説明

天井ボード及び監視システム

【課題】軽量・小型・薄型のカメラを備えるカメラユニットを天井ボード内に埋め込み、一体化し、施設全体にわたり在館者や管理者の行動などをモニタリングできその情報に基づき設備の運転制御を行うことができるカメラを備えた天井ボードを提供する。
【解決手段】ユニット天井に用いる天井ボードであって、天井ボード内に埋め込まれ、該天井ボードが天井に取り付けられた際に、床面方向の画像を撮像するカメラと、カメラが撮像した画像の画像データを無線通信によって送信する通信手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の天井部材として用いる天井ボード及び天井ボードを用いた監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物内には、通常、天井(天井部材)がある。天井面は、基本的にフラットであり、照明、空調用や排煙用のスリット、感知器などがフラットな状況を損ねないように設けられている。こうした設備類が設置される天井面は、在館者の行動をサポートするための主要な場所となっている。また天井板には、不燃材として石膏ボードなどが使用されている。
【0003】
しかし、設備類以外のものは、天井面に設けられることがほとんど無い。天井面は、在館者の行動をサポートする上で、極めて有効な場所であるが、あまり活用されておらず、未使用のスペースが多い。これは、天井が重たいものや突出物を嫌うことが主な理由である。因みに、防煙垂れ壁は、火災安全面で必要であるが、天井面下に突出するため、意匠性を重視する設計者やオーナーから好まれていない。行動をサポートするためには、天井を広い範囲で活用できる設備との組み合わせが重要となる。
【0004】
一方、建物内、駅構内などの一部にカメラが設置されており、このカメラにより、管理者は、在館者の行動などを監視し、見守ることが行われており、空間の人数把握にも貢献している。このように、カメラが備えることで、管理者は、情報を得ることができ、効率の良い対応行動が行え、安心感も得ることができる。また、管理者ばかりでなく在館者も適切な対応行動や見守られることにより、安全性が増し、安心感も高まることになる。カメラの設置は、施設の一部に留まるが、施設のセキュリティなどを高めるために有望である。
【0005】
なお、先行技術として、店舗・催事場等の広い会場内においても人を連続して追尾することができ、関心はあるが購入しなかった商品についての情報を得るために、会場の天井に設置したカメラの各画素座標から測定範囲を定義し、各画素の座標データを含む画素データベースを作製する測定範囲定義機能と、会場の商品配置座標を定義し、各商品の座標データを含む商品データベースを作製する商品等配置機能と、を備える初期設定システムと、測定範囲内にいる個人にIDを割り振るID割り振り機能と、測定範囲内を移動する各個人を追跡し、時間毎に各個人の撮像画像をIDとともに人物画像データベースに記録する個体識別機能とを備える行動追跡システムと、移動情報データベースおよび商品データベースに基づいた各個人の行動データと、POSの購入記録に基づく各個人の購入データと、から各個人の購買動向についての分析を行うことができる購買分析システム知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−113662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のカメラは、一般に、大きく、重量もあり、コストも高い。また、大きいために天井部分に取り付けると、突出部分が生じ、施設の意匠性を大きく損なうものとなる。重量があるものを天井部分に取り付けておくと、地震時に落下の危険性がある。これに対して、天井や取り付け箇所を強固にすればよいが、コスト高になるという問題がある。また、天井面に取り付けても、1台で人数把握できる範囲が大きくないため、施設全体をカバーするには相当な数が必要となり、これも大きなコスト高となる。このように、在館者や管理者の行動を的確にサポートするために、施設全体の天井面に従来のカメラを数多く取り付けことは難しく、施設全体で、在館者や管理者の行動を詳細にモニタリングすることは難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量・小型・薄型のカメラを備えるカメラユニットを天井ボード内に埋め込み、一体化し、施設全体にわたり在館者や管理者の行動などをモニタリングできその情報に基づき設備の運転制御を行うことができるカメラを備えた天井ボード及び天井ボードを用いた監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ユニット天井に用いる天井ボードであって、前記天井ボード内に埋め込まれ、該天井ボードが天井に取り付けられた際に、床面方向の画像を撮像するカメラと、前記カメラが撮像した画像の画像データを無線通信によって送信する通信手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記床面における前記カメラの撮像範囲の大きさが前記天井ボードの大きさと一致していることを特徴とする。
【0011】
本発明は、請求項1または2に記載の天井ボードを複数備えた建物内の監視システムであって、前記通信手段により送信された前記画像データを受信して表示する表示手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軽量・小型・薄型のカメラを備えるカメラユニットを天井ボード内に埋め込み、一体化し、施設全体にわたり在館者や管理者の行動などをモニタリングできその情報に基づき、空調や照明の設備の運転制御を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すカメラユニットの構成を示す図である。
【図3】図1に示す天井ボードの外観を示す図である。
【図4】図1に示すカメラユニットにより在館者を撮像した様子を示す図である。
【図5】図1に示すカメラユニットにより物品を撮像した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による天井ボード及び監視システムを説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号11、12、13は、それぞれ通常のユニット天井に用いる天井ボードであり、同一の構成を備えている。ここでは、天井ボード11を例にして構成を説明する。天井ボード11は、不燃材で構成され、石膏ボードやロックウールなどを主材としたものである。天井ボード11の大きさは、500mm角〜1200mm角程度を基本とし、厚さは、9mm〜15mmである。符号21、22、23は、天井ボード11、12、13それぞれの中央部分に埋め込まれたカメラユニットであり、同一の構成を備えている。ここでは、カメラユニット21を例にして説明する。符号3は、カメラユニット21、22、23のそれぞれから送信される画像データを中継する中継機である。符号4は、中継機3を介して受信した画像データを受信して、モニタ5に画像を表示する監視装置である。符号6は、中継機3を介して受信した画像データに基づき建物内の設備の運転制御を行うパソコンであり、キーボード等の入力部7とディスプレイ装置等の表示部8を備えている。
【0015】
次に、図2を参照して、図1に示す天井ボード11とカメラユニット21の構成を説明する。図2において、符号210は、金属あるいは不燃材から構成するユニットボックスであり、天井ボード11の中央部分に埋め込まれている。符号211は、薄型のCDDカメラであり、その撮像範囲が床面において天井ボード11との大きさと一致している。符号212は、CCDカメラ211により撮像した画像の画像データを無線通信により中継機3へ送信する画像送信部である。ユニットボックス210は、金属あるいは不燃材から構成するため、万一、CCDカメラ211の一部が燃焼しても、天井内へ延焼拡大させる危険性は、ほとんど無い。ユニットボックス210は、その周囲を天井ボード11に、接着剤あるいは治具などを用いて固定する。CCDカメラ211の厚さは10mm前後であり、ユニットボックス210内に収まる形状である。また、CCDカメラ211は、感度が良いため、低照度でも在館者等の撮像が可能である。
【0016】
なお、中継機3と複数のカメラユニット21、22、23との間は、必ずしも無線通信である必要はなく、有線による通信であってもよい。また、中継機3と監視装置4及びパソコン6との間も、必ずしも有線の通信である必要はなく、無線通信を用いてもよい。
【0017】
次に、図3を参照して、図2に示す天井ボード11の外観について説明する。天井ボード11は正方形の板状になっており、中央部分にユニットボックス210が埋め込まれ、ユニットボックス210の中央付近にCCDカメラ211のレンズが露出している。ユニットボックス210は、CCDカメラ211のレンズが露出している側には抜け落ちないように固定されている。
【0018】
次に、図4、図5を参照して、図1に示す監視システムの動作を説明する。監視装置4及びモニタ5は、例えば建物の管理室などに置かれ、天井ボード11内に設けられたCCDカメラ211により天井から床方向を撮像した画像を建物管理者が見ることができる。画像送信部212は、CCDカメラ211により撮像した画像の画像データに対して、CCDカメラ211が設置されている天井の位置を示す情報を付与して、中継機3へ送信する。天井の位置を示す情報が付与された画像データは、中継機3を介して、監視装置4とパソコン6において受信される。監視装置4は、受信した画像データを、画像データに付与されている天井位置を示す情報に基づき、複数の画像の相互の画面上の配置位置関係が天井ボードそれぞれの配置位置関係と同じになるように、複数のCCDカメラで撮像して得られた複数の画像をモニタ5に並べて表示することにより、建物内のフロア全体の画像を把握することができる。また、モニタ5に表示する各画像には、天井ボードの位置を示す情報を重ね合わせて表示する。
【0019】
これにより、1つの画像が天井ボード1つ分の撮像範囲となっているため、建物管理者は天井ボード11の大きさの単位で、詳細に、建物内のどの場所に、何人の人間が居るのかをリアルタイムに把握することができるともに、図4に示すように、複数の画像を1つの画面に並べて表示するようにしたため、フロア全体の画像も同時に見ることができるようになる。さらに、CCDカメラ211の感度の調整を行うことにより、個人認証も可能となる。これらによって、施設内での人数分布や個人の移動状況を詳細かつ確実に捉えることができる。
【0020】
また、天井ボード11にえられたCCDカメラ211は、施設全体をモニタリングできるため、在館者の行動以外も把握可能である。例えば、図5に示すように、施設内に置かれている物品について、火災の前触れとして物品の温度がわずかに変わっても、物品の色変化を瞬時に捉えることが可能である。
【0021】
一方、中継機3を介して画像データを受信したパソコン6は、受信した画像データを内部の記憶装置に蓄積していく。建物管理者は、パソコン内の記憶装置に蓄積された画像データに基づき、施設内の人数分布や個人の移動状況などを時刻毎に関係つける解析を行うことにより、人数分布や個人の移動履歴をもとに、空調や照明などを制御する制御データを生成し、パソコン6内に保持する。パソコン6は、この制御データに基づいて、時刻と運転を制御する制御データを関係付けて保持し、この制御データに基づき建物内の設備の運転制御を実施する。これにより、時刻毎の人数分布や個人の移動履歴を基づき、空調や照明の運転制御が可能となる。
【0022】
このように、施設内の在館者や管理者の行動などを、施設全体にわたってモニタリングすることができるように、CCDカメラを天井ボード内に埋め込むことによって、詳細な人数分布や個人の移動履歴が時刻毎に把握することができることから、省エネルギーで快適な環境づくりに向け、施設内の空調設備の風量や温度を最適に制御することが容易となる。また、詳細な人数分布や個人の移動履歴が時刻毎に分かることから、省エネルギーで快適な環境づくりに向け、施設内の照明の照度を最適に制御することが容易となる。また、施設内で詳細に、個人の移動履歴が時間毎に分かることから、病院内で徘徊する患者の監視に役立てることが可能となる。また、施設内で詳細に、個人の移動履歴が時間毎に分かることから、コンビニエンスストアなどで、万引き者の追跡が可能であり、万引きの防止に役立てることが可能となる。また、施設内で物品などの詳細な温度変化を把握できることから、煙が発生する以前に危険性を検知でき、施設の火災発生の予防に役立てることが可能となる。また、施設内でロボットを使用する場合でも、ロボット認証が容易であることから、施設内でのロボット操作を最適に行うことが可能となる。また、CCDカメラは天井ボードに埋め込まれ、一体となることから、従来のカメラより、天井は、地震時の揺れに対して強くなり、在館者への落下危険性が低減し、安全性を高めることができる。さらに、CDDカメラが壊れた場合や、天井ボードが破損した場合に、カメラユニットが軽量・小型でかつワイヤレスであるため、交換が容易である。
【0023】
なお、図1に示す監視装置4、パソコン6の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより監視処理及び設備の運転制御を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0024】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
天井ボードにカメラを取り付けることが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0026】
11、12、13・・・天井ボード、21、22、23・・・カメラユニット、3・・・中継機、4・・・監視装置、5・・・モニタ、6・・・パソコン、7・・・入力部、8・・・表示部、210・・・ボックス、211・・・CCDカメラ、212・・・画像送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット天井に用いる天井ボードであって、
前記天井ボード内に埋め込まれ、該天井ボードが天井に取り付けられた際に、床面方向の画像を撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した画像の画像データを無線通信によって送信する通信手段と
を備えたことを特徴とする天井ボード。
【請求項2】
前記床面における前記カメラの撮像範囲の大きさが前記天井ボードの大きさと一致していることを特徴とする請求項1に記載の天井ボード。
【請求項3】
請求項1または2に記載の天井ボードを複数備えた建物内の監視システムであって、
前記通信手段により送信された前記画像データを受信して表示する表示手段を備えたことを特徴とする監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134880(P2012−134880A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286641(P2010−286641)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】