説明

多色感熱記録体およびその製造方法

【課題】多色感熱記録体において、2層からなる感熱発色層中の上層の感熱発色層の塗工欠陥検出を可能した多色感熱記録体および塗工欠陥箇所を排除する多色感熱記録体の製造方法に関するものである。
【解決手段】支持体上に、黒発色する染料前駆体と顕色剤とを含有する第1感熱発色層を設け、更に第1感熱発色層上に第1感熱発色層の色調と異なる発色色相を有する染料前駆体からなる固体分散微粒子、顕色剤及び蛍光増白剤を含有する第2感熱発色層を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドからの加熱印加条件の違いにより、互いに異なる多色に発色する多色感熱記録体およびその製造方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、多色感熱記録体において、2層からなる感熱発色層中の上層の感熱発色層の塗工欠陥検出を可能した多色感熱記録体および塗工欠陥箇所を排除する多色感熱記録体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、染料前駆体と、加熱下に接触してこれを呈色させる顕色剤との発色反応を利用し、加熱により両発色物質を溶融接触させ、発色画像を得るようにした感熱記録体が広く知られている。このような感熱記録体は、比較的安価であり、記録機器がコンパクトであり、且つその保守も容易であるため、ファクシミリ、ワードプロセッサー、各種計算機等、およびその他の用途の記録媒体として幅広い分野において使用されている。
【0003】
感熱記録体に対し、その用途の拡大に伴って要求される品質も多様化しており、例えば高感度化、画像安定化、多色記録化等の要望を挙げることができる。特に多色記録手段には、強調したい文字や図形を他の部分と異なる色調によって顕著に明確に表示できるなどの利点があり、その実用化要望が高まっている。このような特徴を利用して、最近では宝くじ用発券用紙として使用されており、多色発色印字の可能なことが宝くじ用発券用紙の真偽の判定規準として盛り込まれることができ、偽造防止として活用されることが可能である。
【0004】
2色感熱記録の場合は支持体上に高温発色層、更に低温発色層を設ける構成が一般的である。塗工工程では万全を期して塗工されているが、何らかの理由で一部若しくは全面に塗工欠陥が生じる場合が考えられる。これら感熱発色層の未塗工部分が有ればその部分は2色発色が出来なく、宝くじ用発券用途で真偽判定用に使用される場合、偽造券として検出され、宝くじ購入者に甚大な影響を与えかねない。このような事態を避けるため、塗工工程で、未塗工部分が発生すればその時点で検出し、市場に出さないことが、求められていくことになる。
【0005】
多色記録系として、これまでに加熱温度の差、または熱エネルギーの差を利用する試みがなされ、種々の多色感熱記録体が提案されている。一般に、多色感熱記録材料は、支持体上に異なる色調に発色する高温発色層と低温発色層を順次積層して構成されたものであって、これらを大別すると消色型(特許文献1、2、3を参照)と加色型(特許文献4、5、6、7を参照)の2種類及びマイクロカプセルを用いた方法(特許文献8、9、10、11、12を参照)が開示されている。更に有機高分子と、染料前駆体とからなる複合粒子を使用する方法(特許文献13、14、15、16を参照)も開示されている。更にポリウレア、及びポリウレタンより選ばれた少なくとも1種の高分子物質と、染料前駆体とからなる複合粒子と顕色剤としてN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアを使用される方法も開示されている(特許文献16を参照)。
【0006】
感熱記録体に対する偽造防止手段としては、近赤外蛍光化合物を用いた方法(特許文献17、18を参照)、蛍光剤、蛍光染料、蛍光顔料を用いた方法(特許文献19、20、21、22、23を参照)、特殊顔料インキを使用した方法(特許文献24、25を参照)、帯状スレッドを抄き込んだ支持体を用いた方法(特許文献26を参照)、支持体に透かしを用いた方法(特許文献27を参照)が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭50−17865号公報
【特許文献2】特開昭57−14320号公報
【特許文献3】特開平2−80287号公報
【特許文献4】特公昭49−27708号公報
【特許文献5】特公昭51−19989号公報
【特許文献6】特開昭51−146239号公報
【特許文献7】特開昭56−99697号公報
【特許文献8】特開昭57−12695号公報
【特許文献9】特公昭49−70号公報
【特許文献10】特開昭59−214691号公報
【特許文献11】特公平4−4960号公報
【特許文献12】特開平4−101885号公報
【特許文献13】特開平9−263057号公報
【特許文献14】特開平10−226175号公報
【特許文献15】特開平10−95173号公報
【特許文献16】特開2001−341432号公報
【特許文献17】特開平11−314459号公報
【特許文献18】特開平11−309945号公報
【特許文献19】特開平4−135892号公報
【特許文献20】特開平11−129617号公報
【特許文献21】特開平6−166264号公報
【特許文献22】特開平7−225488号公報
【特許文献23】特開平4−363289号公報
【特許文献24】特開2002−293022公報
【特許文献25】特開2002−293026号公報
【特許文献26】特開2002−19296号公報
【特許文献27】特開2003−200664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、多色感熱記録体において、2層からなる感熱発色層中の上層の感熱発色層の塗工欠陥検出を可能した多色感熱記録体および塗工欠陥箇所を排除する多色感熱記録体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る多色感熱記録体は、上記の課題を解決するために、支持体上に、黒発色する染料前駆体と顕色剤とを含有する第1感熱発色層を設け、更に第1感熱発色層上に第1感熱発色色相とは異なる色調に発色する染料前駆体からなる固体分散微粒子、顕色剤及び蛍光増白剤を含有する第2感熱発色層を有することにより、上記の課題を解決することが可能となった。
【0010】
即ち、本発明は、以下の多色感熱記録体を提供するものである。
【0011】
項1:支持体上に、黒発色する染料前駆体と顕色剤とを含有する第1感熱発色層を設け、更に第1感熱発色層上に第1感熱発色層の色調と異なる発色色相を有する染料前駆体からなる固体分散微粒子、顕色剤及び蛍光増白剤を含有する第2感熱発色層を有することを特徴とする多色感熱記録体。
項2:第2感熱発色層に、さらに有機高分子と黒発色する染料前駆体とからなる複合粒子を含有した、請求項1に記載の多色感熱記録体。
項3:前記蛍光染料が、第2感熱発色層の全固形分量に対して0.01〜5.0質量%である、請求項1または2に記載の多色感熱記録体。
項4:前記第1感熱発色層には蛍光増白剤を含有しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項5:前記第2感熱発色層上にさらに保護層を設け、前記第1感熱発色層と前記保護層には蛍光増白剤を含有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項6:第1感熱発色層中に球状プラスチック樹脂粒子又は中空プラスチック樹脂粒子を含有させた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項7:前記有機高分子が、ポリウレア及びポリウレア−ポリウレタンより選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項8:第2感熱発色層中の顕色剤がN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項9:第1感熱発色層の顕色剤がN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項10:第1感熱発色層の黒発色する染料前駆体の融点が200℃以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項11:第1感熱発色層の黒発色する染料前駆体が、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン)、3−(4−ジメチルアミノ)アリニノ−5,7−ジメチルフルオランから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項12:第2感熱発色層に含有される複合粒子とは異なる色調に発色する染料前駆体が、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−ジ−N−ブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3'−フタリド〕、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3'−(6'−ジメチルアミノ)フタリドから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項13:第2感熱発色層に含有する複合粒子とは異なる色調に発色する染料前駆体が、3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジ−N−ブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオランから選ばれる少なくとも一種であり、第1感熱発色層および第2感熱発色層中の顕色剤が、N−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項14:第2感熱発色層に含有する複合粒子に用いられる染料前駆体が、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチルアミノ)−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−(ジエチルアミノ)−6−メチル−7−(3−メチルフェニルアミノ)フルオランから選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項15:第2感熱発色層に含有する複合粒子中に更に3,3'−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−フタリドから選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
項16:請求項1〜15のいずれか一項に記載の多色感熱記録体に紫外線を照射し蛍光増白剤から発生する蛍光を測定することにより塗工欠陥箇所を特定し、前記箇所を排除する多色感熱記録体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、多色感熱記録体において、2層からなる感熱発色層中の上層の感熱発色層の塗工欠陥検出が可能となり、塗工欠陥部分を除去することにより、感熱記録体の全部分において、多色の発色が可能となる多色感熱記録体を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の多色感熱記録体において、感熱発色層は、黒発色する染料前駆体と顕色剤とを含有する第1感熱発色層と、更に第1感熱発色層上に設けられた、第1感熱発色層の色調と異なる発色色相を有する染料前駆体からなる固体分散微粒子、顕色剤及び蛍光増白剤を含有する第2感熱発色層から構成されている。なお、本発明では低温発色色調は、第2感熱発色層中の固体分散微粒子状態で存在する染料前駆体の発色色調である。
【0014】
なお、第1感熱発色層の形成時には、透過方式や反射方式で塗工欠陥を検出することができるが、第2感熱発色層の形成時の欠陥検出法においては透過方式や反射方式で欠陥検出をおこなうことが非常に難しいため、本発明を完成させたものである。
【0015】
また、第1感熱発色層には蛍光増白剤を含有しないことにより、蛍光増白剤を含有させた第2感熱発色層の塗工欠陥をより効率よく検出することが可能となる。
【0016】
前記蛍光増白剤とは、紫外線を吸収して400〜450nm付近の蛍光を発する蛍光物質を意味する。
【0017】
代表的な蛍光増白剤は、下記の一般式(1)で表されるビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体や、ビススチリルビフェニル誘導体があげられる。
【0018】
【化1】

(Xとしては、−NH−〔benzene〕、−NH−〔benzene〕−CH、−NH−〔benzene〕−OCH、−NH−〔benzene〕−SONa、−NH−〔benzene〕−SONH、−OCH、−OCHCHOCH、−Cl、−NHCHがあげられ、Yとしては、−NH、−NH−〔benzene〕、−OCH、−NH−CH、−NH−C、−OH、−NH−CHCHOH、−N(CH)CHCHOH、−N(CHCHOH)、−〔morpholine〕、−N(CH)CHCHSOHがあげられる。)
【0019】
前記蛍光増白剤は、第2感熱発色層に含有されるが、第2感熱発色層を形成した後たとえば一つの方法として、315〜380nmの分光分布をもつブラックライトを第2感熱発色層面に当て、検出器としてコグネックス社製のスマート・ビューを用いて塗工欠陥部分を検出することができる。すなわち、塗工欠陥部分については、蛍光を発しないのでそれにより欠陥部分を把握でき、最終的に欠陥部分を除去するものである。
【0020】
検出器で感知されるようにする為、前記蛍光増白剤が、第2感熱発色層の全固形分量に対して0.01〜5.0質量%含有されることが好ましく、さらに感度の点及び前記蛍光増白剤が上記の一般式(1)で示されるようにNaイオンが存在するため、感熱ヘッドの腐食に関係のある感熱記録層中のNaイオン量の点から、より好ましくは0.1〜3.0質量%であり、さらに好ましくは0.4〜2.8質量%である。
【0021】
本発明の多色感熱記録体において、第2感熱発色層に、さらに有機高分子と黒発色する染料前駆体とからなる複合粒子を含有することにより、さらに印字部の保存性を改良したり、押圧力による地発色や、白紙状態で長期保存した時の地肌かぶり発生を抑制することができる。
【0022】
前記複合粒子の作製については、上記特許文献13、14、15、16に記載の方法により可能である。前述したように、有機高分子の中では特に記録部の保存性が良好との理由で、ポリウレア及びポリウレア−ポリウレタンより選ばれた少なくとも一種が好ましく用いられる。
【0023】
ここで、前記有機高分子がポリウレア及びポリウレア−ポリウレタンの少なくとも一種である複合粒子の作製方法について記載する。上記複合粒子は、染料前駆体、並びに、重合によりポリウレア及びポリウレア−ポリウレタンの少なくとも1種を形成する高分子形成性原料を、100℃以下の沸点を有する水不溶性有機溶剤に溶解混合し、この有機溶剤溶液をポリビニルアルコールなどの親水性保護コロイド溶液中に平均粒子径が0.5〜3μm程度となるように乳化分散し、更に必要によりポリアミン等の反応性物質を混合後、この乳化分散液を加熱して前記有機溶剤を揮発除去し、その後、前記高分子形成性原料を高分子化することにより調製されたものや前記染料前駆体を高分子形成性原料に溶解し、この溶解液を前述の方法で乳化分散後、前記高分子形成性原料を高分子化することにより調製されたものである。
【0024】
前記のポリウレア、及びポリウレア−ポリウレタンより選ばれた少なくとも一種を形成する高分子形成性原料は、多価イソシアネート化合物のみであってもよいし、または多価イソシアネート化合物及びこれと反応するポリオール、ポリアミンとの混合物、或いは、多価イソシアネート化合物とポリオールとの付加物、ビウレット体、イソシアヌレート体などの多量体であってもよい。
【0025】
多価イソシアネート化合物と水が反応してアミン化合物ができ、そのアミン化合物と多価シソシアネート化合物とが反応してポリウレアが形成される。かかる反応と、更に水酸基を有する有機化合物と多価イソシアネート化合物が反応してポリウレア−ポリウレタンが形成される。
【0026】
前記高分子形成性原料として用いられる多価イソシアネート化合物としては、例えばp−フェニレンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、4,4',4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物などが挙げられる。
【0027】
また、高分子形成性原料に用いられるポリオール化合物としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、プロピレングリコール、1,3−ジヒドロキシブタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、フェニルエチレングリコール、ペンタエリスリトール、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、4,4'−イソプロピリデンジフェノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2−ヒドロキシアクリレートなどが挙げられる。
【0028】
もちろん、多価イソシアネート化合物、多価イソシアネートとポリオールの付加物及びポリオール化合物などは、上記化合物に限定されるものではなく、また、必要に応じて2種以上を併用してもよい。なお、本発明で使用される多価イソシアネート化合物、または多価イソシアネート化合物とポリオール化合物との付加物のうちでも、分子中にイソシアネート基を3個以上有するものを用いることが特に好ましい。
【0029】
また本発明の高分子形成性原料に用いられるポリアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチルピペラジン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。
【0030】
本発明では、複合粒子の調製時の乳化分散において親水性保護コロイド剤のほかに界面活性剤、消泡剤などを使用してもよい。複合粒子調製の際の親水性保護コロイド剤の使用量については特に限定はないが、一般に、複合粒子全固形分に対して1〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%程度であることがより好ましい。
【0031】
また、本発明の複合粒子中の黒発色する染料前駆体の含有量は、複合粒子全固形分に対し5〜80質量%程度が好ましく、20〜50質量%程度がより好ましい。
【0032】
本発明において使用される複合粒子の平均粒子径は、発色感度を考慮すると、0.1〜15μmであることが好ましく、1.0〜6.0μmの範囲となるように調節することがより好ましい。
【0033】
本発明で使用される第1感熱発色層の染料前駆体や第2感熱発色層に含有される複合粒子の染料前駆体としては、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N-イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アリニノフルオラン、3−(N―エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン)、3−(4−ジメチルアミノ)アリニノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−2−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ〕−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ〕−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ブチルアミノ)−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−(ジエチルアミノ)−6−メチル−7−(3−メチルフェニルアミノ)フルオラン等の少なくとも1種を用いることができる。
【0034】
特に第1感熱発色層に含有する染料前駆体としては色分離の観点から融点が200℃以上の染料前駆体が好ましく、例えば3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン)、3−(4−ジメチルアミノ)アリニノ−5,7−ジメチルフルオラン等が挙げられるが、高感度、耐光性に優れるという理由で3−(N-エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランがより好ましい。
【0035】
また、第2感熱発色層に含有される複合粒子の染料前駆体としては、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチルアミノ)−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(ジエチルアミノ)−6−メチル−7−(3−メチルフェニルアミノ)フルオランが地肌カブリを生じにくいという点でより好ましい。
【0036】
本発明に使用される複合粒子中には、黒発色する染料前駆体のほかに、バーコードリーダーでの読み取り性を向上させるために更に3,3'−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−フタリド等の染料、必要に応じて記録感度を高めるために融点が40〜150℃程度の芳香族有機化合物(増感剤)、耐光性を高めるための紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶性蛍光染料、離型剤等が添加されていてもよい。このような添加物質は、常温で固体であることが好ましいが、液体であってもよい。黒発色する染料前駆体が2種類以上の染料前駆体の混合物であってもよい。低温発色により形成される色調と混色することにより黒色色調となる発色色調、すなわち補色の関係にある発色色調を有する染料前駆体を複合粒子中に含有させることにより、高温発色色調を黒色とする場合、より黒味の強い高温発色色調を得ることができる。この場合、黒色発色性染料前駆体と、低温発色色調に対して補色の関係にある色調を発色する染料前駆体とを併用して複合粒子中の染料前駆体として構成することもできるし、低温発色色調に対して補色の関係にある色調を発色する染料前駆体のみを単独染料前駆体として複合粒子中に含有させてもよい。
【0037】
また、第1感熱発色層中に球状プラスチック樹脂粒子もしくは中空プラスチック樹脂粒子を含有させることにより、黒とは異なる色調に発色する色の発色濃度を向上させ、その結果、2色のコントラストを向上させ、且つ黒とは異なる色調に発色する色の保存性、特に可塑剤や油などの耐薬品性を大きく向上させることが可能となった。
【0038】
かかる球状プラスチック樹脂粒子は、ポリスチレンを主体構造とする樹脂粒子であり、単量体としてはスチレンを主成分とし、αーメチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、アクリロニトリル等のビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物を使用してなる樹脂粒子である。また、その粒径は感度と画質の点で0.2〜3.0μm程度が好ましい。
【0039】
また、中空プラスチック樹脂粒子としては、従来公知のもの、例えば、膜材がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等からなる中空率が50〜99%程度の粒子が例示できる。ここで中空率は(d/D)×100で求められる値である。該式中、dは中空プラスチック樹脂粒子の内径を示し、Dは中空プラスチック樹脂粒子の外径を示す。中空プラスチック樹脂粒子の平均粒子径は0.5〜10μm程度、特に0.7〜2μm程度であるのが好ましい。
【0040】
本発明で使用される球状プラスチック樹脂粒子又は中空プラスチック樹脂粒子の含有量は第1感熱発色層全固形量の2〜30質量%、好ましくは5〜20質量%であり、2〜30質量%の範囲であれば、黒とは異なる色調に発色する色の発色濃度を向上させ、その結果、2色のコントラストを向上させ、さらに耐薬品性改良効果が大きくなる。
【0041】
第2感熱層に含有する複合粒子とは異なる色調に発色する染料前駆体としては、黒とは異なる色調に発色する、例えば赤、赤紫、オレンジ、青、緑等の発色色調を与える染料前駆体があげられる。
【0042】
例えば、赤もしくは赤紫、オレンジ色系統の発色を与える染料前駆体としては、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−アニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(p−ニトロ)アニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(o−クロロ)アニリノラクタム、3−ジメチルアミノ−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−tert−ブチルフルオラン、3−(N−エチル−N−トリルアミノ)−7−メチルフルオラン、3−(N−エチル−N−トリルアミノ)−7−エチルフルオラン、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン、3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、及び3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−7,8−ベンゾフルオランをあげることができる。
【0043】
赤色、赤紫色、オレンジ色系統の発色色調を与える染料前駆体としては、更に3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−トリルアミノ−7−メチルフルオラン、3−トリルアミノ−7−エチルフルオラン、2−(N−アセチルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−プロピオニルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−ベンゾイルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−カルボブトキシアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−ホルミルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−ベンジルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−アリルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、及び2−(N−メチルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランをあげることができる。
【0044】
赤色、赤紫色、及びオレンジ色系統の発色色調を示す染料前駆体として、更に3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3'−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3'−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3'−フタリド〕、7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−p−メチルフェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3'−フタリド〕、および7−(N−エチル−N−n−ヘキシルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3'−フタリド〕などをあげることができる。
【0045】
上記化合物のなかでも、発色感度が高く、地肌カブリが少ないという点で、赤色発色を与える染料前駆体としては、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、及び3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオランが好ましく、オレンジ色発色を与える染料前駆体としては、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、および7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3'−フタリド〕が好ましく、赤紫色発色を与える染料前駆体としては、3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドが好ましい。なお、3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドは、記録部の耐油性にも優れる。特に赤色発色性染料前駆体としては、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、または3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオランを使用する場合、色調補正のために、色調の異なる染料を混合使用することはむしろ望ましく、例えば3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、もしくは3,3'−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドなどの赤紫系統の色調に発色する染料前駆体を少量配合することにより、一層赤味を強く感じる色調を発色することができる。
【0046】
青色発色を与える染料前駆体としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−n−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、及び3−ジフェニルアミノ−6−ジフェニルアミノフルオランなどをあげることができる。特に、これらの青発色性染料前駆体の中では、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリドが、地肌カブリが少ないという点から好まし
い。
【0047】
緑色発色を与える染料前駆体としては、3−(N−エチル−N−n−ヘキシルアミノ)−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)−7−(N−フェニル−N−メチルアミノ)フルオラン、3−〔p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、及び3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3'−(6'−ジメチルアミノ)フタリドなどをあげることができる。これらのなかでも3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3'−(6'−ジメチルアミノ)フタリドが、地肌カブリが少ないという点から好ましい。
【0048】
黄色系統の発色を与える染料前駆体として、3,6−ジメトキシフルオラン、及び1−(4−n−ドデシルオキシ−3−メトキシフェニル)−2−(2−キノリル)エチレンなどがある。上記の染料前駆体は単独で使用してもかまわないが、色調補正のためにほかの色の発色性染料と併用することも効果的である。
【0049】
本発明において、前記染料前駆体を固体微粒子状態の染料前駆体として使用する場合、当該染料前駆体を、水を分散媒体として、サンドグラインダー、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によって粉砕し、これをポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スルホン基変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩及びそれらの誘導体などの水溶性合成高分子化合物のほか、必要に応じて界面活性剤、消泡剤などと共に分散媒体中に分散させ分散液とし、この分散液を感熱発色層形成用塗料の調製に用いることができる。また染料前駆体を溶剤に溶解した後、この溶液を水中で上記水溶性高分子を安定化剤として乳化分散後、この乳化液から溶剤を蒸発させ染料前駆体を固体微粒子化して使用することもできる。いずれの場合も固体微粒子状態で使用する染料前駆体の分散粒子の平均粒子径は、適切な発色感度を得るために0.2〜3.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0μmである。
【0050】
なお、第2感熱発色層において、複合粒子中の染料前駆体100質量部に対して、異なる色調に発色する染料前駆体は50〜2000質量部程度含まれ、好ましくは100〜1500質量部程度である。
【0051】
本発明において使用される顕色剤としては4−tert−ブチルフェノール、4−アセチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4,4'−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4'−イソプロピリデンジフェノール、4,4'−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、及びビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルなどのフェノール性化合物、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどのフェノール性化合物、または安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸などの芳香族カルボン酸、及びこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの多価金属との塩などの有機酸性物質、N−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N−(p−トルエンスルホニル)-N'-(p−ブトキシカルボイル)ウレア、N−p−トリルスルホニル−N'−フェニルウレア等のウレア化合物が挙げられる。
【0052】
これら顕色剤のうち、保存性や感度、高温保存時の耐熱性(地肌カブリ)の観点から、感熱発色層にはN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアを使用することが好ましく、また、第1、第2感熱発色層とも同一顕色剤を使用する方が高温保存時の地肌カブリの観点から良好である。更に、第2感熱発色層に含有される複合粒子とは異なる色調に発色する染料前駆体が、3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドを使用した場合、N−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアを第1、第2感熱発色層の顕色剤とすると高温保存時の耐熱性(地肌カブリ)も優れ、また可塑剤や油などの耐薬品性も優れるためより好ましい。
【0053】
顕色剤は通常、染料前駆体の合計100質量部に対し、100〜700質量部の量で用いられることが好ましく、より好ましくは150〜400質量部の割合で使用される。もちろん必要に応じて、2種類以上の呈色剤を併用することもできる。
【0054】
本発明においては、主に発色記録画像の保存性向上のために、画像安定化剤を用いてもよい。このような画像安定化剤としては、例えば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4'−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、及び4,4'−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノールなどのフェノール系の化合物、4−ベンジルオキシフェニル−4'−(2−メチル−2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、及び4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物、並びに1,3,5−トリス(2,6−ジメチルベンジル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチル)イソシアヌル酸などのイソシアヌル酸化合物から選ばれた1種以上を含むものを用いることができる。もちろん、画像安定化剤はこれらに限定されるものではなく、また必要に応じて2種類以上の化合物を併用することもできる。
【0055】
感熱記録体の感熱発色層の発色感度を調節するために、感熱発色層に熱可融性物質を増感剤として含有させることができる。増感剤としては、従来から感熱記録体の増感剤として知られている化合物を使用することができ、例えばパラベンジルビフェニル、ジベンジルテレフタレート、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、シュウ酸ジベンジル、アジピン酸ジ−o−クロルベンジル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジル、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、1,3−ビス(2−ナフトキシ)プロパンなどをあげることができる。特にシュウ酸ジ−p−メチルベンジルとシュウ酸ジ−p−クロルベンジルを増感剤として使用すると、カブリが少ない増感効果が得られる。
【0056】
本発明において使用される顕色剤、画像安定化剤及び増感剤などの添加剤は、染料前駆体を固体微粒子状態で使用する時と同じ方法で水中に分散させ、感熱発色層形成塗料の調製の際にこれに混合すればよい。また、これらの添加剤を溶剤に溶解し、水溶性高分子化合物を乳化剤として用いて水中に乳化して使用することもできる。更には前述の複合微粒子調製方法と同様の方法で、これら化合物を含有する複合微粒子を作成し、これを感熱発色層に含有させてもよい。また画像安定化剤及び増感剤は、染料前駆体を含有する複合微粒子中に含有させてもよい。特に増感剤を染料前駆体と一緒に複合微粒子に含有させることにより発色感度を所望値に調整することもできる。
【0057】
本発明においては、感熱発色層の白色度向上、及び画像の均一性向上のため、白色度が高く、平均粒径が10μm以下の微粒子顔料を感熱発色層に含有させることができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカなどの無機顔料、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料が使用できる。サーマルヘッドに対するカス付着、及びスティッキングの防止のためには、吸油量が50ml/100g以上の顔料を使用することが好ましい。顔料の配合量は、発色濃度を低下させない程の量、すなわち、感熱発色層の全固形分重量に対して50質量%以下であることが好ましい。
【0058】
本発明において、感熱発色層を構成する他の成分材料として、接着剤が用いられ、更に必要により、架橋剤、ワックス類、金属石鹸、有色染料、及び有色顔料などを用いることができる。接着剤としては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン及びそれらの誘導体等の水溶性高分子材料、並びに、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体などの水不溶性重合体のラテックスなどをあげることができる。
【0059】
また、感熱発色層の耐水性を向上させるために、接着剤を三次元硬化させるための架橋剤を感熱発色層中に含有させることができる。例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、並びに過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、及び塩化マグネシウム、四ホウ酸ソーダ、四ホウ酸カリウム等の無機化合物又はホウ酸、ホウ酸トリエステル、ホウ素系ポリマー等から選ばれた少なくとも1種の架橋剤を感熱発色層の全固形分重量に対し1〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0060】
感熱発色層に添加されるワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバロウワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、及びポリエチレンワックスなどのワックス類、並びに例えばステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体などをあげることができる。特にメチロール化脂肪酸アミドを感熱発色層に添加すると、耐地肌カブリ性を悪化させずに増感効果を得ることができる。
【0061】
感熱発色層に添加される金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛等をあげることができる。また低温発色色調に対して補色の関係にある色調を有する有色染料、及び/又は有色顔料を感熱発色層中に含有させることは、印字前の記録材料の色調を調節するために好ましく用いられる。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱発色層中に、更に撥油剤、消泡剤、粘度調節剤など各種添加剤を添加することができる。
【0062】
本発明に用いられる支持体材料の種類、形状、寸法などには、格別の限定はなく、例えば上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の他、各種透明支持体等も適宜選択して使用することができる。
【0063】
本発明においては、多色感熱記録体の付加価値を高めるために、これに更に加工を施し、より高い機能を付与した感熱記録体とすることができる。例えば、裏面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤などによる塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙を使用することもでき、或は磁気加工を施すことにより裏面に磁気記録可能な層を有する感熱記録体とすることができる。特に、粘着加工、及び磁気加工を施したものは2色感熱ラベルや、2色感熱磁気乗車券などの用途に有用である。また、裏面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット用紙、ノーカーボン用紙、静電記録紙、ゼログラフィ用紙としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。もちろん両面感熱記録材料とすることもできる。本発明多色感熱記録体として、低温発色色調の異なる2種以上の2色感熱記録材料を使用すると、例えばファイルの色分け、配送品の行き先表示の色分け、レシートとジャーナルとの色分けなど、さまざまな用途で異なる色による認識を行うことができるようになる。
【0064】
本発明においては、感熱発色層の上に保護層を設け、感熱発色層の下に下塗り層を設けることができる。これらの追加層として、従来から公知の感熱記録材料に使用されている保護層、及び下塗り層を利用することができる。保護層、及び下塗り層は、ともに顔料、及び接着剤を主体として構成される。特に保護層には、サーマルヘッドに対するスティッキングを防止する目的で、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸亜鉛のような滑剤を添加することが好ましく、またこれを2層以上に構成することもできる。また光沢のある保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。
【0065】
下塗り層には、シリカ、焼成カオリンなどのような空隙率の高い顔料を使用することにより、その上の感熱発色層の発色感度をあげることができる。また下塗り層中にプラスチックピグメント、中空粒子、発泡体などを含有させることもその上に形成される感熱発色層の発色感度向上に効果がある。
【0066】
本発明の感熱発色層上にUV硬化樹脂、EB硬化樹脂を含む保護層を設けることもできるし、その上に、UVインキ、フレキソインキなどで印刷することもできる。保護層にシリコンなどの離型剤を用いることにより本発明の感熱記録材料をライナーレスの粘着ラベルとして利用することもできる。この場合、印刷後に離型剤を塗工してもよい。
【0067】
支持体上に上記各層を形成する方法としては、エアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法などの既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また印刷機などを使用して本発明の感熱発色層塗料を部分印刷して使用することもできる。感熱発色層用塗料は、第1感熱発色層、第2感熱発色層とも支持体の一表面に乾燥後の重量が1〜10g/mとなるように塗布され、それによって感熱発色層が形成される。また記録材料裏面からの油や可塑剤の浸透を抑制させることや、又はカールコントロールのためにバック層を設けることもできる。
また感熱発色層をスーパーカレンダーやソフトカレンダーなどの既知の平滑化方法を用いて平滑化処理することは、その発色感度を高める事に効果がある。感熱発色層表面を、カレンダーの金属ロール及び弾性ロールのいずれに当てて処理してもよい。
【実施例】
【0068】
本発明を下記実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0069】
実施例1
・下塗り層用塗料の調製
吸油量110mlの焼成カオリン88部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(固形分濃度:50%)20部、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲン7A、第一工業製薬社製)の5%水溶液20部、ポリアクリル酸ナトリウムの20%水溶液5部及び水190部を均一に混合して下塗り層用塗液を得た。
【0070】
・染料前駆体含有の複合粒子分散液(A液)の調製
3−(ジエチルアミノ)−6−メチル−7−(3−メチルフェニルアミノ)フルオラン6部と、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン3部とを100℃に加熱したジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート(住友ウレタン製)9部に溶解し、この溶液を35℃に冷却後、同温度の12%部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA217EE、日本合成化学工業製)水溶液66.7部に徐々に添加し、ホモジナイザーを用い、回転数8000rpmの攪拌によって乳化分散した後、この乳化分散液に水6部を加えて均一化した。この乳化分散液を90℃に昇温し、アミン系架橋剤を用いて10時間の硬化反応を行わせた後、固形分濃度が23%となるように水を添加し、平均粒子径0.8μmの複合粒子分散液を得た。
【0071】
・染料前駆体の分散体(B液)の調製
3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン20部、スルホン変性ポリビニール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学工業製)の20%液10部、水20部を縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒径が0.8μmとなるように粉砕、分散した。
【0072】
・染料前駆体の分散体(C液)の調製
3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド20部、スルホン変性ポリビニール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学工業製)の20%液10部、水20部を縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒径が0.7μmとなるように粉砕、分散した。
【0073】
・顕色剤の分散液(D液)の調製
N−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア20部、スルホン変性ポリビニール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学工業製)の20%液10部、水30部を縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒径が1.2μmとなるように粉砕、分散した。
【0074】
・増感剤の分散液(E液)の調製
シュウ酸ジ−p−メチルベンジルとシュウ酸ジ−p−クロルベンジルの1:1の混合物(商品名:HS7150、大日本インキ化学社製)20部、スルホン変性ポリビニール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学工業社製)の20%液10部、水30部を縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒径が1.0μmとなるように粉砕、分散した。
【0075】
・第1感熱発色層用塗液の調製
B液30部、D液80部、E液60部、水酸化アルミニウム10部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA110、クラレ社製)の10%水溶液100部および水50部を均一に混合攪拌して第1感熱発色層用塗液を得た。
【0076】
・第2感熱発色層用塗液の調製
A液44部、C液40部、D液100部、E液30部、水酸化アルミニウム10部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA110、クラレ社製)の10%水溶液200部、蛍光増白剤(商品名:カヤホールBPSリキッドコンク、日本化薬社製)2部および水50部を均一に混合攪拌して第2感熱発色層用塗液を得た。
【0077】
・保護層用塗液の調製
ジアセトン変性ポリビニルアルコール(商品名:D−610、日本酢ビポバール社製)20%液200部、水酸化アルミニウム60部、ステリン酸亜鉛30%分散体(商品名:ハイドリンZ−7、中京油脂社製)5部及び水135部を均一に混合して保護層用塗液を得た。
【0078】
・多色感熱記録体の作製
坪量81.4g/mの上質紙(紙面pH5.9)の片面に、下塗り層用塗液、第1感熱発色層用塗液をそれぞれ乾燥後の塗布量が8g/m、4g/mとなるように塗布乾燥し、透過方式と反射方式を併用して塗工欠陥の検出をおこない巻き取った。その後、第2感熱発色層用塗液及び保護層用塗液をそれぞれ乾燥後の塗布量が3g/m、及び2g/mとなるように塗布乾燥してブラックライトを当てて、発生する蛍光を検出器で検出して、第2感熱発色層の塗工欠陥の検出をおこなうと同時に、透過方式と反射方式を併用して保護層の塗工欠陥の検出をおこない、巻き取って下塗り層、第1感熱発色層、第2感熱発色層及び保護層を順次有する多色感熱記録体を得た。その後、スーパーカレンダーにて、感熱記録面のベック平滑度(JIS−P8119)が3500秒となるように平滑化処理し、多色感熱記録体を作製した。
【0079】
実施例2
実施例1において、第2感熱記録層中の蛍光増白剤(商品名:カヤホールBPSリキッドコンク、前出)2部を0.3部に変更した以外は実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0080】
実施例3
実施例1において、第2感熱記録層中の蛍光増白剤(商品名:カヤホールBPSリキッドコンク、前出)2部を4部に変更した以外は実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0081】
実施例4
実施例1のC液の調製において、3、3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドの代わりに3−(N−メチル−N-イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオランを使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0082】
実施例5
実施例1のC液の調製において、3、3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドの代わりに3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランを使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0083】
実施例6
実施例1の第2感熱発色層用塗液に使用するC液の調製において、3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドの代わりに3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランを使用し、同じく第2感熱発色層用塗液に使用するD液の調製において、顕色剤のN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアの代わりに4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホンを使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0084】
実施例7
実施例1の第1感熱発色層用塗液に使用するD液の調製において、顕色剤のN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアの代わりに4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホンを使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0085】
実施例8
実施例1の第1感熱発色層用塗液に使用するD液の調製において、顕色剤のN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアの代わりにビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルを使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0086】
実施例9
実施例1の第1感熱発色層用塗液の調製において、増感剤分散液(E液)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0087】
実施例10
実施例1の第1感熱発色層用塗液に使用するB液の調製において、染料前駆体の3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランの代わりに3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランを使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0088】
実施例11
実施例1のA液調製において、3−(ジエチルアミノ)−6−メチル−7−(3−メチルフェニルアミノ)フルオラン6部の代わりに3−(ジエチルアミノ)−6−メチル−7−(3−メチルフェニルアミノ)フルオランを3部、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリドを3部使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0089】
実施例12
実施例1の第1感熱発色層塗液調製において、水酸化アルミニウム10部の代わりに球状プラスチック粒子分散体(商品名:グロスデール130S、固形分:53%、三井化学社製)を25部使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0090】
実施例13
実施例1の第1感熱発色層塗液調製において、水酸化アルミニウム10部の代わりに中空プラスチック樹脂粒子分散体(商品名:AE851、固形分:28%、JSR社製)を45部使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0091】
実施例14
実施例1の第1感熱発色層のA液を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0092】
実施例15
実施例1の第2感熱発色層用塗液の調製においてA液を使用せず、B液の3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランの代わりに3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランを用いた分散液60部を使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0093】
比較例1
実施例1の第2感熱発色層用塗液の調製において、蛍光増白剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録体を作製した。
【0094】
得られた多色感熱記録体について以下の評価試験を行い、その結果を表1に示した。
【0095】
・印字試験
プリンター(機種名:ハイクオリティプリンター L−2000、(株)イシダ社製)を用いて、低エネルギー:印字濃度設定10、高エネルギー:印字濃度設定18、印字速度:125mm/sで印字試験をおこなった。
【0096】
このようにして得られた発色部について、下記の評価基準で評価した。
【0097】
・発色濃度
低エネルギー発色部については、マクベス濃度計(RD−914型、マクベス社製)でマゼンタフィルターを使用して得られた濃度値からシアンフィルターを使用して得られた濃度値をひいた数値を発色濃度とし、高エネルギー発色部については、シアンフィルターを使用して得られた濃度値を発色濃度とした。
【0098】
・2色分離性
○:低エネルギー発色部(赤)が鮮明であり、2色分離性に優れていた。
△:低エネルギー発色部が高エネルギー発色部色調の若干混ざった発色であるが、2色の分離性は実用上は問題ないレベルである。
×:低エネルギー発色部が高エネルギー発色部色調の混ざった発色であり、2色の分離はできていなかった。
【0099】
・耐油性
食用油を綿棒で漬け、高エネルギー発色部上で10往復して1時間後ふき取り1週間後、高エネルギー発色部の発色濃度をマクベス濃度計(RD−914型、マクベス社製)でシアンフィルターを使用して測定した。
【0100】
また、欠陥検出性については、多色感熱記録体の作製時において、故意に第2感熱発色層で塗工欠陥を生じさせ、保護層形成後に第2感熱発色層の塗工欠陥が検出できるかどうかの評価をおこなった。
【0101】
・欠陥検出性
315〜380nmの分光分布をもつブラックライトを当て、コグネックス社製のスマート・ビューを用いて第2感熱発色層の塗工欠陥の検出レベルを確認した。
◎:容易に検出可能。
○:検出可能。
×:検出不可。
【0102】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、黒発色する染料前駆体と顕色剤とを含有する第1感熱発色層を設け、更に第1感熱発色層上に第1感熱発色層の色調と異なる発色色相を有する染料前駆体からなる固体分散微粒子、顕色剤及び蛍光増白剤を含有する第2感熱発色層を有することを特徴とする多色感熱記録体。
【請求項2】
第2感熱発色層に、さらに有機高分子と黒発色する染料前駆体とからなる複合粒子を含有した、請求項1に記載の多色感熱記録体。
【請求項3】
前記蛍光増白剤が、第2感熱発色層の全固形分量に対して0.01〜5.0質量%である、請求項1または2に記載の多色感熱記録体。
【請求項4】
前記第1感熱発色層には蛍光増白剤を含有しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記第2感熱発色層上にさらに保護層を設け、前記第1感熱発色層と前記保護層には蛍光増白剤を含有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項6】
第1感熱発色層中に球状プラスチック樹脂粒子又は中空プラスチック樹脂粒子を含有させた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項7】
前記有機高分子が、ポリウレア及びポリウレア−ポリウレタンより選ばれた少なくとも一種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項8】
第2感熱発色層中の顕色剤がN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項9】
第1感熱発色層の顕色剤がN−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項10】
第1感熱発色層の黒発色する染料前駆体の融点が200℃以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項11】
第1感熱発色層の黒発色する染料前駆体が、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン)、3−(4−ジメチルアミノ)アリニノ−5,7−ジメチルフルオランから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項12】
第2感熱発色層に含有される複合粒子とは異なる色調に発色する染料前駆体が、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−ジ−N−ブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3'−フタリド〕、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3'−(6'−ジメチルアミノ)フタリドから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項13】
第2感熱発色層に含有する複合粒子とは異なる色調に発色する染料前駆体が、3,3'−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジ−N−ブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオランから選ばれる少なくとも一種であり、第1感熱発色層および第2感熱発色層中の顕色剤が、N−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレアである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項14】
第2感熱発色層に含有する複合粒子に用いられる染料前駆体が、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチルアミノ)−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−(ジエチルアミノ)−6−メチル−7−(3−メチルフェニルアミノ)フルオランから選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項15】
第2感熱発色層に含有する複合粒子中に更に3,3'−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−フタリドから選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の多色感熱記録体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の多色感熱記録体に紫外線を照射し蛍光増白剤から発生する蛍光を測定することにより塗工欠陥箇所を特定し、前記箇所を排除する多色感熱記録体の製造方法。

【公開番号】特開2008−195043(P2008−195043A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35574(P2007−35574)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】