大脳内適用用カテーテルおよびガイドチューブ
【課題】小径カテーテルチュービングを利用することにより、カテーテルの配置を最適化しつつ、脳の外傷を最小限に抑えること。
【解決手段】患者の脳実質内に挿入するための神経外科用カテーテルデバイスであって、該デバイスの遠位端は、1.0mm以下の外径を有する第1のチューブ2のセクションを含み、該第1のチューブのセクションは、所望の脳の標的に治療剤を送達するための単数または複数のポートを含み、該デバイスは、該第1のチューブのセクションより大きな外径を有する第2のチューブ3のセクションを含む、神経外科用カテーテルデバイス。
【解決手段】患者の脳実質内に挿入するための神経外科用カテーテルデバイスであって、該デバイスの遠位端は、1.0mm以下の外径を有する第1のチューブ2のセクションを含み、該第1のチューブのセクションは、所望の脳の標的に治療剤を送達するための単数または複数のポートを含み、該デバイスは、該第1のチューブのセクションより大きな外径を有する第2のチューブ3のセクションを含む、神経外科用カテーテルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳神経外科で使用される装置、および神経外科用装置の配置を決める方法に関する。該装置と方法は、脳機能の異常を定位的に(stereotactically)標的化する処置において、および治療薬の脳実質内へ直接注入するために特に有用である。全身的に与えられた治療薬が、よく機能しないか損傷を受けた脳組織への送達を制限することにより回避される広範囲の望まれない副作用を持つ場合、これは、特に有用であるだろう。
【背景技術】
【0002】
脳機能の異常を処置する例は、伝達をブロックするてんかんの病巣または経路へのガンマ−アミノ−ブツリン酸(buturic acid) のアゴニストの急性の注入、および、ペリ水管の灰白質、または難治疼痛の処理用の視床の標的に直接注入された麻酔剤または他の鎮痛剤の慢性の送達を含んでいる。また、細胞毒性剤は、脳腫瘍へ直接送達することができる。それらは血液脳関門を越えないので、全身的に送達され得ない脳標的に治療薬を送達するために実質内注入を使用することもできる。例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、頭部外傷、卒中および多発性硬化症の患者の治療は、欠損する神経細胞または損傷を受けた神経細胞を保護し修復するために、神経栄養因子の注入によって実行されてもよい。ニューロトロフィンは、作用を回復する目的で、脳の損傷を受けた領域またはよく機能しない領域へ移植された神経の移植片を支持するために注入され得る。
【0003】
実質内薬剤送達は、非ヒトの霊長類、およびラットにおいて実証された。ヒトまたは非ヒトの脳への実質内薬剤送達に関しては、カテーテルが差し込まれること、そして薬剤が所望の脳標的に断続的にまたは連続的にポンプで注がれることが提案されている。長期的な薬剤送達については、貯蔵部分を含んでいるポンプが皮下に挿入され、そして貯蔵部分は必要であれば触知可能なポートを通って経皮的に補充される。
【0004】
特に、米国出願公開第6 042 579 号は、脳の中への神経成長因子の注入による神経変性障害を治療するための技術を開示する。
【0005】
脳神経手術を行なうために、外科医は、最初の段階で、所望の標的の位置を同定することを必要としている。これは、診断の画像上で見ることができ、それから測定することができる患者の頭に定位の基準座標フレームを固定することにより通常達成される。次いで、定位フレームはプラットフォームとして作用し、そこから、測定座標にセットされた定位ガイド(stereoguide )を使用して、器具が所望の標的にガイドされる。一度、器具が所望の標的にガイドされれば、処置を開始し得る。
【0006】
そのような神経外科手法では多くの困難に遭遇する。差し込まれている器具の最適状態に及ばない配置は有意な罹患率または処置の失敗を導き得る。機能障害の処置のための脳標的は、通常、深く位置していて、容積も小さい。例えば、パーキンソン病を処置する所望の標的は、視床下部の核中に位置していて、直径3-4mm 、または直径3-4mm および長さ5-6mm の卵形である。淡蒼球(globus palladus ) のような他の標的または視床中の標的は、通常大きくても1-2mm 以下である。そのような小さな標的については、1mm ほどの最適状態に及ばない配置は処置の有効性を低減するだけでなく、また虚弱、変調感覚、悪化した発語および複視のような望まれない副作用を引き起こし得る。しかしながら、機能的な神経外科の標的は診断の画像について視覚化するのが多くの場合難しいまたは不可能であり、その実際の位置が、脳中の認識可能な目標を参照して推論される必要があるかもしれないし、プロセスを補助するために脳の標準地図を使用して推論される必要があるかもしれない。個体と地図の間の構造上の相違、および個体の同じ脳の異なるサイドの間での構造上の相違でさえも、配置が最適状態に及ばないものであり得ることを意味する。最適状態に及ばない配置についての他の理由は、画像を取得する間の患者の移動、または画像方法に固有でありうる画像診断の幾何学な歪みに起因し得る。また、手術中に、脳のシフトが生じる場合があり、これは、手術台上の位置で画像を取得する間の頭の位置の変化、次いで脳の陥没を伴うバーホール(burr hole) が作製される場合の脳脊髄液の漏れ、および脳を通過する器具の貫通に起因し得る。外科医は、手順の間目が覚めたままで、機能的脳神経手術を受けている患者について電気生理学的研究を行なうことにより、これらの誤差を補正することを試みる。
【0007】
実質内カテーテルは、その脳内標的に定位固定技術を用いて誘導され得る。典型的には、脳標的の定位固定の位置確認は、定位固定ベースリングを頭蓋骨に固定し、画像形成技術を用いて標的の位置を確認することによりなされる。標的の位置は、三次元座標を用い、定位固定ベースリングに取り付けた放射線不透過性基準線をもとに測定を行なうことによって確認する。次いで、定位固定ベースリングを、測定座標にセットした定位固定ベースリング上の定位固定ガイド(stereoguide)を用いて標的に器具を誘導する基盤として使用し得る。次いで、カテーテルを、その孔内への堅いワイヤの挿入により剛性とした後、脳組織中を標的へと誘導し得る。あるいはまた、直線ワイヤを最初に標的に誘導し、一端(すなわち挿入または遠位端)が脳内に位置し、反対端(すなわち外部または近位端)が脳の外側に残るようにカテーテルをワイヤの周囲に導入し得る。いったん配置したら、カテーテルの外部端を頭蓋骨に固定してポンプに連結することができ、それにより治療剤が投与され得る。特に、中脳標的などの脳の特に傷つき易い部分が処置対象であり、したがってカテーテルが通されることになる場合、カテーテルチュービングの外径はできるだけ小さいべきであることは理解されよう。このような脳の非常に傷つき易い部分は、脳幹などのように、典型的には頭蓋骨の表面から70〜100mmの深部に位置する傾向がある。もちろん、カテーテルチュービングが細いほど、脳内の深部標的への挿入の際にずれが大きくなり、配置が最適状態に及ばない可能性が増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、小径カテーテルチュービングを利用することにより、カテーテルの配置を最適化しつつ、脳の外傷を最小限に抑えることを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕患者の脳実質内に挿入するための神経外科用カテーテルデバイスであって、
該デバイスの遠位端は、1.0mm以下の外径を有する第1のチューブのセクションを含み、
該第1のチューブのセクションは、所望の脳の標的に治療剤を送達するための単数または複数のポートを含み、
該デバイスは、該第1のチューブのセクションより大きな外径を有する第2のチューブのセクションを含む、神経外科用カテーテルデバイス、
〔2〕使用の際に、第1のチューブのセクションの遠位端および第2のチューブのセクションの遠位端が、両方、患者の脳実質に挿入される、〔1〕記載のデバイス、
〔3〕第1のチューブのセクションと第2のチューブのセクションの異なる直径の間に段状になった部分を含む、〔1〕または〔2〕記載のデバイス、
〔4〕ハブが、第1のチューブのセクションと第2のチューブのセクションの間に配置される、〔1〕記載のデバイス、
〔5〕第2のチューブのセクションが、1.0mm以下の内径を有する、〔1〕〜〔4〕いずれか記載のデバイス、
〔6〕ヘッドが、患者の頭蓋骨に取り付けるために第2のチューブのセクションの近位端に配置される、〔1〕〜〔5〕いずれか記載のデバイス、
〔7〕第1のチューブのセクションが、0.7mm以下の外径を有する、〔1〕〜〔6〕いずれか記載のデバイス、
〔8〕デバイスの遠位端が、頭蓋骨から100mmまでの深さまで、脳実質に挿入され得る、〔1〕〜〔7〕いずれか記載のデバイス、
〔9〕第1のチューブのセクションが、脳の標的に治療剤を送達するための単一のポートを遠位端に含む、〔1〕〜〔8〕いずれか記載のデバイス
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、カテーテルの配置が最適化され、脳の外傷が最小限に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のカテーテルの図である。
【図2】図2は、図1のカテーテルの一部を示す図であり、内部の特徴を点線で示す。
【図3】図3は、図2の右手方向からの端面図である。
【図4】図4は、定位固定挿入の第1相である。
【図5】図5は、定位固定挿入の第2相である。
【図6】図6は、定位固定挿入の第3相である。
【図7】図7は、定位固定挿入の第4相である。
【図8】図8は、ドーム形状のヘッドを有するガイドチューブの斜視図である。
【図9】図9は、ドーム形状のヘッドを有する図8のガイドチューブの断面図である。
【図10】図10は、ガイドチューブ内に挿入された図1のカテーテルを示す概略図である。
【図11】図11は、インサイチューでのカテーテル挿入がいったん完了した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の局面によれば、1.0mm以下の外径を有する、患者の脳内への挿入のために設けられた微細チューブを有する神経外科用カテーテルが提供される。カテーテルの外径は、0.7mm以下であることが好ましく、0.65mm以下であることがさらにより好ましい。最も好ましくは、外径は、0.5mm以下である(if)。カテーテルは、好ましくは、通常、断面が円形である。
【0013】
また、カテーテルは、深部標的神経外科用カテーテルであり、少なくとも40mm、より好ましくは少なくとも70mm、最も好ましくは少なくとも90mmの長さを有することが好ましい。
【0014】
微細チューブは非常に微細なため、カテーテルは、微細チューブの一端に連結されたコネクターチューブをさらに備えていることが望ましく、該コネクターチューブは微細チューブより直径が大きい。好ましくは、コネクターチューブは、約2mmの外径を有する。連結は、微細チューブとコネクターチューブとの間に配置されるハブを含めることによりなされ得る。好ましい態様によれば、ハブは、微細チューブとコネクターチューブを連結する連絡通路を含み、連絡通路は、微細チューブが確実に挿入された第1通路、コネクターチューブが確実に挿入された第2通路および第1通路と第2通路の間に配置されたリンク通路を含む。
【0015】
好ましい態様では、ハブは、円柱状本体、およびハブを患者の頭蓋骨に固定し得る1つ以上のフランジを含む。ハブは、接着剤およびねじを含む任意の固定手段(arrangement)を用いて固定し得る。各フランジは、ハブをねじによって患者の頭蓋骨に固定できるさら穴孔を構成する内表面を含むことが特に好ましい。
【0016】
好ましくは、ハブは、微細チューブがハブに固定される場所に接している停止表面を含む。また、ハブはその停止表面に向かって先細りになっていることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の局面によれば、患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するためのチューブを備えた神経外科用器具が提供され、チューブは、脳内に挿入するための遠位端、近位端、および患者の頭蓋骨に取り付けるためにチューブの近位端に配置されるヘッドならびにチューブにより患者の脳内に挿入するための本発明のカテーテルを有する。カテーテルの他の利点または好ましい特徴は上述のとおりである。
【0018】
好ましくは、ガイドチューブのヘッドは、アクリルセメントにより患者の頭蓋骨に嵌め込むためのねじ込み型外表面(externally threaded surface)を含む。好ましい態様によれば、ヘッドは、溝付きドーム構造を含み、カテーテルは、微細チューブがガイドチューブ内にいったん挿入されると、溝付きドーム構造に接触する停止部を一端に有するハブを有する。溝は、好ましくは、カテーテルが溝内で曲がるとねじれを防ぐような形状である。ドーム構造は、好ましくは、カテーテルが溝内で曲がり、停止部がドーム表面に接触すると、カテーテルの遠位端がその標的の正確な位置に残ったままになるような形状である。ドーム構造を有するヘッドを備えたガイドチューブが開示された英国特許公開公報2357700号明細書(その開示は参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0019】
本発明の第3の局面によれば、患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するためのチューブを備えた神経外科用ガイド装置が提供され、チューブは、挿入のための遠位端、反対近位端、および患者の頭蓋骨に取り付けるためにチューブの近位端に配置されたヘッドを有し、チューブの内径は1mm以下であることを特徴とし、ここで、チューブは、遠位端が標的よりも1〜20mm短いところにあるような長さである。好ましくは、この長さは、遠位端が標的よりも5〜10mm短いところにあるような長さである。
【0020】
本発明の第4の局面によれば、本発明の第3の局面による神経外科用ガイドチューブを標的に向かって脳内に挿入すること(ここで、遠位端は標的よりも5〜20mm短いところにある);ガイド装置のヘッドを頭蓋骨に固定すること;および本発明のカテーテルをチューブにより標的へと挿入することを含む、患者の脳内の標的にカテーテルを配置する方法が提供される。
【0021】
カテーテルは、頭蓋骨の表面から少なくとも40mm、より好ましくは表面から少なくとも70mm、最も好ましくは頭蓋骨の表面から少なくとも90mmの深部に位置する標的に配置されることが好ましい。
【0022】
本出願は、
本発明の1つ以上の神経外科用カテーテル、
患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するための1つ以上のガイドチューブ(各チューブは、遠位端および近位端、ならびにチューブの近位端に配置された、患者の頭蓋骨に取り付けるためのヘッドを有する)、および
1つ以上のガイドワイヤ
を含むキットを包含する。
【0023】
好ましくは、本発明の(according)キットは、個別に印をつけたセクションを有するパックにて提供され、ここで、各セクションは、カテーテル1つ、ガイドチューブ1つおよびガイドワイヤ1つを含む。これにより、構成要素(すなわち、カテーテル、ガイドチューブおよびガイドワイヤ)の各セットを、構成要素の他のセットと区別し得ることが可能になる。これは、構成要素の種々のセットを脳の異なる部位で使用する場合に重要である。
【0024】
本発明の態様を、添付の図面を参照しながら、例示の目的でのみ記載する。
【0025】
先に説明したように、脳の特に傷つき易い領域へのカテーテルの挿入は、挿入時に外傷をもたらし、これは、外科医が最小限にしたいと望むことである。カテーテルが微細であるほど脳は外傷を受けにくい。しかしながら、挿入の正確さは決定的に重要であるため、およびこのような脳の特に傷つき易い領域は頭蓋骨表面から相当に遠いため、カテーテルの遠位端を正確に配置するためには、より大きな直径のカテーテルが必要であると考えられていた。しかしながら、本発明は、ずっと微細なカテーテルの使用を可能にする。
【実施例】
【0026】
実施例1
図1、2および3は、本発明のカテーテル1を示す。カテーテル1は、外径が1mm以下、最も好ましくは0.7mm以下の、ある長さの微細チュービング2を含む。外径は0.5mm以下であることがさらにより好ましい。この場合、カテーテルチュービング2は、ポリウレタンプラスチック、好ましくはカルボタン(carbothane)55DB20 (Thermedics Polymer Products, Woburn MA, USA)から構成されている。微細チュービング2は、ハブ4を介して、約2mmの外径を有する、ある長さのコネクターチュービング3に連結されている。コネクターチュービング3は、この場合、カルボタン85AB20などのポリウレタンプラスチック製であるが、他の材料も使用され得る。
【0027】
この場合のハブ4もまた、カルボタン72DB20などのポリウレタンを用いて構成されている。この場合もやはり、他の材料も適当であり得る。
【0028】
微細チュービング2は患者の脳内に挿入されることが意図されるが、コネクターチュービング3は、治療剤を断続的または連続的に所望の脳標的にポンプ輸送し得る、ポンプの流出チュービングに連結されることが意図される。長期間の薬物送達では、ポンプを皮下に埋め込み得、リザーバーを、必要により、触知可能なポートを介して経皮的に補充し得る。この場合、コネクターチュービング3は、ポンプからカテーテルへと皮下を貫通し得る、ポンプの流出チュービングに連結され得る。その長さは、具体的な設置に依存し、適当な長さに切断される。
【0029】
ハブ4は、通常円柱状である中心本体5、および直径方向に対向し、それぞれが、ハブを患者の頭蓋骨の外側表面にねじ留めすることができるさら穴孔を含む1対のウイング6を含む。
【0030】
ハブ4の円柱状本体5は、その全長にわたって貫通している連絡通路を含む。連絡通路は、内部に微細チュービングが挿入されてしっかり保持された、均一な直径の第1狭通路8を含む。連絡通路はまた、内部にコネクターチュービング3が挿入されてしっかり保持された、均一な直径の第2広通路9含む。第1通路8と第2通路9との間には、微細チュービング2とコネクターチュービング3の内径の差を考慮するために、通常先細りになっている第3リンク通路10がある。第3リンク通路10の末端は、微細チュービング2およびコネクターチュービング3の内径と同じか、非常に近い直径であることに留意されたい。
【0031】
図2から、ハブ4の右端は円錐台であり、ハブの端は平面であり、停止部11を構成することがわかる。その意義は、以下の記載から理解されよう。
【0032】
実施例2
次に、カテーテルの挿入について記載する。まず、定位固定フレームを患者の頭蓋骨に取りつけ、定位固定フレームが装着された患者のイメージングを行ない、標的の位置を三次元座標として明確にすることにより頭蓋内標的の位置を確認する。この工程は、本特許出願明細書の導入部でより詳細に説明しており、神経外科の分野における標準技術である。
【0033】
標的がいったん確認されると、標的座標にセットした定位固定ガイドを使用する。1mm以下の内径を有する適当な大きさのガイドチューブを、脳内に標的の方向に指向する。ガイドチューブは、一端にヘッドが設けられており、これは、いったん挿入されると、例えば、アクリルセメントを用いて頭蓋骨のバーホール内に接合することにより患者の頭蓋骨に取り付けることができる。
【0034】
挿入の前に、ガイドチューブを、標的に達さず、かつ脳組織を通過する間に、脳の特に外傷に敏感な部位に侵入しないほど十分短い長さに切断する。ガイドチューブの末端は、一般的に標的に数ミリメートル達しない。次いでガイドチューブのヘッドの上端から標的までの距離を測定し、放射線不透過性のスタイレットを、ガイドチューブの下方に挿入したときにその末端が計画した標的に到達するような長さに切断する。これは、スタイレットがガイドチューブの末端を超えて延在することを意味する。
【0035】
スタイレットを除去し、それをスタイレットと同じ長さに切断された実質内カテーテルと交換する前に、患者は次いで、スタイレットの申し分のない配置を確かめるために、再度像を撮られる。カテーテルおよびスタイレットがガイドチューブ内に適切にはまるようにカテーテル、スタイレットおよびガイドチューブはすべてそろえられると考えられるが、この場合も、カテーテルの外径は、わずか1ミリメートルである。極細カテーテル、例えば外径0.65 mmのカテーテルを使用することが望ましければ、内径0.75 mmの適切なガイドチューブも使用する。
【0036】
カテーテルが挿入されると、最も多くの場合タングステンでできている、その穴を通る硬いワイヤの位置により、挿入の間にカテーテルが補強されると期待される。一旦カテーテルがガイドチューブに挿入されると、ハブ4上のストップ11がガイドチューブのヘッドに隣接し、カテーテルの末端が標的に到達したことを示す。硬いワイヤは除去され、ハブ4がさら穴孔7を通るネジを用いて頭蓋骨の外表面にしっかりと固定され得るように、細いチュービング2が約90°曲げられる。曲げやすくするために、ガイドチューブのヘッドはドーム型で、曲げている間に、細いチュービング2がねじれないだけでなく、細いチュービングの末端が動かないように設けられている。これは、本明細書中で、後により詳細に説明する。
【0037】
次いでコネクタチュービング3は、ポンプの流出チュービングに連結され得る。一般的に、コネクタチュービング3は、離れて配置されたポンプまで、皮下をくぐって進められる。
【0038】
実施例3
他の挿入技術として、図4〜7に示される多数の段階または処置がとられる。分かるように、直径の小さいカテーテルは、直径の小さい器具に固有の柔軟性のために、挿入の間に、計画した軌道から離れる傾向がある。神経外科的標的は、しばしば深く、一般的には頭蓋骨の表面から70〜80 mm、時には頭蓋骨の表面から100 mmもの深さに位置するため、カテーテルは通常極めて硬くなければならず、そのため直径が大きい。
【0039】
可能性のある標的の例として、視床下核、黒質および脚橋核を含む中脳の一部が挙げられる。これは脳の中で特に重要な領域であり、器具の通過による外傷を最小限に抑えることが重要であり、これは一般的に頭蓋骨表面から約70〜80 mmに位置し、高さ約20〜25 mmの体積中に含まれる。
【0040】
極細カテーテルの、中脳の標的への挿入を容易にするために、挿入は以下のように行われる。
【0041】
まず、直径0.6 mmの、直径の小さいタングステンガイドワイヤ22を外径1.7 mmのチューブ21に挿入し、ワイヤ22がチューブ21の末端から25 mm突き出すように、指で締めるグラブネジ23を用いてチューブ21内に固定する。チューブ21は長さ20 mmに渡って、先端に向かって先細になっている。チューブ21およびワイヤ22は、先端から突出するワイヤ22を有するチューブ21を見ることができる挿入の第一段階を示している図4で見ることができる。指で締めるグラブネジ23はチューブ21の上端に見ることができ、そこでワイヤ22が保持されている。挿入は、標的が三次元的座標の観点から同定され、定義される定位枠で行われる。定位枠は、この技術を可能にするために改変された定位固定ガイドを有する。図4に示される挿入の第一段階の間、チューブおよびワイヤは標的に向かってともに下ろされる。この場合、チューブは長さ165 mmであり、チューブ21およびワイヤは一つのユニットとして挿入されるので、チューブ上端からガイドワイヤ22の先端までの距離は190 mmである。ワイヤ22はチューブ上端の上方に、約150 mm延在している。定位固定ガイドには、上部クランプ24および下部クランプ25が含まれ、各クランプは、挿入または除去されているワイヤまたはチューブとの連動状態の場所と、そこから離れた場所との間で旋回され得る。
【0042】
一旦ガイドワイヤ22がその標的に到達すると、ガイドワイヤ22の近接端部を締めるために、上部クランプ24が旋回される。一旦グラブネジ23が緩められると、ワイヤ22をそのまま残して、チューブ21が脳から引き抜かれ得る。図5に示されるように、一旦チューブ21が上部クランプに向かって持ち上げられると、そこで露出しているワイヤ22を締めるために、下部クランプは回され得、上部クランプ24は解放され得る。これによって、チューブ21はワイヤ22の上端から完全に除去され得る。
【0043】
ガイドチューブ31がワイヤ22上に通され、次いで上部クランプ24が回され、ワイヤ22上で閉じられる。図7にも示されているように、次いで下部クランプ25が解放され得、距離が標的に約1または2 cm達しないように、ガイドチューブ31の脳への挿入を可能にする。ガイドチューブ32は、上端に、ヘッドが患者の頭蓋骨のギザギザのねじ穴(tapped burrhole)にねじ入れられるのを可能にする、外表面にねじの溝の切られた(threaded)ヘッドを有し、そのためガイドチューブ31を安定して適所に固定できる。ヘッドのさらに他の特徴は、この記述の中で、後に明らかになろう。
【0044】
一旦ガイドチューブ31が取り付けられると、ガイドワイヤ22は除去され得、図7から、次いで0.65 mmカテーテル36がガイドチューブ31に沿って、標的まで挿入され得ることがわかる。
【0045】
この方法は、最初の通過で、チューブ21によって硬くされているガイドワイヤが標的に当たり、次いで標的に達しないガイドチューブを挿入することによって脳の標的が固定され、ガイドチューブによって極細器具が標的へ挿入されやすくするという、独特の利点を有する。アルツハイマー病のようなある症状の処置のために、数本の留置カテーテルを通じて基底核の標的へ神経成長因子を送達することが必要である。各カテーテルが直径0.65 mmしかなければ、再生させようとしている組織を実質的に破壊せずに、多数の細いカテーテルを挿入し得る。
【0046】
この挿入方法では、ワイヤ22、チューブ21の内側、チューブ21の外側の一定の直径、およびガイドチューブ31およびカテーテル36の直径について述べられている。勿論、異なる直径が適し得、中脳を通過するワイヤ22および細いカテーテル36の外径はできるだけ細く、切断面で1 mm以下であるという点であることが重要な要素であることがわかるであろう。直径は0.7 mm以下であることが好ましく、0.65 mm以下であることがより一層好ましい。
【0047】
ガイドチューブ31の上端部は、チューブ41の上端が、器具を挿入する頭蓋骨のギザギザの穴にねじ込まれ得るねじの溝を切られた外表面を有するヘッド42を有することがわかる、図8および9に示されている。チューブ41の上端は広がって、ヘッド42の溝44になる。ヘッド42は、溝44が位置するドーム構造45を備えて形成される。
【0048】
図9からわかるように、一旦ヘッドが頭蓋骨に固定されると、カテーテルはチューブ41内に位置し、次いでyのわずかな位置からzのわずかな位置まで曲げられる。カテーテルが曲げられる中心となる内部の端は、曲げる工程の間にカテーテルの末端が動かされないように、丸みを与え、カテーテルがねじれず、かつxからyまでの距離がxからzまでの距離と等しくなるように、溝44内に形成される。
【0049】
図8および9から、この態様では、ガイドチューブ31は、完全なユニットとしてねじの溝の切られた表面43およびドーム構造45を含むヘッド42で構成されることが理解されよう。
【0050】
ここで図10および11に関して、カテーテルはストップ11がドーム構造45の上部に隣接するように堅いワイヤ(示されず)上で脳に挿入されていることが理解されよう。この段階で、堅いワイヤは除去され、カテーテルの末端が処置に適当な場所に位置する。次いでカテーテルは、図11に示されている位置まで曲げられ、ドーム構造45に対してストップ11を支持する。図11は、ハブ4がネジによって頭蓋骨にどのように取り付けられているか、およびコネクタチュービング3がどのようにしてポンプから離れるように向けられているかをも示している。
【0051】
カテーテルが、末端にある単一のポートを通じて薬剤を送達するのが好ましい。これは、脳への実質内送達のために用いられ得る、末端に複数のポートを有するカテーテルに勝る。特に、単一のポートの使用によって、実質内送達において予想される、タンパク質様物質の蓄積または神経膠の内部への伸長による低い流速によってポートが遮られるようになる危険性が最小限に抑えられる。実質内カテーテルの末端に単一のポートを有することによるさらなる利益は、これによって特定の標的での薬剤送達を確実にする点である。複数のカテーテルからの薬剤送達部位は、特に低い流速では予測できない。これは、最も抵抗の低いポートを通る場合に流量が最大になるためである。ポートは同じサイズであり得るが、組織が個々のポートを遮る程度は様々である。最終的な結果は、恐らくは単一のポートからの軸外の薬剤送達になり、これは小さい標的に対する薬剤送達においては最適状態に及ばない。
【0052】
脳の外傷は、直径1 mm以下、好ましくは直径0.7 mm未満の極細カテーテルを用いることによって、挿入時に最小限に抑えられる。さらに、直径の小さいカテーテルによって、黒質および脚橋核のような脳幹の小さい標的ならびに基底核、水管周辺灰白質(peri-aqueductal grey matter)および様々な視床核のような他の小さい標的への薬剤送達に適するようになる。
【0053】
治療物質の注入の間、カテーテルポートから流れる物質は、好ましくは最も抵抗が低い経路を辿る。すなわち、組織/カテーテル境界面に沿って逆流し、皮層表面まで上昇し、次いでCSF区画まで流れる。それは卵形に分布して、流速によって、組織に様々に拡散する。そのため、脳の小さい標的内に薬剤を含むことは問題になり得る。しかしながら、カテーテルが本発明におけるような内在するガイドチューブの下方に脳の中に挿入されると、次いで末端のポートから抜け出た薬剤が、ガイドチューブに達するまで組織/カテーテル境界面に沿って逆流する。そして好ましくはガイドチューブとカテーテルの間の境界面に沿って流れ、頭蓋骨の外へ出て頭皮の帽状腱膜下区画へと流れる。そのため薬剤にさらされる脳組織の体積は、ガイドチューブを超えて突出するカテーテルの長さの調節および流速の調節によって制御され得る。かかる精妙な制御は、ニュートロフィン(neurotrophin)のような薬剤の、脳の小さい標的内の送達を含む場合に不可欠である。
【0054】
実施例4
試験において、本発明の実質内カテーテルは進行したパーキンソン病患者5人の脳に、ガイドチューブを用いて埋め込まれ、その末端は所望の標的にわずかに達しないように配置された。1人の患者は片側にカテーテルを埋め込まれ、4人は両側への、背面の被殻(すなわち所望の標的)への埋め込みをされた。神経栄養因子を獲得した組換えメチオニルヒト膠細胞系(r-met HuGDNF)が、離れて配置されたポンプ(8626 シンクロームドポンプ(Synchromed Pumps)、Medtronic Inc, Minneapolis)を用いて、カテーテルを通じてその背面被殻に長期に渡って注入され、腹壁の皮下に埋め込まれた。GDNFは、実験的に引き起こされた動物のパーキンソン病の症状を逆転することが示されている神経栄養因子である。このヒトにおける試験では、これは1時間当たり2〜8μlの範囲の流速、10.8〜43.2マイクログラム/被殻/日の間の投与量で注入された。患者は、効果が出る前、および6箇月目に、国際的に認められ、有効な、パーキンソン病の重篤さを査定するためのスコアリングシステム、統一パーキンソン病評価スコア(the Unified Parkinson's Disease Rating Score)(UPDRS)を用いて査定された。6箇月目に、患者のUPDRSスコアに40%の改善があった。注入物は十分耐性があり、大きな副作用はなかった。
【0055】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]1.0mm以下の外径を有する、患者の脳実質内中への挿入用に設けられた(arrange)微細チューブを有する神経外科用カテーテル。
[2]0.7mm以下の外径を有する、[1]記載の神経外科用カテーテル。
[3]0.65mm以下の外径を有する、[1]記載の神経外科用カテーテル。
[4]0.5mm以下の外径を有する、[1]記載の神経外科用カテーテル。
[5]カテーテルの微細チューブが、横断面において一般に円形である、[1]〜[4]いずれか記載の神経外科用カテーテル。
[6]微細チューブの1つの端に連結されたコネクターチューブをさらに含み、該コネクターチューブが微細チューブより直径が大きな、[1]〜[5]いずれか記載の神経外科用カテーテル。
[7]微細チューブとコネクターチューブとの間に配置されたハブをさらに含む、[6]記載の神経外科用カテーテル。
[8]ハブが微細チューブとコネクターチューブとを連結する通路を含む、[7]記載の神経外科用カテーテル。
[9]通路が微細チューブが確実に挿入された第1通路を含む、[8]記載の神経外科用カテーテル。
[10]経路がコネクターチューブが確実に挿入された第2通路を含む、[8]または[9]記載の神経外科用カテーテル。
[11][9]に従属する場合、ハブが、第1通路と第2通路の間に配置されたリンク通路をさらに含む、[10]記載の神経外科用カテーテル。
[12]ハブが円柱状本体を含む、[7]〜[11]いずれか記載の神経外科用カテーテル。
[13]ハブが患者の頭蓋骨に固定される1つ以上のフランジを含む、[7]〜[12]いずれか記載の神経外科用カテーテル。
[14]そのまたは各フランジが、ハブをねじによって患者の頭蓋骨に固定され得るさら穴孔を構成する内表面を含む、[13]記載の神経外科用カテーテル。
[15]ハブが、微細チューブがハブに固定される場所に接している停止表面を含む、[7]〜[14]いずれか記載の神経外科のカテーテル。
[16]ハブが停止部に向かって先細りになっている、[15]に記載の神経外科用カテーテル。
[17]患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するためのガイドチューブ、該チューブは、遠位端、近位端、および患者の頭蓋骨に取り付けるために該チューブの近位端に配置されるヘッドを有する;ならびに
該チューブにより患者の脳実質内への挿入のために設けられたカテーテル、該カテーテルは[1]〜[16]いずれか記載のように設けられている、
を含む神経外科用器具。
[18]ガイドチューブのヘッドが患者の頭蓋骨に嵌め込むためのねじ込み型外表面(externally threaded surface)を含む、[17]に記載の神経外科用カテーテル。
[19]ヘッドが溝付きドーム構造を含み、微細チューブが溝を通過する際にカテーテルの停止部がドーム構造に接するように、カテーテルが[15]または[16]に従って設けられる、[17]または[18]記載の神経外科用カテーテル。
[20]カテーテルが溝中で曲がる場合にねじれないように、溝が形成される、[19]記載の神経外科用カテーテル。
[21]カテーテルがドーム表面に接する停止部を備えた溝中で曲がると、カテーテルの遠位端がその標的の正確な位置に残ったままになるように、ドーム構造が形成される、[19]または[20]記載の神経外科用カテーテル。
[22]所望の標的に向けて、患者の脳内へ挿入するためのチューブ、該チューブは遠位端および近位端を有する;
患者の頭蓋骨に取り付けるために前記チューブの近位端に配置されたヘッド
を有し、該チューブの内径が1mm以下であり、該チューブの遠位端が標的よりも5〜20mm短いところにあるような長さのものであることを特徴とする、神経外科用ガイド装置。
[23]神経外科用ガイドの標的に向けての脳内への挿入工程、該ガイドは遠位端および近位端を有するチューブを含み、ヘッドがその近位端に配置され、該遠位端が標的よりも5〜20mm短いところにある;
ヘッドを頭蓋骨に固定する工程;ならびに
該チューブを通して標的内への1mm以下の直径のカテーテルの挿入工程
を含む、患者の脳実質内中の標的にカテーテルを配置する方法。
[24]1以上の、[1]〜[16]いずれか記載の神経外科用カテーテル;
1以上の、患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するためのガイドチューブ、各チューブが遠位端および近位端、ならびに該チューブの近位端に配置された患者の頭蓋骨に取り付けるためのヘッドを有する;
1つ以上のガイドワイヤ
を有するキット。
[25]個別に印をつけたセクションを有するパックで提供され、各セクションが1つのカテーテル、1つのガイドチューブおよび1つのガイドワイヤを含む、[24]記載のキット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳神経外科で使用される装置、および神経外科用装置の配置を決める方法に関する。該装置と方法は、脳機能の異常を定位的に(stereotactically)標的化する処置において、および治療薬の脳実質内へ直接注入するために特に有用である。全身的に与えられた治療薬が、よく機能しないか損傷を受けた脳組織への送達を制限することにより回避される広範囲の望まれない副作用を持つ場合、これは、特に有用であるだろう。
【背景技術】
【0002】
脳機能の異常を処置する例は、伝達をブロックするてんかんの病巣または経路へのガンマ−アミノ−ブツリン酸(buturic acid) のアゴニストの急性の注入、および、ペリ水管の灰白質、または難治疼痛の処理用の視床の標的に直接注入された麻酔剤または他の鎮痛剤の慢性の送達を含んでいる。また、細胞毒性剤は、脳腫瘍へ直接送達することができる。それらは血液脳関門を越えないので、全身的に送達され得ない脳標的に治療薬を送達するために実質内注入を使用することもできる。例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、頭部外傷、卒中および多発性硬化症の患者の治療は、欠損する神経細胞または損傷を受けた神経細胞を保護し修復するために、神経栄養因子の注入によって実行されてもよい。ニューロトロフィンは、作用を回復する目的で、脳の損傷を受けた領域またはよく機能しない領域へ移植された神経の移植片を支持するために注入され得る。
【0003】
実質内薬剤送達は、非ヒトの霊長類、およびラットにおいて実証された。ヒトまたは非ヒトの脳への実質内薬剤送達に関しては、カテーテルが差し込まれること、そして薬剤が所望の脳標的に断続的にまたは連続的にポンプで注がれることが提案されている。長期的な薬剤送達については、貯蔵部分を含んでいるポンプが皮下に挿入され、そして貯蔵部分は必要であれば触知可能なポートを通って経皮的に補充される。
【0004】
特に、米国出願公開第6 042 579 号は、脳の中への神経成長因子の注入による神経変性障害を治療するための技術を開示する。
【0005】
脳神経手術を行なうために、外科医は、最初の段階で、所望の標的の位置を同定することを必要としている。これは、診断の画像上で見ることができ、それから測定することができる患者の頭に定位の基準座標フレームを固定することにより通常達成される。次いで、定位フレームはプラットフォームとして作用し、そこから、測定座標にセットされた定位ガイド(stereoguide )を使用して、器具が所望の標的にガイドされる。一度、器具が所望の標的にガイドされれば、処置を開始し得る。
【0006】
そのような神経外科手法では多くの困難に遭遇する。差し込まれている器具の最適状態に及ばない配置は有意な罹患率または処置の失敗を導き得る。機能障害の処置のための脳標的は、通常、深く位置していて、容積も小さい。例えば、パーキンソン病を処置する所望の標的は、視床下部の核中に位置していて、直径3-4mm 、または直径3-4mm および長さ5-6mm の卵形である。淡蒼球(globus palladus ) のような他の標的または視床中の標的は、通常大きくても1-2mm 以下である。そのような小さな標的については、1mm ほどの最適状態に及ばない配置は処置の有効性を低減するだけでなく、また虚弱、変調感覚、悪化した発語および複視のような望まれない副作用を引き起こし得る。しかしながら、機能的な神経外科の標的は診断の画像について視覚化するのが多くの場合難しいまたは不可能であり、その実際の位置が、脳中の認識可能な目標を参照して推論される必要があるかもしれないし、プロセスを補助するために脳の標準地図を使用して推論される必要があるかもしれない。個体と地図の間の構造上の相違、および個体の同じ脳の異なるサイドの間での構造上の相違でさえも、配置が最適状態に及ばないものであり得ることを意味する。最適状態に及ばない配置についての他の理由は、画像を取得する間の患者の移動、または画像方法に固有でありうる画像診断の幾何学な歪みに起因し得る。また、手術中に、脳のシフトが生じる場合があり、これは、手術台上の位置で画像を取得する間の頭の位置の変化、次いで脳の陥没を伴うバーホール(burr hole) が作製される場合の脳脊髄液の漏れ、および脳を通過する器具の貫通に起因し得る。外科医は、手順の間目が覚めたままで、機能的脳神経手術を受けている患者について電気生理学的研究を行なうことにより、これらの誤差を補正することを試みる。
【0007】
実質内カテーテルは、その脳内標的に定位固定技術を用いて誘導され得る。典型的には、脳標的の定位固定の位置確認は、定位固定ベースリングを頭蓋骨に固定し、画像形成技術を用いて標的の位置を確認することによりなされる。標的の位置は、三次元座標を用い、定位固定ベースリングに取り付けた放射線不透過性基準線をもとに測定を行なうことによって確認する。次いで、定位固定ベースリングを、測定座標にセットした定位固定ベースリング上の定位固定ガイド(stereoguide)を用いて標的に器具を誘導する基盤として使用し得る。次いで、カテーテルを、その孔内への堅いワイヤの挿入により剛性とした後、脳組織中を標的へと誘導し得る。あるいはまた、直線ワイヤを最初に標的に誘導し、一端(すなわち挿入または遠位端)が脳内に位置し、反対端(すなわち外部または近位端)が脳の外側に残るようにカテーテルをワイヤの周囲に導入し得る。いったん配置したら、カテーテルの外部端を頭蓋骨に固定してポンプに連結することができ、それにより治療剤が投与され得る。特に、中脳標的などの脳の特に傷つき易い部分が処置対象であり、したがってカテーテルが通されることになる場合、カテーテルチュービングの外径はできるだけ小さいべきであることは理解されよう。このような脳の非常に傷つき易い部分は、脳幹などのように、典型的には頭蓋骨の表面から70〜100mmの深部に位置する傾向がある。もちろん、カテーテルチュービングが細いほど、脳内の深部標的への挿入の際にずれが大きくなり、配置が最適状態に及ばない可能性が増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、小径カテーテルチュービングを利用することにより、カテーテルの配置を最適化しつつ、脳の外傷を最小限に抑えることを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕患者の脳実質内に挿入するための神経外科用カテーテルデバイスであって、
該デバイスの遠位端は、1.0mm以下の外径を有する第1のチューブのセクションを含み、
該第1のチューブのセクションは、所望の脳の標的に治療剤を送達するための単数または複数のポートを含み、
該デバイスは、該第1のチューブのセクションより大きな外径を有する第2のチューブのセクションを含む、神経外科用カテーテルデバイス、
〔2〕使用の際に、第1のチューブのセクションの遠位端および第2のチューブのセクションの遠位端が、両方、患者の脳実質に挿入される、〔1〕記載のデバイス、
〔3〕第1のチューブのセクションと第2のチューブのセクションの異なる直径の間に段状になった部分を含む、〔1〕または〔2〕記載のデバイス、
〔4〕ハブが、第1のチューブのセクションと第2のチューブのセクションの間に配置される、〔1〕記載のデバイス、
〔5〕第2のチューブのセクションが、1.0mm以下の内径を有する、〔1〕〜〔4〕いずれか記載のデバイス、
〔6〕ヘッドが、患者の頭蓋骨に取り付けるために第2のチューブのセクションの近位端に配置される、〔1〕〜〔5〕いずれか記載のデバイス、
〔7〕第1のチューブのセクションが、0.7mm以下の外径を有する、〔1〕〜〔6〕いずれか記載のデバイス、
〔8〕デバイスの遠位端が、頭蓋骨から100mmまでの深さまで、脳実質に挿入され得る、〔1〕〜〔7〕いずれか記載のデバイス、
〔9〕第1のチューブのセクションが、脳の標的に治療剤を送達するための単一のポートを遠位端に含む、〔1〕〜〔8〕いずれか記載のデバイス
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、カテーテルの配置が最適化され、脳の外傷が最小限に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のカテーテルの図である。
【図2】図2は、図1のカテーテルの一部を示す図であり、内部の特徴を点線で示す。
【図3】図3は、図2の右手方向からの端面図である。
【図4】図4は、定位固定挿入の第1相である。
【図5】図5は、定位固定挿入の第2相である。
【図6】図6は、定位固定挿入の第3相である。
【図7】図7は、定位固定挿入の第4相である。
【図8】図8は、ドーム形状のヘッドを有するガイドチューブの斜視図である。
【図9】図9は、ドーム形状のヘッドを有する図8のガイドチューブの断面図である。
【図10】図10は、ガイドチューブ内に挿入された図1のカテーテルを示す概略図である。
【図11】図11は、インサイチューでのカテーテル挿入がいったん完了した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の局面によれば、1.0mm以下の外径を有する、患者の脳内への挿入のために設けられた微細チューブを有する神経外科用カテーテルが提供される。カテーテルの外径は、0.7mm以下であることが好ましく、0.65mm以下であることがさらにより好ましい。最も好ましくは、外径は、0.5mm以下である(if)。カテーテルは、好ましくは、通常、断面が円形である。
【0013】
また、カテーテルは、深部標的神経外科用カテーテルであり、少なくとも40mm、より好ましくは少なくとも70mm、最も好ましくは少なくとも90mmの長さを有することが好ましい。
【0014】
微細チューブは非常に微細なため、カテーテルは、微細チューブの一端に連結されたコネクターチューブをさらに備えていることが望ましく、該コネクターチューブは微細チューブより直径が大きい。好ましくは、コネクターチューブは、約2mmの外径を有する。連結は、微細チューブとコネクターチューブとの間に配置されるハブを含めることによりなされ得る。好ましい態様によれば、ハブは、微細チューブとコネクターチューブを連結する連絡通路を含み、連絡通路は、微細チューブが確実に挿入された第1通路、コネクターチューブが確実に挿入された第2通路および第1通路と第2通路の間に配置されたリンク通路を含む。
【0015】
好ましい態様では、ハブは、円柱状本体、およびハブを患者の頭蓋骨に固定し得る1つ以上のフランジを含む。ハブは、接着剤およびねじを含む任意の固定手段(arrangement)を用いて固定し得る。各フランジは、ハブをねじによって患者の頭蓋骨に固定できるさら穴孔を構成する内表面を含むことが特に好ましい。
【0016】
好ましくは、ハブは、微細チューブがハブに固定される場所に接している停止表面を含む。また、ハブはその停止表面に向かって先細りになっていることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の局面によれば、患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するためのチューブを備えた神経外科用器具が提供され、チューブは、脳内に挿入するための遠位端、近位端、および患者の頭蓋骨に取り付けるためにチューブの近位端に配置されるヘッドならびにチューブにより患者の脳内に挿入するための本発明のカテーテルを有する。カテーテルの他の利点または好ましい特徴は上述のとおりである。
【0018】
好ましくは、ガイドチューブのヘッドは、アクリルセメントにより患者の頭蓋骨に嵌め込むためのねじ込み型外表面(externally threaded surface)を含む。好ましい態様によれば、ヘッドは、溝付きドーム構造を含み、カテーテルは、微細チューブがガイドチューブ内にいったん挿入されると、溝付きドーム構造に接触する停止部を一端に有するハブを有する。溝は、好ましくは、カテーテルが溝内で曲がるとねじれを防ぐような形状である。ドーム構造は、好ましくは、カテーテルが溝内で曲がり、停止部がドーム表面に接触すると、カテーテルの遠位端がその標的の正確な位置に残ったままになるような形状である。ドーム構造を有するヘッドを備えたガイドチューブが開示された英国特許公開公報2357700号明細書(その開示は参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0019】
本発明の第3の局面によれば、患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するためのチューブを備えた神経外科用ガイド装置が提供され、チューブは、挿入のための遠位端、反対近位端、および患者の頭蓋骨に取り付けるためにチューブの近位端に配置されたヘッドを有し、チューブの内径は1mm以下であることを特徴とし、ここで、チューブは、遠位端が標的よりも1〜20mm短いところにあるような長さである。好ましくは、この長さは、遠位端が標的よりも5〜10mm短いところにあるような長さである。
【0020】
本発明の第4の局面によれば、本発明の第3の局面による神経外科用ガイドチューブを標的に向かって脳内に挿入すること(ここで、遠位端は標的よりも5〜20mm短いところにある);ガイド装置のヘッドを頭蓋骨に固定すること;および本発明のカテーテルをチューブにより標的へと挿入することを含む、患者の脳内の標的にカテーテルを配置する方法が提供される。
【0021】
カテーテルは、頭蓋骨の表面から少なくとも40mm、より好ましくは表面から少なくとも70mm、最も好ましくは頭蓋骨の表面から少なくとも90mmの深部に位置する標的に配置されることが好ましい。
【0022】
本出願は、
本発明の1つ以上の神経外科用カテーテル、
患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するための1つ以上のガイドチューブ(各チューブは、遠位端および近位端、ならびにチューブの近位端に配置された、患者の頭蓋骨に取り付けるためのヘッドを有する)、および
1つ以上のガイドワイヤ
を含むキットを包含する。
【0023】
好ましくは、本発明の(according)キットは、個別に印をつけたセクションを有するパックにて提供され、ここで、各セクションは、カテーテル1つ、ガイドチューブ1つおよびガイドワイヤ1つを含む。これにより、構成要素(すなわち、カテーテル、ガイドチューブおよびガイドワイヤ)の各セットを、構成要素の他のセットと区別し得ることが可能になる。これは、構成要素の種々のセットを脳の異なる部位で使用する場合に重要である。
【0024】
本発明の態様を、添付の図面を参照しながら、例示の目的でのみ記載する。
【0025】
先に説明したように、脳の特に傷つき易い領域へのカテーテルの挿入は、挿入時に外傷をもたらし、これは、外科医が最小限にしたいと望むことである。カテーテルが微細であるほど脳は外傷を受けにくい。しかしながら、挿入の正確さは決定的に重要であるため、およびこのような脳の特に傷つき易い領域は頭蓋骨表面から相当に遠いため、カテーテルの遠位端を正確に配置するためには、より大きな直径のカテーテルが必要であると考えられていた。しかしながら、本発明は、ずっと微細なカテーテルの使用を可能にする。
【実施例】
【0026】
実施例1
図1、2および3は、本発明のカテーテル1を示す。カテーテル1は、外径が1mm以下、最も好ましくは0.7mm以下の、ある長さの微細チュービング2を含む。外径は0.5mm以下であることがさらにより好ましい。この場合、カテーテルチュービング2は、ポリウレタンプラスチック、好ましくはカルボタン(carbothane)55DB20 (Thermedics Polymer Products, Woburn MA, USA)から構成されている。微細チュービング2は、ハブ4を介して、約2mmの外径を有する、ある長さのコネクターチュービング3に連結されている。コネクターチュービング3は、この場合、カルボタン85AB20などのポリウレタンプラスチック製であるが、他の材料も使用され得る。
【0027】
この場合のハブ4もまた、カルボタン72DB20などのポリウレタンを用いて構成されている。この場合もやはり、他の材料も適当であり得る。
【0028】
微細チュービング2は患者の脳内に挿入されることが意図されるが、コネクターチュービング3は、治療剤を断続的または連続的に所望の脳標的にポンプ輸送し得る、ポンプの流出チュービングに連結されることが意図される。長期間の薬物送達では、ポンプを皮下に埋め込み得、リザーバーを、必要により、触知可能なポートを介して経皮的に補充し得る。この場合、コネクターチュービング3は、ポンプからカテーテルへと皮下を貫通し得る、ポンプの流出チュービングに連結され得る。その長さは、具体的な設置に依存し、適当な長さに切断される。
【0029】
ハブ4は、通常円柱状である中心本体5、および直径方向に対向し、それぞれが、ハブを患者の頭蓋骨の外側表面にねじ留めすることができるさら穴孔を含む1対のウイング6を含む。
【0030】
ハブ4の円柱状本体5は、その全長にわたって貫通している連絡通路を含む。連絡通路は、内部に微細チュービングが挿入されてしっかり保持された、均一な直径の第1狭通路8を含む。連絡通路はまた、内部にコネクターチュービング3が挿入されてしっかり保持された、均一な直径の第2広通路9含む。第1通路8と第2通路9との間には、微細チュービング2とコネクターチュービング3の内径の差を考慮するために、通常先細りになっている第3リンク通路10がある。第3リンク通路10の末端は、微細チュービング2およびコネクターチュービング3の内径と同じか、非常に近い直径であることに留意されたい。
【0031】
図2から、ハブ4の右端は円錐台であり、ハブの端は平面であり、停止部11を構成することがわかる。その意義は、以下の記載から理解されよう。
【0032】
実施例2
次に、カテーテルの挿入について記載する。まず、定位固定フレームを患者の頭蓋骨に取りつけ、定位固定フレームが装着された患者のイメージングを行ない、標的の位置を三次元座標として明確にすることにより頭蓋内標的の位置を確認する。この工程は、本特許出願明細書の導入部でより詳細に説明しており、神経外科の分野における標準技術である。
【0033】
標的がいったん確認されると、標的座標にセットした定位固定ガイドを使用する。1mm以下の内径を有する適当な大きさのガイドチューブを、脳内に標的の方向に指向する。ガイドチューブは、一端にヘッドが設けられており、これは、いったん挿入されると、例えば、アクリルセメントを用いて頭蓋骨のバーホール内に接合することにより患者の頭蓋骨に取り付けることができる。
【0034】
挿入の前に、ガイドチューブを、標的に達さず、かつ脳組織を通過する間に、脳の特に外傷に敏感な部位に侵入しないほど十分短い長さに切断する。ガイドチューブの末端は、一般的に標的に数ミリメートル達しない。次いでガイドチューブのヘッドの上端から標的までの距離を測定し、放射線不透過性のスタイレットを、ガイドチューブの下方に挿入したときにその末端が計画した標的に到達するような長さに切断する。これは、スタイレットがガイドチューブの末端を超えて延在することを意味する。
【0035】
スタイレットを除去し、それをスタイレットと同じ長さに切断された実質内カテーテルと交換する前に、患者は次いで、スタイレットの申し分のない配置を確かめるために、再度像を撮られる。カテーテルおよびスタイレットがガイドチューブ内に適切にはまるようにカテーテル、スタイレットおよびガイドチューブはすべてそろえられると考えられるが、この場合も、カテーテルの外径は、わずか1ミリメートルである。極細カテーテル、例えば外径0.65 mmのカテーテルを使用することが望ましければ、内径0.75 mmの適切なガイドチューブも使用する。
【0036】
カテーテルが挿入されると、最も多くの場合タングステンでできている、その穴を通る硬いワイヤの位置により、挿入の間にカテーテルが補強されると期待される。一旦カテーテルがガイドチューブに挿入されると、ハブ4上のストップ11がガイドチューブのヘッドに隣接し、カテーテルの末端が標的に到達したことを示す。硬いワイヤは除去され、ハブ4がさら穴孔7を通るネジを用いて頭蓋骨の外表面にしっかりと固定され得るように、細いチュービング2が約90°曲げられる。曲げやすくするために、ガイドチューブのヘッドはドーム型で、曲げている間に、細いチュービング2がねじれないだけでなく、細いチュービングの末端が動かないように設けられている。これは、本明細書中で、後により詳細に説明する。
【0037】
次いでコネクタチュービング3は、ポンプの流出チュービングに連結され得る。一般的に、コネクタチュービング3は、離れて配置されたポンプまで、皮下をくぐって進められる。
【0038】
実施例3
他の挿入技術として、図4〜7に示される多数の段階または処置がとられる。分かるように、直径の小さいカテーテルは、直径の小さい器具に固有の柔軟性のために、挿入の間に、計画した軌道から離れる傾向がある。神経外科的標的は、しばしば深く、一般的には頭蓋骨の表面から70〜80 mm、時には頭蓋骨の表面から100 mmもの深さに位置するため、カテーテルは通常極めて硬くなければならず、そのため直径が大きい。
【0039】
可能性のある標的の例として、視床下核、黒質および脚橋核を含む中脳の一部が挙げられる。これは脳の中で特に重要な領域であり、器具の通過による外傷を最小限に抑えることが重要であり、これは一般的に頭蓋骨表面から約70〜80 mmに位置し、高さ約20〜25 mmの体積中に含まれる。
【0040】
極細カテーテルの、中脳の標的への挿入を容易にするために、挿入は以下のように行われる。
【0041】
まず、直径0.6 mmの、直径の小さいタングステンガイドワイヤ22を外径1.7 mmのチューブ21に挿入し、ワイヤ22がチューブ21の末端から25 mm突き出すように、指で締めるグラブネジ23を用いてチューブ21内に固定する。チューブ21は長さ20 mmに渡って、先端に向かって先細になっている。チューブ21およびワイヤ22は、先端から突出するワイヤ22を有するチューブ21を見ることができる挿入の第一段階を示している図4で見ることができる。指で締めるグラブネジ23はチューブ21の上端に見ることができ、そこでワイヤ22が保持されている。挿入は、標的が三次元的座標の観点から同定され、定義される定位枠で行われる。定位枠は、この技術を可能にするために改変された定位固定ガイドを有する。図4に示される挿入の第一段階の間、チューブおよびワイヤは標的に向かってともに下ろされる。この場合、チューブは長さ165 mmであり、チューブ21およびワイヤは一つのユニットとして挿入されるので、チューブ上端からガイドワイヤ22の先端までの距離は190 mmである。ワイヤ22はチューブ上端の上方に、約150 mm延在している。定位固定ガイドには、上部クランプ24および下部クランプ25が含まれ、各クランプは、挿入または除去されているワイヤまたはチューブとの連動状態の場所と、そこから離れた場所との間で旋回され得る。
【0042】
一旦ガイドワイヤ22がその標的に到達すると、ガイドワイヤ22の近接端部を締めるために、上部クランプ24が旋回される。一旦グラブネジ23が緩められると、ワイヤ22をそのまま残して、チューブ21が脳から引き抜かれ得る。図5に示されるように、一旦チューブ21が上部クランプに向かって持ち上げられると、そこで露出しているワイヤ22を締めるために、下部クランプは回され得、上部クランプ24は解放され得る。これによって、チューブ21はワイヤ22の上端から完全に除去され得る。
【0043】
ガイドチューブ31がワイヤ22上に通され、次いで上部クランプ24が回され、ワイヤ22上で閉じられる。図7にも示されているように、次いで下部クランプ25が解放され得、距離が標的に約1または2 cm達しないように、ガイドチューブ31の脳への挿入を可能にする。ガイドチューブ32は、上端に、ヘッドが患者の頭蓋骨のギザギザのねじ穴(tapped burrhole)にねじ入れられるのを可能にする、外表面にねじの溝の切られた(threaded)ヘッドを有し、そのためガイドチューブ31を安定して適所に固定できる。ヘッドのさらに他の特徴は、この記述の中で、後に明らかになろう。
【0044】
一旦ガイドチューブ31が取り付けられると、ガイドワイヤ22は除去され得、図7から、次いで0.65 mmカテーテル36がガイドチューブ31に沿って、標的まで挿入され得ることがわかる。
【0045】
この方法は、最初の通過で、チューブ21によって硬くされているガイドワイヤが標的に当たり、次いで標的に達しないガイドチューブを挿入することによって脳の標的が固定され、ガイドチューブによって極細器具が標的へ挿入されやすくするという、独特の利点を有する。アルツハイマー病のようなある症状の処置のために、数本の留置カテーテルを通じて基底核の標的へ神経成長因子を送達することが必要である。各カテーテルが直径0.65 mmしかなければ、再生させようとしている組織を実質的に破壊せずに、多数の細いカテーテルを挿入し得る。
【0046】
この挿入方法では、ワイヤ22、チューブ21の内側、チューブ21の外側の一定の直径、およびガイドチューブ31およびカテーテル36の直径について述べられている。勿論、異なる直径が適し得、中脳を通過するワイヤ22および細いカテーテル36の外径はできるだけ細く、切断面で1 mm以下であるという点であることが重要な要素であることがわかるであろう。直径は0.7 mm以下であることが好ましく、0.65 mm以下であることがより一層好ましい。
【0047】
ガイドチューブ31の上端部は、チューブ41の上端が、器具を挿入する頭蓋骨のギザギザの穴にねじ込まれ得るねじの溝を切られた外表面を有するヘッド42を有することがわかる、図8および9に示されている。チューブ41の上端は広がって、ヘッド42の溝44になる。ヘッド42は、溝44が位置するドーム構造45を備えて形成される。
【0048】
図9からわかるように、一旦ヘッドが頭蓋骨に固定されると、カテーテルはチューブ41内に位置し、次いでyのわずかな位置からzのわずかな位置まで曲げられる。カテーテルが曲げられる中心となる内部の端は、曲げる工程の間にカテーテルの末端が動かされないように、丸みを与え、カテーテルがねじれず、かつxからyまでの距離がxからzまでの距離と等しくなるように、溝44内に形成される。
【0049】
図8および9から、この態様では、ガイドチューブ31は、完全なユニットとしてねじの溝の切られた表面43およびドーム構造45を含むヘッド42で構成されることが理解されよう。
【0050】
ここで図10および11に関して、カテーテルはストップ11がドーム構造45の上部に隣接するように堅いワイヤ(示されず)上で脳に挿入されていることが理解されよう。この段階で、堅いワイヤは除去され、カテーテルの末端が処置に適当な場所に位置する。次いでカテーテルは、図11に示されている位置まで曲げられ、ドーム構造45に対してストップ11を支持する。図11は、ハブ4がネジによって頭蓋骨にどのように取り付けられているか、およびコネクタチュービング3がどのようにしてポンプから離れるように向けられているかをも示している。
【0051】
カテーテルが、末端にある単一のポートを通じて薬剤を送達するのが好ましい。これは、脳への実質内送達のために用いられ得る、末端に複数のポートを有するカテーテルに勝る。特に、単一のポートの使用によって、実質内送達において予想される、タンパク質様物質の蓄積または神経膠の内部への伸長による低い流速によってポートが遮られるようになる危険性が最小限に抑えられる。実質内カテーテルの末端に単一のポートを有することによるさらなる利益は、これによって特定の標的での薬剤送達を確実にする点である。複数のカテーテルからの薬剤送達部位は、特に低い流速では予測できない。これは、最も抵抗の低いポートを通る場合に流量が最大になるためである。ポートは同じサイズであり得るが、組織が個々のポートを遮る程度は様々である。最終的な結果は、恐らくは単一のポートからの軸外の薬剤送達になり、これは小さい標的に対する薬剤送達においては最適状態に及ばない。
【0052】
脳の外傷は、直径1 mm以下、好ましくは直径0.7 mm未満の極細カテーテルを用いることによって、挿入時に最小限に抑えられる。さらに、直径の小さいカテーテルによって、黒質および脚橋核のような脳幹の小さい標的ならびに基底核、水管周辺灰白質(peri-aqueductal grey matter)および様々な視床核のような他の小さい標的への薬剤送達に適するようになる。
【0053】
治療物質の注入の間、カテーテルポートから流れる物質は、好ましくは最も抵抗が低い経路を辿る。すなわち、組織/カテーテル境界面に沿って逆流し、皮層表面まで上昇し、次いでCSF区画まで流れる。それは卵形に分布して、流速によって、組織に様々に拡散する。そのため、脳の小さい標的内に薬剤を含むことは問題になり得る。しかしながら、カテーテルが本発明におけるような内在するガイドチューブの下方に脳の中に挿入されると、次いで末端のポートから抜け出た薬剤が、ガイドチューブに達するまで組織/カテーテル境界面に沿って逆流する。そして好ましくはガイドチューブとカテーテルの間の境界面に沿って流れ、頭蓋骨の外へ出て頭皮の帽状腱膜下区画へと流れる。そのため薬剤にさらされる脳組織の体積は、ガイドチューブを超えて突出するカテーテルの長さの調節および流速の調節によって制御され得る。かかる精妙な制御は、ニュートロフィン(neurotrophin)のような薬剤の、脳の小さい標的内の送達を含む場合に不可欠である。
【0054】
実施例4
試験において、本発明の実質内カテーテルは進行したパーキンソン病患者5人の脳に、ガイドチューブを用いて埋め込まれ、その末端は所望の標的にわずかに達しないように配置された。1人の患者は片側にカテーテルを埋め込まれ、4人は両側への、背面の被殻(すなわち所望の標的)への埋め込みをされた。神経栄養因子を獲得した組換えメチオニルヒト膠細胞系(r-met HuGDNF)が、離れて配置されたポンプ(8626 シンクロームドポンプ(Synchromed Pumps)、Medtronic Inc, Minneapolis)を用いて、カテーテルを通じてその背面被殻に長期に渡って注入され、腹壁の皮下に埋め込まれた。GDNFは、実験的に引き起こされた動物のパーキンソン病の症状を逆転することが示されている神経栄養因子である。このヒトにおける試験では、これは1時間当たり2〜8μlの範囲の流速、10.8〜43.2マイクログラム/被殻/日の間の投与量で注入された。患者は、効果が出る前、および6箇月目に、国際的に認められ、有効な、パーキンソン病の重篤さを査定するためのスコアリングシステム、統一パーキンソン病評価スコア(the Unified Parkinson's Disease Rating Score)(UPDRS)を用いて査定された。6箇月目に、患者のUPDRSスコアに40%の改善があった。注入物は十分耐性があり、大きな副作用はなかった。
【0055】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]1.0mm以下の外径を有する、患者の脳実質内中への挿入用に設けられた(arrange)微細チューブを有する神経外科用カテーテル。
[2]0.7mm以下の外径を有する、[1]記載の神経外科用カテーテル。
[3]0.65mm以下の外径を有する、[1]記載の神経外科用カテーテル。
[4]0.5mm以下の外径を有する、[1]記載の神経外科用カテーテル。
[5]カテーテルの微細チューブが、横断面において一般に円形である、[1]〜[4]いずれか記載の神経外科用カテーテル。
[6]微細チューブの1つの端に連結されたコネクターチューブをさらに含み、該コネクターチューブが微細チューブより直径が大きな、[1]〜[5]いずれか記載の神経外科用カテーテル。
[7]微細チューブとコネクターチューブとの間に配置されたハブをさらに含む、[6]記載の神経外科用カテーテル。
[8]ハブが微細チューブとコネクターチューブとを連結する通路を含む、[7]記載の神経外科用カテーテル。
[9]通路が微細チューブが確実に挿入された第1通路を含む、[8]記載の神経外科用カテーテル。
[10]経路がコネクターチューブが確実に挿入された第2通路を含む、[8]または[9]記載の神経外科用カテーテル。
[11][9]に従属する場合、ハブが、第1通路と第2通路の間に配置されたリンク通路をさらに含む、[10]記載の神経外科用カテーテル。
[12]ハブが円柱状本体を含む、[7]〜[11]いずれか記載の神経外科用カテーテル。
[13]ハブが患者の頭蓋骨に固定される1つ以上のフランジを含む、[7]〜[12]いずれか記載の神経外科用カテーテル。
[14]そのまたは各フランジが、ハブをねじによって患者の頭蓋骨に固定され得るさら穴孔を構成する内表面を含む、[13]記載の神経外科用カテーテル。
[15]ハブが、微細チューブがハブに固定される場所に接している停止表面を含む、[7]〜[14]いずれか記載の神経外科のカテーテル。
[16]ハブが停止部に向かって先細りになっている、[15]に記載の神経外科用カテーテル。
[17]患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するためのガイドチューブ、該チューブは、遠位端、近位端、および患者の頭蓋骨に取り付けるために該チューブの近位端に配置されるヘッドを有する;ならびに
該チューブにより患者の脳実質内への挿入のために設けられたカテーテル、該カテーテルは[1]〜[16]いずれか記載のように設けられている、
を含む神経外科用器具。
[18]ガイドチューブのヘッドが患者の頭蓋骨に嵌め込むためのねじ込み型外表面(externally threaded surface)を含む、[17]に記載の神経外科用カテーテル。
[19]ヘッドが溝付きドーム構造を含み、微細チューブが溝を通過する際にカテーテルの停止部がドーム構造に接するように、カテーテルが[15]または[16]に従って設けられる、[17]または[18]記載の神経外科用カテーテル。
[20]カテーテルが溝中で曲がる場合にねじれないように、溝が形成される、[19]記載の神経外科用カテーテル。
[21]カテーテルがドーム表面に接する停止部を備えた溝中で曲がると、カテーテルの遠位端がその標的の正確な位置に残ったままになるように、ドーム構造が形成される、[19]または[20]記載の神経外科用カテーテル。
[22]所望の標的に向けて、患者の脳内へ挿入するためのチューブ、該チューブは遠位端および近位端を有する;
患者の頭蓋骨に取り付けるために前記チューブの近位端に配置されたヘッド
を有し、該チューブの内径が1mm以下であり、該チューブの遠位端が標的よりも5〜20mm短いところにあるような長さのものであることを特徴とする、神経外科用ガイド装置。
[23]神経外科用ガイドの標的に向けての脳内への挿入工程、該ガイドは遠位端および近位端を有するチューブを含み、ヘッドがその近位端に配置され、該遠位端が標的よりも5〜20mm短いところにある;
ヘッドを頭蓋骨に固定する工程;ならびに
該チューブを通して標的内への1mm以下の直径のカテーテルの挿入工程
を含む、患者の脳実質内中の標的にカテーテルを配置する方法。
[24]1以上の、[1]〜[16]いずれか記載の神経外科用カテーテル;
1以上の、患者の脳内に所望の標的に向かって挿入するためのガイドチューブ、各チューブが遠位端および近位端、ならびに該チューブの近位端に配置された患者の頭蓋骨に取り付けるためのヘッドを有する;
1つ以上のガイドワイヤ
を有するキット。
[25]個別に印をつけたセクションを有するパックで提供され、各セクションが1つのカテーテル、1つのガイドチューブおよび1つのガイドワイヤを含む、[24]記載のキット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脳実質内に挿入するための神経外科用カテーテルデバイスであって、
該デバイスの遠位端は、1.0mm以下の外径を有する第1のチューブのセクションを含み、
該第1のチューブのセクションは、所望の脳の標的に治療剤を送達するための単数または複数のポートを含み、
該デバイスは、該第1のチューブのセクションより大きな外径を有する第2のチューブのセクションを含む、神経外科用カテーテルデバイス。
【請求項2】
使用の際に、第1のチューブのセクションの遠位端および第2のチューブのセクションの遠位端が、両方、患者の脳実質に挿入される、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
第1のチューブのセクションと第2のチューブのセクションの異なる直径の間に段状になった部分を含む、請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
ハブが、第1のチューブのセクションと第2のチューブのセクションの間に配置される、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
第2のチューブのセクションが、1.0mm以下の内径を有する、請求項1〜4いずれか記載のデバイス。
【請求項6】
ヘッドが、患者の頭蓋骨に取り付けるために第2のチューブのセクションの近位端に配置される、請求項1〜5いずれか記載のデバイス。
【請求項7】
第1のチューブのセクションが、0.7mm以下の外径を有する、請求項1〜6いずれか記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスの遠位端が、頭蓋骨から100mmまでの深さまで、脳実質に挿入され得る、請求項1〜7いずれか記載のデバイス。
【請求項9】
第1のチューブのセクションが、脳の標的に治療剤を送達するための単一のポートを遠位端に含む、請求項1〜8いずれか記載のデバイス。
【請求項1】
患者の脳実質内に挿入するための神経外科用カテーテルデバイスであって、
該デバイスの遠位端は、1.0mm以下の外径を有する第1のチューブのセクションを含み、
該第1のチューブのセクションは、所望の脳の標的に治療剤を送達するための単数または複数のポートを含み、
該デバイスは、該第1のチューブのセクションより大きな外径を有する第2のチューブのセクションを含む、神経外科用カテーテルデバイス。
【請求項2】
使用の際に、第1のチューブのセクションの遠位端および第2のチューブのセクションの遠位端が、両方、患者の脳実質に挿入される、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
第1のチューブのセクションと第2のチューブのセクションの異なる直径の間に段状になった部分を含む、請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
ハブが、第1のチューブのセクションと第2のチューブのセクションの間に配置される、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
第2のチューブのセクションが、1.0mm以下の内径を有する、請求項1〜4いずれか記載のデバイス。
【請求項6】
ヘッドが、患者の頭蓋骨に取り付けるために第2のチューブのセクションの近位端に配置される、請求項1〜5いずれか記載のデバイス。
【請求項7】
第1のチューブのセクションが、0.7mm以下の外径を有する、請求項1〜6いずれか記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスの遠位端が、頭蓋骨から100mmまでの深さまで、脳実質に挿入され得る、請求項1〜7いずれか記載のデバイス。
【請求項9】
第1のチューブのセクションが、脳の標的に治療剤を送達するための単一のポートを遠位端に含む、請求項1〜8いずれか記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−279433(P2009−279433A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178428(P2009−178428)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【分割の表示】特願2003−575842(P2003−575842)の分割
【原出願日】平成15年3月11日(2003.3.11)
【出願人】(506396272)レニショー ピーエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【分割の表示】特願2003−575842(P2003−575842)の分割
【原出願日】平成15年3月11日(2003.3.11)
【出願人】(506396272)レニショー ピーエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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