説明

多金属触媒を用いた水素化転化プロセス及びその作製方法

触媒前駆体組成物及びそのような触媒前駆体の作製方法が開示される。触媒前駆体は、+2又は+4の酸化状態を有する第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの助触媒金属、+6の酸化状態を有する少なくとも1つの第VIB族金属、並びに少なくとも1つの有機酸素含有配位子を含む。そのような触媒前駆体の硫化から調製される触媒は、炭化水素フィードの水素化処理に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/984,240号;同第60/984,221号;同第60/984,195号;同第60/984,353号;及び同第60/984,363号(全て、出願日は2007年10月31日である)の米国特許法第119条の利益を主張する。本出願は、上記出願の優先権及び利益を主張し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、水素化処理(hydroprocessing)触媒前駆体、触媒前駆体を調製するプロセス、触媒前駆体を用いて調製された多金属触媒(multi−metallic catalysts)、及び多金属触媒を用いた水素化転化プロセスに一般に関する。
【背景技術】
【0003】
石油産業は、原料供給源として重質原油、残油、石炭及びオイルサンドにますます変わりつつある。これらの重質材料から誘導される原料は、より常套的な原油から誘導される原料よりも多くの硫黄及び窒素を含有し、それらから有用な生成物を得るためには、かなりの量の改質を必要とする。改質又は精製は、水素化処理プロセス(hydrotreating process)、すなわち、フィードの少なくとも一部をより低い分子量の炭化水素に転化する効果がある、又は、望ましくない成分、若しくは化合物を除去して、無害の若しくはより望ましい化合物に転化する効果がある、水素化処理触媒の存在下での種々の炭化水素留分、若しくは全ての重質フィード、若しくは原料の水素による処理によって、一般に達成される。
【0004】
水素化処理は、当技術分野において周知であり、水素化処理条件において担持又は非担持触媒の存在下、石油ストリームを水素によって処理することを典型的には必要とする。担持触媒は、アルミナなどの耐火性担体に助触媒(promoters;促進剤)として1つ又は複数の第VIII族金属を有しつつ、少なくとも1つの第VIB族を通常は含む。水素化脱硫、水素化脱芳香族、並びに水素化脱窒素に特に好適である水素化処理触媒は、コバルト、ニッケル、鉄、又はこれらの組合せなどの金属によって促進されるモリブデン及び/又はタングステンを一般に含有する。アルミナ触媒上のコバルト促進モリブデンは、限定的な仕様が水素化脱硫であるとき、最も広く用いられる。アルミナ触媒上のニッケル促進モリブデンは、水素化脱窒素、芳香族部分飽和、並びに水素化脱硫に最も広く用いられる。
【0005】
とりわけ、米国特許第2,238,851号;同第5,841,013号;同第6,156,695号;同第6,566,296号及び同第6,860,987号に開示されている、水素化転化プロセスに用いられる非担持の第VIII族及び第VIB族金属混合触媒並びに触媒前駆体が、当技術分野において公知である。
【0006】
亜鉛などの第IIB族金属に基づく水素化処理触媒は、発明されている第1の卑金属水素化処理触媒の1つであり、米国特許第1,922,499号;同第1,932,673号;及び同第1,955,829号に開示された。しかし、米国特許第4,698,145号には、第VIB族金属系触媒が第IIB族金属系触媒よりも優れた性能を示すことが教示されている。スズ又は鉛などの第IVA族金属に基づく水素化処理触媒が、米国特許第4,560,470号及び同第5,872,073号に開示された。
【0007】
非担持の第IIB族及び第VIB族金属混合触媒並びに触媒前駆体は、当技術分野で公知である。触媒前駆体及び触媒前駆体組成物を第IIB族金属並びにモリブデン及びタングステンの酸化物の形態で作製する方法が、例えば、米国特許第1,932,673号及び同第1,955,829号に教示されている。モリブデン及びタングステンの硫化水素化触媒も公知である。米国特許第4,698,145号には、窒素含有添加物の存在下で、モリブデン又はタングステンなどの第VIB族金属のチオアンモニウム塩並びに亜鉛の塩を含む硫化触媒を作製するプロセスが教示されている。非担持の第IVA族及び第VIB族金属混合触媒並びに触媒前駆体も、当技術分野において公知である。これらは、例えば、米国特許第4,560,470号及び同第5,872,073号に記載されているように多段階合成で塩化物及び硫化物から作製される。
【0008】
工業からの流出物又は水の廃棄の環境への影響がますます精査されるにつれて、有害物質の使用を可能な限り最大限に制限する必要がある。従来技術の触媒前駆体を作製するプロセスにおいて、例えば、エチレンジアミン(四)酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、及びジエチレントリアミン五酢酸などのキレート剤が使用されている。これらの物質は、環境に良いとは言い難い。
【0009】
水素化処理プロセスに使用される反応条件下では、触媒性能は、特に原料が、より重質の原油中に炭化水素、S及びN種の、より重質の、より難溶性の留分を含むとき、ストリームにおいて経時的に、炭素堆積物によって悪くなる傾向がある。そのような堆積物の蓄積は触媒活性を低下させる傾向がある。そのため、改質後の生成物中のN濃度など、生成物の性質を維持するためには、触媒平均温度(又はC.A.T.)を徐々に上昇させる必要がある。単位時間当たりのC.A.T.の上昇速度を、触媒汚染速度として定義する。
【0010】
触媒性能は、多くの因子に依存する。いくつかの触媒について、重要な因子は、プロセスで使用される水素分圧である。低圧プロセスは、600psig未満、一実施形態においては400〜600psigの間の圧力を有すると一般に説明することができる。極低から低圧の水素化転化プロセスにおいて、従来技術のいくつかの非担持多金属触媒は、中程度から高圧のプロセス(2000〜3000psig、及び一般に650°Fから上の範囲の高温)において約1/3までの活性である相対活性を有する。従来技術の多金属触媒は、その低い活性により、300〜400psiの低圧反応器での使用に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
より低いグレードの炭化水素原料をより高い価値の生成物に高い収率で転化するためには、適切な形態、構造、及び最適な触媒活性を有する改善された水素化脱硫(HDS)、水素化脱芳香族(HDA)及び水素化脱窒素(HDN)触媒が求められている。そのような改善された触媒を作製する方法が求められている。水素化処理触媒作用の性能を損なわない、より低い毒性の又はより環境に優しい若しくは生分解性の触媒前駆体の製造においては、キレート剤が依然として求められている。改善された耐汚染特性を有する触媒が求められている。低圧水素化転化プロセスにおいても満足に機能する触媒も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様において、本発明は、式のA[(M)(OH)(L)(MVIB)の帯電した中性触媒前駆体組成物であって、硫化の際、触媒が、水素化脱窒素、水素化脱芳香族化、及び水素化脱硫活性を示し、Aが1つ又は複数の一価カチオン種を含み、Mが、第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択され、Lが、1つ又は複数の酸素含有有機配位子であり、MVIBが、少なくとも1つの第VIB族金属であり、M:MVIBが、100:1〜1:100の間の原子比を有し、


である組成物に関する。一実施形態において、Mは、少なくとも1つの第VIII族金属である。触媒前駆体は、正味の負又は正の電荷を有さないという点において電荷中性である。触媒前駆体は、種々の量の随伴水を含有し得る。
【0013】
一実施形態において、Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、又は有機ホスホニウムカチオンなどの一価カチオンである。Lは、ギ酸塩、酢酸塩、若しくはプロパン酸塩などの一価カルボン酸塩、又はシュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、リンゴ酸塩、若しくはマレイン酸塩などのジカルボン酸塩である。さらなる実施形態において、M:MVIBの比は、10:1〜0.1:1の間である。なお別の実施形態において、M:MVIBの比は、5:1〜0.5:1の間である。
【0014】
一態様において、本発明は、水素化処理触媒組成物を作製する方法であって、式A[(M)(OH)(L)(MVIB)の触媒を硫化する工程を含む方法に関する。一実施形態において、硫黄含有化合物は、元素硫黄、硫化水素、ジメチルジスルフィド(DMDS)、ポリスルフィド、及びこれらの組合せから選択される。
【0015】
なお別の態様において、本発明は、式A[(M)(OH)(L)(MVIB)の触媒前駆体から誘導される触媒を用いて油原料を水素化処理する方法であって、式中、Aが、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンを含み、Mは、第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択され、Lは酸素含有有機配位子であり、MVIBは、少なくとも1つの第VIB族金属であり、M:MVIBの原子比は、100:1〜1:100の間である方法に関する。一実施形態において、Mは、第IIB族金属(Zn)である。別の実施形態において、Mは、第IVA族金属(Sn)である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術の触媒前駆体(Ni/Mo/W)の実施形態の粉末X線回折パターンである。
【図2】触媒前駆体化合物(Ni/Mo/W/マレイン酸塩系)の実施形態の粉末X線回折パターンを示す。
【図3】触媒前駆体化合物(Co/Mo/W/マレイン酸塩系)の第2の実施形態の粉末X線回折パターンを示す。
【図4】キレート剤としてのマレイン酸を有さない比較触媒前駆体(Co/Mo/W/マレイン酸塩系)の粉末X線回折パターンを示す。
【図5】本発明の触媒前駆体化合物を使用した一実施形態の多金属触媒と、従来技術の触媒系とについて、触媒平均温度(C.A.T.)プロファイルを比較するグラフである。ここでのC.A.T.プロファイルは、改質された生成物において20重量ppmの窒素を維持するように、ストリームにおいて経時的に必要とされるC.A.T.である。
【図6】第3の実施形態の触媒前駆体化合物(Zn−Mo−W−マレイン酸塩系)の粉末X線回折パターンである。
【図7】第4の実施形態の触媒前駆体化合物(同様にZn−Mo−W)の粉末X線回折パターンである。
【図8】第5の実施形態の触媒前駆体化合物(Sn/Mo/W/マレイン酸塩系)の粉末X線回折パターンである。
【図9】比較触媒前駆体化合物(Sn/Mo/W、キレート剤を有さない)の粉末X線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書を通じて以下の用語を使用し、別途指示しない限り以下の意味を有する。
【0018】
SCF/BBL(又はscf/bbl、又はscfb若しくはSCFB)は、炭化水素フィードのバレル当たりの気体(N、H、など)の標準立方フィートの単位をいう。
【0019】
LHSVは液空間速度を意味する。
【0020】
C.A.T.は、触媒床における複数の読み取り値に基づく触媒平均温度を意味する。
【0021】
本明細書で参照される周期表は、IUPAC及びU.S.National Bureau of Standardsによって承認されている表であり、例は、2001年10月のロスアラモス国立研究所の化学課による元素周期表である。
【0022】
用語「第VIB族」又は「第VIB族金属」は、元素、化合物又はイオン形態のクロム、モリブデン、タングステン、及びこれらの組合せをいう。
【0023】
用語「第IIB族」又は「第IIB族金属」は、元素、化合物又はイオン形態の亜鉛、カドミウム、水銀及びこれらの組合せをいう。
【0024】
用語「第IIA族」又は「第IIA族金属」は、元素、化合物又はイオン形態のベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びこれらの組合せをいう。
【0025】
用語「第IVA族」又は「第IVA族金属」は、元素、化合物又はイオン形態のゲルマニウム、スズ、又は鉛及びこれらの組合せをいう。
【0026】
用語「第VIII族」又は「第VIII族金属」は、元素、化合物又はイオン形態の鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、レニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、及びこれらの組合せをいう。
【0027】
本明細書において用いるとき、用語M、又は「助触媒金属」(“Promoter metal”)は:少なくとも1つの第VIII族金属;少なくとも1つの第IIB族金属;少なくとも1つの第IIA族金属;少なくとも1つの第IVA族金属;異なる第IIB族金属の組合せ;異なる第IIA族金属の組合せ;異なる第IVA、IIA、IIB、又はVIII族金属の組合せ;少なくとも1つの第IIB金属及び少なくとも1つの第IVA族金属の組合せ;少なくとも1つの第IIB族金属及び少なくとも1つの第VIII族金属の組合せ;少なくとも1つの第IVA族金属及び少なくとも1つの第VIII族金属の組合せ;第IIB族金属、少なくとも1つの第IVA族金属及び少なくとも1つの第VIII族金属の組合せ;並びに少なくとも2つの金属と第VIII族、第IIB族、第IIA族、及び第IVA族金属のいずれかからの個々の金属との組合せのいずれかを意味する。
【0028】
本明細書において用いるとき、句「1つ又は複数の」或いは「少なくとも1つの」は、数種の元素又は元素分類、例えばX、Y及びZ、又はX−X、Y−Y及びZ−Zの前置きに用いられるとき、X又はY又はZから選択される単一元素、同じ共通分類(例えばX及びX)から選択される元素の組合せ、並びに異なる分類(例えば、X、Y及びZn)から選択される元素の組合せをいうことを意図する。
【0029】
本明細書において用いるとき、「水素化転化」(“hydroconversion”)又は「水素化処理」(“hydroprocessing”)は、限定されないが、メタン化、水ガスシフト反応、水素化、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属化、水素化脱芳香族、水素化異性化、水素化脱ロウ、及び選択的水素化分解を包含する水素化分解を含めた、水素存在下で実施される任意のプロセスを意味する。水素化処理及び反応条件の種類に応じて、水素化処理の生成物は、改善された粘度、粘度指数、飽和物含量、低温特性、揮発度及び脱分極等を示すことができる。
【0030】
本明細書において用いるとき、用語「触媒前駆体」は、第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せ(すなわち、1つ又は複数の第VIII族金属、1つ又は複数の第IIB族金属、1つ又は複数の第IIA族金属、1つ又は複数の第IVA族金属、及びこれらの組合せ)、少なくとも1つの第VIB族金属;少なくとも1つの水酸化物;並びに1つ又は複数の有機酸素含有配位子から選択される少なくとも1つの助触媒金属を含有する化合物をいい、当該化合物は、硫化後に水素化処理触媒として触媒活性であり得る。
【0031】
本明細書において用いるとき、用語「電荷中性」は、触媒前駆体が正味の正又は負の電荷を有さないことをいう。用語「電荷中性触媒前駆体」は、単に「触媒前駆体」と称する場合もあってよい。
【0032】
本明細書において用いるとき、用語「アンモニウム」は、化学式NHを有するカチオン、又は有機窒素含有カチオン、例えば有機第四級アミンをいう。
【0033】
本明細書において用いるとき、用語「ホスホニウム」は、化学式PHを有するカチオン又は有機リン含有カチオンをいう。
【0034】
用語オキソアニオンは、単量体のオキソアニオン及びポリオキソメタラートをいう。
【0035】
本明細書において用いるとき、用語「混合物」は、2つ以上の物質の物理的組合せをいう。「混合物」は、均一系であっても不均一系であってもよく、任意の物理的状態又は物理的状態の組合せであってよい。
【0036】
用語「試薬」は、本発明の触媒前駆体の製造に用いることができる原料をいう。金属と併せて用いられるとき、用語「金属」は、試薬が金属形態であること意味しないが、金属化合物として存在する。
【0037】
本明細書において用いるとき、用語「カルボン酸塩」は、カルボン酸塩又はカルボン酸基を脱プロトン化又はプロトン化状態で含有する任意の化合物をいう。
【0038】
本明細書において用いるとき、用語「配位子」は、「キレート剤」(又はキレート化剤、若しくはキレート化物)と互換的に用いられてよく、より大きい錯体、例えば、触媒前駆体を形成する、例えば、第VIB族及び/又は助触媒金属の金属イオンと組み合わせた添加物をいう。
【0039】
本明細書において用いるとき、用語「有機」は、炭素を含むことを意味し、炭素は、生物源に由来しても非生物源に由来してもよい。
【0040】
本明細書において用いるとき、用語「有機酸素含有配位子」は、少なくとも1つの炭素原子、少なくとも1つの酸素原子、及び少なくとも1つの水素原子を含む任意の化合物をいい、酸素原子は、助触媒金属(単数又は複数)又は第VIB族金属イオンへの配位に利用可能な1つ又は複数の電子対を有する。一実施形態において、酸素原子は、反応のpHにおいて負に帯電している。有機酸素含有配位子の例として、限定されないが、カルボン酸、カルボン酸塩、アルデヒド、ケトン、エノラート形態のアルデヒド、エノラート形態のケトン、ヘミアセタール、及びヘミアセタールのオキソアニオンが挙げられる。
【0041】
用語「共ゲル」(“cogel”)は、水リッチ相を含有する、少なくとも2つの金属の水酸化物共沈物(又は沈殿物)をいう。「共ゲル化」は、共ゲル又は沈殿物を形成するプロセスをいう。
【0042】
本明細書において用いるとき、用語「生分解性」は、好気性及び/又は非好気性条件下で細菌、菌類、藻類、及び/又は他の微生物の存在下、二酸化炭素/メタン及び/又は水並びにバイオマスに容易に分解する物質をいうが、ヘテロ原子を含有する物質によってもアンモニア又は二酸化硫黄などの他の生成物を得ることができる。当該用語は、生物圏で通常見られる紫外光、太陽光、温度及び圧力への曝露による分解を含む。しかし、分解に必要な時間は、固定されていない。好ましくは、分解は、埋め立て地におけるような環境条件への曝露後迅速に起こるが、分解が僅かな時間量にとどまらずに生じる場合においても、物質は、依然として、「易生分解性」と考えることができる。
【0043】
本明細書において用いるとき、用語「非毒性」は、LD50経口毒性試験(Oral Toxicity Test)の要件をいう。LDは、「致死量」(“lethal dosage”)を意味する。「LD50」は、一度に、試験動物の群の50%(半分)の死を引き起こす物質量である。LD50により、試験をラット及びマウスなどのより小さい動物で行って、物質の短時間での中毒の可能性(急性毒性)を測定する(mg/Kg)。
【0044】
本明細書において用いるとき、非毒性物質は、物質が(ラットへの単回経口用量として)500mg/Kgを超えるLD50を有することを意味する。
【0045】
本明細書において用いるとき、汚染速度は、水素化転化反応温度が、所与の水素化脱窒素速度を維持するために、単位時間当たり上昇する必要がある速度、例えば、1000時間当たりの°F(例えば、改質された生成物の窒素レベル、所望の水素化脱窒素速度、など)を意味する。
【0046】
本明細書において用いるとき、汚染速度は、改質された液体生成物全量の20ppmの有機窒素レベルを有するHDN標的を用いて、100℃で4.6CStの粘度、0.928g/ccの密度、178〜495℃の沸点範囲、及び1.66の水素対炭素原子比;並びに370〜425℃、10MPaの圧力、1.0/時間のLHSV、及び5000scfbの水素流量のプロセス条件を含めた表3の特性を有する減圧軽油(VGO)をフィードとして使用して、単一触媒による水素化脱窒素(HDN)系において測定される。
【0047】
本明細書において用いるとき、積層触媒系の汚染速度は、多層の異なる触媒を有する全触媒系について測定した速度を意味する。当該速度は、改質された生成物の20ppmの窒素レベルを有するHDN標的を用いて、100℃で4.6CStの粘度、0.928g/ccの密度、178〜495℃の沸点範囲、及び1.66の水素対炭素原子比;並びに370〜425℃、10MPaの圧力、1.0/時間のLHSV、及び5000scfbの水素流量のプロセス条件を含めた表3の特性を有する減圧軽油(VGO)をフィードとして用いて、水素化脱窒素(HDN)系において測定される。
【0048】
本明細書において用いるとき、700°F+転化速度は、水素化転化プロセスにおける、減圧軽油(VGO)原料の700°F(371.℃)未満の沸点の物質への転化をいい、(100%*(フィード中700°F超で沸騰する物質の重量%−生成物中700°F超で沸騰する物質の重量%)/フィード中700°F超で沸騰する物質の重量%)として算出される。一実施形態において、減圧軽油(VGO)原料は、100℃で4.6CStの粘度、0.928g/ccの密度、178〜495℃の沸点範囲、及び1.66の水素対炭素原子比を含めて、フィードとして表3の特性を有する。水素化転化プロセス条件は、370〜425℃の温度、10MPaの圧力、1.0/時間のLHSV、及び5000scfbの水素流量を含む。
【0049】
一態様において、本発明は、水素化脱硫(HDS)、水素化脱芳香族(HDA)、及び水素化脱窒素(HDN)での使用のための触媒、例えば、助触媒金属(単数又は複数)/第VIB族硫化金属触媒に転化することができる触媒前駆体に関する。一実施形態において、助触媒金属(単数又は複数)/第VIB族硫化金属触媒の多孔率は、触媒前駆体の合成において助触媒金属水酸化物及び有機酸素含有配位子の使用によって、また、前駆体を押し出し物に形成する間にセルロース含有添加物によって有利に調整され得る。触媒前駆体を硫化して活性触媒を形成する際に、活性触媒の特性は、常套的な硫化亜鉛又はコバルトモリブデン、硫化ニッケルモリブデン、タングステン、及びモリブドタングステン触媒について向上される。
【0050】
触媒前駆体式:一実施形態において、電荷中性触媒前駆体組成物は、一般式A[(M)(OH)(L)(MVIB)を有するものであり、式中:
Aは、1つ又は複数の一価カチオン種である。一実施形態において、Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンの少なくとも1つであり;
は、使用される助触媒金属(単数又は複数)に応じて+2又は+4のいずれかの酸化状態を有する少なくとも1つの助触媒金属である。Mは、第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される。一実施形態において、Mは、少なくとも1つの第VIII族金属であり、Mは、+2の酸化状態Pを有する。別の実施形態において、Mは、第IIB族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される。
【0051】
Lは1つ又は複数の酸素含有配位子であり、Lは中性又は負電荷n<=0を有し;
VIBは、+6の酸化状態を有する少なくとも1つの第VIB族金属であり;
:MVIBは、100:1〜1:100の間の原子比を有し;
v−2+Pz−xz+nz=0;かつ


である。
【0052】
一実施形態において、Lは、カルボン酸塩、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、エノラート形態のアルデヒド、エノラート形態のケトン、及びヘミアセタール、並びにこれらの組合せから選択される。
【0053】
一実施形態において、Aは、一価カチオン、例えば、NH、他の第四級アンモニウムイオン、有機ホスホニウムカチオン、アルカリ金属カチオン、及びこれらの組合せから選択される。
【0054】
一実施形態において、モリブデン及びタングステンは、両方とも、第VIB族金属として用いられ、モリブデン対タングステン原子比(Mo:W)は、約10:1〜1:10の範囲内である。別の実施形態において、Mo:Wの比は、約1:1〜1:5の間である。一実施形態において、モリブデン及びタングステンは、第VIB族金属として用いられ、電荷中性触媒前駆体は、式A[(M)(OH)(L)(Mot’)を有するものである。なお別の実施形態において、モリブデン及びタングステンは、第VIB族金属として用いられ、クロムは、タングステンの一部又は全部と置き換えられていてよく、(Cr+W):Moの比は、約10:1〜1:10の範囲である。別の実施形態において、(Cr+W):Moの比は、1:1〜1:5の間である。一実施形態において、モリブデン、タングステン、及びクロムは、第VIB族金属であり、電荷中性触媒前駆体は、式A[(M)(OH)(L)(Mot’Crt’’)を有する。
【0055】
一実施形態において、助触媒金属Mは、少なくとも1つの第VIII族金属であり、Mが+2の酸化状態を有し、式A[(M)(OH)(L)(MVIB)の触媒前駆体が(v−2+2z−xz+nz)=0を有する。
【0056】
一実施形態において、助触媒金属Mは、Ni及びCoなどの2つの第VIII族金属の混合物である。別の実施形態において、Mは、Ni、Co及びFeなどの3つの金属の組合せである。
【0057】
一実施形態において、Mは、Zn及びCdなどの2つの第IIB族金属の混合物であり、電荷中性触媒前駆体は、式A[(ZnCda’)(OH)(L)(MVIB)を有する。なお別の実施形態において、Mは、Zn、Cd及びHgなどの3つの金属の組合せであり、電荷中性触媒前駆体は、式A[(ZnCda’Hga’’)(OH)(L)(MVIB)を有する。
【0058】
一実施形態において、Mは、Ge及びSnなどの2つの第IVA族金属の混合物であり、電荷中性触媒前駆体は、式A[(Ge,Snb’)(OH)(L)(MVIB)を有する。別の実施形態において、Mは、Ge、Sn、及びPbなどの3つの第IVA族金属の組合せであり、電荷中性触媒前駆体は、式A[(GeSnb’Pbab’’)(OH)(L)(MVIB)を有する。
【0059】
助触媒金属成分M:一実施形態において、助触媒金属(M)化合物源は、溶液状であり、助触媒金属化合物の全量が、均一溶液を形成する液体中に溶解している。別の実施形態において、助触媒金属源は、部分的には固体として存在し、部分的には液体に溶解する。第3の実施形態において、当該源は、完全に固体状態である。
【0060】
助触媒金属化合物Mは、金属塩、又は硝酸塩、水和硝酸塩、塩化物、水和塩化物、硫酸塩、水和硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リン酸塩、次亜リン酸塩、及びこれらの混合物から選択される金属塩の混合物であってよい。
【0061】
一実施形態において、助触媒金属Mは、少なくとも部分的に固体状態であるニッケル化合物、例えば、水不溶性ニッケル化合物、例えば炭酸ニッケル、水酸化ニッケル、リン酸ニッケル、亜リン酸ニッケル、ギ酸ニッケル、フマル酸ニッケル、硫化ニッケル、モリブデン酸ニッケル、タングステン酸ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル合金(例えば、ニッケル−モリブデン合金、ラネーニッケル)、又はこれらの混合物などである。
【0062】
一実施形態において、助触媒金属Mは、元素、化合物、又はイオン形態の亜鉛、カドミウム、水銀、ゲルマニウム、スズ、又は鉛などの第IIB族及び第VIA族金属、並びにこれらの組合せの群から選択される。なお別の実施形態において、助触媒金属Mは、元素、化合物、又はイオン形態のNi、Co、Fe及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含む。
【0063】
一実施形態において、助触媒金属化合物は、少なくとも部分的に固体状態である亜鉛化合物、例えば、水に溶解しにくい亜鉛化合物、例えば炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、フマル酸亜鉛、硫化亜鉛、モリブデン酸亜鉛、タングステン酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金(例えば、亜鉛−モリブデン合金)である。
【0064】
一実施形態において、助触媒金属は、少なくとも部分的に固体状態であるマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム化合物、例えば、水不溶性化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、フマル酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、硫化物、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、酸化物又はこれらの混合物の群から選択される、第IIA族金属化合物である。
【0065】
一実施形態において、助触媒金属化合物は、少なくとも部分的に固体状態であるスズ化合物、例えば、水に溶解しにくいスズ化合物、例えば、スズ酸、リン酸スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、モリブデン酸スズ、タングステン酸スズ、酸化スズ、スズ合金(例えば、スズ−モリブデン合金)である。
【0066】
第VIB族金属成分:第VIB族金属(MVIB)化合物は、固体状態、部分溶解状態、又は溶液状態で添加されてよい。一実施形態において、第VIB族金属化合物は、モリブデン化合物、クロム化合物、タングステン化合物、及びこれらの組合せから選択される。そのような化合物の例として、限定されないが、固体状態、部分溶解状態、又は溶液状態で添加された、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はモリブデン、タングステン、若しくはクロムのアンモニウムメタラート、(例えば、タングステン酸アンモニウム、メタ−、パラ−、ヘキサ−、若しくはポリタングステン酸塩、クロム酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、イソ−、パーオキソ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ヘプタ−、オクタ−、若しくはテトラデカモリブデン酸塩、アルカリ金属ヘプタモリブデン酸塩、アルカリ金属オルトモリブデン酸塩、若しくはアルカリ金属イソモリブデン酸塩)、ホスホモリブデン酸のアンモニウム塩、ホスホタングステン酸のアンモニウム塩、ホスホクロム酸のアンモニウム塩、酸化モリブデン(ジ−及びトリ)、酸化タングステン(ジ−及びトリ)、クロム又は酸化クロム、炭化モリブデン、硝酸モリブデン、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸、クロム酸、タングステン酸、Mo−Pヘテロポリアニオン化合物、Wo−Siヘテロポリアニオン化合物、W−Pヘテロポリアニオン化合物、W−Siヘテロポリアニオン化合物、Ni−Mo−Wヘテロポリアニオン化合物、Co−Mo−Wヘテロポリアニオン化合物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
キレート剤(配位子)L:一実施形態において、触媒前駆体組成物は、(ラットへの単回経口用量(single oral dose)として)500mg/Kgを超えるLD50量を有する少なくとも1つの非毒性有機酸素含有配位子を含む。第2の実施形態において、有機酸素含有配位子Lは、>700mg/KgのLD50量を有する。第3の実施形態において、有機酸素含有キレート剤は、>1000mg/KgのLD50量を有する。本明細書において用いるとき、用語「非毒性」は、配位子が(ラットへの単回経口用量として)500mg/Kgを超えるLD50量を有することを意味する。本明細書において用いるとき、用語「少なくとも1つの有機酸素含有配位子」は、組成物が、いくつかの実施形態において複数の有機酸素含有配位子を有し得、有機酸素含有配位子の一部が<500mg/KgのLD50量を有し得るが、少なくとも1つの有機酸素含有配位子が>500mg/KgのLD50量を有することを意味する。
【0068】
一実施形態において、酸素含有キレート剤Lは、非毒性有機酸付加塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸、アスパラギン酸、アルカンスルホン酸、例えばメタンスルホン酸及びエタンスルホン酸、アリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸、並びにアリールカルボン酸、例えば安息香酸の群から選択される。一実施形態において、酸素含有キレート剤Lは、マレイン酸(708mg/kgのLD)である。
【0069】
1つの別の実施形態において、非毒性キレート剤Lは、グリコール酸(1950mg/kgのLD50を有する)、乳酸(3543mg/kgのLD50を有する)、酒石酸(7500mg/kgのLD50を有する)、リンゴ酸(1600mg/kgのLD50を有する)、クエン酸(5040mg/kgのLD50を有する)、グルコン酸(10380mg/kgのLD50を有する)、メトキシ酢酸(3200mg/kgのLD50を有する)、エトキシ酢酸(1292mg/kgのLD50を有する)、マロン酸(1310mg/KgのLD50を有する)、コハク酸(500mg/kgのLD50を有する)、フマル酸(10700mg/kgのLD50を有する)、並びにグリオキシル酸(3000mg/kgのLD50を有する)の群から選択される。さらなる実施形態において、非毒性キレート剤は、限定されないが、メルカプトコハク酸(800mg/kgのLD50)及びチオ−ジグリコール酸(500mg/kgのLD50)を含めた有機硫黄化合物の群から選択される。
【0070】
なお別の実施形態において、酸素含有配位子Lは、カルボン酸塩含有化合物である。一実施形態において、カルボン酸塩化合物は、1つ又は複数のカルボン酸塩官能基を含有する。なお別の実施形態において、カルボン酸塩化合物は、限定されないが、ギ酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、及びヘキサン酸塩を含めたモノカルボン酸塩、並びに限定されないが、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、及びこれらの組合せを含めたジカルボン酸塩を含む。第4の実施形態において、カルボン酸塩化合物は、マレイン酸塩を含む。
【0071】
有機酸素含有配位子は、助触媒金属含有溶液若しくは混合物、第VIB族金属含有溶液若しくは混合物、又は助触媒金属及び第VIB族金属含有沈殿物、溶液若しくは混合物の組合せと混合されていてよい。有機酸素含有配位子は、溶液状態であってよく、有機酸素含有配位子の全量が水などの液体に溶解している。有機酸素含有配位子は、助触媒金属(単数又は複数)、第VIB族金属(単数又は複数)、及びこれらの組合せとの混合の間に部分的に溶解し、部分的に固体状態であってよい。
【0072】
希釈剤成分:用語「希釈剤」は、結合剤と互換的に用いられてよい。希釈剤の使用は、触媒前駆体の作製において場合によるものである。
【0073】
一実施形態において、希釈剤は、触媒前駆体組成物の作製プロセスに含まれる。一般に、添加される希釈剤物質は、触媒前駆体組成物(希釈剤を含まない)から調製された触媒よりも低い触媒活性を有するか、又は触媒活性を全く有しない。結果として、一実施形態において、希釈剤を添加することにより、触媒の活性は低下する可能性がある。したがって、プロセスにおいて添加される希釈剤の量は、最終触媒組成物の所望の活性に一般に依存する。希釈剤物質は、想定される触媒用途に応じて、全組成物の0〜95重量%が好適であり得る。
【0074】
希釈剤は、助触媒金属成分(単数又は複数)、助触媒金属含有混合物、第VIB族金属(単数又は複数)又は金属含有混合物に、同時に又は順に添加され得る。代替的には、助触媒金属及び第VIB族金属混合物は、共に組み合わされてよく、続いて、組み合わされた金属混合物に希釈剤が添加されてよい。同時に又は順に金属混合物の一部を組み合わせて、続いて希釈剤を添加し、最後に金属混合物の残りを同時に又は順に添加してもよい。さらに、希釈剤を金属混合物と溶質状態で組み合わせ、続いて金属化合物を少なくとも部分的に固体状態で添加してもよい。有機酸素含有配位子は、金属含有混合物の少なくとも1つに存在する。
【0075】
一実施形態において、希釈剤は、バルク状の触媒前駆体組成物と複合体化され及び/又はその調製の間に添加される前に、第VIB族金属及び/又は助触媒金属と複合体化される。希釈剤のこれらの金属のいずれかとの複合体化は、一実施形態において、これらの物質への固体希釈剤の含浸によって実施される。
【0076】
希釈剤物質として、水素化処理触媒前駆体中の希釈剤又は結合剤として常套的に適用される任意の物質が挙げられる。例として、シリカ、シリカ−アルミナ、例えば、従来のシリカ−アルミナ、シリカ被覆アルミナ及びアルミナ被覆シリカ、アルミナ、例えば(擬)ベーマイト、又はギブサイト、チタニア、ジルコニア、カチオン性クレイ若しくはアニオン性クレイ、例えば、サポナイト、ベントナイト、カオリン、セピオライト、ヒドロタルサイト、又はこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、結合剤物質は、シリカ、アルミニウムをドープしたコロイダルシリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物から選択される。
【0077】
これらの希釈剤は、そのまま、又は解凝固の後に適用され得る。プロセスの間に上記希釈剤に転化されるこれら希釈剤前駆体を適用することもできる。好適な前駆体は、例えば、アルカリ金属又はアルミン酸アンモニウム(アルミナ希釈剤を得るため)、水ガラス、又はアンモニウム−若しくは酸安定化シリカゾル(シリカ希釈剤を得るため)、アルミン酸塩及びケイ酸塩の混合物(シリカアルミナ希釈剤を得るため)、二−、三−、及び/若しくは四価金属源の混合物、例えば、マグネシウム、アルミニウム及び/若しくはシリコンの水溶性塩の混合物(カチオン性クレイ及び/又はアニオン性クレイを調製するため)、クロロヒドロール、硫酸アルミニウム、又はこれらの混合物である。
【0078】
他の任意の成分:所望により、他の金属を含めた他の物質が上記成分に加えて添加され得る。これらの物質として、従来の水素化処理触媒前駆体の調製の間に添加される任意の物質が挙げられる。好適な例は、リン化合物、ホウ素化合物、付加的な遷移金属、希土類金属、充填剤、又はこれらの混合物である。好適なリン化合物として、リン酸アンモニウム、リン酸、又は有機リン化合物が挙げられる。リン化合物は、プロセス工程の任意の段階で添加されてよい。プロセス工程に添加され得る好適な付加的な遷移金属として、例えば、レニウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、白金、パラジウムなどが挙げられる。一実施形態において、付加的な金属は、水不溶性化合物の形態で適用される。別の実施形態において、付加的な金属は、水溶性化合物の形態で添加される。プロセスの間にこれらの金属を添加することとは別に、最終触媒前駆体組成物を任意の物質と複合体化することもできる。例えば、最終触媒前駆体組成物を、これらの付加的な物質のいずれかを含む含浸溶液に含浸することもできる。
【0079】
水素化処理触媒前駆体の作製方法:調製方法は、元素の相対量、試薬の種類、並びに種々の反応及び反応工程の長さ及び激しさを制御することによって、触媒前駆体の組成及び構造の系統的な変動を可能にする。
【0080】
触媒前駆体の形成に用いられる試薬の添加順序は、重要ではない。例えば、有機酸素含有配位子は、沈澱又は共ゲル化の前に助触媒金属(単数又は複数)及び第VIB族金属(単数又は複数)の混合物と組み合わされてよい。有機酸素含有配位子は、助触媒金属の溶液と混合され、次いで1つ又は複数の第VIB族金属の溶液に添加されてよい。有機酸素含有配位子は、1つ又は複数の第VIB族金属の溶液と混合され、1つ又は複数の助触媒金属の溶液に添加されてよい。
【0081】
第VIB族/助触媒金属との沈殿物又は共ゲルの形成:プロセスの一実施形態において、第1工程は、沈澱又は共ゲル化工程であり、溶液中の助触媒金属成分(単数又は複数)及び溶液中の第VIB族金属成分の混合物中で反応させて、沈殿物又は共ゲルを得ることを含む。沈澱又は共ゲル化を、助触媒金属化合物及び第VIB族金属化合物が沈澱する又は共ゲルを形成する温度及びpHで実施する。次いで、溶液又は少なくとも部分的に溶液中の有機酸素含有配位子を、沈殿物又は共ゲルと組み合わせて、一実施形態の触媒前駆体を形成する。
【0082】
一実施形態において、触媒前駆体が形成される温度は、50〜150℃の間である。当該温度がプロトン性液体の沸点(例えば水の場合100℃)未満であると、一般にはプロセスを大気圧で実施する。当該温度を超えると、一般には、反応を加圧下、例えばオートクレーブ内で実施する。一実施形態において、触媒前駆体を、0〜3000psigの間の圧力で形成する。第2の実施形態においては、100〜1000psigの間である。
【0083】
混合物のpHを変化させて、生成物の所望の特徴に応じて沈澱又は共ゲル化速度を増加又は減少させることができる。一実施形態において、混合物は、反応工程(単数又は複数)の間、その本来のpHに保たれる。別の実施形態において、pHは、0〜12の範囲に維持される。別の実施形態において、4〜10の間である。さらなる実施形態において、pHは、7〜10の間の範囲である。pHの変更は、塩基若しくは酸を反応混合物に添加すること、又は温度増加の際に分解してpHをそれぞれ増加又は減少させる水酸化物イオン又はHイオンになる化合物を添加することによって為され得る。例として、ウレア、硝酸塩、水酸化アンモニウム、鉱酸、有機酸、鉱塩基、及び有機塩基が挙げられる。
【0084】
一実施形態において、助触媒金属成分(単数又は複数)の反応を、水溶性金属塩、例えば、亜鉛、モリブデン及びタングステン金属の塩を用いて実施する。溶液は、他の助触媒金属成分(単数又は複数)、例えば、カドミウム又は水銀化合物、例えばCd(NO若しくは(CHCOCd、コバルト又は鉄化合物を含めた第VIII族金属成分、例えばCo(NO若しくは(CHCOCo、並びに他の第VIB族金属成分(単数又は複数)、例えば、クロムをさらに含んでよい。
【0085】
一実施形態において、助触媒金属成分(単数又は複数)の反応を、水溶性のスズ、モリブデン及びタングステン金属塩を用いて実施する。溶液は、他の第IVA族金属成分(単数又は複数)、例えば鉛化合物、例えば、Pb(NO又は(CHCOPb、並びに他の第VIB族金属化合物、例えばクロム化合物をさらに含んでよい。
【0086】
適切な金属塩を用いて反応を実施することにより、以下がもたらされる:亜鉛/モリブデン/タングステン、スズ/モリブデン/タングステン、亜鉛/モリブデン、亜鉛/タングステン、スズ/モリブデン、スズ/タングステン、又は亜鉛/スズ/モリブデン/タングステン、又はニッケル/モリブデン/タングステン、コバルト/モリブデン/タングステン、ニッケル/モリブデン、ニッケル/タングステン、コバルト/モリブデン、コバルト/タングステン、又はニッケル/コバルト/モリブデン/タングステンの沈殿物又は共ゲルの組合せ。有機酸素含有配位子は、助触媒金属化合物及び/又は第VIB族金属化合物の沈澱又は共ゲル化の前に添加されても、その後に添加されてもよい。
【0087】
金属前駆体は、溶液、懸濁液又はこれらの組合せ中の反応混合物に添加されてよい。溶解性塩は、そのまま添加されると、反応混合物に溶解し、続いて沈澱又は共ゲル化する。溶液は、場合により真空下で加熱されて、沈澱又は水の蒸発を行うことができる。
【0088】
沈澱又は共ゲル化後、触媒前駆体を乾燥して水を除去することができる。乾燥は、大気条件下又は窒素、アルゴン若しくは真空などの不活性雰囲気下で実施され得る。乾燥は、有機化合物を除去しないが水を除去するのに十分な温度で行われ得る。好ましくは、乾燥は、一定重量の触媒前駆体が得られるまで約120℃で実施される。
【0089】
任意の結合剤成分(単数又は複数)を用いた沈殿物の形成:結合剤を用いる一実施形態において、結合剤成分は、溶液、懸濁液又はこれらの組合せ中、金属前駆体を含有する反応混合物に添加されて、沈澱又は共ゲル化を形成することができる。続いて沈殿物を乾燥させて水を除去する。
【0090】
結合剤としてケイ酸アルミン酸マグネシウムクレイを用いた一実施形態において、第1反応混合物は、ケイ素成分、アルミニウム成分、マグネシウム成分、助触媒金属化合物及び/又は第VIB族金属化合物を含んで形成される。一実施形態において、第1反応混合物は、周囲圧力及び温度条件下で形成される。一実施形態において、反応は、0.9バール〜1.2バールの範囲の圧力、及び約0℃〜100℃の間の温度において行われる。
【0091】
ケイ素成分の例として、限定されないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカゾル、ヒドロニウム−又はアンモニウム安定化シリカゾル、及びこれらの組合せが挙げられる。本発明のプロセスに有用なアルミニウム成分の例として、限定されないが、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及びこれらの組合せが挙げられる。本発明のプロセスに有用なマグネシウム成分の例として、限定されないが、マグネシウム金属、水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム、硫酸マグネシウム、及び硝酸マグネシウムが挙げられる。一実施形態において、金属前駆体及び結合剤成分を含有する混合物に十分量の酸を添加して、混合物のpHを約1〜約6に調整して、第1反応混合物を形成する。
【0092】
第1反応混合物の形成後、アルカリ塩基を添加して第2反応混合物を形成する。アルカリ塩基の例として、限定されないが、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。十分なアルカリ塩基を第1反応混合物に添加して、得られる第2反応混合物のpHを約7〜約12にする。次いで、第2反応混合物を、結合剤として少なくとも1つのクレイを包含する触媒前駆体を形成するのに十分な時間にわたって、十分な温度で反応させる。一実施形態において、当該時間は、少なくとも1秒である。第2の実施形態において、15分である。第3の実施形態において、少なくとも30分である。第2反応混合物の温度は、約0℃〜約100℃の範囲であってよい。反応は、圧力がより高いか又は低いかは考慮されないが、周囲圧力で為され得る。
【0093】
結合剤としてケイ酸アルミン酸マグネシウムクレイを用いる一実施形態において、シリコン対アルミニウム対マグネシウムの比は、元素モル比:aSi:bAl:cMg換算で表すことができ、「a」は、3〜8の値を有し、「b」は、0.6〜1.6の値を有し、「c」は、3〜6の値を有する。
【0094】
触媒前駆体の特性決定:電荷中性触媒前駆体の特性決定は、当技術分野で公知の技術を用いて実施することができ、例として、限定されないが、粉末X線回折(PXRD)、元素分析、表面積測定、平均孔径分布、平均細孔容積が挙げられる。多孔率及び表面積測定は、B.E.T.窒素吸着条件下でBJH分析を用いて実施することができる。
【0095】
触媒前駆体の特性:一実施形態において、触媒前駆体は、窒素吸着によって決定されるとき、0.05〜5ml/gの平均細孔容積を有する。別の実施形態において、平均細孔容積は、0.1〜4ml/gである。第3の実施形態において、0.1〜3ml/gである。
【0096】
一実施形態において、触媒前駆体は、少なくとも10m/gの表面積を有する。第2の実施形態において、少なくとも50m/gの表面積を有する。第3の実施形態において、少なくとも150m/gの表面積を有する。
【0097】
一実施形態において、触媒前駆体は、窒素吸着によって規定されるとき、2〜50nmの平均孔径を有する。第2の実施形態において、3〜30nmの平均孔径を有する。第3の実施形態において、4〜15nmの平均孔径を有する。
【0098】
結合剤としてケイ酸アルミン酸マグネシウムクレイを含む一実施形態において、触媒前駆体は、要素であるクレイ小板のスタックから構成される積層材料である。
【0099】
成形プロセス:一実施形態において、触媒前駆体組成物は、一般に、意図する商業用途に応じて種々の形状に直接形成されてよい。これらの形状は、押し出し、ペレット化、ビーズ化、又はスプレー乾燥などの任意の好適な技術によって作製され得る。バルク触媒前駆体組成物の液体の量が多すぎるため成形工程に直接付すことができない場合には、成形の前に固液分離を実施してよい。
【0100】
細孔形成剤の添加:触媒前駆体は、細孔形成剤と混合されてよく、当該剤の例として、限定されないが、ステアリン酸、ポリエチレングリコールポリマー、炭水化物ポリマー、メタクリル酸エステル、及びセルロースポリマーが挙げられる。例えば、乾燥した触媒前駆体を、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又は他のセルロースエーテルなどのセルロース含有材料と100:1〜10:1の間の比(触媒前駆体の重量%対セルロースの重量%)で混合して、押し出し可能な稠度の混合物が得られるまで水を添加してよい。市販のセルロース系細孔形成剤の例として、限定されないが以下が挙げられる:methocel(Dow Chemical Companyから入手可能)、avicel(FMC Biopolymerから入手可能)、及びporocel(Porocelから入手可能)。押し出し可能な混合物は、押し出され、次いで場合により乾燥され得る。一実施形態において、乾燥は、窒素、アルゴン若しくは真空などの不活性雰囲気下で実施され得る。別の実施形態において、乾燥は、70〜200℃の間の高温で実施され得る。なお別の実施形態において、乾燥は、120℃で実施される。
【0101】
硫化剤成分:電荷中性触媒前駆体は、硫化されて活性触媒を形成することができる。一実施形態において、硫化剤は、硫黄元素それ自体である。別の実施形態において、硫化剤は、一般的な条件下で硫化水素に分解可能な硫黄含有化合物である。さらに、第3の実施形態において、硫化剤は、HSそれ自体又はH中のHSである。
【0102】
一実施形態において、硫化剤は、硫化アンモニウム、ポリ硫化アンモニウム((NHSx)、チオ硫酸アンモニウム((NH)、チオ硫酸ナトリウム(Na)、チオウレアCSN、二硫化炭素、二硫化ジメチル(DMDS)、硫化ジメチル(DMS)、ポリ硫化ジブチル(DBPS)、メルカプタン、ポリ硫化t−ブチル(PSTB)、ポリ硫化t−ノニル(PSTN)などの群から選択される。別の実施形態において、硫化剤は、アルカリ−及び/又はアルカリ土類金属硫化物、アルカリ−及び/又はアルカリ土類金属硫化水素、並びにこれらの混合物から選択される。アルカリ−及び/又はアルカリ土類金属を含有する硫化剤の使用は、使用済み触媒からアルカリ−及び/又はアルカリ土類金属を除去するための追加の分離プロセス工程を必要とする可能性がある。
【0103】
一実施形態において、硫化剤は、水溶液中の硫化アンモニウムであり、この硫化アンモニウム水溶液は、精油所の排ガスである硫化水素及びアンモニアから合成され得る。この合成硫化アンモニウムは、易水溶解性であり、使用前にタンク内の水溶液中で容易に貯蔵され得る。一実施形態において、硫化は、硫化アンモニウム水溶液を用いて、また、チオダゾール、チオ酸、チオアミド、チオシアネート、チオエステル、チオフェノール、チオセミカルバジド、チオウレア、メルカプトアルコール、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの硫黄添加物の存在下で行う。
【0104】
一実施形態において、炭化水素原料は、触媒前駆体の硫化を実施するための硫黄源として用いられる。炭化水素原料による触媒前駆体の硫化は、水素化処理の間、1つ又は複数の水素化処理反応器において実施され得る。
【0105】
一実施形態において、硫化剤は、触媒前駆体から硫化触媒を形成するのに必要な化学量論量の過剰量で存在する。別の実施形態において、硫化剤の量は、触媒前駆体から硫化触媒を生成する少なくとも3対1の硫黄対第VIB族金属のモル比で表す。第3の実施形態において、硫黄含有化合物の全量は、金属を例えばCO、MoS、WS、Niなどに転換するのに必要な化学量論硫黄量の約50〜300%、70〜200%、及び80〜150%のいずれかに相当するように一般に選択される。
【0106】
硫化工程:触媒を形成する触媒前駆体の硫化(「前硫化」(“presulfiding”)と称する場合がある)は、触媒を水素化処理反応器に導入する前に実施され得る(したがって、エクスサイチュ(ex−situ)での硫化)。別の実施形態では、硫化はインサイチュ(in−situ)である。硫化プロセスがエクスサイチュで行われる一実施形態では、水素化処理ユニットにおいて望ましくない化合物の形成が抑制される。一実施形態において、触媒前駆体は、70℃〜500℃の範囲の温度で10分〜15日間、H含有気体圧力下で硫化剤と接触する際に活性触媒に転換される。硫化温度が、硫化剤の沸点、例えば硫化アンモニウム溶液の場合において60〜70℃より低いとき、プロセスは、大気圧で一般に実施される。硫化剤/任意成分の沸点温度を超えると、反応は加圧下で一般に実施される。
【0107】
一実施形態において、硫化は、水素、及びHSに分解可能な硫黄含有化合物を含む気相中で実施され得る。例として、メルカプタン、CS、チオフェン、DMS、DMDS及び好適なS含有の精油所排ガスが挙げられる。HSのみの使用で十分である。気相中の触媒前駆体と水素及び硫黄含有化合物との間の接触は、一実施形態では125℃〜450℃(257°F〜842°F)の間の温度で、別の実施形態においては225℃〜400℃(437°F〜752°F)の間の温度で、一工程で行われ得る。一実施形態において、硫化は、温度を例えば、1分当たり0.5〜4℃(0.9〜7.2°F)の増分で増加させながらある期間にわたって実施し、完了まで例えば、1〜12時間の期間継続する。
【0108】
本明細書において用いるとき、硫化プロセスの完了は、金属を例えばCO、MoS、WS、Niなどに転化するのに必要な化学量論硫黄量の少なくとも95%が使い尽くされたことを意味する。
【0109】
気相中での硫化の別の実施形態において、硫化は、2以上の工程で行われ、第1工程が次の工程(単数又は複数)よりも低い温度で行われる。例えば、第1工程は、約100〜250℃(212°F〜482°F)、好ましくは約125〜225℃(257°F〜437°F)で行われる。短時間、例えば、1/2〜2時間(温度は水平状態に保たれる)の後、第2工程が、約225〜450℃(437°F〜842°F)、好ましくは約250〜400℃(482°F〜752°F)で実施され得る。硫化工程の間、全圧は、大気〜約10バール(1MPa)の間であってよい。H及び硫黄含有化合物の気体混合物は、当該工程において同じであっても異なっていてもよい。気相中での硫化は、固定床プロセス及び移動床プロセス(触媒が、反応器、例えば、沸騰プロセス及び回転炉に対して移動する)を含む任意の好適な方法で行われ得る。
【0110】
一実施形態において、硫化は、液相において実施される。第1に、触媒前駆体を、触媒前駆体の細孔容積の20〜500%の範囲の量で有機液体と接触させる。有機液体との接触は、周囲温度〜250℃(482°F)の範囲の温度であり得る。有機液体の組み込み後、触媒前駆体を水素及び硫黄含有化合物と接触させる。
【0111】
一実施形態において、有機液体は、約100〜550℃(212〜1022°F)の沸点範囲を有する。別の実施形態において、有機液体は、石油留分、例えば重質油、鉱油系潤滑油のような潤滑油留分、常圧軽油、減圧軽油、直留軽油、揮発油(white spirit)、ディーゼルのような中間留分、ジェット燃料及び灯油、ナフサ、並びにガソリンである。一実施形態において、有機液体は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満の硫黄を含有する。
【0112】
一実施形態において、液相中の硫化(又は「始動」)は、「迅速な」プロセスとして行われ、硫化が72時間未満の期間にわたって起こり、温度の上昇は、1分当たり0.5〜4℃(0.9〜7.2°F)の範囲である。第2の実施形態において、迅速な始動にかかる時間は、48時間未満である。第3の実施形態において、24時間未満である。
【0113】
迅速な硫化において、水素を有する有機液体中の触媒前駆体と硫黄含有化合物との接触は、一実施形態では150℃〜450℃の間の温度で、別の実施形態においては225℃〜400℃の間の温度で、一工程で行われ得る。迅速な硫化のなお別の実施形態において、硫化は、2以上の工程で行われ、第1工程が次の工程(単数又は複数)よりも低い温度で行われる。例えば、第1工程は、約100〜250℃(212°F〜482°F)、又は約125〜225℃(257°F〜437°F)で行われる。例えば、1/2〜2時間(温度は水平状態に保たれる)の短時間の後に、次いで第2工程について温度を、例えば、250〜450℃(482°F〜842°F)、好ましくは225〜400℃(437°F〜752°F)に上昇させる。温度は、1〜36時間維持され、この後、硫化が完了する。
【0114】
なお別の実施形態において、液相中の硫化は、「遅い」プロセスとして行われ、硫化は、4日〜最大で3週間、すなわち、少なくとも96時間にわたって起こる。この遅いプロセスにおいて、水素を有する有機液体中の触媒前駆体と硫黄含有化合物との接触は、2以上の工程で行われ、第1工程を次の工程(単数又は複数)よりも低い温度で行い、温度を例えば、1分ではなく1時間当たりで迅速な始動と同様の増分でゆっくりと上昇させる。H及び硫黄含有化合物の気体混合物は、当該工程において同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、第1工程は、1時間当たり0.25〜4℃(0.45〜7.2°F)の温度上昇速度で、約100〜375℃(212°F〜707°F)、好ましくは約125〜350℃(257°F〜662°F)である。第1工程後、温度を2〜24時間の期間にわたって一定に保持し、次いで第2工程について1時間当たり5〜20℃(9〜36°F)の速度で上昇させる。一実施形態において、第2工程を約200〜450℃(392°F〜842°F)、好ましくは約225〜400℃(437°F〜752°F)で実施する。
【0115】
一実施形態において、硫化は、硫黄元素によって行われ、ここで、硫黄は、触媒前駆体の細孔内に組み入れられる。このプロセスにおいて、硫黄元素は、硫黄の融点未満の温度において触媒前駆体と、2〜15重量%の触媒前駆体重量で混合される。一実施形態において、混合は180〜210°F(82°〜99℃)である。前駆体及び硫黄元素の混合に続いて又は同時に、混合物を高沸点の有機液体と接触させる。次いで混合物を、窒素の存在下、250〜390°F(121°〜199℃)の範囲の温度に加熱して、HS及び硫化金属を生成する。一実施形態において、有機液体は、オレフィン、ガソリン、揮発油、ディーゼル、軽油、鉱油系潤滑油、及びホワイト油からなる群から選択される。
【0116】
一実施形態において、触媒前駆体の実施形態から硫化された触媒が、硫化が気相によっても液相中であっても、驚くべきことに、「迅速な」プロセスと同じ700°F+転化速度をもたらすことが分かる。一実施形態において、700°F+転化は、液相中及び「遅い」プロセスによって硫化された触媒の使用により、少なくとも25%増加することが分かる。なお別の実施形態において、700°F+転化は、遅いプロセスによって硫化される触媒によって2倍になる。
【0117】
触媒の用途:触媒前駆体組成物から調製される多金属触媒(multi−metallic catalyst)は、実質的に全ての水素化処理プロセスに用いられ、複数のフィードを広い範囲の反応条件下、例えば200〜450℃の温度、15〜300バールの水素圧、0.05〜10/時間の液空間速度、及び35.6〜2670m/m(反応器への炭化水素化合物フィード:200〜15000SCF/B−又は「標準立方フィート/バレル」)の水素処理ガス速度で処理することができる。
【0118】
水素化処理プロセスは、1つ又は複数の反応領域で実施されてよく、向流又は並流モードのいずれかで実施されてよい。向流モードによって、フィードストリームが水素含有処理気体の流れに向流するプロセスが意図される。水素化処理はまた、硫黄及び窒素化合物の除去並びに石油中間留分などの軽い化石燃料中に存在する芳香族分子の水素化のためのスラリー及び沸騰床水素化処理プロセス、例えば循環スラリー触媒前駆体を使用する重質油の水素化処理も含む。
【0119】
水素化処理プロセスは、一段階であっても多段階であってもよい。一実施形態において、当該プロセスは、2段階系であり、第1及び第2段階で異なる触媒を使用し、系で用いられる触媒の少なくとも1つが本発明の触媒前駆体組成物から調製される。
【0120】
触媒前駆体から調製される触媒を用いる水素化処理プロセスでの使用のためのフィードとして、石油及び化学原料、例えば、オレフィン、常圧蒸留原油、水素化分解物、ラフィネート、水素化処理油、常圧及び減圧軽油、コーカー軽油、常圧及び減圧残油、脱れき油、脱ロウ油、スラックワックス、フィッシャートロプシュワックス並びにこれらの混合物を挙げることができる。具体的な例は、比較的軽質の留分から高沸点の原料油、例えば、全原油、常圧蒸留原油、減圧塔残油、プロパン脱れき残油、ブライトストック、サイクル油、FCC塔底油、コーカー軽油及び減圧軽油を含めた軽油、脱れき残油並びに他の重質油の範囲に及ぶ。一実施形態において、原料は、C10+原料である。別の実施形態において、原料は、留分原料油、例えば、軽油、ケロセン、ジェット燃料、230℃を超えて沸騰する潤滑油原料、灯油、水素化処理油原料、フルフラール抽出潤滑油原料、並びにその流動点及び粘度特性がある仕様限界内に維持される必要がある他の蒸留分から選択される。
【0121】
一実施形態において、原料は、かなりの量の窒素、例えば少なくとも10wppmの窒素を有機窒素化合物の形態で含有する。フィードはまた、約0.1重量%〜3重量%、又はそれを超える範囲の相当な硫黄含量を有することもできる。
【0122】
触媒前駆体から調製された触媒を用いた水素化処理プロセスは、第II族又は第III族の基油の要件を満たす潤滑基油原料を作製するのに好適であり得る。一実施形態において、触媒前駆体は、ホワイト油を生成する水素化処理プロセスにおける使用のための触媒を調製する際に用いられる。白色鉱油、いわゆるホワイト油は、原油原料の精製によって得られる無色、透明の油性液体である。
【0123】
触媒前駆体から調製される触媒は、いずれの反応器タイプに適用されてもよい。一実施形態において、触媒は、固定床反応器に適用される。別の実施形態において、触媒を含有する2以上の反応器は直列で用いられ得る。触媒は、非担持形態又はアルミナ若しくはシリカなどの担持マトリクスにおいてスラリーとして用いられ得る。
【0124】
一実施形態において、触媒前駆体から調製される多金属触媒は、それ自体が固定床の水素化処理反応器に用いられる。別の実施形態において、多金属触媒は、固定床の反応器において、少なくとも1つの異なる触媒と併用され、触媒は、積層床方式で充填される。一実施形態において、多金属触媒は、積層/段階系(layered/graded system)で使用され、第1層の触媒はより大きい孔径を有し、第2層は、本発明の一実施形態の多金属触媒である。
【0125】
触媒前駆体から調製される多金属触媒が積層床系において用いられる一実施形態において、多金属触媒は、全触媒の少なくとも10体積%を構成する。第2の実施形態において、多金属触媒は、触媒系の少なくとも25体積%を構成する。第3の実施形態において、多金属触媒は、積層触媒系の少なくとも35体積%を構成する。第4の実施形態において、多金属触媒は、積層床系の少なくとも50体積%を構成する。第5の実施形態において、多金属触媒は、積層床系の少なくとも80体積%を構成する。
【0126】
一実施形態において、触媒前駆体から調製される多金属触媒は、水素化プロセスに使用される従来技術の触媒に比べて汚染に対する感受性が低い、すなわち、より低い汚染速度を有することを特徴とする。
【0127】
触媒前駆体から調製される多金属が反応器系において単なる触媒として使用される一実施形態において、多金属触媒は、1000時間当たり8°F(4.4℃)未満の汚染速度を有し、すなわち、触媒作用反応器の温度は、水素化脱窒素(HDN)プロセスの改質生成物において目標の窒素レベル、20ppmを維持するためには、1000時間当たり8°F以下で増加する必要がある。汚染速度の定義の項において記載されているように、このHDNプロセスにおけるフィードは、以下の特性を有する真空軽油(VGO)である:100℃で4.6CSt粘度、0.928g/ccの密度、178〜495℃の沸点範囲、及び1.66の水素対炭素原子比。プロセス条件は、370〜425℃の温度、10MPaの圧力、1.0/時間のLHSV、及び5000scfbの水素流量を含む。HDNの目標は、改質された生成物において窒素レベルが20ppmである。
【0128】
多金属触媒が単なる触媒であるなお別の実施形態において、多金属触媒は、1000時間当たり5°F(2.8℃)未満の汚染速度を有する。第3の実施形態において、汚染速度は、1000時間当たり2.5°F(1.9℃)未満である。
【0129】
3層の3つの異なる触媒を有し多金属触媒が10〜80体積%を構成する固定床水素化処理反応器において使用されるなお別の実施形態において、この触媒系は、上記のようにVGOフィードを用いて改質された生成物において目標の20wtppmのN濃度において、1000時間当たり30°F(16.7℃)未満の汚染速度を有する(表3も参照のこと)。第2の実施形態において、汚染速度は、触媒が少なくとも25体積%の積層触媒系を構成する系について1000時間当たり26°F(14.4℃)未満である。第3の実施形態において、少なくとも35体積%の多金属触媒を構成する触媒系は、同じNの目標(全液体生成物中20wtppmのN)で、1000時間当たり19°F(10.6℃)未満の汚染速度を有する。第4の実施形態において、多金属触媒の少なくとも50体積%を構成する触媒系は、同じNの目標(全液体生成物中20wtppmのN)で、1000時間当たり10°F(5.6℃)未満の汚染速度を有する。
【0130】
一実施形態において、本発明の前駆体に基づく多金属触媒は、低い水素分圧下での水素化処理、例えば600psig未満の水素分圧を有する水素化分解プロセスに用いられ得る。これは、低水素分圧の触媒活性への悪影響に関して教示する従来技術の観点から、驚くべきことである。一実施形態において、多金属触媒は、500psig未満の水素分圧下で水素化処理に用いられる。第2の実施形態において、多金属触媒は、400〜600psigの間の水素分圧下での使用のためのものである。第3の実施形態において、水素分圧は、400〜500psigの間である。多金属触媒の実施形態を使用して低圧を適用できることが、構造及び運転費用の大幅な節約をもたらすため、特に好ましい。
【0131】
約400psigの水素分圧下での水素化転化プロセスの一実施形態において、多金属触媒は、約600psigの水素分圧で得られる700°F+転化の少なくとも50%の700°F+転化を与える。第2の実施形態において、約400psig以下の水素分圧での700°F+転化速度は、約600psig以上の水素分圧で得られる700°F+転化の少なくとも75%である。第3の実施形態において、約400psig以下の水素分圧での700°F+転化速度は、約600psig以上の水素分圧で得られる700°F+転化の少なくとも80%である。
【0132】
450〜500psigの範囲の水素分圧下での水素化転化プロセスの一実施形態において、本発明の前駆体に基づく多金属触媒は、同程度の条件であるが2000psigを超える水素分圧下で除去される窒素の少なくとも70%を除去する。
【実施例】
【0133】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることを意図している。
【0134】
例1 Ni−Mo−W−マレイン酸塩触媒前駆体
式(NH){[Ni2.6(OH)2.08(C2−0.06](Mo0.350.65}の触媒前駆体を以下のように調製した:52.96gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HOを2.4Lの脱イオン水に室温で溶解した。得られた溶液のpHは5〜6の範囲内であった。次いで73.98gのメタタングステン酸アンモニウム粉末を上記溶液に添加して、完全に溶解するまで室温で撹拌した。90mlの濃(NH)OHを一定に撹拌しながら溶液に添加した。得られたモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液を10分間撹拌し、pHをモニターした。溶液は、9〜10の範囲のpHを有した。174.65gのNi(NO・6HOの150mlの脱イオン水溶液を含有する第2溶液を調製し、90℃に加熱した。次いで、ニッケルの熱溶液をゆっくりと1時間かけてモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液に添加した。得られた混合物を91℃に加熱し、30分間撹拌を続けた。溶液のpHは、5〜6の範囲内であった。青緑色の沈殿物が形成され、この沈殿物を濾過によって収集した。沈殿物を10.54gのマレイン酸の1.8L DI水溶液に分散させて70℃に加熱した。得られたスラリーを70℃で30分間撹拌し、濾過して、収集した沈殿物を室温で一晩真空乾燥させた。次いで物質を120℃で12時間さらに乾燥させた。得られた物質は、アモルファスNi−OH含有物質を示す、2.5Åに幅広いピークを有する典型的なXRDパターンを有する。得られた物質のBET表面積は、101m/gであり、平均細孔容積はおよそ0.12〜0.14cc/gであり、平均孔径はおよそ5nmであった。
【0135】
例2 Co−Mo−W−マレイン酸塩触媒前駆体
式(NH){[Co3.0(OH)3.0−c(C2−c/2](Mo0.340.66}の触媒前駆体を以下のように調製した:2.0gのマレイン酸を800gの脱イオン水に室温で溶解した。得られた溶液のpHは2〜3の範囲内であった。17.65gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HO粉末を上記溶液に溶解し、続いて24.67gのメタタングステン酸アンモニウム(NH1240・xHO(>66.5% W)を添加した。得られた溶液のpHは4〜5の範囲内であった。30mlの濃(NH)OHを一定に撹拌しながら溶液に添加した。得られたモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液を10分間撹拌し、pHをモニターした。溶液は、室温で9〜10の範囲のpHを有し、これを90℃に加熱した。58.28gの硝酸コバルトの50gの脱イオン水溶液を含有する第2溶液を調製した。次いで、コバルトの熱溶液をゆっくりと25分間かけてモリブデン酸塩/タングステン酸塩の熱溶液に添加した。得られた混合物を90℃で1時間続けて撹拌した。溶液のpHはおよそ6であった。当該プロセスで形成された暗い紫がかった褐色沈殿物を濾過によって収集した。沈殿物を250gのDI水に70℃で分散させた。得られたスラリーを30分間撹拌し、濾過し、収集した沈殿物を室温で一晩真空乾燥させた。次いで物質を120℃で12時間さらに乾燥させた。
【0136】
例3 Co−Mo−W触媒前駆体
式(NH{[Co3.31(OH)3.62](Mo0.30.7}の触媒前駆体を以下の手順で調製した:17.65gのヘプタモリブデン酸アンモニウム粉末(NHMo24・4HOを800.00gの脱イオン水に室温で溶解し、続いて24.66gのメタタングステン酸アンモニウム(NH1240・xHO(>66.5% W)を添加した。得られた溶液のpHは5.2〜5.4の範囲内であった。58.26gの硝酸コバルト6水和物の50.0gの脱イオン水溶液を含有する第2溶液を調製した。得られた溶液のpHは1〜2の範囲内であった。30mlの濃(NH)OHを一定に撹拌しながら溶液に添加した。初めにモスグリーンの着色沈殿物が形成された後、次に、底部の緑がかった懸濁液及び上部褐色層を有する2層混合物になった。次いでコバルト含有混合物を室温で25分間かけてゆっくりとモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液に添加した。得られた溶液のpHは8〜8.5の範囲内であった。混合物を80℃に加熱し、1時間続けて撹拌した。紫がかった灰色の懸濁液を加熱しながら濾過した。沈殿物を2.5LのDI水に70℃で分散させた。得られたスラリーを30分間撹拌し(pH〜(約)7.6)、濾過し、収集した沈殿物を室温で一晩真空乾燥させた。次いで物質を120℃で12時間さらに乾燥させた。
【0137】
例4 押し出しプロセス
この例では、例1〜3により調製された乾燥触媒前駆体40gを0.8gのmethocel(Dow Chemical Companyから市販されているメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマー)と混合し、約7gのDI水を添加した。さらに7gの水を、混合物が押し出し可能な稠度を有するまでゆっくりと添加した。次いで混合物を押し出して、N下120℃で乾燥した後に硫化した。
【0138】
例5 硫化DMDS液相
例1〜3の触媒前駆体を管状反応器に入れた。温度を、8ft/時間のN2(g)下、室温から250°Fに100°F/時間の速度で上昇させた。反応を1時間続けた後、Nのスイッチを切り、8ft/時間及び200psigのHで1時間置換した。1時間当たり8キュービックフィートの水素ガス速度を維持しながら、VGO軽質油(950°F未満の終点)を触媒前駆体に250°Fにおいて130cc/時間(1LHSV)の速度にてポンプで送り込んだ。次いで、触媒前駆体を25°F/時間の速度で430°Fに加熱し、二硫化ジメチル(DMDS)を軽質VGOに4cc/時間の速度で約4時間添加した。次いで、触媒前駆体を600°Fに加熱し、DMDS添加速度を8cc/時間に増加させた。温度を600°Fで2時間維持した後、硫化を完了した。
【0139】
例6 DMDS気相による硫化
例4によって押し出された例1〜3の触媒前駆体を管状反応器に入れた。温度を、8ft/時間のN2(g)下、450°Fに100°F/時間の速度で上昇させた。反応を1時間続けた後、Nのスイッチを切り、8ft/時間及び100psigのHで1時間置換した。次いでH圧を300psigに増加させ、1時間未満維持し、この後、二硫化ジメチル(DMDS)を4cc/時間の速度で添加し、次いで反応物を4時間処理させた。次いで、触媒前駆体を600°Fに加熱し、DMDS添加速度を8cc/時間に増加させた。温度を600°Fで2時間維持した後、硫化を完了した。
【0140】
例7−触媒/触媒前駆体比較
この例では、従来の触媒(アルミナ担持Ni−Mo、Co−Mo−W及びNi−Mo−W非担持触媒)及び種々の実施形態の硫化された触媒前駆体(例2のCo−Mo−W/マレイン酸塩、例3のCo−Mo−W、及び例1のNi−Mo−W/マレイン酸塩)を含めた種々の触媒/触媒前駆体を評価し比較した。評価は、表1に提示するように700°Fを超える沸点、31135ppmの硫黄含量、31230ppmの窒素含量、及び他の特性を有する減圧軽油(VGO)原料を用いた水素化分解、HDS、及びHDN活性を含んだ。反応器条件は、2300psiの圧力、5000SCFBのHガス速度、及び0.75のLHSVであった。
【0141】
Ni/Mo/アルミナは、従来の担持触媒である。Ni/Mo/Wは、米国特許第6,712,955号及び米国特許第6,299,760号に参照されている触媒のラインに沿った非担持触媒である。Ni/Mo/W/マレイン酸塩、Co/Mo/W、及びCo/Mo/W/マレイン酸塩は、それぞれ例1、2及び3で作製された触媒前駆体であり、例6のように硫化される。評価結果を表2に提示する。
【0142】
図1は、比較の非担持触媒前駆体Ni/Mo/Wの粉末X線回折パターン(「XRD」)である。図2は、例1のNi/Mo/W/マレイン酸塩に基づく触媒前駆体のXRDである。図3は、本発明の第2の実施形態、例2のCo/Mo/W/マレイン酸塩前駆体に基づく触媒のXRDである。図4は、例3の比較触媒前駆体Co/Mo/WのXRDである。XRD図において、触媒サンプルを10〜15分間DI水で一般に洗浄し、XRDの前にいずれの未反応の塩も洗い流した。
【表1】


【表2】

【0143】
表に示すように、第VIII族金属がニッケルであったとき、有機酸素含有配位子を触媒前駆体の合成に添加することにより、725(従来のNi−Mo−アルミナ)及び700(Ni−Mo−W従来技術)から690(Ni−Mo−W−マレイン酸塩)に30%転化温度を減少させることで触媒活性が改善された。第VIII族金属がコバルトであったとき、有機酸素含有配位子(マレイン酸塩)が触媒前駆体調製物に添加されたとき活性が増加する同様の傾向が明らかになった。
【0144】
例8−HDN系使用触媒:一実施形態の触媒前駆体を使用した触媒の性能を、水素化脱窒素(HDN)系において評価した。
【0145】
比較触媒系Iは2層を使用する。第1層は、20体積%の触媒A、80〜100オングストローム(Å)の範囲の孔径の水素化分解前処理用途の市販の高活性触媒(San RamonのChevron Lummus Global製、CA)を含む。第2層は、80体積%の、70〜90Åの範囲のより小さい孔径を有する水素化分解前処理用途の別の市販の高活性触媒、触媒B(同様に、Chevron Lummus Global製)を含む。
【0146】
触媒系IIは、積層系において触媒前駆体を用いる一実施形態の多金属触媒を使用する。上層は、20体積%の触媒Aを含み、中間層は、55体積%の触媒Bを含み、底層は、25体積%の、例1の触媒前駆体から調製された触媒を含む。
【0147】
この例では、触媒前駆体を、液相硫化手順を用いて硫化した。すなわち、触媒を硫化フィード(例えば、例5のようにディーゼル又は軽質VGO中の二硫化ジメチル)と約175〜250°Fで押し出し接触させ、続いて550〜700°Fに反応器温度をゆっくり上昇させた。
【0148】
両方の系において、硫化後、系の全圧を1500psigに増加させ、直留軽質VGOフィードに変換した。反応器温度を620°Fに増加し、3日間比較的定常状態に保持した。その後、反応器温度を700〜780°Fに増加し、系を全圧1500psig(反応器入口で1400psig H);5000SCF/Bの貫流Hフィード、及び1.0/時間のLHSVで運転した。表3に列挙する特性を有する石油原料を、全液体生成物(「WLP」)中20wtppmのNの水素化処理(又はHDT)目標のために、両触媒系を通して処理した。
【表3】

【0149】
表4は、ストリームにおいて480時間後、2触媒系を比較したときのHDN運転による収率及び生成物特性を列挙する。結果は、一実施形態の触媒前駆体を用いて作製された触媒を使用した系IIが、従来技術による触媒系Iより少なくとも20°FだけHDN(水素化脱窒素)において活性を実証することを示した。例えば、触媒系IIは、480時間で731°FのC.A.T.を有するストリッパーボトム生成物中に17.7ppmの窒素を与え、比較触媒系Iは、504時間にて751°FのC.A.T.で17.5ppmの窒素を与えた。
【0150】
図5は、2つの触媒系:従来技術の触媒を含む系I、及び一実施形態の触媒前駆体から作製された触媒を含む系IIの汚染速度をさらに例証し/比較する。示すように、比較触媒系Iは、1000時間当たり32°Fの汚染速度を有するのに対し、触媒系IIは1000時間当たり26°Fの汚染速度を有する。運転の終わりに、両系のC.A.T.を上昇させて、同じ所望のHDN転化速度、すなわち、WLP中20wtppm未満のNにする必要があった。系IIでは、C.A.T.を888時間で741°Fに上昇させ、系Iでは1008時間で766°Fに上昇させた。
【0151】
例9−HDN系使用触媒:一実施形態の触媒前駆体を使用した触媒の性能を、水素化脱窒素(HDN)系において評価した。
【0152】
比較触媒系Iは2層を使用する。第1層は、20体積%の触媒A、80〜100オングストローム(Å)の範囲の孔径の水素化分解前処理用途の市販の高活性触媒(San RamonのChevron Lummus Global製、CA)を含む。第2層は、80体積%の、70〜90Åの範囲のより小さい孔径を有する水素化分解前処理用途の別の市販の高活性触媒、触媒B(同様に、Chevron Lummus Global製)を含む。
【0153】
触媒系IIは、積層系において触媒前駆体を用いる一実施形態の多金属触媒を使用する。上層は、20体積%の触媒Aを含み、中間層は、55体積%の触媒Bを含み、底層は、25体積%の、例1の触媒前駆体から調製された触媒を含む。
【0154】
この例では、触媒前駆体を、液相硫化手順を用いて硫化した。すなわち、触媒を硫化フィード(例えば、例5のようにディーゼル又は軽質VGO中の二硫化ジメチル)と約175〜250°Fで押し出し接触させ、続いて550〜700°Fに反応器温度をゆっくり上昇させた。
【0155】
両方の系において、硫化後、系の全圧を1500psigに増加させ、直留軽質VGOフィードに変換した。反応器温度を620°Fに増加し、3日間比較的定常状態に保持した。その後、反応器温度を700〜780°Fに増加し、系を全圧1500psig(反応器入口で1400psig H);5000SCF/Bの貫流Hフィード、及び1.0/時間のLHSVで運転した。表3に列挙する特性を有する石油原料を、全液体生成物(「WLP」)中20wtppmのNの水素化処理(又はHDT)目標のために両触媒系を通して処理した。
【0156】
表4は、ストリームにおいて480時間後、2触媒系を比較したときのHDN運転による収率及び生成物特性を列挙する。結果は、一実施形態の触媒前駆体を用いて作製された触媒を使用した系IIが、従来技術による触媒系Iより少なくとも20°FだけHDN(水素化脱窒素)において活性を実証することを示した。例えば、触媒系IIは、480時間で731°FのC.A.T.を有するストリッパーボトム生成物中に17.7ppmの窒素を与え、比較触媒系Iは、504時間にて751°FのC.A.T.で17.5ppmの窒素を与えた。
【0157】
図5は、2つの触媒系:従来技術の触媒を含む系I、及び一実施形態の触媒前駆体から作製された触媒を含む系IIの汚染速度をさらに例証し/比較する。示すように、比較触媒系Iは、1000時間当たり32°Fの汚染速度を有するのに対し、触媒系IIは1000時間当たり26°Fの汚染速度を有する。運転の終わりに、両系のC.A.T.を上昇させて、同じ所望のHDN転換速度、すなわち、WLP中20wtppmのNにする必要があった。系IIでは、C.A.T.を888時間で741°Fに上昇させ、系Iでは1008時間で766°Fに上昇させた。
【0158】
例10 硫化−遅い硫化−DMDS液相
例1の触媒前駆体(Ni−Mo−W−マレイン酸塩触媒前駆体)を管状反応器に入れた。温度を、8ft/時間のNガス下、室温から250°Fに100°F/時間の速度で上昇させ、触媒前駆体を乾燥させた。約1時間後、Nのスイッチを切り、8ft/時間及び200psigのHで1時間置換した。1時間当たり8キュービックフィートの水素ガス速度を維持しながら、ディーゼルを触媒前駆体に250°Fにおいて130cc/時間(1LHSV)の速度にてポンプで送り込んだ。触媒前駆体を1.88°F/時間の速度で600°Fまでゆっくりと加熱しながら、DMDSを0.4cc/時間で約40時間、次いで0.8cc/時間に増加させて添加した。600°Fに達した後、触媒前駆体をディーゼル/DMDS液相中に12時間浸したままにし、次いで25°F/時間の速度で700°Fまで加熱した。
【0159】
例11−異なる硫化プロセスによる触媒の評価:この試験は、表3の特性を有する減圧軽油(VGO)原料並びに反応器条件:2300psiの圧力、5000SCFBのHガス速度、及び0.75のLHSVを用いた水素化分解、HDS、及びHDN活性の評価を含む例7と同様であった。例9(「遅い」硫化プロセス)で硫化された触媒の性能を、従来の触媒(アルミナ担持Ni−Mo、Co−Mo−W及びNi−Mo−W非担持触媒)、及び「迅速な」硫化プロセスを用いて硫化された種々の実施形態の触媒前駆体(例2のCo−Mo−W/マレイン酸塩、及び例1のNi−Mo−W/マレイン酸塩)と比較した。
【0160】
例9(「遅い」硫化プロセス)で硫化された触媒の700°F+転化は、695°Fで43重量%/重量%であったのに対して、従来の触媒(アルミナ担持Ni−Mo、Co−Mo−W及びNi−Mo−W非担持触媒)及び「迅速な」硫化プロセスを用いて硫化された種々の実施形態の触媒前駆体(表2の700°F+転化結果を参照)からは20〜35重量%/重量%の転化速度を得た。加えて、例9で硫化された触媒は、0.5ppm−wtのNを有する700°F+生成物を与えたのに対し、例7では〜1ppm−wtのNであった。このことは、遅い硫化の際の700°F+転化及びHDN活性において10〜15°Fの利得を意味する。
【0161】
例12−異なるH分圧の評価:この例では、例10(「遅い」硫化)で硫化された触媒を、水素化分解、HDS、及びHDN活性について表5に示す特性を有する減圧軽油(VGO)原料を用いて評価した。触媒を2つの異なる反応器条件下で評価した:同じHガス速度(5000SCFB)及びLHSV(0.75)で、それぞれH分圧400psi及び600psiの反応器圧。低圧(400psiのH分圧)では、700°F+転化速度が約15%であり、600psiのH分圧では約30%の700°F+転化速度の半分であった。
【表4】

【0162】
例13 Zn−Mo−W−マレイン酸塩触媒前駆体
式(NH{[Zn2.62(OH)2.16(C2−0.04](Mo0.420.58}の触媒前駆体を以下のように調製した:2.01gのマレイン酸を800.06gの脱イオン水に室温で溶解した。得られた溶液のpHは2〜3の範囲内であった。17.68gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HO粉末を上記溶液に溶解し、続いて24.67gのメタタングステン酸アンモニウム(NH1240・xHO(>66.5% W)を添加した。得られた溶液のpHは4〜5の範囲内であった。30mlの濃(NH)OHを一定に撹拌しながら溶液に添加した。得られたモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液を10分間撹拌し、pHをモニターした。溶液は、室温で9〜10の範囲のpHを有し、これを90℃に加熱した。50gの脱イオン水溶液に溶解した59.65gの硝酸亜鉛六和物を含有する第2溶液を調製した。次いで、亜鉛の熱溶液をゆっくりと25分間かけてモリブデン酸塩/タングステン酸塩の熱溶液に添加した。溶液はおよそ6のpHを有した。得られた混合物を90℃で1時間撹拌し続けた。白色懸濁液を熱いままで濾過した。沈殿物を2.5LのDI水に70℃で分散させた。得られたスラリーを30分間撹拌し(pH〜7)、濾過し、収集した沈殿物を室温で一晩真空乾燥させた。次いで物質を120℃で12時間さらに乾燥させた。得られた物質のBET表面積は101m/gであり、平均細孔容積は約0.12〜0.14cc/gであり、平均孔径は約5nmであった。
【0163】
触媒前駆体生成物のPXRDパターンを図6に示す。
【0164】
例14 別のZn−Mo−W−マレイン酸触媒前駆体
式(NH{[Zn2.7(OH)2.3(C2−0.05](Mo0.510.49}の触媒を以下のように調製した:17.65gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HO粉末を800.00gの脱イオン水に室温で溶解し、続いて24.67gのメタタングステン酸アンモニウム(NH1240・xHO(>66.5% W)を添加した。得られた溶液のpHは、5.2〜5.4の範囲内であった。30mlの濃(NH)OHを一定に撹拌しながら溶液に添加した。得られたモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液を10分間撹拌し、pHをモニターした。59.56gの硝酸亜鉛6水和物の50.02gの脱イオン水溶液を含有する第2溶液を調製した。2.0gのマレイン酸を溶液に添加し、完全に溶解させた。得られた溶液のpHは、0〜1の範囲内であった。次いで亜鉛溶液をモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液に50分間かけて室温でゆっくりと添加した。得られた混合物を90℃に加熱し、1時間撹拌し続けた。白色懸濁液を熱いままで濾過した。沈殿物を2.5LのDI水に70℃で分散させた。得られたスラリーを30分間撹拌し(pH〜7)、濾過し、収集した沈殿物を室温で一晩真空乾燥させた。次いで物質を120℃で12時間さらに乾燥させた。
【0165】
得られた触媒前駆体のPXRDパターンを図7に示す。
【0166】
例15−押し出しプロセス
この例では、例1、13、及び14で調製された乾燥触媒前駆体40gを0.8gのmethocel(Dow Chemical Companyから市販されているメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマー)と混合し、約7gのDI水を添加した。さらに7gの水を、混合物が押し出し可能な稠度を有するまでゆっくりと添加した。次いで混合物を押し出して、N下120℃で乾燥した後に硫化した。
【0167】
例16−硫化DMDS液相
例1、13及び14の触媒前駆体を管状反応器に入れた。温度を、8ft/時間のN2(g)下、250°Fに100°F/時間の速度で上昇させた。反応を1時間続けた後、Nのスイッチを切り、8ft/時間及び200psigのHで1時間置換した。1時間当たり8キュービックフィートの水素ガス速度を維持しながら、VGO油を触媒前駆体に250°Fにおいて130cc/時間(1LHSV)の速度にてポンプで送り込んだ。次いで、触媒前駆体を25°F/時間の速度で430°Fに加熱し、DMDSを4cc/時間の速度で約4時間添加した。次いで、触媒前駆体を600°Fに加熱し、DMDS添加速度を8cc/時間に増加させた。温度を600°Fで2時間維持した後、硫化を完了した。
【0168】
例17−DMDS気相による硫化
例1、13、及び14の触媒前駆体を管状反応器に入れた。温度を、8ft/時間のN2(g)下、450°Fに100°F/時間の速度で上昇させた。反応を1時間続けた後、Nのスイッチを切り、8ft/時間及び100psigのHで1時間置換した。次いでH圧を300psigに増加させ、1時間未満維持し、この後、二硫化ジメチルを4cc/時間の速度で添加し、次いで反応物を4時間処理させた。次いで、触媒前駆体を600°Fに加熱し、DMDS添加速度を8cc/時間に増加させた。温度を600°Fで2時間維持した後、硫化を完了した。
【0169】
例18−触媒/触媒前駆体比較
この例では、従来の触媒、並びにタイプNi−Mo−W−マレイン酸塩(例1)の触媒前駆体を用いた比較触媒、リガンドを含まない比較触媒(例14)、及び本発明の一実施形態の触媒前駆体(例13のZn−Mo−W−マレイン酸塩)を用いた触媒を含めた、種々の触媒/触媒前駆体を評価し、比較した。評価は、700°Fを超える沸点、31135ppmの硫黄含量、及び31230ppmの窒素含量を有する減圧軽油(VGO)原料を用いた水素化分解、HDS、及びHDN活性を含んだ。反応器条件は、2300psiの圧力、5000SCFBのHガス速度、及び0.75のLHSVであった。
【0170】
Ni/Mo/アルミナは、従来のアルミナ担持Ni−Mo触媒である。Ni/Mo/Wは、米国特許第6,712,955号及び第6,299,760号に開示されているタイプの非担持触媒である。Ni−Mo−W−マレイン酸塩、Zn−Mo−W−マレイン酸塩、及びZn−Mo−Wは、例1、13、及び14で作製され、次いで例17により硫化された(DMDS気相による硫化)触媒前駆体である。評価結果を表6に提示する。
【表5】

【0171】
表に示すように、助触媒金属が亜鉛であったとき、有機酸素含有配位子を触媒前駆体の合成に添加することにより、725°F(従来のNi−Mo−アルミナ)及び700°F(Ni−Mo−W従来技術)から690°F(Ni−Mo−W−マレイン酸塩)及び約680°F(本発明の一実施形態、Zn−Mo−W−マレイン酸塩)に30%転化温度を減少させることで触媒活性が改善された。加えて、700°F+転化は、他の触媒で得られる700°F+転化速度より実質的に高い。Zn−Mo−W−マレイン酸塩触媒は、第VIB族金属と組み合わされた第VIII族金属からなる任意の従来の触媒よりも高い活性を示す。
【0172】
例19−Sn−Mo−W−マレイン酸塩触媒前駆体:式(NH{[Sn2.26(OH)1.5(C2−0.01](Mo0.530.47}の触媒前駆体を以下のように調製した:2.03のマレイン酸を600.00gの脱イオン水に室温で溶解した。得られた溶液のpHは2〜3の範囲内であった。17.67gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HO粉末を上記溶液に溶解し、続いて24.66gのメタタングステン酸アンモニウム(NH1240・xHO(>66.5% W)を添加した。得られた溶液のpHは4〜5の範囲内であった。30ml(27.06g)の濃(NH)OHを一定に撹拌しながら溶液に添加した。得られたモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液を10分間撹拌し、pHをモニターした。溶液は、室温で9〜10の範囲のpHを有し、これを90℃に加熱した。42.99gの硫酸スズの250gの脱イオン水溶液を含む第2溶液を調製した。硫酸スズを溶解させるために91.0gの50%硫酸を混合物に添加した。得られた溶液のpHは1.0〜1.2の範囲内であった。次いでスズ溶液をゆっくりと40分間かけてモリブデン酸塩/タングステン酸塩の熱溶液に添加した。得られた混合物溶液は約2のpHを有した。pHを、43.5mlの濃水酸化アンモニウムをゆっくり添加することによって約7に調整した。得られた混合物を90℃で1時間撹拌し続けた。生成物を熱いままで濾過した。沈殿物を2.5LのDI水に70℃で分散させた。得られたスラリーを30分間撹拌し(pH〜7)、濾過し、収集した沈殿物を室温で一晩真空乾燥させた。次いで物質を120℃で12時間さらに乾燥させた。
【0173】
得られた触媒前駆体のPXRDパターンを図8に示す。
【0174】
比較例20−Sn−Mo−W触媒前駆体
式(NH{[Sn2.31(OH)1.62](Mo0.550.45}の触媒を以下のように調製した:17.68gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HO粉末を600gのDI水に溶解し、続いて24.66gのメタタングステン酸アンモニウム(NH1240・xHO(>66.5% W)を添加した。得られた溶液のpHは、5〜6の範囲内であった。30ml(27.1g)の濃(NH)OHを一定に撹拌しながら溶液に添加した。得られたモリブデン酸塩/タングステン酸塩溶液を10分間撹拌し、pHをモニターした。溶液は室温で約10.1のpHを有し、これを90℃に加熱した。42.99gの硫酸スズの250gの脱イオン水溶液を含有する第2溶液を調製した。硫酸スズを溶解させるために58.82gの50%硫酸を混合物に添加した。得られた溶液のpHは1.3〜1.7の範囲内であった。次いで、スズ溶液をモリブデン酸塩/タングステン酸塩熱溶液に55分間かけてゆっくりと添加した。得られた混合物溶液は約2のpHを有した。pHを、42.31gの濃水酸化アンモニウムをゆっくり添加することによって約7に調整した。得られた混合物を90℃で1時間撹拌し続けた。生成物を熱いまま濾過した。沈殿物を2.5LのDI水に70℃で分散させた。得られたスラリーを30分間撹拌し(pH〜7)、濾過し、収集した沈殿物を室温で一晩真空乾燥させた。次いで物質を120℃で12時間さらに乾燥させた。
【0175】
前駆体に基づいて得られた比較触媒生成物のPXRDパターンを図9に示す。
【0176】
例21−Mg−Ni−Mo−W−Al−Si−マレイン酸塩触媒前駆体:触媒前駆体を以下のように調製した:1)41.52gの水ガラス(27%のSiO、〜14%のNaOH、Aldrich)を70mLの脱イオン水に添加する。15分間撹拌する。2)12.69gのAl(NO×9HOを70mLのDI水に溶解する。18.8℃でpH=2.5。1滴までの濃HNOを用いてpHを〜1に調整する。3)激しく振とうさせながら水ガラス溶液を硝酸アルミニウム溶液にゆっくりと添加する。撹拌を調整して跳ね返りの無い最適な混合を得る。0.5時間撹拌する。濃HNOを用いてpHを6未満に調整しながら、ゲル化を回避する。最終混合物のpHを〜5.5に調整する。4)52.96gのAHM(NHMo24*4HOを1000gのDI水に溶解させる。21℃でpH〜5.3。5)73.98gのAMTを上記溶液に添加する。完全に溶解する(溶液が透明になる)まで混合する。20℃でpH〜5.3。6)激しく振とうさせながら、上記溶液を工程3の混合物に添加する。7)濃水酸化アンモニウム溶液を用いてpHを〜9.8に調整する。10分間撹拌する。8)溶液を約90℃に加熱する。9)174.65gのNi(NO*6HOを150gのDI水に溶解させる。21℃でpH〜3.0。10)42.26gのMg(NO×6HOを上記溶液に添加する。溶解が完了するまで混合する。pHを測定する。11)溶液を90℃に加熱する。12)工程11の溶液を工程8の溶液にゆっくりと添加する(〜10分)。2時間撹拌する。pHを測定する。13)得られた熱スラリーを濾過して湿った濾過ケークにする。14)10.54gのマレイン酸を1.8LのDI水に溶解させる。15)工程7の湿ったケークを工程8のマレイン酸溶液に分散させる。16)得られたスラリーを振とうさせながら70℃に加熱し、これを当該温度で30分間保つ。17)得られた青緑色の熱スラリーを濾過し、RTにて真空下で一晩、炉において乾燥させる。18)生成物を120℃オーブンで12時間乾燥させる。
【0177】
例22−硫化DMDS液相
例1及び例21の触媒前駆体を管状反応器に入れた。温度を、8ft/時間のN2(g)下、250°Fに100°F/時間の速度で上昇させた。反応を1時間続けた後、Nのスイッチを切り、8ft/時間及び200psigのHで1時間置換した。1時間当たり8キュービックフィートの水素ガス速度を維持しながら、VGO油を触媒前駆体に250°Fにおいて130cc/時間(1LHSV)の速度にてポンプで送り込んだ。次いで、触媒前駆体を25°F/時間の速度で430°Fまで加熱し、DMDSを0.4cc/時間で約4時間添加した。次いで、触媒前駆体を600°Fに加熱し、DMDS添加速度を8cc/時間に増加させた。温度を600°Fで2時間維持した後、硫化を完了した。
【0178】
例23−DMDS気相による硫化
例1及び21の触媒前駆体を管状反応器に入れた。温度を、8ft/時間のN2(g)下、450°Fに100°F/時間の速度で上昇させた。反応を1時間続けた後、Nのスイッチを切り、8ft/時間及び100psigのHで1時間置換した。次いでH圧を300psigに増加させ、1時間未満維持し、この後、二硫化ジメチルを4cc/時間の速度で添加し、次いで反応物を4時間処理させた。次いで、触媒前駆体を600°Fに加熱し、DMDS添加速度を8cc/時間に増加させた。温度を600°Fで2時間維持した後、硫化を完了した。
【0179】
例24−触媒/触媒前駆体比較
この例では、種々の触媒/触媒前駆体を評価し、比較した。評価は、700°Fを超える沸点、31135ppmの硫黄含量、及び31230ppmの窒素含量を有する減圧軽油(VGO)原料を用いた水素化分解、HDS、及びHDN活性を含んだ。反応器条件は、2300psiの圧力、5000SCFBのHガス速度、及び0.75のLHSVであった。
【0180】
Ni/Mo/アルミナは、従来の担持触媒であり、Ni/Mo/Wは、米国特許第6,712,955号及び米国特許第6,299,760号に参照されている触媒のラインに沿った非担持触媒であり;Ni/Mo/W/マレイン酸塩は、例1で作製され例6により硫化された触媒前駆体であり;Mg−Ni−Mo−Wマレイン酸塩触媒前駆体は、(希釈剤によって)例21で作製され次いで例23(DMDS気相による硫化)で硫化された触媒前駆体である。
【0181】
結果を表7に提示する。
【表6】

【0182】
表に示すように、第VIII族金属がニッケルであったとき、第IIA族金属(マグネシア)及びシリカ−アルミナを触媒前駆体の合成に添加することにより、約30%の700°F転化において700°F超で沸騰する留分中の硫黄が7.5(従来のNi−Mo−アルミナ)若しくは8.3(Ni−Mo−W従来技術)又は8(例1のNi−Mo−W−マレイン酸塩触媒前駆体)から0.01ppm(例20のMg/Ni/Mo/W/Si/Alマレイン酸塩触媒前駆体)に大幅に減少することで触媒活性が改善された。
【0183】
例25
例1のNi−Mo−W−マレイン酸塩触媒前駆体に基づき、例6のDMDSガスによって硫化された触媒を、水素化転化プロセスにおいて評価した。評価は、700°Fを超える沸点、31135ppmの硫黄含量、及び31230ppmの窒素含量、並びに表1に提示する他の特性を有する減圧軽油(VGO)原料を用いた水素化分解、HDS、及びHDN活性を含んだ。反応器条件は、5000SCFBのHガス速度、及び0.75のLHSV、700°Fであった。550psigの水素分圧下、触媒は、約2100psigの水素分圧においてだが同程度の条件下で除去された窒素の少なくとも70%を除去した。
【0184】
例26
水素分圧が約450psigであったことを除いて例24を繰り返した。より低い水素分圧においても、多金属触媒は、他のプロセスパラメータが同程度である約2100psigの水素分圧下で除去される窒素の少なくとも70%を依然として除去した。
【0185】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的において、別途指示しない限り、量、パーセント又は割合を表す全ての数並びに明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる他の数値は、用語「約」によって全ての場合において改変されると理解されるべきである。したがって、そうでないと別途指示しない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得られようとする所望の目的に応じて変動し得る大凡の値である。単数形「a」、「an」及び「the」は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いるとき、別途明確かつ明白に1つの指示対象に限定しない限り、複数の意味を含むことに注意されたい。本明細書において用いるとき、用語「含む」及びその文法上の変形体は、非限定的であると意図されるため、列挙による記述は、列挙された項目と置換可能な又はこれに追加可能な他の同様の項目の排除ではない。
【0186】
本明細書に記載の説明は、最良の形態を含めた例を用いて本発明を開示し、また、当業者による本発明の実施及び使用を可能にする。特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義されており、当業者によって行われる他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言上の記述と異ならないとき、又は特許請求の範囲の文言上の記述と実質的に異なる等価の構成要素を含むとき、特許請求の範囲内にあると意図される。本明細書において言及された全ての文献は、参照によって明確に本明細書に組み入れられる。
【0187】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの金属化合物;少なくとも1つの第VIB族金属化合物;並びに少なくとも1つの有機酸素含有配位子Lを含む触媒前駆体組成物であって、有機酸素含有配位子Lがラットへの単回経口用量として>500mg/KgのLD50量を有する触媒前駆体組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのケイ素成分、少なくとも1つのアルミニウム成分、及び少なくとも1つのマグネシウム成分をさらに含む、請求項1に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項3】
約1〜約6のpHを有する第1反応混合物を形成する工程であって、第1反応混合物が:
第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの金属化合物、
少なくとも1つの第VIB族金属化合物、
少なくとも1つの有機酸素含有配位子、
少なくとも1つのケイ素成分、少なくとも1つのアルミニウム成分、及び少なくとも1つのマグネシウム成分
を含む工程、
塩基性アルカリ成分を添加して7〜12の間のpHを有する第2反応混合物を形成する工程;並びに
第2反応混合物を、沈殿物又は共ゲルを形成するのに十分な時間反応させる工程
によって得られる、請求項2に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項4】
ケイ素成分が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカゾル、シリカゲル、ヒドロニウム安定化シリカゾル、アンモニウム安定化シリカゾル、及びこれらの組合せから選択される、請求項2又は3に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項5】
アルミニウム成分が、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及びこれらの組合せから選択される、請求項2から4のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項6】
マグネシウム成分が、マグネシウム金属、水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、及びこれらの組合せから選択される、請求項2から5のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項7】
沈殿物又は共ゲルを形成する反応条件において:
第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せの群から選択される少なくとも1つの金属化合物;
少なくとも1つの第VIB族金属化合物;並びに
ラットへの単回経口用量として>500mg/KgのLD50量を有する、少なくとも1つの有機酸素含有配位子L
を混合することを含む共沈によって得られる、請求項1に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項8】
式:
[(M)(OH)(L)(MVIB
[式中、
Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンの少なくとも1つを含み、
は、第VIII族金属、第IIB族金属、第IIA族金属、第IVA族金属及びこれらの組合せの少なくとも1つであり、Mは+2又は+4の酸化状態を有し、
Lは少なくとも1つの有機酸素含有配位子であり、
VIBは、+6の酸化状態を有する少なくとも1つの第VIB族金属であり;
:MVIBは、100:1〜1:100の間の原子比を有し;
v−2+Pz−xz+nz=0;かつ


である。]
を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項9】
が、少なくとも1つの第VIII族金属であり、Mが+2の酸化状態を有する、請求項8に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項10】
がニッケルである、請求項8に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項11】
が、第IIB族金属、第IVA族金属、及びこれらの組合せの少なくとも1つであり、Mが+2又は+4のいずれかの酸化状態を有する、請求項8に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項12】
が、亜鉛、カドミウム、スズ、鉛、及びこれらの組合せから選択される、請求項3、7、及び8のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項13】
が亜鉛である、請求項8に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項14】
がスズである、請求項8に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項15】
VIBが、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びこれらの組合せから選択される、請求項8から14のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項16】
VIBが、モリブデン及びタングステンを含み、モリブデン:タングステン比が、1:10〜10:1の範囲である、請求項8から15のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項17】
モリブデン:タングステン比が、1:2〜1:3の範囲である、請求項8から16のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項18】
触媒前駆体が、0.1〜0.2cc/gの間の平均細孔容積を有するメソ多孔質である、請求項1から17のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項19】
触媒前駆体が、B.E.T.窒素吸着条件下でBJH分析によって測定されるとき、約10〜200m/gの間の平均表面積を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項20】
有機酸素含有配位子Lが、>700mg/KgのLD50量を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項21】
有機酸素含有配位子Lが、>1000mg/KgのLD50量を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項22】
酸素含有キレート剤Lが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸、アスパラギン酸、メタンスルホン酸及びエタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、アリールスルホン酸並びにアリールカルボン酸の群から選択される非毒性有機添加物である、請求項1から21のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項23】
有機酸素含有配位子Lがマレイン酸である、請求項1から22のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項24】
酸素含有キレート剤Lが、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、マロン酸、コハク酸、及びグリオキシル酸の群から選択される、請求項1から21のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項25】
酸素含有キレート剤Lが有機硫黄化合物である、請求項1から21のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項26】
酸素含有キレート剤Lが、メルカプトコハク酸及びチオジグリコール酸から選択される、請求項1から21のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項27】
Lが、カルボン酸塩、エノラート、及びこれらの組合せの少なくとも1つである、請求項1から21のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項28】
Lがカルボン酸塩である、請求項1から21及び27のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項29】
Lがマレイン酸塩である、請求項1から21のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項30】
Lが負に帯電している、請求項1から29のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項31】
押し出されて押し出し物を形成する、請求項1から30のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項32】
押し出されて押し出し物を形成するのに先立って、少なくとも1つのセルロース含有物質が触媒前駆体組成物に添加される、請求項31に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項33】
押し出し物が50〜200℃の範囲の温度で乾燥される、請求項31又は32に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項34】
押し出し物が硫化され、結果として触媒となる、請求項31から33のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項35】
金属化合物Mが、水溶性ニッケル塩であり、少なくとも1つの第VIB族金属化合物MVIBが、ヘキサモリブデン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、及びこれらの組合せから選択され、有機酸素含有配位子がカルボン酸塩である、請求項8から34のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項36】
触媒前駆体が硫化されて触媒を形成する、請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒前駆体組成物。
【請求項37】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒前駆体を硫化することによって調製された触媒。
【請求項38】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒前駆体を硫化することによって調製された触媒であって、1000時間当たり5°F(2.8℃)未満の汚染速度を有する触媒。
【請求項39】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒前駆体を硫化することによって調製された触媒であって、1000時間当たり2.5°F(1.4℃)未満の汚染速度を有する触媒。
【請求項40】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒前駆体を硫化することによって調製された触媒であって、少なくとも2層の触媒を有する固定床水素化処理系に使用され、積層触媒系が1000時間当たり30°F(16.7℃)未満の汚染速度を有し、10〜80体積%の積層触媒系を含む触媒。
【請求項41】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒前駆体を硫化することによって調製された触媒であって、少なくとも2層の触媒を有する固定床水素化処理系に使用され、積層触媒系が1000時間当たり26°F(14.4℃)未満の汚染速度を有し、少なくとも25体積%の積層触媒系を含む触媒。
【請求項42】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒前駆体を硫化することによって調製された触媒であって、少なくとも2層の触媒を有する固定床水素化処理系に使用され、積層触媒系が1000時間当たり19°F(10.6℃)未満の汚染速度を有し、少なくとも35体積%の積層触媒系を含む触媒。
【請求項43】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒前駆体を硫化することによって調製された触媒であって、少なくとも2層の触媒を有する固定床水素化処理系に使用され、積層触媒系が1000時間当たり10°F(5.6℃)未満の汚染速度を有し、少なくとも50体積%の積層触媒系を含む触媒。
【請求項44】
式A[(M)(OH)(L)(MVIB)を有する触媒前駆体組成物を形成する方法であって:
約1〜約6のpHを有する第1反応混合物を形成する工程であって、第1反応混合物が:
第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの金属化合物、
少なくとも1つの第VIB族金属化合物、
少なくとも1つの有機酸素含有配位子、
少なくとも1つのケイ素成分、少なくとも1つのアルミニウム成分、及び少なくとも1つのマグネシウム成分
を含む工程、
塩基性アルカリ成分を添加して7〜12の間のpHを有する第2反応混合物を形成する工程;並びに
第2反応混合物を、沈殿物又は共ゲルを形成するのに十分な時間反応させる工程
を含み、式中、
Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンの少なくとも1つであり、
は、第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択され、Mは+2又は+4の酸化状態を有し、
Lは、少なくとも1つの有機酸素含有配位子であり、
VIBは、+6の酸化状態を有する少なくとも1つの第VIB族金属であり、
:MVIBは、100:1〜1:100の間の原子比を有し、
v−2+Pz−xz+nz=0;かつ


である方法。
【請求項45】
ケイ素成分が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカゾル、シリカゲル、ヒドロニウム安定化シリカゾル、アンモニウム安定化シリカゾル、及びこれらの組合せから選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
アルミニウム成分が、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及びこれらの組合せから選択される、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
マグネシウム成分が、マグネシウム金属、水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、及びこれらの組合せから選択される、請求項44から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
式A[(M)(OH)(L)(MVIB)を有する触媒前駆体組成物を形成する方法であって:
第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの金属化合物、
少なくとも1つの第VIB族金属化合物、
少なくとも1つの有機酸素含有配位子
を含む沈殿物又は共ゲルを形成する反応条件において共沈する工程
を含み、式中、
Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンの少なくとも1つであり、
は、第VIII族金属、第IIB族金属、第IIA族金属、第IVA族金属及びこれらの組合せの少なくとも1つであり、Mは+2又は+4の酸化状態を有し、
Lは少なくとも1つの有機酸素含有配位子であり、
VIBは、+6の酸化状態を有する少なくとも1つの第VIB族金属であり、
:MVIBは、100:1〜1:100の間の原子比を有し、
v−2+Pz−xz+nz=0;かつ


である方法。
【請求項49】
式A[(M)(OH)(L)(MVIB)を有する前駆体組成物から調製される触媒組成物を形成する方法であって:
沈殿物又は共ゲル前駆体:少なくとも1つの第VIB族金属化合物MVIB、第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの金属化合物M、並びに少なくとも1つの有機酸素含有配位子を形成する反応条件において共沈する工程であって、前記前駆体がA[(M)(OH)(L)(MVIB)を有する工程、並びに
触媒前駆体を水素及び硫黄含有化合物と接触させて触媒前駆体を硫化する工程;
を含み、式中、
Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンの少なくとも1つであり、Mは、第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択され、Lは、少なくとも1つの有機酸素含有配位子であり、MVIBは、少なくとも1つの第VIB族金属であり、M:MVIBは、100:1〜1:100の間の原子比を有し、


である、方法。
【請求項50】
触媒前駆体の硫化に要する時間が72時間未満である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
触媒前駆体の硫化に要する時間が48時間未満である、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
触媒前駆体の硫化に要する時間が少なくとも96時間である、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも96時間を要する硫化から調製された触媒が、48時間未満を要する硫化から調製された触媒の700°F+転化速度より少なくとも25%高い700°F+転化速度を与える、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前駆体を水素及び硫黄含有化合物と気相において接触させる、請求項49から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
硫黄含有化合物がHSである、請求項49から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
触媒前駆体を水素及び硫黄含有化合物と接触させる工程が、温度を1分当たり0.5〜4℃(0.9〜7.2°F)の速度で増加させながら、約125℃〜450℃(257°F〜842°F)の温度において1工程で行われる、請求項49から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
触媒前駆体を水素及び硫黄含有化合物と接触させる工程が少なくとも2工程で行われ、第1工程が次の工程よりも低い温度で実施される、請求項49から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
第1工程が約125〜350℃(257°F〜662°F)の温度で実施され、次の工程が約200〜450℃(392°F〜842°F)の温度で実施される、請求項58に記載の方法。
【請求項59】
水素及び硫黄含有化合物との接触に先立って、触媒前駆体を有機液体と初めに接触させる、請求項49から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
有機液体が、ガソリン、揮発油、ディーゼル、軽油、鉱油系潤滑油、及びホワイト油からなる群から選択される、請求項49から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
有機液体中の触媒前駆体を水素及び硫黄含有化合物と接触させる工程が、温度を1分当たり0.5〜4℃(0.9〜7.2°F)の間の速度で増加させながら、約125℃〜450℃(257°F〜842°F)の温度において1工程で行われる、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
有機液体中の触媒前駆体を水素及び硫黄含有化合物と接触させる工程が少なくとも2工程で行われ、第1工程が次の工程よりも低い温度で実施される、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項63】
温度を1分当たり0.5〜4℃(0.9〜7.2°F)の間の速度で増加させながら、第1工程が約100〜250℃(212°F〜482°F)の温度で実施され、次の工程が約225〜450℃(437°F〜752°F)の温度で実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
温度を1時間当たり0.5〜4℃(0.9〜7.2°F)の速度で増加させながら第1工程が約100〜375℃(212°F〜707°F)の温度で実施され、次の工程が約200〜450℃(392°F〜842°F)の温度で実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
温度を第1工程の後で2〜24時間一定に保持し、次いで1時間当たり5〜20℃(9〜36°F)の速度で増加させて、次の工程の温度に到達させる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
炭化水素原料を水素化処理する方法であって、原料を水素化処理条件下で触媒と接触させる工程を含み、この触媒は、式:
[(M)(OH)(L)(MVIB)、
[式中、
Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンの少なくとも1つであり、
は、第VIII族金属、第IIB族金属、第IIA族金属、第IVA族金属及びこれらの組合せの少なくとも1つであり、Mは+2又は+4の酸化状態を有し、
VIBは、+6の酸化状態を有する少なくとも1つの第VIB族金属であり、
Lは少なくとも1つの酸素含有配位子であり、Lは中性又は負電荷n<=0を有し、
:MVIBは、100:1〜1:100の間の原子比を有し;
v−2+Pz−xz+nz=0;かつ


である。]
の触媒前駆体組成物から誘導される、方法。
【請求項67】
炭化水素原料を水素化処理する方法であって、原料を水素化処理条件下で触媒と接触させる工程を含み、この触媒は、
a)約1〜約6のpHを有する第1反応混合物を形成する工程であって、第1反応混合物が、
第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの金属化合物、
少なくとも1つの第VIB族金属化合物、
少なくとも1つの有機酸素含有配位子、
少なくとも1つのケイ素成分、少なくとも1つのアルミニウム成分、及び少なくとも1つのマグネシウム成分
を含む工程;
b)塩基性アルカリ成分を添加して7〜12の間のpHを有する第2反応混合物を形成する工程;並びに
c)第2反応混合物を、沈殿物又は共ゲルを形成するのに十分な時間反応させる工程
によって調製される式A[(M)(OH)(L)(MVIB)、
[式中、
Aは、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウム及びホスホニウムカチオンの少なくとも1つであり、
は、第VIII族、第IIB族、第IIA族、第IVA族及びこれらの組合せから選択され、Mは+2又は+4の酸化状態を有し、
Lは、少なくとも1つの有機酸素含有配位子であり、
VIBは、+6の酸化状態を有する少なくとも1つの第VIB族金属であり、
:MVIBは、100:1〜1:100の間の原子比を有し、
v−2+Pz−xz+nz=0;かつ


である。]
の電荷中性触媒前駆体組成物から誘導される、方法。
【請求項68】
が、少なくとも1つの第VIII族金属であり、MVIBが、モリブデン、タングステン、及びこれらの組合せから選択される、請求項44から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
が、第IIB族、第IVA族及びこれらの組合せから少なくとも選択され、少なくとも1つの第VIB族金属化合物が、ヘキサモリブデン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、及びこれらの組合せから選択される、請求項44から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
接触工程が、プロセスパラメータ:395〜842°F(200〜450℃)の温度、217〜4351psig(15〜300バール)の水素分圧、0.05〜10/時間の液空間速度、及び200〜15000SCF/Bの水素速度を有する反応領域において行われる、請求項66又は67に記載の炭化水素原料を水素化処理する方法。
【請求項71】
原料が、全及び抜頭石油原油、常圧及び減圧残油、プロパン脱れき残油、サイクル油、流動接触分解塔底油、軽油、軽質から重質の留出油、水素化分解油、水素化処理油、脱ロウ油、スラックワックス、フィッシャートロプシュワックス、ラフィネート、ナフサ、並びにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項66から67及び70のいずれか一項に記載の炭化水素原料を水素化処理する方法。
【請求項72】
接触工程において、水素分圧が400〜600psigの間である、請求項66から67及び70から71のいずれか一項に記載の炭化水素原料を水素化処理する方法。
【請求項73】
接触工程において、水素分圧が最大で550psigである、請求項66から67及び70から72のいずれか一項に記載の炭化水素原料を水素化処理する方法。
【請求項74】
接触工程において、水素分圧が最大で450psigである、請求項66から67及び70から73のいずれか一項に記載の炭化水素原料を水素化処理する方法。
【請求項75】
最大で550psigの水素分圧での高沸点炭化水素原料及び触媒の接触工程が、他のプロセスパラメータを同じにして約2100psigの水素分圧の反応領域で除去される窒素の少なくとも70%の窒素除去をもたらす、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
最大で450psigの水素分圧での高沸点炭化水素原料及び触媒の接触工程が、他のプロセスパラメータを同じにして約2100psigの水素分圧の反応領域で除去される窒素の少なくとも70%の窒素除去をもたらす、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
最大で450psigの水素分圧での高沸点炭化水素原料及び触媒の接触工程が、他のプロセスパラメータを同じにして600psigの水素分圧を有する反応領域で得られる700°F+転化の少なくとも50%の700°F+転化を与える、請求項74又は76に記載の方法。
【請求項78】
最大で450psigの水素分圧での高沸点炭化水素原料及び触媒の接触工程が、他のプロセスパラメータを同じにして600psigの水素分圧を有する反応領域で得られる700°F+転化の少なくとも75%の700°F+転化を与える、請求項74又は76に記載の方法。
【請求項79】
最大で450psigの水素分圧での高沸点炭化水素原料及び触媒の接触工程が、他のプロセスパラメータを同じにして600psigの水素分圧を有する反応領域で得られる700°F+転化の少なくとも80%の700°F+転化を与える、請求項74又は76に記載の方法。
【請求項80】
接触工程が、少なくとも2層の触媒を有する固定床水素化処理系において起こり、触媒が、10〜80体積%の積層触媒系を含む、請求項66から79のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2011−502047(P2011−502047A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532182(P2010−532182)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/081463
【国際公開番号】WO2009/058783
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】