説明

大腸菌群に属する細菌の検出方法

【課題】多種の大腸菌群についてより迅速に検出する方法を提供する。
【解決手段】大腸菌群に属する細菌が有するlacZ遺伝子をコードする核酸配列中に含まれる下記配列(A)から(E)からなる群より選ばれる1種または2種以上の核酸配列を、試料中から検出して、大腸菌群に属する細菌を検出する。(A)特定の核酸配列1またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列。(B)特定の核酸配列2またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列。(C)特定の核酸配列3またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列。(D)特定の核酸配列4またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列。および(E)特定の核酸配列5またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌の検出方法に関し、詳しくは大腸菌群に属する細菌を検出する方法並びにこれに用い得るプローブおよびプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
細菌による汚染は、食品、医療、衛生管理、環境などの様々な分野で大きな問題となり得る。細菌による汚染に対しては、予防、拡散防止、殺菌処理などその状況に応じて様々な対応が取られる。細菌による汚染は皆無であることが望ましいが、万が一細菌による汚染が発生した場合には、可及的速やかに対処することが求められる。そのためには細菌の検出、汚染源の特定を迅速に行うことが重要となる。
【0003】
例えば、食品中より大腸菌群が検出された場合、その食品が製造された工場での原材料、水、各種装置、大気、人、動物・昆虫類、床等の構築物、その他のどの箇所が汚染源となったのかを特定し、該汚染源における大腸菌群を根絶している。そのためにはまず検出された大腸菌群がどの汚染源に由来するものであるかを特定するため、製造過程中で汚染源となる可能性のある全ての箇所で大腸菌群を検査し、大腸菌群の検出の有無から汚染源の推定を行なっていた。そして、当該箇所を清浄化し汚染源を除去した後の製品中から大腸菌群が根絶するまで、これらの検査、清浄化を繰り返していた。
【0004】
上記のように大腸菌群による汚染の拡大を抑制するには、汚染源の特定が極めて重要である。そのため予め汚染源となり得る箇所特有の大腸菌群の種類の構成(以下、本明細書中では、大腸菌群の種類の構成のことを「大腸菌群の構成相」という場合がある)を把握し、これをデータベース化し、検査時に大腸菌群が検出された場合には、その構成から汚染源を推定するという手法が開発されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、そこに記載された手法では、複数の培地を用いて細菌を培養することによって検出し、大腸菌群の構成相を求めるため、およそ16〜24時間程度の時間を要していた。細菌による汚染の拡大抑制は一刻を争う場合が多いことから、大腸菌群の構成相に係る情報を得るためのさらに迅速な大腸菌群の検出方法が求められていた。
【0005】
迅速に大腸菌などの微生物を検出するための方法として、ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR:Polymerase Chain Reaction)を利用して所定の遺伝子領域を増幅する方法が考案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1および2など)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−43921号公報
【特許文献2】特開2007−129935号公報
【非特許文献1】Letters in Applied Microbiology 19:44−46,1994
【非特許文献2】Applied and Environmental Microbiology 57:2429−2432,1991
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような遺伝子工学的な解析方法を利用する場合には、大腸菌群に特異的な配列を見出し、その配列を基にしてプライマーなどを設計する。しかしながら、特異的な配列を用いれば常にうまくいくというものではない。上記非特許文献1に記載の所定のプライマーセットでは大腸菌群に属する細菌の種類の70%程度しか検出することができず、非特許文献1および2にも示されるように、より高い割合で大腸菌群を検出し得るプライマーの開発が求められていた。さらに、単に大腸菌群を網羅的に検出しただけでは、大腸菌群の構成相を割り出すには至らない。そのため、大腸菌群の構成相を迅速に割り出す方法が求められていた。
【0008】
以上のような状況の下、本発明は、大腸菌群についてより迅速に検出することを課題とする。また、本発明は、大腸菌群をいくつかの種類ごとに迅速に検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を進めたところ、上記課題を解決し得る核酸内の所定部位を見出し、この知見に基づいて、本発明を完成させるに至った。本発明は、下記に示す大腸菌群に属する細菌の検出方法、並びに、これに用いられる核酸を提供するものである。
【0010】
〔1〕大腸菌群に属する細菌が有するlacZ遺伝子をコードする核酸配列中に含まれる下記配列(A)から(E)からなる群より選ばれる1種または2種以上の核酸配列を、試料中から検出して、大腸菌群に属する細菌を検出する方法。
(A)配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(B)配列番号2の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(C)配列番号3の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(D)配列番号4の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列、および
(E)配列番号5の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
〔2〕前記配列(A)および/または(B)が検出された場合に、前記試料中に、大腸菌群に属する細菌が存在すると判定する、上記〔1〕に記載の細菌を検出する方法。
〔3〕前記配列(C)が検出された場合に、前記試料中に、シトロバクター(Citrobacter)属に属する細菌および/またはエルウィニア(Erwinia)属に属する細菌が存在すると判定する、上記〔1〕に記載の細菌を検出する方法。
〔4〕前記配列(D)が検出された場合に、前記試料中に、ハフニア(Hafnia)属に属する細菌が存在すると判定する、上記〔1〕に記載の細菌を検出する方法。
〔5〕前記配列(E)が検出された場合に、前記試料中に、
クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に属する細菌、
エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)に属する細菌、および
ラウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)属に属する細菌、のうちのいずれか1種または2種以上が存在すると判定する、上記〔1〕に記載の細菌を検出する方法。
〔6〕前記配列(A)および/または(B)が検出され、かつ、前記配列(C)、(D)および(E)のいずれも検出されない場合に、
前記配列(E)が検出された場合に、前記試料中に、
クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に属する細菌、
エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)に属する細菌、および
ラウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)属に属する細菌、のうちのいずれか1種または2種以上が存在すると判定する、請求項1に記載の細菌を検出する方法。
のうちのいずれか1種または2種以上が存在すると判定する、上記〔1〕に記載の細菌を検出する方法。
〔7〕前記配列(A)および(B)からなる群より選ばれる1種または2種の核酸配列を、試料中から検出する第1の検出工程と、
前記配列(C)、(D)および(E)からなる群より選ばれる1種または2種以上の核酸配列を検出する、第2の検出工程を含む、
上記〔1〕に記載の細菌を検出する方法。
〔8〕前記第2の検出工程において、前記配列(C)、(D)および(E)の検出を行い、前記第2の検出工程の結果から、前記配列(C)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、前記配列(D)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、前記配列(E)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、これら以外の細菌群の4つのグループに大腸菌群を分類する工程を含む、上記〔7〕に記載の細菌を検出する方法。
〔9〕第1のプライマーが前記配列(A)または(B)のいずれか一方の配列を有する核酸であり、第2のプライマーがlacZ遺伝子をコードする核酸中に含まれる20bp以上、32bp以下の配列であって、前記第1のプライマーとは異なる配列を有する核酸である一対のプライマーセットを用いて、第1および第2のプライマーに挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して前記配列(A)または(B)を検出する、請求項1または2に記載の細菌を検出する方法。
〔10〕前記配列(A)を有する核酸および前記配列(B)を有する核酸を一対のプライマーセットとして配列(A)および(B)で挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して前記配列(A)および(B)を検出する、上記〔1〕または〔2〕に記載の細菌を検出する方法。
〔11〕第1のプライマーが前記配列(C)、(D)または(E)の配列を有する核酸であり、第2のプライマーがlacZ遺伝子をコードする核酸中に含まれる20bp以上、32bp以下の配列であって、前記第1のプライマーとは異なる配列を有する核酸である一対のプライマーセットを用いて、第1および第2のプライマーに挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して、前記第1のプライマーに該当する前記配列(C)、(D)または(E)のいずれかの配列を検出する、上記〔1〕、〔3〕、〔4〕または〔5〕のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
〔12〕前記第1の検出工程において、前記配列(A)を有する核酸および前記配列(B)を有する核酸を一対のプライマーセットとして前記プライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(A)および(B)を検出する、上記〔7〕または〔8〕に記載の細菌を検出する方法。
〔13〕前記第2の検出工程において、前記配列(A)を有する核酸および前記配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセット、または、前記配列(B)を有する核酸および前記配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、前記プライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(C)を検出する、上記〔7〕から〔10〕のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
〔14〕前記第2の検出工程において、前記配列(A)を有する核酸と前記配列(D)を有する核酸とを一対とするプライマーセット、または、前記配列(B)を有する核酸および前記配列(D)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、プライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(D)を検出する、上記〔7〕から〔10〕のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
〔15〕前記第2の検出工程において、前記配列(A)を有する核酸および前記配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセット、または、前記配列(B)を有する核酸および前記配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、それぞれのプライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(E)を検出する、上記〔7〕から〔10〕のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
〔16〕前記第2の検出工程において、
前記配列(A)または(B)を有する核酸および前記配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセット、
前記配列(A)または(B)を有する核酸および前記配列(D)を有する核酸を一対とするプライマーセット、および
前記配列(A)または(B)を有する核酸および前記配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、それぞれのプライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、それぞれの増幅産物を検出し、前記配列(C)、(D)および(E)を検出する、上記〔7〕から〔10〕のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
〔17〕前記増幅産物の量を定量し、増産物の量から、試料中に含まれる大腸菌群に属する細菌の量を推定する、上記〔9〕から〔16〕のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
〔18〕下記配列(A)から(E)からなる群より選ばれるいずれかの配列を有する核酸である、大腸菌群検出用プローブ。
(A)配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(B)配列番号2の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(C)配列番号3の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(D)配列番号4の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列、および
(E)配列番号5の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
〔19〕下記配列(A)を有する核酸および配列(B)を有する核酸を一対とする、ポリメラーゼチェーンリアクション用プライマーセット。
(A)配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(B)配列番号2の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
〔20〕前記配列(A)または(B)を有する核酸のいずれかの核酸と、
下記配列(C)、(D)および(E)からなる群より選ばれるいずれかの配列を有する核酸とを一対とする、ポリメラーゼチェーンリアクション用プライマーセット。
(C)配列番号3の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(D)配列番号4の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列、および
(E)配列番号5の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大腸菌群に属する多くの細菌について迅速に検出し得る。また、本発明により大腸菌群をいくつかの種類ごとに迅速に検出し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明における生化学的な手法あるいは遺伝子工学的な手法を実施するにあたっては、例えば、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, New York (2001)、新遺伝子工学ハンドブック改訂第4版、村松ら編、羊土社(2003年)、タンパク質実験の進め方(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第1版、1998年)、タンパク質実験ノート(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第2版、1999年)などのような種々の実験マニュアルの記載を参照し得る。本明細書においては、特に断らない限り、配列番号は配列表中の配列番号を示す。
【0013】
本明細書において用いられる用語は、基本的に、化学、生命科学、遺伝子工学、工業化学などの科学または工学分野における標準的な意味に従って用いられるが、以下、本発明をより明確に説明するために、本発明を説明するための用語の一部について説明する。
【0014】
本明細書において、lacZ遺伝子(lacZ gene)とは、LacZタンパク質、すなわち大腸菌群に属する細菌が保有するβ−ガラクトシダーゼをコードする遺伝情報およびその遺伝情報が化体する核酸のことをいう。lacZ遺伝子をコードするとは、lacZ遺伝子の遺伝情報を保存していることを意味する。lacZ遺伝子をコードする核酸配列とは、すなわち、β−ガラクトシダーゼをコードする核酸配列とも言い換え得る。
【0015】
本明細書において、核酸とは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)およびこれらのハイブリッド核酸が含まれ、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。本明細書、図面および配列表においては、核酸が有する塩基について、アデニン:A、チミン:T、ウラシル:U、グアニン:G、およびシトシン:Cの省略記号が用いられる場合がある。また、混合塩基について、以下の省略記号を用いられる場合がある。R=(AまたはG)、Y=(CまたはT)、M=(AまたはC)、K=(GまたはT)、S=(GまたはC)、W=(AまたはT)、H=(A,CまたはT)、B=(G,TまたはC)、V=(G,CまたはA)、D=(G,AまたはT)、N=(A,C,GまたはT)。なお、DNAにおけるチミン(T)は、RNA中ではウラシル(U)に該当する。DNAとしての配列情報はRNAとしての配列情報をも包含する。
【0016】
本明細書において、大腸菌群(coliform bacteria)とは、広義の大腸菌を意味し、衛生細菌学的に大腸菌と呼ばれる一群の細菌をいう。大腸菌群には、例えば、以下の属に属する細菌が含まれる。エシェリヒア(Escherichia)属、シトロバクター(Citrobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属細菌、ハフニア(Hafnia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、ラウルテラ(Raoultella)属、ブチオーキセラ(Buttiauxella)属、クルイベラ(Kluyvera)属、レクレルシア(Leclercia)属、などの属に属する細菌が含まれる。より具体的には、例えば、下記表5および9に示される細菌種が挙げられる。
【0017】
<1.本発明の検出方法>
本発明の大腸菌群に属する細菌を検出する方法(以下、本明細書において、「本発明の検出方法」という場合がある)では、大腸菌群に属する細菌を検出する。本発明においては、大腸菌群に属する細菌が保有するlacZ遺伝子をコードする核酸配列中に含まれる下記配列(A)から(E)からなる群より選ばれる1種または2種以上の核酸配列を、試料中から検出し、これらを指標として細菌を検出する。
(A)配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(B)配列番号2の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(C)配列番号3の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(D)配列番号4の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列、および
(E)配列番号5の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
【0018】
【表1】

【0019】
上記(A)から(E)の配列は、下記実施例の欄にて別途詳説されるとおり、大腸菌群に属する細菌を検出するために、本発明者らによって新規に特定された配列である。これらの配列を利用することにより、迅速に大腸菌群を検出することができる。
【0020】
本発明の検出方法の一実施形態においては、配列(A)若しくは(B)のいずれか一方、またはこれらの双方について試験を行い、これらの配列のいずれか一方または双方が検出された場合に、試料中に大腸菌群に属する細菌が存在すると判定する。配列(A)および(B)は、大腸菌群の細菌が有するlacZ遺伝子中の核酸配列において、幅広く共有されている保存性の高い配列である。そのため、これらの配列を検出することにより、大腸菌群に属する細菌が試料中に存在する蓋然性が高い。配列(A)および(B)は一方のみについて試験を行うことは、試験の簡便化をより優先する場合に好適である。また、双方について試験を行うことにより、より正確に大腸菌群の細菌を検出し得るため、精度をより重視する場合には、双方について試験を行うことが好適である。
【0021】
図1−1から1−6に、シトロバクター属の1種(Citrobacter koseri、略号:Ckos)、エシェリキア属に属する細菌の1種(Escherichia coli、略号:Ecoli)、エンテロバクター(Enterobacter)属の2種(Enterobacter sakazakii、略号:Entsak、およびEnterobacter cloacae subsp. cloacae、略号:Entcl)、およびクレブシエラ(Klebsiella)属の1種(Klebsiella pneumoniae、略号:Kpneu)の5種の細菌におけるlacZ遺伝子の核酸配列のアライメントを示す。なお、各核酸配列は、配列表中において、シトロバクター コセリ(Citrobacter koseri)は配列番号6、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)は配列番号8、エンテロバクター サカザキ(Enterobacter sakazakii)は配列番号10、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)は配列番号12、エンテロバクター クロアカ亜種(Enterobacter cloacae subsp. cloacae)は配列番号14にそれぞれ記載の配列に対応する。
【0022】
図1−1から1−6において、「*」印はすべての配列に共通する部位を示し、配列中の「−」印はギャップを示す。図1−1から図1−6および図2−1から図2−4において、矢印1F、1R、2F、2R、AR、BRおよびCRは、それぞれ対応する領域をプライマー又は鋳型とするPCRを行った際のプライマー領域および核酸の合成方向を示す。また、菌株名の表示において、NBRCはNITE Biological Resource Centerの略号であり、IAMはIAM Culture Collectionの略号であり、JCMはJapan Collection of Microorganismsの略号であり、ATCCはAmerican Type Culture Collectionの略号である。これらは微生物等の公的寄託機関である。これらの略号および番号等の記号が付された菌株は、それぞれの寄託機関において登録または保存されている菌株であることを示す。
【0023】
配列(A)は、図1−2中に示される領域rf1に基づく。配列(B)は、図1−3に示される領域rf2に基づく。領域rf1およびrf2におけるアライメントの結果が示すとおり、これらの領域は、大腸菌群に属する細菌種間内において保存性が高い連続した領域を形成している。
【0024】
本発明の検出方法は、エシェリヒア(Escherichia)属、シトロバクター(Citrobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属細菌、ハフニア(Hafnia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、ラウルテラ(Raoultella)属、ブチオーキセラ(Buttiauxella)属、クルイベラ(Kluyvera)属、レクレルシア(Leclercia)属、などの属に属する細菌の検出に好適であり、より好ましくは、下記の細菌種の検出に用い得る。なお、以下の細菌種名は学名である。
【0025】
Citrobacter amalonaticus
Citrobacter braakii
Citrobacter freundii
Citrobacter koseri
Erwinia aphidicola
Hafnia alvei
Klebsiella oxytoca
Buttiauxella agrestis
Enterobacter aerogenes
Enterobacter amnigenus
Enterobacter cloacae subsp. cloacae
Enterobacter sakazakii
Escherichia coli
Escherichia vulneris
Klebsiella pneumoniae
Kluyvera cryocrescens
Kluyvera intermedia
Leclercia adecarboxylata
Raoultella terrigena
Raoultella ornithinolytica
Raoultella planticola
【0026】
本発明の一実施形態においては、配列(C)が検出された場合に、試料中に、シトロバクター(Citrobacter)属に属する細菌および/またはエルウィニア(Erwinia)属に属する細菌が存在すると判定する。図2−1には、シトロバクター属に属する5種の細菌のlacZ遺伝子の核酸配列のアライメントを示す。配列(C)は、図2−1中の領域rf6に基づく。図2−1に示されるとおり、領域rf6は、シトロバクター属に属する細菌間で保存性が高い連続した領域を形成している。図2−1における領域rf6は、図1−2における領域rf3の部位、および、図2−4における領域rf6〜8の部位に該当する。図1−2中の領域rf3および図2−4中のrf6〜8のアライメント結果が示すとおり、この領域は、シトロバクター属以外の大腸菌群間で比較した場合には、保存性が低い領域を形成している。したがって、配列(C)が検出される場合には、シトロバクター属の細菌群が試料中に存在する蓋然性が高いと判定し得る。なお、下記実施例の欄における実験結果から、配列(C)に基づいて、エルウィニア属に属する細菌も検出し得ることが明らかとなっている。
【0027】
本発明の一実施形態においては、前記配列(D)が検出された場合に、試料中に、ハフニア(Hafnia)属に属する細菌が存在すると判定する。図2−2には、ハフニア属に属する2種の細菌におけるlacZ遺伝子の核酸配列のアライメントを示す。配列(D)は、図2−2中の領域rf7に基づく。図2−2に示されるとおり、領域rf7は、ハフニア属に属する細菌間で保存性が高い連続した領域を形成している。図2−2における領域rf7は、図1−2における領域rf3の部位、および、図2−4中のrf6〜8の部位に該当する。図1−2中の領域rf3および図2−4中のrf6〜8のアライメント結果が示すとおり、この領域は、ハフニア属以外の大腸菌群間で比較した場合には、保存性が低い領域を形成している。したがって、配列(D)が検出される場合には、ハフニア属の細菌群が試料中に存在する蓋然性が高いと判定し得る。
【0028】
本発明の一実施形態においては、配列(E)が検出された場合に、試料中に、クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に属する細菌、エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)に属する細菌、およびラウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)属に属する細菌のうち、いずれか1種または2種以上が存在すると判定する。図2−3には、クレブシエラ オキシトカに属する5種の細菌におけるlacZ遺伝子の核酸配列のアライメントを示す。配列(E)は、図2−3中の領域rf8に基づく。図2−3に示されるとおり、領域rf8は、クレブシエラ オキシトカに属する細菌間で保存性が高い連続した領域を形成している。図2−3における領域rf8は、図1−2における領域rf3の部位、および、図2−4中のrf6〜8の部位にそれぞれ該当する。図1−2中の領域rf3および図2−4中のrf6〜8のアライメント結果が示すとおり、この領域は、クレブシエラ オキシトカ以外の大腸菌群間で比較した場合には、保存性が低い領域を形成している。したがって、配列(E)が検出される場合には、クレブシエラ オキシトカの細菌群が試料中に存在する蓋然性が高いと判定し得る。なお、下記実施例の欄における実験結果から、配列(E)に基づいて、クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に属する細菌の他、エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)に属する細菌、およびラウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)属に属する細菌も検出し得ることが明らかとなっている。
【0029】
本発明の一実施形態においては、配列(A)および(B)の少なくとも一方が検出され、かつ、配列(C)、(D)および(E)のいずれも検出されない場合に、配列(C)、(D)および(E)によって特定され得るいずれの細菌とも異なる1種または2種以上の細菌が存在すると判定する。大腸菌群には、上記配列(C)、(D)、(E)が存在する領域、すなわち、図1−2中においては領域rf3が、上記配列(C)、(D)および(E)に示されるいずれの配列とも異なる場合もあり得る。したがって、配列(A)および(B)の少なくとも一方が検出されることによって、大腸菌群に属する細菌の存在が確認され、かつ、配列(C)、(D)および(E)のいずれの配列も検出されない場合には、上記配列(C)、(D)および(E)によって特定される細菌群とは異なる細菌群が存在する蓋然性が高いと判定し得る。上記配列(C)、(D)および(E)によって特定される細菌群とは異なる細菌群としては、例えば、ブチオーキセラ(Buttiauxella)属に属する細菌、エンテロバクター アムニゲナス(Enterobacter amnigenus)に属する細菌、エンテロバクター クロアカ(Enterobacter cloacae)に属する細菌、エンテロバクター サカザキ(Enterobacter sakazaki)に属する細菌、エシェリキア(Esherichia)属に属する細菌、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)に属する細菌、クルイベラ(Kluyvera)属に属する細菌、レクレルシア(Leclercia)に属する細菌、ラウルテラ オルニチノリティカ(Raoultella ornithinolytica)に属する細菌、およびラウルテラ プランティコラ(Raoultella planticola)に属する細菌などが挙げられる。
【0030】
上記のように、配列(A)から(E)からなる群より選ばれる1種または2種以上の核酸配列を用いることにより、それぞれの配列に対応した細菌群を検出し得る。本発明のより具体的な一実施形態としては、少なくとも2つの検出工程を有する形態が提供され得る。第1の検出工程では、配列(A)および(B)からなる群より選ばれる1種または2種の核酸配列を、試料中から検出する。他方、第2の検出工程では、前記配列(C)、(D)および(E)からなる群より選ばれる1種または2種以上の核酸配列を検出する。第1の検出工程の結果、実際に配列(A)および(B)の少なくとも一方、より好ましくは双方が検出されることにより、大腸菌群に属する細菌が試料中に存在する蓋然性が高いと判定される。他方、第2の検出工程により、配列(C)、(D)、(E)のいずれかに属する細菌群またはそのいずれにも細菌群が存在することを判定し得る。
【0031】
第1の検出工程と第2の検出工程とは、順序に限定はない。また第1および第2の検出工程と同一の実験系内において同時に行ってもよい。さらに、第1の検出工程と、第2の検出工程の作業をそれぞれ並行して実施してもよい。好ましい一実施形態としては、第1の検出工程を先に行い、第1の検出工程で大腸菌群が含まれることが特定された試料についてさらに前記第2の検出工程を実施する形態が挙げられる。このようにすることにより、大腸菌群に汚染されていない試料を除外して第2の検出工程を実施できるので、第2の検出工程によって特定される細菌群の検出工程の作業をより迅速に行うことができる。第2の検出工程だけでは、大腸菌群をすべて網羅していないが、第1の検出工程を先に行っているので、第2の検出工程でいずれの配列も検出されない場合には、それらの配列で特定し得る細菌群以外の細菌の存在を確認し得る。
【0032】
以上のように、本発明の一実施形態により、試料中の大腸菌群を4つのグループに分けることが可能である。すなわち、本発明の一実施形態として、配列(C)、(D)および(E)の検出を行い、前記第2の検出工程の結果から、配列(C)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、配列(D)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、前記配列(E)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、これら以外の細菌群の4つのグループに大腸菌群を分類する工程を含む形態が提供され得る。このような4つのグループに分類することにより、大腸菌群の種類に関する構成相を解析することができる。
【0033】
本発明で用いられる核酸の配列として配列(A)から(E)の各配列が挙げられる。各項の配列は、核酸の相補性、配列の生物学的許容性などの理由により複数の配列が包含され得る。
【0034】
配列(A)を一例として、より具体的に説明する。配列(A)は、lacZ遺伝子をコードする核酸配列の一部であって、配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列である。
【0035】
配列(A)に含まれる配列の一つである配列番号1の配列は、図1−2に示す領域fr1に対応するコード鎖(センス鎖)の配列であり、大腸菌群において保存性の高い領域である。すなわち、大腸菌群の細菌が試料中に存在する場合には、試料中に領域rf1に対応する核酸フラグメントが含まれている確率が高い。配列(A)の一群として含まれ得る配列は、領域rf1の有無を特定するために用い得る配列である。領域rf1の有無を特定するためには、配列番号1で示される配列のみならず、いくつかのバリエーションが生物学的に許容される。
【0036】
まず、rf1に示される配列は、生体内において、lazZ遺伝子中に存在する。細菌内にてlacZ遺伝子は、通常、二重らせん構造を有する核酸分子として存在する。したがって、細菌内には、rf1として示される配列を有する核酸と、これと相補的な配列を有する核酸とが存在する。したがって、配列番号1の配列に対し相補的な配列も、配列番号1の配列と同様に、領域rf1の特定に利用することができる。
【0037】
図3に、配列番号1の配列を示す。配列P1−1は、配列番号1の配列そのものである。配列P1−1中には選択的な塩基を示すYおよびSが含まれている。Yは塩基シトシン(C)またはチミン(T)である。また、Sは塩基グアニン(G)またはシトシン(C)を示す。したがって、核酸配列の許容性の観点から、配列P1−1は、23種(8種)の配列を含む。さらにDNAとRNAの違いを考慮するときには、16種類の核酸配列を包含する。
【0038】
さらに、配列(A)には、連続した少なくとも20bp以上の配列、好ましくは連続した23bp以上の配列、さらに好ましくは連続した25bp以上の配列、さらに好ましくは連続した28以上の配列、さらに好ましくは連続した30以上の配列、さらに好ましくは32bpの配列が含まれる。連続した20bp以上の配列としては、図3に示すように、その5末端から連続した20bpの配列P1−2、5末端から2つ目の塩基から連続した20bpの配列P1−3、以下同様にして、配列P1−13までの配列が含まれる。さらに、同様にして、連続した21bp以上32bp以下の配列についても同様に配列を設定し得る。
【0039】
配列(B)に含まれる配列の一つである配列番号2の配列は、図1−3の領域rf2に対応する。配列(C)に含まれる配列の一つである配列番号3の配列は、図2−1の領域rf6に対応する。配列(D)に含まれる配列の一つである配列番号4は、図2−2の領域rf7に対応する。配列(E)に含まれる配列の一つである配列番号5は、図2−3の領域rf8に対応する。配列(B)から(E)の各配列においても、配列(A)と同様にして、複数の配列が包含され得る。
【0040】
本発明の方法において用いられる試料は、大腸菌群に属する細菌を検出しようとする対象物である。試料は、細菌が付着したり繁殖している可能性が推定される基材を含んでも良い。試料は適宜調整され、微生物中の核酸を検出し得るように調整される。試料の採取場所には特に制限はないが、例えば、食品、医薬品、工場の壁、工場の床、食品等の搬送路、原材料、食品等の残渣、動植物、昆虫、その他、細菌の感染経路と推定される箇所など様々である。
【0041】
配列(A)などの配列を検出する方法は、遺伝子工学的な手法により、様々な方法を採用し得る。一つの実施形態としては、例えば、試料中から核酸分子を抽出し、塩基配列を決定して、その核酸配列を電子情報化し、生物情報科学的な手法を用いて、その中から所定の配列を検索し得る。また、他の実施形態としては、配列(A)などの配列を有する核酸に特異的に結合し得る捕捉分子を設計し、これに標識物質を付属して捕捉分子−標識物質複合体作製し、これと試料とを所定の条件下で混合して、標識物質を検出するなどの形態も採用し得る。捕捉分子としては、抗体、相互作用タンパク質などのタンパク質、相補的な配列を有する核酸フラグメントなどが挙げられる。核酸フラグメントしては、例えば、配列(A)から(E)に包含されるいずれかの配列を有する核酸フラグメントが挙げられる。このような核酸フラグメントは、それぞれの配列を試料中から検出するためのプローブとして用いる。配列(A)を有する核酸フラグメントは、試料中から配列(A)を検出するために用い得る。配列(B)から(E)についてもそれぞれ同様である。遺伝子工学的な手法として具体的には、例えば、PCR法、リアルタイムPCR法、DNAチップを利用する方法、DNA定量チップを利用する方法などが挙げられる。
【0042】
上記のように、各配列を検出するために、配列(A)から(E)を利用したPCRを利用することもできる。配列(A)から(E)に基づいて所定のプライマーセットを調製し、PCRの増幅産物を検出することにより極めて迅速に試料中から各配列を検出し得る。以下、PCRを利用した実施形態例についてより詳しく説明する。
【0043】
PCRを利用する第1の実施形態例として、第1のプライマーが配列(A)または(B)のいずれか一方の配列を有する核酸であり、第2のプライマーがlacZ遺伝子をコードする核酸中に含まれる20bp以上、32bp以下の配列であって、前記第1のプライマーとは異なる配列を有する核酸である一対のプライマーセットを用いて、第1および第2のプライマーに挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して配列(A)または(B)を検出する形態が挙げられる。配列(A)および(B)はそれぞれ大腸菌群の細菌が有するlacZ遺伝子において保存性の高い配列であり、しかも、その配列は塩基数20から32の範囲であり、プライマーとして適切な長さである。第2のプライマーは、第1のプライマーと対をなして、PCRを行うことができるものであればよく、lacZ遺伝子をコードする配列中から適宜設計し得る。
【0044】
配列(A)または(B)を少なくとも一方のプライマーとして用いて、PCRによる増幅産物が検出された場合には、そのプライマーに相補的な核酸配列が試料中に含まれていることを意味する。したがって、増幅産物の検出によって、rf1またはrf2に相当する配列を有する核酸が試料中に含まれ、試料中には大腸菌群に属する細菌が存在していたことを確認し得る。増幅産物が検出されなければ、試料中には大腸菌群に属する細菌が存在する可能性が低いことが推定される。
【0045】
PCRを利用する第2の実施形態例として、前記配列(A)を有する核酸および前記配列(B)を有する核酸を一対のプライマーセットとして配列(A)および(B)で挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して配列(A)および(B)を検出する形態が挙げられる。配列(A)および(B)はそれぞれ大腸菌群の細菌が有するlacZ遺伝子において保存性の高い配列であり、しかも、その配列は塩基数20から32の範囲であり、プライマーとして適切な長さである。さらに、この一対のプライマーが挟む領域はおよそ520bp前後であり、PCRによる増幅を円滑かつ正確に実施するのにも適している。
【0046】
配列(A)および(B)を一対のプライマーセットを用いて、PCRによる増幅産物が検出された場合には、これらのプライマーに相補的な核酸配列が試料中に含まれていることを意味する。したがって、増幅産物の検出によって、rf1およびrf2に相当する配列を有する核酸が試料中に含まれ、試料中には大腸菌群に属する細菌が存在していたことを確認できる。増幅産物が検出されなければ、試料中には大腸菌群に属する細菌が存在する可能性が低いことが推定される。
【0047】
配列(A)および(B)を一対のプライマーセットとする場合、一方の配列群からフォワードプライマーが、他方の配列群からリバースプライマーが設計される。例えば、配列番号1の配列を有する核酸フラグメントをフォワードプライマーとして設計した場合、リバースプライマーとしては、配列番号16に示す配列がリバースプライマーとして好適に用いられる。プライマーの長さは、PCRの条件等により適宜設定してよく、各配列の許容範囲、すなわち、20bp以上32bp以下の範囲で適宜調整し得る。
【0048】
PCRを利用する第3の実施形態例として、一対のプライマーセットの第1のプライマーが、配列(C)、(D)および(E)からなる群より選ばれるいずれか1種の配列を有し、第2のプライマーが、lacZ遺伝子をコードする核酸中に含まれる20bp以上、32bp以下の配列であって、前記配列(C)、(D)および(E)とは異なる配列を有する核酸である一対のプライマーセットを用いて、第1および第2のプライマー挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して、前記第2のプライマーに対応する配列(C)、(D)または(E)のいずれかの配列を検出する形態が挙げられる。一対のプライマーセットのうちの一方のプライマーが、配列(C)、(D)または(E)のいずれかの配列を有するものを用いて、PCRによる増幅産物が検出された場合には、そのプライマーに相補的な核酸配列が試料中に含まれていることを意味する。したがって、増幅産物の検出によって、rf6からrf8のいずれかに相当する配列を有する核酸が試料中に含まれ、試料中にはそれぞれに対応する種類の細菌が存在していたことを確認できる。増幅産物が検出されなければ、試料中には、対応する細菌が存在する可能性が低いことが推定される。
【0049】
配列(C)、(D)および(E)のいずれも、20bp以上32bp以下の配列を有し、プライマーとして適切な長さである。他方のプライマー、すなわち第2のプライマーは、第1のプライマーと対をなして、PCRを行うことができるものであればよく、lacZ遺伝子をコードする配列中から適宜設計し得る。
【0050】
PCRを利用する他の実施形態例として、第1の検出工程と、第2の検出工程において、それぞれPCRを利用する形態が挙げられる。PCRを利用する第4の実施形態例としては、PCRを利用する実施形態例1を第1の検出工程に採用する形態が挙げられる。PCRを利用する第5の実施形態例としては、PCRを利用する実施形態例2を第1の検出工程に採用する形態が挙げられる。さらにPCRを利用する第6の実施形態例としては、PCRを利用する実施形態例3を第2の検出工程に採用する形態が挙げられる。
【0051】
PCRを利用する第7の実施形態例として、第2の検出工程において、配列(A)を有する核酸および配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセット、または、配列(B)を有する核酸および配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、プライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、配列(C)を検出する形態が挙げられる。配列(A)を有する核酸または配列(B)を有する核酸を第1のプライマーとし、配列(C)を有する核酸を第2のプライマーとするプライマーセットを用いた場合、PCRによる増幅産物が検出された場合には、これらのプライマーに対し相補的な配列を有する核酸が試料中に含まれることを意味する。配列(A)および(B)は、大腸菌群に属する細菌のlacZ遺伝子において保存性の高い配列であり、配列(C)はシトロバクター(Citrobacter)属に属する細菌のlacZ遺伝子において、保存性の高い配列である。したがって、増幅産物が検出されれば、シトロバクター属に属する細菌が試料中に存在していたことが確認できる。増幅産物が検出されなければ、試料中には、シトロバクター属に属する細菌が存在する可能性は低いことが推定される。なお、下記実施例の欄における実験結果から、配列(C)の検出に基づいて、エルウィニア(Erwinia)属に属する細菌も検出し得ることが明らかとなっている。
【0052】
PCRを利用する第8の実施形態例として、第2の検出工程において、配列(A)を有する核酸および配列(D)を有する核酸を一対とするプライマーセット、または、前記配列(B)および配列(D)を一対とするプライマーセットを用いて、プライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(D)を検出する形態が挙げられる。配列(A)を有する核酸または配列(B)を有する核酸を第1のプライマーとし、配列(D)を有する核酸を第2のプライマーとするプライマーセットを用いた場合、PCRによる増幅産物が検出された場合には、これらのプライマーに対し相補的な配列を有する核酸が試料中に含まれることを意味する。配列(A)および(B)は、大腸菌群に属する細菌のlacZ遺伝子において保存性の高い配列であり、配列(D)はハフニア(Hafnia)属に属する細菌のlacZ遺伝子において、保存性の高い配列である。したがって、増幅産物が検出されれば、ハフニア属に属する細菌が試料中に存在していたことが確認できる。増幅産物が検出されなければ、試料中には、ハフニア属に属する細菌が存在する可能性は低いことが推定される。
【0053】
PCRを利用する第9の実施形態例として、第2の検出工程において、配列(A)を有する核酸および配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセット、または、配列(B)を有する核酸および配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、それぞれのプライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、配列(E)を検出する形態が挙げられる。配列(A)を有する核酸または配列(B)を有する核酸を第1のプライマーとし、配列(C)を有する核酸を第2のプライマーとするプライマーセットを用いた場合、PCRによる増幅産物が検出された場合には、これらのプライマーに対し相補的な配列を有する核酸が試料中に含まれることを意味する。配列(A)および(B)は、大腸菌群に属する細菌のlacZ遺伝子において保存性の高い配列であり、配列(E)はクレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に属する細菌のlacZ遺伝子において、保存性の高い配列である。したがって、増幅産物が検出されれば、クレブシエラ オキシトカに属する細菌が試料中に存在していたことが確認できる。増幅産物が検出されなければ、試料中には、クレブシエラ オキシトカに属する細菌が存在する可能性は低いことが推定される。なお、下記実施例の欄における実験結果から、配列(E)の検出に基づいて、エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)に属する細菌、およびラウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)属に属する細菌も検出し得ることが明らかとなっている。
【0054】
PCRを利用する第10の実施形態例として、第2の検出工程において、
配列(A)または(B)を有する核酸および配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセット、
配列(A)または(B)を有する核酸および配列(D)を有する核酸を一対とするプライマーセット、および
配列(A)または(B)を有する核酸および配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセットをそれぞれ用いて、それぞれのプライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、配列(C)、(D)および(E)を検出する形態が挙げられる。すなわち、PCRを利用する第10の実施形態においては、上記第6から第9の実施形態例における第2の検出工程を、それぞれすべて実施する。配列(C)、(D)および(E)のすべてについてPCRによる検出を行うことで、配列(C)、(D)および(E)に対応するそれぞれの細菌群をすべて検出することができる。また、第1の検出工程によって大腸菌群に属する細菌が存在するか否か判別できることから、第1の検出工程によって増幅産物が検出され、かつ、第2の検出工程によっては増幅産物が検出されない場合に、配列(C)、(D)および(E)以外の大腸菌群に属する細菌が存在することを確認し得る。配列(C)、(D)および(E)以外の大腸菌群に属する細菌としては、例えば、ブチオーキセラ(Buttiauxella)属に属する細菌、エンテロバクター アムニゲナス(Enterobacter amnigenus)に属する細菌、エンテロバクター クロアカ(Enterobacter cloacae)に属する細菌、エンテロバクター サカザキ(Enterobacter sakazaki)に属する細菌、エシェリキア(Esherichia)属に属する細菌、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)に属する細菌、クルイベラ(Kluyvera)属に属する細菌、レクレルシア(Leclercia)に属する細菌、ラウルテラ オルニチノリティカ(Raoultella ornithinolytica)に属する細菌、およびラウルテラ プランティコラ(Raoultella planticola)に属する細菌などが挙げられる。
【0055】
培養法を利用して細菌の存在の有無を確認するには、実質的に2〜3日程度の時間を要する場合がある。さらに、培養法を利用して細菌の種類を特定するとなると、種類の異なる培地を何種類も用意し、個別に培養していく必要がある。また、平板培養法の場合、培地上で試料ごとの差を明確に検出する上でのコロニーの数や菌の密度に上限があるため、試料を適切に希釈調整する必要がある。平板培養法の場合、菌の上限が、1つのシャーレ上にコロニーの数が30〜300個、または試料中の菌の密度が102から104cfu/mlとなるように、試料を希釈調整する必要がある。それ以上になるとコロニーとしての検出は困難となってしまう。培養法による場合、このような制約から、試験結果を得るために、さらに多くの時間を要する場合もあった。
【0056】
しかし、上記PCRを利用する各実施形態に例示されるように、細菌の種類を分類し得る所定のプライマーセットが設計されているので、試験結果を得るための実質的な所要時間は、PCRにかけるための試料の調製、PCR操作、および増幅産物の有無を確認する検出操作に要する時間でのみで足りる。また、PCRを利用する場合は、細菌の検出上限が平板培養法よりも遙かに高いため、PCRに供することができるように試料を調整すればよく、平板培養法よりも試料の調製が簡便である。したがって、PCRを利用した実施形態に示すように、上記のような複数のプライマーセットを用いてPCRを行うことにより、迅速かつ簡便に細菌の種類の特定をすることができる。
【0057】
また、PCRを利用した第11の実施形態例として、増幅産物の量を定量し、増産物の量から、試料中に含まれる大腸菌群に属する細菌の量を推定する形態が挙げられる。PCRによって増幅産物を定量する手法がすでにいくつも開発されている。そのため、上記の各種所定のプライマーセットを用いた増幅産物の量を指標として、試料中における、各プライマーセットに対応する細菌の量を推定し得る。増幅産物の定量法は、公知の技法を採用し得る。蛍光物質や放射性物質を標識分子として、標識分子を定量する方法などを利用し得る。PCRを利用した第10の実施形態例として、リアルタイムPCRを採用しても良い。リアルタイムPCRにより増幅産物の増加を経時的に観測し、lacZ遺伝子内の特定領域を定量し得る。
【0058】
増幅産物量を指標として、試料中に含まれる細菌量を推定し得る。例えば、配列(A)および(B)を利用したプライマーセットを用いたリアルタイムPCRを行うことにより、試料中に含まれる大腸菌群の細菌量を推定し得る。同様に、配列(C)、(D)、(E)をそれぞれ利用したリアルタイムPCRの結果から、それぞれの配列に対応する細菌群の量を推定し得る。したがって、例えば、PCRを利用した第9の実施形態例と第10の実施形態例を組み合わせることにより、それぞれの配列に対応する細菌群の量を迅速に推定し、細菌群の構成相を迅速に割り出すことが可能である。
【0059】
<2.本発明のプローブおよびプライマー>
本発明により、細菌の検出に有用な複数の核酸フラグメントが提供される。すなわち、本発明は、下記配列(A)から(E)の各核酸を提供する。これらの核酸は、
上記発明の検出方法の欄で説明したとおり、それぞれ大腸菌群検出用プローブ、プライマー等として利用し得る。
(A)配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(B)配列番号2の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(C)配列番号3の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(D)配列番号4の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列、および
(E)配列番号5の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
【0060】
上記の核酸をプローブとして用いる場合、これらの核酸フラグメントに標識物質を付属させて用いてもよい。すなわち、上記の核酸を標的に対して特異的に結合する捕捉分子とし、捕捉分子−標識物質複合体を形成し得る。標識物質としては、遺伝子工学的な手法において用いられる様々な物質を用いることができ、例えば、蛍光物質、発光物質、色素、放射性同位体などを用い得る。さらに、捕捉分子に酵素または基質などの物質を付属させ、それらによって生じる酵素反応の結果から標的分子を検出する実験系を構築しても良い。
【0061】
上記核酸をPCR用プライマーとして用いる場合、次のような組み合わせが好適な組み合わせとして例示される。一実施形態例としては、配列(A)を有する核酸および配列(B)を有する核酸を一対とするプライマーセットである。これらの配列を利用したプライマーによって増幅産物が検出された場合には、大腸菌群に属する細菌を検出し得る。また、リアルタイムPCRなどの手法によって、試料中の細菌量を推定し得る。
【0062】
プライマーセットの実施形態例としては、配列(A)または(B)を有する核酸のいずれかの核酸と、下記配列(C)、(D)および(E)より選ばれるいずれかの配列を有する核酸とを一対とする、ポリメラーゼチェーンリアクション用プライマーセットがあげられる。配列(C)を有する核酸をプライマーの一方として用いる場合、シトロバクター(Citrobacter)属に属する細菌またはエルウィニア(Erwinia)属に属する細菌を検出し得る。配列(D)を有するプライマーを一方として用いる場合、ハフニア(Hafnia)属に属する細菌を検出し得る。配列(E)を有する核酸をプライマーの一方として用いる場合、クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に属する細菌、エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)に属する細菌、およびラウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)属に属する細菌を検出し得る。
【0063】
配列(A)から(E)のそれぞれにおいて、複数の配列が設定可能であることについては、上記「1.本発明の検出方法」の欄にて説明した通りである。各配列において生物学的に許容されるバリエーションの中から、適宜プローブ、プライマーとして適切な配列を調製し得る。また、プライマーとして用いる場合、一方はフォワードプライマーであり、他方はリバースプライマーであるようにそれぞれ配列は選択される。配列番号1から5はそれぞれlacZ遺伝子におけるコード鎖(センス鎖:mRNAと同じ遺伝情報を有する配列)側の配列を示す。一方のプライマーとしてコード鎖と同じ配列に設定した場合には、他方のプライマーはアンチコード鎖(アンチセンス鎖)側に準じて配列が設計される。
【0064】
<3.食品工場における実施形態の一例>
次に、本発明の検出方法を、食品工場における検査に適用した実施形態の一例を、図4および図5を参照しつつ説明する。
【0065】
図4に、汚染源を推定する原理を示す。大腸菌群が付着または繁殖している場合、細菌は1種類とは限らず、むしろ複数種である可能性が高い。また、大腸菌群の増殖は環境によって大きく左右されやすいため、場所や材料によって繁殖する大腸菌群の様相も様々となり得る。様々な箇所における試料を採取した場合、試料中の大腸菌群の種別割合は、それぞれの由来に応じて異なる様相を呈する傾向がある。したがって、このような大腸菌群の種別割合を大腸菌群の構成相として汚染源の特定に利用することができる。
【0066】
図4に示すように原材料の大腸菌群の構成相はグラフd1で示される通りである。空気中、動物・昆虫、機械上の残渣、床下、汚水、人、食品(製品)それぞれにおける大腸菌の構成相が、図4に示すグラフd2〜d8として表される。グラフd1〜d8に示されるように、その構成相は試料の由来によって異なることがわかる。最終製品である食品のグラフd8と他のグラフを比較すると、図4に示す例の場合では、汚水d5が最も近似した構成相を呈していることがわかる。この比較分析結果から、図4に示す例の場合には、汚水が汚染源であると推定される。
【0067】
図5に、本発明の検出方法を応用して、食品工場内での細菌の汚染源特定試験の作業流れ図を示す。食品が汚染されていた想定での作業の流れ図である。まず、試料採取工程SC1にて、工場内の様々な箇所から試料を採取する。次に、大腸菌群分析工程SC2において、各試料採取箇所における大腸菌群の構成相を分析する。大腸菌群分析工程SC2では、まず試料採取工程SC1にて採取された試料について、それぞれ上記PCRを利用した実施形態10により細菌の検出試験を行う。そして、その結果に基づいて大腸菌群の構成相を明らかにする。他方、汚染された食品についても、同様に試料採取工程Sf1および大腸菌群分析構成Sf2を経て、食品試料中に含まれる大腸菌群についての構成相を明らかにする。各箇所における構成相と、食品における構成相を対比する。上記のPCRを利用した実施形態10によれば、大腸菌群を4つのグループに分類でき、その存在量もリアルタイムPCRによって推定される。そこで、各グループの占める割合として構成相は表される。食品における構成相ともっとも近似した相を呈する箇所が汚染源であると推定される。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明が下記実施例により限定されるものではない。
【0069】
<調製例1および2>lacZ遺伝子増幅プライマーの設計
(1)実験に供した標準菌株
下記表5に示す代表的な大腸菌群の標準菌株11属21種38株を試験に供した。
【0070】
(2)培養条件及びゲノム抽出
Luria−Bertani(LB)液体培地にて37℃一晩振とう培養した菌液を1.5 ml分取し、ISOPLANTキット(ニッポンジーン社製)を用いてゲノムDNAを抽出した。
【0071】
(3)PCRプライマーの設計
まず、全ての大腸菌群株を増幅することが可能なプライマーの設計を試みた。lacZ遺伝子のうち、保存性が高い場所を複数選び、その中から、最も多くの大腸菌群株でPCR増幅に成功したプライマーを選抜することにした。lacZ遺伝子におけるPCR増幅領域は以下のようにして決定した。大腸菌群に属する細菌でゲノム配列がインターネット上で公開されているもののうち、シトロバクター コセリ(Citrobacter koseri)、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)、エンテロバクター サカザキ(Enterobacter sakazakii)、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター クロアカ(Enterobacter cloacae)から各々のlacZ遺伝子配列を取得した。それらの配列(配列番号6:C.koseri:3078bp、配列番号8:E.coli:3075bp、配列番号10:E.sakazakii:3132bp、配列番号12:K.pneumoniae:3108bp、配列番号14:E.cloacae:3087bp)について、Clustal W プログラムを用いてマルチプルアラインメントを行った。
【0072】
マルチプルアライメントの結果を図1−1から図1−6に示す。図1−1から図1−6において*印は、5種の配列において同じ塩基である部位を示す。この結果をもとに、5種の細菌で保存性が高い領域を探し、さらにPCR用のプライマーとして許容され得る長さであって、安定して増幅しやすい長さの領域を挟むようになる2組のプライマー(1F−1Rおよび2F−2R)をそれぞれ設計した。各プライマーの配列は以下のとおりである。
【0073】
なお、混合塩基については、以下の省略記号を用いる。
R=(AまたはG)、Y=(CまたはT)、M=(AまたはC)、K=(GまたはT)、S=(GまたはC)、W=(AまたはT)、H=(A,CまたはT)、B=(G,TまたはC)、V=(G,CまたはA)、D=(G,AまたはT)、N=(A,C,GまたはT)
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
プライマー1Fは、図1−2中に示す領域rf1に対応し、矢印1Fの向きに核酸を合成するためのプライマーとなる。プライマー1Rは、図1−3中に示す領域rf2に対応し、矢印の向きに核酸を合成するためのプライマーとなる。プライマー1Rの配列は、領域rf2に示す核酸配列に対し相補的な配列である。プライマー1Fおよび1Rの組み合わせて用いるPCRにより、図1−2から図1−3に示す領域RGN1を増幅し得る。
【0077】
プライマー2Fは、図1−4中に示す領域rf4に対応し、矢印2Fの向きに核酸を合成するためのプライマーとなる。プライマー2Rは、図1−4中に示す領域rf5に対応し、矢印2Rの向きに核酸を合成するためのプライマーとなる。プライマー2Rの配列は、領域rf5に示す核酸配列に対し相補的な配列である。プライマー2Fおよび2Rの組み合わせて用いるPCRにより、図1−4に示す領域RGN2を増幅し得る。
【0078】
<調製例3>既存のプライマーの調製
(1)PCRプライマーの合成
過去の文献にて、lacZ遺伝子のPCRによる増幅が報告されている(非特許文献1:Letters in Applied Microbiology 19:44−46,1994;非特許文献2:Applied and Environmental Microbiology 57:2429−2432,1991)。そのプライマーを合成した。
【0079】
【表4】

【0080】
<試験例1>PCRを利用した大腸群の検出
上記調製例1および2で調製されたプライマーセットI〜IIIを用いて、PCRを行い、大腸菌群に由来する遺伝子の増幅を以下のようにして検出した。
(1)プライマーIおよびIIを用いたPCRの反応条件
PCR反応は総量を50μlとし、1×amplification buffer、0.2mM dNTP mixture、2.5U ExTaq DNA polymerase(タカラバイオ社製)、0.5μM Forward/Reverse各プライマー、0.5μlの鋳型DNAを含む反応液で行った。増幅反応は、Master gradient(エッペンドルフ社製)にて以下のプロトコルにて行った。反応液は、鋳型DNAの二本鎖解離のため94℃で5分間加熱した後、94℃で1分間、55℃で1分30秒間、72℃で1分間の反応を1サイクルとしてこれを30サイクル繰り返し、72℃で5分間反応させ、PCR反応を行った。
【0081】
(2)プライマーIIIを用いたPCRの反応条件
プライマーセットIIIによるPCR反応は、発表された文献(非特許文献1および2)の記載に従って、以下のプロトコルにて行った。反応液は、鋳型DNAの二本鎖解離のため94℃で5分間加熱した後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間の反応を1サイクルとしてこれを25サイクル繰り返し、72℃で5分間反応させ、PCR反応を行った。
【0082】
(3)試験結果
プライマーI〜IIIをそれぞれ用いてPCRを行い、核酸の増幅産物が得られたか否かについての結果を、表5に示す。表5において、PCRによって増幅が確認された菌株を○として示し、増幅が確認されなかった菌株を×として示した。
【0083】
【表5】

【0084】
(4)プライマーセットIおよびIIによるPCR反応の結果
プライマーセットIによるPCR反応(図1−2から図1−3におけるRGN1を増幅)を行った。その結果、表5に示すとおり、プライマーセットIでは、38株全て(100%)で核酸の増幅が確認された。この結果から、プライマーセットIによるPCRによって、微生物が含まれる試料中から大腸菌群の検出を行うことができることが分かった。また、試料の調製からPCRによる結果の確認まで要した時間はおよそ3時間程度であった。
【0085】
(5)プライマーセットIIによるPCR反応の結果
プライマーセットIIによるPCR反応(図1−4におけるRGN2を増幅)を38菌株について行った。表5に示すように、プライマーセットIIでは、27株(71%)で核酸の増幅が確認された。プライマーセットIIは、プライマーセットIと同様に、大腸菌群において保存性が高い領域をベースに設計されたが、プライマーセットIのように、表4に示す大腸菌群のすべてについて検出することはできなかった。
【0086】
(6)プライマーセットIIIによるPCR反応の結果
プライマーセットIIIによるPCR反応を38菌株について行ったところ、表4に示すように、10株(26%)について増幅が確認されたのみであった。過去の文献でも、試験した菌株のうち約70%の菌株でしかPCR反応で増幅が確認されず、新たなプライマーの設計の必要性が主張されている(非特許文献1および2)。本試験結果もこれを追認する結果となった。
【0087】
以上(5)から(6)で示した結果から、今回新たに設計したプライマーセットIは、過去の試みられたプライマーよりもPCRで増幅される菌株数が大幅に増加しており、大腸菌群の検出に対する有用性が高いことが確認された。
【0088】
<調製例4〜6>種特異的プライマーの設計
(1)種特異的なPCRプライマーの設計
次に、種特異的なプライマーの設計を試みた。表5に示す菌株のうち、代表的な菌株のRGN1について核酸配列を確認した(約520bp)。その核酸配列の比較から、種内では保存されているが、種間では変化に富んでいる領域を探した。図2−1(配列番号21−25)は、シトロバクター(Citrobacter)属に属する5菌株における領域RGN1のアライメントを示す。図2−2(配列番号26−27)は、ハフニア(Hafnia)属に属する2菌株における領域RGN1のアライメントを示す。図2−3(配列番号28−32)には、クレブシエラ(Klebsiella)属に属する5菌株における領域RGN1のアライメントを示す。図2−1に示される通り、領域rf6は、シトロバクター属に属する菌株において保存性が高い領域である。また、図2−2に示される通り、領域rf7は、ハフニア属に属する菌株において保存性の高い領域である。図2−3示される通り、領域rf8はクレブシエラ属に属する菌株において保存性の高い領域である。
【0089】
さらに、図2−4に示すとおり、領域rf6からrf8は領域RGN1に含まれる同領域に該当する。また、領域rf6から8は、図1−2中においては、領域rf3として示されれている。これらの図に示されるとおり、領域RGN1内の領域rf6から8によって特定される領域は、シトロバクター(Citrobacter)属内、ハフニア(Hafnia)属内、クレブシエラ(Klebsiella)属内の各属内では保存性の高い領域であるが、これらの属間で比較すると、配列は変化に富んでいる領域となっていることが明らかとなった。そこで、シトロバクター属、ハフニア属、クレブシエラ属のそれぞれに対応する3組の種特異的なプライマーを以下のように設計した。
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
<試験例2>
(1)種特異的PCRの反応条件
上記プライマーセットIVからVIをそれぞれ用いて、PCR反応を行った。PCR反応のための溶液として、上記と同様に、反応溶液総量を50μlとし、1×amplification buffer、0.2mM dNTP mixture、2.5U ExTaq DNA polymerase(タカラバイオ社製)、0.5μMを含む溶液Aを調製した。また、フォワードプライマーとしては1Fを用い、リバースプライマーとしてはAR、BR、CRのいずれかを用い、0.5μlの鋳型DNAを上記溶液Aに添加した反応液でPCRを行った。増幅反応はMaster gradient(エッペンドルフ社製)にて、添付の説明書を参照し、下記のプロトコルにて行った。反応液は、鋳型DNAの二本鎖解離のため94℃で5分間加熱した後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で15秒間の反応を1サイクルとしてこれを30サイクル繰り返し、72℃で5分間反応させ、PCR反応を行った。
【0094】
(2)種特異的PCR反応の結果
各プライマーセットによるPCR反応の結果を表9に示す。表9中、PCRにて増幅が確認された菌株を○として、増幅が確認されなかった菌株を×として示した。プライマーセットIVでのみ、PCRによる増幅が確認された菌株はシトロバクター(Citorbacter)属の6株とエルウィニア アフィディコラ(Erwinia aphidicola)1株であり、そのほかの菌株では増幅は確認されなかった。プライマーセットVでのみ、PCRによる増幅が確認された菌株は、ハフニア アルベイ(Hafnia alvei)の2株であり、そのほかの菌株では増幅は確認されなかった。プライマーセットVIでのみ、PCRによる増幅が確認された菌株は、クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)6株と、エンテロバクター アエロゲネシス(Enterobacter aerogenes)2株、ラウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)1株であり、そのほかの菌株では増幅は確認されなかった。全てのプライマーセットでPCRによる増幅が確認されなかった菌株は20種類であった。試料の調製からPCRによる結果の確認まで要した時間はおよそ3時間程度であった。
【0095】
以上の結果から、プライマーセットIV、VおよびVIを用いることにより、試料中に含まれる大腸菌群株を4グループに分けられることが明らかとなった。したがって、プライマーセットIV、VおよびVIを用いた核酸配列の型別により、大腸菌群構成相を求め得る。
【0096】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、大腸菌群の検出に利用でき、大腸菌群の検出、群構成の分析を要する分野、例えば、食品、衛生、医療、環境などに関わる技術分野において寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1−1】5種の細菌のlacZ遺伝子の配列のマルチプルアライメントの結果の一部を示す図である。
【図1−2】5種の細菌のlacZ遺伝子の配列のマルチプルアライメントの結果の一部を示す図である。
【図1−3】5種の細菌のlacZ遺伝子の配列のマルチプルアライメントの結果の一部を示す図である。
【図1−4】5種の細菌のlacZ遺伝子の配列のマルチプルアライメントの結果の一部を示す図である。
【図1−5】5種の細菌のlacZ遺伝子の配列のマルチプルアライメントの結果の一部を示す図である。
【図1−6】5種の細菌のlacZ遺伝子の配列のマルチプルアライメントの結果の一部を示す図である。
【図2−1】シトロバクター(Citrobacter)属に属する細菌についてのマルチプルアライメントの結果を示す図である。
【図2−2】ハフニア(Hafnia)属に属する細菌についてのマルチプルアライメントの結果を示す図である。
【図2−3】クレブシエラ(Klebsiella)属に属する細菌についてのマルチプルアライメントの結果を示す図である。
【図2−4】異なる種類の細菌間でのマルチプルアライメントの結果を示す図である。
【図3】配列(A)に含まれる配列群を示す図である。
【図4】食品工場における一例において、細菌の構成相から汚染源を推定する様子を示す図である。
【図5】食品工場における一例において、汚染源を推定する工程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腸菌群に属する細菌が有するlacZ遺伝子をコードする核酸配列中に含まれる下記配列(A)から(E)からなる群より選ばれる1種または2種以上の核酸配列を、試料中から検出して、大腸菌群に属する細菌を検出する方法。
(A)配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(B)配列番号2の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(C)配列番号3の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(D)配列番号4の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列、および
(E)配列番号5の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
【請求項2】
前記配列(A)および/または(B)が検出された場合に、前記試料中に、大腸菌群に属する細菌が存在すると判定する、請求項1に記載の細菌を検出する方法。
【請求項3】
前記配列(C)が検出された場合に、前記試料中に、シトロバクター(Citrobacter)属に属する細菌および/またはエルウィニア(Erwinia)属に属する細菌が存在すると判定する、請求項1に記載の細菌を検出する方法。
【請求項4】
前記配列(D)が検出された場合に、前記試料中に、ハフニア(Hafnia)属に属する細菌が存在すると判定する、請求項1に記載の細菌を検出する方法。
【請求項5】
前記配列(E)が検出された場合に、前記試料中に、
クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に属する細菌、
エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)に属する細菌、および
ラウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)属に属する細菌、のうちのいずれか1種または2種以上が存在すると判定する、請求項1に記載の細菌を検出する方法。
【請求項6】
前記配列(A)および/または(B)が検出され、かつ、前記配列(C)、(D)および(E)のいずれも検出されない場合に、
ブチオーキセラ(Buttiauxella)属に属する細菌、
エンテロバクター アムニゲナス(Enterobacter amnigenus)に属する細菌、
エンテロバクター クロアカ(Enterobacter cloacae)に属する細菌、
エンテロバクター サカザキ(Enterobacter sakazaki)に属する細菌、
エシェリキア(Esherichia)属に属する細菌、
クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)に属する細菌、
クルイベラ(Kluyvera)属に属する細菌、
レクレルシア(Leclercia)に属する細菌、
ラウルテラ オルニチノリティカ(Raoultella ornithinolytica)に属する細菌、および
ラウルテラ プランティコラ(Raoultella planticola)に属する細菌、
のうちのいずれか1種または2種以上が存在すると判定する、請求項1に記載の細菌を検出する方法。
【請求項7】
前記配列(A)および(B)からなる群より選ばれる1種または2種の核酸配列を、試料中から検出する第1の検出工程と、
前記配列(C)、(D)および(E)からなる群より選ばれる1種または2種以上の核酸配列を検出する、第2の検出工程を含む、
請求項1に記載の細菌を検出する方法。
【請求項8】
前記第2の検出工程において、前記配列(C)、(D)および(E)の検出を行い、前記第2の検出工程の結果から、前記配列(C)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、前記配列(D)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、前記配列(E)が検出された場合に存在すると判定される細菌群と、これら以外の細菌群の4つのグループに大腸菌群を分類する工程を含む、請求項7に記載の細菌を検出する方法。
【請求項9】
第1のプライマーが前記配列(A)または(B)のいずれか一方の配列を有する核酸であり、第2のプライマーがlacZ遺伝子をコードする核酸中に含まれる20bp以上、32bp以下の配列であって、前記第1のプライマーとは異なる配列を有する核酸である一対のプライマーセットを用いて、第1および第2のプライマーに挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して前記配列(A)または(B)を検出する、請求項1または2に記載の細菌を検出する方法。
【請求項10】
前記配列(A)を有する核酸および前記配列(B)を有する核酸を一対のプライマーセットとして配列(A)および(B)で挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して前記配列(A)および(B)を検出する、請求項1または2に記載の細菌を検出する方法。
【請求項11】
第1のプライマーが前記配列(C)、(D)または(E)の配列を有する核酸であり、第2のプライマーがlacZ遺伝子をコードする核酸中に含まれる20bp以上、32bp以下の配列であって、前記第1のプライマーとは異なる配列を有する核酸である一対のプライマーセットを用いて、第1および第2のプライマーに挟まれる領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出して、前記第1のプライマーに該当する前記配列(C)、(D)または(E)のいずれかの配列を検出する、請求項1、3、4または5のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
【請求項12】
前記第1の検出工程において、前記配列(A)を有する核酸および前記配列(B)を有する核酸を一対のプライマーセットとして前記プライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(A)および(B)を検出する、請求項7または8に記載の細菌を検出する方法。
【請求項13】
前記第2の検出工程において、前記配列(A)を有する核酸および前記配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセット、または、前記配列(B)を有する核酸および前記配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、前記プライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(C)を検出する、請求項7から10いずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
【請求項14】
前記第2の検出工程において、前記配列(A)を有する核酸と前記配列(D)を有する核酸とを一対とするプライマーセット、または、前記配列(B)を有する核酸および前記配列(D)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、プライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(D)を検出する、請求項7から10のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
【請求項15】
前記第2の検出工程において、前記配列(A)を有する核酸および前記配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセット、または、前記配列(B)を有する核酸および前記配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、それぞれのプライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、増幅産物を検出し、前記配列(E)を検出する、請求項7から10のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
【請求項16】
前記第2の検出工程において、
前記配列(A)または(B)を有する核酸および前記配列(C)を有する核酸を一対とするプライマーセット、
前記配列(A)または(B)を有する核酸および前記配列(D)を有する核酸を一対とするプライマーセット、および
前記配列(A)または(B)を有する核酸および前記配列(E)を有する核酸を一対とするプライマーセットを用いて、それぞれのプライマーセットが挟む領域をポリメラーゼチェーンリアクションにより増幅し、それぞれの増幅産物を検出し、前記配列(C)、(D)および(E)を検出する、請求項7から10のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
【請求項17】
前記増幅産物の量を定量し、増産物の量から、試料中に含まれる大腸菌群に属する細菌の量を推定する、請求項9から16のいずれか一項に記載の細菌を検出する方法。
【請求項18】
下記配列(A)から(E)からなる群より選ばれるいずれかの配列を有する核酸である、大腸菌群検出用プローブ。
(A)配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(B)配列番号2の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(C)配列番号3の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(D)配列番号4の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列、および
(E)配列番号5の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
【請求項19】
下記配列(A)を有する核酸および配列(B)を有する核酸を一対とする、ポリメラーゼチェーンリアクション用プライマーセット。
(A)配列番号1の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(B)配列番号2の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
【請求項20】
前記配列(A)または(B)を有する核酸のいずれかの核酸と、
下記配列(C)、(D)および(E)からなる群より選ばれるいずれかの配列を有する核酸とを一対とする、ポリメラーゼチェーンリアクション用プライマーセット。
(C)配列番号3の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列
(D)配列番号4の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列、および
(E)配列番号5の核酸配列またはこれと相補的な核酸配列に含まれる連続した20bp以上の核酸配列

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−261363(P2009−261363A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117212(P2008−117212)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(591267855)埼玉県 (71)
【Fターム(参考)】