説明

天日乾燥床及び乾燥汚泥搬出方法

【課題】乾燥汚泥の搬出量を低減するとともに搬出を容易にする。
【解決手段】実施形態に係る天日乾燥床は、貯槽の底面に透水層が形成され、当該透水層上に投入される含水汚泥を天日で乾燥する。この天日乾燥床は、含水汚泥を投入前の透水層上に、当該透水層を覆う複数の帯状の透水性シートを備え、各透水性シートは、短辺が固定されるとともに、長辺は隣り合う他の透水性シートと重なるように配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、汚泥乾燥処理に用いられる天日乾燥床及び天日乾燥床から乾燥汚泥を搬出する乾燥汚泥搬出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場では、河川水等の処理で発生した含水汚泥の処理に天日乾燥床が利用されることがある。天日乾燥床は、含水汚泥から水分を除去するものであり、排水管等を有する貯槽中に砕石層や砂層等の透水層を有している。天日乾燥床に処理対象の含水汚泥が投入されると、天日によって乾燥されるとともに、汚泥が含む水分は透水層を透過して排水管等を介して排水され、透水層上に乾燥した汚泥が堆積する。その後、天日乾燥床からは乾燥汚泥が搬出されて廃棄物として処理された後に、天日乾燥床には再び含水汚泥が投入されて処理が繰り返される。
【0003】
天日乾燥床から乾燥汚泥を搬出する際には、乾燥汚泥と天日乾燥床を構成する砂層とを区別し、乾燥汚泥のみを搬出しなければならない。一方、浄水処理で得られる乾燥汚泥には砂や砕石等が含まれる割合が多いため、乾燥汚泥に含まれる砂や砕石と天日乾燥床を構成する砂や砕石の区別が困難になる。したがって、天日乾燥床から搬出される乾燥汚泥に天日乾燥床を構成する砂や砕石等が含まれることがあった。
【0004】
天日乾燥床では、含水汚泥から水分のみを排出するために砂層や砕石層の高さは、水分の排出に可能な程度あることが望ましい。したがって、乾燥汚泥の搬出の際に砂層や砕石層の砂や砕石までも搬出された場合、再び含水汚泥を投入する前に搬出された量の砂や砕石を天日乾燥床に追加して敷設する必要がある。
【0005】
また、乾燥汚泥の搬出の際に砂層や砕石層までも搬出された場合、本来処理すべき乾燥汚泥の量よりも大量の砂や砕石が汚泥として搬出されることとなり、乾燥汚泥として排出される汚泥の量が本来の乾燥汚泥の量よりも多くなるため搬出が困難になるとともに、廃棄物の量が増えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−136096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の技術では、天日乾燥床から搬出される汚泥に天日乾燥床を構成する砂や砕石が含まれる場合、再び砂や砕石を天日乾燥床に敷設したり、廃棄する汚泥の量が増える問題があった。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明の実施形態では、乾燥汚泥の搬出量を低減するとともに搬出を容易にする天日乾燥床及び乾燥汚泥搬出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、実施形態に係る天日乾燥床は、貯槽の底面に透水層が形成され、当該透水層上に投入される含水汚泥を天日で乾燥する。この天日乾燥床は、含水汚泥を投入前の透水層上に、当該透水層を覆う複数の帯状の透水性シートを備え、各透水性シートは、短辺が固定されるとともに、長辺は隣り合う他の透水性シートと重なるように配列される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る天日乾燥床を説明する横断面図及び上面図である。
【図2】実施形態に係る天日乾燥床の使用例を説明する図である。
【図3】実施形態に係る乾燥汚泥搬出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態に係る天日乾燥床及び乾燥汚泥搬出方法について説明する。図1(a)に実施形態に係る天日乾燥床1の横断面図を示し、図1(b)に天日乾燥床1の上面図を示している。
【0012】
図1(a)に示すように、天日乾燥床1では、貯槽10の底面に透水層として第1層である砕石層11及び第2層である砂層12が形成され、砂層12上に投入される含水汚泥を天日によって乾燥する。また、この天日乾燥床1は、含水汚泥を投入前の砂層12上に、砂層12を覆う複数の帯状の透水性シート13を備えている。各透水性シート13は、図1(b)に示すように、短辺が貯槽10の外部で固定具14を利用して固定されるとともに、長辺は隣り合う他の透水性シート13と重なるように配列されている。
【0013】
例えば、この天日乾燥床1で処理対象となる含水汚泥は、浄水場で河川水等を浄水処理した後に排出される汚泥であって、川砂等を含む高含水率(例えば、90%程度)のものである。
【0014】
貯槽10は、壁面及び底面がコンクリート等で覆われており、底面に排水口101を有している。天日乾燥床1では、汚泥に含まれていた水分を長期間(例えば、数ヶ月〜1年間程度)天日に当てることによって蒸発させるとともに、砂層12や砕石層11を透過させて排水口101に接続される排水管102から排出することができる。なお、図1には、透水層は、砕石層11上に砂層12が形成される例で示しているが、透水層の構成はこれに限られず、例えば、さらに多くの層で形成されていてもよい。
【0015】
図2(a)に示すように、実施形態に係る天日乾燥床1では、天日乾燥の際、砂層12上を透水性シート13で覆った後に含水汚泥20を投入する。また、天日乾燥床1では、含水汚泥20を投入後、天日乾燥させると、図2(b)に示すように乾燥汚泥21となる。天日乾燥床1では、透水性シート13の上下で含水汚泥に含まれる砂や砕石と、透水層を形成する砂や砕石とを区別することができる。
【0016】
例えば、含水汚泥20が乾燥汚泥21となると、固定具14によって固定されている透水性シート13の固定が解かれて、乾燥汚泥21を乗せた透水性シート13を貯水層10から搬出することで、乾燥汚泥のみを容易に搬出することができる。
【0017】
ここで利用する透水性シート13は、水分を透過させる性質を有し、水で破損されることがなく、含水汚泥や乾燥汚泥等のある程度の重さにも耐えうる強度を持つものである必要がある。また、透水性シート13が水を透過させるための穴や網目を有している場合には、この穴や網目のサイズは、乾燥汚泥(川砂や砂利等)の粒子が落ちない程度に細かい必要がある。例えば、水を透過させ、水で破損されることなく、ある程度の強度があり、穴や網目のサイズが乾燥汚泥の粒子よりも細かいものであれば、ポリプロピレン性の布、ポリエチレン製の布、麻製の布、目の細かい漁網等を透水性シート13として利用することができる。
【0018】
なお、天日乾燥床1で形成された乾燥汚泥21の量は、多量であってその重量は大きい。例えば、天日乾燥床1の底面積が10m四方等の広い面積であって、砂層12の上面から貯槽10の上面の深さが1m程度の場合、形成される乾燥汚泥21の量は10tを超えることもある。このように乾燥汚泥21の量が多量の場合、天日乾燥床1内の乾燥汚泥21を全て、透水性シート13を持ち上げて搬出することが困難であるため、油圧ショベル等を利用して乾燥汚泥21を貯槽10から搬出しもよい。このときにも、油圧ショベル等では、透水性シート13の上に存在する含水汚泥21を搬出すれば、この含水汚泥21とともに、砂層12や砕石層11を形成する砂や砕石を搬出することはない。
【0019】
また、油圧ショベル等を利用して天日乾燥床1から乾燥汚泥21を搬出しても、全てを搬出することは困難であり、図3(a)に示すように透水性シート13上に少量の乾燥汚泥21が残ることがある。したがって、油圧ショベル等を利用して大量の乾燥汚泥21を搬出した後に透水性シート13上に残った少量の乾燥汚泥21は、図3(b)に示すように透水性シート13を持ち上げて搬出してもよい。
【0020】
ここで、複数枚の透水性シート13を利用するのは、広い面積の砂層12上を一枚のシートで覆った場合、シートの重さが重くなり、その重いシート上に乾燥汚泥21を載せて搬出するのが困難になるためである。また、このような天日乾燥床1の存在する場所は、浄水場等であり、このような場所は大型車両が通ることができないことが多い。したがって、乾燥汚泥21も複数回に分けて少しづつ運ばれることになるため、複数枚の透水性シート13を利用して少量づつ搬出することは、作業の妨げにはならない。
【0021】
なお、複数の透水性シートを砂層12上で格子状に敷いた場合には、固定が困難であり、含水汚泥20を投入する際や乾燥汚泥21を搬出する際に敷いた透水性シートがずれることもあると考えられる。したがって、図1(b)に示すように、帯状の各透水性シート13を隣り合う他の透水性シート13と重なるように敷くことで、透水性シートの短辺を固定することで容易に固定することができ、含水汚泥20を貯槽10に投入する際や油圧ショベル等を利用して乾燥汚泥21を搬出する際にずれにくくして乾燥汚泥21が砕石層11の砕石や砂層12の砂と混合するのを防止することができる。また、隣り合う他の透水性シート13と重なるように敷いているため、透水性シート13を持ち上げて乾燥汚泥21を搬出する際に乾燥汚泥21がこぼれ落ちることを防止することができる。
【0022】
従来の天日乾燥床では、貯槽の壁面等に目印を設けたり、目視によって予測したりすることで、透水層と乾燥汚泥とを区別していた。この場合、透水層と乾燥汚泥とが区別しにくく、乾燥汚泥とともに透水層の砂や砕石等も天日乾燥床から搬出することもあり、含水汚泥を再投入する前に透水層に砂や砕石を追加する必要があった。また、透析層上を人や油圧ショベルが移動することで、透水層を形成する砂や砕石等と乾燥汚泥とが混合されることで、透水層と乾燥汚泥とがさらに区別しにくくなり、このように混合された場合も乾燥汚泥とともに透水層を形成する砂や砕石が搬出されることもあった。
【0023】
これに対し、上述した実施形態に係る天日乾燥床1では、砂層12上を透水性シート13で覆うことで砂層12と乾燥汚泥21とを区別している。これにより、天日乾燥床1からは、透水層を形成する砂や砕石等が乾燥汚泥とともに搬出されるのを防ぐことができる。したがって、廃棄物の量を軽減することができるとともに、新たな砂や砕石の追加も必要としなくなる。また、上述した実施形態に係る乾燥汚泥搬出方法では、容易に乾燥汚泥21のみを天日乾燥床1から搬出することができる。
【0024】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1…天日乾燥床
10…貯槽
101…排水口
102…排水管
11…砕石層(透水層)
12…砂層(透水層)
13…透水性シート
14…固定具
20…含水汚泥
21…乾燥汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯槽の底面に透水層が形成され、当該透水層上に投入される含水汚泥を天日で乾燥する天日乾燥床であって、
含水汚泥を投入前の前記透水層上に、当該透水層を覆う複数の帯状の透水性シートを備え、
各透水性シートは、短辺が固定されるとともに、長辺は隣り合う他の透水性シートと重なるように配列される
ことを特徴とする天日乾燥床。
【請求項2】
貯槽の底面に透水層が形成され、当該透水層上に投入される含水汚泥を天日で乾燥する天日乾燥床から乾燥汚泥を搬出する搬出方法であって、
含水汚泥を投入前の透水層を覆い、短辺が前記貯槽の外部で固定されるとともに、長辺は隣り合う他の透水性シートと重なるように配列されていた透水性シートを前記貯槽から引き上げて乾燥汚泥を前記天日乾燥床から搬出する
ことを特徴とする乾燥汚泥搬出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−2420(P2012−2420A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137143(P2010−137143)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】