説明

大電流ブッシング用コネクタ

【課題】電力ケーブルを容易に扱えるようにし、利用者に対して高い安全性を与え、設計も簡単である大電流ブッシング用コネクタを提供する。
【解決手段】
第1の主軸13を有する少なくとも一本のピン12を含む大電流ブッシング用コネクタ10は、第2の主軸16を有するソケット15とこのソケット15を少なくとも部分的に覆う第1の絶縁体21とを含む第1の組立体を備えている。本発明では、その第1の組立体はソケット15の第2の主軸16に中心を置く孔23を含むキャップ22と、このキャップ22を第1の絶縁体21に取り付けるロック手段24とを備えている。コネクタ10は、第2の絶縁体28とこの第2の絶縁体28を電気ブッシング11に取り付ける固定手段29とを含む第2の組立体を備え、前記の第2の絶縁体28は前記のピン12を包囲し、そしてソケット15にピン12を挿入するとき第1の絶縁体21を受入れる、第1の主軸13に中心を置く少なくとも一つの孔を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大電流ブッシング用コネクタに係るものである。
【背景技術】
【0002】
超高真空下で層をつくるのに使用されている現在の技術の一つは分子ビーム・エピタクシ(MBE)と呼ばれている。形成しようとする層の構成成分を含む材料を金属もしくは半導体基板へ運んでそこに吸着させることによってエピタキシヤル層を前述の技術によりつくることができる。汚染を免れたフイルムを得るためこの材料の蒸着は真空室内で、好ましくは超高真空室、すなわち10−9ミリバールよりも低い圧力の室内で行われる。
【0003】
この分子ビーム・エピタクシを行うための最も新しい材料源はナッセン・タイプ(Knudsen-type)のソースからの蒸発である。それはジュール熱で加熱される炉であり、例えば円筒もしくは円錐形をしていて窒化ホウ素もしくは高純度のグラファイトからできている。
【0004】
ジュール効果は例えばフイラメントのような抵抗素子を使うことにより得るのが普通である。ある種の材料を蒸発させるには1000℃を越える温度を必要とし、このことはその抵抗要素に大電流を注入することを意味している。それ故、一連の要素はその抵抗要素に必要とされる電流を伝送する必要がある。例えば、少なくとも50A程度の大電流ブッシング1は真空室内の抵抗要素と発電機を配置した真空室外とを結ぶリンクを構成することになる(図1)。35Aと50Aとの間の電流に対しては例えば、10mmの断面積の電気ケーブル2がそのような発電機と電気ブッシング1との間のリンクをつくる。銅ラグ(耳状端子)の電気接続3を使って大電流ブッシングと電力ケーブル2との間を接続する。
【0005】
しかし、このタイプの接続は電力ケーブル2の扱いを容易なものとしない。このため、例えばセルを替えるため電力ケーブル2を取り外し、取り付けるにはラグ3のところでネジ5を締めたり、緩めたりしなければならない。そのとき、電気ブッシング1は捩じられてその結果電気ブッシング1の締め付けを緩くし勝ちである。さらに、ラグ取り付け3にかかる作用が利用者の電気的な安全問題を生じる。この取扱いが絶縁物の除去を必要とするからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電力ケーブルを容易に扱えるようにし、利用者に対して高い安全性を与えながら、電導性に優れ、設計が簡単でありそして経済性もよい大電流ブッシング用コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この観点において本発明は、第1の主軸を有する少なくとも一本のピンを含む大電流ブッシング用コネクタに係り、それは第2の主軸を有するソケットを含む第1の組立体と第1の絶縁体とを備えており、前記のソケットは電気ケーブルに取り付けるためのものであり、そして前記の第1の絶縁体はソケットを少なくとも部分的に覆うためのものである。
【0008】
本発明に従って、
‐第1の組立体はソケットの第2の主軸に中心を置く孔を含むキャップと、このキャップを第1の絶縁体に取り付けるロック手段とを備え、第1の絶縁体に取り付けるとキャップは前記の絶縁体を部分的に覆うようになっており、
そして
‐コネクタは、第2の絶縁体とこの第2の絶縁体を電気ブッシングに取り付ける固定手段とを含む第2の組立体を備え、この第2の絶縁体は前記のピンを包囲し、そしてソケットをピンに挿入するとき第1の絶縁体を受ける、第1の主軸に中心を置く少なくとも一つの孔を含んでいる。
【0009】
様々な実施例では以下の特徴を単独にもしくは技術的に可能な組合せにおいて有する。
‐第1と第2の絶縁体と、キャップとは剛性で、絶縁プラスチック材からつくられている。
‐その材料はポリエーテル エーテル ケトンである。
‐ロック手段は平頭ネジを含む。
‐固定手段はボルトを含む。
‐第1の絶縁体の外面と、キャップと第2の絶縁体の内面とは少なくとも部分的にネジをつけられていて一方ではキャップを第1の絶縁体にねじ込み、そして他方では第2の絶縁体へ第1の絶縁体をねじ込めるようにしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図を参照して本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、大電流ブッシング11へ電力ケーブルを電気的に結合するコネクタ10を提供することを目的としている。これらのブッシング11はよく知られており、閉じた空間内に配置された素子とその空間外の発電機との間を電気的に接続するものである。このような電気ブッシング11は第1の主軸13を有し、直径がdである少なくとも一本のピン12を含んでいる。実施例ではこのピン12はフランジ14へはんだ付けされていて、真空系に取り付けられる。しかし、本発明のコネクタ10はこの実施例に限定されるものではなく、一般の大電流ブッシング11を対象とするものである。
【0012】
図2を参照する。コネクタ10は第2の主軸16を有するソケット15を含む第1の組立体を備えている。このソケット15は電気ケーブル17へ典型的には締め付けによって取り付ける。それの部分19は第2の主軸16に中心を置く直径dの孔20を含み、ケーブル17と電気ブッシング11との間を電気的に接続すると孔20は電気ブッシング11のピン12を包囲する。ソケット15は導電性であり、そして接触抵抗の小さい材料からつくられており、その材料は高純度の銅、銀であるのが好ましい。第1の組立体もソケット15を少なくとも部分的に覆う第1の絶縁体21を含んでいる。
【0013】
好ましい実施例ではこの絶縁体21は、ピン12もしくは電力ケーブル17を受けるのに使う孔18,20を除いてソケット15全体を覆う。
【0014】
さらに、第1組立体は、ソケットの第2の主軸16に中心を合わせた第1の孔23を含むキャップ22と、このキャップ22を第1の絶縁体21へ取り付けるロック手段24を備えている。「キャップ」とは底26と一体の壁25を含む絶縁材料の部品を意味する。この部品の内径Dは少なくとも第1の絶縁体21の外径に等しくなっていてキャップ22を第1の絶縁体21へ固定した後は絶縁体21を部分的に覆っている。
【0015】
キャップ22が第1の絶縁体21に面している第2の円筒状の孔27を備えているのが好ましく、そしてその場合はロック手段24は平頭ネジを含んでいる。キャップ22は第1の絶縁体21の外面に平頭ネジへ押しつけられる。
【0016】
第1組立体の取り付け法を説明する。電力ケーブル17にソケット15を圧着する前にキャップ22の第1の孔23にケーブルを通す。ソケット15を圧着するとキャップ22を第1の絶縁体21に取り付けてソケット15を覆い、ロック手段24をねじ込んだ後固定する。
【0017】
コネクタは第2の絶縁体28とこの第2の絶縁体を電気ブッシングに取り付ける固定手段29とを備えている。これらの固定手段29は例えばボルトである。
【0018】
第2の絶縁体28はピン12を包囲し、そして第1の主軸13に中心を置く少なくとも一つの孔を含み、この孔の内径d’はソケット15にピン12を挿入した後キャップ22まで第1の絶縁体21を包囲する。
【0019】
好ましい実施例では第1と第2の絶縁体21,28とキャップ22とは剛性の絶縁プラスチック材料でできており、その材料はポリエーテル エーテル ケトン(PEEK)もしくはVESPELなどのポリイミドである。
【0020】
実施例では第1の絶縁体21の外側面とキャップ22と第2の絶縁体28の内面とに少なくとも部分的にネジを切ってある。コネクタを組立てるときキャップ22を第1の絶縁体21にねじ込んでその絶縁体21を部分的に覆う。第1の絶縁体21は、電力ケーブル17を電気ブッシング11に接続したときそれ自体第2の絶縁体28にねじ込まれていって一体接続となっているのが好都合である。
【0021】
別の実施例では、キャップ22の内径Dは第1の絶縁体21の外径よりも小さく、キャップ22が第1の熱絶縁体21に食い込むようにする。
【0022】
第2の絶縁体28の内径d’は第1の絶縁体21の外径と等しいか、もしくは小さくなっていて、第1の組立体が第2の組立体に自由に抜き差しされるようになっている。
【0023】
図3の本発明の実施例ではコネクタが蒸着源30に電気接続をつくっている。このフランジ31も熱電温度計を介しての温度計測器32を含んでいる。
【0024】
電気ブッシング11に第2の絶縁体28を取り付ける固定手段29は、大電流ブッシング11のフランジ14を蒸着源30の支持フランジへ取り付けるネジとボルトから成る。
【0025】
上記のコネクタは、大電流の注入、それ故大電流ブッシングの使用を必要とするどのようなシステムにも使用して有利である。ポリエーテル エーテル ケトンの絶縁体の耐熱性は良好であり(20,000時間以上250℃)、そして本発明のコネクタは高温に曝されるシステムに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の大電流ブッシング用伝導銅ラグフイッテイングを含む電力系を表す略図である。
【図2】本発明の大電流ブッシング用コネクタの略図である。
【図3】本発明の実施例によるコネクタを含む、坩堝内の抵抗素子に電力を供給する一連の素子を表す略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 大電流ブッシング
2 電力ケーブル
3 ラグ
4 蒸着源
5 ネジ
10 コネクタ
11 大電流ブッシング
12 ピン
13 第1の主軸
14 フランジ
15 ソケット
16 第2の主軸
17 電気ケーブル
18 孔
19 (ソケットの)部分
20 孔
21 第1の絶縁体
22 キャップ
23 第1の孔
24 ロック手段
25 壁
26 底
27 第2の孔
28 第2の絶縁体
29 固定手段
30 蒸着源
31 フランジ
32 温度計測器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主軸13を有する少なくとも一本のピン12を含む大電流ブッシング用コネクタであって、第2の主軸16を有するソケット15と第1の絶縁体21とを含む第1の組立体を備え、前記のソケット15は電気ケーブル17に取り付けるためのものであり、そして前記の第1の絶縁体21は前記のソケット15を少なくとも部分的に覆うようになっている大電流ブッシング用コネクタにおいて、
第1の組立体はソケット15の第2の主軸16に中心を置く孔23を含むキャップ22と、このキャップ22を第1の絶縁体21に取り付けるロック手段24とを備え、第1の絶縁体21に取り付けるとキャップ22は前記の絶縁体21を部分的に覆うようになっており、そして
コネクタ10は、第2の絶縁体28とこの第2の絶縁体28を電気ブッシング11に取り付ける固定手段29とを含む第2の組立体を備え、前記の第2の絶縁体28は前記のピン12を包囲し、そしてソケット15にピン12を挿入するとき第1の絶縁体21を受入れる、第1の主軸13に中心を置く少なくとも一つの孔を含んでいることを特徴とした大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項2】
第1と第2の絶縁体21,28と、キャップ22とは剛性で、絶縁プラスチック材からつくられている請求項1に記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項3】
前記の材料はポリエーテル エーテル ケトンである請求項2に記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項4】
キャップ22は第1の絶縁体21に面する円筒状の孔27を含んでいる請求項1ないし3のいずれかに記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項5】
ロック手段は平頭ネジを含む請求項4に記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項6】
固定手段はボルトを含む請求項1ないし5のいずれかに記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項7】
第1の絶縁体21の外面と、キャップ22と第2の絶縁体28の内面とは少なくとも部分的にネジをつけられていて、一方ではキャップ22を第1の絶縁体21にねじ込み、そして他方では第2の絶縁体28へ第1の絶縁体21をねじ込めるようにしている請求項1ないし6のいずれかに記載の大電流ブッシング用コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主軸13を有する少なくとも一本のピン12を含む真空室の大電流ブッシング11用コネクタであって、
コネクタ10は第2の主軸16を有するソケット15と第1の絶縁体21とを含む第1の組立体を備え、前記のソケット15は電気ケーブル17に取り付けるためのものであり、そして前記の第1の絶縁体21はソケット15を少なくとも部分的に覆うようになっており、またコネクタ10は第2の絶縁体28とこの第2の絶縁体28を電気ブッシング11に取り付ける固定手段29とを含む第2の組立体を備え、前記の第2の絶縁体28は前記のピン12を包囲し、そしてソケット15にピン12を挿入するとき第1の絶縁体21を受ける、第1の主軸13に中心を置く少なくとも一つの孔を含んでおり、前記の第1の組立体はソケット15の第2の主軸16に中心を置く孔23を含むキャップ22をも備えている、大電流ブッシング用コネクタにおいて、
このキャップ22は、第1の絶縁体21の外面にキャップ22を圧力により取り付けられるようにする平頭ネジを含むロック手段24を備え、第1の絶縁体21に取り付けるとキャップ22は前記の絶縁体21を部分的に覆うことを特徴とした大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項2】
第1と第2の絶縁体21,28と、キャップ22とは剛性で、絶縁プラスチック材からつくられている請求項1に記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項3】
前記の材料はポリエーテル エーテル ケトンである請求項2に記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項4】
キャップ22は第1の絶縁体21に面する円筒状の孔27を含んでいる請求項1ないし3のいずれかに記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項5】
ロック手段29はボルトを含む請求項1ないし4のいずれかに記載の大電流ブッシング用コネクタ。
【請求項6】
第1の絶縁体21の外面と、キャップ22と第2の絶縁体28の内面とは少なくとも部分的にネジをつけられていて、一方ではキャップ22を第1の絶縁体21にねじ込み、そして他方では第2の絶縁体28へ第1の絶縁体21をねじ込めるようにしている請求項1ないし5のいずれかに記載の大電流ブッシング用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−507638(P2006−507638A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554624(P2004−554624)
【出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【国際出願番号】PCT/FR2003/050128
【国際公開番号】WO2004/049517
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(504458747)
【Fターム(参考)】