天井吹出型フィルタ装置と円形フィルタの製造方法ならびにフィルタパックの製造方法
【課題】あらゆる方向に均一な風速で清浄な空気を吹出すことができるようにした天井吹出型フィルタ装置とこれに利用する円形フィルタの製造方法、ならびにフィルタパックの製造方法を提供すること。
【解決手段】室内の天井に取り付けて、清浄な空気を吹き出すようにした天井吹出型フィルタ装置10の製造方法であって、円形の筒体でなるフィルタ枠32に、該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体31を挿入する挿入工程と、前記円形のフィルタ枠32を回転させながら、該円形のフィルタ枠内の該円形のフィルタ枠内面と、前記円形フィルタ本体31との間に流動性のシール剤を導入するシール工程と、前記流動性のシール剤を硬化させるシール剤硬化工程とを含んでいる円形フィルタの製造方法。
【解決手段】室内の天井に取り付けて、清浄な空気を吹き出すようにした天井吹出型フィルタ装置10の製造方法であって、円形の筒体でなるフィルタ枠32に、該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体31を挿入する挿入工程と、前記円形のフィルタ枠32を回転させながら、該円形のフィルタ枠内の該円形のフィルタ枠内面と、前記円形フィルタ本体31との間に流動性のシール剤を導入するシール工程と、前記流動性のシール剤を硬化させるシール剤硬化工程とを含んでいる円形フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体工場、食品工場等におけるクリーンルームなどの清浄空間で使用される高性能フィルタを備え天井吹出型とした天井吹出型フィルタ装置とこれに利用する円形フィルタの製造方法ならびにフィルタパックの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体工場のクリーンルーム等の清浄空間では、室内において、その天井に装備され、天井から清浄な空気を吹出す形式とした空調機吹出し構造が採用されている。
このような吹出し構造では、天井の裏側の空間等にフィルタ本体が格納されて、きれいに濾過した空気を吹出すようにした、天井吹出型のフィルタ装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された装置は、吹出し口を工夫した構造を採用したものであり、多数の吹出し用小径孔が形成された中央吹出し部と、該中央吹出し部の周囲に設けた矩形枠部と、この枠部に多数形成されると共に特に矩形隅部に放射状に延びる長孔を含む吹出し用大径孔とを有する空調吹出し構造を有している。
ところが、この装置では、図10に示されているように、装置全体1が四角形であるために、吹出し口2の四隅部分がデッドスペースとなって、下から見た図である図11に示すように、この四隅部分の吹出し空気が他の箇所よりも不足するため、吹出し空気全体Aについて見ると、吹出し方向の風速バランスが崩れてしまう。
【0004】
特許文献2の装置は、このような不都合を解消しようとするものである。
すなわち、天井に設置され空調機からの空気を室内に吹き込む吹出し口であって、本体の外郭縁に沿って外向きに空気を拡散させる羽根板付きスリットを設けるとともに、該スリットよりも中央側では、真下に空気を供給する孔または開口の群を備えているものである。
【0005】
【特許文献1】実公平4−51310号公報
【特許文献2】特開2002−147832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の構造では、外向きに空気を拡散させる羽根板付きスリットを設けてはいるものの、基本的に装置が四角形であるから角隅部では吹出し空気が他の領域よりも不足する点は改善できていない。
【0007】
本発明は、以上のような欠点を解消するためになされたものであり、あらゆる方向に均一な風速で清浄な空気を吹出すことができるようにした天井吹出型フィルタ装置とこれに利用する円形フィルタの製造方法、ならびにフィルタパックの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、第1の発明にあっては、円形の筒体でなる円形のフィルタ枠に、該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体を挿入する挿入工程と、前記円形のフィルタ枠を回転させながら、該円形のフィルタ枠内の該円形のフィルタ枠内面と、前記円形フィルタ本体との間に流動性のシール剤を導入するシール工程と、前記流動性のシール剤を硬化させるシール剤硬化工程とを含んでいる円形フィルタの製造方法により、達成される。
【0009】
上記構成によれば、挿入工程において、円形のフィルタ枠に該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体を挿入すると、円形のフィルタ枠の内面と円形フィルタ本体の外面との間にきわめて僅かな隙間が生じる。そこへ、シール工程において、円形のフィルタ枠を回転させながら流動性のシール剤を導入すると、シール剤は遠心力により円形のフィルタ枠の内面に均一に拡がる。同時に円形のフィルタ本体は円形のフィルタ枠の内面に押し付けられるので、シール剤硬化工程を経ることにより、円形フィルタ本体は円形のフィルタ枠の内面に対して偏りなく固定されるとともに、前記隙間にはシール剤がきわめて均一に充填されるので、確実なシールがされて気密性が良好となる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記挿入工程以前に、前記円形フィルタ本体を形成するためのフィルタ本体の形成工程を有しており、該フィルタ本体の形成工程が、シート状の濾材であるシート体を波板状とするための折りクセを付与する折線付与工程と、該折線付与工程で形成した折線に沿って折畳む折り畳み工程と、折り畳まれた前記シート体を円形の外周を備えるように裁断する裁断工程とを備えており、前記折線付与工程に先行して、前記裁断工程で円形の外周を備えるように裁断するために、前記シート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいることを特徴とする。
上記構成によれば、濾材であるシート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいるので、折り畳まれて切取線の長軸方向に寸法が縮むと、該切取線は円形となる。したがって、裁断工程で該切取線に沿って裁断すれば、円形の外周を備える濾材でなるフィルタ本体を容易に得ることができる。
【0011】
第3の発明は、第1または2のいずれかの発明の構成において、前記シール工程が、駆動ローラのローラ面に前記円形のフィルタ枠を当接させて、該円形のフィルタ枠を回転させるようにされており、工程の送り方向に沿って、長尺の駆動ローラを平行配置し、円形のフィルタ枠を順次当接させて、それぞれ設けた抑え手段で、それぞれ円形のフィルタ枠を前記工程の送り方向に移動させる手段により行われることを特徴とする。
上記構成によれば、工程の送りラインに沿って、複数の円形のフィルタ枠を順次送ることで、順次シール工程を実行することができ、連続生産が可能となる。
【0012】
また、上記目的は、第4の発明によれば、円形フィルタ本体であるフィルタパックの製造方法であって、シート状の濾材であるシート体を波板状とするための折りクセを付与する折線付与工程と、該折線付与工程で形成した折線に沿って折畳む折り畳み工程と、折り畳まれた前記シート体を円形の外周を備えるように裁断する裁断工程とを備えており、さらに、前記折線付与工程に先行して、前記裁断工程で円形の外周を備えるように裁断するために、前記シート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいるフィルタパックの製造方法により、達成される。
上記構成によれば、濾材であるシート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいるので、折り畳まれて切取線の長軸方向に寸法が縮むと、該切取線は円形となる。したがって、裁断工程で該切取線に沿って裁断すれば、円形のフィルタ枠に着脱するのに好適な、円形の外周を備える濾材でなるフィルタパックを容易に得ることができる。
【0013】
第5の発明は、第4の発明の構成において、前記折線付与工程では、前記切取線の楕円または長円の長軸の方向と直交する方向に前記折線を付与することを特徴とする。
上記構成によれば、前記切取線の楕円または長円の長軸方向に直交する方向に、折線を形成すると、これら楕円または長円の長軸方向の寸法が縮むので、容易に円形の波板状フィルタパックを得ることができる。
【0014】
また、上記目的は、第6の発明にあっては、室内の天井に取り付けて、清浄な空気を吹き出すようにした天井吹出型フィルタ装置であって、円形の筒体でなる円形のフィルタ枠と、該円形のフィルタ枠に収容され該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体と、前記円形のフィルタ枠に円形フィルタ本体を挿入固定して形成した円形フィルタを収容する円形ケーシングの底面に対して取付け金具により固定され、通気可能に形成された閉止手段とを有しており、前記円形フィルタ本体が、一方向にのみ平行な折線が延びる波板状の濾材により、円形もしくは円柱状の外形を備える天井吹出型フィルタ装置により、達成される。
上記構成によれば、円形のフィルタ枠に円形のフィルタ本体を挿入固定して、円形ケーシングに収容しているので、天井吹出型とした場合に、従来の四角形のフィルタ装置と比較すると、吹出し空気のデッドスペースとなる箇所がなく、清浄な空気をあらゆる方向に均一に吹出すことができる。
しかも、このような構造を実現する円形のフィルタを得る上では、一方向にのみ平行な折線が延びる波板状の濾材を用いると、シート状の濾材に対して、楕円または長円の切取線を形成し、この切取線と直交する方向に平行な折線を設ければ、この折線に沿って折畳む工程を経ることにより、円形のフィルタ本体を容易に形成することでき、円形のフィルタ装置を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、あらゆる方向に均一な風速で清浄な空気を吹出すことができるようにした天井吹出型フィルタ装置とこれに利用する円形フィルタの製造方法、ならびにフィルタパックの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0017】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る天井吹出型フィルタ装置(以下、「フィルタ装置」という。)の概略構成を示しており、図1はその概略分解斜視図、図2はその概略縦断面図である。
これらの図において、フィルタ装置10は、建物内において、例えば、クリーンルーム等をつくる場合にその室内の天井内部に埋め込まれるものである。
さらに、フィルタ装置10は、円形のケーシング(以下、「ケーシング」という)11と、ケーシング11に収容された円形フィルタ30を有しており、ケーシング11の底面である底部開口15は、例えばパンチングメタル板等を利用した通気可能な閉止手段20により塞がれている。
【0018】
すなわち、ケーシング11は、アルミニウムやステンレスなどで形成した金属のチャンバーであり、上記底面以外の箇所に通気用の開口を形成して、空気が導入されるダクト12が形成されている。
ケーシング11は、特に、円柱状で内部に空間Sを形成した円形のものである。このケーシング11に収容される円形フィルタ30は、円形の外形を備えている。すなわち、円形フィルタ30は、円筒体のフィルタ枠32内に、該フィルタ枠32の内径よりも僅かに小さな外径を備えた円形のフィルタ本体31を収容固定した形態である。そして、フィルタパックであるフィルタ本体31を含む円形フィルタ30詳しい説明は後述する。
【0019】
ケーシング11の内壁には、リブもしくは棚状に周回する凸部などでなる受部13が形成されており、ケーシング11に収容される円形フィルタ30を位置決め保持している。円形フィルタ30の上流側か、もしくは受部13のいずれかには、例えば、リング状のゴムブッシュ等でなるガスケット19が設けられており、円形フィルタ30との間に介在して気密にシールしている。この場合、特に、ガスケット19は、受部13側でなく、図示のように円形フィルタ30の上流側に設けた方が、シールの位置決め、ガスケット19の貼り付けが確実で容易にできるため好ましい。
なお、円形フィルタ30において、フィルタ本体31とフィルタ枠32の内壁との間は、後述する手法によりシール剤がきわめて均一に充填されることにより、気密に固定されている。
ケーシング11の底部開口15は、例えば外周に折り返し部を形成したリング状の枠部21を有し、内側に多数の通気孔を設けたパンチングメタル状の閉止手段20により塞がれている。この閉止手段20の固定構造については後述する。
【0020】
本実施形態のフィルタ装置10は以上のように構成されており、円形のケーシング11に円形フィルタ30を収容しているので、天井吹出型とした場合に、従来の四角形のフィルタ装置と比較すると、吹出し空気のデッドスペースとなる箇所がなく、清浄な空気をあらゆる方向に均一に吹出すことができる。
【0021】
(フィルタ装置の製造方法の実施形態)
次に、フィルタ装置10の製造方法の実施形態について説明する。
ここで、ケーシング11は、アルミニウムやステンレス材料を円形の筒状に板金加工すること等により周知の技術によって容易に形成できるので、その詳細は省略する。
図3ないし図8は、円形フィルタ30を形成してからケーシング11に収容固定するまでの製造工程の要部を示す図であり、図9はフィルタ本体(フィルタパック)の製造工程を示すフローチャートである。
これらの図を適宜参照しながら説明する。
【0022】
(フィルタ本体の形成工程)
次に、フィルタパックであるフィルタ本体の製造方法の実施形態を説明する。
フィルタ装置10を製造するに際して、先ず円形フィルタ30を製造する。
図3(a)はフィルタ本体の製造工程の概略正面図、図3(b)はその概略平面図である。これらの図において、矢印Hは工程の進行方向であり、ワークの搬送方向である。
【0023】
(切取線付与工程)
図3および図9において、先ず、ロール状に巻き取ったシート状の濾材41を加工するために繰り出す、濾材巻き戻し工程を実行する(ST11)。
濾材41は、例えば、ガラス繊維、ガラスペーパー、合成繊維による不織布等をシート状、もしくはメンブレン(膜)状にしたもので、要求されるフィルタ性能に対応して、いずれかの材料もしくはこれらの材料の複合使用がされるものである。以後の加工は、必要とされる形状条件に適合する成形と、エアーとの接触面積を増大するための所謂プリーツ加工である。
【0024】
符号42は、濾材41を切取るためのガイドとされる切取線の付与手段である。切取線の付与手段42は、例えば、伸展したシート状の濾材41を上下から挟むプレス機などで構成することができ、点線で示すようにミシン目等でなる切取線45を形成する(ST12)。
この実施形態では、切取線45は、工程の(進行する)方向Hに沿って長い楕円、もしくは長円である。
【0025】
(折線付与工程)
次に、シート状の濾材41に折線付与手段43により折線を付与し、波板状の加工、すなわち、所謂プリーツ加工を施す。
折線付与手段43は、例えば、付与する折線に対応した折り刃をローラ面に形成した折り加工用ローラ等を用いることができる。
(折畳み工程)
折線付与手段43は、折畳み機を兼ねており、折線46を付与すると同時に、該折線46に沿ってシート状の濾材41を折り畳む(ST13)。折線46の延びる方向Tは、工程の方向Hと直交する方向である。
なお、図示しないが、切取線付与工程と折線付与工程との間で、折畳んだ濾材41の間隔を保持する目的で、樹脂製のリボンを濾材41の両面あるいは片面に、実線状、破線状に塗布するか、あるいは、折線付与工程と折畳み工程との間で、金属箔あるいは樹脂フィルム製の波形セパレータを挿入するようにしてもよい。
【0026】
(裁断工程)
続いて、裁断機44により、シート状の濾材41を所定長さの中間体42−1に裁断し、続いて、切取線45aに沿ってさらに円形に裁断し(ST14)、個々のフィルタ本体31を中間体42−1から抜き取る(ST15)。
ここで、図4を参照する。図4(a)において、シート状の濾材41に折線46が形成されていても、まだ矢印に示す方向に伸長されている状態で、切取線45は楕円または長円である。この状態がST12の切取線付与工程における形態である。
そして、折畳み工程後は、図4(b)に示すように、各折線46で、交互に山折り、谷折されてプリーツ状態の波板とされて、矢印方向に収縮すると、切取線45aに示すように平面視円形の切取線となる。この円形の切取線45aが円形フィルタ30の外形線となる。
かくして、図3において、フィルタパックともいうフィルタ本体31は、円形の波板状の濾材であって、該濾材に形成された折線46は全て平行で、工程の方向Hと直交している。
【0027】
このように、本実施形態では、濾材41であるシート体に楕円もしくは長円形の切取線45を形成する切取線付与工程を含んでいるので、図4(b)で説明したように、折り畳まれて切取線45の長軸方向に寸法が縮むと、該切取線は円形となる(符号45a参照)。したがって、裁断工程で該切取線45aに沿って裁断すれば、円形のフィルタ枠32に着脱するのに好適な、円形の外周を備える濾材でなるフィルタ本体31を容易に得ることができる。
【0028】
(挿入工程)
次に、図5に示すように、フィルタ本体31をフィルタ枠32の開口35から挿入する。ここで、フィルタ枠32は、金属製の所定の壁厚を持つ筒体であり、例えばアルミニウムやステンレスなどで形成されている。
フィルタ本体31は、フィルタ枠32の内径よりも僅かに小さな外径を備えているので、フィルタ枠32内で、フィルタ本体31とフィルタ枠32の内壁との間には、僅かな隙間が形成される。
【0029】
(シール工程)
シール工程では、前記隙間に流動状のシール剤を導入してフィルタ枠32内でフィルタ本体31が動かないように固定するとともに、上記隙間から空気が漏れないように封止する。
具体的には、図6に示されているようにシール工程が実行される。
図6(a)はシール工程の概略平面図、図6(b)はシール工程の要部断面図である。
円筒形のフィルタ枠32を駆動ローラ54,54と抑えローラ55,55で挟んで保持する。
駆動ローラ54,54をそれぞれ矢印の方向に回転させると、そのローラ面に接触しているフィルタ枠32も矢印方向に回転する。抑えローラ55,55は、フィルタ枠32と当接して支持しつつ、矢印方向につれ回りする。
【0030】
このフィルタ枠32に隣接してシール剤の供給手段50を設ける。
シール剤の供給手段50は、ベース51に配置されたシール剤供給機52を有しており、例えばベース51に貯留、もしくは形成(シール剤が2液タイプの場合など)した流動性のシール剤をシール剤供給機52のシリンジまたはノズル53から、フィルタ本体31とフィルタ枠32の内壁との間の隙間16にシール剤を導入する。
【0031】
図6(b)に示すように、フィルタ枠32を回転させながら、隙間16に流動性のシール剤を導入すると、シール剤は遠心力により円形のフィルタ枠32の内面に均一に拡がる。また、これと同時にフィルタ本体31は円形のフィルタ枠32の内面に押し付けられるので、シール剤硬化工程を経ることにより、隙間にはシール剤がきわめて均一に充填される。
【0032】
(シール剤硬化工程)
次に、シール剤として、例えば熱硬化性樹脂などを用いている場合には、加熱工程を経ることにより、隙間16に均一に充填されたシール剤が硬化される。
これにより、フィルタ本体31は円形のフィルタ枠32の内面に対して偏りなく固定されるとともに、隙間16にはシール剤がきわめて均一に充填されるので、確実なシールがされて気密性が良好となる。
ここで、本実施形態で使用するシール剤としては、流動状態で充填でき、比較的短時間で硬化させることができるものが適している。
たとえば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂系の接着剤などが好適に使用できる。
かくして、円形フィルタ30が形成される。
【0033】
図7はシール工程に用いられる設備例を示している。
この例では、工程の送り方向Hに沿って、長尺の駆動ローラ54,54を平行に配置している。これにフィルタ枠32を順次当接させて、ガイド手段56をそれぞれ各円形フィルタ30に当てるようにされている。ガイド手段56は例えばガイド板やガイドステー等であり、一定速度で工程の送り方向Hに沿って移動可能である。
これにより、工程の送り方向Hの上流から上気したシール剤の充填を始めて、所定の硬化時間を経過することにより、フィルタ本体31が順次にフィルタ枠32に固定されることができる。
【0034】
図8は、閉止手段20の取付けを示す分解断面図である。
円形フィルタ30を収容したケーシング11の底部開口15は、閉止手段20により閉止される。閉止手段20は円形フィルタ30を覆うもので、通気可能とされる必要がある。この実施形態では、外周に折り返し部を形成したリング状の枠部21と、該枠部21の内側に枠部と一体に多数の通気孔を設けたパンチングメタル状のものが使用されている。
【0035】
そして、閉止手段20の枠部21に隣接して固定孔24,24を形成し、各固定孔24,24に固定用のビス23,23を挿通することにより、ケーシング11に対して固定することができる。
なお、ケーシング11の底部開口15の周縁部端面14には、ビス孔を予め形成しておき、これにより閉止手段20の固定孔24に挿通されたビス23,23を該ビス孔に螺合させることができるようにされている。
かくして、フィルタ装置10が完成する。
【0036】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
実施形態で説明した各構成はその一部を省略することができるし、さらに、説明しない他の構成と組み合わせることができる。
シール工程は順次連続処理する構成を説明したが、多数をバッジ処理するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルタ装置の概略分解斜視図。
【図2】図1のフィルタ装置の概略縦断面図。
【図3】図1のフィルタ装置に使用するフィルタ本体の製造工程の一部を示す説明図。
【図4】図3の工程における濾材の加工の様子を示す説明図。
【図5】フィルタ枠にフィルタ本体を挿入する様子を示す概略斜視図。
【図6】図1のフィルタ装置の製造工程におけるシール工程を示す要部断面図。
【図7】図6のシール工程の連続処理の例を示す設備構成図。
【図8】図1のフィルタ装置の閉止手段の固定の様子を示す分解断面図。
【図9】フィルタ本体の製造工程を示すフローチャート。
【図10】従来のフィルタ装置の形状を示す概略斜視図。
【図11】図10のフィルタ装置の吹出し空気の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
10・・・フィルタ装置、11・・・ケーシング、13・・・受部、15・・・底部開口、20・・・閉止手段、30・・・円形フィルタ、31・・・フィルタ本体(フィルタパック)、41・・・濾材、45・・・切取線、46・・・折線
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体工場、食品工場等におけるクリーンルームなどの清浄空間で使用される高性能フィルタを備え天井吹出型とした天井吹出型フィルタ装置とこれに利用する円形フィルタの製造方法ならびにフィルタパックの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体工場のクリーンルーム等の清浄空間では、室内において、その天井に装備され、天井から清浄な空気を吹出す形式とした空調機吹出し構造が採用されている。
このような吹出し構造では、天井の裏側の空間等にフィルタ本体が格納されて、きれいに濾過した空気を吹出すようにした、天井吹出型のフィルタ装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された装置は、吹出し口を工夫した構造を採用したものであり、多数の吹出し用小径孔が形成された中央吹出し部と、該中央吹出し部の周囲に設けた矩形枠部と、この枠部に多数形成されると共に特に矩形隅部に放射状に延びる長孔を含む吹出し用大径孔とを有する空調吹出し構造を有している。
ところが、この装置では、図10に示されているように、装置全体1が四角形であるために、吹出し口2の四隅部分がデッドスペースとなって、下から見た図である図11に示すように、この四隅部分の吹出し空気が他の箇所よりも不足するため、吹出し空気全体Aについて見ると、吹出し方向の風速バランスが崩れてしまう。
【0004】
特許文献2の装置は、このような不都合を解消しようとするものである。
すなわち、天井に設置され空調機からの空気を室内に吹き込む吹出し口であって、本体の外郭縁に沿って外向きに空気を拡散させる羽根板付きスリットを設けるとともに、該スリットよりも中央側では、真下に空気を供給する孔または開口の群を備えているものである。
【0005】
【特許文献1】実公平4−51310号公報
【特許文献2】特開2002−147832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の構造では、外向きに空気を拡散させる羽根板付きスリットを設けてはいるものの、基本的に装置が四角形であるから角隅部では吹出し空気が他の領域よりも不足する点は改善できていない。
【0007】
本発明は、以上のような欠点を解消するためになされたものであり、あらゆる方向に均一な風速で清浄な空気を吹出すことができるようにした天井吹出型フィルタ装置とこれに利用する円形フィルタの製造方法、ならびにフィルタパックの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、第1の発明にあっては、円形の筒体でなる円形のフィルタ枠に、該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体を挿入する挿入工程と、前記円形のフィルタ枠を回転させながら、該円形のフィルタ枠内の該円形のフィルタ枠内面と、前記円形フィルタ本体との間に流動性のシール剤を導入するシール工程と、前記流動性のシール剤を硬化させるシール剤硬化工程とを含んでいる円形フィルタの製造方法により、達成される。
【0009】
上記構成によれば、挿入工程において、円形のフィルタ枠に該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体を挿入すると、円形のフィルタ枠の内面と円形フィルタ本体の外面との間にきわめて僅かな隙間が生じる。そこへ、シール工程において、円形のフィルタ枠を回転させながら流動性のシール剤を導入すると、シール剤は遠心力により円形のフィルタ枠の内面に均一に拡がる。同時に円形のフィルタ本体は円形のフィルタ枠の内面に押し付けられるので、シール剤硬化工程を経ることにより、円形フィルタ本体は円形のフィルタ枠の内面に対して偏りなく固定されるとともに、前記隙間にはシール剤がきわめて均一に充填されるので、確実なシールがされて気密性が良好となる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記挿入工程以前に、前記円形フィルタ本体を形成するためのフィルタ本体の形成工程を有しており、該フィルタ本体の形成工程が、シート状の濾材であるシート体を波板状とするための折りクセを付与する折線付与工程と、該折線付与工程で形成した折線に沿って折畳む折り畳み工程と、折り畳まれた前記シート体を円形の外周を備えるように裁断する裁断工程とを備えており、前記折線付与工程に先行して、前記裁断工程で円形の外周を備えるように裁断するために、前記シート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいることを特徴とする。
上記構成によれば、濾材であるシート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいるので、折り畳まれて切取線の長軸方向に寸法が縮むと、該切取線は円形となる。したがって、裁断工程で該切取線に沿って裁断すれば、円形の外周を備える濾材でなるフィルタ本体を容易に得ることができる。
【0011】
第3の発明は、第1または2のいずれかの発明の構成において、前記シール工程が、駆動ローラのローラ面に前記円形のフィルタ枠を当接させて、該円形のフィルタ枠を回転させるようにされており、工程の送り方向に沿って、長尺の駆動ローラを平行配置し、円形のフィルタ枠を順次当接させて、それぞれ設けた抑え手段で、それぞれ円形のフィルタ枠を前記工程の送り方向に移動させる手段により行われることを特徴とする。
上記構成によれば、工程の送りラインに沿って、複数の円形のフィルタ枠を順次送ることで、順次シール工程を実行することができ、連続生産が可能となる。
【0012】
また、上記目的は、第4の発明によれば、円形フィルタ本体であるフィルタパックの製造方法であって、シート状の濾材であるシート体を波板状とするための折りクセを付与する折線付与工程と、該折線付与工程で形成した折線に沿って折畳む折り畳み工程と、折り畳まれた前記シート体を円形の外周を備えるように裁断する裁断工程とを備えており、さらに、前記折線付与工程に先行して、前記裁断工程で円形の外周を備えるように裁断するために、前記シート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいるフィルタパックの製造方法により、達成される。
上記構成によれば、濾材であるシート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいるので、折り畳まれて切取線の長軸方向に寸法が縮むと、該切取線は円形となる。したがって、裁断工程で該切取線に沿って裁断すれば、円形のフィルタ枠に着脱するのに好適な、円形の外周を備える濾材でなるフィルタパックを容易に得ることができる。
【0013】
第5の発明は、第4の発明の構成において、前記折線付与工程では、前記切取線の楕円または長円の長軸の方向と直交する方向に前記折線を付与することを特徴とする。
上記構成によれば、前記切取線の楕円または長円の長軸方向に直交する方向に、折線を形成すると、これら楕円または長円の長軸方向の寸法が縮むので、容易に円形の波板状フィルタパックを得ることができる。
【0014】
また、上記目的は、第6の発明にあっては、室内の天井に取り付けて、清浄な空気を吹き出すようにした天井吹出型フィルタ装置であって、円形の筒体でなる円形のフィルタ枠と、該円形のフィルタ枠に収容され該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体と、前記円形のフィルタ枠に円形フィルタ本体を挿入固定して形成した円形フィルタを収容する円形ケーシングの底面に対して取付け金具により固定され、通気可能に形成された閉止手段とを有しており、前記円形フィルタ本体が、一方向にのみ平行な折線が延びる波板状の濾材により、円形もしくは円柱状の外形を備える天井吹出型フィルタ装置により、達成される。
上記構成によれば、円形のフィルタ枠に円形のフィルタ本体を挿入固定して、円形ケーシングに収容しているので、天井吹出型とした場合に、従来の四角形のフィルタ装置と比較すると、吹出し空気のデッドスペースとなる箇所がなく、清浄な空気をあらゆる方向に均一に吹出すことができる。
しかも、このような構造を実現する円形のフィルタを得る上では、一方向にのみ平行な折線が延びる波板状の濾材を用いると、シート状の濾材に対して、楕円または長円の切取線を形成し、この切取線と直交する方向に平行な折線を設ければ、この折線に沿って折畳む工程を経ることにより、円形のフィルタ本体を容易に形成することでき、円形のフィルタ装置を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、あらゆる方向に均一な風速で清浄な空気を吹出すことができるようにした天井吹出型フィルタ装置とこれに利用する円形フィルタの製造方法、ならびにフィルタパックの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0017】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る天井吹出型フィルタ装置(以下、「フィルタ装置」という。)の概略構成を示しており、図1はその概略分解斜視図、図2はその概略縦断面図である。
これらの図において、フィルタ装置10は、建物内において、例えば、クリーンルーム等をつくる場合にその室内の天井内部に埋め込まれるものである。
さらに、フィルタ装置10は、円形のケーシング(以下、「ケーシング」という)11と、ケーシング11に収容された円形フィルタ30を有しており、ケーシング11の底面である底部開口15は、例えばパンチングメタル板等を利用した通気可能な閉止手段20により塞がれている。
【0018】
すなわち、ケーシング11は、アルミニウムやステンレスなどで形成した金属のチャンバーであり、上記底面以外の箇所に通気用の開口を形成して、空気が導入されるダクト12が形成されている。
ケーシング11は、特に、円柱状で内部に空間Sを形成した円形のものである。このケーシング11に収容される円形フィルタ30は、円形の外形を備えている。すなわち、円形フィルタ30は、円筒体のフィルタ枠32内に、該フィルタ枠32の内径よりも僅かに小さな外径を備えた円形のフィルタ本体31を収容固定した形態である。そして、フィルタパックであるフィルタ本体31を含む円形フィルタ30詳しい説明は後述する。
【0019】
ケーシング11の内壁には、リブもしくは棚状に周回する凸部などでなる受部13が形成されており、ケーシング11に収容される円形フィルタ30を位置決め保持している。円形フィルタ30の上流側か、もしくは受部13のいずれかには、例えば、リング状のゴムブッシュ等でなるガスケット19が設けられており、円形フィルタ30との間に介在して気密にシールしている。この場合、特に、ガスケット19は、受部13側でなく、図示のように円形フィルタ30の上流側に設けた方が、シールの位置決め、ガスケット19の貼り付けが確実で容易にできるため好ましい。
なお、円形フィルタ30において、フィルタ本体31とフィルタ枠32の内壁との間は、後述する手法によりシール剤がきわめて均一に充填されることにより、気密に固定されている。
ケーシング11の底部開口15は、例えば外周に折り返し部を形成したリング状の枠部21を有し、内側に多数の通気孔を設けたパンチングメタル状の閉止手段20により塞がれている。この閉止手段20の固定構造については後述する。
【0020】
本実施形態のフィルタ装置10は以上のように構成されており、円形のケーシング11に円形フィルタ30を収容しているので、天井吹出型とした場合に、従来の四角形のフィルタ装置と比較すると、吹出し空気のデッドスペースとなる箇所がなく、清浄な空気をあらゆる方向に均一に吹出すことができる。
【0021】
(フィルタ装置の製造方法の実施形態)
次に、フィルタ装置10の製造方法の実施形態について説明する。
ここで、ケーシング11は、アルミニウムやステンレス材料を円形の筒状に板金加工すること等により周知の技術によって容易に形成できるので、その詳細は省略する。
図3ないし図8は、円形フィルタ30を形成してからケーシング11に収容固定するまでの製造工程の要部を示す図であり、図9はフィルタ本体(フィルタパック)の製造工程を示すフローチャートである。
これらの図を適宜参照しながら説明する。
【0022】
(フィルタ本体の形成工程)
次に、フィルタパックであるフィルタ本体の製造方法の実施形態を説明する。
フィルタ装置10を製造するに際して、先ず円形フィルタ30を製造する。
図3(a)はフィルタ本体の製造工程の概略正面図、図3(b)はその概略平面図である。これらの図において、矢印Hは工程の進行方向であり、ワークの搬送方向である。
【0023】
(切取線付与工程)
図3および図9において、先ず、ロール状に巻き取ったシート状の濾材41を加工するために繰り出す、濾材巻き戻し工程を実行する(ST11)。
濾材41は、例えば、ガラス繊維、ガラスペーパー、合成繊維による不織布等をシート状、もしくはメンブレン(膜)状にしたもので、要求されるフィルタ性能に対応して、いずれかの材料もしくはこれらの材料の複合使用がされるものである。以後の加工は、必要とされる形状条件に適合する成形と、エアーとの接触面積を増大するための所謂プリーツ加工である。
【0024】
符号42は、濾材41を切取るためのガイドとされる切取線の付与手段である。切取線の付与手段42は、例えば、伸展したシート状の濾材41を上下から挟むプレス機などで構成することができ、点線で示すようにミシン目等でなる切取線45を形成する(ST12)。
この実施形態では、切取線45は、工程の(進行する)方向Hに沿って長い楕円、もしくは長円である。
【0025】
(折線付与工程)
次に、シート状の濾材41に折線付与手段43により折線を付与し、波板状の加工、すなわち、所謂プリーツ加工を施す。
折線付与手段43は、例えば、付与する折線に対応した折り刃をローラ面に形成した折り加工用ローラ等を用いることができる。
(折畳み工程)
折線付与手段43は、折畳み機を兼ねており、折線46を付与すると同時に、該折線46に沿ってシート状の濾材41を折り畳む(ST13)。折線46の延びる方向Tは、工程の方向Hと直交する方向である。
なお、図示しないが、切取線付与工程と折線付与工程との間で、折畳んだ濾材41の間隔を保持する目的で、樹脂製のリボンを濾材41の両面あるいは片面に、実線状、破線状に塗布するか、あるいは、折線付与工程と折畳み工程との間で、金属箔あるいは樹脂フィルム製の波形セパレータを挿入するようにしてもよい。
【0026】
(裁断工程)
続いて、裁断機44により、シート状の濾材41を所定長さの中間体42−1に裁断し、続いて、切取線45aに沿ってさらに円形に裁断し(ST14)、個々のフィルタ本体31を中間体42−1から抜き取る(ST15)。
ここで、図4を参照する。図4(a)において、シート状の濾材41に折線46が形成されていても、まだ矢印に示す方向に伸長されている状態で、切取線45は楕円または長円である。この状態がST12の切取線付与工程における形態である。
そして、折畳み工程後は、図4(b)に示すように、各折線46で、交互に山折り、谷折されてプリーツ状態の波板とされて、矢印方向に収縮すると、切取線45aに示すように平面視円形の切取線となる。この円形の切取線45aが円形フィルタ30の外形線となる。
かくして、図3において、フィルタパックともいうフィルタ本体31は、円形の波板状の濾材であって、該濾材に形成された折線46は全て平行で、工程の方向Hと直交している。
【0027】
このように、本実施形態では、濾材41であるシート体に楕円もしくは長円形の切取線45を形成する切取線付与工程を含んでいるので、図4(b)で説明したように、折り畳まれて切取線45の長軸方向に寸法が縮むと、該切取線は円形となる(符号45a参照)。したがって、裁断工程で該切取線45aに沿って裁断すれば、円形のフィルタ枠32に着脱するのに好適な、円形の外周を備える濾材でなるフィルタ本体31を容易に得ることができる。
【0028】
(挿入工程)
次に、図5に示すように、フィルタ本体31をフィルタ枠32の開口35から挿入する。ここで、フィルタ枠32は、金属製の所定の壁厚を持つ筒体であり、例えばアルミニウムやステンレスなどで形成されている。
フィルタ本体31は、フィルタ枠32の内径よりも僅かに小さな外径を備えているので、フィルタ枠32内で、フィルタ本体31とフィルタ枠32の内壁との間には、僅かな隙間が形成される。
【0029】
(シール工程)
シール工程では、前記隙間に流動状のシール剤を導入してフィルタ枠32内でフィルタ本体31が動かないように固定するとともに、上記隙間から空気が漏れないように封止する。
具体的には、図6に示されているようにシール工程が実行される。
図6(a)はシール工程の概略平面図、図6(b)はシール工程の要部断面図である。
円筒形のフィルタ枠32を駆動ローラ54,54と抑えローラ55,55で挟んで保持する。
駆動ローラ54,54をそれぞれ矢印の方向に回転させると、そのローラ面に接触しているフィルタ枠32も矢印方向に回転する。抑えローラ55,55は、フィルタ枠32と当接して支持しつつ、矢印方向につれ回りする。
【0030】
このフィルタ枠32に隣接してシール剤の供給手段50を設ける。
シール剤の供給手段50は、ベース51に配置されたシール剤供給機52を有しており、例えばベース51に貯留、もしくは形成(シール剤が2液タイプの場合など)した流動性のシール剤をシール剤供給機52のシリンジまたはノズル53から、フィルタ本体31とフィルタ枠32の内壁との間の隙間16にシール剤を導入する。
【0031】
図6(b)に示すように、フィルタ枠32を回転させながら、隙間16に流動性のシール剤を導入すると、シール剤は遠心力により円形のフィルタ枠32の内面に均一に拡がる。また、これと同時にフィルタ本体31は円形のフィルタ枠32の内面に押し付けられるので、シール剤硬化工程を経ることにより、隙間にはシール剤がきわめて均一に充填される。
【0032】
(シール剤硬化工程)
次に、シール剤として、例えば熱硬化性樹脂などを用いている場合には、加熱工程を経ることにより、隙間16に均一に充填されたシール剤が硬化される。
これにより、フィルタ本体31は円形のフィルタ枠32の内面に対して偏りなく固定されるとともに、隙間16にはシール剤がきわめて均一に充填されるので、確実なシールがされて気密性が良好となる。
ここで、本実施形態で使用するシール剤としては、流動状態で充填でき、比較的短時間で硬化させることができるものが適している。
たとえば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂系の接着剤などが好適に使用できる。
かくして、円形フィルタ30が形成される。
【0033】
図7はシール工程に用いられる設備例を示している。
この例では、工程の送り方向Hに沿って、長尺の駆動ローラ54,54を平行に配置している。これにフィルタ枠32を順次当接させて、ガイド手段56をそれぞれ各円形フィルタ30に当てるようにされている。ガイド手段56は例えばガイド板やガイドステー等であり、一定速度で工程の送り方向Hに沿って移動可能である。
これにより、工程の送り方向Hの上流から上気したシール剤の充填を始めて、所定の硬化時間を経過することにより、フィルタ本体31が順次にフィルタ枠32に固定されることができる。
【0034】
図8は、閉止手段20の取付けを示す分解断面図である。
円形フィルタ30を収容したケーシング11の底部開口15は、閉止手段20により閉止される。閉止手段20は円形フィルタ30を覆うもので、通気可能とされる必要がある。この実施形態では、外周に折り返し部を形成したリング状の枠部21と、該枠部21の内側に枠部と一体に多数の通気孔を設けたパンチングメタル状のものが使用されている。
【0035】
そして、閉止手段20の枠部21に隣接して固定孔24,24を形成し、各固定孔24,24に固定用のビス23,23を挿通することにより、ケーシング11に対して固定することができる。
なお、ケーシング11の底部開口15の周縁部端面14には、ビス孔を予め形成しておき、これにより閉止手段20の固定孔24に挿通されたビス23,23を該ビス孔に螺合させることができるようにされている。
かくして、フィルタ装置10が完成する。
【0036】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
実施形態で説明した各構成はその一部を省略することができるし、さらに、説明しない他の構成と組み合わせることができる。
シール工程は順次連続処理する構成を説明したが、多数をバッジ処理するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルタ装置の概略分解斜視図。
【図2】図1のフィルタ装置の概略縦断面図。
【図3】図1のフィルタ装置に使用するフィルタ本体の製造工程の一部を示す説明図。
【図4】図3の工程における濾材の加工の様子を示す説明図。
【図5】フィルタ枠にフィルタ本体を挿入する様子を示す概略斜視図。
【図6】図1のフィルタ装置の製造工程におけるシール工程を示す要部断面図。
【図7】図6のシール工程の連続処理の例を示す設備構成図。
【図8】図1のフィルタ装置の閉止手段の固定の様子を示す分解断面図。
【図9】フィルタ本体の製造工程を示すフローチャート。
【図10】従来のフィルタ装置の形状を示す概略斜視図。
【図11】図10のフィルタ装置の吹出し空気の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
10・・・フィルタ装置、11・・・ケーシング、13・・・受部、15・・・底部開口、20・・・閉止手段、30・・・円形フィルタ、31・・・フィルタ本体(フィルタパック)、41・・・濾材、45・・・切取線、46・・・折線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の筒体でなる円形のフィルタ枠に、該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体を挿入する挿入工程と、
前記円形のフィルタ枠を回転させながら、該円形のフィルタ枠内の該円形のフィルタ枠内面と、前記円形フィルタ本体との間に流動性のシール剤を導入するシール工程と、
前記流動性のシール剤を硬化させるシール剤硬化工程と
を含んでいることを特徴とする円形フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記挿入工程以前に、前記円形フィルタ本体を形成するためのフィルタ本体の形成工程を有しており、
該フィルタ本体の形成工程が、
シート状の濾材であるシート体を波板状とするための折りクセを付与する折線付与工程と、
該折線付与工程で形成した折線に沿って折畳む折り畳み工程と、
折り畳まれた前記シート体を円形の外周を備えるように裁断する裁断工程と
を備えており、
前記折線付与工程に先行して、前記裁断工程で円形の外周を備えるように裁断するために、前記シート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の円形フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記シール工程が、駆動ローラのローラ面に前記円形のフィルタ枠を当接させて、該円形のフィルタ枠を回転させるようにされており、工程の送り方向に沿って、長尺の駆動ローラを平行配置し、円形のフィルタ枠を順次当接させて、それぞれ設けた抑え手段で、それぞれ円形のフィルタ枠を前記工程の送り方向に移動させる手段により行われることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の円形フィルタの製造方法。
【請求項4】
円形フィルタ本体であるフィルタパックの製造方法であって、
シート状の濾材であるシート体を波板状とするための折りクセを付与する折線付与工程と、
該折線付与工程で形成した折線に沿って折畳む折り畳み工程と、
折り畳まれた前記シート体を円形の外周を備えるように裁断する裁断工程と
を備えており、
さらに、前記折線付与工程に先行して、前記裁断工程で円形の外周を備えるように裁断するために、前記シート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を
含んでいることを特徴とするフィルタパックの製造方法。
【請求項5】
前記折線付与工程では、前記切取線の楕円または長円の長軸の方向と直交する方向に前記折線を付与することを特徴とする請求項4に記載のフィルタパックの製造方法。
【請求項6】
室内の天井に取り付けて、清浄な空気を吹き出すようにした天井吹出型フィルタ装置であって、
円形の筒体でなる円形のフィルタ枠と、
該円形のフィルタ枠に収容され該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体と、
前記円形のフィルタ枠に円形フィルタ本体を挿入固定して形成した円形フィルタを収容する円形ケーシングの底面に対して取付け金具により固定され、通気可能に形成された閉止手段と
を有しており、
前記円形フィルタ本体が、
一方向にのみ平行な折線が延びる波板状の濾材により、円形もしくは円柱状の外形を備えることを特徴とする天井吹出型フィルタ装置。
【請求項1】
円形の筒体でなる円形のフィルタ枠に、該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体を挿入する挿入工程と、
前記円形のフィルタ枠を回転させながら、該円形のフィルタ枠内の該円形のフィルタ枠内面と、前記円形フィルタ本体との間に流動性のシール剤を導入するシール工程と、
前記流動性のシール剤を硬化させるシール剤硬化工程と
を含んでいることを特徴とする円形フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記挿入工程以前に、前記円形フィルタ本体を形成するためのフィルタ本体の形成工程を有しており、
該フィルタ本体の形成工程が、
シート状の濾材であるシート体を波板状とするための折りクセを付与する折線付与工程と、
該折線付与工程で形成した折線に沿って折畳む折り畳み工程と、
折り畳まれた前記シート体を円形の外周を備えるように裁断する裁断工程と
を備えており、
前記折線付与工程に先行して、前記裁断工程で円形の外周を備えるように裁断するために、前記シート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の円形フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記シール工程が、駆動ローラのローラ面に前記円形のフィルタ枠を当接させて、該円形のフィルタ枠を回転させるようにされており、工程の送り方向に沿って、長尺の駆動ローラを平行配置し、円形のフィルタ枠を順次当接させて、それぞれ設けた抑え手段で、それぞれ円形のフィルタ枠を前記工程の送り方向に移動させる手段により行われることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の円形フィルタの製造方法。
【請求項4】
円形フィルタ本体であるフィルタパックの製造方法であって、
シート状の濾材であるシート体を波板状とするための折りクセを付与する折線付与工程と、
該折線付与工程で形成した折線に沿って折畳む折り畳み工程と、
折り畳まれた前記シート体を円形の外周を備えるように裁断する裁断工程と
を備えており、
さらに、前記折線付与工程に先行して、前記裁断工程で円形の外周を備えるように裁断するために、前記シート体に楕円もしくは長円形の切取線を形成する切取線付与工程を
含んでいることを特徴とするフィルタパックの製造方法。
【請求項5】
前記折線付与工程では、前記切取線の楕円または長円の長軸の方向と直交する方向に前記折線を付与することを特徴とする請求項4に記載のフィルタパックの製造方法。
【請求項6】
室内の天井に取り付けて、清浄な空気を吹き出すようにした天井吹出型フィルタ装置であって、
円形の筒体でなる円形のフィルタ枠と、
該円形のフィルタ枠に収容され該円形のフィルタ枠の内径よりも僅かに小さな外径を備える円形フィルタ本体と、
前記円形のフィルタ枠に円形フィルタ本体を挿入固定して形成した円形フィルタを収容する円形ケーシングの底面に対して取付け金具により固定され、通気可能に形成された閉止手段と
を有しており、
前記円形フィルタ本体が、
一方向にのみ平行な折線が延びる波板状の濾材により、円形もしくは円柱状の外形を備えることを特徴とする天井吹出型フィルタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−8001(P2010−8001A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169636(P2008−169636)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000232760)日本無機株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000232760)日本無機株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
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