説明

大脳保護のためのシステム、方法、および装置

大脳血管系に含酸素媒体を灌流させるためのデバイス、システム、および方法。両半球脳灌流では、四肢に圧力カフを位置付けるステップと、バルーンを伴うカテーテルを提供するステップと、静脈にカテーテルを挿入するステップと、バルーンが上大静脈の中に位置付けられるように、カテーテルを前進させるステップとを含む。灌流モードの間、カフおよびバルーンは、膨張させられて、逆行的に大脳血流の増加を引き起こし、冷却され得る酸素を豊富に含んだ血液は、好適な期間にわたって大腿動脈からカテーテルの中へ送出される。非灌流モードの間、カフおよびバルーンは、収縮させられる。1つの半球だけの脳灌流では、バルーンを伴うカテーテルを提供するステップと、静脈にカテーテルを挿入するステップと、バルーンが灌流を必要とする脳の側の頸静脈の中に位置付けられるように、カテーテルを前進させるステップとを含み、圧力カフは必要とされない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮出願第60/938,639号(2007年5月17日出願、名称「System, Methods And Apparatus For Cerebral Protection」)の利益を主張する。該仮出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本願は、System, Methods And Apparatus For Cerebral Protectionと題された、2004年5月22日出願の米国仮出願第60/555,221号に基づく優先権を請求する、System, Methods and Apparatus for Cerebral Protectionと題された、2005年2月8日出願の米国出願第11/053,622号に関係し、その両方は、参照により本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、概して、全体または局所的大脳虚血の間に、大脳循環への効果的な逆行性灌流を維持するためのカテーテル、システム、および方法を含む、医療デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
大脳虚血を体験する患者はしばしば、一過性の神経学的欠損から不可逆性障害(脳卒中)または死亡に及ぶ障害を被る。大脳虚血、すなわち、中枢神経系への血流の低減または停止は、全体的または局所的のいずれかとして特徴付けることができる。全大脳虚血とは、例えば、ショック、心不全、または心停止によって引き起こされる、全身性循環不全に起因する、大脳血管系内の血流の低減を指す。対照的に、局所的大脳虚血とは、脳の特定領域への血流の低減を指す。ショックは、十分な細胞灌流を維持する循環系の不全が、組織への酸素および栄養素の低減をもたらす状態である。典型的には、循環不全の数分以内に、特に脳内で、組織が虚血性になる。
【0005】
全体的および局所的虚血の両方で、患者は、大脳血流の低減による神経学的欠損を発現する。治療は、大脳血管系への血流を増加させて神経組織の生存能力を維持する措置を含むべきであり、それにより、介入治療に利用可能な時間の長さを増加させ、虚血の解決を待っている間に神経学的欠損を最小限化する。大脳血管系への血流を増大させることは、大脳虚血を治療するのに有用であるだけでなく、頸動脈血管形成術、ステント留置術、経皮弁置換術、または動脈内膜切除術等の介入処置中にも有用であり得、そうでなければ局所的大脳虚血をもたらす場合がある。
【0006】
酸素欠乏脳損傷は、正常温度の状態でわずか5分後に、永久的な神経組織死をもたらす。そのような症状は、塞栓性または虚血性いずれかの脳血管障害、術中の敗血症性または出血性低血圧およびショック、ならびに、心臓、大動脈、血管、および頭蓋内手術中等の多数の臨床状況中に発生し得る。これらの症状は、人口の主要な死因の1つを表し、現在は脳死を定義する。
【0007】
過去30年の間、異なる専門分野からの医師および科学者が、大脳の保護の研究に関心を持ち、関与してきた。彼らの焦点は、提案された解決法と同じくらい多様となっている。
【0008】
血管外科医らは、アスピリンおよびヘパリン等の血液の抗凝固剤を採用することによって、均衡の送達面に焦点を合わせてきた。彼らはまた、順行性灌流を維持することによって、頸動脈血管内膜切除術中に大脳の保護を強化するために、多数の頸動脈内シャントデバイスを利用してきた。
【0009】
神経科医および神経外科医らは、脳の代謝要求を減少させるフェノバルビタール等の薬物を利用することによって、均衡の要求面に主に焦点を合わせてきた。彼らはまた、時折、なんらかの術中低体温も使用してきた。
【0010】
しかしながら、大脳の保護への最も重要な貢献は、全体的な均衡の送達面および要求面の両方に焦点をあててきたため、心臓血管外科医および研究者らによって行なわれてきた。心臓および大動脈手術中の低温心臓麻痺解決法、重度の低体温および循環停止に対する、彼らの長年の功労が、低体温の重要性、および有意な大脳の保護を提供する際に静脈系を通した低温逆行性血液灌流の使用を評価することに至った。さらに、上行大動脈動脈瘤の切除のために行なわれた循環停止中に、全身性低体温および上大静脈(SVC)を通した逆行性低温血液灌流の両方により脳を保護するため、低温静脈血の一部が鎖骨下静脈を通して両方の上肢に迂回させられることが注目された。
【0011】
したがって、循環停止中に両腕に両側性血圧カフを適用し、それらを80〜100水銀柱ミリメートルに膨張させることが提案された。これにより、低温血液のほとんどが脳に迂回させられ、循環停止中に、より良好な灌流および脳のより良好な冷却をもたらし、より良好な大脳の保護となる。
【0012】
この概念は、一連の患者で臨床的に観察された。彼らの循環停止温度は、通常の16〜18℃の代わりに、25〜27℃に及び、完全に10度温かかった。主に脳への低温血液のより良好な灌流により、より高い温度が耐えられ、つまり、より低温の血液への必要性を緩和した。このことは、当然ながら、体温を冷やすためのより少ない時間、患者を蘇生させるためのより少ない時間、および全体的に有意に少ない合併症の発生率をもたらした。彼らの循環停止期間は、29〜67分に及んだ。神経学的欠損がない、普遍的な大脳の保護があった。灌流された逆行性低温血液にも、25〜27℃の温度があった。この大脳の保護の概念は、塞栓性、虚血性、または出血性(脳動脈瘤および動静脈奇形)イベントであるかにかかわらず、脳血管障害の内科および外科治療の分野まで拡張されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明によれば、その静脈排出系を通して、虚血性である脳領域を逆行性に灌流するための方法、システム、およびデバイスが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態によれば、例えば、全大脳虚血の間に脳灌流を維持するか、または増加させるように、方法が提供される。該方法は、患者の大脳血管系で、含酸素媒体、例えば血液を灌流させる。例えば、増加した脳灌流または血流が、全大脳虚血の間に逆行的に提供される。方法は、(1)患者のそれぞれの左右上肢に左右圧力カフを位置付けるステップ、(2)多重構造を有するカテーテルであって、近位領域、遠位領域、および拡張型部材、例えば、カテーテルの周囲で円周方向に配置され、かつ密閉可能に取り付けられ、カテーテルの遠位端の略隣接または付近に載置されるバルーンを有する、カテーテルを提供するステップと、(3)患者の鎖骨下静脈にカテーテルを挿入するステップであって、代替として、カテーテルはまた、従来の方式で大腿静脈を通して導入され得る、ステップと、(4)拡張型部材が患者の左腕頭静脈の出発点の略近位で上大静脈を閉塞するよう位置付けられるように、(右または左)鎖骨下静脈(あるいは右または左大腿静脈)を通してカテーテルを前進させるステップとを含む。
【0015】
別の好ましい実施形態によれば、局所的虚血の間に脳灌流を維持するか、または増加させるように、方法が提供され、例えば、該方法は、患者の大脳血管系で、含酸素媒体、例えば血液を灌流させる。例えば、増加した血液の脳灌流または血流が、局所的大脳虚血の間に逆行的に提供される。方法は、(1)多重構造を有するカテーテルであって、近位領域、遠位領域、および拡張型部材、例えば、カテーテルの周囲で円周方向に配置され、かつ密閉可能に取り付けられ、カテーテルの遠位端の略隣接または付近に載置されるバルーンを有する、カテーテルを提供するステップと、(2)従来の方式で鎖骨下静脈、大腿静脈、または頸静脈にカテーテルを挿入するステップと、(3)拡張型部材が大脳虚血と同側の内頸静脈を閉塞するよう位置付けられるように、カテーテルを前進させるステップとを含む。
【0016】
灌流/非灌流サイクルの灌流モードの間、(1)左右の圧力カフを、例えば、実質的に80〜100水銀柱ミリメートルに膨張させるステップ、(2)上大静脈の断面積の大部分を覆うように部材を拡張し、逆行的に大脳血流の増加を引き起こすステップ、および(3)例えば、およそ2〜32または2〜100の範囲の数回の(EKG)拍動等の一定期間、または任意の他の好適な期間にわたって、大腿動脈からカテーテルの中へ含酸素媒体を送出するステップといった、動作が行なわれる。期間は、必要に応じて可変であり得る。カテーテルは、第2の拡張型部材、例えば、第2のバルーンが挿入部位の付近に位置付けられるように、カテーテルの近位端の略隣接または付近にあるカテーテルの第2の部分の周囲で円周方向に配置され、かつ密閉可能に取り付けられる、バルーンを含んでもよい。第2のバルーンは、灌流モードの間に膨張して、挿入部位からの逆出血を防止するように構成される。バルーンの両方または一方は、自己膨張式の通常型またはパラシュート型バルーンであり得る。灌流/非灌流サイクルの非灌流モードの間、(1)左右の圧力カフを収縮させるステップ、および(2)拡張した部材を折り畳むステップといった、動作が行なわれる。さらなる動作は、ヘパリン等の抗血栓性材料でカテーテルを被覆するステップと、灌流および非灌流モードの両方または一方の間に、上大静脈における中心静脈圧を測定するためにカテーテルを使用するステップとを含む。連続灌流/非灌流サイクルは、例えば、患者の動脈系の中の血栓が血栓溶解によって溶解されるまで、あるいは破裂性脳動脈瘤がクリップ留めされるか、または血管内で巻かれるまで、行なわれてもよい。上大静脈における中心静脈圧は、灌流モードおよび非灌流モードの一方または両方の間に測定され得る。
【0017】
別の側面によれば、大脳の保護を提供するためのシステムは、一実施形態によれば、SVC閉塞によって、その静脈排出系を通して、種々の実施形態において脳を選択的に灌流するための1つ以上のカテーテルを備える。カテーテルは、(右または左)鎖骨下静脈あるいは(右または左)大腿静脈のいずれかの挿入部位を通して挿入することができる。鎖骨下静脈および大腿静脈の両方の組み合わせも使用することができる。そのようなシステムは、ポンプ、1つ以上の閉塞バルーン、EKGモニタ、およびプロセッサを含む。
【0018】
システムは、随意で、鎖骨下静脈または大腿静脈の中へポンプによって送出されている間に、例えば、大腿動脈からの動脈血を冷却するための冷却デバイスを含んでもよい。つまり、脳灌流を維持および/または改善することに加えて、一実施形態による方法は、脳血液循環の不足または制限に起因する組織障害を阻止または最小限化するように、全大脳虚血および局所的大脳虚血の両方の治療で大脳血管系の冷却を組み合わせるか、あるいはそれに依存し得る。使用時に、循環される含酸素媒体は、脳組織を冷却し、虚血性障害の危険性を低減するために冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、一実施形態によるシステムの説明図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの胸部の拡大図である。
【図1C】図1Cは、別の実施形態による、3つの領域から成るカテーテル本体を有する、細長いカテーテルの説明図である。
【図1D】図1Dは、線2−2に沿って得られた、図1Cのカテーテルの拡大横断面である。
【図1E】図1Eは、2つの領域から成るカテーテル本体を有する、細長いカテーテルの説明図である。
【図1F】図1Fは、線3−3に沿って得られた、図1Eのカテーテルの拡大横断面である。
【図2A】図2Aは、別の実施形態によるシステムの説明図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの胸部の拡大図である。
【図3A】図3Aは、挿入部位の閉塞を提供するためのパラシュート型バルーンの実施形態を図示する。
【図3B】図3Bは、挿入部位の閉塞を提供するためのパラシュート型バルーンの実施形態を図示する。
【図4A】図4Aは、別の実施形態によるシステムの説明図である。
【図4B】図4Bは、別の実施形態によるシステムの説明図である。
【図5A】図5Aは、上大静脈および下大静脈の両方の同時閉塞を提供するためのバルーンを使用する、実施形態を図示する。
【図5B】図5Bは、上大静脈および下大静脈の両方の同時閉塞を提供するためのバルーンを使用する、実施形態を図示する。
【図6】図6は、別の実施形態による別のシステムの説明図である。
【図7A】図7Aは、二重バルーンカニューレの実施形態の説明図である。
【図7B】図7Bは、二重バルーンカニューレの実施形態の説明図である。
【図8】図8は、右鎖骨下静脈中の図7Aおよび7Bの二重バルーンカテーテルの実施形態の説明図である。
【図9】図9は、右鎖骨下静脈中のヘリウム膨張バルーンの実施形態の説明図である。
【図10】図10は、右内頸静脈中の二重バルーンカニューレの実施形態の説明図である。
【図11】図11は、大腿静脈を介してアクセスされた右内頸静脈中の二重バルーンカテーテルの実施形態の説明図である。
【図12】図12は、右鎖骨下静脈および右内頸静脈中の細長いバルーンカテーテルの実施形態の説明図である。
【図13】図13は、左鎖骨下静脈を通して挿入された、左側脳病変に対する二重バルーンカテーテルの実施形態の説明図である。
【図14】図14は、左内頸静脈中のカテーテルの実施形態の説明図である。
【図15】図15は、左腕頭静脈中のカテーテルの実施形態の説明図である。
【図16】図16は、閉塞カテーテルおよび灌流カテーテルの実施形態の説明図である。
【図17】図17は、細長い閉塞カテーテルおよび灌流カテーテルの実施形態の説明図である。
【図18】図18は、細長い閉塞カテーテルおよび灌流カテーテルの実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
具体的実施形態の以下の説明では、この一部を形成し、本発明が実践され得る種々の実施形態を例証として示す、添付図面を参照する。添付図面では、類似参照番号は、いくつかの図の全体を通して、対応する部分を表す。本発明の範囲から逸脱することなく、構造的変更が行なわれてもよいため、他の実施形態が利用され得ることを理解されたい。
【0021】
本明細書で開示されるデバイスおよび方法は、全大脳虚血および局所的大脳虚血に罹患している患者を治療するのに最も有用である。しかしながら、他の病状でデバイスおよび方法を使用できることが理解されるであろう。
【0022】
詳細説明の残りの部分を、以下の方式で組織する。
【0023】
第1に、本発明による原理の概説を、種々の実施形態に従って提供する。
【0024】
第2に、2領域および3領域の実施形態の両方について、細長いカテーテルの詳細説明を提供する。
【0025】
第3に、単一カテーテル/単一バルーン構成を説明する第1の実施形態に従って、詳細説明を提供する。
【0026】
第4に、単一カテーテル/2バルーン構成を説明する第2の実施形態に従って、詳細説明を提供する。
【0027】
第5に、短い自己膨張バルーンの代替実施形態の詳細説明を説明する。
【0028】
第6に、大腿静脈を通した挿入用の大腿カテーテルを利用する第3の実施形態に従って、詳細説明を提供する。
【0029】
第7に、上大静脈および下大静脈の両方を同時に閉塞するために大腿静脈を通した挿入用の延長大腿カテーテルを利用する、第4の実施形態に従って、詳細説明を提供する。
【0030】
第8に、大腿カテーテルおよび鎖骨下カテーテルの両方を利用する第5の実施形態に従って、詳細説明を提供する。
【0031】
第9に、第5の実施形態の2カテーテル構成がさらに、鎖骨下カテーテル上に短い自己膨張バルーンを含む、第6の実施形態に従って、詳細説明を提供する。
【0032】
(I.概説)
種々の実施形態によれば、その静脈排出路を通して、虚血性である脳領域に含酸素媒体を逆行的に提供するための取り組みの全体を通して、脳および関連神経組織は、無傷のままであり、それにより、動脈系の中の原因の血栓が血栓溶解によって溶解されるまで、または原因の破裂性脳動脈瘤が切り取られるか、血管内で巻かれるか、あるいは修復されるまで、さらされた神経組織の生存時間を延長する。本明細書で参照されるように、大脳血管系は、特に、総頸動脈、外および内頸動脈、および頭部の中に通じる大動脈から分岐する、全てのより小さい動脈を含む、患者の頭部の中に、またはそこから通じる、全ての動脈および静脈を含む。
【0033】
大脳血管系における急性または慢性閉塞に起因する虚血に罹患している患者は、下記の実施形態に従って治療され得る。本明細書で説明される実施形態のそれぞれは、概して、脳への逆行性灌流を増加させるステップ、上大静脈における静脈性うっ血を最小限化するステップ、および大脳の保護を最大限化するステップを対象とする。当業者にとって明確になるように、バルーンがSVCの中で膨張させられ、脳へ増加した逆行性血流を押し進めると、増加した逆行性灌流が達成される。種々の実施形態は、共通の特徴、すなわち、反復する一連の灌流/非灌流サイクルを共有する。
【0034】
実施形態のそれぞれについて、カテーテルは、経皮挿入(ガイドワイヤ上のSeldinger技法)または他の挿入技法を使用して、導入され得ることに留意されたい。また、実施形態のそれぞれについて、カテーテルは、灌流および非灌流モードの両方の間に、上大静脈における中心静脈圧を測定することが可能であることも留意される。
【0035】
ここで、添付図面を参照して、種々の実施形態を詳細に説明する。図面、特に図1Aおよび1Bを参照すると、右または左鎖骨下静脈のいずれかを通してカテーテルを挿入することによって大脳循環を逆行的に灌流するための、一実施形態による方法およびシステムが図示されている。
【0036】
本実施形態では、図1A、およびより具体的には、図1Aの胸部の拡大図を示す図1Bに示されるように、ここでは患者の上大静脈4内に位置付けられて示された、近位端および遠位端を有する、細長い血管内カテーテル104が示されている。遠位端は、拡張型部材103を含む。例証的に、細長いカテーテル104は、管状本体を有する。
【0037】
システムおよび方法を対象とした、本明細書で開示される種々の実施形態について論議する前に、まずは細長いカテーテル104の種々の実施形態について論議することが有益である。
【0038】
(II.細長いカテーテル)
図1Cおよび1Dは、細長いカテーテル104の第1の実施形態を図示し、図1Eおよび1Fは、別の細長いカテーテル204の第2の実施形態を図示する。説明される2つの実施形態のそれぞれでは、細長いカテーテル104、204は、多重領域内部構成(図1Dおよび1F参照)を有するカテーテル本体101、201から成ることを理解されたい。しかしながら、2つの実施形態は、構成領域の数が異なる。つまり、以降で説明されるように、第1の実施形態は、内部で3つの領域に分割される(図1D参照)カテーテル104を対象とし、第2の実施形態は、内部で2つの領域に分割される(図1F参照)カテーテル204を対照とする。
【0039】
(II−A 3領域カテーテル)
第1に、図1Cおよび1Dを参照すると、細長いカテーテル104の第1の例示的実施形態が示されている。この実施形態では、カテーテル本体101の内部を、図1Dに関して以下で説明される、第1の内部領域121、第2の内部領域131、および第3の内部領域141に分割する、略「Y」字形内部隔壁140(図1D参照)を含む、単一管状部材から成るカテーテル本体101を有する、細長いカテーテル104が示されている。各領域のサイズは、同様である必要はなく、その場合、内部隔壁140の断面は、図1Dに示された「Y」字形からはずれる。
【0040】
カテーテル本体101は、患者の右または左鎖骨下静脈のいずれかにおける挿入点から、心房・上大静脈接合点に非常に近接して存在する遠隔場所まで到達するのに十分な長さとなるべきである。前述の長さの要件を考慮して、カテーテル104の全長は、好ましくは、約10cmから30cm、または任意の他の望ましい長さである。カテーテル管状本体101の全外径は、最小サイズとなるべきであるが、十分な流体流動を提供することが可能となるように、十分な内径となるべきである。前述の直径の要件を考慮して、カテーテル管状本体101の外径は、好ましくは、約2フレンチから24フレンチ、または任意の他の望ましい直径である。
【0041】
例証的に、細長いカテーテル104は、可撓性の熱可塑性プラスチック材料、熱可塑性エラストマー、または熱硬化性エラストマーから形成される。より具体的には、細長いカテーテル104用の好適な材料は、PEBAX、PVC、PET、ポリスチレン、ボリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、共重合体、ポリエステル、シリコーン、ラテックス、およびそれらの組み合わせ、ならびに、編組、コイル状、または逆巻装ワイヤ補強あるいはフィラメント強化複合材料を含むが、それらに限定されない。代替として、またはそれと組み合わせて、細長いカテーテル104は、ステンレス鋼、白金、チタン、ニチノール、またはElgiloyおよびCarpenter MP 35等のコバルト合金等の、薄壁金属管類またはハイポチューブでできていてもよい。
【0042】
さらに、カテーテル104は、カテーテルの挿入および除去を支援し、ならびに、血液適合性および抗凝固を支援する、潤滑性被覆で被覆され得る。カテーテル104の外部または内部にあり得る、被覆は、非反応性、親水性、または疎水性である。抗血栓性、抗菌性、抗癌性、反成長因子、成長因子、または抗炎症性である、薬用被覆もまた、組み込まれてもよい。そのような被覆の例は、STS Polymers(Henrietta,N.Y.)製のSLIP-COATおよびMEDI-COATである。加えて、シャフトは、超音波の使用によりデバイスの追跡および留置を支援するように、同様にSTS Polymers(Henrietta,N.Y.)製のECHO-COAT等のエコー源性材料で被覆され得る。
【0043】
図1Dは、線2−2に沿って得られた、図1Cのカテーテル管状本体101の横断面である。図1Dは、カテーテル本体101が、内部隔壁140によって、3つの領域、すなわち、流体送達領域121、ガイドワイヤ領域131、およびバルーン膨張領域141に分割されることを図示する。ガイドワイヤ領域131は、ガイドワイヤの初期留置(図1Bで参照数字13として示される)を支援するようにサイズ決定および構成される。バルーン膨張領域141は、バルーン103を膨張させるようにサイズ決定および構成される。流体送達領域121は、患者の大腿動脈から患者の大脳血管系の中へ含酸素媒体を送達するようにサイズ決定および構成される。各領域121、131、141を、以下でさらに詳細に説明する。
【0044】
(ガイドワイヤ領域131)
ガイドワイヤ領域131は、所望の血管内標的部位にガイドワイヤを導入するために好適な寸法および特性を有する。ガイドワイヤ領域131は、隔壁140によって膨張領域141および流体送達領域121から分離された、カテーテル管状本体101の一部分である。ガイドワイヤ領域131は、カテーテル管状本体101の近位端156においてガイドワイヤ領域131と嵌合する、関連ガイドワイヤポート120(図1Cに示されるような)を有する。ガイドワイヤ領域131およびその関連ガイドワイヤポート120は、それを通る細長い可撓性ガイドワイヤ(図1Bで数字13として示される)を摺動可能に受容するように寸法決定される。バルーン103は、カテーテル管状本体101に円周方向に配置され、かつ密閉可能に取り付けられ、例えば、可撓性ガイドワイヤが、図1Bで数字13として示されるように、それを通過するように、ガイドワイヤ領域131の遠位端155を露出したままにしておく。つまり、ガイドワイヤ領域131の遠位端155は開いている。対照的に、バルーン膨張領域141および流体送達領域121の遠位端は閉じている。ガイドワイヤ領域131は、概して、内部カテーテル管状本体101の全内径または任意の他の直径の約10%を構成する(図1Dでは縮尺通りに示されていない)。
【0045】
(バルーン膨張領域141)
バルーン膨張領域141は、隔壁140によってガイドワイヤ領域131および流体送達領域121から分離された、カテーテル管状本体101の領域である。バルーン膨張領域141は、カテーテル管状本体101の近位端156においてバルーン膨張領域141と嵌合する、関連膨張ポート124(図1Cに示されるような)を有する。バルーン膨張領域は、カテーテル管状本体101の遠位端157において閉じている。バルーン膨張領域は、概して、内部カテーテル管状本体101の全内径または任意の他の所望の直径の約20%を構成する(図1Dでは縮尺通りに示されていない)。バルーン膨張領域141は、カテーテル管状本体101の遠位端157の周囲で円周方向に配置され、かつ密閉可能に取り付けられる、膨張型閉塞バルーン103を有する。膨張型閉塞バルーン103は、血液領域閉塞のために一般的に使用される、任意の従来型のバルーン、すなわち、略球面形状を有するエラストマーバルーンであり得る。膨張型閉塞バルーン103は、上大静脈4にアクセスし、閉塞するようにサイズ決定され、血管への挿入および血管からの除去を促進するように折り畳み可能であり、血流を制限するための使用中に拡張可能である。拡張されると、膨張型閉塞バルーン103は、血管の内壁に適合する最大周辺を有し、それにより、それと血管壁との間の密閉接触を提供する。
【0046】
遠位端157において、バルーン膨張領域141は、典型的には、図1Aに示されたローラポンプ7とは異なる、膨張ポンプの送出および吸引作用を通した、バルーン103の膨張および収縮のための灌流ポート112を有する。膨張ポンプは、以降で説明されるように、灌流および非灌流モードと同期化され、例えば、灌流モードでバルーン103を拡張して、患者の大脳血管系を逆行的に灌流するように、ヘリウムまたは生理食塩水等の気体または液体を送出し得る。膨張ポンプの逆動作は、非灌流モードでバルーン103を収縮させて、右心房への血液の排出を可能にする。膨張型閉塞バルーン103は、典型的には、比較的低い膨張圧力において、5mmから50mmの範囲のサイズ、または任意の他の所望の直径に拡張可能となる。
【0047】
膨張型閉塞バルーン103は、上大静脈4で使用するために好適である、任意の形状となり得ることが理解されるであろう。例えば、膨張型閉塞バルーン103は、楕円形またはソーセージ形となり得、この形状が急速に流れる血液内でより安定しているため、特に望ましい。球状バルーンは(有用であるが)、上大静脈4内で動揺し、それが付加されているカテーテルを回転および屈曲させる傾向を持つ。しかしながら、この形状が球状バルーンで存在する自由度の1つを効果的に排除するため、細長いバルーンの使用は、血管内での動揺および回転を低減する。
【0048】
膨張型閉塞バルーン103は、いくつか例を挙げると、生理食塩水、血液等の好適な液体、ヘリウム等の気体、拡張性発泡体、および/または接着剤を含む、多数の材料で膨張させられてもよいことが理解され得る。
【0049】
(流体送達領域121)
流体送達領域121は、隔壁140によってガイドワイヤ領域131および膨張領域141から分離された、カテーテル管状本体101の領域である。流体送達領域121は、カテーテル管状本体101の近位端156において流体送達領域l21と嵌合する、関連流体送達ポート122(図1Cに示されるような)を有する。流体送達領域121は、膨張状態の膨張型閉塞バルーン103と実質的に同期される外部ポンプ7の制御下で、患者の動脈、例えば大腿動脈14(図1A参照)から、患者の大脳血管系の中へ血液を連結する。流体送達領域121は、バルーン103より前、例えば近位に位置し、患者の大腿動脈からの血液が患者の大脳血管系の中へ逆行的に灌流することを可能にする、灌流ポート109を有する。流体送達領域121の直径は、概して、内部カテーテル管状本体101の全内径または任意の他の所望の直径の約70%を構成する(図1Dでは縮尺通りに示されていない)。
【0050】
流体送達領域121の内面は、本明細書で説明されるような被覆を有するか、または、所望の方法で流体送達領域121を通って流れる血流に影響を及ぼす、経時的に放出されるように適合された少なくとも1つの医薬品または薬剤で含浸される。例えば、それを通ってカテーテルが延在する、患者の脳血管中の血栓形成を低減する、ヘパリンまたは他の被覆が使用され得る。使用され得る市販のヘパリン被覆の例は、STS Biopolymers, Inc.(336 Summit Point Dr.,Henrietta,N.Y)から入手可能な、ヘパリン・塩化ベンザルコニウム複合体、ヘパリン・TDMAC複合体、および他の医療用被覆を含む。
【0051】
生物の血流に、そのような被覆した表面を暴露することによって、他の不揮発性分解産物を被覆内で保持しながら、医薬品が制御された方式で被覆から放出される。被覆は、約0.1〜1.0mmの厚さ、または任意の他の所望の厚さであり得、mmあたり約1〜100ミクロモルの医薬品放出化合物、または任意の他の所望の濃度あるいは割合を含有し得る。例えば、医薬品の異なる拡散率および/または医薬品のより長い放出が所望されるときに、より高い濃度を使用することができる。
【0052】
(II−B 2領域カテーテル)
ここで図1Eおよび1Fを参照すると、細長いカテーテル204の第2の例示的実施形態が示されている。この実施形態では、カテーテル本体201の内部を、第1および第2の内部領域、すなわち、流体送達領域221およびガイドワイヤ領域231(線3−3に沿って得られた図1Eのカテーテル本体201の断面図である、図1Fに示されるような)に、内部で分割する隔壁240を含む、単一管状部材から成るカテーテル本体201を有する、細長いカテーテル204が示されている。この実施形態では、カテーテル本体201を有する、細長いカテーテル204が示されている。流体送達領域221の直径は、概して、内部カテーテル管状本体101の全内径または任意の他の所望の直径の約70%を構成する(縮尺通りに示されていない)。
【0053】
ガイドワイヤ領域231は、図1C−1Dで図示された3領域カテーテル104の実施形態に関連して上記で説明された、ガイドワイヤ領域131と略同一である。
【0054】
流体送達領域221は、以下の区別を伴って、上記の3領域カテーテル104の流体送達領域121と同様である。具体的には、2領域カテーテルの構成204では、流体送達領域221が2つ以上の機能を果たすことを除いて、2領域カテーテルの構成204は、ほとんどの点で、図1C−1Dに関連して上記で説明される3領域カテーテルの構成104とほぼ同一である。上記で前述した第1の機能は、外部ローラポンプ7(図1Aに示すような)の制御下での患者の大腿動脈から患者の大脳血管系の中への血液の連結に関係する。流体送達領域221によって行なわれる、第2の付加的な際立った機能は、膨張型閉塞バルーン103を膨張させることである。明敏な読者であれば、この機能が図1Cおよび1Dの3領域構成の膨張領域141によって行なわれたことを思い出すであろう。本実施形態では、流体送達領域221は、患者の大腿動脈14(図1Aに示すような)から方向付けられた血流から提供される圧力により、膨張型閉塞バルーン103を膨張させるという付加的な機能を果たす。
【0055】
図1Eに示されるように、流体送達領域221は、バルーン103より前、例えば近位に位置し、患者の大腿動脈からの血液が患者の大脳血管系の中へ逆行的に灌流することを可能にする、第1組の灌流ポート109を有する。また、流体送達領域121と関連して、流体送達領域221の遠位端にあり、患者の大腿動脈からの血液が膨張型閉塞バルーン103を灌流することを可能にするように、バルーン103によって封入または包囲される、第2組の灌流ポート112も示される。第2組の灌流ポート112が様々なサイズまたは直径を有し得ることが留意される。このことは、バルーン103が迅速に血液で充満して時間内に閉塞し、患者の大腿動脈からの血液が患者の大脳血管系の中へ逆行的に灌流することを可能にするのに十分な背圧を提供するようにするものである。
【0056】
細長いカテーテルの種々の構成104、204を説明したが、ここで、図面の図1Aおよび1Bに関して実施形態を説明する。
【0057】
(III.第1の実施形態)
本実施形態は、脳の特定領域への動脈血供給の流動の封鎖または不足による、その区分への灌流の急性停止中に、逆行性低温血液で脳を選択的に灌流するための方法およびシステムを説明する。本明細書の全体を通して説明される実施形態では、種々の方法が、動作の平等な有効性を備え、左鎖骨下静脈または右鎖骨下静脈を利用し得ることが留意される。
【0058】
図1Bは、細長いカテーテル104の挿入の領域を詳細に示す、図1Aの胸部の拡大図である。
【0059】
図1Bを参照すると、適正な留置のために右心房5の中へ前進させられた、細長いカテーテル104が示されている。例えば、ガイドワイヤ13を使用して、正しく位置付ける際に、細長いカテーテル104の先端106は、右心房・上大静脈接合点12に非常に近接して留置される。膨張型閉塞バルーン103は、左腕頭静脈3の出発点の直ぐ近位で、上大静脈4の中に位置付けられる。しかしながら、膨張型閉塞バルーン103は、左腕頭静脈3の入口を遮るべきではない。十分な膨張時に、膨張型閉塞バルーン103は、上大静脈4を閉塞する。説明される灌流モードでは、膨張したバルーン103によって閉塞が適用されると、細長いカテーテル104を通して導入される含酸素媒体が、脳の静脈系を上方へ進行することが逆行的に可能になる、大脳血流の増加があることが理解されるであろう。同様に、上肢の中への血液または他の含酸素媒体の流出を防止するように、両方の上肢における止血帯21(図1A参照)が、灌流モードで膨張させられる。
【0060】
(III−A 灌流/非灌流モード)
例示的実施形態による方法に従って、ここで、灌流モード(すなわち、動脈血送出モード)および非灌流モードといった2つのモードを備える、動作の単一サイクルを説明する。しかしながら、本明細書で説明される種々の実施形態では、複数のサイクルにわたる動作が行なわれることを理解されたい。
【0061】
(A.)灌流モード(送出期)
灌流モードの間、膨張型閉塞バルーン103は、例えば、2領域カテーテル204を使用するローラポンプ7によって送出される大腿動脈14(図1A)からの大腿血液によって、または3領域カテーテル104を使用する時は、上記のような別のポンプによって送出される他の流体(例えば、ヘリウム等の気体または生理食塩水等の液体)によって拡張(膨張)される。バルーンは、患者の大腿動脈14からの動脈血で灌流されている鎖骨下カテーテル104と時間内に略同時に、上大静脈4を閉塞するように拡張または膨張させられる。動脈血は、患者の大腿動脈14から鎖骨下静脈2へ動脈血を送出するローラポンプ7(図1A参照)を用いて、鎖骨下カテーテル104を灌流する。ローラポンプ7は、各サイクルに2〜100回の間のEKG拍動(例えば、QRS群)等の、ある期間にわたって、大腿動脈14から鎖骨下静脈2へ血液を押し進める。一実施形態では、範囲は、実質的に2〜32回のEKG拍動である。図1Aに示されるように、ローラポンプ7は、大腿動脈血が、例えば、実質的に25〜27℃の範囲の温度に冷えることを可能にする、冷却デバイス6に直列に取り付けられる。当然ながら、大腿動脈血は、16〜18℃または16〜34℃の間の範囲を含むがそれに限定されない、他の所望の温度に冷却され得る。冷却した血液は、両脳半球の保護のために、右または左鎖骨下静脈2を介して、鎖骨下カテーテル104を通して上大静脈4の中へローラポンプ7によって送出される。
【0062】
図1Aに示されるように、ローラポンプ7および患者のEKGモニタ8は、灌流/非灌流サイクルの頻度を制御する、コンピュータ(プロセッサまたはコントローラ)10に接続され、同期化される。EKGモニタ8は、例えば、患者の心臓のサイクルにおけるQRS群を検出するように動作可能である。EKGモニタ8は、連続QRS群の間の平均期間を計算し、ローラポンプ7を使用して、右鎖骨下静脈2を介して、鎖骨下カテーテル104を通して上大静脈4の中へ血液を送出するためのタイミングサイクルを開始する。QRS群、および脚の中へのパルス容量の移動時間を考慮した時間遅延の検出後、EKGモニタは、右鎖骨下静脈2を介して、鎖骨下カテーテル104を通して上大静脈4の中へ血液を送出するように、ローラポンプ7に電気出力信号を送信する。QRS群を検出する代わりに、EKGモニタ8は、典型的には、P波、ST部分、およびT波と呼ばれる、波形の部分(または動脈BP)を含む、心臓波形の特徴的パターンの種々の他の部分を代替として検出し得ることが留意される。
【0063】
本明細書で使用される場合のプロセッサは、タスクを実行するためのデバイスまたは一式の機械可読命令である。本明細書で使用される場合、プロセッサは、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアのいずれか1つまたは組み合わせを備える。プロセッサは、実行可能手順または情報デバイスによって使用するための情報を操作、分析、修正、変換、または伝送することによって、および/または出力デバイスに情報を送ることによって、情報に作用する。プロセッサは、例えば、コントローラまたはマイクロプロセッサの能力を使用するか、または備え得る。
【0064】
準備段階で事前に患者に留置された、両方の上肢における止血帯(圧力カフ)21は、灌流モードの開始時に自動的に、例えば、実質的に80〜100水銀柱メートルに膨張させられる。両方の上肢止血帯21は、ローラポンプ7またはそのコントローラ(例えば、プロセッサ10)およびEKGモニタ8に接続され、したがって、システムの灌流/非灌流サイクルにとらわれることが留意される。閉塞が左腕頭静脈より上側で発生した場合に、この実施形態、または本明細書で説明される任意の他の実施形態では、1つのみの圧力カフもまた、使用され得ることを理解されたい。
【0065】
(B.)非灌流モード(非送出期)
非灌流モードでは、上大静脈4の減圧が開始される。非灌流モードの間、膨張型閉塞バルーン103は、例えば、2領域カテーテル204が使用される時は、ローラポンプ7の逆動作によって、または3領域カテーテル104が使用される時は、ヘリウム、生理食塩水、または他の流体とともに使用される流体ポンプの逆動作によって折り畳まれる。例えば、非灌流モードの間、ローラポンプ7または流体ポンプは、例えば、2つまたは3つのEKG群にわたって、その回転を中断し、逆転させる。ポンプの逆動作は、膨張型閉塞バルーン103を折り畳ませ、上大静脈4が十分に減圧し、右心房5の中へ排出することを可能にする。折り畳まれた、または収縮したバルーン103は、上大静脈4を通した静脈減圧のために、いくらかの時間を許容する。上肢止血帯21は、上肢のより良好な動脈灌流および静脈減圧を可能にするように、同時に収縮させられる。
【0066】
灌流および非灌流モードの両方の間、カテーテル104、204の近位端と連通する圧力センサ等を通して、上大静脈における中心静脈圧を測定するために、カテーテルが使用され得る。灌流および非灌流モードの期間は、上大静脈における静脈圧の測定に応じて、必要に応じて調節され得る。
【0067】
(IV.第2の実施形態)
ここで図面の図2Aおよび2Bを参照すると、脳の特定領域への動脈血供給の流動の封鎖または不足による、その区分への灌流の急性停止中に、逆行性低温血液で脳を選択的に灌流するための、別の実施形態による方法およびシステムが図示されている。
【0068】
以前の例示的実施形態(図1Aおよび1Bに示されるような)でこれまで図示されている場合には、バルーン先端付きカテーテル104は、単一のバルーン103を含む。本例示的実施形態(図2Aおよび2Bに示されるような)では、1対のバルーン103および107を含む、代替的なバルーン先端付きカテーテル構成が使用される。その他では、本実施形態は、ほとんどの点で以前の実施形態と同様である。
【0069】
図2Aおよび2Bで図示された本例示的実施形態によれば、鎖骨下静脈2を内部で閉鎖するために、付加的な短い自己膨張バルーン107が使用される。短い自己膨張バルーン107は、上記のバルーン103と構造が略同様であることが留意される。適正な動作のために、短い自己膨張バルーン107は、鎖骨下静脈2の挿入部位160(図2B)の近くに位置し、鎖骨下静脈2を通した逆出血を防止するために、または止血帯と置き換わるために、例えば、灌流モードの間に、血液からの背圧の結果として膨張する。
【0070】
(V.短い自己膨張バルーン(代替実施形態))
図3Aおよび3Bは、短い自己膨張バルーン107の代替実施形態を図示する。短い自己膨張バルーン107は、膨張および収縮状態の両方において、2つの区分から成る。第1の区間(すなわち、近位部)33には開口部がなく、第2の区間(すなわち、遠位部)36は、複数の開口部38−1、38−2、38−3、・・・、38−nを有し、そのうちの3つが説明を簡単にするために示されている。開口部は、例えば、細長く、かつ縦方向であり得る。縦開口部38−nは、鎖骨下静脈2中の動脈血が、図3Bに示されるようなパラシュート39のように、バルーンの第1の区間(すなわち、近位部)33を開放することを可能にする。
【0071】
動作時、システムが灌流モード(上記で前述)であると、短い自己膨張バルーン107は、逆行性血流(この血流が上大静脈4から方向付けられる)から縦開口部38−nの中、バルーン107の第2の区間(すなわち、遠位部)36の中へ提供される圧力により、膨張する。血流は、バルーン107の第1の区間(すなわち、近位部)33および第2の区間(すなわち、遠位部)36を、図3Bに示されるようなパラシュートのように開放(膨張)させ、それにより、鎖骨下静脈2における比較的高い圧力が挿入部位160(図2B)の外へ血が滲出および/または漏出することを防止する。
【0072】
図3A−3Bは、カテーテル本体101の一部分を包囲し、それに密閉可能に取付けられる近位バルーン107を通り抜ける、2領域カテーテルのカテーテル本体101を示す。しかしながら、本実施形態では、2領域または3領域カテーテルのいずれかが使用され得ることを理解されたい。さらに、近位バルーン107は、遠位バルーン103と同様の標準型、または図3Aおよび3Bに関連して説明されるようなパラシュート型であり得る。
【0073】
(VI.第3の実施形態(大腿カテーテル))
ここで図面の図4を参照すると、脳の特定領域への動脈血供給の流動の封鎖または不足による、その区分への灌流の急性停止中に、逆行性低温血液で脳を選択的に灌流するための、別の実施形態による方法およびシステムが図示されている。
【0074】
本実施形態は、ほとんどの点で前述の実施形態と同様である。しかしながら、本実施形態では、カテーテル104’が、鎖骨下静脈2に挿入される前述の鎖骨下カテーテル104、204よりも有意に長いという点で、前述の実施形態から区別できる。大腿カテーテル104’とも呼ばれるカテーテル104’は、上記のような右(または左)鎖骨下静脈2の代わりに、右または左大腿静脈15のいずれかを通した挿入を可能にするように、鎖骨下カテーテル104よりも長い。細長いバルーンカテーテル104’は、10cmから100cmの範囲の長さ、および1フレンチから10フレンチの範囲の外径、または任意の他の所望の長さおよび/または直径を有する。自己膨張バルーン103は、前述の実施形態に関連して上記で説明されるバルーン103と、構造および構成が略同様である。
【0075】
本実施形態では、上記の2領域または3領域カテーテル構成のいずれかが使用され得ることが留意される。3領域カテーテル構成については、ガイドワイヤ領域直径は、0.2mmから5mmの範囲、または任意の他の所望の直径である。
【0076】
バルーン103は、上大静脈4にアクセスし、閉塞するようにサイズ決定される。特に、バルーン103は、血管への挿入および血管からの除去を促進するように折り畳み可能であり、血流を制限するように灌流モードの間に拡張可能である。拡張されると、バルーン103は、血管の内壁に適合する最大周辺を有し、それにより、それと血管壁との間の密閉接触を提供する。灌流モードでは、(冷却デバイス6およびローラポンプ7を通した)大腿動脈14からの冷却した血液は、膨張したバルーン103を越えて延在する流体送達領域の端における灌流穴109’を通して灌流され、したがって、大脳血管系を逆行的に灌流する。大腿カテーテル104’では、大腿静脈15から挿入されるため、流体送達領域の灌流穴109’は、図4に示されるように膨張したバルーン103を越えて延在することに留意されたい。対照的に、鎖骨下カテーテル104の灌流穴109は、図1A、1Bに関連して説明されるように、バルーン104より前にある。明白であるように、鎖骨下および大腿カテーテル104、104’の両方の灌流穴109、109’は、大脳血管系を逆行的に灌流するように構成される。
【0077】
(VII.第4の実施形態(延長大腿カテーテル))
図5は、図4に関連して説明される上記の実施形態と同様である、別の実施形態を図示する。この実施形態では、バルーン103は、上大静脈4および下大静脈19の両方を同時に閉塞するのに十分な長さとなるように構築される。本実施形態は、全ての他の点で以前の実施形態と同一である。
【0078】
上大静脈19の閉塞に加えて、循環停止中の下大静脈19閉塞が、頸動脈から戻って来る非飽和血液を増加させ、したがって、脳にさらなる保護を提供するという、いくつかの臨床的証拠があることに留意されたい。当然ながら、所望であれば、上大静脈4および下大静脈19の両方を同時に閉塞するためのより長いバルーン103が、本明細書で説明される実施形態のうちのいずれかとともに使用され得る。本実施形態では、他の実施形態のように、2領域または3領域カテーテル構成のいずれかが使用され得ることが留意される。さらに、所望であれば、大腿カテーテル104’は、逆出血を防止するように挿入部位付近に位置付けられる、図2A、2B、3と関連して説明されるものと同様の第2のバルーンを有し得ることに留意されたい。第2のバルーンは、通常型または図で107と示されたパラシュート型であり得る。しかしながら、典型的には、鎖骨下静脈の挿入部位における背圧と比較して、灌流モードの間に、大腿静脈の挿入部位における背圧による逆出血は発生しないため、典型的には、大腿カテーテル104’とともに、そのような第2のバルーンを使用する必要はない。
【0079】
(VIII.第5の実施形態(2カテーテルの実施形態))
図6は、別の実施形態を図示する。この実施形態では、2つのカテーテルが利用される。第1のカテーテル602は、以降で大腿静脈カテーテル602と呼ばれ、第2のカテーテルは、以降で鎖骨下静脈灌流カテーテル630と呼ばれる。大腿静脈カテーテル602は、鼠径部(例えば、右または左大腿静脈)を通した挿入を可能にするのに十分な長さであり、正しく位置付けられると、バルーン部材604が実質的に上大静脈4の中に位置付けられ、大腿静脈カテーテル602の先端608が、左腕頭静脈3の出発点の略近位で右心房・上大静脈接合点12に非常に近接して留置されるように、右心房5を通したガイドワイヤ13を使用して、大腿静脈15(図4、5)を通して前進させられる。2領域カテーテルに関連して上記で説明される実施形態と同様に、バルーン604は、流体ポンプを介して膨張領域641の中へ流体を送出することによって、灌流モードで膨張させられる。流体は、膨張のために、膨張穴612を通ってバルーンに進入する。流体ポンプの逆動作は、バルーンを収縮させる。
【0080】
第2のカテーテル630は、例えば、上記のようなガイドワイヤを使用して、鎖骨下静脈2を通して挿入され、それに付加されるバルーンを持たない。鎖骨下静脈カテーテル630の目的は、大腿動脈14から血液を取り除き、図1に関連する等して上記で説明されるように、それを冷却デバイス6およびローラポンプ7に通過させ、大腿静脈カテーテル602が上大静脈4を閉塞している間に、その静脈循環を通して逆行的に、穴609を通して脳に灌流するために、冷却した血液を使用することである。
【0081】
(IX.第6の実施形態(短い自己膨張バルーンを含む、2カテーテル実施形態))
代替実施形態では、鎖骨下静脈カテーテル630は、鎖骨下静脈2の中の鎖骨下静脈カテーテル630の挿入部位において、鎖骨下静脈2を通した逆出血を防止するように、図2A−2Bに示されたバルーン107と同様の短い自己膨張バルーンを含む。短い自己膨張バルーンは、図1B、2Bに関連して説明されるような標準型、または図3に関して上記で説明されるようなパラシュート型であり得る。当然ながら、所望であれば、バルーン107はまた、逆出血を防止するよう、鎖骨下または大腿静脈等の任意の挿入部位を閉鎖するために使用され得る。
【0082】
(X.片側逆行性灌流デバイスおよび技法)
前述の両側性灌流(すなわち、脳の両側に血液を灌流させる)は、例えば、閉塞または損傷場所が分からない時、または脳への十分な灌流が大域的に不足する異なる種類のショックの間に、重要となり得る。しかしながら、状況によっては、医師は、血液を受容することが妨げられている脳の側のみに血液を灌流させることを希望する場合があり、片側性灌流として知られている。
【0083】
好ましい実施形態では、カテーテルは、逆行方向で、病変または閉塞と同じ側の脳に血液を灌流させる。典型的には、この閉塞は、大脳動脈内で発生する。この閉塞した大脳動脈が脳の左半球中にある場合、脳卒中の症状は、典型的には、身体の右側で生じる。したがって、酸素を豊富に含んだ血液を左側に到達させるために、左静脈排出系が利用される。好ましくは、カテーテルが左半球の左静脈系に導入され、血液が周期的に灌流され、静脈から排出される。同様に、脳の右半球中の閉塞または障害に、静脈排出系を利用することができる。
【0084】
ある例のシナリオでは、患者が脳卒中の兆候および症状を伴って緊急治療室に到着し、脳のC.T.スキャンまたはM.R.Iが行なわれる。脳卒中の種類が判定される(虚血性または出血性)。適切であれば、脳灌流カテーテルが直ちに挿入され、虚血領域の灌流が開始される。好ましくは、血栓溶解剤を添加することに加えて、灌流液が冷却される(約5〜35℃の間)。
【0085】
今や、神経放射線科医は、脳卒中に関与する血管にアクセスしなければならない。多くの施設では、患者の緊急治療室の到着時間から動脈の病状の経皮識別が対処される(血管形成術、ステント留置術等)までに、6〜7時間が経過する。手短に言えば、この時間の間に虚血領域は保護されず(例えば、血液が供給されない)、それが患者の状態のさらなる悪化を許容する。
【0086】
上記の貴重な時間の誤用とは対照的に、脳灌流カテーテルの好ましい実施形態は、迅速に挿入され、灌流の過程が開始される。過程は、虚血領域を対処するためだけに数時間が必要とされることと比較して、患者の緊急治療室の到着時間から開始するまでに数分かかり得る。数分以内に組織の死が開始し得るため、有意な量の組織障害を防止することができる。
【0087】
過程は、以下で説明されるように、より具体的となり得る。その遠位端が閉塞される第1の場所に位置するように、灌流カテーテルが挿入される。カテーテルと脳との間のあらゆる介在静脈は、制限または閉塞される。例えば、右腕の血圧カフで、または右鎖骨下静脈中の第2の閉塞カテーテルによって、右鎖骨下静脈を制限することができる。酸素を豊富に含んだ血液の供給を冷却器およびポンプへ迂回させるように、別のカテーテルが大腿動脈に挿入される。冷却器は、血液を所望量だけ(例えば、10℃)冷却して、神経組織障害をさらに低減する。ポンプは、この酸素を豊富に含んだ血液を灌流カテーテルに方向付ける。
【0088】
灌流は、まず標的静脈場所(および任意の介在静脈枝)を閉塞するために灌流カテーテルを使用することによって、周期的に発生する。例えば、カテーテル上の閉塞バルーンを膨張させ、患者の腕の血圧カフを同時に膨張させることによる。血液は、灌流カテーテルから出て、頸静脈の上方へ、かつ脳の一方の半球へ、逆行的に灌流させられる。血液を灌流させた所定期間(例えば40秒)後、閉塞デバイス(例えば、カテーテルバルーンおよび圧力カフ)は、静脈を通した正常な血流を可能にするように収縮させられる(例えば、約15秒間)。この過程は、処置中に必要に応じて周期的に反復される。
【0089】
(実施例の片側性灌流カテーテル)
好ましくは、脳の所望の半球に血液を灌流させるために、単一灌流カテーテルが使用される。そのような灌流カテーテルは、好ましくは、選択的拡張型血管閉塞デバイス(例えば、バルーン)と、酸素を豊富に含み、冷却した血液を送達するための灌流ポートとを含む。この点で、本明細書で前述したカテーテルのいずれかを、片側性灌流技法に使用することができる。しかしながら、異なる閉塞および灌流カテーテルも使用できることを理解されたい。
【0090】
図7Aおよび7Bは、2つのバルーンを有する脳灌流カニューレ320の別の好ましい実施形態を図示する。第1のバルーン334は、硬質カニューレ先端322の中の通路326を介してポート336から血液が供給される、自己膨張式バルーンである。第2のバルーン332は、第1のバルーン334を覆って位置し、第1のバルーン334を収縮させることができる。具体的には、第2のバルーン332は、真空または吸引デバイス(図示せず)に連結される吸引ライン338に接続される。ユーザが第1の自己膨張式バルーン334を収縮させることを希望する時に、吸引が印加され、第2のバルーン332を第1のバルーン334上に圧縮させ、それにより、両方のバルーンを収縮させ、血液が右心房に流れ戻ることを可能にする。
【0091】
図7Aは、内側に拡張器330およびガイドワイヤ13を伴うカニューレ320を図示する。図7Bは、拡張器330およびガイドワイヤ13が除去されたカニューレ320を図示する。概して、カニューレ320は、より軟質の鞘部分326に接続される、比較的硬質の円錐形部分324を含む。拡張器330は、細長いガイドワイヤの通路を形成する通路324に連結する、内部通路を提供する。いったん拡張器330が除去されると、その硬質円錐先端324を伴う鞘326は、閉塞バルーン332および334と、灌流ポート328とを有する、カニューレになる。したがって、ユーザは、本明細書で前述されたように、体内の静脈を選択的に閉塞することができる。脳の右葉の治療のために(例えば、脳卒中治療のために)、左腕頭静脈より上側の上大静脈内等の、本明細書で提案される体内の場所のうちのいずれかで、カテーテル上の二重バルーンを使用することができる。
【0092】
本明細書で説明される灌流カテーテルに使用されるバルーンのサイズは、標的血管の直径に応じて変動することに留意されたい。例えば、左腕頭静脈を閉塞して左半球を灌流するためのバルーンは、脳の右半球を灌流するために上大静脈を閉塞するためのバルーンよりも直径が小さくてもよい。言い換えれば、バルーンのサイズは、閉塞される標的血管のサイズに基づいて選択されるべきである。
【0093】
また、本発明では血圧カフが好ましいが、逆行方向の血流を遮断するが順行方向の血流を許容する、一方向弁(例えば、アンブレラ弁)、または第2の閉塞バルーンカテーテル等の、静脈(例えば、鎖骨下静脈)への流動を遮断する他の技術が可能であることにも留意されたい。
【0094】
(右半球片側性灌流)
図8は、本発明による脳灌流カニューレ300の好ましい実施形態を図示する。このカニューレ300は、ガイドワイヤ13の通過を可能にする、硬質カニューレ先端310を通る通路312を含む。自己膨張式バルーン308は、本体326の内部と連通している膨張ポート306を介して、膨張させられる。自己膨張式閉塞バルーン308はまた、ユーザがバルーン308を選択的に折り畳み、膨張させることを可能にする、ポンプに接続される。カニューレ300の鞘302は、大腿動脈14からの血液が(例えば、ローラポンプ7および冷却デバイス6を介して)頸静脈9の中へ送出されることを可能にする、灌流ポート304を含む。ローラポンプの逆転は、自己膨張バルーンを折り畳む。
【0095】
好ましくは、カテーテル300は、右鎖骨下静脈2を通して挿入され、バルーン308は、血圧カフ(図8では示されていない)が右腕で同時に膨張させられ、右鎖骨下静脈2を制限している間に、左腕頭静脈3より上側で膨張させられる。バルーン308が左腕頭静脈3より上側で膨張させられるため、先行実施形態で説明されるような、左腕の上または内側の閉塞デバイス(例えば、圧力カフまたは閉塞バルーン)の必要がない。したがって、灌流ポート304からの灌流は、逆行方向で、大腿動脈14から脳の右側に血液をより効率的に提供することができる。
【0096】
図9は、左腕頭静脈3より上側で上大静脈4を選択的に閉塞するためのヘリウム(または他の気体あるいは流体)を充填したバルーン103を伴う、脳灌流カテーテル150の別の好ましい実施形態を図示する。右鎖骨下静脈2を制限するように、血圧カフ(図9では示されていない)も右腕で膨張させられるにつれて、ヘリウムバルーン103がヘリウム源152によって膨張させられ、それにより、血液がカテーテルの灌流ポート109の外へ、および脳の右側の中へ灌流することを可能にする。
【0097】
バルーン103は、ガスまたはヘリウムを供給するポンプを逆転させることによって折り畳むことができ、またはバルーン103は、その圧力が所定閾値以下に降下するとバルーン103を折り畳む、反跳材料(例えば、バルーン103の内部にある、外部にある、またはそれに組み込まれる、ニチノールまたはプラスチック網)を含んでもよい。再度、バルーン103が左腕頭静脈3より上側に位置付けられるため、先行実施形態で説明されるような、左腕の上または内側の閉塞デバイス(例えば、圧力カフまたは閉塞バルーン)の必要がない。したがって、脳には血液が供給され、右脳葉における脳卒中または他の閉塞による障害を低減する。
【0098】
図10は、本発明による灌流カテーテル340の別の好ましい実施形態を図示する。概して、遠位灌流ポート342がカテーテル本体341の先端付近に位置することを除いて、このカテーテル340は、前述の二重バルーンカテーテル320と同様である。このポート342の配向は、カテーテル340の遠位端が患者の脳に向かって方向付けられるように、カテーテル340が内頸静脈9に挿入されることを可能にする。この点で、大腿動脈14からの冷却した酸素を豊富に含んだ血液は、本明細書の他の場所で説明されるように、脳に周期的に供給される(例えば、血液を灌流させ、次いで、外側バルーン332への吸引で頸静脈9の閉塞を除去し、排出を可能にする)。カテーテル340による閉塞が内頸静脈9の中で発生するため、右鎖骨下静脈2または左腕頭静脈3等の他の静脈の制限または閉塞は不要である。したがって、機器および使用法は、カテーテル340による閉塞を、別の閉塞/制限デバイス(例えば、圧力カフ)と協調させる必要がない。
【0099】
図11は、本発明によるカテーテル340の別の可能な経路を図示する。具体的には、二重バルーンカテーテル340の遠位端は、図10と同様に、内頸静脈9の中に位置付けられる。しかしながら、カテーテル340は、大腿静脈14を通って進入し、右心房5を通って、上大静脈4を通って、内頸静脈9の中へと、上方に通される。したがって、血液は、本明細書で前述されたように、脳の右側へ周期的に灌流されることができる。
【0100】
図12は、本発明の好ましい実施形態による、細長い二重バルーンカテーテル360を図示する。カテーテル360は、概して、細長い内側バルーン364および細長い外側バルーン362を除いて、前述の二重バルーンカテーテル(例えば、カテーテル340)と同様である。細長い内側バルーン364および細長い外側バルーン362は、それらが鎖骨下静脈2および内頸静脈9を遮断するよう位置付けられることを可能にする、長さおよび周囲の長さを有する。この点で、右腕の圧力カフ等の制限デバイスは、鎖骨下静脈2を通る流動を防止するために必要ではない。
【0101】
(左半球片側性灌流)
図13は、脳の左側の治療のために二重バルーンカテーテル320を使用する方法を図示する。二重バルーンカテーテル320は、バルーン334の閉塞中に、灌流した血液が身体の右側へ通過することを防止するように、左腕頭静脈3の中に位置付けられる。好ましくは、左腕頭静脈3が、概して、大静脈4の直径よりも小さいため(以前の実施形態で説明されるように)、二重バルーン332および334は、身体の右側に使用されるものよりも小さい直径を有する。
【0102】
動作時に、血圧カフ(図10では示されていない)が左腕で膨張させられている(左鎖骨下静脈2’を制限している)間に、二重バルーンカテーテル320の自己膨張式バルーン334は、左腕頭静脈3の中で膨張させられる。次いで、血液は、ポート328を介して、脳卒中または他の閉塞が存在し得る脳の左側に灌流させられる。代替として、血圧カフの代わりに、またはそれに加えて、閉塞バルーンを左鎖骨下静脈2’で使用することができる。再度、バルーン332および334が左腕頭静脈3の中に位置付けられるため、付加的な閉塞デバイス(例えば、バルーンまたは圧力カフ)は、身体の右側では必要とされず、身体の左側のみにある。
【0103】
図14は、身体の左側の内頸静脈9の中に位置付けられた、前述の二重バルーンカテーテル340を図示する。この例では、カテーテル340は、頸静脈9を通って身体に進入し、したがって、体内で短い距離しか進行しない。カテーテル340が左鎖骨下静脈2’より上側に位置付けられるため、左腕血圧カフ等の制限デバイスは必要ではない。
【0104】
図15は、左腕頭静脈3の中に位置付けられる、前述の二重バルーンカテーテル320を図示する。カテーテル320は、左内頸静脈9を通って身体に進入し、周期的に拡張および収縮するように左腕頭静脈3内で前進させられる。ポート328から脳の左側への血液灌流を最大限化するため、血圧カフ等の制限デバイスを、左鎖骨下静脈2’を通る血流を制限するために使用することができる。
【0105】
図16は、2つのカテーテルが使用されることを除いて、前述の技法と概して同様である、脳の左半分を灌流する技法を図示する。具体的には、自己膨張式内側バルーン334および(管338を介して内側バルーン334を収縮させるための)選択的に制御される外側バルーン332で、左腕頭静脈3を周期的に遮断するために、二重バルーン閉塞カテーテル370が使用される。この例では、閉塞カテーテル370は、左鎖骨下静脈2’において挿入され、遠位端が左腕頭静脈3内に位置付けられるように前進させられる。灌流カテーテル372は、左内頸静脈9に挿入され、大腿動脈からの血液が脳の左側へ灌流させられることを可能にする。前述の技法と同様に、左鎖骨下静脈2’の下方への血液灌流を制限するために、血圧カフ等の制限デバイスも使用される。この点で、ユーザは、患者体内の第2の場所から血液を灌流させながら、第1の所望の場所における血流を遮断することができる。本明細書で説明される技法のうちのいずれかの代わりに、この二重カテーテル技法を使用できることを理解されたい。
【0106】
図17は、図16で説明される二重カテーテル技法と同様である、脳の左半分を灌流する技法を図示する。しかしながら、左内頸静脈9および左鎖骨下静脈2’の両方を遮断するために、細長い二重バルーンカテーテル380(自己膨張式内側バルーン384および制御可能な膨張型外側バルーン382を有する)が使用される。この点で、バルーン382および384は、完全に左内頸静脈9の開口部を横断して跨ぐことが可能となるような長さおよび寸法である。したがって、灌流カテーテルが左内頸静脈9内の異なる場所で血液を送達している間に、左腕頭静脈3および左鎖骨下静脈2’の両方を周期的に遮断することができる。左鎖骨下静脈2’が遮断されるため、血圧カフまたは止血帯等の制限デバイスは必要とされない。
【0107】
図18は、細長い二重バルーンカテーテル380が大腿静脈14を通して挿入され、上大静脈4の上方へ方向付けられることを除いて、図17と同様の技法を図示し、膨張したバルーン384が左腕頭静脈3を遮断する。この点で、バルーン382および384は、左腕頭静脈3の開口部を横断して延在し、血流を遮断するようにサイズ決定される。灌流カテーテル372は、左鎖骨下静脈2’を通して、左腕頭静脈3の中へ位置付けられる。制限デバイスが左腕で使用されると(例えば、圧力カフ)、血液は、脳の左半球へと、左内頸静脈9の上方へ灌流する。
【0108】
血液は、多くの異なる静脈場所で閉塞および灌流させることによって、脳に逆行的に供給され得ることを理解されたい。例えば、灌流カテーテルは、右または左頸静脈を閉塞して、脳のそれぞれの側に血液を供給し得る。本明細書の図は単に、本発明による、より一般的な技法の例である。
【0109】
上記のように、本明細書で開示される、本発明による方法およびデバイスは、脳への血流が危ぶまれる、またはそのような血流が危ぶまれる危険性がある、事実上任意の外科的処置(例えば、介入処置)または健康状態(例えば、大脳虚血)で使用することができる。使用は、脳組織で発生する外傷に直接反応したものとなり得るか、または、予防的性質の使用となり得る。すなわち、使用は、脳組織への外傷の危険性を防止するか、または少なくとも低減する目的によるものとなり得る。脳卒中の緊急治療、血管形成術、ステント留置術、静脈移植片の植え込み、動脈内膜切除術等を含む、いくつかの例示的処置および状態が、本明細書の他の場所に記載されている。事実上任意の経皮および/または低侵襲外科的処置が、本発明から優れた安全性および有効性の便益を得る。
【0110】
特に、本発明による方法およびデバイスの利益を大いに享受する、1つの処置は、その内容が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,411,552号、ならびに米国公報第2006/0271166号および米国公報第2006/0265056号で開示されているような経皮弁置換術である。そのような処置の前または間(あるいは両方)に冷却した血液で脳を灌流することにより、脳を保護する。加えて、脳組織を冷却することにより、脳組織が損傷されるまでの時間が延びるため、本発明による方法およびデバイスは、施術医が弁の処置を完了することができる時間を増加させる。この余分な時間は、処置中に合併症に遭遇した場合、例えば、漏出により置換弁を位置付け直す必要がある場合に、決定的に重要となり得る。
【0111】
本発明の方法およびデバイスとともに使用するために特に適している別の処置は、その内容が参照することにより組み込まれる、米国特許第5122136号および第6015424号で開示されているような脳動脈瘤の治療である。本発明の方法およびデバイスによる方式で脳を冷却すると、脳組織への損傷の危険性を低減するのに役立つ。
【0112】
特定の実施形態に関して本発明を説明したが、添付の請求項で説明されているような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変形がなされることが理解されるであろう。したがって、本明細書および図面は、例証的に見なされるものであり、添付の請求項の範囲を制限することを目的としない。
【0113】
添付の請求項を解釈する際に、以下を理解されたい。
a)「を備える」という言葉は、所与の請求項で記載されるもの以外の要素または行為の存在を除外しない。
b)要素に先行する「1つの」という言葉は、複数のそのような要素の存在を除外しない。
c)請求項中のあらゆる参照記号は、それらの範囲を限定しない。
d)全ての「手段」は、同じアイテムまたはハードウェアあるいはソフトウェア実装構造または機能によって表され得る。
e)開示された要素のうちのいずれも、ハードウェア部分(例えば、離散および集積電子回路を含む)、ソフトウェア部分(例えば、コンピュータプログラミング)、およびそれらの任意の組み合わせから成ってもよい。
f)ハードウェア部分は、アナログおよびデジタル部分の一方または両方から成ってもよい。
g)開示されたデバイスまたはその部分のうちのいずれかは、特に他に記述がない限り、共に組み合わせられるか、またはさらなる部分に分離され得る。
h)特に指示がない限り、いずれの特定の一連の行為も、必要とされることを目的としない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆行方向で脳の片側に血液を灌流させる方法であって、
患者の静脈内の標的場所にカテーテルを位置付けるステップと、
該標的場所を閉塞するステップと、
該患者の動脈から該カテーテルに酸素を豊富に含んだ血液を方向付けるステップと、
一定の期間にわたって該カテーテルから該酸素を豊富に含んだ血液を灌流させるステップであって、該酸素を豊富に含んだ血液は、該脳の1つの半球だけに向かって逆行方向に移動するよう、該標的場所と該脳との間の該カテーテル上の場所から灌流する、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
第2の期間にわたって、前記酸素を豊富に含んだ血液の前記灌流を中断し、前記閉塞を少なくとも部分的に中断するステップと、
前記標的場所を閉塞するステップと、
一定の期間にわたって前記カテーテルから該酸素を豊富に含んだ血液を灌流させるステップであって、該酸素を豊富に含んだ血液は、前記脳の1つの半球だけに向かって逆行方向に移動するよう、該標的場所と該脳との間の該カテーテル上の場所から灌流する、ステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素を豊富に含んだ血液を灌流させる前に、該酸素を豊富に含んだ血液を冷却するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的場所を閉塞するステップは、患者の静脈内の第2の場所を制限するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標的場所は、右鎖骨下静脈、左鎖骨下静脈、上大静脈、左内頸静脈、右内頸静脈、および左腕頭静脈といった静脈内の場所から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
患者の静脈内の第2の場所を制限する前記ステップはさらに、該患者の腕の周囲で血圧カフを膨張させるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記標的場所を閉塞する前記ステップは、前記カテーテル上の第1のバルーンを膨張させるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
第2の期間にわたって前記閉塞を少なくとも部分的に中断する前記ステップはさらに、第2のバルーンに吸引を印加するステップを含み、該第2のバルーンは、前記第1のバルーンを覆って配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のバルーンは、自己膨張式である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
静脈系を通して患者の脳の1つの半球だけに血液を供給する方法であって、
患者の静脈内の第1の位置にカテーテルを前進させるステップと、
該脳の片側からの血液の排出を防止するよう、該静脈系を閉塞するステップと、
第1の内頸静脈を通して、逆行方向に該カテーテルから酸素を豊富に含んだ血液を灌流させるステップと、
該カテーテルからの該酸素を豊富に含んだ血液の灌流が、逆行方向に第2の内頸静脈を通って移動することを防止するステップと
含む、方法。
【請求項11】
前記第1の位置は、右鎖骨下静脈、左鎖骨下静脈、上大静脈、左内頸静脈、右内頸静脈、および左腕頭静脈といった群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記静脈系を閉塞する前記ステップはさらに、前記カテーテル上のバルーンを膨張させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記静脈系を閉塞する前記ステップと同時に、第2の位置を制限するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カテーテルは、大腿静脈、右鎖骨下静脈、左鎖骨下静脈、上大静脈、左内頸静脈、右内頸静脈、および左腕頭静脈といった場所のうちの1つを通って、前記患者の前記静脈系に進入する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記脳の片側からの血液の排出を防止するよう、前記静脈系を閉塞する前記ステップはさらに、該患者の該静脈系に第2の閉塞カテーテルを挿入するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者の脳の片側の半球に血液を灌流させる方法であって、
該患者の静脈系内の第1の場所に、第1のカテーテルの遠位端を位置付けるステップであって、該第1の場所は、該脳の近接内である、ステップと、
該静脈を通る通路を隔離するよう該静脈系を閉塞するステップであって、該通路は、第1の内頸静脈を含み、該通路はさらに、第2の内頸静脈から該第1の内頸静脈を隔離する、ステップと、
該カテーテルに酸素を豊富に含んだ血液を供給するステップと、
該カテーテルから、かつ逆行的に該脳の該半球への該通路を通して、該酸素を豊富に含んだ血液を灌流させるステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記カテーテルに酸素を豊富に含んだ血液を供給する前記ステップはさらに、該酸素を豊富に含んだ血液を送出および冷却するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記静脈系の前記閉塞を中断し、前記酸素を豊富に含んだ血液の前記灌流を中断するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記静脈系を閉塞する前記ステップは、前記カテーテル上の閉塞バルーンを膨張させるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
周期的かつ同時に、前記静脈系を閉塞し、前記酸素を豊富に含んだ血液を灌流させ、次いで、該静脈系の閉塞を解除し、該静脈系の閉塞部分から血液を排出させるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
脳の片側に血液を灌流させるためのシステムであって、
カテーテルと、
患者から酸素を豊富に含んだ血液を受容するために構成される、該カテーテルの第1端と、
患者の脳組織と連通している静脈管腔中の留置のために構成される、該カテーテルの第2端と、
該カテーテルの該第2端に向かって配置される閉塞要素と、
該静脈管腔を実質的に閉塞するよう、該閉塞要素を周期的に作動させ、かつ該静脈管腔を通して逆行方向に、該脳組織の片側に該酸素を豊富に含んだ血液供給を周期的に送達する制御システムと
を備える、システム。
【請求項22】
脳損傷の危険性がある患者を治療する方法であって、
血管形成術、脳卒中治療、ステント留置術、静脈移植片留置術、動脈内膜切除術、動脈瘤治療、瘻孔治療、経皮弁置換術、心停止の治療、心不全の治療、ショックの治療、上行大動脈瘤の治療、大脳虚血の治療、血管内手術から成る群より選択される、少なくとも1つの医療処置を行なうために、患者を準備するステップと、
逆行方向で該患者の脳の片側に冷却した血液を導入するステップと、
該少なくとも1つの医療処置を行なうステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記医療処置中に、前記患者の前記脳の片側に冷却した血液を周期的に再導入するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−527269(P2010−527269A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508569(P2010−508569)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/063692
【国際公開番号】WO2008/144382
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509317807)
【出願人】(509317793)
【Fターム(参考)】