説明

天然l−メントールを生成するための方法及び装置

実施形態は、高純度の天然l−メントールの効率的な生成を提供する。いくつかの実施形態において、天然l−メントールを生成する方法は、晶析装置に粗製ハッカ油を供給することと、晶析装置の温度を徐々に下げることとを含み、これらにより、2週間以内に高純度の結晶を生成する。本願において開示された方法は医薬品GMPに適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本願は、2009年2月17日に提出された米国仮特許出願第61/153258号の優先権の利益を主張する。その出願の内容は、全て参照として本明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、l−メントールを生成するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
メントール、特にl−メントールは、例えば食品添加物、薬物成分、化粧品、香料及び医薬の分野に広く用いられる重要な物質である。l−メントールは、ヨウシュハッカ(Mentha arvensis)及びセイヨウハッカ(Mentha piperita)から得られたハッカ油の主成分である。一般に、l−メントールは、粗製ハッカ油の結晶化により得られる。結晶化の方法及び出発物質に依存して、その結晶は、味、大きさ及び形状が異なる。ハッカ油から得られたメントールの結晶に付着したハッカ油の残留液は、その結晶の官能特性に影響を及ぼす。通常、l−メントールは、例えばチューインガム、キャンディ及びタバコ等の菓子及び口中清涼剤等を含む食物の風味として用いられている。微量の不純物の存在がl−メントールの品質及び風味に悪影響を及ぼすため、高純度のl−メントールを生成するための製造方法は、長い間、興味を持たれていた。
【0004】
l−メントールは、粉末、結晶、凝固された蒸留物、フレーク及び圧搾された物品等の固体の形態で商業的に得られる。一般に、天然l−メントールは、例えばヨウシュハッカ(Mentha arvensis)から得られた油の再結晶化等により、粗製ハッカ油から精製される。しかしながら、そのようなl−メントールの生成方法は、2週間から1ヶ月以上の生成時間がかかる。従来のl−メントールの生成方法において、天然の粗製ハッカ油を結晶化工程に直接に用いることができない。それどころか、従来の方法は粗製ハッカ油から粗製l−メントールを生成するために最初の結晶化を行い、その後に、精製l−メントールを生成するために再結晶化工程を行う必要がある。さらに、l−メントールを生成するための従来の公知の方法は、多くの手作業及び多くの材料を手で扱うことを含む。ハッカ油及び生成されたl−メントールの結晶を手で扱うことが不可欠であるため、前記のl−メントールの製造方法が医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(Good Manufacturing Practice:GMP)の基準に適合することは困難である。
【発明の概要】
【0005】
本教示は、特に、高純度の天然l−メントールを生成するための方法及び装置を提供する。
【0006】
本教示の方法の種々の実施形態は、容器の中で徐々に冷却することにより粗製ハッカ油からl−メントールを結晶化することと、同一の容器の中で生じた結晶の精製を行うこととを含む。
【0007】
本明細書に開示されたいくつかの実施形態は、晶析装置の中に粗製ハッカ油を供給することと、晶析装置の温度を徐々に下げることにより粗製ハッカ油からl−メントールを結晶化することと、残留油及び不純物を除去するためにl−メントールの結晶に流体を通すことと、晶析装置から溶解液としてl−メントールを移送するために、精製されたl−メントールの結晶を溶解することと、溶解液を乾燥して固体のl−メントール生成物とするために冷却することとを備え、精製されたl−メントールの結晶の純度は少なくとも98重量%であり、粗製ハッカ油又はl−メントールとヒトとが接触することがない閉鎖系で行われる方法である。
【0008】
いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は植物由来である。
【0009】
いくつかの実施形態において、l−メントール生成物は、少なくとも99重量%の純度を有する。いくつかの実施形態において、l−メントール生成物は、少なくとも99.4重量%の純度を有するである。
【0010】
いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、約30重量%〜約95重量%のl−メントールを含む。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油中のl−メントールの濃度は、約50重量%〜約90重量%である。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、約30重量%以下の有機溶媒を含む。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、実質的に有機溶媒が付加されていない。
【0011】
いくつかの実施形態において、晶析装置の温度は41℃に徐々に下げられる。いくつかの実施形態において、晶析装置内の温度は約−30℃〜約30℃の間に徐々に下げられる。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記の方法は、固体のl−メントール生成物を粒子とするために砕くことをさらに備えている。いくつかの実施形態において、その粒子はペレットである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記の方法は、固体のl−メントール生成物を押し出し成形することをさらに備え、l−メントール生成物の粉砕は、押し出し成形された固体のl−メントール生成物の切断により行われる。いくつかの実施形態において、前記のペレットは、晶析装置に流通可能に接続されたペレタイザを用いて形成される。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記の方法は、l−メントールの結晶化を促進するために、晶析装置にl−メントールの種結晶を導入することをさらに備えている。いくつかの実施形態において、l−メントールの種結晶を導入することは、予め形成されたl−メントールの種結晶を加えることを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、l−メントールの種結晶の導入は、l−メントールの種結晶を形成するために粗製ハッカ油の一部を急速に冷却することを含む。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油の一部の急速な冷却は、10℃程度の温度に設定された面に粗製ハッカ油の一部を触れさせることを含む。いくつかの実施形態において、その面の温度は、約0℃〜約20℃である。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記の方法は、晶析装置の温度を徐々に上げて、残留油及び不純物を除去することをさらに備えている。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記の方法は、晶析装置の中の温度を徐々に上げて、残留油及び不純物を除去することを促進するために、減圧又は加圧を行うことをさらに備えている。いくつかの実施形態において、l−メントールの結晶は、約35℃〜約40℃に徐々に上げられる。いくつかの実施形態において、前記の流体はガスである。いくつかの実施形態において、ガスは空気、窒素(N)、不活性ガス及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、精製l−メントールの結晶は、粗製ハッカ油を一度のみ結晶化することにより得られる。
【0019】
本明細書に開示されたいくつかの実施形態は、植物由来の粗製ハッカ油を収容する晶析装置と、その晶析装置にガスを通すのに適合されたストリップシステムと、晶析装置においてl−メントールの結晶の形成を引き起こすために、少なくとも8時間かけて前記粗製ハッカ油が液体状態である温度から30℃以下の温度に徐々に粗製ハッカ油の温度を下げるための前記晶析装置の温度の低下を開始すること、前記結晶から液体を除去するために前記晶析装置における前記結晶にガスを通すために前記ストリップシステムを作動すること、及び前記結晶を溶解するために前記晶析装置の加熱を開始することをプログラムされたプロセッサを含む自動工程制御システムと、晶析装置から溶解されたl−メントールを受けるように構成された導管とを備え、晶析装置と導管とは共に、その内容物と外部の汚染物質との接触を防ぐ閉鎖系を構成する、l−メントールの精製システムを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、約30重量%〜約95重量%のl−メントールを含む。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油中のl−メントールの濃度は、約30重量%〜約50重量%である。
【0021】
いくつかの実施形態において、晶析装置は、複数の冷却プレート及び/又は冷却コイルを備えている。いくつかの実施形態において、自動工程制御システムは、複数の冷却プレート及び/又は冷却コイルのそれぞれの温度を独立して制御する。
【0022】
いくつかの実施形態において、ストリップシステムは、晶析装置の上部の近傍に、圧力をかけてガスを導入するように形成されている。いくつかの実施形態において、ストリップシステムは、晶析装置の底部の近傍に、ガスを排出させるように形成されている。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記のシステムは、そのシステムを操作するために自動工程制御システムと通信するユーザ制御インターフェースをさらに備えている。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記のシステムは自動である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記のシステムは、結晶形成検出器をさらに備えている。いくつかの実施形態において、結晶形成検出器は、晶析装置の中の材料の光学特性の変化を検出するように形成された光源及び光検出器を含む。いくつかの実施形態において、結晶形成検出器、冷却面の熱吸収を測定するように形成された熱吸収検出システム、及び冷却面の近傍の温度を測定するように形成された熱電対を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、自動工程制御システムは、測定又は推定された粗製ハッカ油中のl−メントールの濃度に対応する識別子を受けるように形成され、自動工程制御システムは、少なくとも部分的にその識別子に基づいて晶析装置の中の結晶化条件を選択する。
【0027】
いくつかの実施形態において、導管は貯蔵タンクと流通可能に設けられ、貯蔵タンクは部分的に閉鎖系である。いくつかの実施形態において、導管はペレタイザと流通可能に設けられ、ペレタイザは部分的に閉鎖系である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は粗製ハッカ油からl−メントールを精製するための従来の方法を示すフローチャートである。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、l−メントールを生成するための方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】図3は本明細書に開示されるl−メントールを精製するためのシステムのいくつかの実施形態における代表的な晶析装置を示す断面図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、l−メントールを精製するためのシステムの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に開示される種々の実施形態は、概して、高純度の天然l−メントールを生成するためのシステム及び方法に関する。
【0030】
現在、既存のl−メントールの生成技術の数は限られている。従来のl−メントールの生成方法の一例を図1に示す。簡潔に説明すると、粗製ハッカ油に対し第1の結晶化を行い、その後、その結晶から脱メントール化油を取り除く。その後、粗製l−メントールの結晶は、母液を形成するために溶解され、それは所望のl−メントール濃度に調整される。その母液に対して再結晶化工程を行い、その後、その結晶から脱メントール化油を取り除く。残りの結晶質のl−メントールは、l−メントール生成物を得るために精製され、、ふるいにかけられる。
【0031】
今まで、種々のl−メントールの生成技術は、種々の段階における長い生成時間及び多くの工程材料の取り扱いを含むため制限されている。特に、粗製ハッカ油からl−メントールを精製する従来の方法は、粗製ハッカ油成分からl−メントールを単離するために2サイクルの結晶化を必要とする。さらに、従来のl−メントールの生成工程をGMP基準に適合させることは、工程材料を手で取り扱うことが不可欠であるため困難であるだろう。従来のl−メントールの生成技術における他の問題は、固体の生成物の凝集及びブロックの形成(ブロッキング)であり、これによりl−メントールの流動性及び取り扱いが害される。
【0032】
l−メントールの生成のための新規のアプローチは、粗製ハッカ油から高純度のl−メントールを直接に生成させるように開発された。その生成工程において、l−メントールの結晶は、ヒトと粗製ハッカ油又はl−メントールとの接触の必要がない閉鎖系において、粗製ハッカ油の制御された冷却により粗製ハッカ油から直接に形成される。従って、本明細書に開示された方法は、GMP基準に容易に適合でき、医薬品グレードのl−メントールを生成するために用いられ得る。
【0033】
一実施形態において、メントールの結晶は、その結晶が含まれた同一の容器内でさらに精製されることが可能であり、高純度のl−メントールを得るのに再結晶化又は粗製油への添加物が必要なく、その方法は従来のl−メントールの生成方法よりも少ない時間で済む。精製の後に、固体のメントール生成物の凝集及びブロックの形成を防ぐために二酸化シリコン等の添加物を加えなくとも、そのメントール生成物を適当な硬さ及び形状のペレットに形成することができる。いくつかの実施形態において、l−メントールの生成方法は、完全に手を使わず操作でき、医薬品のGood Manufacturing Practice(GMP)に容易に適合できる。
【0034】
いくつかの実施形態は、l−メントールの生成に有用なシステムを含む。例えば、そのシステムは、高純度のl−メントールの生成を(部分的又は完全に)自動化し、手を使わず操作できるようにする。いくつかの実施形態において、l−メントールの生成のためのシステムは、取り扱いを容易にするためにl−メントールのペレットを形成するためのペレタイザを含むことができる。いくつかの実施形態において、l−メントールの生成のためのシステムは、冷却器及び/又はふるいを含むことができる。いくつかの実施形態において、そのシステムを医薬品GMPに適合できる。
【0035】
いくつかの実施形態において、高純度(約99.5%以上)のl−メントールの生成のための装置が提供される。その装置は、l−メントールの結晶化の間、温度を自動で制御し、維持できる。一実施形態において、l−メントールの生成は、標準的な又は選択的な付属物を含むように改変された晶析装置を用いて行われ得る。他の実施形態において、l−メントールの生成は、温度調節が高度に制御されるように適用された専用の晶析装置を用いて行われ得る。例えば、微量晶析装置(例えば、これに限られないがSulzer社製スタティック晶析装置S−1)は、温度センサ、吸引システム、圧搾空気システム及び/又は晶析装置の制御操作を補助する他の要素を組み合わせて用いるように適応され得る。
【0036】
いくつかの実施形態は、温度条件の制御下で徐々に冷却することによる結晶化によって高純度のl−メントールを生成するための方法を含む。約1ヶ月かかる従来のl−メントールの生成方法と比較して、前記のような方法を用いると、l−メントールの結晶化及び精製が約2週間以下で完了できる。従って、本明細書に論じられている特定のl−メントールの生成方法は、高純度のl−メントールの結晶を生成するための時間を約2、3週間から約12日以下に低減できる。その実施形態によって、本明細書に記載されたシステム及び方法を用いた高純度のl−メントールの生成には、約12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日又はそれ以下の日数だけかかる。従って、その方法は、高純度のl−メントールのより速い生成を促進できる。さらに、必要時間の低減は、特定の結晶化システムの全体の生成量を増大できる。
【0037】
当業者により理解されるように、手作業無しに高純度のl−メントールを速く生成できることは、特に、医薬品GMPが望まれる場合に、その申請にとって大きな利点を有することができる。本明細書に記載されたシステム、装置及び方法は、再結晶化又は手作業を必要とすることなく、短縮された期間(例えば、約2週間以下)で高純度のl−メントールを生成できる。
【0038】
(定義)
他に定義されていない限り、本明細書中に用いられている全ての技術用語及び科学用語は、当業者に通常理解される意味と同一の意味を有する。本明細書における用語の定義が複数ある場合、他に記載が無い限り、この項の定義を優先する。
【0039】
本明細書において用いられる「粗製ハッカ油」は、ミント(ハッカ種)から抽出された油を意味し、その油は少なくとも30重量%のl−メントールを含み、例えばペパーミント油、粗製ペパーミント油、ミント油及びそれらの混合物等である。「粗製ハッカ油」は、「調整された粗製ハッカ油」と「天然の粗製ハッカ油」との両方を含む。
【0040】
本明細書において用いられる「脱メントール化油」は、粗製ハッカ油からl−メントールが少なくとも部分的に取り除かれた後の、残りの粗製ハッカ油の成分を意味する。
【0041】
本明細書において用いられる「母液」は、l−メントールの結晶化のために生成されるメントールを含む油を意味し、また、粗製l−メントールを結晶化した後の、残りの油状の液体を意味する。
【0042】
本明細書において用いられる「天然の粗製ハッカ油」は、ハッカの植物体から蒸気蒸留により生成されたハッカ油を意味する。天然の粗製ハッカ油は、溶媒等の希釈液を含まない。
【0043】
本明細書において用いられる「調整された粗製ハッカ油」は、l−メントールの濃度を調整する等のために、l−メントール及び/又は希釈液(例えば、脱メントール化油)が加えられた天然の粗製ハッカ油を意味する。
【0044】
本明細書において用いられる「自動化」は、装置又はシステムの操作を制御する以外の、メントールを含む材料を手作業で取り扱う若しくは手作業で動かすことのない方法又は一部の方法を行うこと若しくは行うことができるようにすること意味する。この例に限られないが、1つ又はそれ以上の装置を用いて行われる工程の種々の段階を開始するために、使用者がボタンを押す、ノブを作動する、又はバルブを開く若しくは閉じるだけの場合、工程は自動化されている。自動化は、計算装置、アナログ回路及び/又はデジタル回路等の1つ又はそれ以上の制御装置により制御され得る(場合によっては、ヒトと制御装置との相互作用に応える。)。自動化は、結晶化システムの自動調整操作を行う制御装置及び/又はヒトである使用者にフィードバックを与える種々のセンサを含んでもよい。
【0045】
(方法)
本明細書に開示されたl−メントールを生成する方法は、粗製ハッカ油から高純度のlーメントールを直接に生成するために用いられ得る。例えば、本明細書に開示された方法は、医薬品GMPに応じたl−メントールの生成に用いられ得る。本明細書に開示された種々の方法によるl−メントールの生成は、2週間以下の時間がかかる。いくつかの実施形態において、それらの方法は、粗製ハッカ油又はl−メントールとヒトとの接触がない閉鎖系で行われる。
【0046】
図2(a)には、l−メントールを生成するための例示的方法が示されている。その実施形態によると、図2(a)に示す方法は、より少ないブロックでもよく、又は追加のブロックを含んでもよく、また、それらのブロックは記載されている順と異なる順に行われてもよい。
【0047】
粗製ハッカ油はブロック200として規定されている。粗製ハッカ油の起源及び型は、特に限られず、例えば商業的に得ることができる。粗製ハッカ油は、植物由来であることが好ましい。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、ハッカ植物原料から蒸気蒸留により生成された天然の粗製ハッカ油である。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、希釈、蒸留又はl−メントールの追加によりl−メントールの濃度が調整されたハッカ油である。
【0048】
粗製ハッカ油中のl−メントールの濃度は、特に制限されない。粗製ハッカ油は、例えば約30重量%〜約95重量%(好ましくは、約50重量%〜約90重量%)のl−メントールを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、その方法は、l−メントールの濃度を所定の範囲内にするために、粗製ハッカ油中のl−メントールの濃度を調整することを含む。一例として、本願の教示を受けた当業者が本方法の種々の面を改良する(例えば、結晶化時間の低減及びl−メントールの純度の増大等)のに最適な濃度範囲を確認することができる。また、その方法は、濃度の調整を行うことなく、天然粗製ハッカ油を用いて行われ得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、たとえあるとしても非常に少量の添加された有機溶媒を含む。大量の有機溶媒を用いることを避けることにより、本明細書に開示された方法は、有機溶媒を除去するための追加工程を必要としない。さらに、本明細書に開示された方法は、コストがかかる有機溶媒を必要とする他の方法と比較して、より経済的である。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、約30重量%以下の有機溶媒を含む。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は実質的に有機溶媒を含まない(例えば、微量だけ含む。)。
【0050】
ブロック210は、晶析装置の中で行われる粗製ハッカ油の精製工程を表している。ブロック214のl−メントールの結晶化の前に、結晶化を促進させるために、ブロック212においてl−メントールの種結晶が任意に導入され得る。特定の理論に縛られることなく、核生成がl−メントールの結晶化速度を律速すると考えられており、従って、l−メントールの種結晶の追加は結晶化速度を改善できる。いくつかの実施形態において、予め形成されたl−メントールの種結晶は、晶析装置の中において粗製ハッカ油に加えられる。
【0051】
いくつかの実施形態において、l−メントールの種結晶を形成するために晶析装置の中で粗製ハッカ油の一部を急速に冷却することによって、l−メントールの種結晶が導入され得る。いくつかの実施形態において、種結晶は、わずか20℃程度の温度(好ましくは10℃程度、より好ましくは約0℃〜約10℃の範囲)に設定された1つ又はそれ以上の冷却面に粗製ハッカ油を触れさせることによって形成される。例えば、晶析装置の1つ又はそれ以上の冷却面(例えば、冷却ユニットに熱的に接続するプレート又はコイル)は、種結晶を形成するために、約0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃又は20℃の温度に設定される。一般に、冷却面に数分、例えば約1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分又は10分(好ましくは、5分以下)触れさせた後に、種結晶が形成される。いくつかの実施形態において、種結晶が形成された後に、1つ又はそれ以上の冷却面の温度は、約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃又は35℃の結晶化開始温度に調整される。いくつかの実施形態において、種結晶は導入されず、l−メントールの種結晶の導入なくブロック214において結晶化が起こる。
【0052】
粗製ハッカ油は、材料を精製するためにブロック214において結晶化される。例えば、粗製ハッカ油は、l−メントールの結晶を得るために晶析装置に入れられ、徐々に冷却される。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、l−メントールが液体である開始温度から、約−30℃〜約30℃の温度範囲に冷却される(好ましくは、約0℃〜約20℃の温度範囲に冷却される。)。l−メントールの結晶の融点は約42℃であるため、液体であるためには、それよりも高い温度の粗製ハッカ油が要求される。しかしながら、粗製ハッカ油は結晶形成が遅く、融点以下に過冷却され得るため、特に種結晶が無い場合、例えば35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃及び41℃、又はそれらの温度よりも低い温度であっても、粗製ハッカ油は液体である場合があり、それらの温度の全てが開始温度として用いることができる。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、約25℃〜約45℃(又はそれ以上)の範囲の開始温度から約5℃〜約15℃の冷却温度まで冷却される。一般に、l−メントールの結晶形成は、約90時間〜約140時間の期間をかけて起こる。冷却条件の例は、下記の第1の実施例に示す。徐々に冷却することは、晶析装置の中における高純度のl−メントールの結晶を形成を引き起こし得る。
【0053】
結晶化開始温度(例えば、結晶化工程の開始時間において、t=0)は、l−メントールが液体である温度である。実施形態によると、結晶化開始温度は、例えば約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃若しくは35℃、又はそれ以上の36℃、37℃、38℃、39℃、40℃若しくは41℃であってよい。いくつかの実施形態において、結晶化開始温度は、開始材料であるハッカ油中のl−メントールの濃度に基づいて決定され得る。いくつかの実施形態において、晶析装置の中の温度は、晶析装置の中における粗製ハッカ油が触れる冷却面の温度を調整することによって制御され得る。例えば、晶析装置は、晶析装置の中の粗製ハッカ油と接触する1つ又はそれ以上のプレート、コイル又はそれら以外の面を含んでもよく、そのプレート、コイル又はそれら以外の面は、冷却ユニットと熱的に接続している(例えば、冷却された流体がプレートと冷却ユニットとの間で交換される。)。一実施形態において、種々の冷却面(加熱面であってもよい。)は、晶析装置の所望の温度勾配を生成するために、制御装置により独立に制御され得る。
【0054】
一般に、l−メントールの結晶化のために徐々に冷却する間、結晶化チャンバは、最初の48時間において、24時間程度で約0.1℃〜約10℃だけ低下する速度で徐々に冷却される。冷却速度は、いくつかの要因に基づいて決定され得る。例えば、粗製ハッカ油中のl−メントールの濃度は、冷却速度の決定に用いられ得る。一実施形態において、l−メントールの濃度は、結晶化チャンバの冷却速度を自動的に設定及び/又は調整するために、制御装置と通信するl−メントールセンサにより決定され得る。他の実施形態において、冷却速度は、示唆又は測定されたl−メントールの濃度レベルに応じて、手動で入力されてもよい。一実施形態において、l−メントールを多く含む粗製ハッカ油の場合は、最初の冷却温度はより緩やか(例えば、1日に1℃未満)であり、l−メントールの濃度がより低い粗製ハッカ油の場合は、最初の冷却速度はより速い(例えば、1日に約5℃〜約10℃)。
【0055】
一実施例において、結晶化開始温度が25℃の場合、t=24時間程度の際に結晶化チャンバの温度は約15℃〜約24.9℃に調整され得る。例えば、最初の冷却速度が1日に2℃の場合、t=24時間の際に、その温度は約23℃に調整されている。いくつかの実施形態において、その温度は約24時間毎に調整され、例えばその温度は段階的な方法で調整される。この例において、1日に2℃の最初の冷却速度と同一の速度を用いると、t=48時間程度の際に結晶化チャンバの温度は約21℃に調整され得る。上記のように、他の冷却速度(1日に0.1℃〜10℃の調整を含む1日に2℃よりも大きい又は小さい速度)及び他の最初の冷却期間(48時間よりも長い又は短い期間)が用いられてもよい。いくつかの実施形態において、その温度は、所定の期間にわたってより緩やかに調整される。
【0056】
いくつかの実施形態において、t=48時間程度の後に、結晶化チャンバの冷却速度は、最初の冷却速度から最後の冷却速度までの間で変化し、最後の冷却速度は、約24時間毎に約1℃〜約10℃の範囲であってもよい。従って、最後の冷却速度は、約24時間毎に約1℃、2℃、3℃、4℃、5℃又は6℃であってもよい。上記の通り、最初の冷却速度及び最後の冷却速度を含む冷却速度は、(他の因子をも含む)粗製ハッカ油中のl−メントールの濃度に基づいて調整され得る。従って、l−メントールを多く含む粗製ハッカ油に、1日に0.5℃の最初の冷却速度を用いた場合、最後の冷却速度は1日に1℃〜2℃であってもよく、一方、低濃度のl−メントールを含む粗製ハッカ油には、1日に5℃の最初の冷却速度と1日に6℃〜10℃の最後の冷却速度を用いてもよい。他の実施形態において、粗製ハッカ油は単一の冷却速度で冷却される(例えば、冷却工程におけるいくつかの時点で最初の冷却速度から最後の冷却速度まで速度が変化しない。)。一実施形態において、冷却速度は、晶析装置内の結晶化の進行を示すセンサのデータ等に応じて、制御装置により自動的に調整される。この実施形態において、晶析装置内における結晶化を最適化するために制御装置が冷却速度を調整するため、冷却速度(及び総冷却期間)は結晶化工程のそれぞれにおいて異なってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、その温度は約24時間毎に段階的に調整され得る。他の実施形態において、その温度は、例えば段階的でなく、特定の期間を超えて継続的に調整され得る。一般に、その温度は、少なくとも24時間、36時間又は48時間の期間において、開始温度から結晶化温度に徐々に下げられ、その後に、最終結晶化温度に維持される、又は結晶化が起こる所望の温度にまで徐々に下げ続けられることが好ましい。
【0058】
結晶化工程における総冷却時間は、特に限定されず、冷却速度及びl−メントールの濃度等の種々の因子に基づいて異なる。いくつかの実施形態において、結晶化工程は、t=100時間〜140時間程度で終了され、その時に、脱メントール化油は結晶化チャンバから除去され、結晶化チャンバの温度は最終結晶化温度に維持され、その最終結晶化温度は約5℃〜15℃であってもよい。いくつかの実施形態において、結晶化工程は、粗製ハッカ油が約−20℃〜約15℃(例えば、約0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃又は15℃)に達した時点で終了する。いくつかの実施形態において、結晶化工程は、例えばt=120時間程度であり、晶析装置が約10℃に達したときに終了され得る。一実施形態において、総冷却時間は、1つ又はそれ以上のセンサからの入力、及び/又は使用者からの入力に応じた制御により自動的に制御される。従って、総冷却時間は、結晶の生成を最適化するために、それぞれの結晶化工程において動的に調整されてもよい。一般に、結晶化工程を終了した後に、晶析装置内の温度は、結晶化の終了温度から数℃の範囲内に維持され得る。
【0059】
結晶化の後の加熱ブロック216において、任意にl−メントールはさらに精製されてもよい。加熱工程は、不純物の除去を促進するために、l−メントールの結晶の温度を徐々に上昇させることを含む。特定の理論に縛られることなく、l−メントールの結晶に含まれる多くの残留不純物は、l−メントールの結晶よりも低温で溶解し、不純な混合物は純粋なl−メントールの結晶よりも低温で溶解すると考えられている。従って、l−メントールの結晶を徐々に加熱することは、l−メントールの純度をさらに上げ得る。いくつかの実施形態において、精製の開始(t=0)の際に、結晶化チャンバの底部の近傍の表面は、約55℃〜約60℃の精製開始温度に調整される。他の実施形態において、精製の開始の際に、結晶化チャンバの底部の近傍の表面を加熱する必要はない。t=0の際に、通常、結晶化チャンバは、結晶化の終了温度程度に維持される。
【0060】
精製工程の最初の数分において、温度が上昇した結晶化チャンバの底部の近傍の表面は、(もし温度が高ければ、)結晶化チャンバの中と同等の温度程度に急速に冷却され得る。いくつかの実施形態において、l−メントールを精製するために、結晶化チャンバは、約30℃〜約40℃に徐々に暖められ得る。いくつかの実施形態において、結晶化チャンバは、l−メントールを固体状態に維持する温度に徐々に暖められ得る。いくつかの実施形態において、その温度は、一の温度から他の温度に連続的に変化するように制御される。他の実施形態において、その温度は、約24時間毎に段階的に調整され得る。いくつかの実施形態において、晶析装置の温度は、t=24時間程度の際に、約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃又は25℃に達するように調整される。いくつかの実施形態において、晶析装置の温度は、t=48時間程度の際に、約35℃、36℃、37℃、38℃、39℃又は40℃に達するように調整される。その温度は、t=70時間〜75時間程度までに、約35℃〜約40℃に維持され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、l−メントールの加熱は、脱メントール化油の除去を促進するために、加圧又は減圧の適用と共に行われ得る。一例として、晶析装置内の温度が徐々に上昇する間に溶解された不純物の除去を促進するために、加圧ガスシステムにより晶析装置にガスを通してもよい。他の例として、晶析装置から溶解された不純物を除去するために、吸引装置により晶析装置内を真空状態にしてもよい。
【0062】
結晶化工程の後に残存する脱メントール化油は、ブロック218において除去される。上述のように、脱メントール化油は、粗製ハッカ油中のl−メントールの結晶化の後(例えば、ブロック214に示す結晶化の後)に残存する液体を含む。いくつかの実施形態において、脱メントール化油は、例えば重力、ポンピング及び/又は加圧流体による排出によって、晶析装置から除去され得る。例えば、脱メントール化油は、脱メントール化油タンクと流通可能に設けられた排液管を介して除去され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、l−メントールの結晶から脱メントール化油を除去するために、流体をl−メントール結晶に通す。いくつかの実施形態において、その流体は空気、不活性ガス及びそれらの組み合わせから選択されるガスである。一例として、晶析装置は、加圧ガスシステムと流通可能に接続されるためにその上部の近傍に孔を含んでもよい。その加圧ガスシステムは、濾過された空気又は窒素等のガスを晶析装置の中に移送する。そのガスはl−メントールの結晶を通過し、その結晶から油及び他の不純物を除去し、脱メントール化油を晶析装置の排液管に移し、任意に脱メントール化油タンクに排出する。従って、l−メントールの結晶に流体を通過させることは、結晶の純度を向上でき、脱メントール化油の除去を促進できる。いくつかの実施形態において、脱メントール化油を抽出するために、結晶化チャンバ内は減圧される。例えば、吸引システムは、脱メントール化油を抽出するための真空状態を形成するために、晶析装置と流通可能に設けられ得る。その流体は液体、気体又はそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態において、加圧と減圧との両方が適用される。例えば、吸引システム及び圧搾空気システムは、流体を晶析装置に送るために、晶析装置と流通可能に設けられ得る。晶析装置の底部から流体を外に排出することと、晶析装置の上部から流体を導入することとは、同一の結果となることが認められ、どちらの場合も流体が結晶を通過し、油及び他の不純物が結晶から除去され、晶析装置の外部に排出される。なお、より多くの不純物の除去するために、ガスの底部からの吸引と上部からの導入とを組み合わせてもよい。
【0064】
任意のブロック212及び/又はブロック216を含む又は含まないブロック210の工程を完了した後に、精製l−メントールの結晶がブロック220において得られる。いくつかの実施形態において、精製l−メントールの結晶は、純度が少なくとも約98重量%(好ましくは、少なくとも約99重量%)である。いくつかの実施形態において、l−メントールの結晶の純度は、約99.4重量%、99.5重量%、99.6重量%、99.7重量%、99.8重量%又は99.9重量%である。
【0065】
図2(b)は、他の実施形態におけるl−メントールの精製のフローチャートを示し、この実施形態では、種々の前精製工程及び後精製工程が任意に含まれる。図2(a)及び図2(b)に示す同一のブロックには同一の符号を付している。従って、例えばそれら両方の実施形態は、ブロック200において粗製ハッカ油を準備することを含む。当業者に理解されるように、任意の前精製工程及び後精製工程は、本明細書に開示された方法の範囲から逸脱することなく、除外又は再編成されてもよい。
【0066】
任意の濾過ブロック205は、ブロック210における晶析装置内で行われる工程の前に粗製ハッカ油に対して行われてもよい。その濾過工程は、微粒子等の不純物を除去するために、本技術分野において公知の標準的な手段を用いて行われ得る。例えば、1μmのフィルタが、晶析装置に入れられる粗製ハッカ油を濾過するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は晶析装置に入れられる間に、フィルタに通されてもよい。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油は、任意の濾過工程を行うことなく直接に結晶化される。いくつかの実施形態において、その濾過工程は自動的に行われる。
【0067】
ブロック220において精製l−メントールが得られた後に、いくつかの実施形態において、精製l−メントールは、任意のブロック225において貯蔵タンクに移送され得る。一般に、l−メントールの移送のために、晶析装置はl−メントールの結晶を溶解するために約50℃〜約60℃に暖められ得る。溶解されたl−メントールは、例えば貯蔵タンクに移送され得る。いくつかの実施形態において、貯蔵タンクは、例えば導管(ライン又はチューブ等)により晶析装置と接続され得る。いくつかの実施形態において、l−メントールの移送は自動的に行われ得る。好ましくは、貯蔵タンクは暖かい温度に維持され得る。いくつかの実施形態において、貯蔵タンクは、l−メントールを流体状態に維持するために加熱ジャケットを含む。
【0068】
任意の濾過ブロック230は、精製l−メントールに対して行われてもよい。その濾過工程は、固形物等の不純物を除去し得る。いくつかの実施形態において、粗製ハッカ油はペレタイザに入れられる間に、フィルタに通され得る。いくつかの実施形態において、その濾過工程は自動的に行われてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、任意のブロック235において、精製l−メントールは、取り扱いを容易にするために粒子状に形成され得る。いくつかの実施形態において、固体の精製l−メントールは粒子状に砕かれる(例えば、粉砕、摩砕及び切削等)。いくつかの実施形態において、その粒子はペレットである。ペレットは、例えばペレタイザを用いて、l−メントールの溶解液から形成され得る。
【0070】
ペレタイザは、いくつかの実施形態において、冷却混合器及びペレッタを含んでいてもよい。精製l−メントールは冷却混合器の中に入れられ、その冷却混合器は、例えば約10℃〜約35℃に維持される。l−メントールの混合の間、冷却混合器の温度は、約10℃〜約35℃に調整され、好ましくは15℃〜32℃であり、より好ましくは17℃〜30℃である。以下に、冷却条件をより詳細に記載する。いくつかの実施形態において、l−メントールは、例えば重力又はポンピングによって冷却混合器の中に入れられ得る。貯蔵タンクは、例えば導管により冷却混合器に接続され得る。いくつかの実施形態において、l−メントールの移送は自動的に行われ得る。
【0071】
一般に、冷却混合器の中に移送されるl−メントールの移送開始の際の温度は、42℃以上であってもよく、好ましくは約55℃〜約70℃である。材料の移送速度、例えば冷却混合器の中にl−メントールが入れられる速度は、準備されたl−メントールの量及び冷却混合器の大きさ等に依存して異なってもよい。いくつかの実施形態において、材料の移送速度は、約1.0kg/min〜約3.0kg/minであってもよい。いくつかの実施形態において、材料の移送速度は、例えば約1kg/min、1.5kg/min又は2kg/minであってもよい。いくつかの実施形態において、冷却混合器の回転速度は、例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30rpmであってもよい。一実施形態において、材料の移送速度は約1.5kg/minであり、冷却混合器の回転速度は約20rpmであってもよい。
【0072】
l−メントールの融点は約42℃であるため、冷却混合の条件下で、l−メントールは固体状態に変化し、シャーベットのようなスラリーとなる。いくつかの実施形態において、混合時間は、例えば約0.5分〜約10分であってもよく、好ましくは約1分〜約2分である。
【0073】
いくつかの実施形態において、冷却混合器は、例えばロータと、冷却混合器の温度を制御するためのジャケットとを含んでもよい。いくつかの実施形態において、冷却混合器の温度は、例えばロータの入口、ロータの出口、ジャケットの入口及び/又はジャケットの出口の温度を調整することにより制御され得る。l−メントールのスラリーの生成のための温度条件の例を下記の表1に記載する。(表1の1列目に示す)1〜6のカラムは、良好な硬さ及び良好で均一な形状を有するl−メントールのペレットを生成するための6つの異なるペレット化条件を規定する。
【0074】
【表1】

【0075】
l−メントールのスラリーが形成された後に、そのスラリーはペレッタにより長い縄状に押し出し成形される。いくつかの実施形態において、l−メントールは、例えば狭い穴に押し通されることにより縄状に形成され得る。結果として、麺状のl−メントールの縄状物が形成され得る。縄状のl−メントールは、所望の大きさに切られ得る、又は割られ得る。そのペレットの直径は異なってもよく、ペレッタの穴の大きさに依存する。いくつかの実施形態において、そのペレットは約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm又は20mmの直径を有してもよい。好ましい実施形態において、そのペレットは約3mm、5mm又は7mmの直径を有してもよい。
【0076】
任意のブロック240に示すように、いくつかの実施形態において、l−メントールは冷却され得る。冷却器がl−メントールを固めるために作用し、任意に低沸点の不純物を除去し得る。例えば、l−メントールのペレットは、ペレタイザから冷却器に移送され得る。l−メントールのペレットを冷却するための適当な手段には、冷蔵機能及び換気機能を有するチャンバ又は冷却装置等が用いられてもよい。いくつかの実施形態において、l−メントールのペレットは、例えばベルトコンベアにより冷却器に移送され得る。ベルトコンベアは、l−メントールが外部の汚染物質と接触することを防ぐために、囲いに覆われていてもよい。いくつかの実施形態において、l−メントールの移送は自動的に行われ得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、冷却器は、例えば冷気供給システム及び/又は網状のトレイを備えていてもよい。いくつかの実施形態において、冷気は冷却器の底部から供給されてもよい。網状のトレイは振動されてもよく、これにより、l−メントールの凝固の促進のためのl−メントールのペレットの撹拌及び浮動が行われる。
【0078】
任意のブロック245において、冷却されたl−メントールは、冷却器からふるいに移送され得る。l−メントールは、乾燥したl−メントールから微粒子を除去するためにふるいにかけられてもよい。例えば、l−メントールのペレットは、所定の大きさよりも小さい粒子を除去するためにふるいにかけられてもよい。いくつかの実施形態において、l−メントールのペレットは、例えばベルトコンベアによりふるいに移送され得る。ベルトコンベアは、l−メントールが外部の汚染物質と接触することを防ぐために、囲いに覆われていてもよい。いくつかの実施形態において、l−メントールの移送は自動的に行われ得る。適当なふるいは、l−メントールの微粒子をふるいにかけるために用いられ、種々のふるいが市販されている。一般に、ふるいの穴は、所望の大きさを有する微粒子を保持し、それよりも小さい粒子を除去できる大きさを有する。
【0079】
l−メントールのペレットは、任意のブロック250に示すように、輸送又は貯蔵のために梱包容器に梱包され得る。いくつかの実施形態において、l−メントールは、例えばベルトコンベアにより移送され得る。ベルトコンベアは、l−メントールが外部の汚染物質と接触することを防ぐために、囲いに覆われていてもよい。いくつかの実施形態において、梱包容器の中へのl−メントールの移送は自動的に行われ得る。
【0080】
(システム及び装置)
いくつかの実施形態は、高純度のl−メントールの生成に有用なシステム及び装置を含む。いくつかの実施形態において、そのシステムは、l−メントールの生成の間、温度の制御を自動化できる。高純度のl−メントールの結晶を生成するための温度制御を行うために、そのシステムは粗製ハッカ油を受ける晶析装置を含んでもよい。晶析装置は、l−メントールの結晶の核生成及び成長のための面を提供するために、例えばこれらに限られないがプレート、コイル、プレートコイル又は他の適当な部材等の加熱及び冷却構造を含む。いくつかの実施形態において、そのシステムは閉鎖系システムを構成し、閉鎖系システムはその内容物と外部の汚染物質との接触を防ぐ。
【0081】
図3はl−メントールを精製するためのシステムの例を示している。図3に示す実施形態において、晶析装置300は加熱/冷却プレート305を備えるが、他の実施形態において、晶析装置300は別々の及び/又は付加的な加熱装置及び/又は冷却装置を備えていてもよい。プレート305は、l−メントールの結晶の成長のための適当な表面を提供するための大きさ及び形を有し、晶析装置300の中に位置する。粗製ハッカ油は、晶析装置(結晶化チャンバ)の中に直接に入れられ得る。粗製ハッカ油が晶析装置の中に入れられる際に、粗製ハッカ油はプレート305に接触する。いくつかの実施形態において、加熱/冷却プレート305の構造は、例えばこれらに限られないが平板、コイル又はラジエータのようなコイル等であってもよい。いくつかの実施形態において、プレート305は、密接して設けられているプレートコイルである(例えば、各プレート同士の間は約2.5cm〜約10cmである。)。一般に、プレート305は、制御装置からの制御信号に応じて、晶析装置300の中の温度を正確に制御できる。
【0082】
図3の実施形態において、導管310はプレート305と加熱/冷却ユニット(例えば、図4(a)に示すような冷却ユニット410及び加熱ユニット415)とを接続する。例えば、流体が導管310を通ってプレート305に達し、その後、その流体が加熱/冷却ユニットに戻る。プレート305の温度は、循環する流体の加熱又は冷却により制御される。いくつかの実施形態において、プレート305は加熱/冷却ユニットと熱的に接続される。いくつかの実施形態において、プレート305のそれぞれの温度は、独立して制御され得る。例えば、それぞれのプレートは、別々に循環する流体を受けることができ、それらの流体は異なる温度に設定され得る。いくつかの実施形態において、チャンバの中の底面及び側壁の温度は、他の加熱又は冷却ユニットにより独立に制御され得る。
【0083】
l−メントールを精製する方法に応じて、上記のように、晶析装置300の温度は高純度のl−メントールの結晶の生成のために制御され得る。晶析装置300の中のプレート305の温度は、所望の温度に調整されてもよい。いくつかの実施形態において、晶析装置の1つ又はそれ以上のプレートの温度は、(例えば、制御装置及び/又は使用者からの制御信号に応じて)それぞれ異なる温度に調整され得る。いくつかの実施形態において、晶析装置の全てのプレートは、同一の温度であってもよい。いくつかの実施形態において、晶析装置300の1つ又はそれ以上のプレート305は、1つ又はそれ以上の温度センサ307を含んでもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、晶析装置300のプレート305は、温度を制御するための冷却/加熱媒体を含んでもよい。本明細書において用いられる「冷却/加熱媒体」は、冷却及び加熱を含む温度の制御に用いられ得る媒体をいう。例えば、これらに限られないが、溶媒若しくは冷媒、低温物質又は他の適当な物質等の媒体は、温度を制御するための冷却/加熱装置に加えられてもよい。
【0085】
晶析装置の中において材料を交換するために、晶析装置は種々の穴を含む。晶析装置は、晶析装置から液体を除去するために形成された排液管312を任意に含んでもよい。いくつかの実施形態において、排液管312は、晶析装置から液体を排出するための吸引ユニット(例えば、図4(b)に示す吸引システム425)と流通可能に設けられている。いくつかの実施形態において、排液管312は、晶析装置から液体を除去するために用いられてもよい。晶析装置は、流体を晶析装置の中に送るための穴315を含んでもよい。例えば、加圧ガスシステム(例えば、図4に示す圧搾空気システム420)は、穴315と流通可能に設けられていてもよく、圧搾空気はこの穴315を通って晶析装置の中に押し入れられ得る。上記のように、圧搾空気は、脱メントール化油を結晶から抽出し、排液管312を通って晶析装置の外に排出し得る。
【0086】
図4(a)はl−メントールを精製するためのシステムの他の実施形態を示す。いくつかの実施形態において、l−メントールを生成するシステムは、自動工程制御システム(以下、制御装置という。)400を介して、使用者が規定した処理パラメータにより制御され得る。その実施形態によると、制御装置400は、1つ又はそれ以上のデスクトップ、ノートブック若しくは携帯用コンピュータ装置等のコンピュータシステム、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、特定用途向け集積回路(ASICs)、マイクロコンピュータ若しくは独自の論理回路等の集積回路を備えていてもよい。一実施形態において、その制御装置がシステムの使用者にl−メントールの生成システムの状態に関する情報を示し、使用者からの制御指示を受けることができるように、制御装置400は、1つ又はそれ以上のタッチパネル、マウス又はキーボード等の入力装置、及び1つ又はそれ以上のモニタ又は携帯用装置のディスプレイ等の出力装置を備えている及び/又はそれらと通信する。制御装置400によって、そのシステムは、使用者が規定した処理パラメータを用いて温度制御、空気圧制御、吸引、排出、混合、l−メントールの移送、ペレット化、乾燥、ふるい及び梱包の自動化を含むl−メントールの生成を部分的に又は完全に自動化できる。いくつかの実施形態において、そのシステムは、適当なl−メントールの生成のための所望の時間及び温度の設定をプログラムされ得る。また、そのシステムは、圧力の設定、湿度制御の設定、排気、サンプルの装填等についてプログラムされ得る。いくつかの実施形態において、制御装置400は、プログラム記憶機能を含み得る。いくつかの実施形態において、そのシステムは、生成の各工程における使用者の入力により手動で制御され得る。いくつかの実施形態において、例えば、所望の温度範囲からの逸脱、圧力又は漏出の問題及び電源異常等の工程中に生じ得る調整の問題に対する安全装置を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、制御装置400は晶析装置405(例えば、図3に示す晶析装置300)と通信され、晶析装置405の中の温度を制御するために用いられ得る。例えば、制御装置400は、要求される通りに、晶析装置の種々の部材(例えば、加熱/冷却プレート)の温度の上昇及び低下についてプログラムされ得る。いくつかの実施形態において、晶析装置の加熱/冷却プレートの温度センサ(例えば、図3に示す温度センサ307)は、制御装置に温度のデータを提供できる。いくつかの実施形態において、温度センサからのデータは、晶析装置の種々の部材の温度を調整するために用いられ得る。
【0088】
制御装置400は冷却ユニット410及び加熱ユニット415と通信されていてもよい。上記の通り、冷却ユニット410及び加熱ユニット415は、晶析装置と熱的に接続されていてもよい。例えば、加熱/冷却ユニットと晶析装置のプレートとの間で流体が交換されてもよい。従って、いくつかの実施形態において、制御装置は、晶析装置と熱的に接続された冷却ユニット410及び加熱ユニット415の働きを制御することによって、晶析装置の中の温度を制御してもよい。晶析装置405、冷却ユニット410及び加熱ユニット415は、いくつかの実施形態において、制御装置400と通信する単一のユニットとして形成されてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、制御装置400は、上記のl−メントールを精製する方法の自動化のために、(制御装置のメモリ(RAM、ROM又はフラッシュメモリ等)、ハードドライブ、及び/又は光学記憶媒体等のコンピュータ可読媒体に保存されたソフトウェアコードを実行することを)プログラムされたプロセッサを備えている。例えば、そのプロセッサは、図2(a)に示す結晶化ブロック214において、自動的に温度を低下及び維持することにより粗製ハッカ油を結晶化するようにプログラムされてもよい。他の例として、そのプロセッサは、晶析装置の中で行われる工程(例えば、図2(a)に示すブロック210の工程)を実行するようにプログラムされてもよい。いくつかの実施形態において、そのプロセッサは、晶析装置の中にl−メントールの結晶を形成させるために、晶析装置の中の粗製ハッカ油の温度を、少なくとも8時間かけて粗製ハッカ油が液体状態にある温度から30℃以下に徐々に下げるようにプログラムされてもよい。いくつかの実施形態において、そのプロセッサは、脱メントール化油が晶析装置から除去された後に、精製l−メントールの結晶を加熱及び/又は溶解するようにプログラムされてもよい。いくつかの実施形態において、そのプロセッサは、l−メントールの結晶から不純物を除去するために、40℃以下の温度に徐々にl−メントールの結晶を加熱するようにプログラムされてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、晶析装置400は、粗製ハッカ油中のl−メントールの濃度に応じて付される識別子に基づいて、少なくとも部分的にl−メントールを結晶化するための条件(例えば、温度及び冷却速度等)を選択する。例えば、制御装置400は、l−メントールの濃度を測定するセンサ417と任意に通信されてもよい。制御装置400はl−メントールの濃度の情報を受けた後に、適当な結晶化条件を選択してもよい。他の例として、使用者が制御装置400と通信するユーザインターフェイスにその濃度を入力してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、そのシステムは、晶析装置の中のl−メントールの結晶の存在を検出するために設けられた結晶検出器を任意に含んでもよい。制御装置400は、晶析装置の中において結晶が形成された時を識別し、結晶化の程度を評価するための結晶検出器と通信され得る。いくつかの実施形態において、制御装置は、種結晶の形成のための適当な条件(例えば、図2(a)のブロック212における種結晶を導入するための条件)となるように、晶析装置の中の温度を下げるために構成されたプロセッサを含む。一度、種結晶検出器により種結晶が検出されると、制御装置400は、温度を結晶化に適する温度(例えば、図2(a)に示す結晶化ブロック214に適する条件)に調整し得る。一度、そのシステムが結晶化が所望の程度まで完了して十分な結晶の存在を検出すると、脱メントール化油は、手動又は自動の制御により晶析装置から除去され得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、種結晶検出器は、光源と、晶析装置の中の材料の光学的特性の変化を検出するために構成された光検出器とを備えている。従って、例えば結晶化されたl−メントールは、液体の粗製ハッカ油と比較して高い光散乱性を示し、それが検出される。いくつかの実施形態において、任意の結晶検出器は、冷却面による熱の除去の調整のために構成された冷却回路に設けられた検出器と、冷却面の近傍の温度を調整するために構成された熱電対とを備えている。一例として、熱の除去と温度との関係は、結晶化を検出するために用いられてもよい。なお、結晶化が起こっている間、結晶化が起こらなかった場合に起こるであろう晶析装置内の温度の低下がなく、熱エネルギーが粗製ハッカ油から放出されるため、結晶化は熱を放出することに留意しなくてはならない。
【0093】
そのシステムは、結晶からの脱メントール化油の除去を促進するための圧搾空気又は加圧ガスシステム420を含み得る。例えば、l−メントールの結晶を精製する間、圧搾空気システム420は、l−メントールの結晶の表面から脱メントール化油を除去することを促進するために、晶析装置のチャンバに加圧ガスを供給できる。制御装置400は、圧搾空気システム420と通信され、工程(例えば、図2(a)に示す抽出ブロック218)における適当な時間に圧搾空気の供給を制御してもよい。
【0094】
図4(b)は本明細書に開示するシステムの他の実施形態を示す。図4(a)に示す構成と同様の構成には同一の符号を付している(例えば、図4(a)及び図4(b)の両方に晶析装置405を示す。)。そのシステムは、晶析装置400と流通可能に設けられた吸引システム425を含む。上記の通り、吸引システムは、晶析装置の中の圧力を低減し、脱メントール化油を抽出するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、制御装置400は、適当な時間(例えば、図2(a)に示す抽出ブロック218)における圧力の低減を適用するための吸引システム425と通信される。いくつかの実施形態において、そのシステムは、圧搾空気システム420と吸引システム425との両方を含む。
【0095】
本明細書において、「ストリップシステム」とは、圧力を調整することにより脱メントール化油を除去することを促進するために設けられた構成をいう。従って、ストリップシステムは、圧搾空気システム420、吸引システム425及びそれらの組み合わせを含む広い意味の用語である。
【0096】
図4(c)は種々の任意の構成を有する精製システムの他の実施形態を示す。図4(a)及び図4(b)に示す構成と同様の構成には、同一の符号を付している(例えば、図4(a)、図4(b)及び図4(c)の全てに晶析装置405を示す。)。当業者には理解されるように、種々の任意の構成は、本発明の範囲から逸脱することなく除外又は再編成されてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、そのシステムは、晶析装置から除去された脱メントール化油を貯蔵するための脱メントール化油タンク430を含み得る。例えば、結晶化の後に、脱メントール化油は、(例えば、図2(a)に示す抽出ブロック218において)脱メントール化油タンク430の中に晶析装置から送り出される又は排出される。晶析装置から脱メントール化油タンク430への脱メントール化油の移送は自動化され得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、そのシステムは、晶析装置から送られたl−メントールの貯蔵のための貯蔵タンク435を含み得る。例えば、精製工程(例えば、図2(a)及び図2(b)に示すブロック220)の後に、晶析装置400の中のl−メントールの結晶は溶解され、晶析装置のチャンバから貯蔵タンク435(例えば、図2(b)に示すブロック225)に送り出される又は排出される。好ましくは、貯蔵タンク435は、導管を介して晶析装置と接合される。いくつかの実施形態において、貯蔵タンクは、l−メントールが液体となる温度にl−メントールの温度を維持するための加熱ユニットを含む。晶析装置400から貯蔵タンク435へのl−メントールの移送は自動化され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、そのシステムは、取り扱いを容易にするために、l−メントールをペレット状にするペレタイザ440を含み得る(例えば、図2(b)に示す粒子形成ブロック235)。上記の通り、ペレタイザ440は、ペレット状にする前にl−メントールを混合するための冷却混合器を含んでもよい。その実施形態によると、冷却混合器は、ペレッタと一体的に接続された混合器等の独自の冷却混合器、及び/又は市販されている冷却混合器(例えば、栗本鐵工所のSCプロセッサSCP−100等)を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、冷却混合器に液体のl−メントールを手を使うことなく移送するために、ペレタイザ440は、貯蔵タンク435と接続されてもよく、また、導管を介して晶析装置と接続されてもよい。いくつかの実施形態において、制御装置400はペレタイザ440と通信される。貯蔵タンク又は晶析装置から冷却混合器へのl−メントールの移送は自動化され得る。
【0100】
冷却混合器の温度は、所望の硬さ、形状及び空気含量等を有するペレットを形成するための正確な温度環境にl−メントールを保持するために制御され得る。いくつかの実施形態において、精製l−メントールは、冷却混合器の中に入れられ得る。精製l−メントールは、例えば液体状態で冷却混合器の中に入れられる。一般に、l−メントールが冷却混合器に入れられる際の最初の温度は約45℃〜約65℃である。冷却混合器は、例えば冷却混合器の温度を制御できる冷却ジャケットを備え得る。一般に、冷却混合器の温度は、例えばl−メントールをペレット状にするための混合の間、約5℃〜約40℃に維持され得る。
【0101】
ペレタイザ440は、さらにペレッタを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ペレッタは穴を有するプレートを含み、シャーベット程度の硬さに凝固されたl−メントールがその穴を通って押し出されて麺のような形状に形成され得る。いくつかの実施形態において、l−メントールは、例えばペレッタの中のスクリューの回転により押し出され得る。l−メントールの移送速度は、その回転速度により変化し得る。l−メントールは、プレートの穴を通って押し出されて長い麺のような縄状に形成される。プレートの穴の大きさは、要求されるペレットの大きさによって異なり、特定の大きさに限られない。いくつかの実施形態において、その穴は、例えば約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm又は20mmの直径を有し得る。ペレッタは市販されており、これに限られないが、例えばダルトン社のペレッタダブルEKDFJ−100がある。また、ペレタイザは、その縄状物を所望の長さに切断するために構成されたカッタを含んでもよい。一例として、カッタは、所定の時間間隔で押し出された縄状物を切断する回転刃であってもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、l−メントールの生成システムは、l−メントールのペレットを冷却する冷却器445を含む(例えば、図2(b)に示す冷却工程240)。いくつかの実施形態において、ペレットは、例えば囲いに覆われたベルトコンベアによってペレタイザ440から冷却器445に移送され得る。ペレタイザ440から冷却器445へのl−メントールの移送は自動化され得る。一般に、冷却器445は、l−メントールを硬化を促進するための冷気の気流を含む。いくつかの実施形態において、冷却器445は、例えばペレットの撹拌及びl−メントールの凝固の促進のために、振動する網状の台を含む。好ましくは、冷却器は、汚染物質がl−メントールと接触することを防ぐために囲いに覆われている。さらに、フィルタは、l−メントールのペレットを通る空気を清潔にするために、乾燥器と共に用いられる。いくつかの実施形態において、l−メントールのペレットの乾燥は、制御装置400からの制御信号等により自動化され得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、l−メントールの生成システムはふるい450を含む。ふるい450は、乾燥したl−メントールのペレットから微粒子を除去するために用いられ得る(例えば、図2(b)に示すふるいブロック245)。いくつかの実施形態において、ペレットは、例えば囲いに覆われたベルトコンベアにより乾燥器からふるいに移送され得る。好ましくは、ふるい450は、汚染物質がl−メントールと接触することを防ぐために囲いに覆われている。いくつかの実施形態において、l−メントールをふるいにかけることは、制御装置400からの制御信号等により自動化され得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、l−メントールの生成システムは、l−メントールを梱包するための梱包容器455を含む。例えば、ふるい450からのベルトコンベア又は他の運搬装置(例えば、空気コンベア又はスクリューコンベア)は、ふるい450から梱包容器455にl−メントールのペレットを移送するのに用いられ得る。いくつかの実施形態において、ベルトコンベアは、汚染物質がl−メントールと接触することを防ぐために囲いに覆われていてもよい。いくつかの実施形態において、l−メントールの梱包は自動化され得る。いくつかの実施形態において、梱包容器は、貯蔵タンク435と流通可能に設けられている。液体のl−メントールは、梱包容器455の中に直接に入れられてもよく、その容器内において冷却されて固体にされてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、制御装置400は、l−メントールを生成するための種々のパラメータを制御するコンピュータソフトウェアを実行する。いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、例えば温度、空気圧、吸引、排水、移送、混合、ペレット化、乾燥、ふるい及び梱包の各要素のための使用者の入力を受ける。このように、l−メントールの生成は自動化され得る。いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、本明細書に記載された方法のいずれも実行する。
【実施例】
【0106】
本教示の態様は、以下の実施例を考慮するとさらに理解され得る。また、以下の実施例は、いかなる場合も本教示の範囲に限定するように解釈されない。
【0107】
(第1の実施例)
本実施例では、99.6%以上の純度を有するl−メントールを生成することが可能な方法を示す。
【0108】
粗製ハッカ油(l−メントールの純度は約80%)をドラム缶から晶析装置に1μmのフィルタを通して移送した。晶析装置は、l−メントールの結晶の核形成及び成長を可能とする冷却プレートを含む。約120時間かけて晶析装置のチャンバを約25℃から約10℃にする緩やかな段階的冷却を行い、その後、そのチャンバを約10℃に約24時間維持することにより、l−メントールの結晶を形成した。表2は、結晶化工程の間の種々の時点における結晶化チャンバの側部、底部及び冷却プレートの温度を示す。約120時間後に、高純度のl−メントールの結晶が晶析装置の冷却プレートの上に形成された。
【0109】
【表2】

【0110】
結晶化の後に、晶析装置の底部から分離タンクの中に重力により脱メントール化油を排出した。
【0111】
脱メントール化油の除去の後に、結晶化チャンバの中でl−メントールの結晶を精製した。吸引すること及びl−メントールの結晶を徐々に加熱することにより、l−メントールの精製工程を行った。晶析装置の底部のバルブを開き、吸引を開始した。結晶化チャンバの温度を約48時間かけて約35℃に徐々に上げ、l−メントールの温度を約35℃で約2時間〜約4時間維持した。晶析装置の側部、底部及び冷却プレートの温度条件を下記の表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
精製の後に、l−メントールの結晶を溶解するために結晶化チャンバを約60℃に加熱して、l−メントールを晶析装置から移送した。結晶化チャンバの側部、底部及び冷却プレートを約60℃に加熱した。5時間後に、晶析装置の底部のバルブと貯蔵タンクとを接続し、溶解されたl−メントールを貯蔵タンクに移送した。精製l−メントールは約99.6%の純度を有していた。
【0114】
(第2の実施例)
本実施例は、l−メントールのペレット化及び冷却を可能とする方法を示す。
【0115】
第1の実施例に記載する方法により生成された高純度のl−メントールを、取り扱いを容易にするためにペレット状にした。冷却混合器及びペレッタを含むペレタイザを用いた。l−メントールを、約200kg/hrの速度で貯蔵タンクからペレタイザの冷却混合器に移送した。冷却混合器の中において、l−メントールをシャーベットのようなスラリーにするために約15℃で数分間混合した。
【0116】
l−メントールのスラリーをペレッタに通して押し出し成形することによりペレットを形成し、生じた縄状のl−メントールを所望の長さに切断した。ペレッタの出口を約5℃に維持した。そのペレットを乾燥器に移送し、約25℃で0.9m/minの気流により乾燥した。
【0117】
(第3の実施例)
本実施例は、冷却混合器及びペレッタを用いるペレット化の条件を決定するための予備試験を示す。
【0118】
良好な硬さ及び良好な形状を有するl−メントールの錠剤を生成するための適当な条件を決定するために、種々の条件を用いて、第1の実施例に記載する方法により生成された高純度のl−メントールからペレットを形成した。異なる18種のペレット化試験に用いた条件及びその結果を、下記の表4及び表5に示す。約1.5kg/hrの速度で貯蔵タンクからペレタイザの冷却混合器にl−メントールを移送した。冷却混合器において、l−メントールをスラリー状にするための条件で混合した。l−メントールのスラリーを長い縄状にし、所望の長さに切断した。
【0119】
【表4】

【0120】
【表5】

【0121】
表4及び表5に示す18種の試験の結果は、ペレット化の際に用いられる条件によってペレットの硬さ及び形状が異なり得ることを明らかとする。01、02、04、07、10、14、16、17及び18の試験に用いられたペレット化の条件によると、良好な硬さと不均一でない良好な形状を有するペレットが生じた。
【0122】
上述の概要と詳細な説明との両方は、単に例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲に示す本発明を限定しないことが理解される。本願において、単数形は他に特に定義しない限り複数形を含む。本願において、「a」又は「an」の用語は、他に特に定義しない限り「少なくとも1つ」を意味する。本願において、「又は」は、他に定義しない限り「及び/又は」を意味する。さらに、「含む」(「includes」)及び「含まれた」(「included」)等の他の形態と同様に「含んでいる」(「including」)の用語の使用は限定をしていない。また、「要素」又は「構成」等の用語は、他に特に定義しない限り、単一のユニットを備える要素又は構成と、一以上のユニットを備える要素又は構成との両方を含む。
【0123】
本明細書において用いられた項の見出しは、単に構成上の目的で記載されており、いかなる場合も記載された標題に限定して解釈されない。
【0124】
本教示において説明された温度、濃度及び時間等の前に暗に「約」が付き得ることは理解され、ごくわずかの差は本教示の範囲内である。また、「含む」及び「備える」(
「comprise」、「comprises」、「comprising」、「contain」、「contains」、「containing」、「include」、「includes」及び「including」)の使用は限定していることを意図していない。上述の概要と詳細な説明との両方は、単に例示的且つ説明的なものであり、本発明を限定しないことが理解される。
【0125】
(参照による引用)
特許、特許出願、論文及び教科書等を含む本明細書における全ての引用文献、及びそれらに引用される引用文献のそれらがまだ引用されていない範囲を、参照として全てここに援用する。これらに限らないが定義された用語、用語の使い方又は記載された技術等が、援用された1つ又はそれ以上の文献及び類似の資料と本願との間で異なる又は相反する場合、本願を優先する。
【0126】
(均等物)
上記の説明及び実施例には、本発明の特定の好ましい実施形態が詳細に説明され、本発明により考えられるベストモードが記載されている。いくら詳細に上記の説明に記載されていたとしても、本発明は多くの方法により実行されてもよく、また、本発明は添付された特許請求の範囲及びその均等物に従って解釈されるべきであると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
晶析装置に粗製ハッカ油を供給することと、
前記晶析装置の温度を徐々に下げることにより、前記粗製ハッカ油からl−メントールを結晶化することと、
残留油及び不純物を除去するために前記l−メントールに流体を通すことと、
前記晶析装置から溶解液として前記l−メントールを移送するために、精製された前記l−メントールの結晶を溶解することと、
前記溶解液を乾燥して固体のl−メントール生成物とするために冷却することとを備え、
精製された前記l−メントールの結晶の純度は少なくとも98重量%であり、
前記粗製ハッカ油又は前記l−メントールとヒトとが接触することがない閉鎖系で行われるl−メントールを精製する方法。
【請求項2】
前記粗製ハッカ油は植物由来である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記l−メントール生成物は、少なくとも99重量%の純度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粗製ハッカ油は、30重量%から95重量%までの範囲のl−メントールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粗製ハッカ油は、30重量%以下の有機溶媒を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記晶析装置の温度は、41℃以下に徐々に下げられる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記晶析装置の温度は、−30℃から30℃までの間に徐々に下げられる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固体のl−メントール生成物を粒子にするために砕くことをさらに備えている請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子はペレットである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
l−メントールの結晶化を促進するために、前記晶析装置にl−メントールの種結晶を導入することをさらに備えている請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記晶析装置の温度を徐々に上げて、残留油及び不純物を除去することをさらに備えている請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記晶析装置の温度を徐々に上げて、残留油及び不純物を除去することを促進するために減圧又は加圧を行うことをさらに備えている請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記精製されたl−メントールの結晶は、前記粗製ハッカ油を一度のみ結晶化することにより得られる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
植物由来の粗製ハッカ油を収容する晶析装置と、
前記晶析装置にガスを通すのに適合されたストリップシステムと、
前記晶析装置においてl−メントールの結晶の形成を引き起こすために、少なくとも8時間かけて前記粗製ハッカ油が液体状態である温度から30℃以下の温度に徐々に粗製ハッカ油の温度を下げるための前記晶析装置の温度の低下を開始すること、前記結晶から液体を除去するために前記晶析装置における前記結晶にガスを通すために前記ストリップシステムを作動すること、及び前記結晶を溶解するために前記晶析装置の加熱を開始することをプログラムされたプロセッサを含む自動工程制御システムと、
前記晶析装置から溶解されたl−メントールを受けるように構成された導管とを備え、
前記晶析装置と導管とは共に、その内容物と外部の汚染物質との接触を防ぐ閉鎖系を構成するl−メントールを精製するシステム。
【請求項15】
前記晶析装置は、複数の冷却プレート及び/又は冷却コイルを備えている請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記自動工程制御システムは、前記複数の冷却プレート及び/又は冷却コイルのそれぞれの温度を独立して制御する請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
自動化されている請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
結晶形成検出器をさらに備えている請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記導管は貯蔵タンクと流通可能に設けられ、前記貯蔵タンクは部分的に閉鎖系である請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記導管はペレタイザと流通可能に設けられ、前記ペレタイザは部分的に閉鎖系である請求項14に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−517993(P2012−517993A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549696(P2011−549696)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000434
【国際公開番号】WO2010/095034
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591177749)長岡実業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】