説明

天吊型空気清浄機

【課題】粒状ダストを除去した後の喫煙気流に存在する窒素酸化物、一酸化炭素およびアンモニアのような有害ガス分子の除去性能を改善した天吊型空気清浄機を提供する。
【解決手段】天板と吸込み部を持つ底板と第1〜第4の側部と対向する第1、第3の側部にそれぞれ配置され、吸込んだ気流を排出する整流板とを備えた筐体;筐体内に吸込み部上方に配置された誘電フィルタ;筐体内に誘電フィルタの上方に位置するように配置され、回転気流を生成するための送風機;筐体内に配置されたマイナスイオン発生器;第2、第4の側部内面にそれぞれ配置され、垂線と平行で前記回転気流が衝突する面を有する第1酸化還元不均一触媒板;第1、第3の側部の整流板にそれぞれ配置された磁石;および第1、第3の側部にそれぞれ磁石に近接して配置され、垂線と平行で回転気流が衝突する面を有する第2酸化還元不均一触媒板;を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天吊型空気清浄機に関し、詳しくは空気流、例えば喫煙気流中の粒状ダストのような汚染物質を清浄化するための天吊型空気清浄機に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、空気流、例えば喫煙気流中の汚染物質を清浄化するには吸込部側からプレフィルタと、イオン化領域と、集塵フィルタと、活性炭、ゼオライトなどから作られる吸着フィルタとをこの順序で配列させた空気清浄機が用いられている。ここで、喫煙気流は喫煙により生じたニコチン、タールを含む粒状ダスト(ガス分子が表面に付着されている)などの汚染物質を含有する。
【0003】
喫煙気流は、空気清浄機のプレフィルタを通過する間にその気流中の比較的サイズの大きい粒状ダストが除去される。喫煙気流は、サイズの大きい粒状ダストが除去された後、イオン化領域に流入し、ここで残留した粒状ダストがプラス(+)に帯電される。プラス帯電された粒状ダストを含む喫煙気流は、マイナス(−)に帯電された金属からなる集塵フィルタを通過する間、粒状ダストが静電力により集塵フィルタに付着されて除去される。喫煙気流は、さらに吸着フィルタに達し、ここで微細な粒状ダスト及びガス分子が吸着されて除去される。
【0004】
しかしながら、空気清浄機による粒状ダストの集塵において粒状ダストはマイナス帯電された金属からなる集塵フィルタに直接吸着され、その吸着力が強く、容易に除去できない。その結果、集塵フィルタを再生するには専門のメンテナンス業者に委託して清掃する必要があり、メンテナンス費用が嵩む問題があった。
【0005】
このようなことから、接地電位のメッシュ状筐体、この筐体内に配置される例えば活性炭コーティングメッシュ板を含む電子フィルタエレメントおよびこのエレメントに差し込まれ、正電位が与えられる放電針を有する誘電フィルタを備えた天吊型空気清浄機が開発され、販売されている。この空気清浄機による喫煙気流の清浄化は、放電針にプラス電位を印加してメッシュ状筐体との間で放電させてプラスイオンを発生させると共に、誘電フィルタを通過する喫煙気流中の粒状ダストを放電針が差し込まれた電子フィルタエレメントとメッシュ状筐体の間の合成樹脂製不織布で誘電分極がなされ、その電子フィルタエレメントに吸着、除去する方法によりなされる。したがって、誘電フィルタの再生は安価で使い捨ての電子フィルタエレメントを交換するだけで済むために、前述した集塵フィルタを用いる場合に比べてメンテナンス費用を低減できる。
【0006】
しかしながら、誘電フィルタを備えた天吊型空気清浄機においては設置する室内空間の状況により電子フィルタエレメントによる粒状ダストの吸着性能(集塵性能)が十分に維持されているにも拘わらず、連続運転時に集塵性能が極端に低下する現象を生じる。
【0007】
一方、本発明者が発明者の一人として記載された特許文献1には室内空間の状況に影響されずに連続運転時の電子フィルタエレメントによる粒状ダストの吸着性能(集塵性能)を改善した天吊型空気清浄機を用いた空気清浄化方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−138058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、既に出願した天吊型空気清浄機の性能、特に粒状ダストを除去した後の喫煙気流に存在する窒素酸化物、一酸化炭素およびアンモニアのような有害ガス分子の除去性能を改善した天吊型空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、天板と、吸込み部を持つ底板と、第1〜第4の側部と、対向する第1、第3の側部にそれぞれ配置され、吸込んだ気流を排出する整流板とを備えた天吊される筐体;
前記筐体内に前記吸込み部上方に位置するように配置され、空気中の汚染物質に含まれる粒状ダストをプラスイオンの雰囲気に曝し、誘電分極により前記粒状ダストを吸着、除去する誘電フィルタ;
前記筐体内に前記誘電フィルタの上方に位置するように配置され、機外の空気を前記誘電フィルタに導入、通過させ、前記誘電フィルタの上方の空間に回転気流を生成するための送風機;
前記筐体内に配置されたマイナスイオン発生器;
前記第2、第4の側部内面にそれぞれ配置され、垂線と平行で前記回転気流が衝突する面を有する第1酸化還元不均一触媒板;
前記第1、第3の側部の整流板にそれぞれ配置された磁石;および
前記第1、第3の側部にそれぞれ前記磁石に近接して配置され、垂線と平行で前記回転気流が衝突する面を有する第2酸化還元不均一触媒板;
を備えたことを特徴とする天吊型空気清浄機が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る天吊型空気清浄機を図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る天吊型空気清浄機を示す斜視図、図2は図1の空気清浄機の断面図、図3は図1の空気清浄機の上面図(天板およびハニカム型不均一触媒を省略)、図4は図2の空気清浄機のIV−IV線に沿う断面図、図5は図1の空気清浄機に組み込まれる誘電フィルタを示す断面図、図6は図1の空気清浄機の第1側部に取付けられる整流板ユニットの周辺構造を示す斜視図、図7は図1の空気清浄機の第2側部に取り付けられる第1酸化還元触媒板を示す斜視図、図8は図1の天吊型空気清浄機のハニカム型アルミニウム触媒の空気流の流れ状態を説明する断面図である。
【0012】
逆四角錐台形状をなす筐体1は、天板2を介して所定の室(例えば喫煙室)の天井に取り付けられている。この筐体1は、天板2と吸込みグリル3を有する底部と4つの側部、つまり第1〜第4の側部4〜7とで囲まれた構造を有する。互いに対向する第1、第3の側部4,6は、逆台形状に開口され、これら開口部に逆台形状の整流板ユニット8がそれぞれ取り外し可能に配置されている。各整流板ユニット8は、図3および図6に示すように逆台形状の枠9とこの枠9の中央に上下方向に傾斜して一体的に取付けられた凹状支持部10と、枠9の側壁および凹状支持部10に一体的に取付けられ、凹状支持部10を境にして左右に配列された水平方向に延びる複数の整流板11とから構成されている。第1、第3の側部4,6の開口中央には下部側から天板2に延出する傾斜した支持板12(第3側部6の支持板は図示せず)が一体的に取付けられている。また、補強のための支柱13(第3側部6の支柱は図示せず)は上端が天板2に固定され、下端が支持板12の中間付近に固定されている。前記整流板ユニット8は、第1、第3の側部4,6に取り付けたときに、それらの凹状支持部10が図6に示すように第1、第3の側部4,6の支持板12(第3側部6の支持板は図示せず)に嵌入される。
【0013】
誘電フィルタ14は、筐体1内の下部付近に吸込みグリル3と所望の距離をあけて対向するように配置さている。誘電フィルタ14は、交換等の目的で図1に示すように第2側部5の開閉窓15を通して筐体1に対して出し入れされる。前記誘電フィルタ14は、図1および図5に示すように例えば4つに分割、支持された金属メッシュ部16を有する絶縁材料からなる下部枠体17と、この下部枠体17に図示しないヒンジ機構により開閉可能に取り付けられ、例えば4つに分割、支持された金属メッシュ部18を有する絶縁材料からなる上部枠体19とを備えている。電子フィルタエレメント20は、これら枠体17、19内に収納されている。この電子フィルタエレメント20は、導電層(例えば活性炭を担持したメッシュ板)21を挟んで上下に合成樹脂製の不織布層22a、22bを積層した構造を有する。正電位が与えられる放電針23は、このエレメント20の上部不織布層22aおよび活性炭担持メッシュ板18に差し込まれている。各枠体17,19の金属メッシュ部16,18は、接地電位になっている。なお、放電針23の先端に対応する下部の金属メッシュ部16部分には、放電針23と下部の金属メッシュ部16との短絡的放電を回避するために絶縁材料からなる放電制御板Cが貼り付けられている。
【0014】
例えば反時計回り方向に回転する送風機(例えばシロッコファン)24は、筐体1内の前記天板2に取り付けられている。2つのマイナスイオン発生器(第1、第2のマイナスイオン発生器)25,26は、第1、第3の側部4,6に配置された整流板11に隣接する第2側部5の上部内面にそれぞれ取り付けられている。第1、第2のマイナスイオン発生器25,26は、マイナスイオンを第1、第3の側部4,6に配置された整流板11に沿ってそれぞれ放出する。これらのマイナスイオン発生器25,26は、例えば4W,空中放電式、−7000Vで、吹出口でのマイナスイオン量300万個/cc、オゾン発生量0.01ppm以下である。
【0015】
垂線と平行で回転気流が衝突する面を有する第1酸化還元不均一触媒板である例えばニッケル触媒板27は、図3および図4に示すように第2側部5の長手方向の中間に配置されている。具体的には、ニッケル触媒板27は図7に示すように支柱13を挟み、両端を第2側部5に向けて水平方向に延出すると共に、その第2側部5に固定した構造を有する。なお、支柱13は上端が天板2に、下端が第2側部5に、固定され、筐体1の補強の役目をなす。第3酸化還元不均一触媒薄板であるニッケル触媒薄板28は、図3および図7に示すようにニッケル触媒板27を中心にして反時計回り方向に回転する回転気流の下流側の第2側部5にそのニッケル触媒板27と近接するよう貼着されている。垂線と平行で回転気流が衝突する面を有する第1酸化還元不均一触媒板である例えばアルミニウム触媒板29は、図3、図4に示すように第4側部7の長手方向の中間に前記ニッケル触媒板27と対向して配置されている。アルミニウム触媒板29は、ニッケル触媒板27と同様に支柱(図示せず)に支持されて第4側部7に固定されている。
【0016】
2本の永久磁石(例えば棒状永久磁石を3本直列に繋いだユニット)30,30は、図2、図3および図6に示すように第1、第3の側部4,6に配置された整流板ユニット8の凹状支持部10内に配置されている。第1側部4側の永久磁石30は、天板2側の一端がS極、他端側がN極になるように配置され、第2側部6側の永久磁石30は第1側部4側の永久磁石30と逆、すなわち天板2側の一端がN極、他端側がS極になるように配置されている。永久磁石30,30を構成する1本の棒状永久磁石は、残留磁束密度が12.7kG,保磁力が0.65kOe程度であることが好ましい。なお、永久磁石に代えて電磁石を用いてもよい。垂線と平行で回転気流が接触する面を有する2つの第2酸化還元不均一触媒板であるアルミニウム触媒板31は、第1、第3の側部4,6にそれぞれ磁石30,30に近接して配置されている。具体的には、第1側部4側のアルミニウム触媒板31は前述した整流板ユニット8の周辺構造を示す図6のように支柱13を挟み、両端を傾斜した第1側部4の支持板12に向けて水平方向に延出すると共に、両端を支持板12に固定されている。第3側部6側のアルミニウム触媒板(図示せず)も第1側部4側のアルミニウム触媒板31と同様な構造を有する。
【0017】
ハニカム形アルミニウム触媒32は、図2および図6に示すように整流板ユニット8の傾斜した内面に複数の整流板11を跨ぐように取付けられている。
【0018】
垂線と平行で回転気流が接触する面を有する第4酸化還元不均一触媒板、例えば2つのアルミニウム触媒板33,34は、図3に示すように第1マイナスイオン発生器25に近接する第2側部5、第2マイナスイオン発生器26に近接する第2側部5、にそれぞれ配置されている。
【0019】
次に、前述した構造の天吊型空気清浄機の作用を説明する。
【0020】
機外である室、例えば密閉された喫煙室に天吊型空気清浄機を設置し、そのシロッコファン24を例えば反時計回り方向に回転させて、喫煙室内の空気(喫煙気流)を筐体1の吸込みグリル3を通して筐体1内に吸い込む。この吸込みグリル3から吸い込まれた喫煙気流が誘電フィルタ14を通過する際、正電圧、例えば数1000Vの直流電圧を誘電フィルタ14の放電針23に印加すると、上下枠体17,19の接地電位の金属製メッシュ部16,18との間で放電してプラスイオンを発生する。プラスイオンの発生により、放電針23が差し込まれた電子フィルタエレメント20の活性炭担持メッシュ板21と金属製メッシュ部16,18の間の合成樹脂製不織布層22a,22bで誘電分極がなされ、喫煙気流中の粒状ダストをその電子フィルタエレメント20に吸着して除去する。
【0021】
誘電フィルタ14を通過し、ダストが除去された空気流(ダストフリー空気流)は、シロッコファン24の回転により誘電フィルタ14上方の筐体1内(気流回転空間35)を上昇し、第1、第3の側部4,6に取付けた整流板ユニット8の複数の整流板11間から喫煙室内に吹出される。整流板11の間から吹出されるダストフリー空気流は、プラス帯電され、その気流の一部が喫煙気流と共に同空気清浄機の筐体1の吸込みグリル3に流れ込む循環がなされる。このような循環において、筐体1内に配置した第1、第2のマイナスイオン発生器25,26からマイナスイオンを第1、第3の側部4、6に配置された整流板ユニット8の複数の整流板11に沿ってそれぞれ放出する。この時、マイナスイオンは気流の回転によりプラスイオンが存在する気流回転空間35に供給され、ダストフリー空気流と一緒に整流板11間から喫煙室に吹出され、そのマイナスイオンを含むダストフリー空気流の一部が再び吸込みグリル3に流入する。これにより、吸込みグリル3近傍のプラス帯電された喫煙気流を中和状態にする。このため、喫煙気流はシロッコファン24の回転作用(送風作用)で吸込みグリル3を通して誘電フィルタ14に円滑に導入され、前述したように粒状ダストをその電子フィルタエレメント20に吸着、除去される。
【0022】
すなわち、前記循環において喫煙室が密閉されているために室内の空気が次第にプラス帯電され、プラスイオンを発生する前記誘電フィルタ14の領域に対して反発力として作用する。このため、喫煙気流が誘電フィルタ14に流入するのを妨げる。この実施形態において、前述したように第2側部5の上部内面にそれぞれ取り付けた第1、第2のマイナスイオン発生器25,26からマイナスイオンを放出し、気流回転空間35に供給してダストフリー空気流と一緒に整流板11間から喫煙室に吹出し、そのダストフリー空気流の一部を吸込みグリル3に流入させる。このとき、吸込みグリル3近傍のプラス帯電された喫煙気流を中和状態にするため、喫煙気流を吸込みグリル3を通して誘電フィルタ14に円滑に導入できる。その結果、喫煙気流中の粒状ダストを誘電フィルタ14の電子フィルタエレメント20で良好に吸着、除去できる。なお、マイナスイオンの放出量(供給量)は喫煙室内の空気のプラス帯電度合に応じて制御することが好ましい。
【0023】
誘電フィルタ14上方の筐体1内の気流回転空間35には、誘電フィルタ14でプラスに帯電されたダストフリー空気流中の各種ガス分子と放出されたマイナスイオンとが共存するため、主としてヒドロキシラジカル(OH・)および水素イオン(H+)により構成されるプラスイオンと、主としてスーパーオキシド(O2-)により構成されるマイナスイオンとが生成され、シロッコファン24による回転運動を持つイオン生成場になる。このイオン生成場の両側(第1、第3の側部4,6側)の整流板ユニット8に永久磁石30,30をそれぞれ配置することによって、これら永久磁石30,30による磁場がイオン生成場に付与され、各イオンの運動との相互作用により電磁力が発生する。この電磁力により各永久磁石30,30近傍(各永久磁石30,30の磁場が作用する領域)のイオン生成場にプラスイオンおよびマイナスイオンが互いに結合することなく、それらのイオンが分離した状態で存在させることができる。この状態で、図6に示すように垂線と平行で回転気流が接触する面を有する2つの第2酸化還元不均一触媒板であるアルミニウム触媒板31,31を第1、第3の側部4,6にそれぞれ磁石30,30に近接して配置し、かつ永久磁石30,30の極を互いに逆向きにして配置することによって、各永久磁石30,30近傍のイオン生成場の分離したプラスイオンが各アルミニウム触媒板31の一方の面(第4側部7に向き合う面)に引き寄せられ吸着し、イオン生成場の分離したマイナスイオンが各アルミニウム触媒板31の他方の面(第2側部5に向き合う面)に引き寄せられ吸着し、その後に脱離する吸着・脱離がなされる。このため、ガス分子中の有害ガス分子NO+NO2,CO,NH3,CH3CHO,HCHO,CH3COOHを有効に還元酸化して無害な物質に改質する。
【0024】
すなわち、従来の据置型空気清浄機において喫煙気流をイオン発生部材で主としてヒドロキシラジカル(OH・)および水素イオン(H+)により構成されるプラスイオンと、主としてスーパーオキシド(O2-)により構成されるマイナスイオンを生成し、喫煙気流の汚染物質中の各種ガス分子を還元、酸化することが一部行われている。しかしながら、前記イオン発生部材で発生させたプラスイオンおよびマイナスイオンは個々に滞留せず、混合して存在するため、前記各ガス分子への還元、酸化の改質が有効に働かない。
【0025】
このようなことから、実施形態ではイオン生成場に永久磁石30,30を配置してその磁場とイオン生成場の回転による各イオンの運動との相互作用により電磁力を発生させ、かつアルミニウム触媒板31,31を第1、第3の側部4,6にそれぞれ磁石30,30に近接して配置することによって、それらのイオンを分離した状態でイオン生成場に存在させることを可能にすると共に、各アルミニウム触媒板31,31にプラスイオンおよびマイナスイオンを引き寄せて吸着し、その後脱離する吸着・脱離がなされるため、前記有害ガス分子を有効に還元酸化して無害な物質に改質することができる。
【0026】
また、ダストフリー空気流中の側鎖に炭化水素基を結合したベンゼン環を有する芳香族系ガス分子において、気流回転空間35に存在するマイナスイオンおよびプラスイオンと、第2酸化還元不均一触媒であるアルミニウム触媒板31,31とにより親電子置換反応が生じ、ベンゼン環側鎖に結合した炭化水素基が酸化されてカルボキシル基に改質される。側鎖がカルボキシル基に改質された芳香族系ガス分子を含むダストフリー空気流は、整流板ユニット8の複数の整流板11から喫煙室に吹き出され、その気流の一部が再び筐体1の吸込みグリル3を通して誘電フィルタ14の電子フィルタエレメント20を流通する。このとき、気流中の改質された芳香族系ガス分子には極性の大きいカルボキシル基を有するため、電子フィルタエレメント20に強く吸着される。その結果、ダストフリー空気流中の臭気の原因になる芳香族系ガス分子も減少させることが可能になる。なお、炭化水素基を結合したベンゼン環を有する芳香族系ガス分子以外の芳香族系ガス分子も同様に減少させることが可能である。
【0027】
プラスに帯電されたダストフリー空気流および放出されたマイナスイオンは回転気流に乗って、筐体1の第2、第4の側部5,7に沿っても流れる。このとき、図3および図4に示すように筐体1の第2、第4の側部5,7に垂線と平行で回転気流が衝突する面を有する2つの第1酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒板27、アルミニウム触媒板29をそれぞれ配置することによって、回転気流中の各種ガス分子がそれらの触媒板27,29に吸着し、回転気流に存在するプラスイオンおよびマイナスイオンの衝突、接触によりガス分子中の有害ガス分子NO+NO2,CO,NH3,CH3CHO,HCHO,CH3COOHの中で、特にNO+NO2,CO,NH3を有効に還元酸化して無害な物質に改質する。加えて、第3酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒薄板28をニッケル触媒板27を中心にして反時計回り方向に回転する回転気流の下流側の第2側部5にそのニッケル触媒板27と近接するよう貼着することによって、ニッケル触媒板27と協同して回転気流中の前記有害ガス分子の酸化還元を助長できる。
【0028】
プラスに帯電されたダストフリー空気流および放出されたマイナスイオンは回転気流に乗って、筐体1の第2、第4の側部5,7に沿っても流れる際、図3に示すように垂線と平行で回転気流が接触する面を有する第4酸化還元不均一触媒板、例えばアルミニウム触媒板33を第1マイナスイオン発生器25に近接する第2側部5に配置することによって、そのアルミニウム触媒板33にダストフリー空気流とより多い量のマイナスイオンとが衝突して強い酸化作用が働き、ダストフリー空気流中の有害分子ガス、特にホルムアルデヒド(HCHO)を有効に分解して無害化できる。第2マイナスイオン発生器26に近接する第2側部5に配置したアルミニウム触媒板34においても同様にダストフリー空気流中の有害分子ガス、特にホルムアルデヒド(HCHO)を有効に分解できる。
【0029】
有害ガス分子がほぼ除去されたダストフリー空気流は、回転気流に乗って第1、第3の側部4,6に取付けられた整流板ユニット8の複数の整流板11間を通して喫煙室に吹き出される。この際、ハニカム形アルミニウム触媒32を図2および図6に示すように整流板ユニット8の傾斜した内面に複数の整流板11を跨ぐように取付けることによって、ダストフリー空気流が図8の矢印に示すようにハニカムの多数の六角筒面に衝突する。このため、ダストフリー空気流のガス分子(特にオキソニウムイオン;H3O・+)が触媒32に吸着される量を増大できる。その結果、ダストフリー空気流のオキソニウムイオンを効率的に分解して、ダスト濃度の減少に費やす時間を短縮できる。また、ハニカム形アルミニウム触媒32は酸化触媒としても機能するため、ダストフリー空気流中のCOを酸化してCO2に改質できる。
【0030】
したがって、実施形態によれば第1、第3の側部4,6の整流板ユニット8に永久磁石30,30をそれぞれ傾斜して配置すると共に第2酸化還元不均一触媒であるアルミニウム触媒板31,31をこの永久磁石30,30に近接して配置し、さらに第2、第4の側部5,7に第1酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒板27、アルミニウム触媒板29を配置することによって、空気、例えば喫煙気流中の汚染物質である粒状ダストのみならず有害ガス分子であるNO+NO2,CO,NH3を効率的に除去し、さらに側鎖に炭化水素基が結合されたベンゼン環を有するガス分子を減少して清浄化することが可能な天吊型空気清浄機を提供できる。
【0031】
なお、実施形態では2つのマイナスイオン発生器25,26を第2側部5に配置したが、喫煙量が少なく、処理対象気流内の汚染物質が比較的少ない場合、第3側部6に近接する第2側部5側のみに1つのマイナスイオン発生器を配置してもよい。この場合、第4酸化還元不均一触媒板もマイナスイオン発生器に近接して1つ配置される。
【0032】
第1酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒板の代わりにステンレス、コバルト、鉄の触媒板を用いてもよい。
【0033】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0034】
(参照例1)
まず、面積22.2m2、天井高さ2.5mの密閉室の天井に天吊型空気清浄機を取り付けた。天吊型空気清浄機は、図1〜図7に示す筐体1内に第1、第2のマイナスイオン発生器25,26、永久磁石30,30、第2酸化還元不均一触媒板であるアルミニウム触媒板31,31を配置し、それ以外の酸化還元不均一触媒板を配置していない。第1、第2のマイナスイオン発生器25,26は、4W,空中放電式、−7000Vで、吹出口でのマイナスイオン量300万個/cc、オゾン発生量0.01ppm以下のものを用いた。永久磁石30,30は、残留磁束密度12.7kG、保磁力0.65kOeのアルニコ棒磁石を3本直列接続した磁石ユニットを用いた。
【0035】
密閉室の窓を開放して室の空気を十分に換気した後、再度密閉させた。密閉室内に高さ40cmの机を天吊型空気清浄機の直下に位置するように配置し、この机上に灰皿を置き、この灰皿に点火したタバコ(ハイライト)3本を10分間放置した後、これらのタバコを消火した。タバコの点火後、前記空気清浄機の誘電フィルタへの6300Vのプラス直流電圧印加、シロッコファンの回転により空気清浄化を行った。この空気清浄化において、机上中央で所定の時間経過後のダスト濃度をデジタル粉塵計(柴田科学機器工業社製商品名:MODELP−5H)により測定し、ガス成分濃度(ppm)を気体検知管(株式会社ガステック社製商品名)により測定した。
【0036】
(実施例1)
面積22.2m2、天井高さ2.5mの密閉室の天井に参照例1に第1酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒板27,アルミニウム触媒板29、第3酸化還元不均一触媒薄膜であるニッケル触媒薄板28を追加した構造の天吊型空気清浄機を取り付けた以外、参照例1と同様な方法で空気清浄化を行い、机上中央のダスト濃度およびガス成分濃度(ppm)を測定した。
【0037】
(実施例2)
面積22.2m2、天井高さ2.5mの密閉室の天井に参照例1に第1酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒板27,アルミニウム触媒板29、第3酸化還元不均一触媒薄膜であるニッケル触媒薄板28、ハニカム形不均一触媒であるハニカム形アルミニウム触媒32を追加した構造の天吊型空気清浄機を取り付けた以外、参照例1と同様な方法で空気清浄化を行い、机上中央のダスト濃度およびガス成分濃度(ppm)を測定した。
【0038】
(実施例3)
面積22.2m2、天井高さ2.5mの密閉室の天井に参照例1に第1酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒板27,アルミニウム触媒板29、第3酸化還元不均一触媒薄膜であるニッケル触媒薄板28および第4酸化還元不均一触媒板であるアルミニウム触媒板33,34を追加した構造の天吊型空気清浄機を取り付けた以外、参照例1と同様な方法で空気清浄化を行い、机上中央のダスト濃度およびガス成分濃度(ppm)を測定した。
【0039】
(実施例4)
面積22.2m2、天井高さ2.5mの密閉室の天井に参照例1に第1酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒板27,アルミニウム触媒板29、第3酸化還元不均一触媒薄膜であるニッケル触媒薄板28、ハニカム形不均一触媒であるハニカム形アルミニウム触媒32および第4酸化還元不均一触媒板であるアルミニウム触媒板33,34を追加した構造の天吊型空気清浄機を取り付けた以外、参照例1と同様な方法で空気清浄化を行い、机上中央のダスト濃度およびガス成分濃度(ppm)を測定した。
【0040】
参照例1および実施例1〜4の天吊型空気清浄機を用いた空気清浄操作におけるガス成分濃度およびダスト濃度の減少時間T(タバコ消火後のダスト値[1分間累積:mg/cm3]が消火時の値の1/2になるまでの時間)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【表1】

【0041】
前記表1から明らかなように第1酸化還元不均一触媒板であるニッケル触媒板27,アルミニウム触媒板29、第3酸化還元不均一触媒薄膜であるニッケル触媒薄板28を追加した実施例1〜4の天吊型空気清浄機は、NO+NO2,CO,NH3の有害ガス分子の除去率が前記触媒を配置しない参照例1の天吊型空気清浄機に比べて向上できることがわかる。
【0042】
特に、ニッケル触媒板27,アルミニウム触媒板29と共にハニカム形アルミニウム触媒32配置した実施例2の天吊型空気清浄機は、NO+NO2,CO,NH3の有害ガス分子の除去率がより向上され、さらにダスト濃度の減少時間Tを短縮できることがわかる。
【0043】
また、ニッケル触媒板27,アルミニウム触媒板29と共に第1、第2のマイナスイオン発生器25,26に近接してアルミニウム触媒板33,34を配置した実施例3の天吊型空気清浄機は、HCHOをゼロまで除去できることがわかる。
【0044】
さらに、ニッケル触媒板27,アルミニウム触媒板29と共にハニカム形アルミニウム触媒32、および第1、第2のマイナスイオン発生器25,26に近接してアルミニウム触媒板33,34を配置した実施例4の天吊型空気清浄機は、NO+NO2,CO,NH3の有害ガス分子の除去率がより向上でき、ダスト濃度の減少時間Tも短縮でき、さらにHCHOをゼロまで除去できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る天吊型空気清浄機を示す斜視図。
【図2】図1の天吊型空気清浄機の断面図。
【図3】図1の天吊型空気清浄機の上面図。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図。
【図5】図1の天吊型空気清浄機に組み込まれる誘電フィルタを示す断面図。
【図6】図1の天吊型空気清浄機の第1側部に取付けられる整流板ユニットの周辺構造を示す斜視図。
【図7】図1の天吊型空気清浄機の第2側部に取り付けられる第1酸化還元触媒板を示す斜視図。
【図8】図1の天吊型空気清浄機のハニカム形アルミニウム触媒の空気流の流れ状態を説明する断面図。
【符号の説明】
【0046】
1…筐体、3…吸込みグリル、4〜7…側部、8…整流板ユニット、11…整流板、14…誘電フィルタ、20…電子フィルタエレメント、23…放電針、24…シロッコファン、25,26…マイナスイオン発生器、27…ニッケル触媒板(第1酸化還元不均一触媒板)、28…ニッケル触媒薄板(第3酸化還元不均一触媒薄板)29…アルミニウム触媒板(第4酸化還元不均一触媒板)、30,30…永久磁石、31,31…アルミニウム触媒板(第2酸化還元不均一触媒板)、32…ハニカム形アルミニウム触媒、35…気流回転空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、吸込み部を持つ底板と、第1〜第4の側部と、対向する第1、第3の側部にそれぞれ配置され、吸込んだ気流を排出する整流板とを備えた天吊される筐体;
前記筐体内に前記吸込み部上方に位置するように配置され、空気中の汚染物質に含まれる粒状ダストをプラスイオンの雰囲気に曝し、誘電分極により前記粒状ダストを吸着、除去する誘電フィルタ;
前記筐体内に前記誘電フィルタの上方に位置するように配置され、機外の空気を前記誘電フィルタに導入、通過させ、前記誘電フィルタの上方の空間に回転気流を生成するための送風機;
前記筐体内に配置されたマイナスイオン発生器;
前記第2、第4の側部内面にそれぞれ配置され、垂線と平行で前記回転気流が衝突する面を有する第1酸化還元不均一触媒板;
前記第1、第3の側部の整流板にそれぞれ配置された磁石;および
前記第1、第3の側部にそれぞれ前記磁石に近接して配置され、垂線と平行で前記回転気流が接触する面を有する第2酸化還元不均一触媒板;
を備えたことを特徴とする天吊型空気清浄機。
【請求項2】
前記第1酸化還元不均一触媒板を中心にして回転気流の下流側の第2側部にその第1酸化還元不均一触媒板と近接するよう貼着された第3酸化還元不均一触媒薄板をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の天吊型空気清浄機。
【請求項3】
前記第1、第3の側部の整流板内面に配置されたハニカム形不均一触媒をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の天吊型空気清浄機。
【請求項4】
前記マイナスイオン発生器に近接するよう配置され、垂線と平行で前記回転気流が接触する面を有する第4酸化還元不均一触媒板をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の天吊型空気清浄機。
【請求項5】
2つの前記第1酸化還元不均一触媒板のうち、一方の触媒板がニケッルから作られ、他方の触媒板がアルミニウムから作られる請求項1ないし4いずれか記載の天吊型空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−268969(P2009−268969A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121596(P2008−121596)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(595036460)
【Fターム(参考)】