説明

多重化FRET解析により試料中の検体を検出する方法及びキット

本発明は、多重化FRET(Forster Resonance Energy Transfer)解析により試料中の検体を検出するための方法に関し、この方法は、エネルギー移動ドナー、スペクトル的に異なる複数の量子ドット種、及び検体を含む試料を提供するステップであって、上記検体は、上記エネルギー移動ドナーと第1の量子ドット種とにより提供される第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を仲介するように構成されており、上記エネルギー移動ドナーは、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動ドナーとして作用するように構成されており、かつ、上記第1の量子ドット種は、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動アクセプターとして作用するように構成されている、ステップと、上記試料に対し励起光源から励起光を照射するステップと、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記励起光により励起された上記エネルギー移動ドナーから上記第1の量子ドット種へと励起エネルギーが移動するステップであって、当該エネルギー移動が上記検体によって仲介されるステップと、上記励起エネルギーを受け取った後に上記第1の量子ドット種により放射された発光を検出するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、多重化FRET(Forster Resonance Energy Transfer)解析により試料中の検体を検出する方法、及び多重化FRET解析において1つ以上の検体を検出するキットに関する。
【0002】
〔本発明の背景〕
FRET(Forster Resonance Energy Transfer)の理論は、励起されたドナー(D)からアクセプター分子(A)への1/r距離依存的な、非発光のエネルギー移動を規定する。容易に利用できる分光学的データと理論上の式との間の関係は、テオドール・フェルスター(Theodor Forster)の成果であり、したがって全ての種類の自然科学における多様なFRETの適用の可能性を可能にする。FRETの理論の詳細は周知である。
【0003】
広く適応したFRET適用の分光学的性質の本質は、いわゆるフェルスター半径(Forster Radius)R、つまりエネルギー移動が50%効率のときのDとAとの間の距離である。Rは、ドナー発光及びアクセプター吸収のスペクトルデータから計算することができ、これらは両方とも測定が容易である。これは主に、ドナーの発光スペクトル及びアクセプターの吸収スペクトルの重複、ならびにドナーの発光量子収量(吸収された光量子に対する発光された光量子の割合)に依存する。Rが大きいほど、距離が固定されている場合にはFRETがより効率的であり、FRET効率が固定されている場合にはD−A距離が大きい。
【0004】
FRETは、1〜10nmのスケールにおいて生化学的用途に使用されている(K. E. Sapsford et al., Angew. Chem. Int. Ed., 45, 4562, 2006)(例えばタンパク質−タンパク質結合、タンパク質折り畳み、細胞膜における分子間相互作用及び細胞膜内の分子間相互作用、DNAハイブリダイゼーション及びシークエンシング、抗原及び抗体の免疫反応)。このようなFRET測定の結果は、約1〜20nmの距離又は特定の物質の濃度である。FRETは、無数のDs及びAsを含む溶液中の時間分解発光技術によって解析し得るため、このナノスケールの方法が巨視的な分野のために利用可能となり得る。さらに、共焦点顕微鏡技術は、全体にわたって平均化するよりむしろパラメータ分布を測定するために、単一分子レベルでFRETを解析することができる。
【0005】
これまでは、一般に使用されるD−Aの組におけるR値は、6nmよりも大きくなることはめったにない(273個のFRETの組のうち、6〜7nmのRを有するのはたった4つである(B. W. Van der Meer et al., Resoncance Energy Transfer: Theory and Data, Wiley-VCH, New York))。生化学的なFRET適用においてドナーとしてのランタニド複合体(LCs)及びアクセプターとしての量子ドットを組み合わせた場合、10nmより大きいフェルスター半径が見られる。このように、通常の限界である10nmを破ることは可能である。LCsに関してはFRETは比較的よく理解されている(P. R. Selvin, Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct., 31, 275, 2002)が、QDに基づくFRET(特にAsとしてのQDsについて)については深く理解されていない。
【0006】
量子ドット(QDs)は、よく特徴づけられかつ確立された、独特の光学的性質及び光物理学的性質を有するナノ粒子(特にCdSe/ZnSコア/シェルドット)である。QDsは、より大きなバンドギャップの半導体からなる保護シェルによってたいてい被覆されているナノメートルサイズの半導体材料のコア、ならびに水溶解性及び生体適合性のための外部の被覆シェルによって構成される。半導体材料であること、及びナノ結晶サイズであることによって(I. L. Medintz et al., Nat. Mater., 4, 435, 2005)、その吸収及び発光特性は、UVから近赤外までのほとんど全てのスペクトル領域に対応することができる。QDsは、極めて大きい1つ及び2つの光量子吸収断面、励起及び発光の間のスペクトルの大きな乖離の可能性、ならびに狭い発光バンドを表す。QDsはまた、商業的に入手可能である(例えばInvitrogen, Evident Technologies)。
【0007】
QDsは、しばしば高い発光量子収量を表し、また有機色素よりも光退色に対しずっと耐性である(X. Y. Wu, Nat. Biotechnol. 2003, 21, 41)。さらに、多くのDs又はAsは、単一のQDの大きな表面に付着し得るため、全体の効率が増加する複数分子のFRETを可能にする。
【0008】
QDsは、Dsとしての一般的な有機フルオロフォアと組み合わされる場合には、おそらくこれらのフルオロフォアの寿命の短い励起状態(ns)により、効率的なAsであることはない(A. R. Clapp et al., J. Am. Chem. Soc., 127 1242, 2005)。これらの結果とは反対に、最近の文献において、Zhaoらは、FITC(FITC:fluorescein isothiocyanate)からCdSe/ZnSコア/シェルQDsへのFRETについて主張した(J. H. Wang et al., Colloids Surf. A, 302, 168, 2007)。あいにく、このFRETを確認するための入手可能な分光学的データはほとんどない(定常状態のスペクトルのみ)ため、これが本当にFRETであるかは非常に不確かである。他の寄稿では、QDsをDsとしてもAsとしても取り扱う(例えばY. B. Li et al., Luminescence, 22, 60, 2007)。しかしながら、寿命の短い励起状態という欠点は、通常非常に寿命が長い発光(最大msまで)を有するLCsをDsとして用いることにより克服され得る。生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を取り扱う適用の他に、QDsへのエネルギー移動における効率的な可能性は、DsとしてLCsの使用によって生じると考えられた(a)L. J. Charbonniere et al., J. Am. Chem. Soc., 128, 12800,b)2006, N. Hildebrandt et al., Angew. Chem. Int. Ed., 44, 7612, 2005,c)N. Hildebrandt et al., J. Biomed. Biotechnol., Article ID 79169, 6 pages, 2007,d)H. Harma et al., Anal Chim. Acta, 604, 177, 2008;e)N. Hildebrandt, Dissertation Thesis, University of Potsdam (Potsdam), 2006;f)N. Hildebrandt et al., Curr. Chem. Biol., 1, 167, 2007.)。
【0009】
QDsから、及びQDsへ(Ds及びAsとして使用する)のエネルギー移動の詳細な調査によるFRETプロセスの深い理解は、これまで得られていない。これは、LCsからQDsへのエネルギー移動が本当にフェルスター型エネルギー移動かどうかがまだ明らかになっていないことを意味する。別の不確定要素は、サイズ及び安定性に関する。QDの周りに大きい保護シェルがあると、安定性が高いが、DとAとの間の距離が長くなってしまう(FRET効率が低くなる)という結果になる。保護シェルを除けば、D−A距離が短くなるが、安定性が低くなる。さらに、保護シェルは、発光量子収量に影響を及ぼすため、FRETシステム内で1つのQDから別のものに変化した場合には、別の不確定要素を導く。
【0010】
FRETは、多重化解析によく使用されている。用語「多重化」は、全く同一の試料内の複数のパラメータの測定、例えば1人の患者の血液/血清/血漿試料内での複数の腫瘍マーカーの同時検出、を表す。これまで、QDsを用いた光学的な多重化FRET測定は、QDsをFRETドナーとして使用することによってのみ達成されている。最近の研究(A. R. Clapp et al., J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 18212)において、多重化FRETシステムの枠組みの中でのQDsの使用を解析するために一連の実験が計画された。2つのエネルギーアクセプター(蛍光性Cy3及び非蛍光性GSY−7)とともに単一のQDドナーを使用することにより、ならびにCy3又はGSY−7とともに最大4つの一組のQDドナー(それぞれ510,555,570,及び590nmにて発光する)を使用することにより、彼らは多重化システムを厳密に定量化し、かつ解析した。
【0011】
それぞれ605nm及び655nmにて発光する2つの異なるQDsが、ビオチン(QDsの表面に付着された)のストレプトアビジン(LCsで標識された)への結合という、同一のバイオアッセイ様式の中で、同一のLCドナーとともに使用され得ることもまた示された。これらの結果は、分離された試料において達成された。これは、バイオアッセイにおいて2つの異なるQDsがFRETアクセプターとして使用され得ることの証明を提供する。
【0012】
〔本発明の概要〕
本発明の目的は、多重化FRET(Forster Resonance Energy Transfer)解析により試料中の検体を検出する改良された方法、及び多重化FRET解析において1つ以上の検体を光学的に検出するキットを提供することである。
【0013】
本発明によれば、請求項1で明示されたFRET解析による試料中の検体の光学的な検出のための方法、及び請求項13で明示されたキットが提供される。本発明における有利な改良は、従属請求項において提供される。
【0014】
本発明の一態様によれば、多重化FRET(Forster Resonance Energy Transfer)解析により試料中の検体を検出する方法が提供され、この方法は、以下のステップを含む:
エネルギー移動ドナー、スペクトル的に異なる複数の量子ドット種、及び検体を含む試料を提供するステップであって、
上記検体は、上記エネルギー移動ドナーと第1の量子ドット種とにより提供される第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を仲介するように構成されており、
上記エネルギー移動ドナーは、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動ドナーとして作用するように構成されており、かつ、
上記第1の量子ドット種は、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動アクセプターとして作用するように構成されている、ステップと、
上記試料に対し励起光源から励起光を照射するステップ、
上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記励起光により励起された上記エネルギー移動ドナーから上記第1の量子ドット種へと励起エネルギーが移動するステップであって、当該エネルギー移動が上記検体によって仲介されるステップ、ならびに、
上記第1の量子ドット種が上記励起エネルギーを受け取った後に放射した発光を検出するステップ。
【0015】
本発明の別の態様によれば、特に先行する請求項に記載の方法に使用するための、多重化FRET解析において1つ以上の検体を検出するためのキットが提供される。このキットは、スペクトル的に異なる複数の量子ドット種及び少なくとも1つのエネルギー移動ドナーを含む。上記スペクトル的に異なる複数の量子ドット種及び上記少なくとも1つのエネルギー移動ドナーは、1つ以上の検体を含む試料中に1つ以上のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組を提供するように構成されている。また、上記1つ以上のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記少なくとも1つのエネルギードナーの光励起により、上記1つ以上の検体によってエネルギー移動が仲介される。
【0016】
発光の検出は、定常状態及び時間分解測定の少なくとも1つによって行なわれ得る。
【0017】
本発明は、特に生物学的及び生化学的用途について、検体を検出するための全く同一の試料(多重化)中で1つ以上の量子ドット(QD)をエネルギー移動(ET)アクセプターとして使用することを提供する。1つの試料において種々の検体を測定することは、経済上の理由により特に好ましく、経済上の理由とは、短時間、小スペース、試料の準備量の減少、試料の構成量の減少などであり、これら全てが時間とお金の節約につながる。注意点及び高処理量スクリーニングなどの重要な分野は、本発明から顕著に利益を得ることができる。
【0018】
一実施形態において、長時間発光寿命であるランタニド複合体(LCs)がETドナーとして使用される。他の分子又は粒子もまたETドナーになり得る。同時にいくつかの異なるQDs、例えば最大5個又はそれ以上の異なるQDs、が1つの試料中に提供される。
【0019】
本発明は、分光法及び顕微鏡法においてあらゆる種類の測定のために使用され得、好ましくは約1nm〜20nmの距離のエネルギー移動が働く場合に使用され得る。定量的測定は、例えばイムノアッセイであってもよい。イムノアッセイは、ドナー及びアクセプターが異なる抗体、アプタマー、抗原もしくはタンパク質に標識され、かつマーカータンパク質、例えば腫瘍マーカー、の濃度(定量的シグナル)が測定されるべきものである。定性的測定は、例えばタンパク質折り畳みにおける、RNAもしくはDNAベースの複合体における、又は細胞ベースの測定、例えば細胞内のシグナル伝達の研究、における、距離の測定であってもよい。1nm〜20nmの範囲での、このETの距離の測定は、「分光学的ルーラー」といわれることもある。
【0020】
一実施形態において、この方法はさらに以下のステップを含む:
上記検体と異なるさらなる検体を含む試料を提供するステップであって、
上記さらなる検体は、上記エネルギー移動ドナーと、上記第1の量子ドット種とは異なる第2の量子ドット種とにより提供される第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を仲介するように構成されており、
上記エネルギー移動ドナーは、上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動ドナーとして作用するように構成されており、かつ、
上記第2の量子ドット種は、上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動アクセプターとして作用するように構成されている、ステップ、
上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記励起光により励起された上記エネルギー移動ドナーから上記第2の量子ドット種へと励起エネルギーが移動するステップであって、当該エネルギー移動が上記さらなる検体によって仲介されるステップ、ならびに、
上記第2の量子ドット種が上記励起エネルギーを受け取った後に放射した発光を検出するステップであって、当該第2の量子ドット種により放射された発光が、上記第1の量子ドット種により放射される発光とはスペクトル的に相違するステップ。
【0021】
さらなる実施形態において、この方法は、以下のステップをさらに含む:
上記エネルギー移動ドナーとは異なるさらなるエネルギー移動ドナーを含む試料を提供するステップであって、
上記検体は、上記さらなるエネルギー移動ドナーと、上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種、及び第3の量子ドット種のいずれかとにより提供されるさらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を仲介するように構成されており、
上記さらなるエネルギー移動ドナーは、上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動ドナーとして作用するように構成されており、かつ、
上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種又は上記第3の量子ドット種は、上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動アクセプターとして作用するように構成されている、ステップ、
上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記励起光により励起された上記さらなるエネルギー移動ドナーから上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種及び上記第3の量子ドット種のいずれかへと励起エネルギーが移動するステップであって、当該エネルギー移動が上記検体によって仲介されるステップ、ならびに、
上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種及び上記第3の量子ドット種のいずれかが上記励起エネルギーを受け取った後に放射した発光を検出するステップであって、当該発光が、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第1の量子ドット種により放射される発光、及び上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第2の量子ドット種により放出される発光とはスペクトル的に相違するステップ。
第3の量子ドット種は、第1及び第2の量子ドット種とは相違する。
【0022】
さらなる実施形態において、この方法は、以下のうちの少なくとも2つを同時に検出するステップをさらに含む:上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第1の量子ドット種により放射される発光;上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第2の量子ドット種により放射される発光;及び上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種及び上記第3の量子ドット種のいずれかにより放射される発光。
【0023】
また、さらなる実施形態では、この方法は、少なくとも3つの異なる検体を含む試料を提供するステップをさらに含み、これらの検体のそれぞれが、上記試料中のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を選択的に仲介するように構成されている。
【0024】
別の実施形態において、この方法は、検出された発光から構造上の情報を引き出すステップをさらに含む。
【0025】
さらなる実施形態において、上記構造上の情報を引き出すステップは、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組、上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組、及び上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組のうちの少なくとも1つにおける励起エネルギー移動のためのエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップを含む。
【0026】
また、さらなる実施形態において、上記励起エネルギー移動のためのエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップは、約1nm〜約20nmの間でエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップを含む。
【0027】
さらなる実施形態において、上記励起エネルギー移動のためのエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップは、以下の構造の群から選択される構造においてエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップを含む:DNAもしくはRNA構造、タンパク質折り畳み構造又は細胞構造などの、化学的構造、生化学的構造、及び生物学的構造。
【0028】
さらなる実施形態において、この方法は、検出された上記発光から濃度情報を引き出すステップをさらに含む。
【0029】
別のさらなる実施形態において、この方法は、上記試料を標識試料として提供するステップをさらに含み、上記標識試料において、スペクトル的に異なる複数の量子ドット種が、以下のラベリング種の群から選択される種々のラベリング種に対する標識化に用いられている:抗体、アプタマー、抗原、タンパク質、ホルモン、DNA、RNA、細胞及びウイルスなどの、化学的構造及び生体分子。
【0030】
また、別の実施形態において、この方法は、上記エネルギー移動ドナー及び上記さらなるエネルギー移動ドナーの少なくとも1つにより放射された発光を検出するステップをさらに含む。発光の検出は、定常状態測定及び時間分解測定の少なくとも1つにより行なわれ得る。エネルギー移動ドナー発光の解析は、例えば、さらなる濃度情報及び/又は構造情報を引き出すために、又はエネルギー移動アクセプター発光解析を介して得られる情報を確認するために、使用され得る。エネルギー移動ドナー発光の解析はまた、試料中のばらつき効果、例えば試料中の試料構成物もしくは撹乱物質の濃度ばらつき、又は励起及び検出の設定、例えばバックグラウンド発光を撹乱させる光強度ばらつき、の修正のために使用され得、高い感度、低い検出限界ならびにより高い正確さ及び再現性を得ることができる。
【0031】
〔本発明の好適な実施形態の説明〕
以下に、一例として、種々の実施形態を参照することにより、本発明をさらに詳細に説明する。図面において:
図1は、アクセプターとして量子ドット(QDs)を用いた多重化エネルギー移動(ET)バイオアッセイの原理の概略図を示す。
【0032】
図2は、カラー多重化のための1つのドナー(D)および複数のアクセプター(A1〜AX)で標識された複数の抗体又はアプタマー(1〜X a/b−マーカータンパク質1〜Xに特異的)を用いた同種イミノアッセイの原理の概略図を示す。
【0033】
図3は、ドナー(D)とアクセプター(A)との間の距離が重要な、分光学的ルーラー測定を示す。
【0034】
図4は、タンパク質のストレプトアビジンを量子ドットに結合させるステップの概略図を示す。
【0035】
図5は、Tbランタニド複合体(LC)及び5個のQDsの発光スペクトルを示す。
【0036】
図6は、アクセプターとしてのTb複合体を有するアクセプターとして使用したときの、種々のQDsの分光学的データを示す。
【0037】
図7A〜図7Eは、QDsの別々の発光波長にて測定された5個のQDsの強度割合(100〜1200μsの時間枠内においてQDドナーの強度をTbアクセプターの強度で割ったもの)を示す。
【0038】
図1は、アクセプターとして量子ドット(QDs)を用いた多重化エネルギー移動(ET)バイオアッセイの原理を概略的に示す。この原理は、複数の異なったQDs(n>1)における典型的なものである、QDs数がn=3(三重)の多重化の例を示す。一番上の絵では、3つの異なったQDs(異なった発光波長)が、別々の生体分子(生体分子の数m≧1、ここでは4)B、E及びG(例えば抗体、タンパク質、RNA、DNAなど)で標識されている。これらの生体分子は、他の分子(ここではX、Y及びZ)に結合することができ、他の分子はp≧0の数で構成されてもよい(p=0のとき、BはCに、EはFに、そしてGはHに直接的に結合し得る;p≧1のとき、X、Y及びZは別々の分子の複合体で構成され得る)。
【0039】
生体分子の対応物(ここではC,F及びH)は、発光ETドナー(D)、例えばランタニド複合体(LC)に結合される。これらのドナーは、同一(例えばDが常に同一のLCなど)であってもよいし、異なった種類(例えば異なったLCsなど)であってもよい。異なった分子の複合体(一番上の絵の左、真ん中及び右)が1つの試料中で共に混合されると、これらは中央の絵に示すように互いに結合し得る。この結合によって、ドナー、例えばLCと、アクセプター(QDs)とが約1nm〜約20nmの範囲内に近接するようになり、ドナーが励起した後にET(湾曲した黒い矢印)が生じ得る(下の絵)。このETにより、QDsが励起し、続いて種々のQDsが別々の波長で発光する。
【0040】
ドナー及びアクセプターの発光についての時間分解測定により、ETによって生じる発光と直接励起を通した発光との間の区別がなされる。それぞれの時間分解による(異なる色の)ET発光シグナルは、ドナーとアクセプターとの間の特異的な複合体により生じる。本例では、QD1発光は、複合体BCXの定量的シグナルとこの複合体の長さについての定量的シグナルとを与え、QD2はEYFに関し同様であり、QD3はGZHに関し同様である。したがって、1〜20nmの範囲にわたる距離だけでなく、分子(例えば抗原、タンパク質などの生体分子)の濃度を測定し得る。
【0041】
図2は、カラー多重化のための1つのドナー(D)および複数のアクセプター(A1〜AX)で標識された複数の抗体又はアプタマー(1〜X a/b−マーカータンパク質1〜Xに特異的)を用いた同種イミノアッセイの原理を概略的に示す。タンパク質がないとき(図2の左)、マーカーは、Dのみが、パルス状の光励起後に寿命が長い発光シグナルを表す(D−A距離が長いため、FRETがない)。種々のタンパク質の添加により(図2の右)、特異的な結合が導かれ、同時にA1〜AXからの特異的な(色の)寿命が長い発光シグナルが生じる(D−A距離が短いため、FRETが生じる)。
【0042】
イムノアッセイは、サンドイッチ複合体「Xa−X−Xb」からなる必要はない。Xが直接的にドナー又はアクセプターに標識され、競合的アッセイ(標識されたX及び標識されていないXによる)を行なうこともまた可能であり、またいくつかの適用(例えば、マーカータンパク質が1つの抗体又はアプタマーにのみ結合し得る)にとっては必要である。
【0043】
図3は、ドナー(D)とアクセプター(A)との間の距離が重要な、分光学的ルーラー測定を示す。黒い湾曲した矢印は、FRETを表す。a)FRETシグナルはDとAとの間の距離の指標である。このようにして、タンパク質(黒い曲線)の折り畳み構造内の距離を詳細に調べることができる。さらにDとAとが離れると、シグナルは低くなる。b)細胞内のシグナル伝達は非常に重要である。FRETは、例えばイオンチャネルにおける相互作用を測定するために使用し得る。
【0044】
図4は、タンパク質のストレプトアビジンを量子ドットに結合させるステップを概略的に示す。本実施形態においては約12個のTb LCsで標識されている、タンパク質のストレプトアビジン(sAV)は、溶液中で、ビオチン化された(B)QDsと混合される。強いビオチン−ストレプトアビジン結合は、ドナー−アクセプター複合体を形成させ、TbからQDへのFRETが可能になる。一般的に、1つ以上のTb LCsによる標識が可能である。
【0045】
FRETアクセプターとして使用される量子ドット(QDs)による多重化を実験的に証明するために、表面が約3〜6個のビオチン分子で標識された発光波長525,565,605,655及び705nmを有する5個の異なるQDsを使用した。CdSeTe/ZnS型であるQD705以外の全てのQDsは、コア/シェル構造のまわりにさらにポリマーシェル及び生体適合性シェルを有するCdSe/ZnSコア/シェル型QDsであった。これらのビオチン化QDsを、約12個のTb複合体で標識されたストレプトアビジンと混合した。ビオチンとストレプトアビジンとの強い結合は、Tb−LCs(ドナーとして)及びQDs(アクセプターとして)を近く近接させ(図4を参照)、Tbから異なるQDsへのFRETを可能にする。
【0046】
315nmにてパルス状のUV光で励起した後、Tb及び全てのQDsは、別々のFRETシグナルである、寿命の長い発光を示す。図5は、Tb LC及び5個のQDsの発光スペクトルを示す。全ての発光は、多重化アッセイ中に同時に存在する。発光強度は、全ての発光ピークを統一させるために標準化される。
【0047】
アクセプターとしてのTb複合体を有するアクセプターとして使用したときの、種々のQDsにおける重要な分光学的データが、図6の表に示される。
【0048】
表1では、ビオチン−ストレプトアビジンバイオアッセイにおいてアクセプターとして使用されるQDsと、アクセプターとして使用される1つのTbLCとの距離における、多重化された特徴が示される。FRETデータは、ドナー発光及びアクセプター吸収のスペクトルの重なりと、その結果であるフェルスター半径とを示す。推定のサイズは、供給業者(Invitrogen)により与えられる。Tb(ドナーチャネル)及びそれぞれのQDについて、時間分解発光が解析される。τは、FRET非存在下(τ)及びFRET存在下(τDA)における発光減衰時間である。ηはFRET効率であり、またrはD−A距離を表す。ストレプトアビジンを標識する多くのTb−LCsが存在し、またドットは全てが球状ではなく、楕円体のものもあるため、いくつかの可能な距離が存在する。計算の根拠のため、他の全ての可能な距離を表す2つの平均的な距離が選択された。計算された距離は、推測されるサイズ及び種々のQDsのモデルにとてもよく適合し、主にD−A距離に影響を与えることが理解されるだろう。
【0049】
QDsのフェルスター半径、サイズ及び形状(球状又は楕円体)が非常に異なることが理解され得る。ドナー発光及びアクセプター発光における時間分解解析は、それぞれ、QDサイズが異なることによるDとAとの間の異なる距離が測定され得ることを示す(D−A距離は、QDsのサイズの増加により増加する)。これは、本発明が、多重化アッセイ(多重化された分光光学的ルーラー)において距離を測定し得ることを明確に示す。
【0050】
感度のいい定量的解析を実現するために、小さい容積の1nMのBiot−QDsを1nMのTb−sAvに加え、改良を加えた市販のイムノアナライザー(Cezanne及びBRAHMSのKRYPTOR)において、時間が制限されている寿命の長い発光(0.1〜1.2ms)を測定した。この添加により、結合、ならびにTbからQDsへのFRETと、同時に生じる寿命の長いQD発光との結果を導く。全てのBiot−QDsは、全く同一の試料中でサブ−ピコモル検出限界により検出されることができた。発光シグナルが、ストレプトアビジン−ビオチン結合によるFRETに起因して起こり、溶液中の乱反射に起因したものでないことを示すために、単なるTb−LCを用いてコントロール実験を行なった。
【0051】
図7A〜図7Eは、QDsの別々の発光波長にて測定された5個全てのQDsの強度割合(100〜1200μsの時間枠内においてQDドナーの強度をTbアクセプターの強度で割ったもの)を示す。四角は、ビオチンとストレプトアビジンとの結合、及び同時に生じるTbから別々のQDsへのETによる、相対比(ゼロ濃度にて統一されるよう標準化された)の強い増加を示す。丸は、Tbをストレプトアビジンなしで使用したコントロール実験を示す。割合の増加はここでは見ることができず、これは、バイオアッセイにおいて、ETがビオチンとストレプトアビジンとの結合により可能になることを示す。検出限界(ゼロ濃度にて30回の測定における3重の標準偏差を、増加割合曲線における直線の部分の傾きで割ったもの)は、同一試料において全てサブピコモルであり、これはアクセプターとしてQDsを用いた多重化バイオアッセイの高い感受性を示す。
【0052】
明細書、特許請求の範囲及び図面の少なくとも1つに開示された特徴は、独立して利用される種々の実施形態において、またはこれらの種々の組み合わせにおいて、本発明を実現するための材料であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、アクセプターとして量子ドット(QDs)を用いた多重化エネルギー移動(ET)バイオアッセイの原理の概略図を示す。
【図2】図2は、カラー多重化のための1つのドナー(D)および複数のアクセプター(A1〜AX)で標識された複数の抗体又はアプタマー(1〜X a/b−マーカータンパク質1〜Xに特異的)を用いた同種イミノアッセイの原理の概略図を示す。
【図3】図3は、ドナー(D)とアクセプター(A)との間の距離が重要な、分光学的ルーラー測定を示す。
【図4】図4は、タンパク質のストレプトアビジンを量子ドットに結合させるステップの概略図を示す。
【図5】図5は、Tbランタニド複合体(LC)及び5個のQDsの発光スペクトルを示す。
【図6】図6は、アクセプターとしてのTb複合体を有するアクセプターとして使用したときの、種々のQDsの分光学的データを示す。
【図7A】図7Aは、QDsの別々の発光波長にて測定された5個のQDsの強度割合(100〜1200μsの時間枠内においてQDドナーの強度をTbアクセプターの強度で割ったもの)を示す。
【図7B】図7Bは、QDsの別々の発光波長にて測定された5個のQDsの強度割合(100〜1200μsの時間枠内においてQDドナーの強度をTbアクセプターの強度で割ったもの)を示す。
【図7C】図7Cは、QDsの別々の発光波長にて測定された5個のQDsの強度割合(100〜1200μsの時間枠内においてQDドナーの強度をTbアクセプターの強度で割ったもの)を示す。
【図7D】図7Dは、QDsの別々の発光波長にて測定された5個のQDsの強度割合(100〜1200μsの時間枠内においてQDドナーの強度をTbアクセプターの強度で割ったもの)を示す。
【図7E】図7Eは、QDsの別々の発光波長にて測定された5個のQDsの強度割合(100〜1200μsの時間枠内においてQDドナーの強度をTbアクセプターの強度で割ったもの)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー移動ドナー、スペクトル的に異なる複数の量子ドット種、及び検体を含む試料を提供するステップであって、
上記検体は、上記エネルギー移動ドナーと第1の量子ドット種とにより提供される第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を仲介するように構成されており、
上記エネルギー移動ドナーは、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動ドナーとして作用するように構成されており、かつ、
上記第1の量子ドット種は、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動アクセプターとして作用するように構成されている、ステップと、
上記試料に対し励起光源から励起光を照射するステップと、
上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記励起光により励起された上記エネルギー移動ドナーから上記第1の量子ドット種へと励起エネルギーが移動するステップであって、当該エネルギー移動が上記検体によって仲介されるステップと、
上記第1の量子ドット種が上記励起エネルギーを受け取った後に放射した発光を検出するステップとを含むことを特徴とする、多重化FRET(Forster Resonance Energy Transfer)解析により試料中の検体を検出する方法。
【請求項2】
上記検体と異なるさらなる検体を含む試料を提供するステップであって、
上記さらなる検体は、上記エネルギー移動ドナーと、上記第1の量子ドット種とは異なる第2の量子ドット種とにより提供される第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を仲介するように構成されており、
上記エネルギー移動ドナーは、上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動ドナーとして作用するように構成されており、かつ、
上記第2の量子ドット種は、上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動アクセプターとして作用するように構成されている、ステップと、
上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記励起光により励起された上記エネルギー移動ドナーから上記第2の量子ドット種へと励起エネルギーが移動するステップであって、当該エネルギー移動が上記さらなる検体によって仲介されるステップと、
上記第2の量子ドット種が上記励起エネルギーを受け取った後に放射した発光を検出するステップであって、当該第2の量子ドット種により放射された発光が、上記第1の量子ドット種により放射される発光とはスペクトル的に相違するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記エネルギー移動ドナーとは異なるさらなるエネルギー移動ドナーを含む試料を提供するステップであって、
上記検体は、上記さらなるエネルギー移動ドナーと、上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種、及び第3の量子ドット種のいずれかとにより提供されるさらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を仲介するように構成されており、
上記さらなるエネルギー移動ドナーは、上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動ドナーとして作用するように構成されており、かつ、
上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種又は上記第3の量子ドット種は、上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組においてエネルギー移動アクセプターとして作用するように構成されている、ステップと、
上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記励起光により励起された上記さらなるエネルギー移動ドナーから上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種及び上記第3の量子ドット種のいずれかへと励起エネルギーが移動するステップであって、当該エネルギー移動が上記検体によって仲介されるステップと、
上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種及び上記第3の量子ドット種のいずれかが上記励起エネルギーを受け取った後に放射した発光を検出するステップであって、当該発光が、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第1の量子ドット種により放射される発光、及び上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第2の量子ドット種により放出される発光とはスペクトル的に相違するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
以下のうちの少なくとも2つを同時に検出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法:
上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第1の量子ドット種により放射される発光;
上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第2の量子ドット種により放射される発光;及び
上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において上記第1の量子ドット種、上記第2の量子ドット種及び上記第3の量子ドット種のいずれかにより放射される発光。
【請求項5】
少なくとも3つの異なる検体を含む試料を提供するステップをさらに含み、
上記検体のそれぞれが、上記試料中のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組におけるエネルギー移動を選択的に仲介するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
検出された上記発光から構造上の情報を引き出すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記構造上の情報を引き出すステップは、上記第1のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組、上記第2のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組、及び上記さらなるエネルギー移動ドナー−アクセプターの組のうちの少なくとも1つにおける励起エネルギー移動のためのエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記励起エネルギー移動のためのエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップは、約1nm〜約20nmの間でエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記励起エネルギー移動のためのエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップは、以下の構造の群から選択される構造においてエネルギー移動ドナー−アクセプターの距離を決定するステップを含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法:DNAもしくはRNA構造、タンパク質折り畳み構造又は細胞構造などの、化学的構造、生化学的構造、及び生物学的構造。
【請求項10】
検出された上記発光から濃度情報を引き出すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記試料を標識試料として提供するステップをさらに含み、
上記標識試料において、スペクトル的に異なる複数の量子ドット種が、以下のラベリング種の群から選択される種々のラベリング種に対する標識化に用いられていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法:抗体、アプタマー、抗原、タンパク質、ホルモン、DNA、RNA、細胞及びウイルスなどの、化学的構造及び生体分子。
【請求項12】
上記エネルギー移動ドナー及び上記さらなるエネルギー移動ドナーの少なくとも1つにより放射された発光を検出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
特に請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法に使用するための、多重化FRET解析において1つ以上の検体を検出するためのキットであって、
スペクトル的に異なる複数の量子ドット種及び少なくとも1つのエネルギー移動ドナーを含み、
上記スペクトル的に異なる複数の量子ドット種及び上記少なくとも1つのエネルギー移動ドナーは、1つ以上の検体を含む試料中に1つ以上のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組を提供するように構成されており、かつ、
上記1つ以上のエネルギー移動ドナー−アクセプターの組において、上記少なくとも1つのエネルギードナーの光励起により、上記1つ以上の検体によってエネルギー移動が仲介されることを特徴とするキット。
【請求項14】
上記キットがイムノアッセイ型キットとして提供されることを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項15】
上記キットが距離測定キットとして提供されることを特徴とする請求項12又は13に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【公表番号】特表2012−515905(P2012−515905A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546694(P2011−546694)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000388
【国際公開番号】WO2010/084015
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(506094563)ウニベルジテート ポツダム (4)
【出願人】(511172070)
【氏名又は名称原語表記】CNRS
【住所又は居所原語表記】23 rue due Loess,BP 20,F−67037 Strasbourg France
【出願人】(508058192)
【Fターム(参考)】