説明

多量のH2Sを含有する合成ガスからメタンチオールを合成するための担持Mo−O−K−MexOy触媒

本発明は、H2S含有合成ガスからメタンチオールを合成するための担持触媒Mo−O−K−Mexyの製造法に関する。触媒は、Mo−O−K系種の活性成分、活性促進物質および1または複数の金属−担体で示される支持材を含む。担体は、選択された1または複数の金属が担体の表面上にめっきされるような方法で無電解めっき法によって製造される。遷移金属、特にFe、CoもしくはNiがめっき金属に選択され、一方、SiO2、Al23もしくはTiO2が担体に選択される。このようにして製造される触媒は、H2S含有合成ガスまたは炭素酸化物/水素混合物からのメタンチオールの合成に関して、特に副生成物CO2の形成が少ない点で有効であることが判明している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量のH2Sを含有する合成ガスからメタンチオールを合成するための担持Mo−O−K−Mexy触媒の製造法であって、支持材が、無電解めっき法によって製造される(1つもしくは複数の)金属でめっきされた担体、特に(1つもしくは複数の)金属でめっきされたSiO2である方法に関する。
【0002】
メチオニン、殺虫剤および医薬を製造するために用いられる重要な化学物質として、メタンチオールは、硫化水素のメタノールとの反応によって主に製造される。H2Sの炭素酸化物との反応、特に、H2S含有合成ガスからのメタンチオールの直接合成は、魅力的な代替法である。例えば、EP167,354は、TiO2上に担持された触媒NiOまたはMoO3の存在下での硫化水素の一酸化炭素との反応からの合成経路を開示し;中国特許CN98118186.4およびCN98118187.2は、多量のH2Sを含有する合成ガスからのメタンチオール合成のために使用されるMo−S−K/SiO2触媒を開示し;中国特許出願200310100496.1および200310100495は、メタンチオール合成のために遷移金属酸化物または希土類金属酸化物によって促進されるMo−O−K/SiO2触媒を報告し、ここで、促進物質は、Co、Ni、Fe、Mnの酸化物またはLa、Ceの希土類酸化物から選択され、活性成分Mo−O−K塩基は、前駆体K2MoO4または(NH46Mo724・4H2O+カリウム塩から形成される。これらの触媒は、伝統的な含浸法によって製造された。触媒は、メチルメルカプタンの高い選択性および空時収量を示すが、硫化カルボニル、メタンおよび硫化ジメチルなどの副生成物も生成させる。
【0003】
本発明の目的は、メタンチオールの高い活性および選択性を有するが、CO2の選択性は低い、さらに改善された固体担持Mo−O−K−Mexy触媒を開発することである。
【0004】
本発明の目的は:
a)多孔性担体および金属をこの担体上に無電解めっきすることによってその上に析出された金属Aからなる支持材;
b)Mo−O−K系活性成分;ならびに
c)場合によって、遷移金属酸化物または希土類金属酸化物または希土類金属酸化物の群から選択される活性促進物質Mexy(式中、xおよびyは金属の価数である)を含む触媒である。
【0005】
触媒は、活性成分、場合によって活性促進物質および支持材を含む。前記活性成分はMo−O−K系成分である。前記促進物質は、遷移金属酸化物、または希土類金属酸化物の群から選択される少なくとも1つであり、特に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ランタンおよびセリウムの酸化物を含む群から選択され、Mexy(式中、「Me」は、遷移金属または希土類金属、特にFe、Co、Ni、Mn、LaまたはCeの群から選択される金属を意味する)として表される。
【0006】
前記支持材は、無電解めっき法によって作製される、(1つもしくは複数の)金属でめっきされた担体、特に(1つもしくは複数の)金属−SiO2である。一般に、使用される担体は多孔性であり、SiO2、Al23、TiO2、ゼオライトの群から選択され、特にSiO2である。前記担体上にめっきされる前記(1つもしくは複数の)金属は、Ni、CoもしくはFe、特にNiもしくはCoの群から選択することができる。
【0007】
モリブデン酸カリウムをMo−O−K系成分の前駆体として使用する場合、本発明の触媒は、K2MoO4−Mexy/金属−担体として示され、ここで、触媒成分の重量比は、K2MoO4/Mexy/金属−担体=(1−30)/(0.0−25.0)/(0.1−10.0)−100、好ましくは、(15−20)/(0.0−25.0)/(0.5−8.0)−100であり;
(NH46Mo724・4H2O+1つのカリウム塩またはMoO3+1つのカリウム塩が、Mo−O−K系化合物の前駆体としての働きをする場合、本発明の触媒は、MoO3−K2O−Mexy/金属−担体として表され、ここで、触媒成分の重量比は:
MoO3/K2O/Mexy/金属−担体=(1−30)/(1−20)/(0.0−25.0)/(0.1−10.0)−100、好ましくは、(15−20)/(10−15)/(0.0−25.0)/(0.5−8.0)−100であり;前記カリウム化合物は、K2CO3、KOH、KNO3およびCH3COOKを含む群から選択される少なくとも1つである。
【0008】
化学的金属めっき法を使用して、前記1または複数の金属−担体を製造する。選択された1または複数の金属を選択された担体上にめっきし、ここで、(1つもしくは複数の)金属/担体の重量比は、(0.1−10.0)/100、好ましくは、(0.5−8.0)/100である。
【0009】
本発明は、多段階含浸による前記触媒の製造法にも関する。
【0010】
活性成分を支持材全体にわたってより均等に分布させるために、少なくとも1つのキレート試薬を含浸プロセスにおいて使用すべきである。
【0011】
前記キレート試薬または配位試薬は、クエン酸、クエン酸アンモニウム、L−グルタミン酸、酒石酸およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む群から選択される少なくとも1つであり;添加されるキレート剤の量は、対応して、支持材の重量の0.1〜0.6倍、さらに好ましくは、支持材の重量の0.3〜0.6倍である。好適な量のアンモニアを添加して、浸漬液のpH値を7.0〜13.0、好ましくは8.0〜12.0に調節する。
【0012】
金属を化学めっきすることによる担体の活性化は次のように進行する(好適な方法として示す):
(1)金属めっき溶液の製造:
所与の量の選択された可溶性金属塩および所与の量の配位剤を所与の量の蒸留水中に連続して溶解させて、金属イオンの濃度が1g/l〜20g/l、好ましくは、5〜7g/lの幅があり;配位剤が少なくとも、Na3657・2H2O、C687・H2O、C282もしくはNaKC446・4H2Oから選択される少なくとも1つであり、配位剤の濃度が1g/l〜20g/lの幅がある、金属めっき溶液を製造する。10分間撹拌を続け、次いで所与の量の安定剤(NH42SO4もしくはNa3657・2H2Oを連続して上述の得られためっき溶液に添加し、続いてさらに20分間撹拌し、続いてNH3・H2Oをいくらか添加して、めっき溶液のpHを7.0〜13.0、好ましくは、8.0〜12.0に調節し;最後に、好適な量の蒸留水を添加して、めっき溶液中の選択された金属塩の濃度が1g/l〜20g/l、好ましくは、5〜7g/lの幅があるように溶液の容量を調節する。
(2)担体の前処理:
担体上に金属をめっきする前に、担体を好ましくは以下のプロセスによって前処理する:
a)担体を蒸留水で洗浄し、次いで乾燥し、続いて清浄な担体を4.5モル/lのH2SO4+0.88モル/lのH22(1:1)の溶液中に撹拌下で5分間浸漬し、続いて蒸留水で3回洗浄する;
b)清浄化された担体を活性化剤の水溶液中に撹拌下で浸漬し、前記活性化剤は、好ましくは、PdCl2/HClであり、活性化剤の濃度は、0.05g/l〜1.0g/l、好ましくは、0.1g/l〜0.5g/lの幅があり;超音波による撹拌を、例えば30〜35分間続け、次いで蒸留水で3回洗浄する;
c)活性化担体を還元剤の水溶液中に撹拌下で浸漬し;還元剤は、好ましくは、NaH2PO4もしくはNaBH4であり;還元剤の濃度は、20g/l〜30g/lの幅がある;
(3)金属の担体上へのめっきは、ステップ(2)で製造された、前処理された担体を、選択された金属のめっき溶液中に40〜85℃で30〜40分間入れることによって実施する。金属でめっきされた担体を蒸留水で、例えば3回洗浄し、次いで110℃で約6時間乾燥する。金属でめっきされた担体を支持材、例えば支持材Ni−SiO2もしくはCo−SiO2と称する。
【0013】
支持材の活性成分での含浸(好適な方法として示す)
(1)所与の量の前記前駆体K2MoO4もしくは(NH46Mo724+カリウム塩またはMoO3+可溶性カリウム化合物および好適な量のキレート剤を蒸留水中に溶解させて、含浸溶液を生成させ;次いでこれに好適な量のNH3・H2Oを滴下して、含浸溶液のpHを8〜12、好ましくは、8〜10に調節し;次いで担体活性化のステップ(3)で製造された、金属めっきされた担体(30〜45メッシュ)を含浸溶液中に、室温で12時間漬け、次いで120℃で5時間乾燥させて、所望の担持されたMo−O−K触媒を製造する。
【0014】
(2)別法として、所与の量の前記前駆体K2MoO4もしくは(NH46Mo724+可溶性カリウム化合物またはMoO3+カリウム塩を蒸留水中に溶解させ、次いで好適な量のNH3・H2Oを溶液中に滴下して、前駆体を蒸留水中に完全に溶解させて、活性成分のみを含有する含浸溶液を生成させる。
【0015】
好適な場合、所与の量の選択された可溶性遷移金属塩もしくは希土類金属塩、特にその硫酸塩、硝酸塩もしくは酢酸塩、および好適な量のキレート剤を前記溶液に添加し、これに、好適な量のNH3・H2Oを次いで滴下して、含浸溶液のpHを8〜12、好ましくは、8〜10に調節し;最後に、担体活性化のステップ(3)で製造された1または複数の金属でめっきされた担体(30〜45メッシュ)を含浸溶液中に室温で12時間漬け、次いで濾過し、110℃で6時間乾燥して、所望の担持されたMo−O−K−Mexy触媒を製造した。
【0016】
前記触媒を、多量のH2Sを含有する合成ガスからメタンチオールを製造する方法に使用する。反応条件は、最新技術から既知である。
【0017】
触媒を使用前8〜10時間硫化するべきである。
【0018】
本発明の触媒の反応性評価を、固定床管状リアクターにおいて、1パスあたり0.5mlの触媒を使用して実施した。反応条件は、好ましくは、CO/H2/H2S=1/1/2、250〜350℃、約0.05〜0.3MPaおよびGHSV=500〜3000h-1である。生成物をGCによって分析した。全てのデータは、定常状態に達した後に取得した。
【0019】
分析結果は、本発明の触媒が、多量のH2Sを含有する合成ガスからのメタンチール合成に関して高い触媒活性を有するだけでなく、メタンチオールの高い選択性も有するが、CO2の選択性は低いことを示す。
【0020】
以下の実施例で本発明をさらに説明する。
【0021】
実施例1(無電解めっき)
(1)2.0gのNiSO4・7H2Oおよび2.0gのNa3657・2H2Oを50mlの蒸留水中に連続して溶解させて、めっき溶液を調製し、撹拌を10分間続け、次いで3.0gの(NH42SO4および3.0gのNaH2PO4・H2Oを上述の得られた溶液に次々に添加し、さらに20分間撹拌し、続いてNH3・H2Oをいくらか添加して、溶液のpHを9.0に調節し;最後に、蒸留水を添加して、めっき溶液中のNiSO4濃度が20g/lになるように、溶液の容量を100mlに調節した;
(2)10gの清浄なSiO2を、4.5モル/lのH2SO4+0.88モル/lのH22(1:1)溶液20ml中に、撹拌下5分間浸漬し、次いで蒸留水で3回洗浄し;続いて担体SiO2を0.1g/lのPdCl2/HCl溶液20ml中に、超音波による撹拌を30分間維持しながら浸漬し、次いで蒸留水で3回洗浄し;次のステップは、活性化担体SiO2を30g/lのNaH2PO4溶液10ml中に浸漬し、同時に10秒間撹拌し、縮小した実験ステップを再度繰り返して、活性化担体を形成することであった。
(3)無電解めっきプロセスは、活性化担体SiO2をステップ(2)で調製しためっき溶液中に約40℃で30分間浸漬することによって実施した。めっき後、NiでめっきされたSiO2を蒸留水で3回洗浄し、383Kで4時間乾燥した。このようにして調製された支持材の担体に対する金属の重量比は、Ni−SiO2=4.4−100であった。
(4)0.45gのK2MoO4および3.0gの酒石酸を6mlの蒸留水中に溶解させて、含浸溶液を生成させ、これに0.8mlのNH3・H2Oを滴下して、含浸溶液のpHを9に調節した。次いで、3gのステップ(3)で調製された支持材Ni−SiO2(30〜45メッシュ)を含浸溶液中、室温で12時間浸漬し、次いで110℃で5時間乾燥させた。触媒の各成分の重量比は、K2MoO4/Ni−SiO2=15/(4.4−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果を第1表に示す。
【0022】
実施例2、3、4
実施例1に記載されている実験ステップにしたがって触媒を調製した。ただし、めっき溶液の濃度は、それぞれ蒸留水で1倍、2倍、3倍に希釈した。すなわち、ニッケルイオン濃度は、それぞれ、10g/l、6.67g/l、5g/lであった。得られた触媒の各含有量の重量比は、それぞれ、K2MoO4/Ni−SiO2=15/(2.2−100)、K2MoO4/Ni−SiO2=15/(1.5−100)、K2MoO4/Ni−SiO2=15/(1.1−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果も第1表に示した。
【0023】
実施例5、6
触媒を実施例1に記載した実験ステップにしたがって調製した。ただし、めっきされる担体SiO2の重量は、それぞれ、8gおよび6gであった。得られた触媒の全含有量の重量比は、それぞれ、K2MoO4/Ni−SiO2=15/(5.5−100)およびK2MoO4/Ni−SiO2=15/(7.3−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果も第1表に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例7、8、9、10、11
触媒を実施例3に記載した実験ステップにしたがって調製した。ただし、K2MoO4/支持材の重量比は、5/100、10/100、15/100、20/100、25/100の幅があった。得られた触媒の全成分の重量比は、それぞれ、K2MoO4/Ni−SiO2=5/(1.5−100)、K2MoO4/Ni−SiO2=10/(1.5−100)、K2MoO4/Ni−SiO2=15/(1.5−100)、K2MoO4/Ni−SiO2=20/(1.5−100)、K2MoO4/Ni−SiO2=25/(1.5−100)の幅があった。このようにして調製された触媒の評価結果も第2表に示した。
【0026】
実施例12
(1)0.667.0gのNiSO4・7H2Oおよび0.667gのNa3657・2H2Oを50mlの蒸留水中に連続して溶解させて、めっき溶液を調製し、撹拌を10分間続け、次いで1.0gの(NH42SO4および1.0gのNaH2PO4・H2Oを次々と上述の得られた溶液に添加し、さらに20分間撹拌し、続いてNH3・H2Oをいくらか添加して、溶液のpHを9.0に調節し;最後に、蒸留水を添加して、めっき溶液中のNiSO4濃度が4.12g/lとなるように、溶液の容量を100mlに調節し、
(2)10gの清浄なSiO2を4.5モル/lのH2SO4+0.88モル/lのH22(1:1)溶液20ml中に撹拌下で5分間浸漬し、次いで蒸留水で3回洗浄し、続いて担体SiO2を0.1g/lのPdCl2/HCl溶液20ml中に浸漬し、同時に超音波による撹拌を30分間続け、次いで蒸留水で3回洗浄し;次のステップは、活性化担体SiO2を30g/lのNaH2PO4溶液10ml中に浸漬し、同時に10秒間撹拌することであり;最後に縮小した実験ステップを繰り返して、活性化担体SiO2を製造した。
(3)活性化担体SiO2をステップ(2)において調製しためっき溶液中に42℃で30分間浸漬することによって、無電解めっきプロセスを実施した。めっき後、NiでめっきされたSiO2を蒸留水で4回洗浄し、次いで110℃で6時間乾燥させた。このようにして調製された支持材の2つの含有量の重量比は、Ni−SiO2=1.5−100であった。
(4)0.496gのK2MoO4および1.0mlのNH3・H2Oを5mlの蒸留水中に溶解させて、含浸溶液を生成させ;次いで0.5gの酒石酸および0.135gのNi(NO32・6H2OをK2MoO4溶液に添加し、K2MoO4溶液のpH値は9と測定され;次いで、ステップ(3)で調製された支持材ニッケルめっきSiO2(30〜45メッシュ)3gを含浸溶液中に室温で12時間漬け、次いで110℃で6時間乾燥させた。このようにして調製された触媒の全成分の重量比は、K2MoO4/NiO/Ni−SiO2=15/1.0/(1.5−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果を第3表に示す。
【0027】
実施例13
実施例12で記載した実験ステップにしたがって触媒を調製した。ただし、0.1346gのCo(NO32・6H2Oを0.135のNi(NO32・6H2Oと置き換えた。このようにして調製された触媒の全成分の重量比は、K2MoO4/CoO/Ni−SiO2=15/1.0/(1.5−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果も、第3表に示す。
【0028】
実施例14
触媒を実施例1において記載した実験ステップにしたがって調製した。ただし、めっき溶液を調製するためのNiSO4・7H2OをCoSO4・7H2Oと置き換え、CoSO4・7H2Oの量はNiSO4・7H2Oの量と同じであるが、めっき溶液のpH値をNH3・H2Oによって12に調節し;活性化担体SiO2のめっきプロセスを80℃で実施した。得られた触媒の全成分の重量比は、K2MoO4/(Co−SiO2)=15/(4−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果を第4表に示した。
【0029】
実施例15
実施例12で記載した実験ステップにしたがって触媒を調製した。ただし、めっき溶液を調製するための0.667gのNiSO4・7H2Oを0.667gのCoSO4・7H2Oと置き換え、一方、促進物質Mexyを調製するためのNi(NO32・6H2Oの量は0.117gであった。得られた触媒の全成分の重量比は、K2MoO4/NiO/Co−SiO2=15/1/(1.5−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果も第4表に示す。
【0030】
実施例16
触媒を実施例15において記載した実験ステップにしたがって調製した。ただし、促進物質Mexyを調製するための0.117gのNi(NO32・6H2Oを、0.117gのCo(NO32・6H2Oと置き換えた。得られた触媒の全成分の重量比は、K2MoO4/CoO/Co−SiO2=15/1/(1.5−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果も第4表に示す。
【0031】
実施例17
触媒を実施例1において記載した実験ステップにしたがって調製した。ただし、0.45gのK2MoO4および0.5gの酒石酸を、それぞれ、3.00gの(NH46Mo724・4H2O+0.45gのKNO3および0.5gのクエン酸と置き換えた。得られた触媒の各成分の重量比は、MoO3/K2O/(Ni−SiO2)=11/4/(4−100)であった。このようにして調製された触媒の評価結果を第5表に示す。
【0032】
実施例18
触媒を実施例12において記載した実験ステップにしたがって調製した。ただし、0.496gのK2MoO4を3.00gの(NH46Mo724・4H2O+0.22gのK2CO3と置き換えた。得られた触媒の全成分の重量比は、MoO3/K2O/NiO/(Ni−SiO2)=11/4/0.25/(1.5−100)であった。このようにして調製された触媒の分析結果を第5表に示した。
【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)多孔性担体および前記担体上への無電解析出によってその上に析出された金属Aからなる支持材;
b)Mo−O−K系活性成分;および
c)場合によって、遷移金属酸化物または希土類金属酸化物または希土類金属酸化物の群から選択される活性促進物質Mexy(ここで、xおよびyは金属の価数に依存する)
を含む、触媒。
【請求項2】
成分の重量比が、
2MoO4/Mexy/金属A−担体=(1−30)/(0.0−25.0)/(0.1−10.0)−100または
MoO3/K2O/Mexy/金属A−担体=(1−30)/(1−20)/(0.0−25.0)/(0.1−10.0)−100
である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
重量比が、
2MoO4/Mexy/金属A−担体=(15−20)/(0.0−25.0)/(0.5−8.0)−100;または
MoO3/K2O/Mexy/金属A−担体=(15−20)/(10−15)/(0.0−25.0)/(0.5−8.0)−100
である、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
活性促進物質が、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ランタンおよびセリウムの酸化物を含む群から選択される酸化物である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記支持材が、1または複数の金属−担体として定義される、1または複数の金属でめっきされた担体の材料であり、1または複数の金属/担体の重量比が、1または複数の金属/担体=(0.1−10.0)/100、好ましくは、(0.5−8.0)/100である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記担体が、SiO2、TiO2、Al23−SiO2、ゼオライト、ナノカーボンチューブまたはこれらの混合物を含む群から選択される、請求項1または3に記載の触媒。
【請求項7】
担体上にめっきされた金属が、遷移金属、好ましくは、Ni、CoもしくはFeから選択される、請求項1または3に記載の触媒。
【請求項8】
支持材が還元されたPdおよびP成分を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
触媒活性成分が析出された多孔性支持材を含む触媒を製造する方法であって:
a)担体を活性化するステップ(ここで、活性化は、担体をPd成分および還元剤の溶液でまず処理するステップを含む);
b)前記処理された担体に金属塩の溶液を含む溶液(その際、前記金属はFe、Co、Niを含む群から選択される)を含浸させ、処理された担体上への前記金属の無電解めっきを行って、触媒支持材を製造するステップ;
c)前記支持材を、K2MoO4または(NH4)Mo724とカリウム化合物またはMoO3とカリウム化合物の水溶液;及び場合によって、前記活性促進物質Mexyの前駆体の含浸液で含浸させ、続いて、得られた生成物を乾燥させて、所望の触媒を得るステップ
を含むことを特徴とする、触媒活性成分が析出された多孔性支持材を含む触媒を製造する方法。
【請求項10】
前記支持材を無電解めっき法によって調製し、この調製法が:
(1)金属めっき溶液を調製すること:
所与の量の選択された可溶性金属塩および所与の量の配位剤を、所与の量の蒸留水に連続して溶解させて、金属イオンの濃度が1g/l〜20g/l、好ましくは、5〜7g/lの幅がある金属めっき溶液を調製し;撹拌を10分間維持し、次いで所与の量の安定剤を逐次上述の得られためっき溶液に添加し、さらに20分間撹拌し、続いてNH3・H2Oをいくらか添加して、めっき溶液のpHを7.0〜13.0、好ましくは、8.0〜12.0に調節し;最後に、好適な量の蒸留水を使用して、めっき溶液中の選択された金属塩の濃度が1g/l〜20g/l、好ましくは、5〜7g/lの幅があるように、溶液の容量を調節する、
(2)選択された担体を前処理すること:
前記前処理は以下のステップを含む:
a)担体を蒸留水で洗浄し、次いで乾燥し、続いて清浄な担体を4.5モル/lのH2SO4と0.88モル/lのH22(1:1)の溶液中に撹拌下で5分間浸漬することによって処理し、次いで蒸留水で3回洗浄するステップ;
b)清浄化された担体を活性化剤の水溶液中に撹拌下で浸漬し(前記活性化剤は、PdCl2/HClであり、活性化剤の濃度は、0.05g/l〜1.0g/l、好ましくは、0.1g/l〜0.5g/lの幅がある)、超音波撹拌を30〜35分間維持し、次いで、蒸留水で3回洗浄するステップ;
c)活性化担体を還元剤の水溶液中に撹拌下で浸漬し、還元剤の濃度は20g/l〜30g/lの幅があり、撹拌を10秒間維持するステップ;
(3)担体上への金属のめっきを、ステップ(2)で調製した活性化担体を30〜90℃のめっき溶液中に30〜40分間入れることによって実施する。金属でめっきされた担体を蒸留水で3回洗浄し、次いで110℃で6時間乾燥させること
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記還元剤が、NaH2PO3・H2OもしくはNaBH4である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記安定剤が、硫酸アンモニウムもしくは塩化アンモニウムである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記配位剤が、Na3657・2H2O、C687・H2O、C282もしくはNaKC446・4H2Oから選択される少なくとも1つであり、キレート剤の濃度が1g/l〜60g/lの幅がある、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
無電解めっき溶液のpH値が、7.0〜13.0、好ましくは、8.0〜12.0の幅がある、請求項9または10に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのキレート試薬が含浸溶液中に存在することが望ましい、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
キレート試薬が、クエン酸、クエン酸三アンモニウム、L−グルタミン酸、酒石酸およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の群から選択され;対応して添加されるキレート剤の量が支持材の量の0.1〜0.6倍であり、さらに好ましくは、支持材の量の0.3〜0.6倍である、請求項10または15に記載の方法。
【請求項17】
含浸溶液のpH値をアンモニアによって8〜12、好ましくは、8〜10に調節する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
活性促進物質が、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ランタンおよびセリウムの酸化物を含む群から選択される酸化物である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項19】
モリブデン酸カリウムを前駆体として使用する場合、得られた触媒の成分の重量比が、K2MoO4/Mexy/金属−担体=(1−30)/(0.0−25.0)/(0.1−10.0)−100であるか、または(NH46Mo724・4H2O+1つのカリウム塩もしくはMoO3+1つのカリウム塩を前駆体として使用する場合、触媒の成分の重量比が、MoO3/K2O/Mexy/金属−担体=(1−30)/(1−20)/(0.0−25.0)/(0.1−10.0)−100である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項20】
モリブデン酸カリウムを前駆体として使用する場合、得られた触媒の成分の重量比が、K2MoO4/Mexy/金属−担体=(15−20)/(0.0−25.0)/(0.5−8.0)−100であるか、または(NH46Mo724・4H2O+1つのカリウム塩もしくはMoO3+1つのカリウム塩を前駆体として使用する場合、触媒の含有量の重量比がMoO3/K2O/Mexy/金属−担体=(15−20)/(10−15)/(0.0−25.0)/(0.5−8.0)−100である、請求項1、5、または8に記載の方法。
【請求項21】
炭素酸化物、硫黄および/または硫化水素、および水素を反応させることによる接触法においてメチルメルカプタンを製造する方法であって:
a)請求項1から7までのいずれか1項に記載の、金属でめっきされた担体、活性成分としてMo化合物および促進物質を含む担持触媒を提供すること;および
b)接触法において前記触媒を使用すること
を含む、炭素酸化物、硫黄および/または硫化水素、および水素を反応させることによる接触法においてメチルメルカプタンを製造する方法。

【公表番号】特表2011−507693(P2011−507693A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540091(P2010−540091)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066451
【国際公開番号】WO2009/083368
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】