説明

多軸駆動用ドライバ

【課題】多軸駆動用ドライバを一つのスレーブ局とすることができ、また全てのコントロールユニットに対して同時に動作指令を与えることができ、しかも状態確認をすることができる多軸駆動用ドライバを提供する。
【解決手段】 スレーブ局内通信回路2が、10台のコントロールユニットの10台の中央演算処理装置CPU1〜CPU10を並列接続して、10台の中央演算処理装置を上位コントローラ3からの動作指令が送信されるバスにシリアル通信可能に接続する。10台の中央演算処理装置CPU1〜CPU10のうち1台の中央演算処理装置CPU1を他の中央演算処理装置の状態を確認する確認装置と定める。中央演算処理装置CPU1が、上位コントローラ3から動作指令が送信されたときに、他の中央演算処理装置を代表して成功応答信号を上位コントローラ3に返信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の軸を複数のステッピングモータで駆動するための多軸駆動用ドライバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平11−299291号公報(特許文献1)には、上位コントローラとシリアル通信とを用いて信号の送受信を行う多軸モータ制御装置が開示されている。この装置では、上位コントローラからの指令に基づき全軸分の位置ループ処理及び速度ループ処理を含む制御を行う1台のマルチドライブコントロールユニットを設けている。そして各軸のモータに対応して、マルチドライブコントロールユニットからの電流指令に基づき電流ループ処理及びモータの駆動を含む処理を行う複数のサーボアンプユニットを設けている。
【0003】
また従来、多軸駆動ドライバを構成する場合には、一つのドライバに対して1軸もしくは2軸のコントロールユニットまたはステッピングドライバ(スレーブ局)を並列に接続して、多軸として制御していた。
【特許文献1】特開平11−299291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の従来技術のようにマルチドライブコントロールユニットを設けても、信号の処理に時間がかかる問題が生じる。
【0005】
また後者の従来技術のように、1軸または2軸に対して個別に動作するコントロールユニットを設けてこれらをスレーブ局とした場合には、設置スペースを多くとってしまう問題、複数軸分のスレーブアドレス番号を用いる必要がある問題、そして各軸の動作開始タイミングにズレが生じてしまう問題があった。
【0006】
本発明の目的は、多軸駆動用ドライバを一つのスレーブ局とすることができ、また全てのコントロールユニットに対して同時に動作指令を与えることができ、しかも状態確認をすることができる多軸駆動用ドライバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多軸駆動用ドライバは、n(nは4以上の正の整数)本の軸を個別に駆動制御するn台のステッピングモータをそれぞれ個別に制御するものである。本発明の多軸駆動用ドライバは、m(n以下の正の整数)台のコントロールユニットと、スレーブ局内通信回路とを備えている。m台のコントロールユニットは、それぞれn本の軸を個別に駆動制御するn台のステッピングモータをそれぞれ個別に制御するためのn台のドライブ回路のうちの1台以上のドライバ回路と、通信機能を有し且つ1台以上のドライブ回路に駆動信号を与える中央演算処理装置とを備えている。そしてm台のコントロールユニットのm台の中央演算処理装置は、それぞれ入力された動作指令を判定する判定ルーチンとして同じものを有している。そしてm台の中央演算処理装置は、マスター局となる上位コントローラからシリアル通信により送信されてくる動作指令を受信すると、該動作指令に基づいて状態確認処理及びドライブ処理を実行し、動作指令に応じた成功応答を報知する成功応答信号を生成する機能を有する。そしてスレーブ局内通信回路は、m台のコントロールユニットのm台の中央演算処理装置を並列接続して、m台の中央演算処理装置を上位コントローラからの動作指令が送信されるバスにシリアル通信可能に接続する。本発明の多軸駆動用ドライバは、マスター局(上位コントローラ)に対するスレーブ局となるものである。
【0008】
本発明の多軸駆動用ドライバでは、スレーブ局内通信回路が、並列接続されたm台の中央演算処理装置と上位コントローラとの間での送受信を可能にするように構成されている。そしてm台の中央演算処理装置のうち予め定めた1台の前記中央演算処理装置が他のm−1台の中央演算処理装置が制御する軸の有無を確認する確認装置と定めている。本発明では、上位コントローラから1軸のみについての動作指令が送信されてきたときには、1軸を制御する1台の中央演算処理装置が成功応答信号を上位コントローラに送信する。また上位コントローラから複数軸についての動作指令が送信されてきたときには、確認装置として機能する1台の中央演算処理装置が他の中央演算処理装置を代表して成功応答信号を上位コントローラに送信する。これは、m台の中央演算処理装置は、それぞれ入力された動作指令を判定する判定ルーチンとして同じものを有しているため、確認装置として機能する1台の中央演算処理装置が動作指令の判定を行えば、他の中央演算処理装置でも動作指令の判定を行ったと推定できるためである。
【0009】
本発明では、上位コントローラから複数軸についての動作指令が送信されてきたときには、スレーブ局内通信回路を通して各コントロールユニットに同時に動作指令がそれぞれ与える。この場合において、各コントロールユニットは成功応答信号を個別に上位コントローラに送信することはない。本発明では、この場合に、確認装置として機能する1台の中央演算処理装置が、上位コントローラから動作指令が送信されたときに、他の中央演算処理装置を代表して成功応答信号を上位コントローラに返信する。また上位コントローラから1軸のみについての動作指令が送信されてきたときには、確認装置として機能する1台の中央演算処理装置による返信に固執せずに、その1軸を制御する1台の中央演算処理装置が成功応答信号を上位コントローラに送信する。このように動作指令を同時に各コントロールユニットに与え、また確認装置として機能する1台の中央演算処理装置が他を代表して成功応答信号を上位コントローラに返信し、さらに1軸だけを制御する場合には、その1軸を制御する1台の中央演算処理装置から返信をするように構成すると、各軸の制御応答時間を従来よりも短くすることができて、しかも上位コントローラとの間の通信速度を速めることができる。
【0010】
なお本発明においては、例えば、複数軸についての動作指令に確認装置として機能する1台の中央演算処理装置への指令が含まれているときには、該1台の中央演算処理装置が成功応答信号を上位コントローラに送信する。そして複数軸についての動作指令に確認装置として機能する1台の中央演算処理装置への指令が含まれていないときには、他の中央演算処理装置のいずれか1台でも制御するまたは有効な軸があることを確認装置として機能する1台の中央演算処理装置が確認し、成功応答信号を上位コントローラに送信することができる。本願明細書において、制御するまたは有効な軸があることを確認装置として機能する1台の中央演算処理装置が確認することとは、物理的にモータに対して駆動する軸が接続されているかどうかの有り無しを接続設定指令、または動作指令実行時(図3)に確認装置として機能する中央演算処理装置が判断することを意味する。そして仮に、存在していない(または増設されていない)中央処理演算装置が制御の対象とする軸に対しての接続指令が動作指令に含まれている場合には、確認装置として機能する中央演算処理装置は、その接続指令の返信を強制的に「無し」の指令に置き換える機能を有している。このようにすると確認装置として機能する1台の中央演算処理装置への指令が動作指令に含まれていない場合でも、この1台の中央演算処理装置は、他の中央演算処理装置が制御する軸を有しているか否かを確認しているため、その確認していることに基づいて確認装置として機能する1台の中央演算処理装置が代表して成功応答信号を上位コントローラに返信すれば、制御応答時間を従来よりも短くすることができて、しかも上位コントローラとの間の通信速度を速めることができる。
【0011】
1台の中央演算処理装置が、何台のドライバ回路に駆動信号を与えるのかは、中央演算処理装置の演算速度に応じて任意に定めることができる。しかし1台の中央演算処理装置で2台のドライバ回路に駆動信号をそれぞれ与えるように構成するのが、現状においては、総合的な信号処理の時間短縮に寄与している。
【0012】
またスレーブ局内通信回路は、1台以上の新たなコントロールユニットを後から接続可能に構成するのが好ましい。このようにすることでコントロールユニットの増設を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、動作指令を同時に各コントロールユニットに与えることができ、また確認装置として機能する1台の中央演算処理装置が他を代表して成功応答信号を上位コントローラに返信し、さらに1軸だけを制御する場合には、その1軸を制御する1台の中央演算処理装置から返信をする。そのため各軸の制御応答時間を従来よりも短くすることができて、しかも上位コントローラとの間の通信速度を速めることができる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の多軸駆動用ドライバの実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本実施の形態の多軸駆動用ドライバ1の構成を概略的に示すブロック図である。また図2は、図1の実施の形態を実現する場合に用いられるソフトウエアのアルゴリズムを示すフローチャートである。以下図1の説明と一緒に図2に示したフローチャートについても説明する。
【0015】
図1の多軸駆動用ドライバ1は、制御の対象となる20本[概念としてはn(nは4以上の正の整数)本]の軸(工作機械等のスピンドル)を個別に駆動制御する20台のステッピングモータM1〜M20をそれぞれ個別に制御するものである。多軸駆動用ドライバ1は、マスター局となる上位コントローラ3のスレーブ局となっている。この多軸駆動用ドライバは1、10台[概念としてはm(n以下の正の整数)台]のコントロールユニットCU1〜CU10と、スレーブ局内通信回路2とを備えている。10台のコントロールユニットCU1〜CU10は、それぞれ20本の軸を個別に駆動制御する20台のステッピングモータM1〜M20をそれぞれ個別に制御するための20台のドライブ回路(図示せず)のうちから選択された2台のドライバ回路と、通信機能を有し且つ2台のドライブ回路に駆動信号を与える中央演算処理装置CPU1〜CPU10とを備えている。なお図示しないが、コントロールユニットCU1〜CU10の内部に配置された2台ずつのドライブ回路は、パワートランジスタ等の電力素子を含んで構成されて、ステッピングモータの励磁巻線に励磁電流を供給する構造を有している。
【0016】
10台のコントロールユニットCU1〜CU10は、マスター局となる上位コントローラ3からバス5を介してシリアル通信により送信されてくる動作指令を受信すると(図2のステップST1〜ST3)、この動作指令に基づいて状態確認処理(受信パケット処理及び受信コマンド処理)を確認する。コントロールユニットCU1〜CU10のそれぞれは、動作指令に応じ処理を実行したことを即ち成功応答を報知する成功応答信号を生成する機能を有している。本実施の形態のスレーブ局内通信回路2は、上位コントローラ3が接続されたバス5に接続されて、10台のコントロールユニットCU1〜CU10の10台の中央演算処理装置CPU1〜CPU10と上位コントローラ3との間でシリアル通信を可能にするように構成されている。
【0017】
本実施の形態では、マスター局となる上位コントローラ3とバス5を介して接続される多軸駆動用ドライバ1との間のシリアル通信を、規格であるRS−485通信を用いて行う。そのためスレーブ局内通信回路2は、RS−485用のシリアルインターフェース4を備えている。このシリアルインターフェース4は、バス5で伝送されるRS−485通信のTxD、RxD信号を、中央演算処理装置CPU1〜CPU10が受け取れる調歩同期信号のTxD、RxD信号(動作指令)に変換して、送受信を行う。
【0018】
スレーブ局内通信回路2は、10台の中央演算処理装置CPU1〜CPU10を並列接続する。そしてスレーブ局内通信回路2は、上位コントローラ3と並列接続された10台の中央演算処理装置CPU1〜CPU10との間での送受信を可能にするように構成されている。本実施の形態では、10台の中央演算処理装置CPU1〜CPU10のうち予め定めた1台の中央演算処理装置CPU1が、他の9台の中央演算処理装置CPU2〜CPU10がそれぞれ制御する軸を有しているか否かの確認(軸を動かすようになっているかの確認)をする確認装置と定めている。
【0019】
図3は、1台のコントローラユニットCU1内の1台の中央演算処理装置CPU1と他のコントローラユニットCU2乃至CU10内の中央演算処理装置CPU2〜CPU10との間の情報伝達路の関係を示している。この情報伝達路は、後述するベースボードD1に対して増設ボートD2〜D4が増設されて接続されたかどうかの状態を認識するためと、各CPUが制御する軸を有しているか(正常に動作可能か)の判断をコントローラユニットCU1が行うために用いられている。即ちこの情報伝達路は、スレーブ局内通信回路2とバス5とを介して接続される上位コントローラ3とは別の信号線として設けてあり、中央演算装置CPU2〜CPU10が正常に動作していることと軸の有無を伝達している。すなわち中央演算処理装置CPU2〜CPU10の情報は、モータ接続状態コマンド実行時に、中央演算処理装置CPU1から上位コントローラにシリアルインターフェース4を経由して伝達されている。実際に確認は、中央演算処理装置CPU1が実行する。図3の情報伝達路を実現するために、図1に示したスレーブ局内通信回路2とは異なるラインでコントローラユニットCU1の中央演算処理装置CPU1に中央演算処理装置CPU2〜CPU10を接続している。本実施の形態では、この情報伝達路を利用して、中央演算処理装置CPU2〜CPU10がそれぞれ制御する軸を有しているか否かの情報が、中央演算処理装置CPU1に伝達されている。なお1軸だけを指定する動作指令もあるため、各中央演算処理装置はそれぞれが制御する軸ごとにも自分の軸に対して、制御する軸があるか否かを判断する機能即ち軸の有効・無効状態を判断する機能を持っている。中央演算処理装置CPU1は、中央演算処理装置CPU2〜CPU10がそれぞれ制御する軸を有しているか否かを確認しており、動作指令により中央演算処理装置CPU1が指定されていない場合でも、他の中央演算処理装置CPU2〜CPU10が指定され且つ指定された中央演算処理装置が制御する軸を有している場合には、代表して上位コントローラ3に成功応答信号を送信する。すなわち中央演算処理装置CPU1は、中央演算処理装置CPU2〜CPU10の動作状態が正常かどうかの確認と軸の接続状態の確認を行う。そして中央演算処理装置CPU1は、代表して上位コントローラ3に成功応答信号を送信する。なお動作指令で指定されている全ての中央演算処理装置から、それぞれの中央演算処理装置が制御する軸を有している(指定先の軸が有効である)ことを確認するための情報が中央演算処理装置CPU1に与えられている。本実施の形態では、中央演算処理装置CPU1自身で成功判定をした場合と、少なくとも他の1つの中央演算処理装置が制御する軸を有している(指定先の軸が有効である)ことを確認後、中央演算処理装置CPU1は成功応答信号を上位コントローラ3に送信する。このようにしても実際の制御では、中央演算処理装置CPU1と全てのCPUが同じ判定ルーチンを通ることを前提にしているため、特に問題となることはない。
【0020】
すなわち動作指令で中央演算処理装置CPU1が指定されている場合には、同じ判定ルーチンを有する他の中央演算処理装置でも動作指令が判定されたものと推定して、中央演算処理装置CPU1が代表して上位コントローラ3に成功応答信号を送信する。このように中央演算処理装置CPU1が他の中央演算処理装置CPU1を代表して成功応答信号を出力したとしても、すべての中央演算処理装置CPU1〜CPU10が同じ判定ルーチンを有している場合には、大きな問題は生じない。なお動作指令により、1軸だけの制御が指定されているときには、その1軸を制御する中央演算処理装置が成功応答指令を出力する。これは1軸だけの場合には、中央演算処理装置CPU1が代表して上位コントローラ3に成功応答信号を送信するメリットがないためである。
【0021】
なお本実施の形態では、中央演算処理装置CPU1〜CPU4が一枚の基板に実装されて1つのベースドライバD1を構成している。このベースドライバD1により、8台のステッピングモータM1乃至M8を駆動する。またこの例では中央演算処理装置CPU5及びCPU6が別の基板に実装されて第1の増設ドライバD2を構成しており、中央演算処理装置CPU7及びCPU8が別の基板に実装されて第2の増設ドライバD3を構成しており、中央演算処理装置CPU9及びCPU10が別の基板に実装されて第3の増設ドライバD4を構成している。本実施の形態では、これら第1乃至第3の増設ドライバD2乃至D4を用いて最大20軸までの多軸駆動用ドライバ1として利用できる。多軸駆動用ドライバ1には、RS−485通信の1つのスレーブアドレス番号が付与される。したがってスレーブアドレス番号を節約することができる。また本実施の形態では、1つのスレーブ局(多軸駆動用ドライバ1)内で20本の軸を制御するコントロールユニットCU1〜CU10の中央演算処理装置CPU1〜CPU10に対して指令を行うために、2軸のためのドライブ回路(図示せず)に与える駆動信号を1つの中央演算処理装置で処理する。またRS−485通信により、上位コントローラ3から送信される動作指令では、並列接続された中央演算処理装置CPU1〜CPU10のそれぞれに対して与える信号をシリアル通信で並列接続している。すなわち並列接続された中央演算処理装置CPU1〜CPU10に、同時に動作信号が入力されたときに、各中央演算処理装置が同時に信号を受信できるように、各中央演算処理装置への動作指令がシリアルにつながっている。よって本実施の形態では、このように並列処理を行うことで信号処理の効率化を図っている。
【0022】
コントロールユニットCU1〜CU10の中央演算処理装置CPU1〜CPU10は、それぞれ独立して動作する。そのためにRS−485通信のスレーブ局アドレスの他に、中央演算処理装置CPU1〜CPU10毎にアドレス番号を割り振って、内部アドレスとしている。
【0023】
本実施の形態では、図2のステップST4に示すように、上位コントローラ3から動作指令が送信されると、ステップST4において1軸のみの指定か、全軸の指定かが各中央演算処理装置CPU1〜CPU10において判定される。1軸(1つのモータ)のみについての動作指令が送信されてきたときには、ステップST5へと進んで、受信した中央演算処理装置が担当する軸があるか否か(中央演算処理装置が制御する軸を有しているか否か)が判定される。その中央演算処理装置に担当軸(制御を担当するモータ)が設定されていなければ、ステップST9へと進んで受信データがクリアされる。そしてステップST5でその中央演算処理装置に担当軸(担当モータ)がある場合には、ステップST6へと進んで、動作指令によって指定されている軸(モータ)が有効か否か(制御する軸があるか否か)が判定され、有効でなければステップST9へと進み、有効であればステップST7へと進んでその動作指令(コマンド)が実行される。そして次にステップST8へと進んで、その中央演算処理装置が成功応答信号を作成して上位コントローラ3へ成功応答信号を送信する。最後に、各中央演算処理装置は、ステップST9で受信データをクリアする。
【0024】
また上位コントローラ3から複数軸についての動作指令(図2の例では全軸を指定する動作指令)が送信されたときには、各中央演算処理装置CPU1〜CPU10はそれぞれ動作指令の中に全軸指定が入っているかをステップST4で判定されると、ステップST10へと進む。動作指令に中央演算処理装置CPU1のアドレス番号が含まれている場合には、ステップST11へと進んで、動作指令によって指定される軸(モータM1またはM2)が有効か(動作可能か)が判定され、動作可能であればステップST12で動作指令が実行される。その後ステップST8で中央演算処理装置CPU1が成功応答信号を作成して上位コントローラ3へ成功応答信号を送信する。この場合、ステップST8では、その他の中央演算処理装置が動作指令を実行しても、その他の中央演算処理装置から成功応答信号を上位コントローラ3に送信することは行われない。
【0025】
ステップST10で動作指令に中央演算処理装置CPU1のアドレス番号が含まれていない場合には、ステップST14へと進む。そしてステップST14では、動作指令に含まれている中央演算処理装置のアドレス番号を確認し、そのアドレス番号に対応する中央演算処理装置が担当する軸(モータ)のうち動作指令によって指定されている軸があるか否か(有効か否か)の確認が中央演算処理装置CPU2〜10によってなされる。指定されている複数の軸が有効であればステップST15で動作指令(コマンド)が実行される。ステップST15で動作指令が実行されるとステップST9へと進み、中央演算処理装置CPU1以外の中央演算処理装置では受信データ(成功応答信号)は作成されずクリアされる。この場合でも、同時に動作指令を受信している中央演算処理装置CPU1は、ステップST11で中央演算処理装置CPU1が制御する軸が無効と判定されても、ステップST13で他の中央演算処理装置が制御する軸が1つ以上あることを確認した場合には、ステップST8へと進み、中央演算処理装置CPU1は成功応答信号を出力する。すなわち、中央演算処理装置CPU1は他の中央演算処理装置と直前まで同じ実行ルーチンを通り、他の中央演算処理装置が制御する軸があり、接続状態と動作状態が正常であることを確認し、他の軸の動作が実行可能であると仮定して成功応答を出力する。従来のように、RS−485通信で各軸に対して全軸の動作開始指令を行った場合、通信が各コントロールユニットで順次処理されていくため、通信速度によって各軸の動作開始タイミングにズレが生じる。しかしながら本実施の形態のように、全てのコントロールユニットを並列接続してすべてのコントロールユニットに同時に動作指令を与えるようにし、各コントロールユニットで同時に処理を実行できるようにすると、1制御周期以内(62.5μsec)以内の遅れで、各軸の動作を開始することが可能となる。ステップST8では、中央演算処理装置CPU1は他の中央演算処理装置CPU2〜10の接続状態と正常に動作しているかの判断を、中央演算処理装置CPU1に対して他の中央演算処理装置CPU2〜10から入力される状態信号(入力信号)で確認し、成功応答信号を上位コントローラ3に送信する。すなわち、成功応答信号は、確認装置として機能する1台の中央演算処理装置CPU1が他の中央演算処理装置を代表して上位コントローラ3に送信する。
【0026】
上記の実施の形態では、接続状態を設定するコマンドを送信した場合でも、各軸の状態を把握している中央演算処理CPU1が応答を返す。また本実施の形態では、接続状態を設定するコマンドにより、各軸に対して、軸の「有り」、「無し」(モータに駆動する軸が接続されているか否か)を指定することもできるようになっている。なお「無し」の指定を受けた軸に対応する中央演算処理装置は、いずれの場合であっても通信の応答を返しないものとしている。さらに増設ドライバD2,D3及びD4は、前述のようにベースドライバD1から切り離すことができる。そして増設ドライバが切り離されると、当然にして増設ドライバは無応答となる。
【0027】
このように本実施の形態では、上位コントローラ3には、いずれにしても1つの成功応答信号だけが返信される。このようにすると各軸の制御応答時間を従来よりも短くすることができて、しかも上位コントローラとの間の通信速度を速めることができる。また信号の衝突が発生する可能性が低くなって、信号処理が早くなる。なお本実施の形態の多軸駆動用ドライバを使用する場合には、上位コントローラ3は1つの成功応答信号が返信されてきたことを成功と判断して、次の処理を実行するように構成されている。
【0028】
上記実施の形態では、上位コントローラ3は、1軸指定かまたは全軸指定になるように動作指令を出力している。これは判定を簡単にするためである。しかしながら全軸指定ではない複数軸指定であってもよいのは勿論である。その場合には、ステップST4で複数軸指定の場合には、ステップST10へ進むようにすればよい。
【0029】
図4(A)乃至(C)は、本実施の形態の多軸駆動用ドライバをハードウエア化した場合の装置の平面図、正面図及び右側面図である。これらの図において、基板SB上にはベースドライバD1と増設ドライバD2,D3及びD4が実装されている。増設ドライバD2,D3及びD4は任意に増設可能なものであり(装着・脱着が可能なものであり)、基本はベースドライバD1を備えた構成である。このように1枚の基板SB上に増設ドライバD2,D3及びD4を増設可能に設けるようにすると、設計の自由度が高くなり、汎用性が増す利点が得られる。
【0030】
上記実施の形態では、1台の中央演算処理装置に対して、2台のドライバ回路(2台のステッピングモータ)を設けえている。しかし何台のドライバ回路を1台の中央演算処理装置で対象とするかは、中央演算処理装置の演算速度に応じて任意に定めることができる。
【0031】
上記の実施の形態によれば、中央演算処理装置CPU1でその他の中央演算処理装置CPU2乃至CPU8の接続状態が判断できるため、上位コントローラ3から多軸駆動用ドライバ内の接続状態や、各軸の有り、無し(コントローラユニット、モータの有無)を1命令で設定したり、判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態の多軸駆動用ドライバの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の実施の形態を実現する場合に用いられるソフトウエアのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】コントローラユニット相互を接続する通信回路の関係を示す図である。
【図4】(A)乃至(C)は、本実施の形態の多軸駆動用ドライバをハードウエア化した場合の装置の平面図、正面図及び右側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 多軸駆動用ドライバ
2 スレーブ局内通信回路
3 上位コントローラ
5 バス
CU1〜CU10 コントロールユニット
CPU1〜CPU10 中央演算処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(nは4以上の正の整数)本の軸を個別に駆動制御するn台のステッピングモータをそれぞれ個別に制御するためのn台のドライブ回路のうちの1台以上の前記ドライバ回路と、通信機能を有し且つ前記1台以上のドライブ回路に駆動信号を与える中央演算処理装置とを備え、マスター局となる上位コントローラからシリアル通信により送信されてくる動作指令を受信すると、該動作指令に基づいて状態確認処理及びドライブ処理を実行し、前記動作指令に応じた成功応答を報知する成功応答信号を生成するm(n以下の正の整数)台のコントロールユニットと、
前記m台のコントロールユニットのm台の前記中央演算処理装置を並列接続して、m台の前記中央演算処理装置を前記上位コントローラからの動作指令が送信されるバスにシリアル通信可能に接続するスレーブ局内通信回路とを備えて構成されて、前記マスター局に対するスレーブ局となる多軸駆動用ドライバであって、
前記m台の中央演算処理装置は、それぞれ入力された前記動作指令を判定する判定ルーチンとして同じものを有しており、
前記スレーブ局内通信回路は、前記上位コントローラと前記m台のコントロールユニットの前記m台の中央演算処理装置との間での送受信を可能にするように構成されており、
前記m台の中央演算処理装置のうち予め定めた1台の前記中央演算処理装置が前記他のm−1台の前記中央演算処理装置が制御する軸の有無を確認する確認装置と定められ、
前記上位コントローラから1軸のみについての前記動作指令が送信されてきたときには、前記1軸を制御する1台の前記中央演算処理装置が前記成功応答信号を前記上位コントローラに送信し、
前記上位コントローラから複数軸についての動作指令が送信されてきたときには、前記確認装置として機能する前記1台の前記中央演算処理装置が他の前記中央演算処理装置が制御する軸があることを確認することを条件として他の前記中央演算処理装置を代表して前記成功応答信号を前記上位コントローラに送信することを特徴とする多軸駆動用ドライバ。
【請求項2】
前記複数軸についての動作指令に前記確認装置として機能する前記1台の前記中央演算処理装置への指令が含まれているときには、該1台の中央演算処理装置が前記成功応答信号を前記上位コントローラに送信し、
前記複数軸についての動作指令に前記確認装置として機能する前記1台の中央演算処理装置への指令が含まれていないときには、前記他の中央演算処理装置のいずれか1台でも制御する軸があることを前記1台の中央演算処理装置が確認してから前記成功応答信号を前記上位コントローラに送信することを特徴とする請求項1に記載の多軸駆動用ドライバ。
【請求項3】
1台の前記中央演算処理装置が2台の前記ドライバ回路に前記駆動信号をそれぞれ与えるように構成されている請求項1に記載の多軸駆動用ドライバ。
【請求項4】
前記スレーブ局内通信回路は、1台以上の新たなコントロールユニットが後から接続可能に構成されている請求項1に記載の多軸駆動用ドライバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−72028(P2009−72028A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239998(P2007−239998)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000180025)山洋電気株式会社 (170)
【Fターム(参考)】