多自由度駆動装置
【課題】装置に組み込まれた状態で各振動子の出力特性を揃えることができる多自由度駆動装置を提供する。
【解決手段】複数の振動子11〜13が、複数のパラメータにそれぞれ設定された値に基づいて生成された駆動電圧VA,VBで駆動され、移動体10が移動される。複数のパラメータは、対応する振動子の駆動に応じて可変される値が設定される第1のパラメータと該第1のパラメータと異なる第2のパラメータとを含む。制御部50は、振動子が駆動された際の振動子のそれぞれに対する第1のパラメータの可変された値に基づいて、振動子のそれぞれの出力特性が一致しているか否かを判別する。振動子の出力特性が一致しないと判別された場合に、制御部50は、駆動された振動子のそれぞれの出力特性が一致するように、少なくとも1つの振動子に対して第2のパラメータに設定された値を変更する。
【解決手段】複数の振動子11〜13が、複数のパラメータにそれぞれ設定された値に基づいて生成された駆動電圧VA,VBで駆動され、移動体10が移動される。複数のパラメータは、対応する振動子の駆動に応じて可変される値が設定される第1のパラメータと該第1のパラメータと異なる第2のパラメータとを含む。制御部50は、振動子が駆動された際の振動子のそれぞれに対する第1のパラメータの可変された値に基づいて、振動子のそれぞれの出力特性が一致しているか否かを判別する。振動子の出力特性が一致しないと判別された場合に、制御部50は、駆動された振動子のそれぞれの出力特性が一致するように、少なくとも1つの振動子に対して第2のパラメータに設定された値を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の振動子により移動体を多方向へ移動させる多自由度駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多自由度駆動装置として、リニアアクチュエータを用いてX,Y,θの3方向への駆動を実現する表面波アクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この表面波アクチュエータについて図20を参照しながら説明する。図20は従来の表面波アクチュエータを部分的に破断して示す斜視図である。
【0004】
表面波アクチュエータは、図20に示すように、上ベース板2および下ベース板3に取り付けられ、互いに対向するように配置されている3組の表面波発生機構6a,6b,6cを備える。各表面波発生機構6a,6b,6cには駆動電圧が印加され、これにより、表面波が発生される。各表面波発生機構6a,6b,6cにそれぞれ発生された表面波は、動体板1を移動させるための駆動力として動体板1に作用する。
【0005】
ここで、各表面波発生機構6a,6b,6cが発生する表面波による動体板1に与える力成分をそれぞれベクトルM1a,M1b,M1cで表すと、各ベクトルM1a,M1b,M1cを合成したベクトルが示す方向に動体板1が移動されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平07−034660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記表面波アクチュエータにおいては、表面波発生機構6a,6b,6c間で出力特性の差があると、表面波発生機構6a,6b,6cが所定の駆動力を発生するように制御することができない場合がある。
【0008】
そこで、予め出力特性が把握されている複数の表面波発生機構の中から、出力特性がほぼ一致する所定数の表面波発生機構を選択し、選択された所定数の表面波発生機構を組み込む方法が考えられる。しかしながら、出力特性がほぼ一致する所定数の表面波発生機構を装置内に組み込むとしても、それらの取り付け状態例えば各表面波発生機構と動体板1との接触力などが異なる場合がある。このような場合、表面波発生機構のそれぞれの出力特性が揃わず、各表面波発生機構の駆動を安定して制御することができない場合がある。
【0009】
本発明の目的は、装置に組み込まれた状態で各振動子の出力特性を揃えることができる多自由度駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の多自由度駆動装置は、複数のパラメータに設定された値に基づいて生成された駆動電圧により駆動される複数の振動子と、前記複数の振動子により多方向へ移動可能なように前記振動子のそれぞれと接触される移動体と、を備え、前記複数のパラメータは、対応する振動子の駆動に応じて可変される値が設定される第1のパラメータと該第1のパラメータと異なる第2のパラメータとを含み、前記振動子が駆動された際の前記振動子のそれぞれに対する前記第1のパラメータの可変された値に基づいて、前記振動子のそれぞれの出力特性が一致しているか否かを判別する判別手段と、前記判別手段により前記振動子のそれぞれの出力特性が一致していないと判別された場合、前記駆動された振動子のそれぞれの出力特性が一致するように、少なくとも1つの振動子に対して前記第2のパラメータに設定された値を変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置に組み込まれた状態で各振動子の出力特性を揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多自由度駆動装置を示す平面図である。
【図2】図1の多自由度駆動装置の側面図である。
【図3】(a)は振動子11の構成を示す縦断面図であり、(b)は図3(a)の振動子11の圧電素子に形成されている電極領域を示す平面図である。
【図4】図3の振動子11に発生する振動モード(AモードおよびBモード)を示す図である。
【図5】図1の多自由度駆動装置における振動子11〜13の駆動を制御するための制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】図5のスイッチング回路の構成を示すブロック図である。
【図7】移動体10をX方向へ直進移動させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。
【図8】移動体10をY方向へ直進移動させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。
【図9】移動体10をθ方向へ回転させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。
【図10】移動体10をX方向へ直進移動させる際の各振動子12,13の駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)と、振動子11の駆動力(ベクトルM1)とが一致しない場合を示す図である。
【図11】図10に示す駆動力の発生状態における各振動子12,13に印加される駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度との関係を示す図である。
【図12】振動子12に印加される駆動電圧の電圧値の変更により各振動子12,13の出力特性を一致させる場合の駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度との関係を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態において周波数f3および電圧値V3の駆動電圧VA,VBで振動子11〜13を駆動して移動体10をθ方向へ回転させる際に制御される各振動子11〜13の駆動電圧VA,VB間の位相差を示す図である。
【図14】各振動子11〜13にそれぞれ印加される駆動電圧VA,VB間の位相差と速度との関係を示す図である。
【図15】各振動子11〜13にそれぞれ印加される駆動電圧VA,VB間の周波数と速度との関係を示す図である。
【図16】振動子11,12に印加する周波数f3および電圧値V3の駆動電圧VA,VB間の位相差と振動子13に印加する周波数f4および電圧値V3の駆動電圧VA,VB間の位相差をそれぞれ示す図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る多自由度駆動装置において各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際の各振動子11〜13の駆動状態を示す図である。
【図18】振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの位相差の制御量を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態に係る多自由度駆動装置において各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際の各振動子11〜13の駆動状態を示す図である。
【図20】従来の表面波アクチュエータを部分的に破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る多自由度駆動装置を示す平面図である。図2は図1の多自由度駆動装置の側面図である。
【0015】
多自由度駆動装置は、図1および図2に示すように、ベース板9を備える。ベース板9には、互いに共働して移動体10を、予め決められている平面上で、X,Y,θの3方向へ移動させるための3つの振動子11,12,13が取り付けられている。ここで、X方向とY方向は、上記平面上において互いに直交する方向であり、θ方向は、上記平面と直交する軸周りの回転方向である。各振動子11,12,13は、互いにベース板9上の予め決められているO点を中心とする円周方向に沿って2π/3(rad)の角度間隔で配置されている。
【0016】
また、ベース板9には、移動体10のX方向への移動量を検出するための位置センサ21と、移動体10のY方向への移動量を検出するための2つの位置センサ22,23が取り付けられている。位置センサ21は、O点から距離d離された位置に配置されている。各位置センサ22,23は、それぞれ、互いに対向するように、O点から距離d離れた位置に配置されている。
【0017】
移動体10には、図2に示すように、3つのスケール部31,32,33が取り付けられている。各スケール部31,32,33は、対応する位置センサ21,22,23と対向するように配置されている。位置センサ21は、スケール部31のX方向への移動量(移動体10のX方向への移動量)を検出し、検出した移動量を示す信号を出力する。また、各位置センサ22,23は、対応するスケール部32,33のY方向への移動量(移動体10のY方向への移動量)を検出し、検出した移動量を示す信号を出力する。
【0018】
上記振動子11,12,13について図3および図4を参照しながら詳細に説明する。図3(a)は振動子11の構成を示す縦断面図であり、図3(b)は図3(a)の振動子11の圧電素子に形成されている電極領域を示す平面図である。図4は図3の振動子11に発生する振動モード(AモードおよびBモード)を示す図である。ここでは、振動子11,12,13は、同様の構成を有するものであるので、振動子11の構成について説明する。
【0019】
振動子11は、図3(a)に示すように、ステンレスなどの平板形状の弾性部材からなる振動体18を有する。振動体18の一方の面には、突起部19が設けられ、この突起部19と移動体10は、ばね部材などの加圧部材(図示せず)により加圧接触される。振動体18の他方の面には、圧電素子(電気機械エネルギ変換素子)17が接着されている。
【0020】
圧電素子17には、図3(b)に示すように、長手方向(X方向)に沿って配列されている2つの電極領域17a,17bが形成されている。各電極領域17a,17bにおける分極方向は、同一方向(+)とされている。各電極領域17a,17bのうち,電極領域17aには駆動電圧VAが印加され、電極領域17bには駆動電圧VBが印加される。
【0021】
ここで、駆動電圧VA,VBが、Aモードの共振周波数近傍の周波数を有し、かつπ(rad)位相差を有する交流電圧である。駆動電圧VA,VBが対応する電極領域17a,17bに印加されると、ある瞬間には、圧電素子17の電極領域17aが縮むとともに、電極領域17bが伸びる。また、他の瞬間には逆の関係となる。その結果、振動子11(振動体18)には、図4(a)に示すAモードの振動が発生することになる。
【0022】
また、駆動電圧VA,VBが、Bモードの共振周波数近傍の周波数を有し、かつ同位相を有する場合、圧電素子17の全体(2つの電極領域17a,17b)がある瞬間には伸び、また他の瞬間には縮むことになる。その結果、振動子11(振動体18)には、図4(b)に示すBモードの振動が発生することになる。
【0023】
上記Aモードの振動とBモードの振動は合成され、合成された振動により、移動体10を駆動する駆動力が発生する。振動子11の場合、当該振動子11は、移動体10をX方向へ移動する駆動力を発生する。また、各電極領域17a,17bへ入力する駆動電圧VA,VBの位相差を変えることにより、Aモードの振動とBモードの振動の発生比を変更することができる。この各モードの振動の発生比を制御することによって、振動子11が移動体10を駆動する駆動力(移動体10のX方向への移動速度)を制御することが可能である。また、各振動子12,13も、同様に、移動体10を駆動する駆動力を発生する。
【0024】
次に、振動子11〜13の駆動制御を行うための駆動制御系について図5および図6を参照しながら説明する。図5は図1の多自由度駆動装置における振動子11〜13の駆動を制御するための制御系の構成を示すブロック図である。図6は図5のスイッチング回路の構成を示すブロック図である。
【0025】
各振動子11〜13の駆動を制御するための制御系は、図5に示すように、CPU、ROM、RAM(図示せず)などから構成される制御部50を備える。制御部50は、移動体10(移動体10に設けられている基準位置)を現在位置から目標位置へ移動させるように制御する。ここで、上記目標位置は、移動体10の位置または移動体10の移動に連動して移動される物体の位置(X−Y座標上での位置)を示し、例えば操作部(図示せず)などから入力される。そして、制御部50は、移動体10を上記目標位置へ移動させるための制御信号S11〜S13を生成する。各制御信号S11〜S13は、それぞれ、対応する振動子11〜13の駆動を制御する制御信号であり、駆動部51の対応する駆動パルス発生器53〜55に出力される。各制御信号S11〜S13には、パラメータα11〜α13,β11〜β13が含まれる。各パラメータα11〜α13の値は、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VBの周波数を規定する値である。また、各パラメータβ11〜β13の値は、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差(A,B相間の位相差)を規定する値である。
【0026】
また、制御部50は、駆動部59の電源回路59が発生する3つの直流電圧Vc11〜Vc13の電圧値をそれぞれ制御するための3つの制御信号S14〜S15を生成し、電源回路59に出力する。各制信号S14〜S15には、それぞれ対応するパラメータγ11〜γ13が含まれる。各パラメータγ11〜γ13の値は、電源回路59が発生する3つの直流電圧Vc11〜Vc13の電圧値を規定する値である。
【0027】
制御部50は、各パラメータα11〜α13,β11〜β13の値を可変することにより、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VBの周波数、駆動電圧VA,VB間の位相差(A,B相間の位相差)を制御する。また、制御部50は、パラメータγ11〜γ13の値を可変することにより、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VBの電圧値を制御する。通常時は、各振動子11〜13に対してそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの周波数および電圧値がそれぞれ対応する値に保持された状態で、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。そして、駆動電圧VA,VB間の位相差の制御により、各振動子11〜13の駆動力が制御される。
【0028】
駆動部51は、電源回路59、発振器52、3つの駆動パルス発生器53〜55および3つのスイッチング回路56〜58を有する。電源回路59は、入力された電源(図示せず)から、上記制御信号S14〜S15に含まれる上記パラメータγ11〜γ13のそれぞれの値が規定する電圧値を有する直流電圧Vc11〜Vc13をそれぞれ発生する。各直流電圧Vc11〜Vc13は、スイッチング回路56〜58に供給される。
【0029】
発振器52は、基準クロックを発生する。駆動パルス発生器53は、制御信号S11に基づいてA相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスを発生し、また各パルスの発生を停止する。ここで、A相パルスと/A相パルスは、位相差がπ(rad)で、パルス幅が等しいパルスである。同様に、B相パルスと/B相パルスは、位相差がπ(rad)で、パルス幅が等しいパルスである。また、A相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスは、発振器52の基準クロックを基準にして、パラメータα11の値およびパラメータβ11の値に基づいて発生される。
【0030】
駆動パルス発生器54,55は、駆動パルス発生器53と同様に、制御信号S12,S13に基づいて、A相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスの発生およびその停止を行う。駆動パルス発生器54,55が発生するA相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスは、発振器52の基準クロックを基準にして、パラメータα12,α13の値およびパラメータβ12,β13の値に基づいて発生される。
【0031】
各駆動パルス発生器53〜55により発生された、A相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスは、それぞれ対応するスイッチング回路56〜58に入力される。
【0032】
スイッチング回路56は、図6に示すように、スイッチング素子である複数のFET151〜158を有する。各FET151〜158には、それぞれ、対応するA相パルス、/A相パルス、B相パルス、/B相パルスが入力される。例えばA相パルスがH(High)になると、FET151,154がオンし、A相から/A相へ向けて電流が流れる。逆に、/A相パルスがHになると、FET153,152がオンし、/A相からA相へ向けて電流が流れる。このように、A相に関しては、A相パルスおよび/A相パルスにより、FET151〜154のオン動作が制御され、直流電圧Vc11が振動子11に対応する周波数の駆動電圧VAに変換されて印加される。上記直流電圧Vc11の電圧値は、上記パラメータγ11の値により規定された電圧値である。
【0033】
B相に関しても、同様に、B相パルスおよび/B相パルスにより、FET155〜158のオン動作が制御され、直流電圧Vc11が、振動子11に対応する周波数および駆動電圧VAに対して対応する位相差を有する駆動電圧VBに変換されて印加される。
【0034】
このようにして、振動子11には、上記各パラメータα11,β11,γ11の値によりそれぞれ規定された周波数、位相差、電圧値を有する駆動電圧VA,VBが印加されることになる。
【0035】
また、振動子11とのインピーダンスを整合させるためのインピーダンス素子41が振動子11とFET151,152の間に挿入されている。また、インピーダンス素子42が振動子11とFET155,156の間に挿入されている。このインピーダンス素子41,42は、低電圧でかつ高効率で振動子11を駆動するためのものである。
【0036】
同様に、スイッチング回路57は、A相パルス、/A相パルス、B相パルス、/B相パルスに基づいて、上記パラメータα12,β12,γ12の値に応じた周波数、位相差、電圧値を有する駆動電圧VA,VBを、振動子12に印加する。また、スイッチング回路58は、A相パルス、/A相パルス、B相パルス、/B相パルスに基づいて、振動子13に対して、上記パラメータα13,β13,γ13の値に応じた周波数、位相差、電圧値を有する駆動電圧VA,VBを印加する。スイッチング回路57,58は、上述したスイッチング回路56と同様の構成を有するので、その説明は省略する。
【0037】
このように、駆動部51は、各振動子11〜13に対するパラメータα11〜13,β11〜13,γ11〜13の値に基づいて各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VBを生成する。
【0038】
次に、制御部50により各振動子11〜13を駆動するための制御について図7〜図10を参照しながら説明する。図7は移動体10をX方向へ直進移動させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。図8は移動体10をY方向へ直進移動させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。図9は移動体10をθ方向へ回転させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。図10は移動体10をY方向へ直進移動させる際の各振動子12,13の駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)と、振動子11の駆動力(ベクトルM1)とが一致しない場合を示す図である。
【0039】
移動体10を現在位置から目標位置へ移動させる際、制御部50は、移動体10の基準部位を現在位置から目標位置へ到達させるための移動経路を決定する。この移動経路は、X方向への直進移動による経路、Y方向への直進移動による経路、θ方向への回転による経路をそれぞれ個別に組み合わせたものからなり、各経路に対しては、移動体10の移動量(または移動速度)が設定されている。そして、制御部50は、上記決定された移動経路を成す各経路に沿って移動体10を移動させるための制御信号S11〜S13を生成し、駆動部51に出力する。また、制御部50は、電源回路59が発生する直流電圧Vc11〜Vc13の電圧値を対応する電圧値にするための制御信号S14〜S16を電源回路59に出力する。
【0040】
これにより、対応する振動子11〜13には、各パラメータα11〜α13,β11〜β13,γ11〜γ13が規定する周波数、位相差および電圧値を有する駆動電圧VA,VBが印加され、対応する振動子11〜13が駆動される。そして、移動体10が上記経路に沿って移動される。
【0041】
移動体10の移動開始に伴い、制御部50は、各位置センサ21〜23の出力値に基づいて移動体10の移動方向および移動量(または移動速度)を検出する。移動体10の移動方向および移動量(または移動速度)の検出は、後述する(1)〜(3)の各式を用いて行われる。そして、制御部50は、検出された移動体10の移動方向および移動量(移動速度)と対応する経路の移動方向および移動量(移動速度)との偏差に基づいて、対応する制御信号S11〜13のパラメータβ11〜13の値を可変制御する。即ち、対応する振動子11〜13に印加される駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。これにより、移動体10の実際の移動方向および移動量(移動速度)が対応する経路の移動方向および移動量(移動速度)になるように、対応する振動子11〜13の駆動力(移動体10を駆動する駆動力)の大きさが制御される。
【0042】
ここで、制御部50により各位置センサ21〜23からの出力値に基づいて移動体10の移動方向およびその移動方向へ移動量の算出方法について簡単に説明する。
【0043】
位置センサ21の出力値をD21、位置センサ22,23のそれぞれの出力値をD22,D23とし、移動体10のY方向への移動量をDyとすると、移動量Dyは、以下の(1)式により求められる。
【0044】
Dy=(D22+D23)/2 …(1)
また、移動体10のθ方向へ回転角をθrとすると、回転角θrは、以下の(2)式により求められる。
【0045】
θr=arccos{(D22−D23)/(2d)} …(2)
また、移動体10のX方向への移動量をDxとすると、移動量Dxは、以下の(3)式により求められる。
【0046】
Dx=D21+d×sinθr …(3)
これらの(1)〜(3)式を用いて、移動体10の移動方向(X,Y,θの方向)、その移動方向への移動量および移動速度を求めることができる。
【0047】
移動体10をX方向へ直進移動させる場合、各振動子11〜13がそれぞれ対応する制御信号S11〜S13に基づいて駆動される。ここでは、ベース板9が水平面上に置かれ、移動体10には、重力が鉛直方向に作用するとする。この場合、図7(a)に示すように、各振動子11〜13には、駆動力(ベクトルM11〜M13)が発生し、それぞれの駆動力により、移動体10が移動される。このとき、図7(b)に示すように、振動子12の駆動力(ベクトルM12)と振動子13の駆動力(ベクトルM13)は、合成されて駆動力(ベクトルMs)となる。この合成した駆動力(ベクトルMs)は、振動子11の駆動力(ベクトルM1)と一致する必要がある。
【0048】
そこで、上記駆動力(ベクトルMs)は、振動子11の駆動力(ベクトルM1)と一致するように、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差(パラメータβ11〜13)が制御される。この制御においては、各位置センサ21〜23の出力値に基づいて移動体10の移動方向および移動量が検出される。そして、検出された移動体10の移動方向および移動量に基づいて、各振動子11〜13にそれぞれ印加する
駆動電圧VA,VB間の位相差(パラメータβ11〜13)が制御される。各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの周波数、駆動電圧は、それぞれ、予め設定された値(パラメータα11〜α13,γ11〜13の値)に保持される。
【0049】
移動体10をY方向へ直進移動させる場合、各振動子11〜13がそれぞれ対応する制御信号S11〜S13に基づいて駆動される。ここで、振動子11は移動体10をX方向へ移動させるための振動子であるので、当該振動子11は、Bモード(図4(b)に示すモード)で駆動される。このBモードの場合、振動子11には、位相差がほぼない駆動電圧VA,VBが印加され、移動体10をX,Y方向のいずれの方向にも移動させる振動が発生せず、上下振動のみが発生する。ただし、この上下振動により、振動子11の振動体18の突起部19と移動体10との接触面の間の摩擦力は、ほぼ零となり、移動体10が振動子11から受ける負荷は無負荷となる。
【0050】
各振動子12,13には、それぞれ、対応する駆動電圧VA,VBが印加され、図8(a)に示すように、各振動子12,13は、移動体10を駆動する駆動力(ベクトルM12,M13)を発生する。ここで、図8(b)に示すように、振動子12の駆動力(ベクトルM12)と振動子13の駆動力(ベクトルM13)は、合成されて移動体10を駆動する駆動力(ベクトルMs)となる。そして、検出された移動体10の移動方向および移動量に基づいて、上記駆動力(ベクトルMs)がY方向の駆動力となるように、各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。ここで、各振動子12〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの周波数、駆動電圧は、それぞれ、予め設定された値に保持される。
【0051】
移動体10をθ方向へ回転させる場合、各振動子11〜13がそれぞれ対応する制御信号S11〜S13に基づいて駆動される。この場合、図9に示すように、各振動子11〜13には、駆動力(ベクトルM11〜M13)が発生し、それぞれの駆動力により、移動体10がθ方向へ回転される。そして、検出された移動体10の移動方向および移動量に基づいて、各振動子11〜13の駆動力(ベクトルM11〜13)の大きさが同じになるように、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。ここで、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの周波数、駆動電圧は、それぞれ、予め設定された値に保持される。
【0052】
このように、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差(パラメータβ11〜13)の制御により、各振動子11〜13が駆動され、移動体10は、目標方向へ目標移動量分移動させることができる。
【0053】
しかしながら、例えば図10に示すように、移動体10をY方向へ直進移動させる際に、各振動子12,13の駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)がY方向への駆動力とならない場合がある。例えば各振動子12,13の共振周波数に大きな差異があり、それぞれの出力特性が大きく異なる場合、各振動子12,13の駆動力の大きさが異なり、上記合成した駆動力(ベクトルMs)の方向がY方向に一致しないことになる。
【0054】
このような場合、各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差を制御(可変)することにより、各振動子12,13が発生する駆動力の大きさが同じにするための制御が試みられる。しかし、共振周波数がずれているなどの要因によりモータの個体差が大きくずれていることがある。この場合、駆動電圧VA,VB間の位相差の制御のみで、各振動子12,13の駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)をY方向への駆動力となるように、各振動子12,13が発生する駆動力の大きさを所望の大きさに制御することができない。
【0055】
そこで、本実施の形態においては、上述したような事態を未然に回避するために、まず、対応する振動子11〜13を対応する駆動電圧VA,VBで駆動して移動体10が移動される。そして、この移動体10の移動結果に基づいて、各振動子11〜13の出力特性が一致しているか否かの判別が行われる。ここで、各振動子11〜13の出力特性が一致していないと判別された場合、各振動子11〜13の出力特性が一致するように、対応する振動子11〜13の出力特性が補正される。
【0056】
上記出力特性の補正においては、各振動子11〜13の出力特性がほぼ一致するように、対応する振動子11〜13のパラメータα11〜α13またはγ11〜γ13の値(駆動電圧VA,VBの周波数または電圧値)が変更される。これにより、出力特性が一致した各振動子11〜13に対しては、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御のみで、各振動子11〜13の駆動力の大きさが所望の大きさとなるように制御することが可能になる。
【0057】
この出力特性の補正について図11および図12を参照しながら説明する。図11は図10に示す駆動力の発生状態における各振動子12,13に印加される駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度との関係を示す図である。図12は振動子12に印加される駆動電圧の電圧値の変更により各振動子12,13の出力特性を一致させる場合の駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度との関係を示す図である。
【0058】
例えば各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際には、まず、移動体10の目標方向をY方向として、各振動子12,13により移動体10をY方向へ直進移動させる制御が行われる。この制御においては、上述した通り、振動子11は、Bモードで駆動され、振動子12,13のそれぞれには、同じ周波数、同じ振幅、かつ同じ位相差を有する駆動電圧VA,VBが印加される。即ち、振動子12に対するパラメータα12,β12,γ12の値は、それぞれ、振動子13に対するパラメータα13,β13,γ13の値と同じである。
【0059】
各振動子12,13により移動体10が移動されると、制御部50は、各位置センサ22,23の出力値のそれぞれを用いて移動体10のY方向への移動速度VY1,VY2(所定時間当たりのY方向へ移動量)を算出する。移動速度VY1は、位置センサ22の出力値に基づいて算出された速度であり、移動速度VY2は、位置センサ23の出力値に基づいて算出された速度である。
【0060】
これら位置センサ21、22、23によって移動体10がY方向のみに駆動されていると判断された場合、図8(b)に示すように、振動子12と振動子13がそれぞれ発生する駆動力(ベクトルM12,M13)を合成した駆動力(合成ベクトルMs)は、移動体10をY方向へ移動させる駆動する駆動力となる。よって、制御部50は、位置センサ21、22,23の出力値のそれぞれから算出された移動方向がY方向と同じであれば、振動子12と振動子13のそれぞれの駆動力が同じであると判別する。即ち、制御部50は、各振動子12,13の出力特性が一致していると判別する。
【0061】
これに対し、位置センサ21、22,23の出力値のそれぞれから算出された移動方向がY方向に一致していなければ、振動子12の駆動力の大きさと振動子13の駆動力の大きさとは異なることになる。この場合、図10に示すように、振動子12と振動子13のそれぞれの駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)の方向は、移動体10の目標移動方向であるY方向と一致しない。よって、制御部50は、位置センサ21,22,23の出力値のそれぞれから算出された移動方向が同じでなければ、振動子12,13のそれぞれの駆動力が同じではなく、振動子12,13のそれぞれの出力特性が一致していないと判別する。
【0062】
また、演算により得られる移動方向に基づいて、各振動子12,13の駆動力の大きさの差を求めることができる。
【0063】
各振動子12,13の出力特性が一致していないと判別された場合、各振動子12,13のうち、一方の振動子の出力特性が他方の振動子の出力特性に一致するように、補正される。ここでは、対応する振動子のパラメータα12〜α13の値(周波数)を変更することによって、出力特性の補正が行われる。
【0064】
例えば図11に示すように、同じ周波数f0、同じ振幅および同じ位相差(A,B相間の位相差)を有する駆動電圧VA,VBが、各振動子12,13にそれぞれ印加されるとする。ここで、印加する駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度(出力特性)の関係が、振動子12,13のそれぞれについて、曲線Out12,13で表わされる。
【0065】
本例の場合、振動子12,13(振動体)の共振周波数が異なり、振動子12の共振周波数は、印加される駆動電圧VA,VBの周波数f0より十分に低い周波数であるとする。この場合、振動子12の出力による移動速度が位置振動子13の出力による値移動速度より小さくなる。即ち、振動子12による移動体10の駆動力が振動子13による移動体10の駆動力より小さくなる。
【0066】
そこで、制御部50は、上記移動速度の速度差ΔV(ベクトルの傾き)を零にするように即ち振動子12の駆動力の大きさを増すように、振動子12に印加する駆動電圧VA,VBの周波数を規定するパラメータα12の値を変更する。例えば図11に示すように、パラメータα12の値が、振動子12に印加する駆動電圧VA,VBの周波数を周波数f1(振動子12の共振周波数近傍の周波数)とする値に変更される。これにより、振動子12の出力特性が振動子13の出力特性にほぼ一致されるように補正されることになる。
【0067】
振動子12,13の出力特性が一致されると、振動子11の出力特性を振動子12,13の出力特性に一致させることが可能になる。この場合、例えば振動子12の駆動方向に対して直交する方向を移動体10の目標移動方向として、移動体10を振動子11および振動子13により駆動させればよい。ただし、振動子12は、Bモードで駆動される。
【0068】
これにより、振動子11の出力特性が振動子13の出力特性と一致するか否かの判別が行われ、この判別結果に応じて、振動子11に印加する駆動電圧VA,VBの周波数を規定するパラメータα11の値が変更される。
【0069】
さらに、振動子13の駆動方向に対して直交する方向を移動体10の目標移動方向として、移動体10を振動子11および振動子12により駆動することによって、3つの振動子11〜13の出力特性が一致しているかの検証を行うことができる。
【0070】
このようにして、各振動子11〜13の出力特性を一致させるための出力特性の補正は、駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα11〜α13)の変更により行われる。そして、移動体10を実際に移動させる際には、対応する振動子11〜13が、変更された周波数の駆動電圧VA,VBで駆動される。ただし、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの電圧値は、変更されずに、予め設定されている値に保持される。その結果、駆動電圧VA,VBの位相差の制御で、各振動子11〜13の駆動を安定して制御することができる。
【0071】
上記例においては、各振動子11〜13の出力特性を一致させるために、駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα11〜α13の値)を変えているが、これに代えて、駆動電圧VA,VBの電圧値(パラメータγ11〜γ13の値)を変えるようにしてもよい。
【0072】
この場合、図12に示すように、振動子12に印加される駆動電圧VA,VBの周波数を変えずに、その電圧値を変えることにより、振動子12の出力特性(曲線Out12)が補正される。具体的には、振動子12に印加される駆動電圧VA,VBの電圧値が高くなるように、パラメータγ12の値が変更される。これにより、電圧値が高くされた、周波数f0の駆動電圧VA,VBが印加された場合の振動子12の出力特性は曲線Out12’で表わされ、振動子13の出力特性(曲線Out13)に一致する。即ち、位置センサ21,22,23により求められた移動方向がY方向に一致するようにすることで、各振動子12,13の駆動力の大きさを同じにすることができる。
【0073】
また、A相、/A相、B相、/B相の各パルス幅を変えることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0074】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図13〜図16を参照しながら説明する。図13は本発明の第2の実施の形態において周波数f3および電圧値V3の駆動電圧VA,VBで振動子11〜13を駆動して移動体10をθ方向へ回転させる際に制御される各振動子11〜13の駆動電圧VA,VB間の位相差を示す図である。図14は各振動子11〜13にそれぞれ印加される駆動電圧VA,VB間の位相差と速度との関係を示す図である。図15は各振動子11〜13にそれぞれ印加される駆動電圧VA,VB間の周波数と速度との関係を示す図である。図16は振動子11,12に印加する周波数f3および電圧値V3の駆動電圧VA,VB間のとき、ある動作をさせて制御したときの位相差と振動子13に印加する周波数f4および電圧値V3の駆動電圧VA,VB間のとき、ある動作をさせて制御したときの位相差をそれぞれ示す図である。本実施の形態は、上記第1の実施の形態の構成と同じ構成を有し、本実施の形態の説明においては、同じ符号を用いる。
【0075】
上記第1の実施の形態においては、対応する振動子11〜13を駆動して移動体10をY方向などの所定方向へ直進移動させ、その移動結果に基づいて、各振動子11〜13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う場合を説明した。
【0076】
これに対し、本実施の形態は、各振動子11〜13の駆動力を制御するための駆動電圧VA,VBの位相差(β11〜β13)の制御量に基づいて、各振動子11〜13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う。そして、上記判別結果に応じて、各振動子11〜13の出力特性が一致するように、各振動子11〜13に対する駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα11〜α13)または電圧値(γ11〜γ13)が変更される。
【0077】
例えば移動体10をθ方向へ回転させる場合(図9に示す)、各振動子11〜13の駆動力が同じ大きさにする必要がある。ここで、各振動子11〜13には、それぞれ、同じ周波数f3および同じ電圧値V3を有する駆動電圧VA,VBが印加されるとする。また、各振動子11,12の共振周波数は、駆動電圧VA,VBの周波数f3の近傍の周波数に一致し、振動子13の共振周波数は、上記周波数f3と大きく異なる周波数であるとする。
【0078】
このような場合においては、図13に示すように、各振動子11〜13の駆動力を同じ大きさにするように、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差(パラメータβ11〜β13の値)が制御される。図13から分かるように、振動子13の駆動電圧VA,VB間の位相差に関しては、その制御量がπ/2(rad)を超える場合がある。
【0079】
ここで、移動体10のθ方向への目標回転速度を例えば50mm/secとすると、図14に示すように、各振動子11,12に対する周波数f3の駆動電圧VA,VB間の位相差は、それぞれ、約28π/180(rad)に制御される。これに対し、振動子13に対する周波数f3の駆動電圧VA,VB間の位相差は、約π/2(rad)に制御される。これは、振動子11,12と振動子13の共振周波数が異なり、振動子11,12に対する振動子13の出力特性が異なるからである。
【0080】
駆動電圧VA,VB間の位相差がπ/2(rad)の場合、振動子が発生する駆動力の大きさが最大になる(移動体10の回転速度が最大になる)が、これを超える位相差の場合、逆に駆動力が小さくなる(回転速度が遅くなる)。よって、振動子13の場合、駆動電圧VA,VB間の位相差がπ/2(rad)近傍の値で制御されるので、当該振動子13の駆動力を他の振動子11,12の駆動力の大きさと同じにする状態を安定的に保持するような制御することは難しい。従って、移動体10の回転速度を所望の速度に保持するための制御を安定して行うようにするためには、駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量を、−π/2からπ/2(rad)までの範囲内で可変することが好ましい。
【0081】
各振動子11〜13のそれぞれに対する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量間に大きな差がある場合、これは、各振動子11〜13の出力特性が大きく異なることを意味する。
【0082】
図14に示す位相差の場合、振動子11,12のそれぞれに対する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量がほぼ同じであるので、各振動子11,12の出力特性は一致すると判別される。振動子13に関しては、その駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量が振動子11,12の駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量と大きく異なるので、振動子13の出力特性は、振動子11,12の出力特性と一致していないと判別される。
【0083】
この場合、例えば図15に示すように、振動子13の出力特性が振動子11,12の出力特性に一致するように、振動子13に対する駆動電圧VA,VBの電圧値V3を変えずに、周波数(パラメータα13の値)が周波数f3から周波数f4に変えられる。これにより、図16に示すように、振動子13に対する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量は、−π/2からπ/2(rad)の範囲内に収まり、かつ振動子11,12の駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量と大きく異なることがない。
【0084】
このようにして周波数の変更により振動子11〜13の出力特性を一致され、振動子11〜13の駆動制御を、−π/2からπ/2(rad)の範囲内で、かつほぼ同じである駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量で、安定して行うことが可能になる。
【0085】
また、上記第1の実施の形態と同様に、駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα11〜α13の値)に代えて、駆動電圧VA,VBの電圧値(パラメータγ11〜γ13の値)、またはA相、/A相、B相、/B相の各パルス幅を変えるようにしてもよい。
【0086】
また、制御時の制御ゲインを変えると、偏差に対する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量が変化し、図14に示すような駆動電圧VA,VB間の位相差と速度の関係を示す直線の傾きを変えることができる。即ち、制御ゲインを変えることによって、振動子11〜13の出力特性を一致するように補正することができる。
【0087】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図17および図18を参照しながら説明する。図17は本発明の第3の実施の形態に係る多自由度駆動装置において各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際の各振動子11〜13の駆動状態を示す図である。図18は振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの位相差の制御量を示す図である。本実施の形態は、上記第1の実施の形態の構成と同じ構成を有し、本実施の形態の説明においては、同じ符号を用いる。
【0088】
上記第1の実施の形態においては、各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際に、振動子11がBモード(上下振動)で駆動された状態で、各振動子12,13が駆動される。
【0089】
これに対し、本実施の形態においては、図17に示すように、各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際には、振動子11の駆動が停止された状態で各振動子12,13が駆動される。ここで、各振動子12,13は、それぞれの駆動力を合成した駆動力が振動子11の突起部19と移動体10の間に生じる摩擦力と釣り合い、移動体10が静止された状態を保持するように、駆動される。具体的には、振動子12の駆動力(ベクトルM12)と振動子13の駆動力(ベクトルM13)を合成した駆動力(ベクトルMs)が、移動体10に作用する駆動力となる。この駆動力(ベクトルMs)が振動子11の突起部19と移動体10の間に生じる摩擦力(ベクトルFs)と釣り合えば、移動体10の静止状態が保持される。即ち、移動体10の静止状態を保持するためには、各振動子12,13の駆動力の大きさが同じになるように、それぞれの振動子12,13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。そして、各振動子12,13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量に基づいて、各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別が行われる。
【0090】
例えば図18に示すように、各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御されたとする。各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBは、同じ周波数および同じ電圧値を有する駆動電圧である。振動子12の駆動電圧VA,VB間の位相差はπ/2(rad)近傍の値に制御され、振動子13の駆動電圧VA,VB間の位相差は−35π/180(rad)近傍の値に制御される。これは、例えば振動子12の共振周波数と振動子13の共振周波数が大きく異なることにより、同じ周波数および同じ電圧値を有する駆動電圧VA,VBで各振動子12,13を駆動した際の各振動子12,13の出力特性が異なることを意味する。
【0091】
よって、振動子13の出力特性が振動子12の出力特性に一致するように、振動子13に印加する駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα13の値)または電圧値(γ13の値)が変更される。
【0092】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について図19を参照しながら説明する。図19は本発明の第4の実施の形態に係る多自由度駆動装置において各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際の各振動子11〜13の駆動状態を示す図である。本実施の形態は、上記第1の実施の形態の構成と同じ構成を有し、本実施の形態の説明においては、同じ符号を用いる。
【0093】
本実施の形態の多自由度駆動装置は、撮像装置に組み込まれ、CCD(Charged Coupled Device)などの撮像素子をX,Y,θの各方向へ移動させるための装置として用いられる。この場合、移動体10に撮像素子が搭載されることになる。
【0094】
このような用途の場合、移動体10には鉛直方向(−Y方向)に重力が作用することがある。よって、移動体10を静止した状態に保持するためには、振動子11をBモード(上下振動のみのモード)で駆動し、各振動子12,13を、重力に抗する+Y方向への駆動力が移動体10に常時作用するように、駆動する必要がある。即ち、振動子12の駆動力(ベクトルM12)と振動子13の駆動力(ベクトルM13)を合成した駆動力(ベクトルMs)が、移動体10に作用する+Y方向への駆動力となる。この駆動力(ベクトルMs)が重力と釣り合えば、移動体10は、静止した状態に保持される。
【0095】
この場合、各振動子12,13の駆動力の大きさが同じになるように、それぞれの振動子12,13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。この制御において、各振動子12,13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量間に大きな差があると、各振動子12,13の出力特性が一致していないと判別される。ここで、各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBは、同じ周波数および同じ電圧値を有する駆動電圧である。
【0096】
例えば振動子12の駆動電圧VA,VB間の位相差はπ/2(rad)近傍の値に制御され、振動子13の駆動電圧VA,VB間の位相差は−35π/180(rad)近傍の値に制御されたとする。これは、例えば振動子12の共振周波数と振動子13の共振周波数が大きく異なることにより、同じ周波数および同じ電圧値を有する駆動電圧VA,VBで各振動子12,13を駆動した際の各振動子12,13の出力特性が異なることを意味する。
【0097】
よって、振動子13の出力特性が振動子12の出力特性に一致するように、振動子13に印加する駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα13の値)または電圧値(γ13の値)が変更される。これにより、各振動子12,13を駆動した際の駆動電圧VA,VBの位相差の制御量が略同じになり、安定した制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
10 移動体
11,12,13 振動子
21,22,23 位置センサ
31,32,33 スケール部
50 制御部
51 駆動部
53,54,55 駆動パル発生器
56,57,58 スイッチング回路
59 電源回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の振動子により移動体を多方向へ移動させる多自由度駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多自由度駆動装置として、リニアアクチュエータを用いてX,Y,θの3方向への駆動を実現する表面波アクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この表面波アクチュエータについて図20を参照しながら説明する。図20は従来の表面波アクチュエータを部分的に破断して示す斜視図である。
【0004】
表面波アクチュエータは、図20に示すように、上ベース板2および下ベース板3に取り付けられ、互いに対向するように配置されている3組の表面波発生機構6a,6b,6cを備える。各表面波発生機構6a,6b,6cには駆動電圧が印加され、これにより、表面波が発生される。各表面波発生機構6a,6b,6cにそれぞれ発生された表面波は、動体板1を移動させるための駆動力として動体板1に作用する。
【0005】
ここで、各表面波発生機構6a,6b,6cが発生する表面波による動体板1に与える力成分をそれぞれベクトルM1a,M1b,M1cで表すと、各ベクトルM1a,M1b,M1cを合成したベクトルが示す方向に動体板1が移動されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平07−034660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記表面波アクチュエータにおいては、表面波発生機構6a,6b,6c間で出力特性の差があると、表面波発生機構6a,6b,6cが所定の駆動力を発生するように制御することができない場合がある。
【0008】
そこで、予め出力特性が把握されている複数の表面波発生機構の中から、出力特性がほぼ一致する所定数の表面波発生機構を選択し、選択された所定数の表面波発生機構を組み込む方法が考えられる。しかしながら、出力特性がほぼ一致する所定数の表面波発生機構を装置内に組み込むとしても、それらの取り付け状態例えば各表面波発生機構と動体板1との接触力などが異なる場合がある。このような場合、表面波発生機構のそれぞれの出力特性が揃わず、各表面波発生機構の駆動を安定して制御することができない場合がある。
【0009】
本発明の目的は、装置に組み込まれた状態で各振動子の出力特性を揃えることができる多自由度駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の多自由度駆動装置は、複数のパラメータに設定された値に基づいて生成された駆動電圧により駆動される複数の振動子と、前記複数の振動子により多方向へ移動可能なように前記振動子のそれぞれと接触される移動体と、を備え、前記複数のパラメータは、対応する振動子の駆動に応じて可変される値が設定される第1のパラメータと該第1のパラメータと異なる第2のパラメータとを含み、前記振動子が駆動された際の前記振動子のそれぞれに対する前記第1のパラメータの可変された値に基づいて、前記振動子のそれぞれの出力特性が一致しているか否かを判別する判別手段と、前記判別手段により前記振動子のそれぞれの出力特性が一致していないと判別された場合、前記駆動された振動子のそれぞれの出力特性が一致するように、少なくとも1つの振動子に対して前記第2のパラメータに設定された値を変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置に組み込まれた状態で各振動子の出力特性を揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多自由度駆動装置を示す平面図である。
【図2】図1の多自由度駆動装置の側面図である。
【図3】(a)は振動子11の構成を示す縦断面図であり、(b)は図3(a)の振動子11の圧電素子に形成されている電極領域を示す平面図である。
【図4】図3の振動子11に発生する振動モード(AモードおよびBモード)を示す図である。
【図5】図1の多自由度駆動装置における振動子11〜13の駆動を制御するための制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】図5のスイッチング回路の構成を示すブロック図である。
【図7】移動体10をX方向へ直進移動させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。
【図8】移動体10をY方向へ直進移動させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。
【図9】移動体10をθ方向へ回転させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。
【図10】移動体10をX方向へ直進移動させる際の各振動子12,13の駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)と、振動子11の駆動力(ベクトルM1)とが一致しない場合を示す図である。
【図11】図10に示す駆動力の発生状態における各振動子12,13に印加される駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度との関係を示す図である。
【図12】振動子12に印加される駆動電圧の電圧値の変更により各振動子12,13の出力特性を一致させる場合の駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度との関係を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態において周波数f3および電圧値V3の駆動電圧VA,VBで振動子11〜13を駆動して移動体10をθ方向へ回転させる際に制御される各振動子11〜13の駆動電圧VA,VB間の位相差を示す図である。
【図14】各振動子11〜13にそれぞれ印加される駆動電圧VA,VB間の位相差と速度との関係を示す図である。
【図15】各振動子11〜13にそれぞれ印加される駆動電圧VA,VB間の周波数と速度との関係を示す図である。
【図16】振動子11,12に印加する周波数f3および電圧値V3の駆動電圧VA,VB間の位相差と振動子13に印加する周波数f4および電圧値V3の駆動電圧VA,VB間の位相差をそれぞれ示す図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る多自由度駆動装置において各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際の各振動子11〜13の駆動状態を示す図である。
【図18】振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの位相差の制御量を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態に係る多自由度駆動装置において各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際の各振動子11〜13の駆動状態を示す図である。
【図20】従来の表面波アクチュエータを部分的に破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る多自由度駆動装置を示す平面図である。図2は図1の多自由度駆動装置の側面図である。
【0015】
多自由度駆動装置は、図1および図2に示すように、ベース板9を備える。ベース板9には、互いに共働して移動体10を、予め決められている平面上で、X,Y,θの3方向へ移動させるための3つの振動子11,12,13が取り付けられている。ここで、X方向とY方向は、上記平面上において互いに直交する方向であり、θ方向は、上記平面と直交する軸周りの回転方向である。各振動子11,12,13は、互いにベース板9上の予め決められているO点を中心とする円周方向に沿って2π/3(rad)の角度間隔で配置されている。
【0016】
また、ベース板9には、移動体10のX方向への移動量を検出するための位置センサ21と、移動体10のY方向への移動量を検出するための2つの位置センサ22,23が取り付けられている。位置センサ21は、O点から距離d離された位置に配置されている。各位置センサ22,23は、それぞれ、互いに対向するように、O点から距離d離れた位置に配置されている。
【0017】
移動体10には、図2に示すように、3つのスケール部31,32,33が取り付けられている。各スケール部31,32,33は、対応する位置センサ21,22,23と対向するように配置されている。位置センサ21は、スケール部31のX方向への移動量(移動体10のX方向への移動量)を検出し、検出した移動量を示す信号を出力する。また、各位置センサ22,23は、対応するスケール部32,33のY方向への移動量(移動体10のY方向への移動量)を検出し、検出した移動量を示す信号を出力する。
【0018】
上記振動子11,12,13について図3および図4を参照しながら詳細に説明する。図3(a)は振動子11の構成を示す縦断面図であり、図3(b)は図3(a)の振動子11の圧電素子に形成されている電極領域を示す平面図である。図4は図3の振動子11に発生する振動モード(AモードおよびBモード)を示す図である。ここでは、振動子11,12,13は、同様の構成を有するものであるので、振動子11の構成について説明する。
【0019】
振動子11は、図3(a)に示すように、ステンレスなどの平板形状の弾性部材からなる振動体18を有する。振動体18の一方の面には、突起部19が設けられ、この突起部19と移動体10は、ばね部材などの加圧部材(図示せず)により加圧接触される。振動体18の他方の面には、圧電素子(電気機械エネルギ変換素子)17が接着されている。
【0020】
圧電素子17には、図3(b)に示すように、長手方向(X方向)に沿って配列されている2つの電極領域17a,17bが形成されている。各電極領域17a,17bにおける分極方向は、同一方向(+)とされている。各電極領域17a,17bのうち,電極領域17aには駆動電圧VAが印加され、電極領域17bには駆動電圧VBが印加される。
【0021】
ここで、駆動電圧VA,VBが、Aモードの共振周波数近傍の周波数を有し、かつπ(rad)位相差を有する交流電圧である。駆動電圧VA,VBが対応する電極領域17a,17bに印加されると、ある瞬間には、圧電素子17の電極領域17aが縮むとともに、電極領域17bが伸びる。また、他の瞬間には逆の関係となる。その結果、振動子11(振動体18)には、図4(a)に示すAモードの振動が発生することになる。
【0022】
また、駆動電圧VA,VBが、Bモードの共振周波数近傍の周波数を有し、かつ同位相を有する場合、圧電素子17の全体(2つの電極領域17a,17b)がある瞬間には伸び、また他の瞬間には縮むことになる。その結果、振動子11(振動体18)には、図4(b)に示すBモードの振動が発生することになる。
【0023】
上記Aモードの振動とBモードの振動は合成され、合成された振動により、移動体10を駆動する駆動力が発生する。振動子11の場合、当該振動子11は、移動体10をX方向へ移動する駆動力を発生する。また、各電極領域17a,17bへ入力する駆動電圧VA,VBの位相差を変えることにより、Aモードの振動とBモードの振動の発生比を変更することができる。この各モードの振動の発生比を制御することによって、振動子11が移動体10を駆動する駆動力(移動体10のX方向への移動速度)を制御することが可能である。また、各振動子12,13も、同様に、移動体10を駆動する駆動力を発生する。
【0024】
次に、振動子11〜13の駆動制御を行うための駆動制御系について図5および図6を参照しながら説明する。図5は図1の多自由度駆動装置における振動子11〜13の駆動を制御するための制御系の構成を示すブロック図である。図6は図5のスイッチング回路の構成を示すブロック図である。
【0025】
各振動子11〜13の駆動を制御するための制御系は、図5に示すように、CPU、ROM、RAM(図示せず)などから構成される制御部50を備える。制御部50は、移動体10(移動体10に設けられている基準位置)を現在位置から目標位置へ移動させるように制御する。ここで、上記目標位置は、移動体10の位置または移動体10の移動に連動して移動される物体の位置(X−Y座標上での位置)を示し、例えば操作部(図示せず)などから入力される。そして、制御部50は、移動体10を上記目標位置へ移動させるための制御信号S11〜S13を生成する。各制御信号S11〜S13は、それぞれ、対応する振動子11〜13の駆動を制御する制御信号であり、駆動部51の対応する駆動パルス発生器53〜55に出力される。各制御信号S11〜S13には、パラメータα11〜α13,β11〜β13が含まれる。各パラメータα11〜α13の値は、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VBの周波数を規定する値である。また、各パラメータβ11〜β13の値は、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差(A,B相間の位相差)を規定する値である。
【0026】
また、制御部50は、駆動部59の電源回路59が発生する3つの直流電圧Vc11〜Vc13の電圧値をそれぞれ制御するための3つの制御信号S14〜S15を生成し、電源回路59に出力する。各制信号S14〜S15には、それぞれ対応するパラメータγ11〜γ13が含まれる。各パラメータγ11〜γ13の値は、電源回路59が発生する3つの直流電圧Vc11〜Vc13の電圧値を規定する値である。
【0027】
制御部50は、各パラメータα11〜α13,β11〜β13の値を可変することにより、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VBの周波数、駆動電圧VA,VB間の位相差(A,B相間の位相差)を制御する。また、制御部50は、パラメータγ11〜γ13の値を可変することにより、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VBの電圧値を制御する。通常時は、各振動子11〜13に対してそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの周波数および電圧値がそれぞれ対応する値に保持された状態で、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。そして、駆動電圧VA,VB間の位相差の制御により、各振動子11〜13の駆動力が制御される。
【0028】
駆動部51は、電源回路59、発振器52、3つの駆動パルス発生器53〜55および3つのスイッチング回路56〜58を有する。電源回路59は、入力された電源(図示せず)から、上記制御信号S14〜S15に含まれる上記パラメータγ11〜γ13のそれぞれの値が規定する電圧値を有する直流電圧Vc11〜Vc13をそれぞれ発生する。各直流電圧Vc11〜Vc13は、スイッチング回路56〜58に供給される。
【0029】
発振器52は、基準クロックを発生する。駆動パルス発生器53は、制御信号S11に基づいてA相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスを発生し、また各パルスの発生を停止する。ここで、A相パルスと/A相パルスは、位相差がπ(rad)で、パルス幅が等しいパルスである。同様に、B相パルスと/B相パルスは、位相差がπ(rad)で、パルス幅が等しいパルスである。また、A相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスは、発振器52の基準クロックを基準にして、パラメータα11の値およびパラメータβ11の値に基づいて発生される。
【0030】
駆動パルス発生器54,55は、駆動パルス発生器53と同様に、制御信号S12,S13に基づいて、A相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスの発生およびその停止を行う。駆動パルス発生器54,55が発生するA相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスは、発振器52の基準クロックを基準にして、パラメータα12,α13の値およびパラメータβ12,β13の値に基づいて発生される。
【0031】
各駆動パルス発生器53〜55により発生された、A相パルスおよび/A相パルス、B相パルスおよび/B相パルスの各パルスは、それぞれ対応するスイッチング回路56〜58に入力される。
【0032】
スイッチング回路56は、図6に示すように、スイッチング素子である複数のFET151〜158を有する。各FET151〜158には、それぞれ、対応するA相パルス、/A相パルス、B相パルス、/B相パルスが入力される。例えばA相パルスがH(High)になると、FET151,154がオンし、A相から/A相へ向けて電流が流れる。逆に、/A相パルスがHになると、FET153,152がオンし、/A相からA相へ向けて電流が流れる。このように、A相に関しては、A相パルスおよび/A相パルスにより、FET151〜154のオン動作が制御され、直流電圧Vc11が振動子11に対応する周波数の駆動電圧VAに変換されて印加される。上記直流電圧Vc11の電圧値は、上記パラメータγ11の値により規定された電圧値である。
【0033】
B相に関しても、同様に、B相パルスおよび/B相パルスにより、FET155〜158のオン動作が制御され、直流電圧Vc11が、振動子11に対応する周波数および駆動電圧VAに対して対応する位相差を有する駆動電圧VBに変換されて印加される。
【0034】
このようにして、振動子11には、上記各パラメータα11,β11,γ11の値によりそれぞれ規定された周波数、位相差、電圧値を有する駆動電圧VA,VBが印加されることになる。
【0035】
また、振動子11とのインピーダンスを整合させるためのインピーダンス素子41が振動子11とFET151,152の間に挿入されている。また、インピーダンス素子42が振動子11とFET155,156の間に挿入されている。このインピーダンス素子41,42は、低電圧でかつ高効率で振動子11を駆動するためのものである。
【0036】
同様に、スイッチング回路57は、A相パルス、/A相パルス、B相パルス、/B相パルスに基づいて、上記パラメータα12,β12,γ12の値に応じた周波数、位相差、電圧値を有する駆動電圧VA,VBを、振動子12に印加する。また、スイッチング回路58は、A相パルス、/A相パルス、B相パルス、/B相パルスに基づいて、振動子13に対して、上記パラメータα13,β13,γ13の値に応じた周波数、位相差、電圧値を有する駆動電圧VA,VBを印加する。スイッチング回路57,58は、上述したスイッチング回路56と同様の構成を有するので、その説明は省略する。
【0037】
このように、駆動部51は、各振動子11〜13に対するパラメータα11〜13,β11〜13,γ11〜13の値に基づいて各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VBを生成する。
【0038】
次に、制御部50により各振動子11〜13を駆動するための制御について図7〜図10を参照しながら説明する。図7は移動体10をX方向へ直進移動させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。図8は移動体10をY方向へ直進移動させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。図9は移動体10をθ方向へ回転させる場合の各振動子11〜13の駆動力を示す図である。図10は移動体10をY方向へ直進移動させる際の各振動子12,13の駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)と、振動子11の駆動力(ベクトルM1)とが一致しない場合を示す図である。
【0039】
移動体10を現在位置から目標位置へ移動させる際、制御部50は、移動体10の基準部位を現在位置から目標位置へ到達させるための移動経路を決定する。この移動経路は、X方向への直進移動による経路、Y方向への直進移動による経路、θ方向への回転による経路をそれぞれ個別に組み合わせたものからなり、各経路に対しては、移動体10の移動量(または移動速度)が設定されている。そして、制御部50は、上記決定された移動経路を成す各経路に沿って移動体10を移動させるための制御信号S11〜S13を生成し、駆動部51に出力する。また、制御部50は、電源回路59が発生する直流電圧Vc11〜Vc13の電圧値を対応する電圧値にするための制御信号S14〜S16を電源回路59に出力する。
【0040】
これにより、対応する振動子11〜13には、各パラメータα11〜α13,β11〜β13,γ11〜γ13が規定する周波数、位相差および電圧値を有する駆動電圧VA,VBが印加され、対応する振動子11〜13が駆動される。そして、移動体10が上記経路に沿って移動される。
【0041】
移動体10の移動開始に伴い、制御部50は、各位置センサ21〜23の出力値に基づいて移動体10の移動方向および移動量(または移動速度)を検出する。移動体10の移動方向および移動量(または移動速度)の検出は、後述する(1)〜(3)の各式を用いて行われる。そして、制御部50は、検出された移動体10の移動方向および移動量(移動速度)と対応する経路の移動方向および移動量(移動速度)との偏差に基づいて、対応する制御信号S11〜13のパラメータβ11〜13の値を可変制御する。即ち、対応する振動子11〜13に印加される駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。これにより、移動体10の実際の移動方向および移動量(移動速度)が対応する経路の移動方向および移動量(移動速度)になるように、対応する振動子11〜13の駆動力(移動体10を駆動する駆動力)の大きさが制御される。
【0042】
ここで、制御部50により各位置センサ21〜23からの出力値に基づいて移動体10の移動方向およびその移動方向へ移動量の算出方法について簡単に説明する。
【0043】
位置センサ21の出力値をD21、位置センサ22,23のそれぞれの出力値をD22,D23とし、移動体10のY方向への移動量をDyとすると、移動量Dyは、以下の(1)式により求められる。
【0044】
Dy=(D22+D23)/2 …(1)
また、移動体10のθ方向へ回転角をθrとすると、回転角θrは、以下の(2)式により求められる。
【0045】
θr=arccos{(D22−D23)/(2d)} …(2)
また、移動体10のX方向への移動量をDxとすると、移動量Dxは、以下の(3)式により求められる。
【0046】
Dx=D21+d×sinθr …(3)
これらの(1)〜(3)式を用いて、移動体10の移動方向(X,Y,θの方向)、その移動方向への移動量および移動速度を求めることができる。
【0047】
移動体10をX方向へ直進移動させる場合、各振動子11〜13がそれぞれ対応する制御信号S11〜S13に基づいて駆動される。ここでは、ベース板9が水平面上に置かれ、移動体10には、重力が鉛直方向に作用するとする。この場合、図7(a)に示すように、各振動子11〜13には、駆動力(ベクトルM11〜M13)が発生し、それぞれの駆動力により、移動体10が移動される。このとき、図7(b)に示すように、振動子12の駆動力(ベクトルM12)と振動子13の駆動力(ベクトルM13)は、合成されて駆動力(ベクトルMs)となる。この合成した駆動力(ベクトルMs)は、振動子11の駆動力(ベクトルM1)と一致する必要がある。
【0048】
そこで、上記駆動力(ベクトルMs)は、振動子11の駆動力(ベクトルM1)と一致するように、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差(パラメータβ11〜13)が制御される。この制御においては、各位置センサ21〜23の出力値に基づいて移動体10の移動方向および移動量が検出される。そして、検出された移動体10の移動方向および移動量に基づいて、各振動子11〜13にそれぞれ印加する
駆動電圧VA,VB間の位相差(パラメータβ11〜13)が制御される。各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの周波数、駆動電圧は、それぞれ、予め設定された値(パラメータα11〜α13,γ11〜13の値)に保持される。
【0049】
移動体10をY方向へ直進移動させる場合、各振動子11〜13がそれぞれ対応する制御信号S11〜S13に基づいて駆動される。ここで、振動子11は移動体10をX方向へ移動させるための振動子であるので、当該振動子11は、Bモード(図4(b)に示すモード)で駆動される。このBモードの場合、振動子11には、位相差がほぼない駆動電圧VA,VBが印加され、移動体10をX,Y方向のいずれの方向にも移動させる振動が発生せず、上下振動のみが発生する。ただし、この上下振動により、振動子11の振動体18の突起部19と移動体10との接触面の間の摩擦力は、ほぼ零となり、移動体10が振動子11から受ける負荷は無負荷となる。
【0050】
各振動子12,13には、それぞれ、対応する駆動電圧VA,VBが印加され、図8(a)に示すように、各振動子12,13は、移動体10を駆動する駆動力(ベクトルM12,M13)を発生する。ここで、図8(b)に示すように、振動子12の駆動力(ベクトルM12)と振動子13の駆動力(ベクトルM13)は、合成されて移動体10を駆動する駆動力(ベクトルMs)となる。そして、検出された移動体10の移動方向および移動量に基づいて、上記駆動力(ベクトルMs)がY方向の駆動力となるように、各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。ここで、各振動子12〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの周波数、駆動電圧は、それぞれ、予め設定された値に保持される。
【0051】
移動体10をθ方向へ回転させる場合、各振動子11〜13がそれぞれ対応する制御信号S11〜S13に基づいて駆動される。この場合、図9に示すように、各振動子11〜13には、駆動力(ベクトルM11〜M13)が発生し、それぞれの駆動力により、移動体10がθ方向へ回転される。そして、検出された移動体10の移動方向および移動量に基づいて、各振動子11〜13の駆動力(ベクトルM11〜13)の大きさが同じになるように、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。ここで、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの周波数、駆動電圧は、それぞれ、予め設定された値に保持される。
【0052】
このように、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差(パラメータβ11〜13)の制御により、各振動子11〜13が駆動され、移動体10は、目標方向へ目標移動量分移動させることができる。
【0053】
しかしながら、例えば図10に示すように、移動体10をY方向へ直進移動させる際に、各振動子12,13の駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)がY方向への駆動力とならない場合がある。例えば各振動子12,13の共振周波数に大きな差異があり、それぞれの出力特性が大きく異なる場合、各振動子12,13の駆動力の大きさが異なり、上記合成した駆動力(ベクトルMs)の方向がY方向に一致しないことになる。
【0054】
このような場合、各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差を制御(可変)することにより、各振動子12,13が発生する駆動力の大きさが同じにするための制御が試みられる。しかし、共振周波数がずれているなどの要因によりモータの個体差が大きくずれていることがある。この場合、駆動電圧VA,VB間の位相差の制御のみで、各振動子12,13の駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)をY方向への駆動力となるように、各振動子12,13が発生する駆動力の大きさを所望の大きさに制御することができない。
【0055】
そこで、本実施の形態においては、上述したような事態を未然に回避するために、まず、対応する振動子11〜13を対応する駆動電圧VA,VBで駆動して移動体10が移動される。そして、この移動体10の移動結果に基づいて、各振動子11〜13の出力特性が一致しているか否かの判別が行われる。ここで、各振動子11〜13の出力特性が一致していないと判別された場合、各振動子11〜13の出力特性が一致するように、対応する振動子11〜13の出力特性が補正される。
【0056】
上記出力特性の補正においては、各振動子11〜13の出力特性がほぼ一致するように、対応する振動子11〜13のパラメータα11〜α13またはγ11〜γ13の値(駆動電圧VA,VBの周波数または電圧値)が変更される。これにより、出力特性が一致した各振動子11〜13に対しては、各振動子11〜13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御のみで、各振動子11〜13の駆動力の大きさが所望の大きさとなるように制御することが可能になる。
【0057】
この出力特性の補正について図11および図12を参照しながら説明する。図11は図10に示す駆動力の発生状態における各振動子12,13に印加される駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度との関係を示す図である。図12は振動子12に印加される駆動電圧の電圧値の変更により各振動子12,13の出力特性を一致させる場合の駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度との関係を示す図である。
【0058】
例えば各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際には、まず、移動体10の目標方向をY方向として、各振動子12,13により移動体10をY方向へ直進移動させる制御が行われる。この制御においては、上述した通り、振動子11は、Bモードで駆動され、振動子12,13のそれぞれには、同じ周波数、同じ振幅、かつ同じ位相差を有する駆動電圧VA,VBが印加される。即ち、振動子12に対するパラメータα12,β12,γ12の値は、それぞれ、振動子13に対するパラメータα13,β13,γ13の値と同じである。
【0059】
各振動子12,13により移動体10が移動されると、制御部50は、各位置センサ22,23の出力値のそれぞれを用いて移動体10のY方向への移動速度VY1,VY2(所定時間当たりのY方向へ移動量)を算出する。移動速度VY1は、位置センサ22の出力値に基づいて算出された速度であり、移動速度VY2は、位置センサ23の出力値に基づいて算出された速度である。
【0060】
これら位置センサ21、22、23によって移動体10がY方向のみに駆動されていると判断された場合、図8(b)に示すように、振動子12と振動子13がそれぞれ発生する駆動力(ベクトルM12,M13)を合成した駆動力(合成ベクトルMs)は、移動体10をY方向へ移動させる駆動する駆動力となる。よって、制御部50は、位置センサ21、22,23の出力値のそれぞれから算出された移動方向がY方向と同じであれば、振動子12と振動子13のそれぞれの駆動力が同じであると判別する。即ち、制御部50は、各振動子12,13の出力特性が一致していると判別する。
【0061】
これに対し、位置センサ21、22,23の出力値のそれぞれから算出された移動方向がY方向に一致していなければ、振動子12の駆動力の大きさと振動子13の駆動力の大きさとは異なることになる。この場合、図10に示すように、振動子12と振動子13のそれぞれの駆動力を合成した駆動力(ベクトルMs)の方向は、移動体10の目標移動方向であるY方向と一致しない。よって、制御部50は、位置センサ21,22,23の出力値のそれぞれから算出された移動方向が同じでなければ、振動子12,13のそれぞれの駆動力が同じではなく、振動子12,13のそれぞれの出力特性が一致していないと判別する。
【0062】
また、演算により得られる移動方向に基づいて、各振動子12,13の駆動力の大きさの差を求めることができる。
【0063】
各振動子12,13の出力特性が一致していないと判別された場合、各振動子12,13のうち、一方の振動子の出力特性が他方の振動子の出力特性に一致するように、補正される。ここでは、対応する振動子のパラメータα12〜α13の値(周波数)を変更することによって、出力特性の補正が行われる。
【0064】
例えば図11に示すように、同じ周波数f0、同じ振幅および同じ位相差(A,B相間の位相差)を有する駆動電圧VA,VBが、各振動子12,13にそれぞれ印加されるとする。ここで、印加する駆動電圧の周波数と移動体10の移動速度(出力特性)の関係が、振動子12,13のそれぞれについて、曲線Out12,13で表わされる。
【0065】
本例の場合、振動子12,13(振動体)の共振周波数が異なり、振動子12の共振周波数は、印加される駆動電圧VA,VBの周波数f0より十分に低い周波数であるとする。この場合、振動子12の出力による移動速度が位置振動子13の出力による値移動速度より小さくなる。即ち、振動子12による移動体10の駆動力が振動子13による移動体10の駆動力より小さくなる。
【0066】
そこで、制御部50は、上記移動速度の速度差ΔV(ベクトルの傾き)を零にするように即ち振動子12の駆動力の大きさを増すように、振動子12に印加する駆動電圧VA,VBの周波数を規定するパラメータα12の値を変更する。例えば図11に示すように、パラメータα12の値が、振動子12に印加する駆動電圧VA,VBの周波数を周波数f1(振動子12の共振周波数近傍の周波数)とする値に変更される。これにより、振動子12の出力特性が振動子13の出力特性にほぼ一致されるように補正されることになる。
【0067】
振動子12,13の出力特性が一致されると、振動子11の出力特性を振動子12,13の出力特性に一致させることが可能になる。この場合、例えば振動子12の駆動方向に対して直交する方向を移動体10の目標移動方向として、移動体10を振動子11および振動子13により駆動させればよい。ただし、振動子12は、Bモードで駆動される。
【0068】
これにより、振動子11の出力特性が振動子13の出力特性と一致するか否かの判別が行われ、この判別結果に応じて、振動子11に印加する駆動電圧VA,VBの周波数を規定するパラメータα11の値が変更される。
【0069】
さらに、振動子13の駆動方向に対して直交する方向を移動体10の目標移動方向として、移動体10を振動子11および振動子12により駆動することによって、3つの振動子11〜13の出力特性が一致しているかの検証を行うことができる。
【0070】
このようにして、各振動子11〜13の出力特性を一致させるための出力特性の補正は、駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα11〜α13)の変更により行われる。そして、移動体10を実際に移動させる際には、対応する振動子11〜13が、変更された周波数の駆動電圧VA,VBで駆動される。ただし、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの電圧値は、変更されずに、予め設定されている値に保持される。その結果、駆動電圧VA,VBの位相差の制御で、各振動子11〜13の駆動を安定して制御することができる。
【0071】
上記例においては、各振動子11〜13の出力特性を一致させるために、駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα11〜α13の値)を変えているが、これに代えて、駆動電圧VA,VBの電圧値(パラメータγ11〜γ13の値)を変えるようにしてもよい。
【0072】
この場合、図12に示すように、振動子12に印加される駆動電圧VA,VBの周波数を変えずに、その電圧値を変えることにより、振動子12の出力特性(曲線Out12)が補正される。具体的には、振動子12に印加される駆動電圧VA,VBの電圧値が高くなるように、パラメータγ12の値が変更される。これにより、電圧値が高くされた、周波数f0の駆動電圧VA,VBが印加された場合の振動子12の出力特性は曲線Out12’で表わされ、振動子13の出力特性(曲線Out13)に一致する。即ち、位置センサ21,22,23により求められた移動方向がY方向に一致するようにすることで、各振動子12,13の駆動力の大きさを同じにすることができる。
【0073】
また、A相、/A相、B相、/B相の各パルス幅を変えることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0074】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図13〜図16を参照しながら説明する。図13は本発明の第2の実施の形態において周波数f3および電圧値V3の駆動電圧VA,VBで振動子11〜13を駆動して移動体10をθ方向へ回転させる際に制御される各振動子11〜13の駆動電圧VA,VB間の位相差を示す図である。図14は各振動子11〜13にそれぞれ印加される駆動電圧VA,VB間の位相差と速度との関係を示す図である。図15は各振動子11〜13にそれぞれ印加される駆動電圧VA,VB間の周波数と速度との関係を示す図である。図16は振動子11,12に印加する周波数f3および電圧値V3の駆動電圧VA,VB間のとき、ある動作をさせて制御したときの位相差と振動子13に印加する周波数f4および電圧値V3の駆動電圧VA,VB間のとき、ある動作をさせて制御したときの位相差をそれぞれ示す図である。本実施の形態は、上記第1の実施の形態の構成と同じ構成を有し、本実施の形態の説明においては、同じ符号を用いる。
【0075】
上記第1の実施の形態においては、対応する振動子11〜13を駆動して移動体10をY方向などの所定方向へ直進移動させ、その移動結果に基づいて、各振動子11〜13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う場合を説明した。
【0076】
これに対し、本実施の形態は、各振動子11〜13の駆動力を制御するための駆動電圧VA,VBの位相差(β11〜β13)の制御量に基づいて、各振動子11〜13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う。そして、上記判別結果に応じて、各振動子11〜13の出力特性が一致するように、各振動子11〜13に対する駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα11〜α13)または電圧値(γ11〜γ13)が変更される。
【0077】
例えば移動体10をθ方向へ回転させる場合(図9に示す)、各振動子11〜13の駆動力が同じ大きさにする必要がある。ここで、各振動子11〜13には、それぞれ、同じ周波数f3および同じ電圧値V3を有する駆動電圧VA,VBが印加されるとする。また、各振動子11,12の共振周波数は、駆動電圧VA,VBの周波数f3の近傍の周波数に一致し、振動子13の共振周波数は、上記周波数f3と大きく異なる周波数であるとする。
【0078】
このような場合においては、図13に示すように、各振動子11〜13の駆動力を同じ大きさにするように、各振動子11〜13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差(パラメータβ11〜β13の値)が制御される。図13から分かるように、振動子13の駆動電圧VA,VB間の位相差に関しては、その制御量がπ/2(rad)を超える場合がある。
【0079】
ここで、移動体10のθ方向への目標回転速度を例えば50mm/secとすると、図14に示すように、各振動子11,12に対する周波数f3の駆動電圧VA,VB間の位相差は、それぞれ、約28π/180(rad)に制御される。これに対し、振動子13に対する周波数f3の駆動電圧VA,VB間の位相差は、約π/2(rad)に制御される。これは、振動子11,12と振動子13の共振周波数が異なり、振動子11,12に対する振動子13の出力特性が異なるからである。
【0080】
駆動電圧VA,VB間の位相差がπ/2(rad)の場合、振動子が発生する駆動力の大きさが最大になる(移動体10の回転速度が最大になる)が、これを超える位相差の場合、逆に駆動力が小さくなる(回転速度が遅くなる)。よって、振動子13の場合、駆動電圧VA,VB間の位相差がπ/2(rad)近傍の値で制御されるので、当該振動子13の駆動力を他の振動子11,12の駆動力の大きさと同じにする状態を安定的に保持するような制御することは難しい。従って、移動体10の回転速度を所望の速度に保持するための制御を安定して行うようにするためには、駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量を、−π/2からπ/2(rad)までの範囲内で可変することが好ましい。
【0081】
各振動子11〜13のそれぞれに対する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量間に大きな差がある場合、これは、各振動子11〜13の出力特性が大きく異なることを意味する。
【0082】
図14に示す位相差の場合、振動子11,12のそれぞれに対する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量がほぼ同じであるので、各振動子11,12の出力特性は一致すると判別される。振動子13に関しては、その駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量が振動子11,12の駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量と大きく異なるので、振動子13の出力特性は、振動子11,12の出力特性と一致していないと判別される。
【0083】
この場合、例えば図15に示すように、振動子13の出力特性が振動子11,12の出力特性に一致するように、振動子13に対する駆動電圧VA,VBの電圧値V3を変えずに、周波数(パラメータα13の値)が周波数f3から周波数f4に変えられる。これにより、図16に示すように、振動子13に対する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量は、−π/2からπ/2(rad)の範囲内に収まり、かつ振動子11,12の駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量と大きく異なることがない。
【0084】
このようにして周波数の変更により振動子11〜13の出力特性を一致され、振動子11〜13の駆動制御を、−π/2からπ/2(rad)の範囲内で、かつほぼ同じである駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量で、安定して行うことが可能になる。
【0085】
また、上記第1の実施の形態と同様に、駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα11〜α13の値)に代えて、駆動電圧VA,VBの電圧値(パラメータγ11〜γ13の値)、またはA相、/A相、B相、/B相の各パルス幅を変えるようにしてもよい。
【0086】
また、制御時の制御ゲインを変えると、偏差に対する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量が変化し、図14に示すような駆動電圧VA,VB間の位相差と速度の関係を示す直線の傾きを変えることができる。即ち、制御ゲインを変えることによって、振動子11〜13の出力特性を一致するように補正することができる。
【0087】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図17および図18を参照しながら説明する。図17は本発明の第3の実施の形態に係る多自由度駆動装置において各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際の各振動子11〜13の駆動状態を示す図である。図18は振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBの位相差の制御量を示す図である。本実施の形態は、上記第1の実施の形態の構成と同じ構成を有し、本実施の形態の説明においては、同じ符号を用いる。
【0088】
上記第1の実施の形態においては、各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際に、振動子11がBモード(上下振動)で駆動された状態で、各振動子12,13が駆動される。
【0089】
これに対し、本実施の形態においては、図17に示すように、各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際には、振動子11の駆動が停止された状態で各振動子12,13が駆動される。ここで、各振動子12,13は、それぞれの駆動力を合成した駆動力が振動子11の突起部19と移動体10の間に生じる摩擦力と釣り合い、移動体10が静止された状態を保持するように、駆動される。具体的には、振動子12の駆動力(ベクトルM12)と振動子13の駆動力(ベクトルM13)を合成した駆動力(ベクトルMs)が、移動体10に作用する駆動力となる。この駆動力(ベクトルMs)が振動子11の突起部19と移動体10の間に生じる摩擦力(ベクトルFs)と釣り合えば、移動体10の静止状態が保持される。即ち、移動体10の静止状態を保持するためには、各振動子12,13の駆動力の大きさが同じになるように、それぞれの振動子12,13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。そして、各振動子12,13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量に基づいて、各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別が行われる。
【0090】
例えば図18に示すように、各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御されたとする。各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBは、同じ周波数および同じ電圧値を有する駆動電圧である。振動子12の駆動電圧VA,VB間の位相差はπ/2(rad)近傍の値に制御され、振動子13の駆動電圧VA,VB間の位相差は−35π/180(rad)近傍の値に制御される。これは、例えば振動子12の共振周波数と振動子13の共振周波数が大きく異なることにより、同じ周波数および同じ電圧値を有する駆動電圧VA,VBで各振動子12,13を駆動した際の各振動子12,13の出力特性が異なることを意味する。
【0091】
よって、振動子13の出力特性が振動子12の出力特性に一致するように、振動子13に印加する駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα13の値)または電圧値(γ13の値)が変更される。
【0092】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について図19を参照しながら説明する。図19は本発明の第4の実施の形態に係る多自由度駆動装置において各振動子12,13の出力特性が一致しているか否かの判別を行う際の各振動子11〜13の駆動状態を示す図である。本実施の形態は、上記第1の実施の形態の構成と同じ構成を有し、本実施の形態の説明においては、同じ符号を用いる。
【0093】
本実施の形態の多自由度駆動装置は、撮像装置に組み込まれ、CCD(Charged Coupled Device)などの撮像素子をX,Y,θの各方向へ移動させるための装置として用いられる。この場合、移動体10に撮像素子が搭載されることになる。
【0094】
このような用途の場合、移動体10には鉛直方向(−Y方向)に重力が作用することがある。よって、移動体10を静止した状態に保持するためには、振動子11をBモード(上下振動のみのモード)で駆動し、各振動子12,13を、重力に抗する+Y方向への駆動力が移動体10に常時作用するように、駆動する必要がある。即ち、振動子12の駆動力(ベクトルM12)と振動子13の駆動力(ベクトルM13)を合成した駆動力(ベクトルMs)が、移動体10に作用する+Y方向への駆動力となる。この駆動力(ベクトルMs)が重力と釣り合えば、移動体10は、静止した状態に保持される。
【0095】
この場合、各振動子12,13の駆動力の大きさが同じになるように、それぞれの振動子12,13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差が制御される。この制御において、各振動子12,13に印加する駆動電圧VA,VB間の位相差の制御量間に大きな差があると、各振動子12,13の出力特性が一致していないと判別される。ここで、各振動子12,13にそれぞれ印加する駆動電圧VA,VBは、同じ周波数および同じ電圧値を有する駆動電圧である。
【0096】
例えば振動子12の駆動電圧VA,VB間の位相差はπ/2(rad)近傍の値に制御され、振動子13の駆動電圧VA,VB間の位相差は−35π/180(rad)近傍の値に制御されたとする。これは、例えば振動子12の共振周波数と振動子13の共振周波数が大きく異なることにより、同じ周波数および同じ電圧値を有する駆動電圧VA,VBで各振動子12,13を駆動した際の各振動子12,13の出力特性が異なることを意味する。
【0097】
よって、振動子13の出力特性が振動子12の出力特性に一致するように、振動子13に印加する駆動電圧VA,VBの周波数(パラメータα13の値)または電圧値(γ13の値)が変更される。これにより、各振動子12,13を駆動した際の駆動電圧VA,VBの位相差の制御量が略同じになり、安定した制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
10 移動体
11,12,13 振動子
21,22,23 位置センサ
31,32,33 スケール部
50 制御部
51 駆動部
53,54,55 駆動パル発生器
56,57,58 スイッチング回路
59 電源回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパラメータに設定された値に基づいて生成された駆動電圧により駆動される複数の振動子と、前記複数の振動子により多方向へ移動可能なように前記振動子のそれぞれと接触される移動体と、を備え、
前記複数のパラメータは、対応する振動子の駆動に応じて可変される値が設定される第1のパラメータと該第1のパラメータと異なる第2のパラメータとを含み、
前記振動子が駆動された際の前記振動子のそれぞれに対する前記第1のパラメータの可変された値に基づいて、前記振動子のそれぞれの出力特性が一致しているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記振動子のそれぞれの出力特性が一致していないと判別された場合、前記駆動された振動子のそれぞれの出力特性が一致するように、少なくとも1つの振動子に対して前記第2のパラメータに設定された値を変更する変更手段と
を備えることを特徴とする多自由度駆動装置。
【請求項2】
前記第1のパラメータは、前記駆動電圧のA相およびB相間の位相差を規定するための値が設定されるパラメータであることを特徴とする請求項1に記載の多自由度駆動装置。
【請求項3】
前記第2のパラメータは、前記駆動電圧の周波数を規定するための値が設定されるパラメータであることを特徴とする請求項1または2に記載の多自由度駆動装置。
【請求項4】
前記第2のパラメータは、前記駆動電圧の電圧値を規定するための値が設定されるパラメータであることを特徴とする請求項1または2に記載の多自由度駆動装置。
【請求項5】
前記複数の振動子は、それぞれ、2つのモードの振動が合成された振動により駆動力を発生するように構成されている、請求項1又は2に記載の多自由度駆動装置。
【請求項1】
複数のパラメータに設定された値に基づいて生成された駆動電圧により駆動される複数の振動子と、前記複数の振動子により多方向へ移動可能なように前記振動子のそれぞれと接触される移動体と、を備え、
前記複数のパラメータは、対応する振動子の駆動に応じて可変される値が設定される第1のパラメータと該第1のパラメータと異なる第2のパラメータとを含み、
前記振動子が駆動された際の前記振動子のそれぞれに対する前記第1のパラメータの可変された値に基づいて、前記振動子のそれぞれの出力特性が一致しているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記振動子のそれぞれの出力特性が一致していないと判別された場合、前記駆動された振動子のそれぞれの出力特性が一致するように、少なくとも1つの振動子に対して前記第2のパラメータに設定された値を変更する変更手段と
を備えることを特徴とする多自由度駆動装置。
【請求項2】
前記第1のパラメータは、前記駆動電圧のA相およびB相間の位相差を規定するための値が設定されるパラメータであることを特徴とする請求項1に記載の多自由度駆動装置。
【請求項3】
前記第2のパラメータは、前記駆動電圧の周波数を規定するための値が設定されるパラメータであることを特徴とする請求項1または2に記載の多自由度駆動装置。
【請求項4】
前記第2のパラメータは、前記駆動電圧の電圧値を規定するための値が設定されるパラメータであることを特徴とする請求項1または2に記載の多自由度駆動装置。
【請求項5】
前記複数の振動子は、それぞれ、2つのモードの振動が合成された振動により駆動力を発生するように構成されている、請求項1又は2に記載の多自由度駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−9596(P2013−9596A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224046(P2012−224046)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2008−64576(P2008−64576)の分割
【原出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2008−64576(P2008−64576)の分割
【原出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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