説明

大腸菌K−12株JM108の発酵により製造規模でプラスミドDNAを生産する方法

製造規模でプラスミドDNAを生産する方法は、大腸菌K-12株JM108を用いる。プロセスにより、プラスミドDNAの高収量と均一性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に遺伝子治療やDNAワクチン投与に用いられる、プラスミドDNA(pDNA)を生産するための大腸菌(Escherichia coli)細胞の発酵に関する。
はじめに
この10年間の遺伝子治療の臨床的な成功とDNAワクチン投与により、製造規模でのpDNA発酵の要求が起こってきた。
遺伝子治療は、哺乳動物細胞における遺伝子の投与、送達、発現により疾患を治療又は予防するものある。遺伝子治療の最終的な目標は、遺伝子を付加、修正又は置換することによって遺伝性疾患と獲得性疾患の双方を治療することである。基本的には、これらの目標を達成するために2つのタイプの遺伝子治療ベクター、即ち、非活性化ウイルスに基づくウイルスベクターとプラスミドDNAに基づく非ウイルスベクターがある。本発明は非ウイルスプラスミドDNAの生産に関する。
抗原をエンコードしているpDNAの筋内注射が、体液性と細胞性双方の免疫応答を誘発することが証明されたので、裸のプラスミドDNAが特に重要になってきた。
プラスミドDNAを製造するための発酵プロセスの効率は、容積発酵ブイヨン当たり(容積測定収量)もバイオマスアリコート当たり(比収量)もpDNAの高収率を特徴とする。本発明の意味において、収率は、容積又は細胞質量当たりのプラスミドDNAの濃度である。高収率において得られる以外に、プラスミドは、その無傷形態、共有結合閉環状(ccc)形態又はスーパーコイル形態で存在しなければならない。本発明の意味において、ccc形態の割合は、“プラスミド均一性”と呼ばれる。開環状(oc)、線状、二量体又は多量体のような他のプラスミド形態の濃度は、精製されたプラスミドバルクでは最少限まで減少されなければならず、従って、発酵の間、必要とされない。
治療用プラスミドは、3つの不可欠な部分、即ち、真核生物プロモーター、たいていはサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターの制御下の治療用遺伝子、原核細胞における自律増殖のための複製開始点(ori)、及び選択マーカー、通常は抗生物質耐性遺伝子を含有する。治療用遺伝子は、その臨床と薬用の関連を考慮して選ばれ、oriと選択マーカーが、特に発酵の間、プラスミド生産に重要な役割を果たす。治療用プラスミドを構築するために、重要な因子は、細胞当たり多数のプラスミドコピーに複製する複製開始点の選択である。最も治療的なベクターは、ColE1型oriをもっている。pBR322から得られるColE1由来を有するプラスミドは、細胞当たり50-100プラスミドのコピー数に達することができ、pUCから得られるプラスミドは、数百のコピー数に達することができる。
抗生物質の選択マーカーと抗生物質の使用は、プラスミドを収容する細胞の形質転換と選択の間、必要である。しかしながら、抗生物質の選択圧は、工業的製造の間、避けなければならない。それ故、プラスミド損失のないベクターの安定な増殖を可能にする発酵プロセスを開発することが望ましい。
【背景技術】
【0002】
細菌のホスト菌株の選択は、pDNAの発酵のために考慮されることを必要とする重要な因子であることがわかった。望ましいホスト表現型は、高細胞密度に増殖する能力、高プラスミドコピー数を達成する能力、最少限のプラスミドを含まない細胞を作成する能力、プラスミドの遺伝子修飾の最少限の可能性を有する能力、主にスーパーコイルプラスミドを作製する能力、及び共通の精製手順と適合する能力を有する。
大腸菌のほとんどの菌株が、原則として、pDNAを増殖するのに適しているが、特定のホスト菌株の選択は、回収されたプラスミドの収量と品質について有意な影響を有することがわかった(Schoenfeld et al., 1995; Schleef, 1999)。現在、pDNAを製造するために用いられる細菌株に理想的である遺伝子型又は表現型特性について一致したものがない。pDNA製造の目的でホスト菌株を最適化することに関して発表された研究もほとんどなく、制御された発酵において異なる菌株の挙動を示す比較研究からデータが利用できない。ホスト菌株の特性が問題のプラスミドにしばしば左右されるので、数種のホストの経験的評価は、異なるプラスミドを用いた場合、かなり異なる結果を示すものである(Durland and Eastman, 1998)。
菌株が示す表現型は、その具体的な遺伝子型の結果、即ち、それがもつ特定の遺伝子の突然変異である。多くの遺伝子突然変異は、pDNAの製造に影響をもつことができることが提唱された(Durland and Eastman, 1998)。望ましい遺伝子型としては、プラスミドの構造的完全性を確実にするマーカー又は増強されたプラスミド複製が高められるために収量を増加するそのようなものが含まれる。
大腸菌DH5αは、プラスミドDNAの発酵に頻繁に用いられている菌株である(O´Kennedy et al., 2003; 国際出願第02/064752; O´Kennedy et al., 2000; 国際出願第99/61633号)。この菌株については、高均一性(>90%がスーパーコイル)を有するpDNAの高容積測定収量(70〜230mg/lの範囲にある)が得られた(国際出願第02/064752号; 同第99/61633号)。しかしながら、O´Kennedy et al. (2003)には、発酵戦略によっては、DH5αから分離されるpDNAは、一貫して50〜70%だけがスーパーコイルであることが示された。低程度の超ら旋性もまた、菌株DH10Bによって見られた。100〜220mg/lの高pDNA収量がフェド・バッチ発酵で示されたが、開環状又は鎖状体(二量体、多量体)プラスミド形態の形成が大腸菌DH10Bから得られるプラスミドDNAについて報告されている(Lahijani et al., 1996; Chen et al., 1997)。
他の菌株は、pDNAの収量を増加することからみて、しかしながら、治療使用のためのプラスミドDNAの製造が考えられずに調べられた(例えば、大腸菌CP79とCP143 (Hofmann et al., 1990)又は大腸菌HB101 (Reinikainen, 1989)。
政府当局が一貫性と治療の理由のためにスーパーコイルpDNAを要求するので(CBER (1996); WHO (1998); EMEA (2001))、そのスーパーコイル形態以外の形態で相当量のプラスミドを生産するホストは不利である。
ホスト菌株によって影響されるプラスミドDNAの発酵において重要な問題は、更に、集められたバイオマスにおけるpDNAの含量、即ち、pDNA比収量である。現在の最新技術による典型的なプラスミド比収量は、細胞乾燥質量1グラム当たり2〜10mgで変化する。アルカリ細胞溶解のための緩衝液容積が一定のバイオマスアリコートに基づくので、高pDNA比収量はpDNAの精製で特に有利である - 高pDNA比濃度にはより小さい緩衝液容積が必要であり、結果として、細胞溶解バルクのpDNA濃度が高くなり、プロセス時間が短くなる。
従って、pDNA生産に理想的な特性を有する細菌ホストを同定することが求められている。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、プラスミドDNA、特に治療用プラスミドDNAの発酵のためのホスト菌株として、大腸菌K-12株JM108(以後、“JM108”と呼ぶ)又はこの菌株の誘導体の製造規模での使用に関する。
JM108又はその誘導体の有利な特性は、発酵プロセスから独立している。本発明の実験において、JM108の優位性は、異なる発酵方法に対して示された(バッチ及びフェド・バッチ発酵; 特定及び半特定培養液の使用)。
pDNAの製造においてJM108又はその誘導体の使用は、ある種のプラスミドタイプに限定されず、あらゆるプラスミドとも組み合わせることができる。好ましくは、pUC複製開始点を有するプラスミドが用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
大腸菌株K-12 JM108 (ATCC No.47107; DSMZ No.5585)は、菌株DH1から得られる大腸菌JM106の直接後代である。JM108は、最初はコスミドライブラリのためのホストとして意図されたものである(Yanisch-Perron et al., 1985)。JM108は、以下の遺伝マーカー(即ち、特異的突然変異): F-, recA1, endA1, gyrA96, thi-1, hsdR-17, supE44, relA1, λ-及びΔ(lac-proAB)を有する(Yanisch-Perron et al., 1985)。
従って、JM108は、組換えタンパク質RecAの欠損を有し、制限酵素エンドヌクレアーゼA(EndA)と、タイプIII制限修飾系(HsdR)の一部を欠いている。更にまた、JM108は、relA遺伝子の突然変異を有する。この遺伝子は、グアノシン四リン酸(ppGpp)の合成に関与し、そのシグナル分子がアミノ酸の制限に対して細胞におけるいわゆる緊縮応答の引き金となる。遺伝マーカーgyrA96は、DNAギラーゼ(トポイソメラーゼII)の突然変異を表し、その酵素がDNAのスーパーコイル形成状態に影響する。
JM108が作成されて以来、分子生物学のためにだけしか用いられなかった。その適用は、組換えタンパク質発現(Herman and McKay, 1986; Riegert et al., 1998)、コスミドライブラリの調製(Kakinuma et al., 1991; Omura et al., 2001)、トランスポゾン促進DNA配列決定(Ikeda et al., 1999)であった。10の大腸菌株の実験室規模の比較においては、JM108の明らかな優位性が認められなかった(Schleef, 1999)。
本発明の実験においては、JM108をpDNA生産のためのホスト菌株として他の候補菌株と共に試験した。驚くべきことに、JM108が、容積と特異性の双方に関して、pDNAの並外れて高い収量を生じる能力を有することがわかった。他の菌株と比較してJM108の特別な特徴は、細菌のバイオマスのプラスミドが非常に高い速度で蓄積することである。更に、プラスミド均一性(ccc%、スーパーコイル)は90%を超えるccc形態で一貫して高い。更にまた、当該技術において用いられる菌株による場合のように、ccc pDNAの分解が発酵の終わり頃に起こらない。これらの驚くべき特性がJM108をpDNA製造のために理想的なホストにし、最新技術のホスト菌株と比較してその性能が優れている。
【0005】
JM108の突然変異がJM108にユニークでない(例えば、マーカーrecA、endA、gyrA、relAを菌株DH1、DH5、DH5α、XL1ブルーと、更に、マーカーhsdRをDH1、DH5、DH5αと共有する)ので、JM108の良好な性能は意外であり、予測することができず、その突然変異によって簡単に説明することができない。
本発明は、問題の遺伝子をもつプラスミドを含有する大腸菌細胞を発酵させることによって製造規模でプラスミドDNAを生産する方法であって、前記細胞が、大腸菌K 12菌株JM108又はその誘導体の細胞である前記方法に関する。
本発明によれば、“発酵”という用語は、生物薬剤業界において既知の方法に従って制御された工業的発酵槽(バイオリアクタ)においてホスト細胞を培養することに関する。多量のプラスミドDNAを生産する発酵におけるJM108の使用によって現在の最新技術の大腸菌ホスト菌株の使用より優れた性能が得られる。pDNAの製造は、典型的には、大容積の発酵を行うことによって達成される。本発明の意味における“製造”と“製造規模”という用語は、5リットルの培養液の最少限容積による発酵と定義される。
JM108は、他の菌株の発酵から報告される結果を超えるpDNA容積測定収量と比収量を一貫して示すことがわかった。
本発明の方法によって得られる高pDNA比収量は、発酵生産性に有益なだけでなく、続いてのアルカリ細胞溶解にも有益である。この理由は、アルカリ細胞溶解のための緩衝液容積が常にバイオマスアリコートに基づくことである。それ故、バイオマスにおける高プラスミド含量(即ち、同じプラスミド量でより少ないバイオマス)によってアルカリ溶解物のプラスミド濃度が高くなり且つ嵩容積が減少する。
更にまた、JM108を用いて発酵から得られたプラスミドの均一性が著しく高く、スーパーコイル形態で≧90%の収量であることがわかった。プラスミドは、発酵の終わり頃に減少しないか又は弱い傾向だけを示した。これらの驚くべき知見は、JM108をpDNA工業生産のための理想的なホスト菌株にする。
【0006】
本発明の意味において、“JM108”は、このように、以下の遺伝子型: F-、recA1、endA1、gyrA96、thi-1、hsdR-17、supE44、relA1、λ-及びΔ(lac-proAB)によって定義されるJM108菌株に関する。本発明の意味における“JM108誘導体”の定義は、JM108細胞を遺伝的に修飾することによって得られるあらゆる大腸菌菌株を包含する。JM108誘導体は、更に1以上の特定された又は特定されない突然変異、例えば、1以上の遺伝子の完全な又は部分的な欠失又は分裂を有してもよく、及び/又は更に1以上の遺伝子をもっていてもよい。JM 108誘導体は、標準法に従って、例えば、Datsenko and Wanner, 2000に記載されるように挿入及び/又は遺伝子の不活性化によってJM108から得ることができる。
pDNA生産のための大腸菌JM108又はその誘導体の適用は、発酵方法に関して限定されず、バッチプロセスでもよく、フェド・バッチプロセスでもよい。
第一実施態様においては、本発明の方法はバッチ方式で行われる。
バッチプロセスは、細胞の培養に必要な栄養素は全て培養液に含有される発酵方法であり、発酵の間に栄養素が更に供給されない。本発明に有効であるバッチ発酵プロセスの例は、Lahijani et al., 1996; O´Kennedy et al., 2003; 国際出願第02/064752号に示されている。このようなバッチプロセスにおいては、プラスミド収容大腸菌細胞(既知のプロセスはDH5α又はDH10Bを用いる)は、1リットル当たり2.6〜22g細胞乾燥質量に達することがわかった、ある種のバイオマスレベルに到達するまで制御された発酵槽内で培養される。適用された培養液は、化学的に特定されてもよく(国際出願第02/064752号に記載される)、半特定されてもよく(Lahijani et al., 1996; O´Kennedy et al., 2003)、発酵の間、更に栄養素化合物が送られない。以前に記載されたバッチプロセスのプラスミド収量は、8.5〜68mg/lの範囲であった。
他の実施態様においては、本発明の方法は、フェド・バッチプロセスとして行われる。フェド・バッチプロセスにおいては、バッチ培養相後、栄養素が更に培養物に供給され(送られ)、高バイオマスが得られる。フェド・バッチプロセスは、具体的な供給方法に関して限定されない。栄養素の供給は、連続又は不連続方式で行うことができる。供給方法は、時間プロファイル、例えば、直線的に一定、直線的に増加、段階的増加又は指数関数的に従ってあらかじめ定義されていてもよい(Lahijani et al., 1996; O´Kennedy et al., 2003; 国際出願第96/40905号)。本発明の他の実施態様においては、所定のパラメータに左右される、例えば、バイオマス、溶存酸素(国際出願第99/61633号)又はpHと溶存酸素(Chen et al., 1997)に依存したフィードバックアルゴリズムが適用されてもよい。
【0007】
pDNA生産のための大腸菌JM108又はその誘導体の適用は、発酵の間に用いられる培養液のタイプに関して限定されない。培養液は、複合培地化合物(例えば、酵母エキス、大豆ペプトン、カザミノ酸)を含有して半特定されてもよく、複合化合物を含まずに化学的に定義されてもよい。
大腸菌JM108又はその誘導体の使用は、ある種のプラスミド又はプラスミドタイプにも、問題の遺伝子、例えば、治療用遺伝子によって特定されるプラスミドのためにも限定されない。好ましい実施態様においては、本発明の方法に従ってJM108又はその誘導体を発酵させることにより生産されるプラスミドは、遺伝子治療又はDNAワクチン投与に用いるのに意図されるものである。
本発明の適用に適したプラスミドは、例えば、pBR322、pUC18、pUC19、pcDNA3(Invitrogen)から得られる。
本発明の好ましい実施態様においては、ColE1複製開始点を有するプラスミドが用いられる。ColE1プラスミドの利点は、アミノ酸の制限時に、アンチャージトランスファRNA(tRNA)が、ColE1複製起点と相互作用し、プラスミドの複製速度が促進されることである(Wrobel and Wergrzyn, 1998)。
本発明の好ましい実施態様においては、pUCタイプのColE1由来プラスミド(最初はVieira and Messing, 1982, Yanisch-Perron et al., 1985によって記載された)が用いられる。pUCプラスミドは、コピー数減少タンパク質Romの突然変異を有し、最初のColE1タイププラスミドによって得られるよりプラスミドコピー数が大きい。rom-プラスミドの複製増強効果が特に低比増殖速度で起こることがわかったので(Atlung et al., 1999)、pUCプラスミドと低比増殖速度、例えば、約0.05〜0.15h-1での培養の組合せが本発明には好ましい。
大腸菌JM 108又はその誘導体の培養によって、本発明の方法に従って得られるプラスミドDNAは、回収され、既知の方法に従って精製される。プラスミド精製は、典型的には、集められた細胞量の崩壊から、通常はアルカリ細胞溶解によって開始する。それによって、細胞を清浄剤と共に高アルカリpH 値に供し、その結果、細胞が溶解し、プラスミドが遊離する。酢酸緩衝液による続いての沈殿工程の際に、タンパク質とゲノムDNAが沈殿するが、プラスミドDNAは清澄化された上清に残る。続いての精製工程は、主にろ過(限外ろ過、ダイアフィルトレーション)とクロマトグラフィ技術を含む。クロマトグラフィ法は、例えば、疎水的相互作用、イオン交換又はゲルろ過クロマトグラフィより選ぶことができる。
【実施例】
【0008】
予備実験1
3つの異なるプラスミドを収容する異なる大腸菌ホスト菌株の振盪フラスコ培養
本実験では、数種のプラスミドをもつホスト菌株を典型的なラボ規模培養において比較した。40mlの改質LB培地(10g/lの大豆ペプトン; 5g/lの酵母エキス; 10g/lのNaCl)を含有する100mlのバッフル付き振盪フラスコにおいて、7つの異なるプラスミド収容大腸菌株を、初期の安定期まで培養した(37℃、回転振盪機300 rpm)。菌株は、治療用プラスミドpRZ-hMCP1 (4.9kb、ヒト単核細胞化学誘引物質タンパク質1をコードしている((Furutani et al. (1989)、pGS-hil2-tet (4.3kb; ヒトインターロイキン2をコードしている)及びpRZ-hGM-CSF (5.4kb; ヒト顆粒球単核細胞コロニー刺激因子をコードしている)を収容するものであった。培養を、増殖(光学濃度、OD550)、プラスミド容積測定収量(mg pDNA/l)、プラスミド比収量(mg/OD*L))及びプラスミド均一性(スーパーコイル%、ccc)について確認した。
pDNA分析のために、細胞アリコートを、最初はBirnboim and Doly (1979)によって記載された変更したアルカリ細胞溶解法によって溶解し、pDNA収量と均一性を、陰イオン交換高性能クロマトグラフィによって求めた(Tosoh Biosep DNA-NPR-DEAEカラム; pH 9の20mMトリスで平衡化及び装填; 1M NaClを含有する20mMトリスで分離及び勾配溶離;流速0.8ml/分、25℃; 260nmのUVダイオードアレイ検出器によるpDNAの検出)。この分析法を、ここで示される他の実施例における全てのpDNA分析に適用した。
図1は、3つのプラスミドを収容する7つの菌株の特定pDNAを示すグラフである。振盪フラスコにおいて培養した場合、菌株のいずれもが、試験した全てのプラスミドの明らかな優位性を示さなかった。pDNA容積測定収量を比較した場合、同様の結果が得られた。この実施例から、標準振盪フラスコ法で培養した場合、pDNA収量についての菌株JM108の性能は明らかでなかったことが示される。しかしながら、図2において示されるように、JM108のpDNA均一性は他の菌株と比較してかなり高かった。
【0009】
予備実験2
半特定培地(1リットル規模)におけるプラスミドpRZ-hMCP1を収容する異なる大腸菌ホスト菌株のバッチ発酵
1リットル規模の発酵槽において、プラスミドpRZ-hMCP1を収容する9つの菌株(4.9kb、pUC ori、カナマイシン耐性、真核CMVプロモータの制御下にヒト単核細胞化学誘引物質タンパク質1をコードしている)においては、半特定された培養液によるバッチ発酵を行った。この実施例からは、他のホスト菌株と比較してJM108の優位性が示される。
前培養のために、200ml培地を含有する振盪フラスコに、それぞれの菌株の1mlのグリセロール保存液を播種し、1-1.5の光学濃度が得られるまで回転振盪機(37℃、300rpm)において培養した。前培養培地は、13.5g/lの大豆ペプトン; 7g/lの酵母エキス; 6g/lのグリセロール; 2.5g/lのNaCl; 2.3g/lのK2HPO4; 1.5g/lのKH2PO4; 及び0.25g/lのMgSO4・7H2Oからなるものであった。前培養物を、次の組成: 13.5g/lの大豆ペプトン; 7g/lの酵母エキス; 15g/lのグリセロール; 0.5g/lのクエン酸三ナトリウム; 1.2g/lのKH2PO4; 2.2g/lのNa2HPO4・12H2O; 5g/lの(NH4)2SO4; 4g/lのNH4Cl; 0.8g/lのMgSO4・7H2O; 0.26g/lのCaCl2・2H2O; 1.5ml/lの微量元素溶液; 及び5ml/lの塩酸チアミン溶液(1%)の培地を含有する発酵槽(1%v/vのバッチ培地)に播種した。微量元素溶液は、27g/lのFeCl3・6H2O; 8g/lのZnSO4・7H2O; 7g/lのCoCl2・6H2O; 7g/lのMoNa2O4・2H2O; 8g/lのCuSO4・5H2O; 2g/lのH3BO3;及び5g/lのMnSO4・7H2Oを含有した。培養温度は37℃であり、pHを25%w/v NaOHと25%w/v H2SO4で7.0に制御した。>20%飽和の溶存酸素張力(DOT)を、1vvmの一定の通気速度で、必要ならば、撹拌速度(500-1000rpm)の増加によって維持した。光学濃度を測定することによって求めた培養物が3-4時間定常期においてある場合、培養を終了させた。
表1は、これらの発酵の結果を示すものである。JM108は低バイオマスだけ増殖したが、プラスミド容積測定収量は、112mgのpDNA/リットルが最高であった。このことは、少量のバイオマスが下流処理の間、大規模なアルカリ細胞溶解を単純化するので、プラスミドDNA生産に有利である。この増殖活性の減少によって8.2mg/OD*Lの特別に高いpDNA比収量が得られた(約30mgのpDNA/g細胞乾燥質量に対応する)。
【0010】
表1
数種の大腸菌ホスト菌株のバッチ発酵の増殖、pDNA収量及びpDNA均一性の結果

【0011】
図3においては、全ての菌株の特定pDNAの生成過程が示される。菌株JM108の使用の具体的な利点は、他の菌株と比較して著しくバイオマスでプラスミド含量を超える高プラスミド複製活性である。JM108のこの驚くべき挙動は、制御された発酵に特異的であり、振盪フラスコ培養には見られなかった。更に、スーパーコイルpDNA(ccc形態)のパーセントは、全発酵時間全体で90%を超えた。例外的な収量データと組合わせて、このことはJM108を他の菌株より性能の高いpDNA生産に優れたホスト菌株にする。
【0012】
実施例1
異なる製造規模での半特定培地における大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のバッチ発酵
実施例2と同じ方法で、発酵を20リットルと200リットルの製造規模で行った。双方の製造規模により、高容積測定収量と比収量を得たことを表2に示す。更に、pDNA均一性は、一貫して≧90%のスーパーコイル形態であった。本実施例から、JM108の適用がある種の発酵規模に限定されないことが示される。











【0013】
表2
20リットルと200リットルの製造規模での半特定培地による大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のバッチ発酵(発酵の最後からのデータ)

【0014】
図4に200リットルの#2の発酵のパラメータの時間経過示す。ゲノム当たりのプラスミド分子の数として定義されるプラスミドコピー数は、発酵の終わり頃に600まで増加した。このことは、特定pDNAの経過と対応した。図5に、高pDNA均一性を示す、発酵200 #2の最後からの分析クロマトグラム(陰イオン交換HPLC)を示す。
【0015】
予備実験3
化学的特定培地におけるプラスミドpRZ-hMCP1を収容する大腸菌JM108のバッチ発酵
1リットル規模の発酵槽においてプラスミドpRZ-hMCP1を収容する大腸菌JM108によるバッチ発酵を行った。前培養のために、菌株のグリセロール保存液(300μl)を300mlの特定培地を含有する1000mlのバッフル付き振盪フラスコに播種した。これを、300rpmの回転振盪機において37℃で培養した。前培養培地は、以下の通り: NH4Cl 2g/l、MgSO4・7H2O 0.24g/l、グルコース10g/l、L-プロリン0.2g/l、L-イソロイシン0.2g/l、塩酸チアミン1mg/l、クエン酸2g/l、KH2PO4 5.44g/l、Na2HPO4・12H2O 14.38g/l及び微量元素溶液16.7ml/lを構成するものであった。微量元素溶液は、HCl(25%) 14.6g/l、CaCl2・2H2O 0.44g/l、FeSO4・7H2O 0.33g/l、CoCl2・6H2O 0.14g/l、MnSO4・H2O 0.10g/l、CuSO4・5H2O 15mg/l及びZnSO4・7H2O 17mg/lを含有したものである。前培養物がほぼOD = 1の光学濃度に達したときに、発酵槽に移し、発酵を開始した。主な培養バッチ培地は、前培養にあると同じ濃度を有する同じ成分から構成された。温度を37℃で制御した。発酵槽を1vvm(容積培地当たりの毎分通気量)のプロセスエア質量流量で通気した。溶存酸素張力が30%に落ちた場合には、スターラの撹拌速度を増加する(500-1000rpm)ことによってこの設定点に維持した。水酸化アンモニウム(25%)と25%H2SO4の溶液でpHを7.0の設定点に制御した。
培養が定常期に入ったので、培養を更に20時間延長してプラスミド複製過程とプラスミド均一性を観察した。
図6は、増殖をグルコース減少時に停止した場合さえ、プラスミド収量(容積測定収量と比収量)は、なお増加することを示している。82mg/lのpDNA容積測定収量が得られ、比収量は発酵の最後で14mg pDNA/g細胞乾燥質量であった。図7において、本発明の本実施態様における95%ccc形態の優れたpDNA均一性が示されている。
【0016】
実施例2
指数関数的供給アルゴリズムを適用することによる半特定培地の大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のフェド・バッチ発酵
まず予備実験2に記載されるように、半特定バッチ培地において菌株JM108を培養し、続いてバッチ相に指数関数に従って供給することによりフェド・バッチ発酵を行った。規模は、発酵の終わり頃に20リットルの培養ブイヨン容積であった。前培養物とバッチ培養相は、同じ培地組成物と同じ培養条件とともに、実施例2と同一にした。12時間のバッチ培養後、0.1h-1値の比増殖速度μを制御するために供給を開始した。ある時点(Vt)後に添加される供給培地の容積を次の関数に従って算出した。
【0017】
【数1】

【0018】
この関数において、Vtは、供給の開始から算出されるタイムディスタンスt[時間]で添加される供給培地の容積[リットル]である。X0は、供給開始の時点のバイオマス細胞乾燥質量[g]の合計量である。YX/Sはバイオマス収率係数(基質1g当たりの細胞乾燥質量g)であり、CSは供給培地[g/l]における基質(有機炭素源としてのグリセロール)の濃度である。比増殖速度μ[h-1]は、0.1h-1値で設定した。バイオマス収率係数は、グリセロール1g当たりバイオマス0.25gとして推定した。供給開始時のバイオマス量X0は、開始供給時点の光学濃度の測定によって推定した。
供給培地は、全ての必要な栄養素の濃縮溶液とし、以下の通り: 83g/lの大豆ペプトン; 42g/lの酵母エキス; 250g/lのグリセロール; 1.4g/lのクエン酸三ナトリウム; 3.4g/lのKH2PO4; 6.2g/lのNa2HPO4・12H2O; 14.2g/lの(NH4)2SO4; 11.3g/lのNH4Cl; 2.3g/lのMgSO4・7H2O; 0.7g/lのCaCl2・2H2O; 14.2ml/lの塩酸チアミン溶液(1%)及び4.3ml/lの実施例2に記載されるように構成される微量元素溶液を構成するものであった。
図8に示されるように、pDNA比濃度は、バッチ培養相の間、細胞乾燥質量1g当たり20mgを超えるpDNAまで増大した。3g/lの細胞乾燥質量(OD550 = 13の光学濃度に対応する)での供給の開始の際に、この高pDNA比収量は発酵の最後まで維持された。この時点で、容積測定pDNA収量は170mg/lまで増加した。本実施例から、JM108は、高細胞密度に増殖せずに高pDNA容積測定収量と比収量までプラスミドを複製することができることがわかる。このことは、アルカリ細胞溶解と次の精製工程の間に処理されなければならないバイオマスがより少ないという利点を有する。図9は、90%を超えるスーパーコイルpDNA値での全発酵プロセス全体にわたって高プラスミド均一性を維持する際のJM108の利点を示している。
【0019】
実施例3
化学的に定義された培養液と指数関数的供給アルゴリズムを用いることによるプラスミドpRZ-hMCP1(20リットルの発酵槽)をもつ大腸菌JM108のフェド・バッチ発酵
化学的に特定された培養液(即ち、複合培地化合物を含まない)を用いたプロセスにおけるプラスミドpRZ-hMCP1を収容する大腸菌JM108により20リットル規模発酵槽において指数関数的フェド・バッチ発酵を行った。
前培養のために、菌株(300μl)のグリセロール保存液を、300mlの特定培地を含有するバッフル付き1000mlの振盪フラスコに播種した。これを、300rpmの回転振盪機において37℃で培養した。前培養液は、実施例4に記載されるように構成されたものである。前培養物がほぼOD550 = 1の光学濃度に達したときに、発酵槽に移し、発酵を開始させた。主な培養バッチ培地は、前培養物にあるのと同じ濃度を有する同じ成分から構成されたものである。発酵槽は、発酵の開始時に7リットルのバッチ培地を含有した。温度を37℃で制御し、発酵を0.35バールの背圧で操作した。発酵槽を、1vvm(容積培地当たりの毎分通気量 = 7リットル/分)のプロセス空気質量流速で通気した。溶存酸素張力が30%に落ちた場合、それはスターラの撹拌速度を増加する(500-1000rpm)ことによりこの設定点に維持した。撹拌速度の増加がDOを維持するために充分でなかった場合には、空気の酸素濃度を純酸素で強化した。発酵の全体に窒素源として付随して役立った水酸化アンモニウム(25%)溶液でpHを7.0±0.2の設定点に制御した。必要ならば、pHを25%H2SO4で更に制御した。
10時間のバッチ培養後、バッチ培地のグルコースを使い果たした。このことは、急速なオフラインの測定法によって求めた(Yellow Springs Glucose Analyzer, YSI 2700 Select)。グルコースの減少は、指数関数的供給相の開始のシグナルとして役立った。連続指数関数的供給を、グルコース減少の時点でのバイオマスに基づき(光学濃度をによって推定した)発酵槽のプロセス制御システムによって制御した。供給培地は、以下の通り: グルコース300g/l; MgSO4・7H2O 7.2g/l; L-プロリン6g/l; L-イソロイシン6g/l; 塩酸チアミン30mg/l; クエン酸2g/l; KH2PO4 5.4g/l; Na2HPO4・12H2O 14.4g/l; CaCl2・2H2O 220mg/l; FeSO4・7H2O 170mg/l; CoCl2・6H2O 72mg/l、MnSO4・H2O 51mg/l、CuSO4・5H2O 8mg/l及びZnSO4・7H2O 9mg/lを構成したものである。0.1h-1の所定の比増殖速度μを得るように供給速度を選んだ。供給速度の計算は、実施例5と同様の方法で行った。
図10においては、プラスミド容積測定収量と比収量及び増殖曲線が示されている。更に、20時間の発酵時間で、pDNA比収量が細胞乾燥質量1g当たり最高44mgのpDNAに達し、これは例外的に高い値である。発酵の終わり頃に、比収量は15mg/g DCWに減少した。比収量と容積測定収量のこの特徴的経過の利点は、発酵の終了のためにいくつかの選択を選ぶことができることである。最高含量のpDNAを有するバイオマスを得なければならない場合には、20時間後に発酵を終了させることができ、300mg/lの容積測定収量が得られる。プロセス目標が最高容積測定収量である場合には、発酵を40時間より延長することができ、約600mg/lが得られるが、比収量が少ない。この発酵のプラスミド均一性は、発酵の終わり頃に>89%cccに維持された。
この実施例から、特に、特定培地が指数関数的供給と組合わせて用いられた場合に、菌株JM108がpDNA収量と均一性について最新技術のホスト菌株と比較して優れていることがわかる。
【0020】
実施例4
プラスミド発酵における最新技術の大腸菌ホスト菌株と菌株JM108との比較
表3において、実施例1〜3に記載される発酵から得られたデータを、従来技術の菌株とJM108間で比較した。全ての発酵プロセスにおいて、JM 108が容積測定収量と比収量について従来技術の菌株より優れていることを示すことができた。更に、JM108で得られたpDNA均一性は、89%ccc未満にならなかった。
【0021】
表3
プラスミドDNAを生産する発酵における最新技術の大腸菌ホスト菌株とJM108との比較






*) 培養の種類: SF...振盪フラスコ培養(B)...バッチ発酵; FB...フェド・バッチ発酵
**) 培地: D...化学的に特定された、合成; SD...半特定された; C...複合体
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】典型的な振盪フラスコ培養(LB培地)から得られた異なるプラスミドをもつ数種の菌株のpDNA比収量。
【図2】典型的な振盪フラスコ培養(LB培地)から得られた異なるプラスミドをもつ数種の菌株のプラスミド均一性(ccc形態%)。
【図3】バッチ発酵(半特定培地)におけるプラスミドpRZ-hMCP1を収容する数種のホスト菌株のpDNA比収量の時間経過。
【図4】200リットル(半特定培地)の製造規模での大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のバッチ発酵のプラスミドと増殖パラメータ。
【図5】200リットル(半特定培地)の製造規模での大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のバッチ発酵の最後から得られたプラスミド試料の分析HPLCクロマトグラム。
【図6】特定培地における1リットル規模での大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のバッチ発酵のプラスミドと増殖パラメータ。
【図7】特定培地における1リットルの規模での大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のバッチ発酵の最後から得られたプラスミド試料の分析HPLCクロマトグラム。
【図8】20リットル(半特定培地)の製造規模での大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のフェド・バッチ発酵のプラスミドと増殖パラメータ。
【図9】20リットル(半特定培地)の製造規模での大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のフェド・バッチ発酵のpDNA均一性の時間経過。
【図10】20リットル(特定培地)の製造規模での大腸菌JM108(pRZ-hMCP1)のフェド・バッチ発酵のプラスミドと増殖パラメータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
問題の遺伝子をもつプラスミドを含有する大腸菌細胞を発酵させ、細胞を崩壊させ、得られたプラスミドDNAを分離精製することによって、製造規模でプラスミドDNAを生産する方法であって、前記細胞が大腸菌K-12株JM108の細胞又は大腸菌K-12株JM108の遺伝的に修飾されている細胞によって得られた細胞である前記方法。
【請求項2】
前記細胞をバッチ方式で発酵させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記細胞をフェド・バッチ方式で発酵させる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記細胞を半特定培養液において発酵させる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記細胞を化学的に特定された培養液において発酵させる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記細胞がColE1複製開始点を有するプラスミドを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記プラスミドがpUCタイプのプラスミドである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
問題の遺伝子が治療用遺伝子である、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−532102(P2007−532102A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506712(P2007−506712)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003600
【国際公開番号】WO2005/098002
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(504135837)ベーリンガー インゲルハイム オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (10)
【Fターム(参考)】