関節鏡視下の処置にる移植によって被験体に投与される。いくつかの実施形態において、MAPCsは例えばポリマー又はゲルなどの固体支持体中又は固体支持体上で被験体に投与される。種々の実施形態において、MAPCsはカプセル形態で被験体に投与される。
【0234】
本発明の更なる実施形態において、MAPCsは、経口、直腸、経皮、眼内、鼻内、及び肺内送達のために適切に製剤化され、適宜投与される。
【0235】
投与
組成物は、特定の患者の年齢、性別、体重、及び症状、並びに投与される製剤(例えば固体対液体)などの要因を考慮して、医学分野及び獣医学分野の当業者に周知の投与量及び方法で投与することができる。ヒト又は他の哺乳動物についての用量は、過度の実験なく当業者により、本開示、本明細書で引用される文献、及び当該分野の知識から決定することができる。
【0236】
本発明の種々の実施形態で使用するのに適したMAPCsの用量は、多くの要因に依存するであろう。これは、異なる状況について大きく変動するかもしれない。一次治療法及び補助的治療法のために投与されるべきMAPCsの最適な用量を決定するパラメータは一般に以下の一部又は全てを含む:治療される疾患とそのステージ;被験体の種、その健康、性別、年齢、体重、代謝速度;被験体の免疫適格性;施される他の治療薬;及び被験体の病歴又は遺伝子型から予測される可能性のある合併症。このパラメータはさらに以下を含み得る:MAPCsが同系、自己由来、同種異系、又は異種であるか;その力価(比活性);MAPCsが有効であるように標的化されるべき部位及び/又は配置;並びにMAPCsへの接近性及び/又はMAPCsの生着などの部位の特徴。追加のパラメータには、他の因子(例えば成長因子及びサイトカイン)のMAPCsとの共投与などがある。所与の状況で最適な投与量は、細胞の製剤化手段、これらを投与する手段、及び細胞が投与後に標的部位で局在化する程度も考慮するであろう。最後に、必要な最適投与量の決定は、最大有効作用の閾値以下でも、MAPCsの投与に関連する有害作用が投与量の増加の利点より大きくなる閾値異常でもない有効投与量を提供する。
【0237】
いくつかの実施形態に最適なMAPCsの用量は、自己由来単核骨髄移植で使用される用量範囲内であろう。MAPCsのかなり純粋な調製物について、種々の実施形態における最適用量は、1回の投与でレシピエントの質量1kgあたり104〜108 MAPC細胞の範囲である。いくつかの実施形態において、1回の投与あたりの最適用量は105〜107 MAPC細胞/kgである。多くの実施形態において、1回の投与あたりの最適用量は5x105〜5x106 MAPC細胞/kgである。参考のため、前記より高い用量は、自己由来単核骨髄移植で使用される有核細胞の用量に似ている。より低用量の一部は、自己由来単核骨髄移植で使用されるCD34+細胞/kgの数に類似している。
【0238】
単回用量を全て一度に、分割して、又はある期間にわたって連続的に送達してもよいことは理解されるべきである。全用量を1つの位置に送達してもよいし、又はいくつかの位置に分散させてもよい。
【0239】
種々の実施形態において、MAPCsを初回量で投与し、次にさらにMAPCsを投与して維持してもよい。MAPCsを、最初は1つの方法で投与し、次に同じ方法で又は1つ又はそれ以上の異なる方法で投与してもよい。被験体のMAPCレベルは、前記細胞の継続投与により維持することができる。種々の実施形態は、最初に又は被験体でそのレベルを維持するために、或いはその両者のために、MAPCsを静脈内注射により投与する。種々の実施形態において、患者の症状や本明細書で記載した他の要因に依存して、他の投与形態が使用される。
【0240】
ヒト被験体は一般に実験動物より長期間治療されることに留意されたい。しかし、治療は一般に、疾患プロセスの長さと治療の有効性に比例する長さである。当業者はヒトでの適切な用量を決定するために、ヒト及び/又は動物(例えばラット、マウス、非ヒト霊長類など)で行われた他の処置の結果を使用する上でこれを考慮するであろう。これらの考慮に基づき、かつ本開示や先行技術により与えられた指針を考慮することにより、過度の実験なく、当業者によるそのような決定を可能にする。
【0241】
初回投与及び追加投与に、又は連続的投与に適切なレジメンは、全て同じでもあっても変動してもよい。適切なレジメンは、本開示、本明細書で引用された文書、及び当該分野の知識から、当業者が確認できるであろう。
【0242】
治療の用量、頻度、及び期間は、多くの要因(疾患の性質、被験体、及び施し得る他の治療法を含む)に依存する。従って、MAPCsを投与するために広範なレジメンを使用し得る。
【0243】
いくつかの実施形態において、MAPCsは一回で被験体に投与される。他の実施形態では、MAPCsは2回またはそれ以上の組で連続して被験体に投与される。1回、2回、及び/又は3回以上でMAPCsが投与される他のいくつかの実施形態において、用量は同じかまたは異なってもよく、これらは等しい又は等しくない間隔で投与される。
【0244】
MAPCsは広範な時間にわたって何度も投与することができる。いくつかの実施形態において、MAPCsは、1日以内の期間にわたって投与される。他の実施形態において、これらは、2日、3日、4日、5日、又は6日間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、MAPCsは週に1回又はそれ以上で数週間の期間にわたって投与される。他の実施形態において、これらは数週間から1〜数ヶ月の期間にわたって投与される。種々の実施形態において、これらは数ヶ月の期間にわたって投与され得る。他の実施形態において、これらは、1年又はそれ以上の期間にわたって投与され得る。一般に治療の長さは、疾患プロセスの長さと適用されている治療法の有効性、及び治療されている被験体の症状と応答に比例する。
【0245】
免疫調節性MAPCsの治療的使用
MAPCsの免疫調節性は、広範な障害、機能障害、及び疾患(本質的に、治療の二次作用又は副作用として、有害な免疫系のプロセスや作用を示すものなど)を治療するのに利用することができる。いくつかの例を後述する。
【0246】
この点で多くの実施形態は、弱った(又は障害のある)免疫系を有する被験体に、唯一の治療法として又は他の治療の補助的治療法としてMAPCsを投与することを含む。種々の実施形態においてこの点で、被験体に施されてきた、施されている、又は施す予定の放射線療法又は化学療法、又は放射線と化学療法との組合せに対して、補助的にMAPCsが被験体に投与される。かかる多くの実施形態において、放射線療法、化学療法、又は放射線と化学療法との組合せは、移植治療法の一部である。また、種々の実施形態において、MAPCsは、有害な免疫応答(例えばHVG又はGVHD)を治療するために投与される。
【0247】
種々の実施形態においてこの点で、被験体は非同系の、典型的には同種異系の、血球又は骨髄細胞移植のレシピエントであり、被験体の免疫系は放射線療法、化学療法、又は放射線療法と化学療法との組合せにより、免疫抑制剤が被験体に投与されていることにより、弱っているか又は消失しており、被験体は移植片対宿主病を発症するリスクにあるか又は発症しており、そしてMAPCsは、移植、放射線療法及び/又は化学療法、並びに被験体の移植片対宿主病を治療(例えば改善、停止、もしくは排除)するための免疫抑制剤のいずれか1つ又はそれ以上に対して補助的に投与される。
【0248】
新生物
用語「新生物」は、一般的に細胞のクローン増殖を含む障害を指す。新生物は良性、すなわち進行性ではなく、再発性ではなく、もしそうではあっても一般に生命を脅かすものではない場合もある。新生物はまた悪性、すなわち進行的に悪化し、拡大し、そして一般に生命を脅かし、しばしば致死的である場合もある。
【0249】
種々の実施形態において、MAPCsは新生物に罹った被験体に、その治療に対して補助的に投与される。例えば、本発明のいくつかの実施形態においてこの点で、被験体は、血球又は骨髄細胞の新生物のリスクがあるか又はこれに罹患しており、血液又は骨髄移植を受けたが又は受ける予定である。MAPCの免疫抑制性についての本明細書の開示とともに、MAPCの単離、特徴付け、及び増大のために本明細書に記載した方法を使用して、MAPCsは、移植治療法を困難にし得るHVGやGVHDなどの有害な免疫応答を治療(例えば予防、抑制、又は縮小)するために投与される。
【0250】
移植治療法を含む種々の実施形態において、MAPCsを免疫抑制目的で単独で、又は他の物質とともに使用することができる。MAPCsは1つ又はそれ以上の移植の前、同時、又は後に投与することができる。移植中に投与される場合、MAPCsは移植材料と別々に又は一緒に投与することができる。別々に投与される場合、MAPCsは他の移植材料と連続して又は同時に投与することができる。さらに、MAPCsは移植のかなり前に及び/又はかなり後に投与してもよく、移植に代えて又は移植に加えて移植の投与時又はほぼ同じ時に投与し得る。
【0251】
特に移植治療法でMAPCsと併用できる他の物質には、本明細書で記載されるような免疫調節剤、具体的には免疫抑制剤、より具体的には特にこの関連で本明細書に記載されるもの、すなわちコルチコステロイド、シクロスポリンA、シクロスポリン様免疫抑制化合物、アザチオプリン、シクロホスファミド、メソトレキセート、及び免疫抑制性モノクローナル抗体剤の1つ以上が挙げられる。
【0252】
本発明の実施形態においてこの関連でMAPCsで治療される骨髄の新生物疾患には、骨髄増殖性疾患(「MDP」)、骨髄異形成症候群(又は状態)(「MDS」)、白血病、及びリンパ増殖性疾患(多発性骨髄腫及びリンパ腫を含む)がある。
【0253】
MPDは、骨髄中の細胞の異常な及び自立的増殖により区別される。この疾患は1種類のみ又は数種類の細胞を含む場合がある。典型的には、MPDは3種の細胞系統を含み、これらは赤血球性、顆粒球性、及び血小板性である。3種の系統の関与は、1つのMPDから別のMPDで、及び個々の種類の事象の間で変動する。典型的には、これらは異なって影響を受け、所与の新生物では1つの細胞系統が主に影響を受ける。MPDは明らかに悪性ではないが、これらは新生物として分類され、骨髄中の造血前駆細胞の異常な自己複製により特徴つけられる。それにも関わらず、MPDは急性白血病に発達する能力を有する。
【0254】
MDSはMPDのようにクローン性疾患であり、骨髄中の造血前駆細胞の異常な自己複製により特徴付けられる。MPDと同様に、これらは急性白血病に発達することができる。すべてではないがほとんどのMDSは、末梢血の血球減少症(慢性骨髄単球性白血病は例外である)を示すが、MPDは示さない。
【0255】
これらの疾患の実験室的及び臨床的症状は、その経過及び個々の事象間で変動し得る。症状は重複することがあり、ある疾患を他のすべての疾患と区別する確実な診断を行うことは困難であり得る。従って、骨髄造血細胞の新生物の診断には、実際は致死的な悪性腫瘍を良性の疾患として誤診しないように特別の注意が必要である。
【0256】
以下の疾患は、本発明の種々の実施形態において、典型的に又は補助的にMAPCsで治療し得る骨髄増殖性疾患(MPD)である:慢性骨髄性白血病(「CML」)/慢性顆粒球性白血病(「CGL」)、原発性骨髄繊維症、本態性血小板減少症、及び真性赤血球増加症。
【0257】
以下の疾患は、本発明の種々の実施形態において、典型的に又は補助的に、MAPCsで治療し得る骨髄異形成症候群(MDS)である:不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰芽細胞を伴う不応性貧血、移行期の過剰芽細胞を伴う不応性貧血、及び慢性骨髄性単球性白血病。
【0258】
以下の疾患は、本発明の種々の実施形態において、典型的に、補助的に、MAPCsで治療し得る、多発性骨髄腫やリンパ腫を含むリンパ増殖性疾患である:前記B急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病(「CLL」)、B細胞リンパ腫、ヘアリーセル白血病、骨髄腫、多発性骨髄腫、T急性リンパ芽球性白血病、末梢血T細胞リンパ腫、他のリンパ性白血病、及び他のリンパ腫。
【0259】
本発明の種々の実施形態において、典型的に、補助的に、MAPCsで治療し得る新生物にはさらに以下がある:骨髄細胞の良性新生物、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、又は急性白血病;慢性骨髄性白血病(「CML」)(慢性顆粒球性白血病(「CGL」)とも呼ばれる)、原発性骨髄繊維症、本態性血小板減少症、真性赤血球増加症、他の骨髄増殖性疾患、急性多発性骨髄腫、骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、前B急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病(「CLL」)、B細胞リンパ腫、ヘアリーセル白血病、骨髄腫、T急性リンパ芽球性白血病、末梢血T細胞リンパ腫、他のリンパ性白血病、他のリンパ腫、又は他の急性白血病。
【0260】
MAPCsは前記疾患のいずれかの治療に対して補助的に投与し得る。
【0261】
免疫除去又は免疫傷害を含む治療法
急性白血病は、他の悪性腫瘍で有効であった方法により治療することが困難であることが多い。これは一部には、骨髄からの細胞(新生物の細胞を含む)の運動性が原因である。一部にはこれは、骨格にわたる骨髄の散在的な分布が原因かも知れない。また、これは一部には、間違いなく細胞自体の性質とその変形(transformation)が原因であろう。
【0262】
現在、血液悪性腫瘍の標準的治療法は、患者におけるすべての造血細胞を除去することである。これには患者の健康な造血細胞も除去する以外に手段はない。典型的には、患者は、実質的にすべての骨髄細胞(正常な細胞と新生物細胞とを含む)を死滅させるのに十分な高用量で化学放射線療法を使用して治療される。治療の副作用は重く、患者に対するその作用は不快で、苦痛であり、肉体的かつ精神的に衰弱させるものである。治療は疾患の組織及び細胞を除去するのみではなく、患者の造血系及び免疫系をも働かなくする。治療は患者を免疫障害の状態にし、輸血に依存させ、従って非常に感染し易くなり、感染物質への本来はわずかな接触でも致死的となることがある。
【0263】
後に、自己由来又は同種異系の末梢血又は骨髄移植により、正常な造血能力が回復される。残念ながら、除去治療によるだけでなく、同種異系移植の場合は、移植片の拒絶を防ぎ、かつ新しい造血幹細胞の生着と増殖(これは患者の骨髄を再入植し、患者の造血系及び免疫系を再生する)とを確実にするための意図的免疫抑制によっても、患者の免疫系は激しく損傷している。
【0264】
免疫障害のある宿主で造血系と免疫系とを再生するためにこのような移植を実施する際には、多くの合併症に遭遇する。1つは、宿主中の残存する免疫担当細胞及びプロセスによる拒絶(ここではHVG応答と呼ぶ)である。もう1つは、移植片中の免疫担当細胞により誘発される(ここではGVHDを呼ぶ)。
【0265】
これらの合併症は、同系の又は自己由来のドナー材料を使用することにより回避し得る。しかし、同系のドナーは通常まれであり、自己由来移植片は疾患が再発する高いリスクがある。従って、移植は通常、HLAが適合するドナーから得られる同種異系の細胞及び組織を使用する。残念ながら、この処置は、この形態の治療法を受けている患者の多くで軽度から重度のGVHDを引き起こす。少しも改善されない場合は、これらの免疫応答は移植治療法の失敗をもたらし、これ自体が患者にとって致死的となり得る。
【0266】
免疫応答を抑制するために、上記のHVGやGVHDなどの移植片合併症を改善する種々の薬剤が開発されている。一部の薬剤は、いくつかの移植治療法(例えば骨髄移植及び末梢血移植)で有害免疫反応を管理可能なレベルまで低減させるのに十分有効である。これらの薬剤は移植患者の予後をある程度改善したが、いずれも完全には有効ではなく、そのすべてはむしろ大きな欠点を有する。
【0267】
MAPCsは同種異系宿主で免疫応答を誘発しないことがわかった(本明細書で詳述される)。従って、同種異系宿主へのMAPCsの移植は、同種異系移植片拒絶(すなわちHVG)を引き起こさない。
【0268】
さらに、同種異系MAPCsは呼吸に有害な影響を与えることなく高濃度で宿主に投与することができることもわかった。
【0269】
さらに(本明細書で詳述されるように)MAPCsは免疫応答を調節することができることがわかった。特にこの点で、MAPCsは免疫応答(特に限定されないが、2つだけ挙げると、HVG応答及びGVHDに関与する免疫応答)を抑制できることがわかった。この点につきより詳細には、MAPCsは、強力なT細胞刺激物質(コンカナバリンA及び同種異系又は異種の刺激細胞など)の存在下でさえ、T細胞の増殖を抑制できることがわかった。
【0270】
さらに比較的少量のMAPCsでもこれらの応答を抑制できることがわかった。実際、混合リンパ球反応において、わずか3%のMAPCsは、in vitroでT細胞応答を50%低下させるのに十分である。
【0271】
従って、本発明の実施形態は、造血細胞の新生物、特に骨髄の新生物などの新生物を治療(例えば改善及び/又は治癒又は排除)するための組成物及び方法等を提供する。
【0272】
これらの中には、骨髄増殖性疾患(MPD)、例えば慢性骨髄性白血病(「慢性顆粒球性白血病」及び「CGL」とも呼ばれる)、原発性骨髄繊維症、本態性血小板減少症、真性赤血球増加症;骨髄異形成症候群(MDS)、例えば不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰芽細胞を伴う不応性貧血、移行期の過剰芽細胞を伴う不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病;及び明らかな悪性新生物(急性白血病)、例えば骨髄芽球性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、急性前骨髄性白血病、B急性リンパ芽球性白血病、CLL、B細胞リンパ腫、ヘアリーセル白血病、骨髄腫、T急性リンパ芽球性白血病、末梢血T細胞リンパ腫、並びに他のリンパ性白血病及び他のリンパ腫がある。
【0273】
MAPCsは前記疾患のいずれかの治療に対して補助的に投与し得る。
【0274】
貧血と他の血液疾患
本発明の種々の実施形態において、貧血又は他の血液疾患を治療するためにMAPCsを多くの場合は補助的に使用することができる。種々の実施形態においてこの点で、以下の貧血及び/又は血液疾患を単独で又は典型的には補助的に治療するためにMAPCsが使用される:異常ヘモグロビン症、サラセミア、骨髄機能不全症候群、鎌状赤血球貧血、再生不良性貧血、又は免疫性溶血性貧血。また障害には、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰芽細胞を伴う不応性貧血、移行期の過剰芽細胞を伴う不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病、又は他の骨髄異形成症候群、及びいくつかの実施形態において、ファンコーニ貧血などがある。
【0275】
MAPCsは前記疾患のいずれかの治療に対して補助的に投与し得る。
【0276】
免疫疾患
本発明の実施形態は、免疫機能障害、障害、又は疾患を治療するために、MAPC免疫調節を単独で又は補助的治療法で使用することに関する。この点における実施形態は、先天性免疫不全症及び自己免疫機能障害、障害、及び疾患に関する。種々の実施形態はこの点で、MAPCsを単独又は補助的に使用して、クローン病、ギラン-バレー症候群、紅斑性狼瘡(「SLE」及び全身性エリテマトーデスとも呼ばれる)、多発性硬化症、重症筋無力症、視神経炎、乾癬、慢性関節リウマチ、グレーブス病、橋本病、Ord甲状腺炎、糖尿病(I型)、ライター症候群、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、抗リン脂質抗体症候群(「APS」)、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(「OMS」)、側頭動脈炎、急性播種性脳脊髄炎(「ADEM」及び「ADE」)、グッドパスチャー症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、セリアック病、天疱瘡、多発性関節炎、及び温暖型自己免疫性溶血性貧血を治療することに関する。
【0277】
これらの中で具体的な実施形態は、クローン病、紅斑性狼瘡(「SLE」及び全身性エリテマトーデスとも呼ばれる)、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、慢性関節リウマチ、グレーブス病、橋本病、糖尿病(I型)、ライター症候群、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病、多発性関節炎、及び温暖型自己免疫性溶血性貧血に関する。
【0278】
さらにMAPCsは、これに関する種々の実施形態において、単独で、及び典型的には補助的に自己免疫成分を有すると考えられる種々の疾患を治療するために使用され、そのようなものとして、特に限定されないが、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経ミオトニー、強皮症、進行性全身性硬化症、白斑、慢性外陰病変、シャーガス病、サルコイドーシス、慢性疲労症候群、及び自律神経障害を治療するために使用し得る実施形態を含む。
【0279】
遺伝性の免疫系障害には、重症複合免疫不全(SCID)(特に限定されないが、アデノシンデアミナーゼ欠陥を有するSCID(ADA-SCID)、X連鎖型SCID、T細胞及びB細胞欠乏のSCID、T細胞、正常なB細胞欠乏のSCIDを含む]、Omenn症候群、好中球減少症(特に限定されないが、コストマン症候群、Myelokathexisを含む);毛細血管拡張性運動失調、不全リンパ球症候群、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、白血球接着不全;及び食細胞疾患(食細胞は外来生物を飲み込み死滅させることができる免疫系細胞である)、すなわち、特に限定されないがChediak-Higashi症候群、慢性肉芽腫症、好中球アクチン欠乏、細網異形成症などがある。
【0280】
MAPCsは前記疾患のいずれかの治療に対して補助的に投与し得る。
【0281】
炎症性疾患
さらに、本発明の種々の実施形態において、炎症性疾患を治療するために、MAPCsは単独薬剤として又は補助的に使用することができる。多くのかかる実施形態において、MAPCsは、重症の炎症状態(例えば急性アレルギー反応から生じるもの、又は他の疾患や治療法に付随して起きるもの)を治療するために使用し得る。現在、この関連におけるMAPCsの使用の大部分は、被験体がかなりの不能になるか又は生命を失うリスクにある緊急の場合に限定されている。
【0282】
MAPCsは前記疾患のいずれかの治療に対して補助的に投与し得る。
【0283】
米国特許第7,015,037号に記載されるMAPCs
ヒトMAPCsが当該分野で記載されている。ヒト及びマウスについてMAPCを単離する方法は当該分野で公知である。すなわち、現在は当業者が、骨髄穿刺液、脳もしくは肝生検、及び他の臓器を得て、これらの細胞で発現される(又は発現されない)遺伝子に依存する当業者に利用可能な陽性もしくは陰性選択を用いて(例えば、上で参照する出願に開示されるような機能的又は形態的アッセイにより(これは参照により本明細書に組み込まれる)細胞を単離することが可能である。かかる方法は、例えば米国特許第7,015,037号に記載されている(この内容は、MAPCsの説明とその調製方法に関して、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0284】
PCT/US00/21387に記載されるMAPCsの単離と増殖
ヒト及びマウスのMAPC単離方法は当該分野で公知である。これらは例えば、米国特許第7,015,037号、PCT/US00/21387(WO01/11011として公開)、及びPCT/US02/04652(WO02/064748として公開)に記載されており、これらの方法はそこに開示されたMAPCsの特徴付けとともに、参照により本明細書に組み込まれる。
【0285】
MAPCsはまず骨髄から単離されたが、次に他の組織(脳及び筋肉を含む)から確立された(Jiang, Y. et al., 2002)。すなわち、MAPCsは複数の供給源(骨髄、胎盤、臍帯及び臍帯血、筋肉、脳、肝臓、脊髄、血液、又は皮膚を含む)から単離することができる。例えば、MAPCsは、骨髄穿刺液から得ることができ、当業者が利用できる標準的手段により得ることができる(例えば、Muschler, G.F., et al., 1997; Batinic, D., et al., 1990参照)。
【0286】
米国特許第7,015,037号に記載された条件下でのヒトMAPCsの表現型
22〜25回の細胞倍加後に得られたヒトMAPCsのFACSによる免疫表現型分析は、この細胞が、CD31、CD34、CD36、CD38、CD45、CD50、CD62E及び-P、HLA-DR、Muc18、STRO-1、cKit、Tie/Tekを発現せず;低レベルのCD44、HLA-クラスI、及びβ2-ミクログロブリンを発現し、CD10、CD13、CD49b、CD49e、CDw90、Flk1(N>10)を発現することを示した
40回超の倍加で培養した細胞を約2x103/cm2で再接種すると、表現型はより均一になり、HLA-クラスI又はCD44を発現した細胞は無かった(n=6)。より高いコンフルエンスで細胞を増殖させると、これらは高レベルのMuc18、CD44、HLAクラスI、及びβ2-ミクログロブリンを発現し、これはMSCについて記載された表現型に似ている(N=8)(Pittenger, 1999)。
【0287】
免疫組織化学は、約2x103/cm2の接種密度で増殖させたヒトMAPCsが、EGF-R、TGF-R1と-2、BMP-R1A、PDGF-R1aと-Bを発現すること、及びMAPCsの小集団(1〜10%)が抗SSEA4抗体で染色されたこと(Kannagi, R., 1983)を示した。
【0288】
Clontech cDNAアレイを使用して、約2x103細胞/cm2の接種密度で22回及び26回の細胞倍加のために培養したヒトMAPCsの発現遺伝子プロフィールを調べた:
A. MAPCsは、CD31、CD36、CD62E、CD62P、CD44-H、cKit、Tie;IL-1、IL-3、IL-6、IL11、G CSF,GM-CSF、Epo、Flt3-L、又はCNTFの受容体;及び低レベルのHLA-クラスI、CD44-E、及びMuc-18 mRNAを発現しなかった。
【0289】
B. MAPCsは、サイトカインBMP1、BMP5、VEGF、HGF、KGF、MCP1のmRNA;サイトカイン受容体Flk1、EGF-R、PDGF-R1α、gp130、LIF-R、アクチビンR1と-R2、TGFR-2、BMP-R1A;接着受容体CD49c、CD49d、CD29;及びCD10を発現した。
【0290】
C. MAPCsは、hTRTとTRF1のmRNA;POUドメイン転写因子oct-4、sox-2(ES/ECの未分化状態を維持するためにoct-4とともに必要とされる、Uwanogho D., 1995)、sox11(神経発生)、sox9(軟骨形成)(Lefebvre V., 1998);ホメオドメイン転写因子:Hox-a4と-a5(頸部と胸部骨格指定;呼吸器の器官形成)(Packer AI, 2000)、Hox-a9(骨髄造血)(Lawrence H, 1997)、Dlx4(前脳と頭部の周囲構造の指定)(Akimenko MA, 1994)、MSX1(胚中胚葉、成体の心臓と筋肉、軟骨形成と骨形成)(Foerst-Potts L. 1997)、PDX1(膵臓)(Offield MF, 1996)を発現した。
【0291】
D.oct-4、LIF-R、及びhTRT mRNAの存在はRT-PCRにより確認された。
【0292】
E. さらに、RT-PCRは、rex-1 mRNAとrox-1 mRNAがMAPCs中で発現されることを示した。
【0293】
oct-4、rex-1、及びrox-1は、ヒト及びミューリンの骨髄並びにミューリンの肝臓及び脳から得られたMAPCsで発現された。ヒトMAPCsはLIF-Rを発現し、SSEA-4で陽性染色された。最後に、oct-4、LIF-R、rex-1、及びrox-1 mRNAレベルは、30回超の細胞倍加で培養したヒトMAPCsで増加することがわかり、これにより表現型的により均一な細胞を生じた。これに対して、高密度で培養したMAPCsはこれらのマーカーの発現が消失した。これは、40回の細胞倍加前の老化と、軟骨芽細胞、骨芽細胞、及び脂肪細胞以外の細胞への分化の消失に関連していた。すなわちoct-4の存在は、rex-1、rox-1、及びsox-2との組合せで、MAPCs培養物中の最も原始的な細胞の存在と相関した。
【0294】
MAPCsを培養する方法は当該分野で周知である(例えば、米国特許第7,015,037号を参照、これはMAPCsを培養する方法について参照により本明細書に組み込まれる)。MAPCsを培養するための密度は約100細胞/cm2又は約150細胞/cm2〜約10,000細胞/cm2で変動することができ、約200細胞/cm2〜約1500細胞/cm2〜約2000細胞/cm2を含む。密度は種間で変動し得る。さらに、最適密度は、培養条件と細胞の供給源により変動し得る。培養条件と細胞の所与のセットについて最適密度を決定することは当業者の技術範囲内である。
【0295】
また、培養物によるMAPCsの単離、増殖、及び分化中の任意の時期に、約10%未満(約3〜5%を含む)の有効な大気酸素濃度を使用することができる。
【0296】
本発明はさらに、以下の例示的な非限定的実施例により説明される。
【実施例】
【0297】
実施例1:ヒトMAPCs(骨髄単核細胞から)
骨髄単核細胞は、80人超の健康なヒトボランティアの後腸骨稜からの骨髄穿刺液から得た。各被験体から10〜100cm3の骨髄を得た。単核細胞(「MNC」)は骨髄からFicoll-Paque密度勾配(Sigma Chemical Co., St Louis, MO)遠心分離により得た。骨髄MNCをCD45とグリコホリンAマイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Sunnyvale, CA)と共に15分インキュベートし、サンプルをSuperMACS磁石の前に置くことによりCD45+GlyA+細胞を除去した。溶出した細胞は99.5%のCD45-GlyA-である。
【0298】
CD45+GlyA+細胞の枯渇によりCD45-GlyA-細胞が回収され、これは全骨髄単核細胞の約0.05〜0.10%を構成した。共通の白血球抗原CD45又は赤血球前駆細胞マーカーであるグルコホリン-A(GLyA)を発現しない細胞を選択した。CD45-GlyA-細胞は1/103の骨髄単核細胞を構成する。CD45-GlyA-細胞を、2% FCS、EGF、PDGF-BB、デキサメタゾン、インスリン、リノール酸、及びアスコルビン酸中のフィブロネクチンで被覆したウェルにプレーティングした。7〜21日後、接着細胞の小集団が生じた。限界希釈アッセイを使用すると、これらの接着集団を生じる細胞の頻度は1/5x103 CD45-GlyA-細胞である。コロニー(約103細胞)が出現したとき、トリプシン処理により細胞を回収し、3〜5日毎に同じ条件下、1:4希釈で再度プレーティングした。細胞密度は2〜8x103 細胞/cm2で維持した。
【0299】
実施例2:マウスMAPCs
すべての組織はミネソタ大学IACUCの指針に従って得た。BM単核細胞(BMMNC)は、Ficoll-Hypaque分離により得た。BMは、5〜6週齢のROSA26マウス又はC57/BL6マウスから得た。あるいは、3日齢の129匹のマウスから筋肉及び脳組織を得た。前肢及び後肢の近位部から筋肉を切り出し、完全に切り刻んだ。組織を0.2%コラゲナーゼ(Sigma Chemical Co., St Louis, MO)を用いて37℃で1時間処理し、次に0.1%トリプシン(Invitrogen, Grand Island, NY)で45分処理した。次に細胞を激しく粉砕し、70μmのフィルターに通した。細胞懸濁液を採取し、1600rpmで10分遠心分離した。脳組織を切り出し、完全に切り刻んだ。細胞を0.1%トリプシンと0.1%DNase(Sigma)で30分間37℃でインキュベートすることで分離した。次に細胞を激しく粉砕し、70μmのフィルターに通した。細胞懸濁液を採取し、1600rpmで10分遠心分離した。
【0300】
BMMNC又は筋肉もしくは脳懸濁物を増殖培地(低グルコースダルベッコ最小必須培地(LG-DMEM)中2% FCS、ぞれぞれ10ng/mlの、血小板由来増殖因子(PDGF)、表皮増殖因子(EGF)、及び白血病阻害因子(LIF))中に1x105/cm2でプレーティングして、5x103/cm2で維持した。3〜4週間後、トリプシン/EDTAで回収した細胞をマイクロ磁性ビーズを用いてCD45+GlyA+細胞を枯渇させた。生じたCD45-GlyA-細胞を、FNで被覆した96ウェルプレートに10細胞/ウェルで再度プレーティングして、0.5〜1.5x103/cm2の細胞密度で増大させた。MAPCsの増大能は、これらが由来する組織とは無関係に類似した。
【0301】
実施例3:ラットMAPCs
Sprague-Dawleyラット、Lewisラット、又はWistarラットからのBMとMNCとを得て、mMAPCsについて記載したものと同様の条件下でプレーティングした。
【0302】
実施例4:マウス及びラットMAPCsのクローン性
分化した細胞が単一の細胞由来であること、及びMAPCsが実際に「クローン」多能性細胞であることを証明するために、MAPCsをレトロウイルスベクターで形質導入した培養物を作製した。未分化MAPCsとその子孫は、ゲノムの同じ部位に挿入されたレトロウイルスを有していることがわかった。
【0303】
40〜90PD超増大した2種の独立に得られたROSA26 MAPCs、2種のC57BL/6 MAPCs、及び1種のrMAPC集団を、eGFP形質導入「クローン」マウスと「クローン」rMAPCsと共に用いて、試験を行った。eGFP形質導入細胞と非形質導入細胞との間に差は見られなかった。分化MAPCsではeGFP発現が維持されたことが注目される。
【0304】
特にEGF、PDGF-BB、及びLIFを用いてFNで3週間培養したマウス及びラットBMMNCを、2日続けてeGFP オンコレトロウイルスベクターで形質導入した。次にCD45+及びGlyA+細胞を枯渇させ、細胞を10細胞/ウェルで継代培養した。eGFP形質導入したラットBMMNCを85PD増大した。あるいは、80PDS増大したマウスMAPCsを使用した。75PDで維持した培養物から100個のMAPCsをプレーティングし、5x106超の細胞まで再度増大することにより、未分化MAPCsの継代培養物を作製した。増大したMAPCsはin vitroで内皮細胞、神経外胚葉、及び内胚葉への分化に誘導した。系統分化はこれらの細胞種に特異的な抗体を用いて染色することにより示された。
【0305】
実施例5:ヒトMAPCsは免疫原性ではない
間充織幹細胞は低いin vitro免疫原性、及び同種異系のレシピエントにわたって生着する能力が証明されている(Di Nicola, M. et al. (2002) Blood 99: 3838-3843; Jorgensen, C. et al. (2002) Gene Therapy 10: 928-931; Le Blanc, K. et al. (2003) Scandinavian Journal of Immunology 57: 11-20; McIntoch, K. et al. (2000) Graft 6: 324-328; Tse, W. et al. (2003) Transplantation 75: 389-397)。
【0306】
図3は、ヒトMAPCsが低いin vitro免疫原性を示し、強力なT細胞 MLRに加えると免疫抑制性であることを示す(Tse, W. et al. (2003))。結果は、試験したすべてのドナーとレスポンダーの対について一貫していた。
【0307】
レスポンダー細胞とスティミュレーター細胞とをこれらの実験のために調製し、Tse, W. et al. (2003)により記載された方法に従ってMLRを行った。
【0308】
実施例6:MAPCsはT細胞応答を調節する
MAPCsが免疫応答性を調節(この場合は抑制)する能力をT細胞増殖アッセイにより例示し、これは例えば以下のように行うことができる。
【0309】
レスポンダーT細胞の調製
レスポンダー細胞は、Lewisラットのリンパ節から調製した。リンパ節はラットから外科的に取り出し、直ちに60x15mmのペトリ皿中の3〜5mlの培地(完全RPMI又は完全DMEM)に入れた。リンパ節をナイロンフィルターを介して分散させた(シリンジのハンドプランジャーを使用)。分散物を50mlチューブに充填し、1,250rpmで8分間遠心分離した。生じた上清(培地)を捨てた。ペレット(細胞を含有する)を新鮮な培地(完全RPMI又は完全DMEM)に再懸濁した。細胞を3回洗浄し、次に新鮮な培地に再懸濁した。再懸濁した細胞密度は、既知の容量中の細胞の数を計測することにより求めた。細胞を氷上で維持した。使用前に細胞を培地(完全RPMI又は完全DMEM)に1.25x106細胞/mlの密度で再懸濁した。
【0310】
MAPCsの調製
Lewisラット又はSprague-DawleyラットからMAPCsを調製し、上記したように凍結した。これらを融解し、次に3000radで放射線照射した。次に、放射線照射した細胞を培地(完全RPMI又は完全DMEM)に0.4x106細胞/ml、0.8x106細胞/ml、及び1.6x106細胞/mlの密度で再懸濁した。
【0311】
コンカナバリンAの調製
コンカナバリンA(「ConA」)を使用してT細胞を活性化した。ConAをPBS(完全RPMI又は完全DMEM)に最終濃度0(PBSのみ)、10、30、及び100μg/mlで溶解させた。
【0312】
アッセイ手順
各データ点は少なくとも3つの測定値に基づく。
【0313】
20μlの各ConA溶液をマイクロタイタープレート(96ウェル、平底)のウェルに加え、次に80μl/ウェルのレスポンダー細胞と100μl/ウェルのMAPCsとを加えた。プレートを加湿インキュベーター中、5%CO2下で4〜5日間、37℃でインキュベートした。最後の14〜18時間の培養中、プレートに1μCi/ウェルの3H-チミジンをパルスした。次にTomtec回収機を使用してガラス繊維フィルター上で細胞を自動的に回収した。チミジン取り込みをマイクロプレートシンチレーションカウンターで定量した。結果は平均数/分(CPM)±SDで示した。
【0314】
ウェル中の増殖培地におけるConAの最終濃度は、0、1、3.16、及び10μg/mlであった。ウェル中のMAPCsは、0、0.4、0.8、及び1.6x105 細胞/ウェルで存在した。
【0315】
結果(後述)を図4に示す。
【0316】
結果
増加する量のConAにより、T細胞増殖が用量依存的に刺激された(図4、LNのみ)。Lewis MAPCsは、ConA刺激T細胞の増殖を阻害した。阻害はMAPCsの用量に依存した。最大阻害(50%)は、これらの実験で使用した最大用量のMAPCsと低及び中用量ConAで生じた。これらの結果は図4にグラフで示され、これはMAPCsが活性化T細胞の増殖を抑制することを示す。
【0317】
実施例7:MAPCsは刺激されたT細胞の増殖を抑制する
同系の及び不一致(同種異系)のT細胞増殖応答の増殖を抑制するMAPCsの能力は、混合リンパ球反応の結果により証明される。以下の例は、DAラットからの放射線照射した脾細胞により刺激されたLewisラットのT細胞に対するMAPCsの抑制作用を示す。同系LewisラットからのMAPCs及び不一致(同種異系)Sprague-DawleyラットからのMAPCsの両者とも、用量依存的様式でT細胞応答を阻害した。実験は以下のように行った。
【0318】
レスポンダーT細胞の調製
レスポンダー細胞は、上記したようにLewisラットのリンパ節から調製した。
【0319】
放射線照射されたスティミュレーター脾細胞
DAラットから脾臓を外科的に取り出した。次に基本的にLewisラットのリンパ節からのレスポンダー細胞の単離について上記したように、脾臓から脾細胞を単離した。単離した脾細胞に1800radで放射線照射した。次に細胞を4x106/mlまで再懸濁し、使用するまで氷上で維持した。
【0320】
MAPCsの調製
上記したようにLewisラットから同系のMAPCsを調製した。同じ手法でSprague-Dawleyラットから不一致(同種異系)MAPCsを調製した。LewisラットとSprague-DawleyラットのMAPCsに3000radで放射線照射し、次に完全RPMI培地に0.03x106/ml、0.06x106/ml、0.125x106/ml、0.25x106/ml、0.5x106/ml、1x106/ml、及び2x106/mlの密度で再懸濁した。
【0321】
アッセイ手順
96ウェルマイクロタイタープレートに以下を充填した:100μlのMAPCs(記載の希釈で)又は100μlの培地;50μlのスティミュレーター細胞ストック又は対照;各50μlのレスポンダー細胞ストック又は対照;及び、総量を最終容量200μl/ウェルにするために必要な培地(完全RPMI又は完全DMEM)。すべてのアッセイで96ウェル平底マイクロタイタープレートを使用した。
【0322】
各データ点は少なくとも3つの測定値に基づく。
【0323】
プレートを加湿インキュベーター中、5%CO2下で、4〜5日間37℃でインキュベートした。最後の14〜18時間の培養中に、プレートに1μCi/ウェルの3H-チミジンをパルスした。次にTomtec回収機を使用してガラス繊維フィルター上で細胞を自動的に回収した。チミジン取り込みをマイクロプレートシンチレーションカウンターで定量した。結果は平均数/分(CPM)±SDで示した。
【0324】
結果
Lewisラットのリンパ節から得られたT細胞(レスポンダー)を、DAラットからの放射線照射脾細胞からなるスティミュレーター細胞(スティミュレーター)に曝露すると、図5Aと5Bで示すように、「no MAPC」について、レスポンダー細胞の非常に強固な増殖応答が得られた。
【0325】
増加する用量の同系Lewis MAPCs(図5A)と不一致(同種異系)第三者Sprague-DawleyMAPCs(図5B)を加えると、T細胞活性化の有意かつ用量依存的な阻害が起きた。阻害の最大レベルは約80%であった。最も低い用量のMAPCsでさえ、40〜50%の阻害があった。
【0326】
対照では3H-チミジン取り込みは無く、これは、図5Aと5Bに示すように、取り込みが活性化されたレスポンダーT細胞の増殖にのみが原因であることを示している。
【0327】
要約すると、結果は、同系及び第三者(同種異系)MAPCsは、不一致ラットからの強力なアクチベーター脾細胞の存在下でさえ、T細胞増殖を抑制することを示す。これらの実験において、反応物中に同様の数(200,000細胞)の各スティムレーター、レスポンダー、及びMAPCsがあるときに阻害がピークに達した。
【0328】
これらの条件下で、約80%の阻害があった。反応物中の他の細胞に対するMAPCsの比が遙かに低い場合、非常に大きな阻害があった。例えば、1.5%のMAPCsでは、50%の阻害(3,000個のMAPCs対200,000個の各種細胞)があった。この結果は、MAPCsが強い免疫抑制作用を有するだけでなく、比較的少数のMAPCsも非常に強力なT細胞アクチベーターの存在下でさえ比較的多数のコンピテントT細胞を阻害するのに十分であることを示す。
【0329】
実施例8:MAPCsは安全である
多数の細胞の静脈内注射の主な即時的リスクは、肺中に細胞集塊が蓄積であり、これが呼吸困難を引き起こし、心動停止を引き起こし得る。この点でMAPCsの安全性を示すために、本発明者らは、Buffaloラットの呼吸速度に対するMAPCsの静脈内注射の作用を測定した。
【0330】
MAPCsは上記したようにLewisラットから調製した(「LewisMAPCs」)。脾細胞もまた、対照としての使用のために上記したように調製したLewisラットから調製した(「Lewis脾細胞」)。
【0331】
1匹のメスのLewisラットを各群の脾細胞ドナーとして使用した(実験条件)。2匹のメスのBuffaloラットを各群のレシピエントとして使用した(実験条件)。
【0332】
細胞を下記のようにラットに投与した。データを図6にグラフで示す。データ点と以下の番号を付けた個々のラットとの一致は、図6の右に縦の凡例で列挙する。すべてのラットはBuffaloラットであった。
【0333】
1.1, 1.2 10x106 Lewis MAPC/ラット
2.1, 2.2 5x106 Lewis MAPC/ラット
3.1, 3.2 2.5x106 Lewis MAPC/ラット
4.1, 4.2 1.2x106 Lewis MAPC/ラット
5.1, 5.2 10x106 Lewis脾細胞/ラット
6.1, 6.2 5x106 Lewis脾細胞/ラット
7.1, 7.2 2.5x106 Lewis脾細胞/ラット
8.1, 8.2 1.2x106 Lewis脾細胞/ラット
上記したようにラットに、120万、250万、500万、又は1000万個のMAPCs又は120万、250万、500万、又は1000万個の脾細胞を注射した。これは、500万、1000万、2500万、又は5000万個の細胞/kgに相当する。MAPCs又は脾細胞の静脈内注射の前(0分)、及び1、5、及び10分後に呼吸速度を測定した。呼吸速度は20秒間測定し、計数値に3を掛けて1分当たりの呼吸速度を得た。正常なラットの呼吸速度は60〜140/分である。
【0334】
結果
すべての動物は静脈内細胞注射後も生存した。異なる条件下で呼吸速度に有意な差又は傾向は観察されなかった。結果を図6に示す。細胞を注射する前に動物に麻酔をしたため、初期の呼吸速度(0分)がわずかに低下した。各時点で、明らかな傾向は無く測定値が集中した。
【0335】
要約すると、500万〜5000万個のMAPCs/kgの静脈内注射は、いずれの条件下でもラットの呼吸速度又は死亡率の変化を引き起こさなかった。結果は、MAPCsの静脈内注射が高用量でも安全であることを示す。
【0336】
実施例9:MAPCの免疫マーカー発現
Barry et al.(2005)に記載されたように、MAPCs中の免疫調節マーカーを測定することにより、MAPCsの免疫調節性をさらに特徴付けた。マーカーはマーカー特異的抗体とFACS分析を使用して判定した。
【0337】
ラットの骨髄MAPCsを単離し、培養し、上記したように回収した。FACS分析のために、細胞を1〜2x108 細胞/mlでPBSに懸濁した。200μlの細胞懸濁液を一連の12x75ポリプロピレンチューブのそれぞれに加えた。マーカー特異的抗体又は対照を各チューブに加え、次にこれらを室温で15〜20分インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、2mlのPBSを各チューブに加え、次にこれらを400xgで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞を各チューブ中100μlのPBSに再懸濁した。蛍光標識二次抗体を適切な量で各チューブに加え、チューブを再度室温で、この場合は暗所で15〜20分インキュベートした。次に2mlのPBSを各チューブに加え、これらを再度400xgで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、各チューブ中の細胞を200μlのPBSに再懸濁し、次にFACSで分析するまで氷上で維持した。
【0338】
結果を表1に列挙し、グラフで示す。表に示すように、ラットMAPCsは、(a) MHCクラスI、CD11c、CD29、及びCD90について陽性であり、かつ(b) MHCクラスII、CD11b、CD31、CD40、CD45、CD54、CD80、CD86、CD95、及びCD106について陰性である。陰性の結果は、各抗体について対照細胞(ラット末梢血及び内皮細胞を含む)の陽性染色により確認した。MAPCsで検出されたマーカーと検出されなかったマーカーの両方についての、これらのマーカー発現のパターンは、MAPCsの低い免疫刺激断面と完全に一致する。
【表1】

【0339】
実施例10:MAPCsはMLRにおいて予め刺激されたT細胞を抑制する
細胞
レスポンダー細胞を上記したようにLewisラットのリンパ節から調製した。上記したようにBuffalo又はDAラットから調製した脾細胞をスティミュレーターとして使用した。MAPCsを上記したように調製した。
【0340】
手順
脾細胞と同時にMLRの第1群にMAPCsを加えた(前記実施例のように行った)。さらに、第1群と同様に設定したMLRの第2群にMAPCsを加えた。しかし、第2群のMAPCsは脾細胞(又は対照)の添加の3日後に加えた。こうして第1群で、脾細胞に応答してT細胞が増殖し始める前にMAPCsを加えた。第2群では、脾細胞に対するT細胞応答が進行中の3日間にMAPCsを加えた。すべてのプレートを全部で4日間インキュベートし、次に前記実施例に記載したように、3H-チミジンをパルスし、回収した。その他については、実験は前記実施例のMLRについて記載したように行った。
【0341】
各データ点は少なくとも3つの測定値に基づく。
【0342】
結果
図7の右側から明らかなように、MAPCsは同種異系の脾細胞により刺激した3日後に加えると、MLRでT細胞増殖を強く抑制する。図7の左側と右側とを比較すると、MAPCsが進行している増殖反応を強く抑制することがわかる。定量的にはこの結果は、刺激の3日後にMAPCsを加えたBuffalo細胞は、対照(図の右側)と比較してT細胞増殖を50%抑制すること、そして刺激脾細胞と同時に加えると75%抑制することがわかる(図の左側)。同様にDA細胞について、刺激の3日後に加えたMAPCsは対照(図の右側)と比較してT細胞増殖を33%抑制し、刺激脾細胞と同時に加えると70%抑制することがわかる(図の左側)。
【0343】
すべての場合に、MAPCsによる免疫抑制の程度は、一般に、反応物に加えられるMAPCsの数に依存した。すなわち、免疫抑制はMLRに加えられるMAPCsの用量に依存した。
【0344】
上記で引用した刊行物は、これらが引用された具体的な対象について、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0345】
実施例11:Tリンパ球のMAPC阻害は可逆的である
同種異系の脾細胞スティミュレーターとともにT細胞を、放射線照射MAPCsの存在下又は非存在下で13日間培養した。13日間の培養後、T細胞を回収し、放射線照射した同種異系の脾細胞をMAPCsと共に又は無しで再度プレーティングし、4日間培養した。
【0346】
一次培養期間中に放射線照射MAPCsの存在により阻害されたT細胞の増殖は、二次培養中にMAPCsが存在しないとき回復した。二次培養中のMAPCsの存在は、一次培養のものと比較してT細胞増殖を、1:2のMAPCs対T細胞比で最大90%阻害した。図8に示すこの結果は、MLRにおけるMAPCsによるT細胞増殖の阻害が可逆的であり、MAPCsが一次及び二次T細胞増殖応答の両方を阻害することを明瞭に示す。
【0347】
実施例12:MAPCsはGVHDを防ぐ
MAPCsのGVHDを抑制する能力を以下のようにラットモデルで証明した。BuffaloラットドナーからのT細胞をLewisxBuffaloラットレシピエントの「移植片」とした。Buffalo移植片細胞を宿主において「外来」Lewis細胞により活性化し、モデルのGVHDを生じさせた。
【0348】
F1レシピエントラット(LewisxBuffalo)を0日目に単回の600rad用量の致死量以下で放射線照射した。同日にドナーBuffaloラットからの2x107個の骨髄細胞と10x107個のT細胞(脾細胞)とをこれらのラットに静脈内注射した。ラットを3x/週、GVHDの兆候についてモニタリングし、姿勢、活動、毛の質感、皮膚、及び体重減少により評価した。
【0349】
第1群にはMAPCsを投与しなかった。第2群には1日目に2.5x106個のMAPCsを投与した。第3群には1日目と8日目に2.5x106個のMAPCsを投与した。各群5匹のラットがいた。結果を図9に示す。MAPC投与は明らかに生存率を改善した。第2群の40%のラットと第3群の60%のラットは実験の最後(42日)まで生存し、一方、MAPCsを投与されなかったすべてのラット(第1群)は21日目までにGVHDで死亡した。
【図面の簡単な説明】
【0350】
【図1】図1は、本発明のMAPCsとより系統決定付けられた他の幹細胞や前駆細胞とを区別する遺伝子及び表面受容体に基づくマーカーを生成(同定)するために行った転写プロファイリング調査の略図である。この実験により、MSC培養物とMAPCsとの間で10倍異なる発現を有する75個のマーカーのパネルを得た。
【図2】図2は、GFP標識したラットMAPCsの3系統分化を示すグラフのセットである。結果は、MAPCsが3種すべての胚系統の細胞へ分化できることを示す。上記で詳述されるように、内皮細胞分化のために、MAPCsを、血管内皮増殖因子B(VEGF-B)の存在下、フィブロネクチン被覆プレート上で培養した。肝細胞分化のために、細胞をマトリゲル被覆プレート上で増殖させ、繊維芽細胞増殖因子-4(FGF-4)と肝細胞増殖因子(HGF)とで処理した。神経分化は、塩基性FGF(bFGF)、FGF-8及びソニックヘッジホッグ(Sonic Hedgehog;SHH)、並びに脳由来神経栄養因子(BDNF)による連続的処理により誘導した。2週間後、細胞からmRNAを抽出し、種々の系統マーカーの検出に特異的なプライマーを使用したqPCR分析に適用した。すべてのアッセイで、系統誘導性サイトカインの非存在下で培養した細胞を対照とした。系統マーカーの発現レベルをまず、分化中に影響を受けない内部制御遺伝子(GAPDH)の発現レベルに標準化した。次に分化の成功を、親ラット株におけるレベルと比較した、分化細胞又は対照細胞における相対的発現の算出し、相対的発現の5倍を超える増加を分化成功のカットオフとして使用することにより評価した。分化したラットMAPCsは、内皮細胞マーカーであるフォンヴィレブラント因子及びPECAM-1(上のパネル);肝マーカーであるアルブミン、サイトケラチン-18、及びHNF-1a(中央のパネル);並びに神経/星状細胞マーカーであるGFAP、ネスチン、及びNF-200(下のパネル)の有意な発現を示した。
【図3】図3は、上で詳述されるように、混合リンパ球反応(MLR)においてMAPCsの低免疫原性(上のパネル)と免疫抑制性(下のパネル)を示す棒グラフの一組である。上のパネル:B+B=ドナーB+ドナーB;B+A=ドナーB+ドナーA;B+K=ドナーB+ドナーK;B+R=ドナーB+ドナーR;B+T=ドナーB+ドナーT;ドナーB+PHA;B+BMPC=ドナーB+MAPC。12個体の異なるドナーで同じ結果が得られた。下のパネル:ドナーW+ドナーW;ドナーW+ドナーA;ドナーW+ドナーT;ドナーW+MSC;ドナーW+MAPC(17);ドナーW+PHA;ドナーW+ドナーA+MSC;ドナーW+ドナーA+MAPC(17);ドナーW+ドナーT+MSC;ドナーW+ドナーT+MAPC(17);ドナーW+ドナーP+MSC;ドナーW+ドナーP+MAPC(17)。PHAは植物性血球凝集素(T細胞活性化の陽性対照)である。
【図4】図4は、実施例6に示すように、MAPCsがConAで刺激されたT細胞の増殖を抑制できることを示すグラフである。「LN Only」という凡例は、MAPCsを省略した対照反応の結果を示す。MAPCsの数字は、アッセイで細胞がいくつ使用されたかを示す。
【図5A】図5Aは、実施例7に記載されるように、混合リンパ球反応におけるLewisMAPCsの免疫抑制作用を示すグラフである。図5A中の四角は各反応物におけるMAPCsの数を示す。四角中で、Rはレスポンダー細胞を示し、Sは刺激細胞を示す(DAラットからの放射線照射された脾細胞)。
【図5B】図5Bは、実施例7に記載されるように、混合リンパ球反応におけるSprague-DawleyラットMAPCsの免疫抑制作用を示すグラフである。凡例と略語は図5Aと同じである。
【図6】図6は、MAPCsの注入は、呼吸速度により測定した際、レシピエントの健康に悪影響を与えないことを示すグラフである。グラフはさらに実施例8で説明される。
【図7】図7は、進行中の免疫応答を抑制するMAPCsの能力を証明する実施結果を示す棒グラフである。グラフは、MAPCsをT細胞アクチベーター(刺激物質)と同時(0日目、グラフの左側)に加えた時も、T細胞アクチベーター(刺激物質)添加の3日後(3日目、グラフの右側)に加えた時も、MAPCsがMLRsにおいて強く免疫抑制性であることを示す。実験の詳細は、実施例10でさらに説明される。
【図8】図8は、MLRにおけるT細胞増殖のMAPC阻害が可逆的であることを示す棒グラフである。結果は三重培養物の平均cpm±SDとして表した。グラフは、実施例11でさらに説明される。
【図9】図9は、実施例13に記載のように、MAPCsがGVHDを阻害することを示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の補助的治療の方法であって、免疫機能障害のリスクがあるか又は罹患している被験体に、免疫機能障害を治療するのに有効な経路と有効な量で、細胞を投与することを含んでなり、ここで該細胞は、胚幹細胞、胚生殖細胞又は生殖細胞ではなく;内胚葉性、外胚葉性、中胚葉性の胚系統の少なくとも2種それぞれの少なくとも1種の細胞種に分化することができ;被験体で有害な免疫応答を誘発せず;被験体における免疫機能障害を治療するのに有効であり、免疫機能障害を治療するために、別の疾患を治療するために、又はこれら両方を治療するために被験体に施される1つ又はそれ以上の他の治療に対して補助的に投与される、前記方法。
【請求項2】
前記細胞は、内胚葉性、外胚葉性、中胚葉性の胚系統それぞれの少なくとも1つの細胞種に分化することができる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記細胞はテロメラーゼを発現する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記細胞はoct-3/4について陽性である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記細胞は、被験体への投与の前に、培養で少なくとも10〜40回の細胞倍加を受けている、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は被験体に対して同種異系である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記細胞は、前記細胞が投与される前、同時、又は後に施される別の治療に対して補助的に被験体に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記細胞は哺乳動物細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記細胞はヒト細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記細胞は、胎盤組織、臍帯組織、臍帯血、骨髄、血液、脾臓組織、胸腺組織、脊髄組織、又は肝臓組織から単離された細胞に由来する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
被験体は哺乳動物である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
被験体はヒトである、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記細胞は、被験体の質量1kgあたり104〜108個の前記細胞を含む1回分又は複数回分で被験体に投与される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
被験体は将来移植を受けるか又はすでに受けており、宿主対移植片反応又は移植片対宿主病のリスクがあるか又はすでに発症しており、前記細胞は移植に対して補助的に投与される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
移植は臓器移植であり、被験体は宿主対移植片反応のリスクがあるか又はすでに発症しており、前記細胞は、宿主対移植片反応を治療するために移植に対して補助的に投与される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
被験体は放射線、化学療法、又は放射線と化学療法との組合せで治療されているか又は将来治療され、被験体の免疫系は弱められており、前記細胞による治療は放射線、化学療法、又はこれら2つの組合せに対して補助的である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記細胞は、免疫不全の被験体に投与される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
移植は骨髄移植又は血液移植であり、被験体は移植片対宿主病のリスクがあるか又はすでに発症しており、前記細胞は、移植片対宿主病を治療するために移植に対して補助的に投与される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
被験体は免疫抑制剤で将来治療されるか又は治療されており、前記細胞による治療は免疫抑制剤に対して補助的である、請求項15記載の方法。
【請求項20】
被験体は免疫抑制剤で将来治療されるか又は治療されており、前記細胞による治療は免疫抑制剤に対して補助的である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
被験体は新生物、貧血もしくは他の血液疾患、及び免疫機能障害の1つ又はそれ以上のリスクがあるか又は罹患しており、前記細胞による治療はこれらの治療に対して補助的である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
被験体は、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、異常ヘモグロビン症、サラセミア、骨髄機能不全症候群、鎌状赤血球貧血、再生不良性貧血、ファンコーニ貧血、免疫性溶血性貧血、先天性免疫不全症、又は自己免疫機能障害の1つ又はそれ以上のリスクがあるか又は罹患しており、前記細胞による治療はこれらの治療に対して補助的である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
ヒト被験体の補助的治療の方法であって、移植片対宿主又は宿主対移植片疾患のリスクがあるか又は罹患している被験体に、該疾患を治療するのに有効な経路と有効な量で、ヒト細胞を投与することを含んでなり、該ヒト細胞は、胚幹細胞、胚生殖細胞、又は生殖細胞ではなく;内胚葉性、外胚葉性、中胚葉性の胚系統の3種すべての少なくとも1種の細胞種に分化することができ;被験体に有害な免疫応答を誘発せず;そして被験体において前記疾患を治療するのに有効であり、移植片対宿主又は宿主対移植片疾患を治療するために、これと異なる疾患を治療するために、又はその両方を治療するために被験体に施される1つ又はそれ以上の他の治療に対して補助的に投与される、前記方法。
【請求項24】
前記細胞はテロメラーゼ活性を有し、oct-3/4について陽性であり、被験体への投与の前に培養で少なくとも10〜40回の細胞倍加を受けている、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記細胞は被験体に対して同種異系である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
被験体は移植を将来受けるか又はすでに受けており、前記細胞は移植に対して補助的に投与される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
被験体は、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、異常ヘモグロビン症、サラセミア、骨髄機能不全症候群、鎌状赤血球貧血、再生不良性貧血、ファンコーニ貧血、免疫性溶血性貧血、先天性免疫不全症、又は自己免疫機能障害の1つ又はそれ以上のリスクがあるか又は罹患しており、前記細胞による治療はこれらの治療に対して補助的である、請求項25の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−514979(P2009−514979A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540216(P2008−540216)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/043804
【国際公開番号】WO2007/056578
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508137464)アサーシス,インコーポレーテッド (3)
【出願人】(508136375)オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】