天蓋付き底棲生物用養殖礁、およびそれによる底棲生物の養殖方法
【課題】 光線や激しい波浪を効果的に遮り、海流の流入と排出とを可能として底棲生物の生息に適した環境を確保し、幼稚仔の生育区、育成区および夏眠区の機能を合わせ持つ上、礁内から直接的に収穫できる養殖礁を実現可能とする新たな養殖技術を提供する。
【解決手段】 平板状でその上面四隅付近に環金具21を固着した着底基盤2の上面に、透水性ある周壁面に複数の海流出入口31を開口し、正八角形筒状に形成した筒型保護壁3を立設し礁本体11を形成すると共に、該礁本体11礁内空間34に、棲息用定着棚5を組み込んだ上、当該筒型保護壁3の上端開口35には、透水性平板状の上面に環金具64を固着した遮光用天蓋6を施蓋状態に組み合わせ、縄索類7によって着底基盤2および天蓋6の夫々に設けてある各環金具21,64同士を連結して仮固定してなる天蓋付き底棲生物用養殖礁である。
【解決手段】 平板状でその上面四隅付近に環金具21を固着した着底基盤2の上面に、透水性ある周壁面に複数の海流出入口31を開口し、正八角形筒状に形成した筒型保護壁3を立設し礁本体11を形成すると共に、該礁本体11礁内空間34に、棲息用定着棚5を組み込んだ上、当該筒型保護壁3の上端開口35には、透水性平板状の上面に環金具64を固着した遮光用天蓋6を施蓋状態に組み合わせ、縄索類7によって着底基盤2および天蓋6の夫々に設けてある各環金具21,64同士を連結して仮固定してなる天蓋付き底棲生物用養殖礁である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水生生物や水生植物等の養殖に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであり、人工漁礁を製造する分野は勿論のこと、その製造に必要とする設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
我が国におけるナマコの消費量は、主に酒の肴や正月料理等の生食用として比較的僅かなものに留まっているが、アジア全体における干しナマコは、中華料理用やあるいは医薬品の材料等として広く知られ、特に近年、目覚ましい経済発展を遂げている中国にあっては、高級食材としての需要が拡大しており、年を追う毎に魚価が上がり、我が国内の各産地においてもナマコの輸出量が年々増加する傾向にあり、こうしたニーズの拡大によって漁獲量が増えるに従い、各漁場では特大のナマコが殆ど見られなくなり、稚ナマコの数も減少傾向にある等、獲り過ぎの徴候が見られるようになってきている。
【0003】
こうした天然ナマコの減少を食い止め、安定的な生産を可能にしようと、各漁協や漁業研究施設等の多方面において中間育成によるナマコの海面養殖への取り組みが行われるようになり、種苗生産や放流事業、漁場整備等、ナマコの資源増殖を目指す試みがなされ、次第にその成果が確認されるようになってきているが、ナマコ自体の成熟機構や産卵期等は、生息海域や年毎の水温変動等によって様々に異なる上、種苗が放流地点から急速に姿をけしてしまうという現象が知られている等、その生態についても未だ不明な点が多く、適切な生息場整備を行う為の条件も思考錯誤の段階にあると云わざるを得ない情況にあり、現状においては投石魚礁による石材を密とした幼稚仔の生育区と、比較的石材が疎な育成区とを設置して禁漁区とし、その沖側にナマコ漁場を設定する試みが行われているが、ナマコには1歳を過ぎる頃から、高水温期に深場やあるいは浅場の奥まった岩陰等に留まり、夏眠状態となることが知られており、太陽光を遮る夏眠区の設定が必要であるとする報告もなされている。
【0004】
(従来の技術)
そうした中、生育区や育成区および夏眠区といったナマコの棲息区を確保する魚礁の開発が求められているが、従前までの魚礁には、特開2001−346476号公報「餌料培養礁を備えた人工漁礁」発明として提案されているもののように、4本の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロックと、この魚礁ブロックの上面側に固定される4本の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とから構成され、内部に魚礁枠体側空間層と、魚礁ブロック側空間層とからなる空間部を有する人工漁礁を設け、その魚礁枠体の上面側に貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の餌料培養層を収納する網体からなる複数の網籠を配列し、その全体を上側から餌料培養層、魚礁枠体側空間層、および魚礁ブロック側空間層とを形成するものとして、有用魚類の餌料を増殖させて魚を蝟集させ、貝殻の流失を防止して長期に渡って有用魚類の餌料となる多毛類、小甲殻類等を増殖させることを可能としたものや、特開2002−17199号公報「人工漁礁」発明に開示された頂板周囲に傾斜側板を連設し、各傾斜側板下縁に可動側板を開閉動自在に連設して魚礁本体を構成し、該可動側板が開いた位置で隣接する可動側板間に隙間を形成し、閉じた位置で隣接する可動側板を相互に接合させて魚礁本体の形態を縮小可能として魚礁本体内に宙吊り状に培養礁体を組み付けたものとすることにより、輸送の際の小型、軽量化を図り、海底への沈設作業を省力化できるようにしたもの、あるいは特開2005−210976号公報の「磯根資源増殖ブロック、及び増殖礁」発明のように、複数本の脚部を有する台座上に、下方に向けて水平断面積が縮小するよう成型されたコンクリートブロック製の複数個の磯根資源増殖ブロックを、それらの傾斜するテーパ面同士が対峙して下側に向けて拡開状となるよう隣接状に配列、固定したものとすることにより、各ブロック間に形成された上側隙間には磯根資源の稚体の通過を許容する程度の比較的狭い入口を形成し、下側隙間に磯根資源の成体が定住し得る程度に比較的広い磯根資源増殖空間を形成したものとすることにより、磯根資源の成長段階に応じた広さの隠れ場所および生育場所を確保して、磯根資源が長期に渡って定住可能とするもの等が散見される。
【0005】
しかし、前者の「餌料培養礁を備えた人工漁礁」発明は、貝殻群をモルタルによって一体化した多孔質状であって多毛類や小型甲殻類等の増殖を促す餌料培養層を人工漁礁の上部に有しており、これによって太陽光が遮られ、底棲生物が魚礁の下側に生息する環境を確保できる可能性をもっているが、餌料培養層に増殖したゴカイ、イソメ、イトメ、ミジンコ、アミ、ワラジムシ、エビ、カニ等を利用して有用魚類を効果的に蝟集することを本来の目的とするものであり、海底から離れた魚礁上部に設置された餌料培養層の裏面等に棘皮動物が定着する可能性は低くてナマコ増殖用には適さず、また、前記「人工漁礁」発明に開示されたものは、魚礁を折り畳み可能な軽量型のものとして生産工場からの搬出や設置箇所までの海上輸送、および沈設作業等の省力化を実現しようとするものであり、各傾斜板や可動側板、頂板等が太陽光を遮ってナマコの生息に適した環境を得ることを可能ならしめようとしているが、ナマコの定着可能面積は、魚礁本体下側となる海底面範囲に留まり、生息密度を高めることができるものとはなっておらず、やはりこれも有用魚類を蝟集するための魚礁に留まっている。
【0006】
さらに、後者の「磯根資源増殖ブロック、及び増殖礁」発明は、テーパ面を有した複数個の磯根資源増殖ブロック同士を隣接状に配列し、さらに上下に重ね合わせるように組み合わせる等することにより、それらブロック相互間に形成された隙間に磯根資源の稚体や成体が夫々に適した空間を見付けて生息できるように意図し、ナマコもまた好んで定着できる環境を確保できるようにしようとしたものとなってはいるものの、ナマコの収穫手段が依然としてドライスーツを身に着けた潜水夫の手作業に頼って実施しなければならない状況にあることを考慮すれば、それら従前からの手段によってナマコを捕獲しようとするとき、面状に配列された複数のブロックの奥まった隙間に生息しているナマコを収穫するのは極めて手間の掛かる作業となってしまい、ナマコ養殖として効率的に漁獲高を上げる上で大きな支障を来すもの思われる。
【特許文献1】(1)特開2001−346476号公報 (2)特開2002−17199号公報 (3)特開2005−210976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(問題意識)
上記してきたとおり、従前までに提案のある各種人工漁礁は、アイナメやメバル等の漁礁の内部に隠れているような魚や、クロソイ、スズキ、カレイ、ヒラメ等のように漁礁周辺の海底にじっとしている魚、あるいはアジ、サバ、ブリ等の漁礁から離れた表・中層域に群れを作って泳ぐ魚等といった主として有用魚類の増殖や蝟集を目的として開発されてきたものであって、したがってナマコのような底棲生物を高密度に定着させて効率的に養殖できるようにしたものとはなっておらず、優良なナマコ生産で全国的にも名が通っている陸奥湾沿岸の生産地では、ナマコの種苗放流と適正な資源管理とを実現可能とする生息場整備という目的に良く合致し、幼稚仔の生育区、育成区および夏眠区となり得るナマコ養殖に適した新たな魚礁の開発、設置が急務となっている。
【0008】
(発明の目的)
そこで、この発明は、海底に設置することによって太陽光ならびに激しい波浪を効果的に遮り、しかも餌となる珪藻やデトライタス等を含む海流の流入と、棲息生物の排泄物を伴った排出とを可能としてナマコを含む底棲生物の生息に適した環境を確保し、幼稚仔の生育区、育成区および夏眠区の機能を合わせ持つ上、底引き網等を用いずに、生体に傷付けることなく礁内から直接的に収穫できる養殖礁を実現可能とする新たな養殖技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の天蓋付き底棲生物用養殖礁、およびそれを用いた新規な底棲生物の養殖方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、所定大きさの平板状とした着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設して礁本体を形成し、該礁本体筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋した状態に組み合わせてなるものとした構成を要旨とする天蓋付き底棲生物用養殖礁である。
【0010】
この基本的な構成からなる天蓋付き底棲生物用養殖礁を、より具体的な構成のものとして示すと、所定大きさの平板状とした着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設して礁本体を形成すると共に、該礁本体筒型保護壁内側の礁内空間に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだ上、当該筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋した状態に組み合わせてなるものとした構成からなる天蓋付き底棲生物用養殖礁となる。
【0011】
さらに具体的には、所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設して礁本体を形成すると共に、該礁本体筒型保護壁内側の礁内空間に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだ上、当該筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋を脱着自在に施蓋した状態に組み合わせ、1本または複数本の縄索類によって着底基盤および天蓋の夫々に設けてある各環金具同士を連結して仮固定してなるものとした天蓋付き底棲生物用養殖礁であるということができる。
【0012】
(関連する発明)
上記した、天蓋付き底棲生物用養殖礁に関連し、この発明には、それを利用した底棲生物の養殖方法も包含している。
即ち、平板状の着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設、一体化してなる礁本体と、該礁本体筒型保護壁の上端面開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋とを、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設し、その後を追って投下された天蓋を、礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋、仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返して行うようにした構成を要旨とする、この発明の前記した何れかの天蓋付き底棲生物用養殖礁を用いた底棲生物の養殖方法である。
【0013】
これを、より具体的な構成によって示すならば、所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設一体化してなる礁本体と、当該筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋とを、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、環金具に縄索類を繋いで繰り降ろし、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設して縄索類を解き、その後を追って環金具に縄索類を繋ぎ繰り降ろした天蓋を、該礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋し、投下用の縄索類を解き、着底基盤および天蓋の各環金具同士を、1本または複数本の縄索類を用いて繋ぎ仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に縄索類による仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返して行うようにした底棲生物の養殖方法となる。
【0014】
さらに具体的には、所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設一体化してなる礁本体と、当該筒型保護壁の礁内空間中に収容可能な寸法、形状の上下複数階層状とした棲息用定着棚、および筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋を、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、環金具に縄索類を繋いで繰り降ろし、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設して縄索類を解き、その後を追って適所に縄索類を繋ぎ、海中に降ろした棲息用定着棚を、当該該礁本体筒型保護壁の礁内空間中に収容、設置して縄索類を解き、それに続いて環金具に縄索類を繋ぎ繰り降ろした天蓋を、該礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋し、投下用の縄索類を解き、着底基盤および天蓋の各環金具同士を、1本または複数本の縄索類を用いて繋ぎ仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に縄索類による仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返して行うようにした底棲生物の養殖方法であるとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁によれば、平板状の着底基盤の上面中央付近に対し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口した筒型保護壁を、脱着可能に立設してなる礁本体を形成し、該礁本体筒型保護壁の上端開口に略合致する平面形状に形成した透水性、平板状の遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋、組み合わせ可能な構造としたことから、着底基盤、筒型保護壁および遮光用天蓋を工場にて各々別体のものとして製造、保管、出荷(輸送)することが可能となり、当該養殖礁の製造ないし出荷に至る間に費やす労力を大幅に削減することができ、また海底に設置する際には、着底基盤に筒型保護壁を一体化した礁本体と遮光用天蓋とを分解状態のまま海上輸送し、海底に降下、設置した礁本体に遮光用天蓋を組み合わせるという分割作業により、海上および海中作業の負担や危険を軽減して安全且つ効率的に沈設できるようにすると共に、海底設置後には、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状で透水性構造のものに規制した筒型保護壁ならびに遮光用天蓋が、その外郭形状と透水性壁面構造とによって海流や波浪による水圧を適切に分散するようにし、当該養殖礁の回転、移動、横転等を阻止して長らく安定的に定着させることが可能なものとなり、しかも遮光用天蓋と筒型保護壁とが海上から降り注ぐ太陽光と、海流による波浪とを遮って穏やかな礁内空間を確保し、底棲生物にとって生息に好ましい環境を実現し得るものとしてあり、それら最適な環境の下で十分に成長したナマコは、収穫時期には、脱着自在に組み合わせるようにしてある遮光用天蓋だけを開放して、潜水夫の手作業によって傷付けることなく、直接、高い品質を維持したまま収穫できるという秀れた特徴が得られるものである。
【0016】
加えて、礁内空間に上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだものでは、着底基盤、筒型保護壁および遮光用天蓋の礁内空間に面する内壁面に留まらず、該礁内空間に収容された棲息用定着棚の階層状棚壁面夫々に棘皮動物が棲息可能となってナマコの定着密度を格段に高めることが可能となる上、各段毎の上面壁を凹凸岩礁地肌状の擬岩面に形成することにより、さらに天然岩礁に酷似した棲息環境を形成することができるという効果を発揮するものとなり、また、着底基盤とそれに立設された筒型保護壁とからなる礁本体、ならびにそれに施蓋状に組み合わせた遮光用天蓋とからなる当該底棲生物用養殖礁を、その重心位置が、海底設置姿勢の左右前後中央であって、しかも上下中央よりも下側に配置し、望ましくは上下高さの1/3以下の配置とするよう、各部品の寸法、形状および密度を設定したものとすることにより、波浪を受けての横転や転倒、移動を防止して長期間に渡って安定的に設置できるものとすることができる。
【0017】
さらに貝殻を粉砕、選別した多量の扁平貝殻小片を単独でか、または増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、合成樹脂からなるバインダーによって大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を同一方向とするかその方向に傾斜した姿勢のものとそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、硬化してなる貝殻小片塑性物から、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁を構成する各部品の夫々を成型したものとすることにより、貝肉部分を食用とした後に大量に発生し産業廃棄物となる貝殻類を再生利用することができると共に、同様に人工礁の沈設海域に流入する河川や、沈設海域の海底等から採取した砂利や砕石、砂等といった低給水性鉱物質粒状体を利用し、それらを産出した海域に魚礁という形で帰すことが可能となり、元々その海域にあった資源、または同質の資源を利用することによって魚礁の設置による自然環境への影響を殆ど無視できる程度に抑えることができる上、ポーラス状の透水性を有し、棘皮動物の生息に適した砂岩状または岩石状の礁壁面を実現し、経年劣化により崩壊した際にも回収、処理を一切必要とせずに、新たな魚礁を更新、沈設することができ、従前に例のない程度に効率的な養殖管理を実現できるものとすることができる。
【0018】
そして、当該底棲生物用養殖礁の主要部品に用いられる貝穀小片組成物は、偏平状の貝殻小片が夫々の偏平面を同一方向とするか、その方向に傾斜した姿勢のものも混ざって略同一方向に揃えられ、全体の縦断面構造が破れ目地状で重積した状態のものとして形成されていて、所定範囲内の大きさとはするものの円形や楕円形からそれに近い歪なものまでと平面形が必ずしも一定しない偏平状の貝殻小片であることが幸いし、それらによって実現される重積構造は、個々の貝殻小片が直接当接し合う部分やその近辺でバインダーによって強固に接着(この接着構造も、バインダーの質や量、それに添加する硬化剤や硬化促進剤の種類や割合、それに混練時間などで異なってくる。)された構造になるものの、個々の貝殻小片の前後、左右方向に隣接してできる境界部分や、増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体が加えられている場合は、それらで埋められずに残った隙間部分などが上下方向に揃うことのない、所謂破れ目地状(換言すればジグザグ状、または阿弥陀くじ状)に積層して重なり合う構造となっているため、それら微細で肉厚方向に複雑に繋がる間隙が毛細管状となり、海水は垂直方向にも水平方向にも複雑な経路を辿って流通することとなって目詰りし難く、長期に渡り礁内空間に外部からの養分を潤沢に取り込むことができ、礁内棲息動物が排出する老廃物も速やかに外部に放出することとなり、しかも、その連続する空隙率は、少ないものであっても10%程度の確保が可能となる上に適度の弾力性と吸音効果とを備え、断熱効果としても、熱伝導率で0.4819(kcal/m.h.℃ )と略水並みの数値を示し、実にアスファルトの約1/2程度の値になる等、礁内環境を安定させることができるという非常に秀れた特徴を有している。
【0019】
この底棲生物用養殖礁を貝穀小片組成物製のものとすることによってもたらされる作用効果について列挙すると、以下のようになる。即ち、
1.透水性:水は垂直方向と水平方向とに均等に近い状態で透水、通過する。
2.空隙性:毛細管状で複雑多技に連続する空隙となり、目詰りが発生し難くなる。
3.防滑性:細かい凹面によって滑り難く、底棲生物の定着に有効である。
4.過熱性:貝殻や珪砂等の海底に既存の材質からなり、多孔性を有するので海底に沈 設した場合にも海水の浸透によって周囲の環境に同化できる。
5.吸音、防音性:微細で複雑多岐に渡る空隙により、多孔性素材となって外部からの 音響や響きを吸収できる。
6.安全性:用途によっては貝殻破砕物夫々の輪郭全周に渡る周縁形状を滑らかに成形 加工を施したものとすることができ、鋭角を無くしたものとなって安全である。
7.耐薬品性:酸性の浸漬試験結果、強酸性には微減量、強アルカリ性では減量なし。
8.耐強度:扁平貝殻小片が姿勢を揃えられ、破れ目地状の積層構造となるため、十分 な機械的強度が期待でき、バインダーの種類や量、成形時の圧縮程度などによって 圧縮強度、曲げ強度を用途に応じた最適なものにできる。
9.耐塩性:ナトリウム3%溶液、(+)(−)20℃で60サイクルの凍結融解試験 結果減量なし。
【0020】
10.耐凍結融解:大気中(+)102℃、(−)100℃で40サイクル凍結融解試験 結果減量なし。
11.吸水性:原材料貝穀、樹脂、低吸水性鉱物質共に吸水性なし。
12.彩色性:増量材としての粒状セラミックに着色焼成したカラーを混ぜれば様々な色 彩を出せる。
13.耐熱性:熱変形温度(+)165℃まで溶解はなく、間接温度(+)350℃まで 耐え得る。
14.耐火性:不燃材料90.0%以上で延焼しない。
15.耐摩耗性:ラベリング試験結果、アスコン並みで溶融現象はない。
16.耐衝撃性:厚さ16mmの成形品の場合、重さ2kgのものを1.5mの高さから 落下させると破損した。
17.施工性:軽量で切断可能なため、取り扱い作業性がよい。
18.多様性:型枠による自在な成形が可能で各種成形品とすることができる上に、目詰 まりしない特性を活かし魚礁成形品に採用可能である。
19.再利用性:破砕するだけで簡単にリサイクルが可能。
【0021】
また、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁を用いた底棲生物の養殖方法では、着底基盤上面中央付近に筒型保護壁を立設した礁本体と、それに施蓋状に組み合わせ可能な遮光用天蓋、および必要に応じて該筒型保護壁によって包囲される礁内空間中に収容可能な形状、寸法に設定した上下複数階層状の棲息用定着棚とを、各々別体のままで船舶に搭載し、礁本体を始めに沈設してから棲息用定着棚を海中に降下させて礁内空間中に収容し、その後に遮光用天蓋を沈めて礁本体筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖するという工程によって組み合わせるようにしてあることから、陸上での成型、組立および船舶への積載作業等を軽減化すると共に、比較的小型の船体であっても荷重を集中させないよう分散状に積載することによってバランスを安定させ、さらに海中沈設の作業負担やクレーン負荷等を低減させて作業効率と安全性とを向上させることができ、海底沈設後には、着底基盤と遮光用天蓋との夫々に固着された複数個の環金具同士を1本または複数本の縄索類を通して繋ぐことにより、仮固定の作業に特殊工具等が不要となる上、ドライスーツやグローブ等を装着した海底作業による遮光用天蓋の仮留めおよび開放作業を容易なものとすることができるという効果を奏するものとなる。
【0022】
さらに、筒型保護壁と遮光用天蓋とによって包囲された礁内空間は、海中に射し込む太陽光を遮ると共に波浪からは保護されることとなり、しかもそれら透水性ある壁面、ならびに点在状に配置された複数の海流出入口を通じてプランクトンやデトライタス等を豊富に含む新鮮な海水が常時淀みなく供給され、汚れた海水や排泄物等が速やかに排出されることとなって、ナマコを含む底棲生物の生息に絶好の環境を形成、維持し得ることとなる上、該礁内空間中に設置された複数階層状の棲息用定着棚に高密度に定着できるものとなり、従前までの人工漁礁に比較して格段に効率的なナマコの増殖を実現可能とし、その結果、所定の期間を経て成体となったナマコを収穫するときには、仮留めしてある縄索類を解いて作業者自らか(この発明の貝穀小片組成物製天蓋付き底棲生物用養殖礁の場合には、浮力も手伝って可能となる。)、または海上船舶のクレーンによって遮光用天蓋を開放させ、手作業によって収穫してから再度施蓋、縄索類によって仮留めするという比較的簡便な作業で、他の稚ナマコ等に悪影響を及ぼすことなく、成体ナマコだけを選択しながら効率的に、しかも損傷等を与えず高品質のままな収穫して陸揚げすることができるという秀れた特徴を得られることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
着底基盤は、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁の設置個所となる海底に安定的に、沈設可能であってその上面中央付近に立設される筒型保護壁、およびその礁内空間中に設置可能な棲息用定着棚、ならびに上端開口を封鎖可能な遮光用天蓋を一体的に定着可能とする機能を果たすものであり、筒型保護壁の平面積と同等か、それを越える大きさの平板状に形成し、筒型保護壁に対し連結金具等を用いて強固に一体化した礁本体を形成、可能なものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、筒型保護壁の外側配置となる周囲に、適宜点在状配置となる複数の環金具を設け、ロープ繋着用のものとすべきであり、必要に応じて海底面との間に良好な通水性を確保できるポーラス素材製のものとすることができる外、基盤にかぎっては速やかな透水性の得られない鉄筋コンクリート製とすることも不可能ではない。
【0024】
筒型保護壁は、当該底棲生物用養殖礁の礁内空間を海中の波浪から保護すると共に、透水して棘皮生物の餌となるプランクトンやバクテリア等を円滑に流入させ、また底棲生物類の老廃物等を速やかに排出可能とし、太陽光を遮るという機能を果たすものであり、その外郭形状を外部海水流との接触面積をできるだけ大きくして海流の流出入を活発なものとし、且つ水平方向からのあらゆる波浪に略均等の強度を発揮できるようにした円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成したものとし、十分な礁内空間を確保して海流や潮、波浪等に耐える強度を有したものとしなければならず、こうした衝撃的な水流を衰滅し、適度に弱められた水の流れを礁内空間内に導き、同様に排出できる程度のポーラス構造の壁面からなるものし、さらに、周壁面の複数適所に点在状配置となる海流出入口を開口し、後述する実施例にも示すように、これら海流出入口を通じて海水の流入と流出とを促し、さらに複数の海流出入口の全てかあるいは、選択した何れかを、海底付近に生息する稚ナマコや成体ナマコが、自由に出入りできる程度以上の開口面積を確保したものとすべきである。
【0025】
また、筒型保護壁は、遮光用天蓋の下側となる礁内空間を波浪から保護できるよう、該礁内空間の外側周囲に筒状の保護壁を形成し、ナマコの養殖環境を十分に保護可能とするものであるが、沈設海域によっては、十分な海流や波浪等の海水の流出入が得られず、外壁によって包囲することが好ましくない場合も有り得るものであり、こうした場合には、敢えて筒型の保護壁を設けず、後述する実施例にも示すように、底棲生物の定着に不可欠となる遮光用天蓋のみを着底基盤上の所定高さ位置に十分な強度で支持できる支持柱もしくは支柱状壁面等を設けたものとすることが可能である。
【0026】
海流出入口は、礁内空間中に比較的大量の海水が波浪や海流、潮の変化等の影響によって自動的に流入ならびに流出するものとし、周辺海底付近に生息する底棲動物が、自由に出入りできるものとするという機能を果たすものであり、少なくとも稚ナマコあるいは成体ナマコが支障なく通過できる程度の開口寸法、形状としなければならず、筒型保護壁の周壁面に点在状に配置され、その中の幾つかは、海底付近に開口されたものとすべきであるが、波浪や海流等が必要以上に流入しない程度の開口、寸法に抑える必要がり、後述する実施例にも示すように、筒型保護壁の中心を挟み180°反対側となる同一箇所に同一形状の開口として形成し、海流が真っ直ぐ通過できるよう形成したものとするのが、当該礁本体に加わる海水抵抗を低減して長期間に渡って移動や横転等を惹起せず、安定的に継続定着状されるようにする上で望ましいものである。
【0027】
連結金具は、着底基盤とその上面中央付近に立設状配置された筒型保護壁の下端側適所とを強固に連結して礁本体を一体的に形成可能とする機能を果たすものであり、海上から海中に投入、沈設する際に受ける衝撃力と海底沈設後に受ける海流や波浪等の水圧にも十分に耐え得る強度をもって連結可能な構造および素材製のものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、ポーラス素材製とした着底基盤と筒型保護壁とを連結するには、その構造ならびに強度上、各部材の壁面を貫通するボルト・ナット、座金ならびにそれに連結されるL型フランジ状部品からなるものとするのが望ましく、耐久強度の面から各金属部品を耐塩性ステンレス製とするのがよい。
【0028】
棲息用定着棚は、礁内空間中における底棲生物用に用意された定着面積を大幅に拡大して、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁の1基当たりに定着可能となるナマコの数を増加させ、しかも定着した多数のナマコ夫々の生息環境を良好に確保可能とする機能を果たすものであり、上下に十分な間隔を隔てた複数段の棚状に形成され、筒型保護壁によって包囲された礁内空間中に収容、設置可能な形状、寸法に形成しなければならず、十分な強度と透水性とを有するポーラス素材製であって、ナマコの定着性を考慮して格段毎の上面壁を凹凸岩礁地肌状の擬岩壁面に形成されたものとすることができる。
【0029】
遮光用天蓋は、筒型保護壁の上端開口を開放自在に封鎖して礁内空間を陽光から遮蔽し、透水性を確保しながら強い波浪や海流の進入を阻止可能とするものであって、筒型保護壁上端の円形もしくは八角形以上の正多角形とした開口を閉鎖可能な平板状に形成され、少なくとも上側に露出する上面が平面状に形成されたものとしなければならず、透水性を有したポーラス素材製のものとすべきであり、後述する実施例に示すように、上面適所には開閉操作用およびロープ繋着用の環金具を固着したものとするのが望ましいが、開閉操作やロープ類の巻掛け等を可能とする鉤型のハンドルや、頭部を有する把持柱等を固着または立設したものとすることができ、筒型保護壁の上端開口に嵌着可能とする突面部を形成したものとすることが可能である。
【0030】
環金具は、着底基盤や遮光用天蓋等の必要箇所同士を縄索類を用いて繋ぎ仮止め可能とし、さらに必要に応じて遮光用天蓋の開閉操作用の把手としての機能を果たすものとなり、着底基盤に設けられたものにあっては、複数設けられた中の1個ずつが夫々、着底基盤と筒型保護壁とを一体化してなる礁本体を吊上げ可能とする程度に十分な強度をもって固着されたものとし、また遮光用天蓋に設けられたものは、その1個ずつが夫々遮光用天蓋の重量を十分に吊上げ可能な程度の強度を有するものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、周辺環境への影響や部品寿命等を考慮して耐塩性の金属製金具を用いたものとすべきである。
【0031】
当該天蓋付き底棲生物用養殖礁は、着底基盤およびこれに立設された筒型保護壁からなる礁本体、ならびに当該礁本体の筒型保護壁上端開口に対し、遮光用天蓋を施蓋した組み立て状態にあって、その重心位置が、海底設置姿勢の左右前後中央にあり、しかも上下中央よりも下側の配置とすべきであり、上下高さの1/3以下の配置となるよう、各部品の寸法、形状および密度を設定したものとするのが望ましい。
【0032】
また、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁を構成する着底基盤、筒型保護壁および遮光用天蓋、ならびに棲息用定着棚の夫々を、後述する実施例に示すように、貝殻を破砕、選別してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、適宜合成樹脂からなるバインダーにより、大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を同一方向とするかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されたポーラス素材製のものとすることができる。
【0033】
扁平貝殻小片とする貝殻には天然、養殖の別なく、シジミ、アサリ、ハマグリなど比較的小さいものから、ホタテ、カキ、アワビ、サザエなど一般の食用に供されているものや、その他の二枚貝や巻貝、殆ど食用にされないアコヤ貝その他の貝など全ての貝殻の採用が可能となるが、全体形状が殆ど円形に近い整った扁平状(養殖物程その傾向が強く、廃棄されるものの殆どはその養殖物)であるため、素材となる直径または長径が1ないし8mm程度のものに破砕し易いという利点に加え、比較的品質、強度が安定していることと、ある程度形が整っていて原材料として取り扱いし易い上に、何よりも大量に廃棄されていてその処理対策が急務である点などからして、それら貝殻類の中でホタテの貝殻が最も適しているといえる。
【0034】
この扁平貝殻小片は、破砕後に篩に掛けて所定範囲の大きさにしたものをそのままで採用してもよいが、破砕しただけでは周辺に鋭い破砕口が残っていて製造工程の途中で怪我をしてしまう虞れがあったり、型枠内に充填、固化する工程などにおいては、長年に渡る繰り返し作業中に型枠に傷を付けてしまう不都合や、貝穀小片組成物による成形品としたとき、外周面に露になる鋭角部で人体などに怪我を負わせてしまう事態も想定される外、何よりもこれら大量の扁平貝殻小片を後述のバインダーと共に混練する作業工程で、個々の扁平貝殻小片に残る先鋭突起部分が円滑な混練の邪魔をすることになって均質な混練ができなかったり、できたとしても非常に時間を要することになってしまうから、所定範囲の大きさの扁平貝殻小片を、特殊な機械装置(例えば、米国GAM社製の商品名「GAM11−5T」)により、円形や楕円形からそれに近い歪なものまでと平面形が必ずしも一定しない偏平状の貝殻小片夫々の輪郭全周に渡る縁形状を滑らかに成形加工するようにし、なるべく滑らかな輪郭の円形や楕円形またはそれに近い形状のものになるよう加工して採用するようにするのが望ましいといえる。
【0035】
また、このように縁形状の滑らかに成形加工した扁平貝殻小片は固より、そうでなくても所定範囲のサイズのものに破砕、選別する過程を経て経費を掛けた扁平貝殻小片だけでこの発明の貝穀小片組成物を構成しようとすると、当該人工礁のように比較的大型成型品のように、大量に必要となるものでは到底採算割れとなって普及が覚束なくなるため、目的とする貝穀小片組成物の機能に支障を来すことのない最適な範囲で増量材を加えた混合物として採用するようにすべきであり、さらにまた、各部品の必要比重あるいは重量を確保するために貝殻小片より比重の大きな増量材を混合することが可能であり、その範囲は、貝穀小片組成物が少なくとも50%を割らないものとしなければならず、50ないし85%の範囲の中から最適な割合、できれば70%程度とし、その余を目的、用途によって後述する適宜増量材によって賄うようにするのが最も実用的であるといえ、廃品であって処分に困る大量の貝殻を、廃品であるという経済効果を活かして採用する意義が出てくることになる。
【0036】
これに用いる増量材は、この発明の貝穀小片組成物の目的達成のため、本来ならば貝穀小片であるべきところをその代替物として用いられるというのが主たる機能であって、その粒度や配合量などを調整することによって強度や透水性、弾性、比重その他この発明の貝穀小片組成物がもたらす作用効果を増強または緩和、減少させるようにする機能、および破れ目地状に積み重なった積層構造となる扁平貝殻小片の間に介在、固化することにより、破れ目地状積層構造を更に複雑化した連通状の空隙とする機能をも果たし得るものであり、したがって、強度が貝殻のそれと同等かそれ以上であって、貝殻同様に低吸水性の鉱物質からなる必要があり、たとえば、硅砂や焼成珪砂、砕石、砂利、着色ガラスの外、貴石、大理石、角閃石、クリストパライト、緑閃石、電気石などといった天然岩石、または水酸化アルミナハイジライト、アルミン酸ストロンチウム等の高純度無機質物質が採用可能である。
【0037】
それら鉱物質を粉砕、選別した粒状体として採用するものであり、各種鉱物質粒状体の例としては、当該養殖礁の沈設海域か、もしくはその海域の近辺に流れ込む河川等から採取された珪砂、砕石、砂利等を用いるのが望ましいが、十分な洗浄を施したものであれば一般に市販されている砂や砕石、砂利等を用いることが可能であり、さらに、着色焼成硅砂(例えば、新東陶料株式会社製、商品名「カラーサンドR−5」外25種類等)、破砕ガラス(例えば、市川油脂輸送株式会社製、商品名「ガラスサンド」等)や天然鉱石粒(例えば、丸東窯材株式会社製の硅砂や有限会社青森ケミカル製の海砂等)その他の中から一種類または複数種類組み合せて用いることとし、その粒度はて30ないし70メッシュ程度のものがこの発明の貝穀小片組成物を実現する上で好ましいといえるものの、目的とする貝穀小片組成物の構造、機能に支障がなければ、あるいは支障がないような特別の手段を講じられれば、必ずしもこの範囲に限定されるものではなく、更に幅広い範囲での選択も可能となる。
【0038】
一方、バインダーは、上記した扁平貝殻小片を主体に、適量の増量材を加えてなる混合物に加えられ、それらを所定の規制した積層構造に揃える機能と共に、揃えられた積層構造を確定的に固定化して成形する機能を果たすことになり、光硬化性のウレタン系合成樹脂の外、ビニルエステル系樹脂やポリエステル系合成樹脂などを単独でか二ないし三種類混合した複合樹脂が、適合する溶剤(例えば、スチレンモノマーやアセトン、キシレン等)と共に採用できることになるが、耐候性に秀れていて食品衛生法の容器包装規格基準適合樹脂にも適合しているウレタン系合成樹脂(例えば、トーヨーポリマー株式会社製、商品名「ポリネート97」や「サファロン97」の外、日本エスエスシー株式会社製、商品名「KBK NY−1」、昭和高分子株式会社製、商品名「SG1000」など)の使用が、海洋中に沈設した場合にも、有害物質が含まれておらず、したがって透水した海水を汚染させてまったり、その海域に生息する動植物類、および漁業関係者の人体に接触したりしても何等の問題を生じさせず、また、それらが使用済みとなって廃棄物になったとしても無害であって環境に悪影響を及ぼすことにならず、好ましいといえる。
【0039】
この合成樹脂がバインダーとして有効に作用するようにするために用いられるのが、従前から周知されているとおり、硬化剤(例えば、日本油脂株式会社製ベンゾイルパーオキシド、商品名「ナイパーFF」、化薬アクゾ株式会社製、商品名「328E」外)および硬化促進剤(例えば、昭和高分子株式会社製、商品名「ナフテン酸コバルト」外)であり、合成樹脂の種類に応じて最適なものが適量、即ち期待する強度や硬化速度、それに変性程度などの違いを勘案して最適量が用いられることになる。
【0040】
このように夫々所定の配合割合のものとして扁平貝殻小片、あるいはそれに増量材を加た混合物に、適宜合成樹脂に適量の硬化剤及び硬化促進剤を添加したバインダーが加えられて混練され、諸条件に応じて必要時間混練を続けることにより、扁平貝殻小片は、その偏平面に作用する接着力とそれに直交する方向に作用する接着力に差を生じてしまうこととなって、次第に扁平貝殻小片個々の姿勢は、殆どのものが各々の扁平面をその撹拌方向と同じ方向になるか、その方向に傾斜したものがそれらに混在するような状態に揃えられると共に、混練過程で硬化が進んでいて次第に粘性を増し、納豆を掻き混ぜたときのような糸引き状態となって、それら糸引き状態の接着構造となることから、扁平貝殻小片相互は、偏平面を同一か同一方向に寝かせたものが混在するようにして積み重なり、その縦断面では破れ目地状の積層構造になって、しかもそれら相互およびそれらの隙間に介在状となっている増量材の当接する部分に糸引き状態の接着剤が介在し、面状接着というよりも点状または線状接着となるため、強力な接着構造を実現しながらも複雑な空隙構造を確保したものとなる。
【0041】
この現象、即ち糸引き状の接着による点状または線状接着構造は、混練過程でバインダーの硬化が進み、次第に粘性を増していくことによってもたらされる現象を、より円滑に進行させ、しかもその接着強度の増強を図ろうとするために、採用するバインダーを、該バインダーを構成する樹脂の重量の10ないし30%程度(少なすぎると効果が表れ難く、範囲を超えていくと均質な撹拌が難しくなると共に、接着剤の糸引き現象が次第に少なくなり、接着強度に支障を来す。)に相当するロックウールまたはグラスウールを混入したロックウールまたはグラスウール混入バインダーにして用いるようにすると極めて効果的であることが確認された。
【0042】
したがって、ロックウールまたはグラスウールを混入しないバインダーを用いたものに比較し、混練時間を大幅に短縮化すると同時に均質な混練状態も確保され、破れ目地状の積層構造となっている扁平貝殻小片個々、またはそれらに混在状となっている増量材としての各種鉱物質粒状体との間に、糸引き状のバインダーの一部となって介在し、固化することとなり、言わばロックウールまたはグラスウールが糸引き状となる接着剤の心材的機能(換言すれば吸着材的機能とも言えよう。)を果たすこととなり、撹拌工程では勿論のこと、型枠内での圧縮成形工程時においても、糸引き状態のバインダーが下方にダレてしまって液状化し、一部に点状または線状接着構造を維持できなくしてしまい、複雑な空隙を確保したままで接着強度を維持し続けるようにするというこの発明の目的とする構造、機能の貝穀小片組成物の実現化に支障きたすようなことがないものとすることができる。
【0043】
この発明の貝穀小片組成物の重要な構成である多数の扁平貝殻小片(偏平小片)あるいは増量材を一部に介した多数の扁平貝殻小片(偏平小片)が破れ目地状の積層構造を実現するため、その製造方法には特別の手段を要しており、この発明には、それら特徴ある製造方法も包含され、特にバインダーの粘性を効率的に高めていき、確実な糸引き現象を惹起するようにするため、バインダーとすべき合成樹脂に対する最適量の硬化剤および硬化促進剤の正確、迅速な計量、添加、そしてそれらを混練する第一次混練と、その後に加える扁平貝殻小片(偏平小片)と、目的、用途等を勘案して必要に応じて適量が加えられる増量材としての低吸水性鉱物質紛状体、それにバインダーの糸引き現象の惹起と圧縮成形段階のダレ防止と重要な役割を担う所定量のロックウールまたはグラスウールが、予め設定された割合ずつ計量され、混練済みとしたバインダーと共に効率良く撹拌する第二次混練とに欠くことができないのが混練機(ミキサー)である。
【0044】
混練機(ミキサー)には、この発明の貝穀小片組成物を構成する素材の種類、形状、大きさ、比重などの違いから、それらが一部に固まったり浮き上がってしまったりして構成素材全体の均質な混練に支障を来してしまわないようなものでなければならず、そのために有効な偏心軸ミキサー(例えば、関東混合機工業株式会社製、商品名「HP型90L」等)を採用するのが望ましい。
【0045】
それら混練機(ミキサー)による自動化された混練が進行していく過程において、室内温度や湿度なども考慮して予め設定された時間経過に伴い、次第にバインダーの硬化が進むに連れてその粘性も増して粘着強度を高めていき、なおも撹拌を強制していくと今度は次第に納豆を撹拌していったときに生じさせるような糸引き現象を惹起し始め、この糸引き現象が始まって構成素材間に空隙が生じ始めることにより、構成素材個々の動きが専ら糸引き状態のバインダーに左右され易くなっているところに、扁平貝殻小片(偏平小片)に働く粘着力は、平坦面相互に掛かる粘着力が平坦面に並行する方向(撹拌方向)のそれを遥かに超えて大きくなることから、扁平貝殻小片(偏平小片)の姿勢は、この糸引き現象と共に自然に整えられ、大半のものが、夫々の偏平面を同一方向とするか同一方向斜めに寝かせたものが混在するようにした積層構造を見て取れるようになることから、この糸引き現象から姿勢整列状況に至る過程を目視によって確認して第二次混練過程を終了するものとする。
【0046】
その後、整えられた姿勢の方向に逆らわないように適宜型入れし、整った扁平貝殻小片(偏平小片)の偏平面を圧する方向であって、目的、用途に応じた圧力で圧縮成形すれば、目的、用途に応じたこの発明の貝穀小片組成物か、さらにそれらを切断加工したり、あるいは、最終混練過程を終えて姿勢を整え終えたものを、基盤とすべき適宜板体、例えば既存のALC板やコンクリート板、アスファルト板、石膏ボード等といった成形板、あるいは成形板に至る前の成形体の上に載せるように型入れし、同様に圧縮成形してその過程で両者を一体化する等の最終工程を経ることにより、最終目的とする成形品を製造し終えることになる。
【0047】
この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁を用いた底棲生物の養殖方法は、ナマコやそれを含む底棲生物の増殖に関わるものであるが、その他の珪藻類や魚介類、甲殻類の養殖に対して応用することも勿論可能であり、また、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁の複数基を設置する場合には、その付近の海流や潮、波浪等の影響を個別に考慮しなければならず、例えば河川水流入海域中に沈設するときや、潮間帯に設置するとき等には、河川水が大量に流入したり、干潮時の乾燥を防止するために、海流や波浪の方向に向けて開口状の俯瞰平面U字状あるいはV字状に配列させて海水の滞留作用を得るようにすべきであり、さらに、アオナマコの養殖を目的とする場合には、岩礁、転石地帯の海流下方の砂泥地帯に当該天蓋付き底棲生物用養殖礁を沈設するとよく、また珪藻類繁茂地帯の海流下方の砂泥地帯に設置するようにするのが望ましいといえる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0048】
図1の沈設状態にある天蓋付き底棲生物用養殖礁の斜視図、図2の施蓋された底棲生物用養殖礁の斜視図、図3の一部を分解した着底基盤の斜視図、図4の筒状保護壁の斜視図、図5の一部に変更を加えた筒状保護壁の斜視図、図6の礁本体の斜視図、図7の棲息用定着棚の斜視図、図8の棲息用定着棚を収容した礁本体の斜視図、および図9の一部を分解した遮光用天蓋の斜視図に図示される事例は、所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具21,21,……を固着して着底基盤2とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口31,31,……を開口し、正八角形筒状に形成した筒型保護壁3を、適宜連結金具4,4,……によって脱着可能に立設して礁本体11を形成すると共に、該礁本体11筒型保護壁3内側の礁内空間34に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚5,5,……を組み込んだ上、当該筒型保護壁3の上端開口35には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具64,64,……を固着した遮光用天蓋6を脱着自在に施蓋した状態に組み合わせ、1本または複数本の縄索類7によって着底基盤2および天蓋6の夫々に設けてある各環金具21,21,……,64,64,……同士を連結して仮固定してなる、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁における代表的な一実施例を示すものである。
【0049】
当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、図2中に示す着底基盤2、筒型保護壁3からなる礁本体11と、遮光用天蓋6、および図8中に示すように、その礁内空間34中に収容される棲息用定着棚5とから形成されたものであり、各部品は何れも主要部分が後記実施例2に示す貝殻小片組成物によって成形されたものとなっており、図3中に示す着底基盤2も、後述する貝穀小片組成物からなり、1辺が約1300・、肉厚が100・の正方形平板状であって、四隅の夫々に約150・、45°の面取りを施し、同図3中に二点鎖線によって示すように、上面中央の正八角形の範囲を筒型基盤2立設用の範囲に設定し、その四隅外側直近に肉厚(上下)方向に貫通する連結金具4,4,……および環金具21,21,……用の固着孔25,25,……を穿設したものとなっている。
【0050】
筒型保護壁3は、着底基盤2と同様に貝穀小片組成物の成形品であり、図4中に示すように、直径約1300・の円に内接する俯瞰平面正八角形の水平断面形に形成され、その肉厚を約100・、高さを約700・に設定した筒状であって、各側面壁の上端中央には、夫々150・×200・の開口寸法とした海流出入口31,31,……を、上端に開放するよう形成し、また、1面置きとなる壁面の下端中央にも、同寸法の海流出入口31,31,……を下端開放状に形成し、各壁面の中、下端中央に海流出入口31が形成されないものには、連結金具4用の固着孔32,32,……を、肉厚方向(筒型保護壁3中心に向かう水平方向)に穿孔したものとしている。
【0051】
また、筒型保護壁3は、図5中に示すように、隣接する各壁面に対して海流出入口31,31,……を、上下交互に配置させたものとし、それら壁面中、下端側に海流出入口31を開口していない壁面の下端中央付近には、連結金具4用の固着孔32,32,……を、壁面肉厚方向に穿設したものとし、また、上端中央に海流出入口31を形成しておらず、しかも筒型保護壁3中心を挟み対峙する何れか一対の壁面の、各上側中央付近には、外側に向けて突出された環状金具33を固着したものとすることができる。
【0052】
前着底基盤2の上面中央に図4中に示した筒型保護壁3を縦置き状に配置させ、図3および図6中に示すように、対応配置させた固着孔25,25,……,32,32,……の夫々に貫通するボルト・ナット41,41,……と、座金42,42,……およびL字型金具43,43,……の各部品を組み合わせてなる複数組の連結金具4,4,……を用いて強固に立設、一体化させ、礁本体11を形成したものとし、各連結金具4,4,……は、夫々の部品に耐塩性ステンレス製のものを使用している。
【0053】
図3中に示すように、着底基盤2の各連結金具4,4,……の配置個所外側の固着孔25,25,……には、両端に雄ネジを刻設したU字型金具22,22,……を上面側から下面側に貫通させ、下面側から座板23,23,……を装着し、ナット24,24,……を螺合させて固着し、環金具21,21,……を形成したものとし、これら4箇所の環金具21,21,……も前記連結金具4,4,……と同様に、夫々の部品が耐塩性ステンレスから形成されたものとなっている。
【0054】
同図6中に示した礁本体11の筒型保護壁3内に形成された礁内空間34中には、図7中に示すように、貝穀小片組成物からなり、上下複数段の矩形状棚板51,51,……とそれら四隅の上下を支持する支持柱52,52,……とを組み合わせてなる4個の棲息用定着棚5,5,……を、図8中に示すように、中央に1個相当分の空間を形成した俯瞰平面十字状の配置となり、筒型保護壁3の内周壁との間に適度な隙間空間を形成するよう収容可能なものとなっている。
【0055】
遮光用天蓋6も同様の貝穀小片組成物からなり、図9中に示すように、筒型保護壁3の俯瞰平面における外郭形状に一致する正八角形に形成された肉厚約100・の平板状に形成され、その下面中央には、筒型保護壁3の上端開口35の内周縁に嵌合可能な正八角形状の突面部61を形成し、中央には上下肉厚方向に貫通する直径100・程度の円柱状海流出入口62を開口し、その外側の90°毎の開き角を隔てた4箇所夫々には、所定間隔を隔てた2個一対の固着孔63,63,……が、肉厚方向(施蓋の際の上下方向)に貫通され、それら一対の固着孔63,63,……毎に、両端に雄ネジを螺設したU字型金具65,65,……を上面側から下面側に貫通させ、下面側から座板66,66,……を装着し、ナット67,67,……を螺合させて、環金具64,64,……を固着したものとなっており、これら4箇所の環金具64,64,……は、その各部品が耐塩性ステンレス製のものとなっている。
【実施例2】
【0056】
ここに取り上げた実例は、扁平貝殻小片(偏平小片)として、我が国を代表する食用貝(その大半が養殖貝)、ホタテ貝の残滓物であるホタテ貝殻を利用して貝穀小片組成物を形成する方法であって、これに基づき前記実施例1の着底基盤2、筒型保護壁3、棲息用定着棚5,5,……ならびに遮光用天蓋6を成形するものであり、以下具体的に説明を加えていく。
先ず、主原料とするホタテ貝殻(代表的な二枚貝で、通常、上蓋はやや赤みを帯びた褐色、裏蓋は淡黄色を帯びた白色)を雨水に所定期間晒しておいたものとするか、まとめて水洗した後、火力または風力など適宜手段によって水分20%以下に調整してから、粉砕機に掛けて大まかな粉砕をしてしまい、必ずしも平面形が一定しないものの、貝殻生成の特徴から偏平状の貝殻小片にした上、米国GAM社製「GAM11−5T」の粉砕機によって夫々の輪郭全周に渡る縁形状が、なるべく滑らかな輪郭の円形や楕円形またはそれに近い形状のものになるよう滑らかに成形加工してしまい、その後で篩に掛け、直径または長径が1ないし8mm程度のものを大量に用意しておく。
【0057】
この主原料の偏平状のホタテ貝殻小片とは別に、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1の沈設対象となる海域に流れ込む河川またはその周辺採石場等から採取された粒径0.6ないし0.15・(大半は0.425・前後)、嵩比重1.45ないし1.7、水素イオン指数pH6ないし7、吸水率平均0.30(灼熱減量)の珪砂(六ヶ所産砂5号)、および同様の箇所か、あるいは他の地域から採取され十分に洗浄した粒度1.18ないし13.2・(大半が2.36ないし4.75・)、嵩比重2.759、吸水率2.023の採石(越友産業7号)を増量材とする。ホタテ貝殻小片の85ないし50%に対し、この増量材である硅砂、採石の15ないし50%を、よく混ぜ合わせてホタテ貝殻小片混合物にしておく。
【0058】
バインダーとしては、昭和高分子株式会社製、商品名「SG1000」のビニルエステル系合成樹脂、硬化剤として化薬マクゾ株式会社製、商品名「328E」、および硬化促進剤(ナフテン酸コバルト)として昭和高分子株式会社製、商品名「コバルト6」とするが、無黄変ウレタン系合成樹脂(商品名「KBK NY−1」、日本エヌエスシー株式会社製と、0.05ないし4.0%(気温や硬化時間などの条件で最適値を決定)の範囲で添加する硬化剤(商品名「KBK−NSC」、日本エヌエスシー株式会社製とすることも可能である。
【0059】
後述する配合割合(気温や硬化時間などの条件で最適値を決定)によってビニルエステル系合成樹脂と硬化剤、および硬化促進剤を用意し、粘性液体充填自動計量器(東京ミュー精機株式界社製)を使って夫々最適配合割合に計量、混入して一次混練として均質になるよう混練した後、カット長3ないし5mm、繊維径4μ前後のロックウール(熱伝導率0.044w/m・k、熱収縮温度700℃)を混入して二次混練し、ロックウールが均質に分散、混入されたものとする。
【0060】
以下に、当該各部品の天蓋付き底棲生物用養殖礁1の各部品、材料類における具体的な配合割合を示す。
1.「貝穀小片組成物の混合割合」
イ.着底基盤2 貝殻:40% 珪砂:10% 採石:50%
ロ.筒型保護壁3および遮光用天蓋6 貝殻:70% 珪砂:30%
2.「貝穀小片組成物のバインダー混合割合」
イ.天蓋付き底棲生物用養殖礁1の合計重量に対する重量比:10ないし20%
ロ.バインダー重量に対する硬化促進剤配合割合:1.5ないし2.0%
ハ.バインダー重量に対する硬化剤配合割合:0.5ないし4.0%
ニ.バインダー重量に対するロックウール配合割合:10ないし30%
【0061】
この混練には、関東混合機工業株式会社製、商品名「HP型90L」の偏心軸ミキサーを採用した。
引き続き、偏心軸ミキサー内のロックウール混入バインダーの中に、予め用意しておいた前記ホタテ貝殻小片混合物を、ロックウール混入バインダー5ないし10%に対して95ないし90%となるような範囲として混入し、バインダーの粘性が増して次第に糸引き状になるに連れ、ホタテ貝殻小片混合物の姿勢が整えられるのを目視しながら、回転速度第1速72(r/m)から、第1速100(r/m)、第3速163(r/m)、第4速225(r/m)を使ってコントロールし、夏期で約4分間、冬期で約5分間を目安にした三次混練を行う。
【0062】
こうして混練を終え、それら大半の扁平貝殻小片がその扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられた状態の混練物を素早く取り出し、整えられた扁平貝殻小片の姿勢がそのまま平置き状となるように押し広げるように、着底基盤2、筒型保護壁3、遮光用天蓋6、および棲息用定着棚5の棚板51,51,……ならびに支持柱52,52,……成形用の図示しない型枠の夫々に充填した上、電動ハンマー(商品名「H41SA型」日立工機株式会社製)を用いて均等に打圧、硬化させるか、あるいは反動反復圧縮機(商品名「全自動100t型」、株式会社山崎鉄工所製)を使って、適切な圧力で圧縮して固化させ、天蓋付き底棲生物用養殖礁1の各部品を成形する。
【0063】
各部品の成形の際に、図3ないし図6および図9中に示すような、各固着孔25,25,……,32,32,……,63,63,……や、海流出入口31,31,……,62等を同時成形するのが望ましいが、離型後に各成型品の必要箇所夫々に固着孔25,25,……,32,32,……,63,63,……をボール盤やドリル工具等を用いて穿孔し、あるいは必要に応じて海流出入口31,31,……,62を鋸盤等を用いて切断加工すること等が可能であり、さらにまた、混練物を素早く取り出した後、予め上下面を反転させて用意しておいた、図9に示す、遮光用天蓋6の裏面中央に、型枠によって確保した所定厚の正八角形平板状空間中に充填するよう被せて圧縮、固化することにより、突面部61を一体化した貝穀小片組成物による成形品を製造することも可能である。
【実施例3】
【0064】
図10の一部の構造に変更を加えた天蓋付き底棲生物用養殖礁の矢印A−Aに示す90°範囲を断面化した斜視図に示される事例は、着底基盤2の上面中央に二重構造となる筒型保護壁3を、図示しない複数の連結金具を用いて立設、一体化した貝穀小片組成物製の礁本体11を有するものであって、俯瞰平面形状が、直径約600・の円に内接する正八角形の外郭形状であって高さが約700・、肉厚約65・の筒型内周壁36と、その外側に同心状に配され、直径約1160・の円に内接する正八角形の外郭形状に設定され、高さ約500・、肉厚約87・の筒型保護壁3とを設けたものであり、着底基盤2の上面中央には筒型内周壁36の下端内側に通じるよう肉厚方向に貫通した海流入出口26を穿孔し、該筒型内周壁36の筒型保護壁3の上端よりも下側となる範囲には、点在状の配置となる複数の海流出入口31,31,……が、肉厚方向に貫通、形成されたものとしている。
【0065】
当該礁本体11筒型内周壁36の上端開口には、該筒型内周壁36の平面正八角形に略一致する寸法、および外郭形状に施形された肉厚約50・の平板状であり、下面中央に厚さ約50・の嵌着用突面部61を形成し、上面中央から下面中央に掛けて直径約200・の海流出入口62を貫通させ、U字型金具65,65,……、座板66,66,……およびナット67,67,……の組み合わせからなる合計4個の環金具64,64,……が、上面の均衡する位置に固着した中央天蓋68を開閉自在に施蓋したものとし、また、筒型保護壁3内周壁上端縁と、それと同じ高さとなる筒型内周壁36外周壁面との間には、内外壁が平行する2辺間毎に対応する寸法、形状とした俯瞰平面台形状の肉厚約50・の平板からなり、下面には厚さ約50・の突面部61を形成した外周天蓋69,69,……を、筒型内周壁36外周壁面に固着された連結金具4,4,……と、筒型保護壁3上端縁との間に掛け渡し状に閉鎖したものとし、筒型保護壁3上端縁に沿って配置された複数個の外周天蓋69,69,……の中、1個置き毎となる合計4個の外周天蓋69,69,……は、その重心位置付近に均衡する配置となるようU字型金具65、座板66,66およびナット67,67からなる環金具64を固着し、その環金具64の中央直下付近には、直径約50・の海流出入口62を肉厚方向に貫通したものとし、開閉自在に施蓋したものとなっている。
【0066】
このようにして組み立てられた天蓋付き底棲生物用養殖礁1の重量は以下のとおりとなっている。
イ.着底基盤2
(体積)0.1638m3×(比重)2.1t/m3=0.3535t
ロ.筒型内周壁36
(体積)0.0628m3×(比重)1.7t/m3=0.1068t
ハ.中央天蓋68
(体積)0.0174m3×(比重)1.7t/m3=0.0296t
ニ.筒型保護壁3
(体積)0.1633m3×(比重)1.7t/m3=0.2776t
ホ.外周天蓋69
(体積)0.0275m3×(比重)1.7t/m3=0.0467t
【0067】
前記、ハ(外周天蓋69)は、開閉自在に装着された4個の天蓋69,69,……のみが含まれ、ニ(筒型保護壁3)の重量中に、ハ(外周天蓋69)以外の開閉不能に装着された4個の天蓋69,69,……を含む重量として表示している。
そして、それらを組み合わせた天蓋付き底棲生物用養殖礁1の全体体積が、0.4393m3、そして合計重量が、0.8141tとなるよう、各部形状、寸法および比重が設定され、しかもその重心位置が、中心位置における上下寸法1/3以下の位置に設定、配置されたものとしている。
【実施例4】
【0068】
図12の筒型保護壁をもたない天蓋付き底棲生物用養殖礁の正面図、図13の図12中矢印B−B部分の断面図、および図14の一部構造に変更を加えた棲息用定着棚における分解状態の斜視図に示す事例は、前記各実施例の筒型保護壁3を設けず、俯瞰平面十字(X字)状の支柱状壁面37を介して着底基盤2と遮光用天蓋6とを連結金具4,4,……を介して連結、一体化したものであり、これら着底基盤2上面と遮光用天蓋6下面との間であって該支柱状壁面37によって4箇所に仕切られた保護空間38,38,……内の夫々には、図14中に示す、貝穀小片組成物製であって矩形平板状に形成され、その上面壁に凹凸岩礁地肌状の擬岩壁面53を形成した複数枚の棚板51,51,……と、それら四隅間に装着される支持柱52,52,……とから形成されており、各棚板51,51,……の上面四隅には、各支持柱52,52,……の端面を垂直状に接合可能とする平面状の接着面54,54,……を形成し、前記実施例に示した各種バインダーあるいは、接着剤等を用いて一体、且つ強固に結合したものとしている。
【実施例5】
【0069】
図15の筒型保護壁をもたない天蓋付き底棲生物用養殖礁の平面図、および図16の筒型保護壁をもたない天蓋付き底棲生物用養殖礁の正面図に示す事例は、円板状着底基盤2の上面中央に、該着底基盤2の半径程度の直径をもつ円柱状の中心部分を有し、その外周壁面120°置きとなる位置毎に、肉厚状壁面を放射状に一体形成した支柱状壁面37を立設し、その支柱状壁面37の上端に円盤状の遮光用天蓋6を組み合わせて一体且つ強固に結合した上、各肉厚状壁面間となる支柱状壁面37の外周壁、およびそれに対応する着底基盤2上面、ならびに遮光用天蓋6下面の夫々に、30°置き毎の間隔を隔てた嵌着用溝が刻設されており、それらの各嵌着用溝には、矩形平板状の仕切板39,39,……を嵌合状に装着し、各肉厚状壁面および仕切板39,39,……の間夫々に底棲生物養殖用の礁内空間38,38,……が、外側に向けて開放状に形成されたものとなっており、その礁全体が、前述の貝穀小片組成物によるポーラス構造を有する成型品から形成されたものとなっている。
【0070】
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなる実施例1および実施例2に示した天蓋付き底棲生物用養殖礁1により得られる作用について、本発明に包含される底棲生物の養殖方法に従って以下に示すこととする。
図6中に示した着底基盤2と筒型保護壁3とを連結金具4,4,……によって一体に結合してなる礁本体11、および図7中に示した合計4個の棲息用定着棚5、ならびに図9に示した遮光用天蓋6とを、夫々別体のまま港湾まで輸送し、クレーンを設置した漁業用または輸送用あるいは工事用船舶上に輸送用パレットごと搭載し、荷崩れ等を起こさぬよう縄索類で固定して沈設海域の設置個所海上まで輸送する。
【0071】
着底基盤2、筒型保護壁3、棲息用定着棚5,5,……および遮光用天蓋6は、各部品毎に製造し、それら部品毎に製品管理および在庫管理することにより、品質の安定と製造、保管、輸送等の各作業性を高めるものとなり、港湾から沈設海域までの海上輸送にあたり、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1の組立状態における総重量を設計、製造段階において1t未満に抑えたものとしたことにより、一般的な漁船等にも1基ないし数基程度の当該養殖礁1,1,……を搭載することが可能となって、個々の漁民が単独で沈設、移設、置き換えおよび漁獲作業を行うことが可能である。
【0072】
沈設箇所海上に到着した船舶から、図6に示す礁本体11着底基盤2の1箇所もしくは均衡する複数箇所の環金具21,21,……に図示しないクレーンから垂下したロープ(縄索類)を繋着して海中に吊り降ろし、着底基盤2下面を海底に略水平状の姿勢とするよう、潜水夫の監視、補助のもと着地させ、安定的に沈設、定着させてからロープを解き、巻き上げたロープを図7の棲息用定着棚5,5,……中の1個ずつ、もしくは4個纏めて上部適所に繋着し、吊り降ろして礁本体11礁内空間34中に収容し、図8に示すように着底基盤11上面に接地させ、ロープを解いて引き上げ、図9の遮光用天蓋6を、その環金具64,64,……の1箇所もしくは均衡する複数箇所にロープを繋着して海中に吊り降ろし、筒型保護壁3海流出入口31に装着、施蓋してロープを解き、図2中に示すような組立状態とした後、図1中に示すように、着底基盤2および遮光用天蓋6の各環金具21,21,……,64,64,……間にロープ(縄索類)7を通して仮留めしたものとする。
【0073】
安定した沈設を行うには、海流による横転、流動に抗するよう礁全体1の比重を高めることが考えられるが、岩石、礫、砂または泥等の海底の状況によって比重を変えなければならず、砂質や泥質のような海底では、養殖礁1の自重や海流、波浪等の影響を受けて次第に埋没してしまう虞があり、設置には不向きであって、比較的確りとした海底地盤を選んで、設置する必要がある。
【0074】
このようにして海底に沈設された天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、礁内空間34に射し込む外光を遮り、各海流出入口31,31,……を通じて円滑に流出入する海水に伴い、豊富なプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とし、さらに図1中に示すように、着底基盤2の上面直上に開口した海流出入口31,31,……を通じて底棲生物が自由に出入り可能としたバリアフリー環境を形成するものとなり、こうした培養環境の下に、沈設海域に棲息する天然ナマコ、および人工孵化による種苗を放流し、当該底棲生物用養殖礁1付近や礁内空間34中に棲息させるよう、数年に渡りその周辺環境を保持、管理する。
【0075】
天蓋付き底棲生物用養殖礁1の主要材料として用いた貝穀小片組成物は、昭和48年環告13号による検定方法と、昭和48年総理府令5号による判定基準とに基づき、溶出試験を行ったところ、沈設海域における環境への悪影響がないとの結論が得られた。その内容をより具体的に示すと、土壌汚染特定有害物質とされるアルキル水銀、総水銀、カドミウム、鉛、有機りん、六価クロム、ひ素、シアン化合物、PCB、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,3−ジクロロプロベン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレンについて何れも不検出との結果が得られ、しかも耐食性に優れ、凍結融解試験、塩化ナトリウム3%溶液や水道水による抵抗性試験等のスケーリング試験においても減量は全く観られず、しかも耐塩性ステンレス製とした連結金具4,4,……、環金具21,21,……,64,64,……等は、その耐食性によって有害物質の溶出が無く、長期に渡る安全な利用が可能である。
【0076】
また、その圧縮強さ、曲げ強さ荷重のような機械的強度は、陸奥湾内最大波高海峡部4.3m/sec、湾内1.2m/sec、大潮最大流速西湾4.2596km/h、通常流速平均360m/h(日本海洋学会沿岸海洋研究部会日本全国沿岸海洋誌1985年東海大学出版)の条件下において、その波浪、流速および水圧の重力に十分に耐え得る強度を得たものとなっている。
【0077】
より具体的に示すため、以下に30年確率波高安定計算を示す。
1.湾内最大波高
西湾調査地点 蟹田4.3m/sec(20分間測定)
東湾調査地点 横浜3.5m/sec(20分間測定)
風速(X)m/secに対する最大浪高(Y)mの関係による浪高は、次に示す(式 1)となる。
Y(m)=0.25(m/sec)−0.18 ………(式1)
流速は、冬期と夏期とによって西湾・東湾共夫々変化するものである。
【0078】
2.大潮最大流速
西湾 4.2596km/h、水深15m、65cm/sec(平館海峡)
2.35m/h=0.00065m/sec
東湾 1.852km/h、水深42m、73cm/sec(平館海峡)
0.972m/h=0.00027m/sec
海峡部通常20cm/secであるが夏期7ないし9月には比較的速く、寒冷気に遅 くなるという季節変動(5ないし27cm/sec)がある。
流速平均10cm/sec=360m/h(180ないし972m/h)
【0079】
3.沈設水深
西湾10ないし20m
東湾10ないし30m
【0080】
4.海流の圧力
イ.質量:海水比重1.747と流量(m3)と速度変化の積に等しい。
ロ.重力加速度(g)=9.8N/sec/m
ハ.水圧は1m2当たり10m毎に1気圧(1.225kg/m3)増加する。
ニ.1ノット=1.852km/h
1.747×9.8×0.00065m=0.01112839N/m2/ sec×1.01972=0.01134784185k/mm2/sec
1cm2当たり1.1348kg/sec
最大浪高4.3m/secの場合の圧力:1.1348×4.3=4.8796 4kg/sec
1m2当たり487.964kg/sec
水深30mの水圧:(水深15m以深10m毎に1気圧増加する。)
[{(30m−15m)÷10}×1.225kg/m3]×(1.747÷3.21 kg/m2)+{(1.747×15m/m3)=26.205kg/m2}=2 9.415kg/m2
【0081】
5.礁構造体壁の透水性
78.54cm3/sec通過することによる減圧作用が得られる。
流水流量0.007854m2当たり24.7cm3/secの量が通過すること により、この数値と等しい圧力が減圧となる。
1m2当たり:127.3236×34.7cm3/sec=0.4418m3/ sec
この質量:1.747×0.4418=0.7718t
この加速度重量:0.7718×9.8=7.563641N/m2/sec
この圧力:7.56364×0.00065=0.004916366N/sec ×1.01972=0.005k/mm2/sec
1cm2当たり0.5kg/sec
【0082】
6.礁形状正八角状筒型による水圧抵抗の減圧
立体垂直面積を100とした場合、これと同面積を正八角形にすると迎角45°の 関係から斜面となり、垂直平面積より約39%に直角方向の面積が減少し、減圧さ れることとなる。
【0083】
7.流量
1m×水深m×流速m/sec
【0084】
8.養殖礁形状の対向海流直角方向面積と鉛直方向対上面面積
イ.正八角形面積:1.15m2×0.61%=0.7015m2
ロ.正八角形面積:1.539m2×1.0%=1.539m2
ハ.正八角形外側面積:1.15m2×2%=2.3m2
【0085】
9.養殖礁強度
イ.圧縮強さ:Φ100×200mm 最大荷重168kN 21.4N/mm2
ロ.曲げ強さ荷重:300×299×厚さ60mm=25.1kN
:300×300×厚さ80mm=66.5kN
比較例JIS規格A5305、鉄筋コンクリート製とした場合の天蓋6の曲げ強さ 荷重
L=500mm:24.52kN(2種)25.1kN 内壁厚60mm
L=600mm:44.13kN(2種)66.5kN 内壁厚80mm
以上1.ないし9.の各項目および当該天蓋付き底棲生物用養殖礁、ならびにそれに用いた貝穀小片組成物の各工業試験によって得られた機械的、化学的性質を検証した結果、陸奥湾内の水深30mの海底に設置した場合には、その正八角柱状の外郭形状と重心位置によって安定に定着し、同形状、寸法のコンクリート製人工漁礁に比較しても約2倍強という高い耐久強度を示し、耐塩性も傑出しており、30年以上の長期に渡り、十分に利用できるという結論が得られた。
【0086】
さらに、着底基盤2の重量が、礁全体1の重量に対して40ないし50%に設定され、しかも礁1全高上下中心部から下方の重量が、礁全体1の重量に対して70%ないし80%に設定されたものとなっており、これによって高い安定性を得ることができ、沈設海域における波浪、海流による横転や流動を阻止するものとなる上、礁全体1の俯瞰平面形状を正八角形状としたことにより、平面形中心周りの45°毎となる八方向ともの寸法、形状、表面積および体積、重量等の各条件を略同一の条件とし、比較的面積の大きな下部が重く、それとを反対に比較的面積が小さな上部を軽くして正面形状が左右バランスされたものとなっていることから、より安定且つ長期的な沈設、利用が可能となる。
【0087】
表現を変えて示すと、筒型保護壁3の軸心周り180°範囲に渡る範囲を垂直状平面とした際の圧力荷重を100%とし、正八角形筒状としたときの同範囲に加わる圧力荷重の分散割合が約25%に低減されることとなり、さらに貝穀小片組成物製としたことにより、高い透水性を確保して、図11の海流が通過する天蓋付き底棲生物用養殖礁の平面図中に白抜き矢印で示すように、波浪や海流に晒される海底にあって安定的に設置することが可能であり、また、一辺1mの正四角形立体の面積は、4m2となるが、正八角形立体の面積は、sin45°を乗じた値となるため、4.32m2となり、表面積を8%増加させて四角形に比較して、さらに高い透水能力を確保するものとなる。
【0088】
当該養殖礁1の全体空隙率は、平均16.7%(連続空隙率10.1%)となっており、海水温度の変動によって熱膨張、収縮が発生して空隙率が変化して透水性の悪化が懸念されるが、塩化ナトリウム3%溶液中(+)(−)20℃、50サイクルの条件下における凍結融解試験結果の損失量が0g/m2であり{(+)(−)20℃、60サイクルにおいても同様の結果を得ている}、且つ、熱伝導率が0.00134kcal/m・h・r/℃と、真水の約1/385の値に抑えられ、外部温度の影響を受け難く、沈設対象となる陸奥湾内の海水温度は、海面通常8月最高23℃、3月最低8℃となっており、水深が深い所程、海水温は常に低く、温度差は15mの水深では5ないし2℃の範囲に収まり、海水温度による透水性への悪影響を受けることは無いと判断される。
【0089】
以上のような環境下において数年に渡り養殖、管理し、収穫期を迎えたときには海底作業によって、図1中に示した、遮光用天蓋6を仮留めしているロープ7を解き、天蓋6を船上クレーンによって吊り上げ、図8中に示した状態に開放し、筒型保護壁3上端開口35を通じて礁内空間34および棲息用定着棚5,5,……に定着、増殖しているナマコを手作業により収穫し、必要に応じて礁内空間34中に収容されている棲息用定着棚5,5,……を船上クレーンを利用して筒型保護壁3上に上昇させ、吊り上げ状態を維持したままナマコの収穫作業を行い、収穫後に再度、棲息用定着棚5,5,……を礁内空間34中に収容、接地させるものとすることが可能であり、収穫作業を終えた後には遮光用天蓋6を、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて周辺海域で捕獲した天然の稚ナマコや、あるいは適宜施設によって人工孵化させた種苗等を礁内空間34か、あるいは礁1近傍周辺に放流し、継続的な養殖を行う。
【0090】
実施例3に示した図10の天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、筒型保護壁3の内側に、それよりも背の高い筒型内周壁36を設けて礁本体11の重量バランスを崩すことなく、礁内空間34を二重に仕切った構造としたことによって内周壁面積を大幅に拡大してより多くのナマコを養殖することが可能となり、しかも複数に分割された中央天蓋68および外周天蓋69,69,……は、何れも小型化されたものとなって礁内空間34の管理や収穫の際の開閉操作における作業負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0091】
実施例4の図12ないし図14中に示した天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、実施例5の図15および図16中に示したものと同様、筒型保護壁3に変えて支柱状壁面37によって遮光用天蓋6を支持する構造としており、その礁内空間34が外部に露出状となっていることから、波浪や海流が比較的弱い海域に設置するのに最適なものとなっており、さらに、図14に示すように擬岩壁面53,53,……を形成した棲息用定着棚5,5,……を収容したものとすることによって岩礁に好んで定着するナマコの性質に良く合致し、さらに高い定着密度を確保できるものとなり、しかも擬岩壁面53,53,……を形成した棲息用定着棚5,5,……は、寸法、形状を考慮して製造することにより、何れの形状の天蓋付き底棲生物用養殖礁1にも収容、設置することが可能である。
【0092】
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例1の天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、図6中に示したように、着底基盤2と筒型保護壁3とを組み合わせてなる礁本体11は、その重心を中心から着底基盤2に近い位置に設定されているので、沈設のために船上から海中に降下させるときに、海水による抵抗を受けて不安定になりながらも、着底基盤2の底面を下に向けて自動的に定着姿勢をとりながら沈んでゆくものとなり、しかも着底基盤2の四隅に設けられた環金具21,21,……の何れか1箇所に、船上クレーンのロープを繋着しておくことにより、海底に着地する直前に一旦、引き留めてダイバーの目視によって定着位置を確認した上、吊り降ろして安定に沈設させることができ、実に効率的に設置、定着作業を進めることができるという利点を有するものである。
【0093】
また、礁本体11着底基盤2の四隅に固着された各環金具21,21,……は海底設置後、図2中に示すように、遮光用天蓋6によって施蓋したときに、該遮光用天蓋6上面に固着された4個の各環金具64,64,……との間に、図1中に示したように、ロープ(縄索類)7を通して結び付け、遮光用天蓋6が波浪や海流によって不用意に外れ落ちてしわないよう仮止めすることができ、これらU字型金具22(65)を利用した環金具21,21,……,
64,64,……は、沈設および回収作業の際の利用と、海底養殖中における天蓋6の仮固定との両方に利用することができ、構造の複雑化と部品点数の増加とを防止して経済的な人工礁1を提供することができるという特徴を発揮する。
【0094】
筒型保護壁3は、図4または図5中に示したように、周壁に点在状に配置された複数個の海流出入口31,31,……の全てを、その中心を通る俯瞰平面における直径方向に対峙する一対を一組としたものとしたことにより、筒型形状の中心を挟む径方向の一方に配置された海流出入口31から流入した海流や波浪が、これと対をないして反対側に開口させた海流出入口31を通じて水平且つ直線的に流出できるようになっており、比較的強い海流や波浪を受けた場合にも、その水圧を大幅に軽減できるものとし、人工礁1の横転や移動、および礁内空間34内圧上昇による天蓋6の開放、離脱等を効果的に回避できるものとなる。
【0095】
礁内空間34中に収容、設置可能とした棲息用定着棚5,5,……は、図7および図8中に示したように、筒型保護壁3内の空間34中に十分な隙間を確保しながら、複数段の棚板51,51,……を高密度に形成するものとなってナマコの定着可能面積を格段に拡大することができるものとなり、また、礁本体11から取り外すことも容易なことから、収穫の際には、棲息用定着棚5,5,……のみを僅かに引き上げてダイバーの手作業により、各棚板51,51,……上に棲息するナマコを簡単に捕獲することができる上、棲息用定着棚5,5,……自体の設置、回収、交換も効率的に行うことができる。
【0096】
遮光用天蓋6は、図1および図2中に示したように、筒型保護壁3の正八角形状の上端に略一致する平板状に形成したことによって、波浪や海流による抵抗を最小限に抑えるものとなり、しかも図9中に示したように、下面中央に嵌合用の突面部61を形成したことにより、施蓋状態におけるズレ動きや、脱落等を確実に防止して太陽光の遮光と波浪、海流からの保護とを達成可能としたものである。
【0097】
図10に示した礁内空間34を二重構造とした天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、中心部に周囲よりも背の高い筒型内周壁36を設けたことにより、重量を中央に集中させたものとして、海底への定着をより強固なものとすることができると共に、より剛性に優れた壁面構造を確保することができ、しかも中央天蓋68や外周天蓋69,69,……を小型化し、特に海中における開閉作業をより安全で簡便なものとすることができる。
【0098】
さらに、図13ないし図14、ならびに図15および図16中に夫々示した外周壁面をもたない天蓋付き底棲生物用養殖礁1,1は、何れも比較的波浪が少ないか、もしくは周囲を岩礁に囲まれた海域、あるいは図1ないし図10に示したような筒型保護壁3を有する天蓋付き底棲生物用養殖礁1の複数基等によって周囲を包囲され、外周方向からの波浪や海流に直接晒されることがなく、十分に減衰されて到達するような場所に沈設するのに最適なものであって、こうした環境下においても十分な海水の循環、通過を実現可能とするものとなり、しかも図14に示したように各棲息用定着棚5棚板51,51,……上面を擬岩壁面53,53,……としたことによって天然の岩礁と略同様の環境を形成して底棲生物の定着密度を一段と高めることが可能となる上、この各棲息用定着棚5は、何れの人工礁にも組み合わせて利用することができる。
【0099】
当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1の主要部品を形成する貝穀小片組成物は、透水性、低吸水性、機械的ならびに化学的耐久強度、耐熱性、断熱性、防音性等の様々な特性に優れ、海底環境に同化させるのに最適な素材であり、しかも産業廃棄物として廃棄しなければならないホタテ貝の貝殻を再生利用して、貝が産出された海域に戻すことができる上、海底の生態系に影響を与える虞れがなく、海水のアルカリ化によって磯焼けの原因ともならず、ナマコが付着し易いのは勿論のこと、その餌となる珪藻類が付着生育し易く、老朽後放置されて崩壊した場合にも、有害物質の溶出や海底環境に悪影響を及ぼす外来種苗その他の微生物類等を一切放出することがないので、永続的に新たな養殖礁1を設置し続けることができるという秀れた特徴を得ることができる。
【0100】
天蓋付き底棲生物用養殖礁1を用いた底棲生物の養殖方法により、各部別体部品に分割して製造され、組立状態にあっても1tに満たない総重量に設計された当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、漁民夫々の所有する漁船にも比較的容易に搭載することが可能であり、漁民同士の協力による簡便な作業によって海上輸送、沈設、移動、置換え等のナマコ用魚礁の沈設に必要となる一切の作業を、魚礁の設置業者等に頼らずとも独自に行うことが可能となり、従来型の魚礁や消波ブロック、岩石等の海上作業に不可欠とされてきたクレーン付き台船、およびその台船を曳航する引き船の利用を不要とし、その高額な費用と作業時間とによる沿岸漁民への負担を無用とし、その作業性と経済性とを大幅に改善できるという秀れた効果を発揮することになる。
【0101】
(結 び)
叙述の如く、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁、およびそれを用いた底棲生物の養殖方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの鋼材や鉄筋コンクリート等を用いた大掛かりな人工漁礁に比較して十分に小型、軽量化され、輸送や沈設作業の大幅な効率化と経費削減とを実現し、波浪や海流に抗して長期間に渡って安定した定着を可能とし、海底の生態系に及ぼす影響を格段に少ないものにできる上、陽射しを避けた波浪の弱い岩陰風となって常に新鮮な海水が供給されるような、底棲生物が好んで定着する海底環境を確実に実現し得る魚礁としたことから、これまでナマコ養殖用として有効な魚礁を持たないことから、安定した漁獲高が保証されていなかった漁民に大いに歓迎され、その高い実用性によって漁業協同組合や県、市町村における水産団体および魚礁製造、設置業者等、各方面からも高く評価されて広範に利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図面は、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁、およびそれを用いた底棲生物の養殖方法の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】天蓋を仮留めした天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す斜視図である。
【図2】組立て状態にある天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す斜視図である。
【図3】着底基盤を示す斜視図である。
【図4】筒型保護壁を示す斜視図である。
【図5】一部に変更を加えた筒型保護壁を示す斜視図である。
【図6】着底基盤上に筒型保護壁を立設した礁本体を示す斜視図である。
【図7】棲息用定着棚を示す斜視図である。
【図8】棲息用定着棚を収容した筒型保護壁を示す斜視図である。
【図9】遮光用天蓋を示す斜視図である。
【図10】礁内空間を二重構造とした天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す斜視図である。
【図11】天蓋付き底棲生物用養殖礁を通過する海流を白抜き矢印で示す平面図である。
【図12】支柱状壁面を設けた天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す正面図である。
【図13】図12中のB−B線部分を示す断面図である。
【図14】擬岩壁面を設けた棲息用定着棚を分解して示す斜視図である。
【図15】俯瞰平面円形状とし支柱状壁面を設けた天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す平面図である。
【図16】俯瞰平面円形状とし支柱状壁面を設けた天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す正面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 天蓋付き底棲生物用養殖礁
11 同 礁本体
2 着底基盤
21 同 環金具
22 同 U字型金具
23 同 座板
24 同 ナット
25 同 固着孔
26 同 海流入出口
3 筒型保護壁
31 同 海流出入口
32 同 固着孔
33 同 環状金具
34 同 礁内空間
35 同 上端開口
36 同 筒型内周壁
37 同 支柱状壁面
38 同 保護空間
39 同 仕切板
4 連結金具
41 同 ボルト・ナット
42 同 座金
43 同 L字型金具
5 棲息用定着棚
51 同 棚板
52 同 支持柱
53 同 擬岩壁面
54 同 接着面
6 遮光用天蓋
61 同 突面部
62 同 海流出入口
63 同 固着孔
64 同 環金具
65 同 U字型金具
66 同 座板
67 同 ナット
68 同 中央天蓋
69 同 外周天蓋
7 縄索類
【技術分野】
【0001】
この発明は、水生生物や水生植物等の養殖に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであり、人工漁礁を製造する分野は勿論のこと、その製造に必要とする設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
我が国におけるナマコの消費量は、主に酒の肴や正月料理等の生食用として比較的僅かなものに留まっているが、アジア全体における干しナマコは、中華料理用やあるいは医薬品の材料等として広く知られ、特に近年、目覚ましい経済発展を遂げている中国にあっては、高級食材としての需要が拡大しており、年を追う毎に魚価が上がり、我が国内の各産地においてもナマコの輸出量が年々増加する傾向にあり、こうしたニーズの拡大によって漁獲量が増えるに従い、各漁場では特大のナマコが殆ど見られなくなり、稚ナマコの数も減少傾向にある等、獲り過ぎの徴候が見られるようになってきている。
【0003】
こうした天然ナマコの減少を食い止め、安定的な生産を可能にしようと、各漁協や漁業研究施設等の多方面において中間育成によるナマコの海面養殖への取り組みが行われるようになり、種苗生産や放流事業、漁場整備等、ナマコの資源増殖を目指す試みがなされ、次第にその成果が確認されるようになってきているが、ナマコ自体の成熟機構や産卵期等は、生息海域や年毎の水温変動等によって様々に異なる上、種苗が放流地点から急速に姿をけしてしまうという現象が知られている等、その生態についても未だ不明な点が多く、適切な生息場整備を行う為の条件も思考錯誤の段階にあると云わざるを得ない情況にあり、現状においては投石魚礁による石材を密とした幼稚仔の生育区と、比較的石材が疎な育成区とを設置して禁漁区とし、その沖側にナマコ漁場を設定する試みが行われているが、ナマコには1歳を過ぎる頃から、高水温期に深場やあるいは浅場の奥まった岩陰等に留まり、夏眠状態となることが知られており、太陽光を遮る夏眠区の設定が必要であるとする報告もなされている。
【0004】
(従来の技術)
そうした中、生育区や育成区および夏眠区といったナマコの棲息区を確保する魚礁の開発が求められているが、従前までの魚礁には、特開2001−346476号公報「餌料培養礁を備えた人工漁礁」発明として提案されているもののように、4本の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロックと、この魚礁ブロックの上面側に固定される4本の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とから構成され、内部に魚礁枠体側空間層と、魚礁ブロック側空間層とからなる空間部を有する人工漁礁を設け、その魚礁枠体の上面側に貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の餌料培養層を収納する網体からなる複数の網籠を配列し、その全体を上側から餌料培養層、魚礁枠体側空間層、および魚礁ブロック側空間層とを形成するものとして、有用魚類の餌料を増殖させて魚を蝟集させ、貝殻の流失を防止して長期に渡って有用魚類の餌料となる多毛類、小甲殻類等を増殖させることを可能としたものや、特開2002−17199号公報「人工漁礁」発明に開示された頂板周囲に傾斜側板を連設し、各傾斜側板下縁に可動側板を開閉動自在に連設して魚礁本体を構成し、該可動側板が開いた位置で隣接する可動側板間に隙間を形成し、閉じた位置で隣接する可動側板を相互に接合させて魚礁本体の形態を縮小可能として魚礁本体内に宙吊り状に培養礁体を組み付けたものとすることにより、輸送の際の小型、軽量化を図り、海底への沈設作業を省力化できるようにしたもの、あるいは特開2005−210976号公報の「磯根資源増殖ブロック、及び増殖礁」発明のように、複数本の脚部を有する台座上に、下方に向けて水平断面積が縮小するよう成型されたコンクリートブロック製の複数個の磯根資源増殖ブロックを、それらの傾斜するテーパ面同士が対峙して下側に向けて拡開状となるよう隣接状に配列、固定したものとすることにより、各ブロック間に形成された上側隙間には磯根資源の稚体の通過を許容する程度の比較的狭い入口を形成し、下側隙間に磯根資源の成体が定住し得る程度に比較的広い磯根資源増殖空間を形成したものとすることにより、磯根資源の成長段階に応じた広さの隠れ場所および生育場所を確保して、磯根資源が長期に渡って定住可能とするもの等が散見される。
【0005】
しかし、前者の「餌料培養礁を備えた人工漁礁」発明は、貝殻群をモルタルによって一体化した多孔質状であって多毛類や小型甲殻類等の増殖を促す餌料培養層を人工漁礁の上部に有しており、これによって太陽光が遮られ、底棲生物が魚礁の下側に生息する環境を確保できる可能性をもっているが、餌料培養層に増殖したゴカイ、イソメ、イトメ、ミジンコ、アミ、ワラジムシ、エビ、カニ等を利用して有用魚類を効果的に蝟集することを本来の目的とするものであり、海底から離れた魚礁上部に設置された餌料培養層の裏面等に棘皮動物が定着する可能性は低くてナマコ増殖用には適さず、また、前記「人工漁礁」発明に開示されたものは、魚礁を折り畳み可能な軽量型のものとして生産工場からの搬出や設置箇所までの海上輸送、および沈設作業等の省力化を実現しようとするものであり、各傾斜板や可動側板、頂板等が太陽光を遮ってナマコの生息に適した環境を得ることを可能ならしめようとしているが、ナマコの定着可能面積は、魚礁本体下側となる海底面範囲に留まり、生息密度を高めることができるものとはなっておらず、やはりこれも有用魚類を蝟集するための魚礁に留まっている。
【0006】
さらに、後者の「磯根資源増殖ブロック、及び増殖礁」発明は、テーパ面を有した複数個の磯根資源増殖ブロック同士を隣接状に配列し、さらに上下に重ね合わせるように組み合わせる等することにより、それらブロック相互間に形成された隙間に磯根資源の稚体や成体が夫々に適した空間を見付けて生息できるように意図し、ナマコもまた好んで定着できる環境を確保できるようにしようとしたものとなってはいるものの、ナマコの収穫手段が依然としてドライスーツを身に着けた潜水夫の手作業に頼って実施しなければならない状況にあることを考慮すれば、それら従前からの手段によってナマコを捕獲しようとするとき、面状に配列された複数のブロックの奥まった隙間に生息しているナマコを収穫するのは極めて手間の掛かる作業となってしまい、ナマコ養殖として効率的に漁獲高を上げる上で大きな支障を来すもの思われる。
【特許文献1】(1)特開2001−346476号公報 (2)特開2002−17199号公報 (3)特開2005−210976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(問題意識)
上記してきたとおり、従前までに提案のある各種人工漁礁は、アイナメやメバル等の漁礁の内部に隠れているような魚や、クロソイ、スズキ、カレイ、ヒラメ等のように漁礁周辺の海底にじっとしている魚、あるいはアジ、サバ、ブリ等の漁礁から離れた表・中層域に群れを作って泳ぐ魚等といった主として有用魚類の増殖や蝟集を目的として開発されてきたものであって、したがってナマコのような底棲生物を高密度に定着させて効率的に養殖できるようにしたものとはなっておらず、優良なナマコ生産で全国的にも名が通っている陸奥湾沿岸の生産地では、ナマコの種苗放流と適正な資源管理とを実現可能とする生息場整備という目的に良く合致し、幼稚仔の生育区、育成区および夏眠区となり得るナマコ養殖に適した新たな魚礁の開発、設置が急務となっている。
【0008】
(発明の目的)
そこで、この発明は、海底に設置することによって太陽光ならびに激しい波浪を効果的に遮り、しかも餌となる珪藻やデトライタス等を含む海流の流入と、棲息生物の排泄物を伴った排出とを可能としてナマコを含む底棲生物の生息に適した環境を確保し、幼稚仔の生育区、育成区および夏眠区の機能を合わせ持つ上、底引き網等を用いずに、生体に傷付けることなく礁内から直接的に収穫できる養殖礁を実現可能とする新たな養殖技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の天蓋付き底棲生物用養殖礁、およびそれを用いた新規な底棲生物の養殖方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、所定大きさの平板状とした着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設して礁本体を形成し、該礁本体筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋した状態に組み合わせてなるものとした構成を要旨とする天蓋付き底棲生物用養殖礁である。
【0010】
この基本的な構成からなる天蓋付き底棲生物用養殖礁を、より具体的な構成のものとして示すと、所定大きさの平板状とした着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設して礁本体を形成すると共に、該礁本体筒型保護壁内側の礁内空間に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだ上、当該筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋した状態に組み合わせてなるものとした構成からなる天蓋付き底棲生物用養殖礁となる。
【0011】
さらに具体的には、所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設して礁本体を形成すると共に、該礁本体筒型保護壁内側の礁内空間に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだ上、当該筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋を脱着自在に施蓋した状態に組み合わせ、1本または複数本の縄索類によって着底基盤および天蓋の夫々に設けてある各環金具同士を連結して仮固定してなるものとした天蓋付き底棲生物用養殖礁であるということができる。
【0012】
(関連する発明)
上記した、天蓋付き底棲生物用養殖礁に関連し、この発明には、それを利用した底棲生物の養殖方法も包含している。
即ち、平板状の着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設、一体化してなる礁本体と、該礁本体筒型保護壁の上端面開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋とを、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設し、その後を追って投下された天蓋を、礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋、仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返して行うようにした構成を要旨とする、この発明の前記した何れかの天蓋付き底棲生物用養殖礁を用いた底棲生物の養殖方法である。
【0013】
これを、より具体的な構成によって示すならば、所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設一体化してなる礁本体と、当該筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋とを、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、環金具に縄索類を繋いで繰り降ろし、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設して縄索類を解き、その後を追って環金具に縄索類を繋ぎ繰り降ろした天蓋を、該礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋し、投下用の縄索類を解き、着底基盤および天蓋の各環金具同士を、1本または複数本の縄索類を用いて繋ぎ仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に縄索類による仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返して行うようにした底棲生物の養殖方法となる。
【0014】
さらに具体的には、所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設一体化してなる礁本体と、当該筒型保護壁の礁内空間中に収容可能な寸法、形状の上下複数階層状とした棲息用定着棚、および筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋を、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、環金具に縄索類を繋いで繰り降ろし、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設して縄索類を解き、その後を追って適所に縄索類を繋ぎ、海中に降ろした棲息用定着棚を、当該該礁本体筒型保護壁の礁内空間中に収容、設置して縄索類を解き、それに続いて環金具に縄索類を繋ぎ繰り降ろした天蓋を、該礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋し、投下用の縄索類を解き、着底基盤および天蓋の各環金具同士を、1本または複数本の縄索類を用いて繋ぎ仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に縄索類による仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返して行うようにした底棲生物の養殖方法であるとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁によれば、平板状の着底基盤の上面中央付近に対し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口した筒型保護壁を、脱着可能に立設してなる礁本体を形成し、該礁本体筒型保護壁の上端開口に略合致する平面形状に形成した透水性、平板状の遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋、組み合わせ可能な構造としたことから、着底基盤、筒型保護壁および遮光用天蓋を工場にて各々別体のものとして製造、保管、出荷(輸送)することが可能となり、当該養殖礁の製造ないし出荷に至る間に費やす労力を大幅に削減することができ、また海底に設置する際には、着底基盤に筒型保護壁を一体化した礁本体と遮光用天蓋とを分解状態のまま海上輸送し、海底に降下、設置した礁本体に遮光用天蓋を組み合わせるという分割作業により、海上および海中作業の負担や危険を軽減して安全且つ効率的に沈設できるようにすると共に、海底設置後には、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状で透水性構造のものに規制した筒型保護壁ならびに遮光用天蓋が、その外郭形状と透水性壁面構造とによって海流や波浪による水圧を適切に分散するようにし、当該養殖礁の回転、移動、横転等を阻止して長らく安定的に定着させることが可能なものとなり、しかも遮光用天蓋と筒型保護壁とが海上から降り注ぐ太陽光と、海流による波浪とを遮って穏やかな礁内空間を確保し、底棲生物にとって生息に好ましい環境を実現し得るものとしてあり、それら最適な環境の下で十分に成長したナマコは、収穫時期には、脱着自在に組み合わせるようにしてある遮光用天蓋だけを開放して、潜水夫の手作業によって傷付けることなく、直接、高い品質を維持したまま収穫できるという秀れた特徴が得られるものである。
【0016】
加えて、礁内空間に上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだものでは、着底基盤、筒型保護壁および遮光用天蓋の礁内空間に面する内壁面に留まらず、該礁内空間に収容された棲息用定着棚の階層状棚壁面夫々に棘皮動物が棲息可能となってナマコの定着密度を格段に高めることが可能となる上、各段毎の上面壁を凹凸岩礁地肌状の擬岩面に形成することにより、さらに天然岩礁に酷似した棲息環境を形成することができるという効果を発揮するものとなり、また、着底基盤とそれに立設された筒型保護壁とからなる礁本体、ならびにそれに施蓋状に組み合わせた遮光用天蓋とからなる当該底棲生物用養殖礁を、その重心位置が、海底設置姿勢の左右前後中央であって、しかも上下中央よりも下側に配置し、望ましくは上下高さの1/3以下の配置とするよう、各部品の寸法、形状および密度を設定したものとすることにより、波浪を受けての横転や転倒、移動を防止して長期間に渡って安定的に設置できるものとすることができる。
【0017】
さらに貝殻を粉砕、選別した多量の扁平貝殻小片を単独でか、または増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、合成樹脂からなるバインダーによって大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を同一方向とするかその方向に傾斜した姿勢のものとそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、硬化してなる貝殻小片塑性物から、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁を構成する各部品の夫々を成型したものとすることにより、貝肉部分を食用とした後に大量に発生し産業廃棄物となる貝殻類を再生利用することができると共に、同様に人工礁の沈設海域に流入する河川や、沈設海域の海底等から採取した砂利や砕石、砂等といった低給水性鉱物質粒状体を利用し、それらを産出した海域に魚礁という形で帰すことが可能となり、元々その海域にあった資源、または同質の資源を利用することによって魚礁の設置による自然環境への影響を殆ど無視できる程度に抑えることができる上、ポーラス状の透水性を有し、棘皮動物の生息に適した砂岩状または岩石状の礁壁面を実現し、経年劣化により崩壊した際にも回収、処理を一切必要とせずに、新たな魚礁を更新、沈設することができ、従前に例のない程度に効率的な養殖管理を実現できるものとすることができる。
【0018】
そして、当該底棲生物用養殖礁の主要部品に用いられる貝穀小片組成物は、偏平状の貝殻小片が夫々の偏平面を同一方向とするか、その方向に傾斜した姿勢のものも混ざって略同一方向に揃えられ、全体の縦断面構造が破れ目地状で重積した状態のものとして形成されていて、所定範囲内の大きさとはするものの円形や楕円形からそれに近い歪なものまでと平面形が必ずしも一定しない偏平状の貝殻小片であることが幸いし、それらによって実現される重積構造は、個々の貝殻小片が直接当接し合う部分やその近辺でバインダーによって強固に接着(この接着構造も、バインダーの質や量、それに添加する硬化剤や硬化促進剤の種類や割合、それに混練時間などで異なってくる。)された構造になるものの、個々の貝殻小片の前後、左右方向に隣接してできる境界部分や、増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体が加えられている場合は、それらで埋められずに残った隙間部分などが上下方向に揃うことのない、所謂破れ目地状(換言すればジグザグ状、または阿弥陀くじ状)に積層して重なり合う構造となっているため、それら微細で肉厚方向に複雑に繋がる間隙が毛細管状となり、海水は垂直方向にも水平方向にも複雑な経路を辿って流通することとなって目詰りし難く、長期に渡り礁内空間に外部からの養分を潤沢に取り込むことができ、礁内棲息動物が排出する老廃物も速やかに外部に放出することとなり、しかも、その連続する空隙率は、少ないものであっても10%程度の確保が可能となる上に適度の弾力性と吸音効果とを備え、断熱効果としても、熱伝導率で0.4819(kcal/m.h.℃ )と略水並みの数値を示し、実にアスファルトの約1/2程度の値になる等、礁内環境を安定させることができるという非常に秀れた特徴を有している。
【0019】
この底棲生物用養殖礁を貝穀小片組成物製のものとすることによってもたらされる作用効果について列挙すると、以下のようになる。即ち、
1.透水性:水は垂直方向と水平方向とに均等に近い状態で透水、通過する。
2.空隙性:毛細管状で複雑多技に連続する空隙となり、目詰りが発生し難くなる。
3.防滑性:細かい凹面によって滑り難く、底棲生物の定着に有効である。
4.過熱性:貝殻や珪砂等の海底に既存の材質からなり、多孔性を有するので海底に沈 設した場合にも海水の浸透によって周囲の環境に同化できる。
5.吸音、防音性:微細で複雑多岐に渡る空隙により、多孔性素材となって外部からの 音響や響きを吸収できる。
6.安全性:用途によっては貝殻破砕物夫々の輪郭全周に渡る周縁形状を滑らかに成形 加工を施したものとすることができ、鋭角を無くしたものとなって安全である。
7.耐薬品性:酸性の浸漬試験結果、強酸性には微減量、強アルカリ性では減量なし。
8.耐強度:扁平貝殻小片が姿勢を揃えられ、破れ目地状の積層構造となるため、十分 な機械的強度が期待でき、バインダーの種類や量、成形時の圧縮程度などによって 圧縮強度、曲げ強度を用途に応じた最適なものにできる。
9.耐塩性:ナトリウム3%溶液、(+)(−)20℃で60サイクルの凍結融解試験 結果減量なし。
【0020】
10.耐凍結融解:大気中(+)102℃、(−)100℃で40サイクル凍結融解試験 結果減量なし。
11.吸水性:原材料貝穀、樹脂、低吸水性鉱物質共に吸水性なし。
12.彩色性:増量材としての粒状セラミックに着色焼成したカラーを混ぜれば様々な色 彩を出せる。
13.耐熱性:熱変形温度(+)165℃まで溶解はなく、間接温度(+)350℃まで 耐え得る。
14.耐火性:不燃材料90.0%以上で延焼しない。
15.耐摩耗性:ラベリング試験結果、アスコン並みで溶融現象はない。
16.耐衝撃性:厚さ16mmの成形品の場合、重さ2kgのものを1.5mの高さから 落下させると破損した。
17.施工性:軽量で切断可能なため、取り扱い作業性がよい。
18.多様性:型枠による自在な成形が可能で各種成形品とすることができる上に、目詰 まりしない特性を活かし魚礁成形品に採用可能である。
19.再利用性:破砕するだけで簡単にリサイクルが可能。
【0021】
また、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁を用いた底棲生物の養殖方法では、着底基盤上面中央付近に筒型保護壁を立設した礁本体と、それに施蓋状に組み合わせ可能な遮光用天蓋、および必要に応じて該筒型保護壁によって包囲される礁内空間中に収容可能な形状、寸法に設定した上下複数階層状の棲息用定着棚とを、各々別体のままで船舶に搭載し、礁本体を始めに沈設してから棲息用定着棚を海中に降下させて礁内空間中に収容し、その後に遮光用天蓋を沈めて礁本体筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖するという工程によって組み合わせるようにしてあることから、陸上での成型、組立および船舶への積載作業等を軽減化すると共に、比較的小型の船体であっても荷重を集中させないよう分散状に積載することによってバランスを安定させ、さらに海中沈設の作業負担やクレーン負荷等を低減させて作業効率と安全性とを向上させることができ、海底沈設後には、着底基盤と遮光用天蓋との夫々に固着された複数個の環金具同士を1本または複数本の縄索類を通して繋ぐことにより、仮固定の作業に特殊工具等が不要となる上、ドライスーツやグローブ等を装着した海底作業による遮光用天蓋の仮留めおよび開放作業を容易なものとすることができるという効果を奏するものとなる。
【0022】
さらに、筒型保護壁と遮光用天蓋とによって包囲された礁内空間は、海中に射し込む太陽光を遮ると共に波浪からは保護されることとなり、しかもそれら透水性ある壁面、ならびに点在状に配置された複数の海流出入口を通じてプランクトンやデトライタス等を豊富に含む新鮮な海水が常時淀みなく供給され、汚れた海水や排泄物等が速やかに排出されることとなって、ナマコを含む底棲生物の生息に絶好の環境を形成、維持し得ることとなる上、該礁内空間中に設置された複数階層状の棲息用定着棚に高密度に定着できるものとなり、従前までの人工漁礁に比較して格段に効率的なナマコの増殖を実現可能とし、その結果、所定の期間を経て成体となったナマコを収穫するときには、仮留めしてある縄索類を解いて作業者自らか(この発明の貝穀小片組成物製天蓋付き底棲生物用養殖礁の場合には、浮力も手伝って可能となる。)、または海上船舶のクレーンによって遮光用天蓋を開放させ、手作業によって収穫してから再度施蓋、縄索類によって仮留めするという比較的簡便な作業で、他の稚ナマコ等に悪影響を及ぼすことなく、成体ナマコだけを選択しながら効率的に、しかも損傷等を与えず高品質のままな収穫して陸揚げすることができるという秀れた特徴を得られることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
着底基盤は、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁の設置個所となる海底に安定的に、沈設可能であってその上面中央付近に立設される筒型保護壁、およびその礁内空間中に設置可能な棲息用定着棚、ならびに上端開口を封鎖可能な遮光用天蓋を一体的に定着可能とする機能を果たすものであり、筒型保護壁の平面積と同等か、それを越える大きさの平板状に形成し、筒型保護壁に対し連結金具等を用いて強固に一体化した礁本体を形成、可能なものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、筒型保護壁の外側配置となる周囲に、適宜点在状配置となる複数の環金具を設け、ロープ繋着用のものとすべきであり、必要に応じて海底面との間に良好な通水性を確保できるポーラス素材製のものとすることができる外、基盤にかぎっては速やかな透水性の得られない鉄筋コンクリート製とすることも不可能ではない。
【0024】
筒型保護壁は、当該底棲生物用養殖礁の礁内空間を海中の波浪から保護すると共に、透水して棘皮生物の餌となるプランクトンやバクテリア等を円滑に流入させ、また底棲生物類の老廃物等を速やかに排出可能とし、太陽光を遮るという機能を果たすものであり、その外郭形状を外部海水流との接触面積をできるだけ大きくして海流の流出入を活発なものとし、且つ水平方向からのあらゆる波浪に略均等の強度を発揮できるようにした円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成したものとし、十分な礁内空間を確保して海流や潮、波浪等に耐える強度を有したものとしなければならず、こうした衝撃的な水流を衰滅し、適度に弱められた水の流れを礁内空間内に導き、同様に排出できる程度のポーラス構造の壁面からなるものし、さらに、周壁面の複数適所に点在状配置となる海流出入口を開口し、後述する実施例にも示すように、これら海流出入口を通じて海水の流入と流出とを促し、さらに複数の海流出入口の全てかあるいは、選択した何れかを、海底付近に生息する稚ナマコや成体ナマコが、自由に出入りできる程度以上の開口面積を確保したものとすべきである。
【0025】
また、筒型保護壁は、遮光用天蓋の下側となる礁内空間を波浪から保護できるよう、該礁内空間の外側周囲に筒状の保護壁を形成し、ナマコの養殖環境を十分に保護可能とするものであるが、沈設海域によっては、十分な海流や波浪等の海水の流出入が得られず、外壁によって包囲することが好ましくない場合も有り得るものであり、こうした場合には、敢えて筒型の保護壁を設けず、後述する実施例にも示すように、底棲生物の定着に不可欠となる遮光用天蓋のみを着底基盤上の所定高さ位置に十分な強度で支持できる支持柱もしくは支柱状壁面等を設けたものとすることが可能である。
【0026】
海流出入口は、礁内空間中に比較的大量の海水が波浪や海流、潮の変化等の影響によって自動的に流入ならびに流出するものとし、周辺海底付近に生息する底棲動物が、自由に出入りできるものとするという機能を果たすものであり、少なくとも稚ナマコあるいは成体ナマコが支障なく通過できる程度の開口寸法、形状としなければならず、筒型保護壁の周壁面に点在状に配置され、その中の幾つかは、海底付近に開口されたものとすべきであるが、波浪や海流等が必要以上に流入しない程度の開口、寸法に抑える必要がり、後述する実施例にも示すように、筒型保護壁の中心を挟み180°反対側となる同一箇所に同一形状の開口として形成し、海流が真っ直ぐ通過できるよう形成したものとするのが、当該礁本体に加わる海水抵抗を低減して長期間に渡って移動や横転等を惹起せず、安定的に継続定着状されるようにする上で望ましいものである。
【0027】
連結金具は、着底基盤とその上面中央付近に立設状配置された筒型保護壁の下端側適所とを強固に連結して礁本体を一体的に形成可能とする機能を果たすものであり、海上から海中に投入、沈設する際に受ける衝撃力と海底沈設後に受ける海流や波浪等の水圧にも十分に耐え得る強度をもって連結可能な構造および素材製のものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、ポーラス素材製とした着底基盤と筒型保護壁とを連結するには、その構造ならびに強度上、各部材の壁面を貫通するボルト・ナット、座金ならびにそれに連結されるL型フランジ状部品からなるものとするのが望ましく、耐久強度の面から各金属部品を耐塩性ステンレス製とするのがよい。
【0028】
棲息用定着棚は、礁内空間中における底棲生物用に用意された定着面積を大幅に拡大して、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁の1基当たりに定着可能となるナマコの数を増加させ、しかも定着した多数のナマコ夫々の生息環境を良好に確保可能とする機能を果たすものであり、上下に十分な間隔を隔てた複数段の棚状に形成され、筒型保護壁によって包囲された礁内空間中に収容、設置可能な形状、寸法に形成しなければならず、十分な強度と透水性とを有するポーラス素材製であって、ナマコの定着性を考慮して格段毎の上面壁を凹凸岩礁地肌状の擬岩壁面に形成されたものとすることができる。
【0029】
遮光用天蓋は、筒型保護壁の上端開口を開放自在に封鎖して礁内空間を陽光から遮蔽し、透水性を確保しながら強い波浪や海流の進入を阻止可能とするものであって、筒型保護壁上端の円形もしくは八角形以上の正多角形とした開口を閉鎖可能な平板状に形成され、少なくとも上側に露出する上面が平面状に形成されたものとしなければならず、透水性を有したポーラス素材製のものとすべきであり、後述する実施例に示すように、上面適所には開閉操作用およびロープ繋着用の環金具を固着したものとするのが望ましいが、開閉操作やロープ類の巻掛け等を可能とする鉤型のハンドルや、頭部を有する把持柱等を固着または立設したものとすることができ、筒型保護壁の上端開口に嵌着可能とする突面部を形成したものとすることが可能である。
【0030】
環金具は、着底基盤や遮光用天蓋等の必要箇所同士を縄索類を用いて繋ぎ仮止め可能とし、さらに必要に応じて遮光用天蓋の開閉操作用の把手としての機能を果たすものとなり、着底基盤に設けられたものにあっては、複数設けられた中の1個ずつが夫々、着底基盤と筒型保護壁とを一体化してなる礁本体を吊上げ可能とする程度に十分な強度をもって固着されたものとし、また遮光用天蓋に設けられたものは、その1個ずつが夫々遮光用天蓋の重量を十分に吊上げ可能な程度の強度を有するものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、周辺環境への影響や部品寿命等を考慮して耐塩性の金属製金具を用いたものとすべきである。
【0031】
当該天蓋付き底棲生物用養殖礁は、着底基盤およびこれに立設された筒型保護壁からなる礁本体、ならびに当該礁本体の筒型保護壁上端開口に対し、遮光用天蓋を施蓋した組み立て状態にあって、その重心位置が、海底設置姿勢の左右前後中央にあり、しかも上下中央よりも下側の配置とすべきであり、上下高さの1/3以下の配置となるよう、各部品の寸法、形状および密度を設定したものとするのが望ましい。
【0032】
また、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁を構成する着底基盤、筒型保護壁および遮光用天蓋、ならびに棲息用定着棚の夫々を、後述する実施例に示すように、貝殻を破砕、選別してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、適宜合成樹脂からなるバインダーにより、大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を同一方向とするかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されたポーラス素材製のものとすることができる。
【0033】
扁平貝殻小片とする貝殻には天然、養殖の別なく、シジミ、アサリ、ハマグリなど比較的小さいものから、ホタテ、カキ、アワビ、サザエなど一般の食用に供されているものや、その他の二枚貝や巻貝、殆ど食用にされないアコヤ貝その他の貝など全ての貝殻の採用が可能となるが、全体形状が殆ど円形に近い整った扁平状(養殖物程その傾向が強く、廃棄されるものの殆どはその養殖物)であるため、素材となる直径または長径が1ないし8mm程度のものに破砕し易いという利点に加え、比較的品質、強度が安定していることと、ある程度形が整っていて原材料として取り扱いし易い上に、何よりも大量に廃棄されていてその処理対策が急務である点などからして、それら貝殻類の中でホタテの貝殻が最も適しているといえる。
【0034】
この扁平貝殻小片は、破砕後に篩に掛けて所定範囲の大きさにしたものをそのままで採用してもよいが、破砕しただけでは周辺に鋭い破砕口が残っていて製造工程の途中で怪我をしてしまう虞れがあったり、型枠内に充填、固化する工程などにおいては、長年に渡る繰り返し作業中に型枠に傷を付けてしまう不都合や、貝穀小片組成物による成形品としたとき、外周面に露になる鋭角部で人体などに怪我を負わせてしまう事態も想定される外、何よりもこれら大量の扁平貝殻小片を後述のバインダーと共に混練する作業工程で、個々の扁平貝殻小片に残る先鋭突起部分が円滑な混練の邪魔をすることになって均質な混練ができなかったり、できたとしても非常に時間を要することになってしまうから、所定範囲の大きさの扁平貝殻小片を、特殊な機械装置(例えば、米国GAM社製の商品名「GAM11−5T」)により、円形や楕円形からそれに近い歪なものまでと平面形が必ずしも一定しない偏平状の貝殻小片夫々の輪郭全周に渡る縁形状を滑らかに成形加工するようにし、なるべく滑らかな輪郭の円形や楕円形またはそれに近い形状のものになるよう加工して採用するようにするのが望ましいといえる。
【0035】
また、このように縁形状の滑らかに成形加工した扁平貝殻小片は固より、そうでなくても所定範囲のサイズのものに破砕、選別する過程を経て経費を掛けた扁平貝殻小片だけでこの発明の貝穀小片組成物を構成しようとすると、当該人工礁のように比較的大型成型品のように、大量に必要となるものでは到底採算割れとなって普及が覚束なくなるため、目的とする貝穀小片組成物の機能に支障を来すことのない最適な範囲で増量材を加えた混合物として採用するようにすべきであり、さらにまた、各部品の必要比重あるいは重量を確保するために貝殻小片より比重の大きな増量材を混合することが可能であり、その範囲は、貝穀小片組成物が少なくとも50%を割らないものとしなければならず、50ないし85%の範囲の中から最適な割合、できれば70%程度とし、その余を目的、用途によって後述する適宜増量材によって賄うようにするのが最も実用的であるといえ、廃品であって処分に困る大量の貝殻を、廃品であるという経済効果を活かして採用する意義が出てくることになる。
【0036】
これに用いる増量材は、この発明の貝穀小片組成物の目的達成のため、本来ならば貝穀小片であるべきところをその代替物として用いられるというのが主たる機能であって、その粒度や配合量などを調整することによって強度や透水性、弾性、比重その他この発明の貝穀小片組成物がもたらす作用効果を増強または緩和、減少させるようにする機能、および破れ目地状に積み重なった積層構造となる扁平貝殻小片の間に介在、固化することにより、破れ目地状積層構造を更に複雑化した連通状の空隙とする機能をも果たし得るものであり、したがって、強度が貝殻のそれと同等かそれ以上であって、貝殻同様に低吸水性の鉱物質からなる必要があり、たとえば、硅砂や焼成珪砂、砕石、砂利、着色ガラスの外、貴石、大理石、角閃石、クリストパライト、緑閃石、電気石などといった天然岩石、または水酸化アルミナハイジライト、アルミン酸ストロンチウム等の高純度無機質物質が採用可能である。
【0037】
それら鉱物質を粉砕、選別した粒状体として採用するものであり、各種鉱物質粒状体の例としては、当該養殖礁の沈設海域か、もしくはその海域の近辺に流れ込む河川等から採取された珪砂、砕石、砂利等を用いるのが望ましいが、十分な洗浄を施したものであれば一般に市販されている砂や砕石、砂利等を用いることが可能であり、さらに、着色焼成硅砂(例えば、新東陶料株式会社製、商品名「カラーサンドR−5」外25種類等)、破砕ガラス(例えば、市川油脂輸送株式会社製、商品名「ガラスサンド」等)や天然鉱石粒(例えば、丸東窯材株式会社製の硅砂や有限会社青森ケミカル製の海砂等)その他の中から一種類または複数種類組み合せて用いることとし、その粒度はて30ないし70メッシュ程度のものがこの発明の貝穀小片組成物を実現する上で好ましいといえるものの、目的とする貝穀小片組成物の構造、機能に支障がなければ、あるいは支障がないような特別の手段を講じられれば、必ずしもこの範囲に限定されるものではなく、更に幅広い範囲での選択も可能となる。
【0038】
一方、バインダーは、上記した扁平貝殻小片を主体に、適量の増量材を加えてなる混合物に加えられ、それらを所定の規制した積層構造に揃える機能と共に、揃えられた積層構造を確定的に固定化して成形する機能を果たすことになり、光硬化性のウレタン系合成樹脂の外、ビニルエステル系樹脂やポリエステル系合成樹脂などを単独でか二ないし三種類混合した複合樹脂が、適合する溶剤(例えば、スチレンモノマーやアセトン、キシレン等)と共に採用できることになるが、耐候性に秀れていて食品衛生法の容器包装規格基準適合樹脂にも適合しているウレタン系合成樹脂(例えば、トーヨーポリマー株式会社製、商品名「ポリネート97」や「サファロン97」の外、日本エスエスシー株式会社製、商品名「KBK NY−1」、昭和高分子株式会社製、商品名「SG1000」など)の使用が、海洋中に沈設した場合にも、有害物質が含まれておらず、したがって透水した海水を汚染させてまったり、その海域に生息する動植物類、および漁業関係者の人体に接触したりしても何等の問題を生じさせず、また、それらが使用済みとなって廃棄物になったとしても無害であって環境に悪影響を及ぼすことにならず、好ましいといえる。
【0039】
この合成樹脂がバインダーとして有効に作用するようにするために用いられるのが、従前から周知されているとおり、硬化剤(例えば、日本油脂株式会社製ベンゾイルパーオキシド、商品名「ナイパーFF」、化薬アクゾ株式会社製、商品名「328E」外)および硬化促進剤(例えば、昭和高分子株式会社製、商品名「ナフテン酸コバルト」外)であり、合成樹脂の種類に応じて最適なものが適量、即ち期待する強度や硬化速度、それに変性程度などの違いを勘案して最適量が用いられることになる。
【0040】
このように夫々所定の配合割合のものとして扁平貝殻小片、あるいはそれに増量材を加た混合物に、適宜合成樹脂に適量の硬化剤及び硬化促進剤を添加したバインダーが加えられて混練され、諸条件に応じて必要時間混練を続けることにより、扁平貝殻小片は、その偏平面に作用する接着力とそれに直交する方向に作用する接着力に差を生じてしまうこととなって、次第に扁平貝殻小片個々の姿勢は、殆どのものが各々の扁平面をその撹拌方向と同じ方向になるか、その方向に傾斜したものがそれらに混在するような状態に揃えられると共に、混練過程で硬化が進んでいて次第に粘性を増し、納豆を掻き混ぜたときのような糸引き状態となって、それら糸引き状態の接着構造となることから、扁平貝殻小片相互は、偏平面を同一か同一方向に寝かせたものが混在するようにして積み重なり、その縦断面では破れ目地状の積層構造になって、しかもそれら相互およびそれらの隙間に介在状となっている増量材の当接する部分に糸引き状態の接着剤が介在し、面状接着というよりも点状または線状接着となるため、強力な接着構造を実現しながらも複雑な空隙構造を確保したものとなる。
【0041】
この現象、即ち糸引き状の接着による点状または線状接着構造は、混練過程でバインダーの硬化が進み、次第に粘性を増していくことによってもたらされる現象を、より円滑に進行させ、しかもその接着強度の増強を図ろうとするために、採用するバインダーを、該バインダーを構成する樹脂の重量の10ないし30%程度(少なすぎると効果が表れ難く、範囲を超えていくと均質な撹拌が難しくなると共に、接着剤の糸引き現象が次第に少なくなり、接着強度に支障を来す。)に相当するロックウールまたはグラスウールを混入したロックウールまたはグラスウール混入バインダーにして用いるようにすると極めて効果的であることが確認された。
【0042】
したがって、ロックウールまたはグラスウールを混入しないバインダーを用いたものに比較し、混練時間を大幅に短縮化すると同時に均質な混練状態も確保され、破れ目地状の積層構造となっている扁平貝殻小片個々、またはそれらに混在状となっている増量材としての各種鉱物質粒状体との間に、糸引き状のバインダーの一部となって介在し、固化することとなり、言わばロックウールまたはグラスウールが糸引き状となる接着剤の心材的機能(換言すれば吸着材的機能とも言えよう。)を果たすこととなり、撹拌工程では勿論のこと、型枠内での圧縮成形工程時においても、糸引き状態のバインダーが下方にダレてしまって液状化し、一部に点状または線状接着構造を維持できなくしてしまい、複雑な空隙を確保したままで接着強度を維持し続けるようにするというこの発明の目的とする構造、機能の貝穀小片組成物の実現化に支障きたすようなことがないものとすることができる。
【0043】
この発明の貝穀小片組成物の重要な構成である多数の扁平貝殻小片(偏平小片)あるいは増量材を一部に介した多数の扁平貝殻小片(偏平小片)が破れ目地状の積層構造を実現するため、その製造方法には特別の手段を要しており、この発明には、それら特徴ある製造方法も包含され、特にバインダーの粘性を効率的に高めていき、確実な糸引き現象を惹起するようにするため、バインダーとすべき合成樹脂に対する最適量の硬化剤および硬化促進剤の正確、迅速な計量、添加、そしてそれらを混練する第一次混練と、その後に加える扁平貝殻小片(偏平小片)と、目的、用途等を勘案して必要に応じて適量が加えられる増量材としての低吸水性鉱物質紛状体、それにバインダーの糸引き現象の惹起と圧縮成形段階のダレ防止と重要な役割を担う所定量のロックウールまたはグラスウールが、予め設定された割合ずつ計量され、混練済みとしたバインダーと共に効率良く撹拌する第二次混練とに欠くことができないのが混練機(ミキサー)である。
【0044】
混練機(ミキサー)には、この発明の貝穀小片組成物を構成する素材の種類、形状、大きさ、比重などの違いから、それらが一部に固まったり浮き上がってしまったりして構成素材全体の均質な混練に支障を来してしまわないようなものでなければならず、そのために有効な偏心軸ミキサー(例えば、関東混合機工業株式会社製、商品名「HP型90L」等)を採用するのが望ましい。
【0045】
それら混練機(ミキサー)による自動化された混練が進行していく過程において、室内温度や湿度なども考慮して予め設定された時間経過に伴い、次第にバインダーの硬化が進むに連れてその粘性も増して粘着強度を高めていき、なおも撹拌を強制していくと今度は次第に納豆を撹拌していったときに生じさせるような糸引き現象を惹起し始め、この糸引き現象が始まって構成素材間に空隙が生じ始めることにより、構成素材個々の動きが専ら糸引き状態のバインダーに左右され易くなっているところに、扁平貝殻小片(偏平小片)に働く粘着力は、平坦面相互に掛かる粘着力が平坦面に並行する方向(撹拌方向)のそれを遥かに超えて大きくなることから、扁平貝殻小片(偏平小片)の姿勢は、この糸引き現象と共に自然に整えられ、大半のものが、夫々の偏平面を同一方向とするか同一方向斜めに寝かせたものが混在するようにした積層構造を見て取れるようになることから、この糸引き現象から姿勢整列状況に至る過程を目視によって確認して第二次混練過程を終了するものとする。
【0046】
その後、整えられた姿勢の方向に逆らわないように適宜型入れし、整った扁平貝殻小片(偏平小片)の偏平面を圧する方向であって、目的、用途に応じた圧力で圧縮成形すれば、目的、用途に応じたこの発明の貝穀小片組成物か、さらにそれらを切断加工したり、あるいは、最終混練過程を終えて姿勢を整え終えたものを、基盤とすべき適宜板体、例えば既存のALC板やコンクリート板、アスファルト板、石膏ボード等といった成形板、あるいは成形板に至る前の成形体の上に載せるように型入れし、同様に圧縮成形してその過程で両者を一体化する等の最終工程を経ることにより、最終目的とする成形品を製造し終えることになる。
【0047】
この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁を用いた底棲生物の養殖方法は、ナマコやそれを含む底棲生物の増殖に関わるものであるが、その他の珪藻類や魚介類、甲殻類の養殖に対して応用することも勿論可能であり、また、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁の複数基を設置する場合には、その付近の海流や潮、波浪等の影響を個別に考慮しなければならず、例えば河川水流入海域中に沈設するときや、潮間帯に設置するとき等には、河川水が大量に流入したり、干潮時の乾燥を防止するために、海流や波浪の方向に向けて開口状の俯瞰平面U字状あるいはV字状に配列させて海水の滞留作用を得るようにすべきであり、さらに、アオナマコの養殖を目的とする場合には、岩礁、転石地帯の海流下方の砂泥地帯に当該天蓋付き底棲生物用養殖礁を沈設するとよく、また珪藻類繁茂地帯の海流下方の砂泥地帯に設置するようにするのが望ましいといえる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0048】
図1の沈設状態にある天蓋付き底棲生物用養殖礁の斜視図、図2の施蓋された底棲生物用養殖礁の斜視図、図3の一部を分解した着底基盤の斜視図、図4の筒状保護壁の斜視図、図5の一部に変更を加えた筒状保護壁の斜視図、図6の礁本体の斜視図、図7の棲息用定着棚の斜視図、図8の棲息用定着棚を収容した礁本体の斜視図、および図9の一部を分解した遮光用天蓋の斜視図に図示される事例は、所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具21,21,……を固着して着底基盤2とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口31,31,……を開口し、正八角形筒状に形成した筒型保護壁3を、適宜連結金具4,4,……によって脱着可能に立設して礁本体11を形成すると共に、該礁本体11筒型保護壁3内側の礁内空間34に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚5,5,……を組み込んだ上、当該筒型保護壁3の上端開口35には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具64,64,……を固着した遮光用天蓋6を脱着自在に施蓋した状態に組み合わせ、1本または複数本の縄索類7によって着底基盤2および天蓋6の夫々に設けてある各環金具21,21,……,64,64,……同士を連結して仮固定してなる、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁における代表的な一実施例を示すものである。
【0049】
当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、図2中に示す着底基盤2、筒型保護壁3からなる礁本体11と、遮光用天蓋6、および図8中に示すように、その礁内空間34中に収容される棲息用定着棚5とから形成されたものであり、各部品は何れも主要部分が後記実施例2に示す貝殻小片組成物によって成形されたものとなっており、図3中に示す着底基盤2も、後述する貝穀小片組成物からなり、1辺が約1300・、肉厚が100・の正方形平板状であって、四隅の夫々に約150・、45°の面取りを施し、同図3中に二点鎖線によって示すように、上面中央の正八角形の範囲を筒型基盤2立設用の範囲に設定し、その四隅外側直近に肉厚(上下)方向に貫通する連結金具4,4,……および環金具21,21,……用の固着孔25,25,……を穿設したものとなっている。
【0050】
筒型保護壁3は、着底基盤2と同様に貝穀小片組成物の成形品であり、図4中に示すように、直径約1300・の円に内接する俯瞰平面正八角形の水平断面形に形成され、その肉厚を約100・、高さを約700・に設定した筒状であって、各側面壁の上端中央には、夫々150・×200・の開口寸法とした海流出入口31,31,……を、上端に開放するよう形成し、また、1面置きとなる壁面の下端中央にも、同寸法の海流出入口31,31,……を下端開放状に形成し、各壁面の中、下端中央に海流出入口31が形成されないものには、連結金具4用の固着孔32,32,……を、肉厚方向(筒型保護壁3中心に向かう水平方向)に穿孔したものとしている。
【0051】
また、筒型保護壁3は、図5中に示すように、隣接する各壁面に対して海流出入口31,31,……を、上下交互に配置させたものとし、それら壁面中、下端側に海流出入口31を開口していない壁面の下端中央付近には、連結金具4用の固着孔32,32,……を、壁面肉厚方向に穿設したものとし、また、上端中央に海流出入口31を形成しておらず、しかも筒型保護壁3中心を挟み対峙する何れか一対の壁面の、各上側中央付近には、外側に向けて突出された環状金具33を固着したものとすることができる。
【0052】
前着底基盤2の上面中央に図4中に示した筒型保護壁3を縦置き状に配置させ、図3および図6中に示すように、対応配置させた固着孔25,25,……,32,32,……の夫々に貫通するボルト・ナット41,41,……と、座金42,42,……およびL字型金具43,43,……の各部品を組み合わせてなる複数組の連結金具4,4,……を用いて強固に立設、一体化させ、礁本体11を形成したものとし、各連結金具4,4,……は、夫々の部品に耐塩性ステンレス製のものを使用している。
【0053】
図3中に示すように、着底基盤2の各連結金具4,4,……の配置個所外側の固着孔25,25,……には、両端に雄ネジを刻設したU字型金具22,22,……を上面側から下面側に貫通させ、下面側から座板23,23,……を装着し、ナット24,24,……を螺合させて固着し、環金具21,21,……を形成したものとし、これら4箇所の環金具21,21,……も前記連結金具4,4,……と同様に、夫々の部品が耐塩性ステンレスから形成されたものとなっている。
【0054】
同図6中に示した礁本体11の筒型保護壁3内に形成された礁内空間34中には、図7中に示すように、貝穀小片組成物からなり、上下複数段の矩形状棚板51,51,……とそれら四隅の上下を支持する支持柱52,52,……とを組み合わせてなる4個の棲息用定着棚5,5,……を、図8中に示すように、中央に1個相当分の空間を形成した俯瞰平面十字状の配置となり、筒型保護壁3の内周壁との間に適度な隙間空間を形成するよう収容可能なものとなっている。
【0055】
遮光用天蓋6も同様の貝穀小片組成物からなり、図9中に示すように、筒型保護壁3の俯瞰平面における外郭形状に一致する正八角形に形成された肉厚約100・の平板状に形成され、その下面中央には、筒型保護壁3の上端開口35の内周縁に嵌合可能な正八角形状の突面部61を形成し、中央には上下肉厚方向に貫通する直径100・程度の円柱状海流出入口62を開口し、その外側の90°毎の開き角を隔てた4箇所夫々には、所定間隔を隔てた2個一対の固着孔63,63,……が、肉厚方向(施蓋の際の上下方向)に貫通され、それら一対の固着孔63,63,……毎に、両端に雄ネジを螺設したU字型金具65,65,……を上面側から下面側に貫通させ、下面側から座板66,66,……を装着し、ナット67,67,……を螺合させて、環金具64,64,……を固着したものとなっており、これら4箇所の環金具64,64,……は、その各部品が耐塩性ステンレス製のものとなっている。
【実施例2】
【0056】
ここに取り上げた実例は、扁平貝殻小片(偏平小片)として、我が国を代表する食用貝(その大半が養殖貝)、ホタテ貝の残滓物であるホタテ貝殻を利用して貝穀小片組成物を形成する方法であって、これに基づき前記実施例1の着底基盤2、筒型保護壁3、棲息用定着棚5,5,……ならびに遮光用天蓋6を成形するものであり、以下具体的に説明を加えていく。
先ず、主原料とするホタテ貝殻(代表的な二枚貝で、通常、上蓋はやや赤みを帯びた褐色、裏蓋は淡黄色を帯びた白色)を雨水に所定期間晒しておいたものとするか、まとめて水洗した後、火力または風力など適宜手段によって水分20%以下に調整してから、粉砕機に掛けて大まかな粉砕をしてしまい、必ずしも平面形が一定しないものの、貝殻生成の特徴から偏平状の貝殻小片にした上、米国GAM社製「GAM11−5T」の粉砕機によって夫々の輪郭全周に渡る縁形状が、なるべく滑らかな輪郭の円形や楕円形またはそれに近い形状のものになるよう滑らかに成形加工してしまい、その後で篩に掛け、直径または長径が1ないし8mm程度のものを大量に用意しておく。
【0057】
この主原料の偏平状のホタテ貝殻小片とは別に、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1の沈設対象となる海域に流れ込む河川またはその周辺採石場等から採取された粒径0.6ないし0.15・(大半は0.425・前後)、嵩比重1.45ないし1.7、水素イオン指数pH6ないし7、吸水率平均0.30(灼熱減量)の珪砂(六ヶ所産砂5号)、および同様の箇所か、あるいは他の地域から採取され十分に洗浄した粒度1.18ないし13.2・(大半が2.36ないし4.75・)、嵩比重2.759、吸水率2.023の採石(越友産業7号)を増量材とする。ホタテ貝殻小片の85ないし50%に対し、この増量材である硅砂、採石の15ないし50%を、よく混ぜ合わせてホタテ貝殻小片混合物にしておく。
【0058】
バインダーとしては、昭和高分子株式会社製、商品名「SG1000」のビニルエステル系合成樹脂、硬化剤として化薬マクゾ株式会社製、商品名「328E」、および硬化促進剤(ナフテン酸コバルト)として昭和高分子株式会社製、商品名「コバルト6」とするが、無黄変ウレタン系合成樹脂(商品名「KBK NY−1」、日本エヌエスシー株式会社製と、0.05ないし4.0%(気温や硬化時間などの条件で最適値を決定)の範囲で添加する硬化剤(商品名「KBK−NSC」、日本エヌエスシー株式会社製とすることも可能である。
【0059】
後述する配合割合(気温や硬化時間などの条件で最適値を決定)によってビニルエステル系合成樹脂と硬化剤、および硬化促進剤を用意し、粘性液体充填自動計量器(東京ミュー精機株式界社製)を使って夫々最適配合割合に計量、混入して一次混練として均質になるよう混練した後、カット長3ないし5mm、繊維径4μ前後のロックウール(熱伝導率0.044w/m・k、熱収縮温度700℃)を混入して二次混練し、ロックウールが均質に分散、混入されたものとする。
【0060】
以下に、当該各部品の天蓋付き底棲生物用養殖礁1の各部品、材料類における具体的な配合割合を示す。
1.「貝穀小片組成物の混合割合」
イ.着底基盤2 貝殻:40% 珪砂:10% 採石:50%
ロ.筒型保護壁3および遮光用天蓋6 貝殻:70% 珪砂:30%
2.「貝穀小片組成物のバインダー混合割合」
イ.天蓋付き底棲生物用養殖礁1の合計重量に対する重量比:10ないし20%
ロ.バインダー重量に対する硬化促進剤配合割合:1.5ないし2.0%
ハ.バインダー重量に対する硬化剤配合割合:0.5ないし4.0%
ニ.バインダー重量に対するロックウール配合割合:10ないし30%
【0061】
この混練には、関東混合機工業株式会社製、商品名「HP型90L」の偏心軸ミキサーを採用した。
引き続き、偏心軸ミキサー内のロックウール混入バインダーの中に、予め用意しておいた前記ホタテ貝殻小片混合物を、ロックウール混入バインダー5ないし10%に対して95ないし90%となるような範囲として混入し、バインダーの粘性が増して次第に糸引き状になるに連れ、ホタテ貝殻小片混合物の姿勢が整えられるのを目視しながら、回転速度第1速72(r/m)から、第1速100(r/m)、第3速163(r/m)、第4速225(r/m)を使ってコントロールし、夏期で約4分間、冬期で約5分間を目安にした三次混練を行う。
【0062】
こうして混練を終え、それら大半の扁平貝殻小片がその扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられた状態の混練物を素早く取り出し、整えられた扁平貝殻小片の姿勢がそのまま平置き状となるように押し広げるように、着底基盤2、筒型保護壁3、遮光用天蓋6、および棲息用定着棚5の棚板51,51,……ならびに支持柱52,52,……成形用の図示しない型枠の夫々に充填した上、電動ハンマー(商品名「H41SA型」日立工機株式会社製)を用いて均等に打圧、硬化させるか、あるいは反動反復圧縮機(商品名「全自動100t型」、株式会社山崎鉄工所製)を使って、適切な圧力で圧縮して固化させ、天蓋付き底棲生物用養殖礁1の各部品を成形する。
【0063】
各部品の成形の際に、図3ないし図6および図9中に示すような、各固着孔25,25,……,32,32,……,63,63,……や、海流出入口31,31,……,62等を同時成形するのが望ましいが、離型後に各成型品の必要箇所夫々に固着孔25,25,……,32,32,……,63,63,……をボール盤やドリル工具等を用いて穿孔し、あるいは必要に応じて海流出入口31,31,……,62を鋸盤等を用いて切断加工すること等が可能であり、さらにまた、混練物を素早く取り出した後、予め上下面を反転させて用意しておいた、図9に示す、遮光用天蓋6の裏面中央に、型枠によって確保した所定厚の正八角形平板状空間中に充填するよう被せて圧縮、固化することにより、突面部61を一体化した貝穀小片組成物による成形品を製造することも可能である。
【実施例3】
【0064】
図10の一部の構造に変更を加えた天蓋付き底棲生物用養殖礁の矢印A−Aに示す90°範囲を断面化した斜視図に示される事例は、着底基盤2の上面中央に二重構造となる筒型保護壁3を、図示しない複数の連結金具を用いて立設、一体化した貝穀小片組成物製の礁本体11を有するものであって、俯瞰平面形状が、直径約600・の円に内接する正八角形の外郭形状であって高さが約700・、肉厚約65・の筒型内周壁36と、その外側に同心状に配され、直径約1160・の円に内接する正八角形の外郭形状に設定され、高さ約500・、肉厚約87・の筒型保護壁3とを設けたものであり、着底基盤2の上面中央には筒型内周壁36の下端内側に通じるよう肉厚方向に貫通した海流入出口26を穿孔し、該筒型内周壁36の筒型保護壁3の上端よりも下側となる範囲には、点在状の配置となる複数の海流出入口31,31,……が、肉厚方向に貫通、形成されたものとしている。
【0065】
当該礁本体11筒型内周壁36の上端開口には、該筒型内周壁36の平面正八角形に略一致する寸法、および外郭形状に施形された肉厚約50・の平板状であり、下面中央に厚さ約50・の嵌着用突面部61を形成し、上面中央から下面中央に掛けて直径約200・の海流出入口62を貫通させ、U字型金具65,65,……、座板66,66,……およびナット67,67,……の組み合わせからなる合計4個の環金具64,64,……が、上面の均衡する位置に固着した中央天蓋68を開閉自在に施蓋したものとし、また、筒型保護壁3内周壁上端縁と、それと同じ高さとなる筒型内周壁36外周壁面との間には、内外壁が平行する2辺間毎に対応する寸法、形状とした俯瞰平面台形状の肉厚約50・の平板からなり、下面には厚さ約50・の突面部61を形成した外周天蓋69,69,……を、筒型内周壁36外周壁面に固着された連結金具4,4,……と、筒型保護壁3上端縁との間に掛け渡し状に閉鎖したものとし、筒型保護壁3上端縁に沿って配置された複数個の外周天蓋69,69,……の中、1個置き毎となる合計4個の外周天蓋69,69,……は、その重心位置付近に均衡する配置となるようU字型金具65、座板66,66およびナット67,67からなる環金具64を固着し、その環金具64の中央直下付近には、直径約50・の海流出入口62を肉厚方向に貫通したものとし、開閉自在に施蓋したものとなっている。
【0066】
このようにして組み立てられた天蓋付き底棲生物用養殖礁1の重量は以下のとおりとなっている。
イ.着底基盤2
(体積)0.1638m3×(比重)2.1t/m3=0.3535t
ロ.筒型内周壁36
(体積)0.0628m3×(比重)1.7t/m3=0.1068t
ハ.中央天蓋68
(体積)0.0174m3×(比重)1.7t/m3=0.0296t
ニ.筒型保護壁3
(体積)0.1633m3×(比重)1.7t/m3=0.2776t
ホ.外周天蓋69
(体積)0.0275m3×(比重)1.7t/m3=0.0467t
【0067】
前記、ハ(外周天蓋69)は、開閉自在に装着された4個の天蓋69,69,……のみが含まれ、ニ(筒型保護壁3)の重量中に、ハ(外周天蓋69)以外の開閉不能に装着された4個の天蓋69,69,……を含む重量として表示している。
そして、それらを組み合わせた天蓋付き底棲生物用養殖礁1の全体体積が、0.4393m3、そして合計重量が、0.8141tとなるよう、各部形状、寸法および比重が設定され、しかもその重心位置が、中心位置における上下寸法1/3以下の位置に設定、配置されたものとしている。
【実施例4】
【0068】
図12の筒型保護壁をもたない天蓋付き底棲生物用養殖礁の正面図、図13の図12中矢印B−B部分の断面図、および図14の一部構造に変更を加えた棲息用定着棚における分解状態の斜視図に示す事例は、前記各実施例の筒型保護壁3を設けず、俯瞰平面十字(X字)状の支柱状壁面37を介して着底基盤2と遮光用天蓋6とを連結金具4,4,……を介して連結、一体化したものであり、これら着底基盤2上面と遮光用天蓋6下面との間であって該支柱状壁面37によって4箇所に仕切られた保護空間38,38,……内の夫々には、図14中に示す、貝穀小片組成物製であって矩形平板状に形成され、その上面壁に凹凸岩礁地肌状の擬岩壁面53を形成した複数枚の棚板51,51,……と、それら四隅間に装着される支持柱52,52,……とから形成されており、各棚板51,51,……の上面四隅には、各支持柱52,52,……の端面を垂直状に接合可能とする平面状の接着面54,54,……を形成し、前記実施例に示した各種バインダーあるいは、接着剤等を用いて一体、且つ強固に結合したものとしている。
【実施例5】
【0069】
図15の筒型保護壁をもたない天蓋付き底棲生物用養殖礁の平面図、および図16の筒型保護壁をもたない天蓋付き底棲生物用養殖礁の正面図に示す事例は、円板状着底基盤2の上面中央に、該着底基盤2の半径程度の直径をもつ円柱状の中心部分を有し、その外周壁面120°置きとなる位置毎に、肉厚状壁面を放射状に一体形成した支柱状壁面37を立設し、その支柱状壁面37の上端に円盤状の遮光用天蓋6を組み合わせて一体且つ強固に結合した上、各肉厚状壁面間となる支柱状壁面37の外周壁、およびそれに対応する着底基盤2上面、ならびに遮光用天蓋6下面の夫々に、30°置き毎の間隔を隔てた嵌着用溝が刻設されており、それらの各嵌着用溝には、矩形平板状の仕切板39,39,……を嵌合状に装着し、各肉厚状壁面および仕切板39,39,……の間夫々に底棲生物養殖用の礁内空間38,38,……が、外側に向けて開放状に形成されたものとなっており、その礁全体が、前述の貝穀小片組成物によるポーラス構造を有する成型品から形成されたものとなっている。
【0070】
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなる実施例1および実施例2に示した天蓋付き底棲生物用養殖礁1により得られる作用について、本発明に包含される底棲生物の養殖方法に従って以下に示すこととする。
図6中に示した着底基盤2と筒型保護壁3とを連結金具4,4,……によって一体に結合してなる礁本体11、および図7中に示した合計4個の棲息用定着棚5、ならびに図9に示した遮光用天蓋6とを、夫々別体のまま港湾まで輸送し、クレーンを設置した漁業用または輸送用あるいは工事用船舶上に輸送用パレットごと搭載し、荷崩れ等を起こさぬよう縄索類で固定して沈設海域の設置個所海上まで輸送する。
【0071】
着底基盤2、筒型保護壁3、棲息用定着棚5,5,……および遮光用天蓋6は、各部品毎に製造し、それら部品毎に製品管理および在庫管理することにより、品質の安定と製造、保管、輸送等の各作業性を高めるものとなり、港湾から沈設海域までの海上輸送にあたり、当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1の組立状態における総重量を設計、製造段階において1t未満に抑えたものとしたことにより、一般的な漁船等にも1基ないし数基程度の当該養殖礁1,1,……を搭載することが可能となって、個々の漁民が単独で沈設、移設、置き換えおよび漁獲作業を行うことが可能である。
【0072】
沈設箇所海上に到着した船舶から、図6に示す礁本体11着底基盤2の1箇所もしくは均衡する複数箇所の環金具21,21,……に図示しないクレーンから垂下したロープ(縄索類)を繋着して海中に吊り降ろし、着底基盤2下面を海底に略水平状の姿勢とするよう、潜水夫の監視、補助のもと着地させ、安定的に沈設、定着させてからロープを解き、巻き上げたロープを図7の棲息用定着棚5,5,……中の1個ずつ、もしくは4個纏めて上部適所に繋着し、吊り降ろして礁本体11礁内空間34中に収容し、図8に示すように着底基盤11上面に接地させ、ロープを解いて引き上げ、図9の遮光用天蓋6を、その環金具64,64,……の1箇所もしくは均衡する複数箇所にロープを繋着して海中に吊り降ろし、筒型保護壁3海流出入口31に装着、施蓋してロープを解き、図2中に示すような組立状態とした後、図1中に示すように、着底基盤2および遮光用天蓋6の各環金具21,21,……,64,64,……間にロープ(縄索類)7を通して仮留めしたものとする。
【0073】
安定した沈設を行うには、海流による横転、流動に抗するよう礁全体1の比重を高めることが考えられるが、岩石、礫、砂または泥等の海底の状況によって比重を変えなければならず、砂質や泥質のような海底では、養殖礁1の自重や海流、波浪等の影響を受けて次第に埋没してしまう虞があり、設置には不向きであって、比較的確りとした海底地盤を選んで、設置する必要がある。
【0074】
このようにして海底に沈設された天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、礁内空間34に射し込む外光を遮り、各海流出入口31,31,……を通じて円滑に流出入する海水に伴い、豊富なプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とし、さらに図1中に示すように、着底基盤2の上面直上に開口した海流出入口31,31,……を通じて底棲生物が自由に出入り可能としたバリアフリー環境を形成するものとなり、こうした培養環境の下に、沈設海域に棲息する天然ナマコ、および人工孵化による種苗を放流し、当該底棲生物用養殖礁1付近や礁内空間34中に棲息させるよう、数年に渡りその周辺環境を保持、管理する。
【0075】
天蓋付き底棲生物用養殖礁1の主要材料として用いた貝穀小片組成物は、昭和48年環告13号による検定方法と、昭和48年総理府令5号による判定基準とに基づき、溶出試験を行ったところ、沈設海域における環境への悪影響がないとの結論が得られた。その内容をより具体的に示すと、土壌汚染特定有害物質とされるアルキル水銀、総水銀、カドミウム、鉛、有機りん、六価クロム、ひ素、シアン化合物、PCB、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,3−ジクロロプロベン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレンについて何れも不検出との結果が得られ、しかも耐食性に優れ、凍結融解試験、塩化ナトリウム3%溶液や水道水による抵抗性試験等のスケーリング試験においても減量は全く観られず、しかも耐塩性ステンレス製とした連結金具4,4,……、環金具21,21,……,64,64,……等は、その耐食性によって有害物質の溶出が無く、長期に渡る安全な利用が可能である。
【0076】
また、その圧縮強さ、曲げ強さ荷重のような機械的強度は、陸奥湾内最大波高海峡部4.3m/sec、湾内1.2m/sec、大潮最大流速西湾4.2596km/h、通常流速平均360m/h(日本海洋学会沿岸海洋研究部会日本全国沿岸海洋誌1985年東海大学出版)の条件下において、その波浪、流速および水圧の重力に十分に耐え得る強度を得たものとなっている。
【0077】
より具体的に示すため、以下に30年確率波高安定計算を示す。
1.湾内最大波高
西湾調査地点 蟹田4.3m/sec(20分間測定)
東湾調査地点 横浜3.5m/sec(20分間測定)
風速(X)m/secに対する最大浪高(Y)mの関係による浪高は、次に示す(式 1)となる。
Y(m)=0.25(m/sec)−0.18 ………(式1)
流速は、冬期と夏期とによって西湾・東湾共夫々変化するものである。
【0078】
2.大潮最大流速
西湾 4.2596km/h、水深15m、65cm/sec(平館海峡)
2.35m/h=0.00065m/sec
東湾 1.852km/h、水深42m、73cm/sec(平館海峡)
0.972m/h=0.00027m/sec
海峡部通常20cm/secであるが夏期7ないし9月には比較的速く、寒冷気に遅 くなるという季節変動(5ないし27cm/sec)がある。
流速平均10cm/sec=360m/h(180ないし972m/h)
【0079】
3.沈設水深
西湾10ないし20m
東湾10ないし30m
【0080】
4.海流の圧力
イ.質量:海水比重1.747と流量(m3)と速度変化の積に等しい。
ロ.重力加速度(g)=9.8N/sec/m
ハ.水圧は1m2当たり10m毎に1気圧(1.225kg/m3)増加する。
ニ.1ノット=1.852km/h
1.747×9.8×0.00065m=0.01112839N/m2/ sec×1.01972=0.01134784185k/mm2/sec
1cm2当たり1.1348kg/sec
最大浪高4.3m/secの場合の圧力:1.1348×4.3=4.8796 4kg/sec
1m2当たり487.964kg/sec
水深30mの水圧:(水深15m以深10m毎に1気圧増加する。)
[{(30m−15m)÷10}×1.225kg/m3]×(1.747÷3.21 kg/m2)+{(1.747×15m/m3)=26.205kg/m2}=2 9.415kg/m2
【0081】
5.礁構造体壁の透水性
78.54cm3/sec通過することによる減圧作用が得られる。
流水流量0.007854m2当たり24.7cm3/secの量が通過すること により、この数値と等しい圧力が減圧となる。
1m2当たり:127.3236×34.7cm3/sec=0.4418m3/ sec
この質量:1.747×0.4418=0.7718t
この加速度重量:0.7718×9.8=7.563641N/m2/sec
この圧力:7.56364×0.00065=0.004916366N/sec ×1.01972=0.005k/mm2/sec
1cm2当たり0.5kg/sec
【0082】
6.礁形状正八角状筒型による水圧抵抗の減圧
立体垂直面積を100とした場合、これと同面積を正八角形にすると迎角45°の 関係から斜面となり、垂直平面積より約39%に直角方向の面積が減少し、減圧さ れることとなる。
【0083】
7.流量
1m×水深m×流速m/sec
【0084】
8.養殖礁形状の対向海流直角方向面積と鉛直方向対上面面積
イ.正八角形面積:1.15m2×0.61%=0.7015m2
ロ.正八角形面積:1.539m2×1.0%=1.539m2
ハ.正八角形外側面積:1.15m2×2%=2.3m2
【0085】
9.養殖礁強度
イ.圧縮強さ:Φ100×200mm 最大荷重168kN 21.4N/mm2
ロ.曲げ強さ荷重:300×299×厚さ60mm=25.1kN
:300×300×厚さ80mm=66.5kN
比較例JIS規格A5305、鉄筋コンクリート製とした場合の天蓋6の曲げ強さ 荷重
L=500mm:24.52kN(2種)25.1kN 内壁厚60mm
L=600mm:44.13kN(2種)66.5kN 内壁厚80mm
以上1.ないし9.の各項目および当該天蓋付き底棲生物用養殖礁、ならびにそれに用いた貝穀小片組成物の各工業試験によって得られた機械的、化学的性質を検証した結果、陸奥湾内の水深30mの海底に設置した場合には、その正八角柱状の外郭形状と重心位置によって安定に定着し、同形状、寸法のコンクリート製人工漁礁に比較しても約2倍強という高い耐久強度を示し、耐塩性も傑出しており、30年以上の長期に渡り、十分に利用できるという結論が得られた。
【0086】
さらに、着底基盤2の重量が、礁全体1の重量に対して40ないし50%に設定され、しかも礁1全高上下中心部から下方の重量が、礁全体1の重量に対して70%ないし80%に設定されたものとなっており、これによって高い安定性を得ることができ、沈設海域における波浪、海流による横転や流動を阻止するものとなる上、礁全体1の俯瞰平面形状を正八角形状としたことにより、平面形中心周りの45°毎となる八方向ともの寸法、形状、表面積および体積、重量等の各条件を略同一の条件とし、比較的面積の大きな下部が重く、それとを反対に比較的面積が小さな上部を軽くして正面形状が左右バランスされたものとなっていることから、より安定且つ長期的な沈設、利用が可能となる。
【0087】
表現を変えて示すと、筒型保護壁3の軸心周り180°範囲に渡る範囲を垂直状平面とした際の圧力荷重を100%とし、正八角形筒状としたときの同範囲に加わる圧力荷重の分散割合が約25%に低減されることとなり、さらに貝穀小片組成物製としたことにより、高い透水性を確保して、図11の海流が通過する天蓋付き底棲生物用養殖礁の平面図中に白抜き矢印で示すように、波浪や海流に晒される海底にあって安定的に設置することが可能であり、また、一辺1mの正四角形立体の面積は、4m2となるが、正八角形立体の面積は、sin45°を乗じた値となるため、4.32m2となり、表面積を8%増加させて四角形に比較して、さらに高い透水能力を確保するものとなる。
【0088】
当該養殖礁1の全体空隙率は、平均16.7%(連続空隙率10.1%)となっており、海水温度の変動によって熱膨張、収縮が発生して空隙率が変化して透水性の悪化が懸念されるが、塩化ナトリウム3%溶液中(+)(−)20℃、50サイクルの条件下における凍結融解試験結果の損失量が0g/m2であり{(+)(−)20℃、60サイクルにおいても同様の結果を得ている}、且つ、熱伝導率が0.00134kcal/m・h・r/℃と、真水の約1/385の値に抑えられ、外部温度の影響を受け難く、沈設対象となる陸奥湾内の海水温度は、海面通常8月最高23℃、3月最低8℃となっており、水深が深い所程、海水温は常に低く、温度差は15mの水深では5ないし2℃の範囲に収まり、海水温度による透水性への悪影響を受けることは無いと判断される。
【0089】
以上のような環境下において数年に渡り養殖、管理し、収穫期を迎えたときには海底作業によって、図1中に示した、遮光用天蓋6を仮留めしているロープ7を解き、天蓋6を船上クレーンによって吊り上げ、図8中に示した状態に開放し、筒型保護壁3上端開口35を通じて礁内空間34および棲息用定着棚5,5,……に定着、増殖しているナマコを手作業により収穫し、必要に応じて礁内空間34中に収容されている棲息用定着棚5,5,……を船上クレーンを利用して筒型保護壁3上に上昇させ、吊り上げ状態を維持したままナマコの収穫作業を行い、収穫後に再度、棲息用定着棚5,5,……を礁内空間34中に収容、接地させるものとすることが可能であり、収穫作業を終えた後には遮光用天蓋6を、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて周辺海域で捕獲した天然の稚ナマコや、あるいは適宜施設によって人工孵化させた種苗等を礁内空間34か、あるいは礁1近傍周辺に放流し、継続的な養殖を行う。
【0090】
実施例3に示した図10の天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、筒型保護壁3の内側に、それよりも背の高い筒型内周壁36を設けて礁本体11の重量バランスを崩すことなく、礁内空間34を二重に仕切った構造としたことによって内周壁面積を大幅に拡大してより多くのナマコを養殖することが可能となり、しかも複数に分割された中央天蓋68および外周天蓋69,69,……は、何れも小型化されたものとなって礁内空間34の管理や収穫の際の開閉操作における作業負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0091】
実施例4の図12ないし図14中に示した天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、実施例5の図15および図16中に示したものと同様、筒型保護壁3に変えて支柱状壁面37によって遮光用天蓋6を支持する構造としており、その礁内空間34が外部に露出状となっていることから、波浪や海流が比較的弱い海域に設置するのに最適なものとなっており、さらに、図14に示すように擬岩壁面53,53,……を形成した棲息用定着棚5,5,……を収容したものとすることによって岩礁に好んで定着するナマコの性質に良く合致し、さらに高い定着密度を確保できるものとなり、しかも擬岩壁面53,53,……を形成した棲息用定着棚5,5,……は、寸法、形状を考慮して製造することにより、何れの形状の天蓋付き底棲生物用養殖礁1にも収容、設置することが可能である。
【0092】
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例1の天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、図6中に示したように、着底基盤2と筒型保護壁3とを組み合わせてなる礁本体11は、その重心を中心から着底基盤2に近い位置に設定されているので、沈設のために船上から海中に降下させるときに、海水による抵抗を受けて不安定になりながらも、着底基盤2の底面を下に向けて自動的に定着姿勢をとりながら沈んでゆくものとなり、しかも着底基盤2の四隅に設けられた環金具21,21,……の何れか1箇所に、船上クレーンのロープを繋着しておくことにより、海底に着地する直前に一旦、引き留めてダイバーの目視によって定着位置を確認した上、吊り降ろして安定に沈設させることができ、実に効率的に設置、定着作業を進めることができるという利点を有するものである。
【0093】
また、礁本体11着底基盤2の四隅に固着された各環金具21,21,……は海底設置後、図2中に示すように、遮光用天蓋6によって施蓋したときに、該遮光用天蓋6上面に固着された4個の各環金具64,64,……との間に、図1中に示したように、ロープ(縄索類)7を通して結び付け、遮光用天蓋6が波浪や海流によって不用意に外れ落ちてしわないよう仮止めすることができ、これらU字型金具22(65)を利用した環金具21,21,……,
64,64,……は、沈設および回収作業の際の利用と、海底養殖中における天蓋6の仮固定との両方に利用することができ、構造の複雑化と部品点数の増加とを防止して経済的な人工礁1を提供することができるという特徴を発揮する。
【0094】
筒型保護壁3は、図4または図5中に示したように、周壁に点在状に配置された複数個の海流出入口31,31,……の全てを、その中心を通る俯瞰平面における直径方向に対峙する一対を一組としたものとしたことにより、筒型形状の中心を挟む径方向の一方に配置された海流出入口31から流入した海流や波浪が、これと対をないして反対側に開口させた海流出入口31を通じて水平且つ直線的に流出できるようになっており、比較的強い海流や波浪を受けた場合にも、その水圧を大幅に軽減できるものとし、人工礁1の横転や移動、および礁内空間34内圧上昇による天蓋6の開放、離脱等を効果的に回避できるものとなる。
【0095】
礁内空間34中に収容、設置可能とした棲息用定着棚5,5,……は、図7および図8中に示したように、筒型保護壁3内の空間34中に十分な隙間を確保しながら、複数段の棚板51,51,……を高密度に形成するものとなってナマコの定着可能面積を格段に拡大することができるものとなり、また、礁本体11から取り外すことも容易なことから、収穫の際には、棲息用定着棚5,5,……のみを僅かに引き上げてダイバーの手作業により、各棚板51,51,……上に棲息するナマコを簡単に捕獲することができる上、棲息用定着棚5,5,……自体の設置、回収、交換も効率的に行うことができる。
【0096】
遮光用天蓋6は、図1および図2中に示したように、筒型保護壁3の正八角形状の上端に略一致する平板状に形成したことによって、波浪や海流による抵抗を最小限に抑えるものとなり、しかも図9中に示したように、下面中央に嵌合用の突面部61を形成したことにより、施蓋状態におけるズレ動きや、脱落等を確実に防止して太陽光の遮光と波浪、海流からの保護とを達成可能としたものである。
【0097】
図10に示した礁内空間34を二重構造とした天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、中心部に周囲よりも背の高い筒型内周壁36を設けたことにより、重量を中央に集中させたものとして、海底への定着をより強固なものとすることができると共に、より剛性に優れた壁面構造を確保することができ、しかも中央天蓋68や外周天蓋69,69,……を小型化し、特に海中における開閉作業をより安全で簡便なものとすることができる。
【0098】
さらに、図13ないし図14、ならびに図15および図16中に夫々示した外周壁面をもたない天蓋付き底棲生物用養殖礁1,1は、何れも比較的波浪が少ないか、もしくは周囲を岩礁に囲まれた海域、あるいは図1ないし図10に示したような筒型保護壁3を有する天蓋付き底棲生物用養殖礁1の複数基等によって周囲を包囲され、外周方向からの波浪や海流に直接晒されることがなく、十分に減衰されて到達するような場所に沈設するのに最適なものであって、こうした環境下においても十分な海水の循環、通過を実現可能とするものとなり、しかも図14に示したように各棲息用定着棚5棚板51,51,……上面を擬岩壁面53,53,……としたことによって天然の岩礁と略同様の環境を形成して底棲生物の定着密度を一段と高めることが可能となる上、この各棲息用定着棚5は、何れの人工礁にも組み合わせて利用することができる。
【0099】
当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1の主要部品を形成する貝穀小片組成物は、透水性、低吸水性、機械的ならびに化学的耐久強度、耐熱性、断熱性、防音性等の様々な特性に優れ、海底環境に同化させるのに最適な素材であり、しかも産業廃棄物として廃棄しなければならないホタテ貝の貝殻を再生利用して、貝が産出された海域に戻すことができる上、海底の生態系に影響を与える虞れがなく、海水のアルカリ化によって磯焼けの原因ともならず、ナマコが付着し易いのは勿論のこと、その餌となる珪藻類が付着生育し易く、老朽後放置されて崩壊した場合にも、有害物質の溶出や海底環境に悪影響を及ぼす外来種苗その他の微生物類等を一切放出することがないので、永続的に新たな養殖礁1を設置し続けることができるという秀れた特徴を得ることができる。
【0100】
天蓋付き底棲生物用養殖礁1を用いた底棲生物の養殖方法により、各部別体部品に分割して製造され、組立状態にあっても1tに満たない総重量に設計された当該天蓋付き底棲生物用養殖礁1は、漁民夫々の所有する漁船にも比較的容易に搭載することが可能であり、漁民同士の協力による簡便な作業によって海上輸送、沈設、移動、置換え等のナマコ用魚礁の沈設に必要となる一切の作業を、魚礁の設置業者等に頼らずとも独自に行うことが可能となり、従来型の魚礁や消波ブロック、岩石等の海上作業に不可欠とされてきたクレーン付き台船、およびその台船を曳航する引き船の利用を不要とし、その高額な費用と作業時間とによる沿岸漁民への負担を無用とし、その作業性と経済性とを大幅に改善できるという秀れた効果を発揮することになる。
【0101】
(結 び)
叙述の如く、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁、およびそれを用いた底棲生物の養殖方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの鋼材や鉄筋コンクリート等を用いた大掛かりな人工漁礁に比較して十分に小型、軽量化され、輸送や沈設作業の大幅な効率化と経費削減とを実現し、波浪や海流に抗して長期間に渡って安定した定着を可能とし、海底の生態系に及ぼす影響を格段に少ないものにできる上、陽射しを避けた波浪の弱い岩陰風となって常に新鮮な海水が供給されるような、底棲生物が好んで定着する海底環境を確実に実現し得る魚礁としたことから、これまでナマコ養殖用として有効な魚礁を持たないことから、安定した漁獲高が保証されていなかった漁民に大いに歓迎され、その高い実用性によって漁業協同組合や県、市町村における水産団体および魚礁製造、設置業者等、各方面からも高く評価されて広範に利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図面は、この発明の天蓋付き底棲生物用養殖礁、およびそれを用いた底棲生物の養殖方法の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】天蓋を仮留めした天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す斜視図である。
【図2】組立て状態にある天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す斜視図である。
【図3】着底基盤を示す斜視図である。
【図4】筒型保護壁を示す斜視図である。
【図5】一部に変更を加えた筒型保護壁を示す斜視図である。
【図6】着底基盤上に筒型保護壁を立設した礁本体を示す斜視図である。
【図7】棲息用定着棚を示す斜視図である。
【図8】棲息用定着棚を収容した筒型保護壁を示す斜視図である。
【図9】遮光用天蓋を示す斜視図である。
【図10】礁内空間を二重構造とした天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す斜視図である。
【図11】天蓋付き底棲生物用養殖礁を通過する海流を白抜き矢印で示す平面図である。
【図12】支柱状壁面を設けた天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す正面図である。
【図13】図12中のB−B線部分を示す断面図である。
【図14】擬岩壁面を設けた棲息用定着棚を分解して示す斜視図である。
【図15】俯瞰平面円形状とし支柱状壁面を設けた天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す平面図である。
【図16】俯瞰平面円形状とし支柱状壁面を設けた天蓋付き底棲生物用養殖礁を示す正面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 天蓋付き底棲生物用養殖礁
11 同 礁本体
2 着底基盤
21 同 環金具
22 同 U字型金具
23 同 座板
24 同 ナット
25 同 固着孔
26 同 海流入出口
3 筒型保護壁
31 同 海流出入口
32 同 固着孔
33 同 環状金具
34 同 礁内空間
35 同 上端開口
36 同 筒型内周壁
37 同 支柱状壁面
38 同 保護空間
39 同 仕切板
4 連結金具
41 同 ボルト・ナット
42 同 座金
43 同 L字型金具
5 棲息用定着棚
51 同 棚板
52 同 支持柱
53 同 擬岩壁面
54 同 接着面
6 遮光用天蓋
61 同 突面部
62 同 海流出入口
63 同 固着孔
64 同 環金具
65 同 U字型金具
66 同 座板
67 同 ナット
68 同 中央天蓋
69 同 外周天蓋
7 縄索類
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定大きさの平板状とした着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設して礁本体を形成し、該礁本体筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋した状態に組み合わせてなるものとしたことを特徴とする天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項2】
所定大きさの平板状とした着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設して礁本体を形成すると共に、該礁本体筒型保護壁内側の礁内空間に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだ上、当該筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋した状態に組み合わせてなるものとしたことを特徴とする天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項3】
所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設して礁本体を形成すると共に、該礁本体筒型保護壁内側の礁内空間に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだ上、当該筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋を脱着自在に施蓋した状態に組み合わせ、1本または複数本の縄索類によって着底基盤および天蓋の夫々に設けてある各環金具同士を連結して仮固定してなるものとしたことを特徴とする天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項4】
棲息用定着棚が、格段毎の上面壁を凹凸岩礁地肌状の擬岩壁面に形成されてなるものとした、前記請求項1ないし3何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項5】
着底基盤およびこれに立設された筒型保護壁からなる礁本体、ならびに当該礁本体の筒型保護壁上端開口に対し、遮光用天蓋を施蓋した組み立て状態にあって、その重心位置が、海底設置姿勢の左右前後中央にあり、しかも上下中央よりも下側の配置とし、望ましくは上下高さの1/3以下の配置となるよう、各部品の寸法、形状および密度を設定してなるものとした、前記請求項1ないし4何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項6】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、適宜合成樹脂からなるバインダーにより、大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を同一方向とするかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項7】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、適宜合成樹脂からなるバインダーにより、大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を同一方向とするかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化することにより、各壁面の肉厚方向断面が破れ目地状の積層構造のものとした貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項8】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、硬化剤及び硬化促進剤の添加された適宜合成樹脂からなるバインダーの適量、および、樹脂重量の10ないし30%に相当するロックウールまたはグラスウールと共に十分混練され、それら扁平貝殻小片の扁平面間に加わる粘着力と扁平面に平行する方向の粘着力との差により、それら大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混ざった状態のものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項9】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別して直径または長径が1ないし8mm程度、望ましくはその中5mm前後のもので過半数を占めるようにすると共に、夫々の輪郭全周に渡る縁形状を滑らかに成形加工してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、硬化剤及び硬化促進剤の添加された適宜合成樹脂からなるバインダーの適量、および、樹脂重量の10ないし30%に相当するロックウールまたはグラスウールと共に十分混練され、それら扁平貝殻小片の扁平面間に加わる粘着力と扁平面に平行する方向の粘着力との差により、それら大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項10】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別して直径または長径が1ないし8mm程度、望ましくはその中5mm前後のもので過半数を占めるようにすると共に、夫々の輪郭全周に渡る縁形状を滑らかに成形加工してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、硬化剤及び硬化促進剤の添加された適宜合成樹脂、望ましくはウレタン系合成樹脂またはビニルエステル系合成樹脂からなるバインダーの適量、および、樹脂重量の10ないし30%に相当するロックウールまたはグラスウールと共に十分混練され、それら扁平貝殻小片の扁平面間に加わる粘着力と扁平面に平行する方向の粘着力との差により、それら大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項11】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別して直径または長径が1ないし8mm程度のもの、望ましくはその中5mm前後のもので過半数を占めるようにすると共に、夫々の輪郭全周に渡る周縁形状を滑らかに成形加工してなる扁平貝殻小片を50ないし85%、その他を30ないし70メッシュの粒度とした硅砂や破砕ガラス、天然鉱石粒など一種類または複数種類組み合せてなる低吸水性鉱物質粒状体とした混合物が、硬化剤及び硬化促進剤の添加された適宜合成樹脂、望ましくは脂肪族系変性ウレタン樹脂からなるバインダーの適量、および、樹脂重量の10ないし30%に相当するロックウールまたはグラスウールと共に十分混練され、それら扁平貝殻小片の扁平面間に加わる粘着力と扁平面に平行する方向の粘着力との差により、それら大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項12】
平板状の着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設、一体化してなる礁本体と、該礁本体筒型保護壁の上端面開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋とを、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設し、その後を追って投下された天蓋を、礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋、仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返し実施するようにした、前記請求項1ないし11何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁による底棲生物の養殖方法。
【請求項13】
所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設一体化してなる礁本体と、当該筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋とを、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、環金具に縄索類を繋いで繰り降ろし、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設して縄索類を解き、その後を追って環金具に縄索類を繋ぎ繰り降ろした天蓋を、該礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋し、投下用の縄索類を解き、着底基盤および天蓋の各環金具同士を、1本または複数本の縄索類を用いて繋ぎ仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に縄索類による仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返し実施するようにした、前記請求項1ないし11何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁による底棲生物の養殖方法。
【請求項14】
所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設一体化してなる礁本体と、当該筒型保護壁の礁内空間中に収容可能な寸法、形状の上下複数階層状とした棲息用定着棚、および筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋を、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、環金具に縄索類を繋いで繰り降ろし、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設して縄索類を解き、その後を追って適所に縄索類を繋ぎ、海中に降ろした棲息用定着棚を、当該該礁本体筒型保護壁の礁内空間中に収容、設置して縄索類を解き、それに続いて環金具に縄索類を繋ぎ繰り降ろした天蓋を、該礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋し、投下用の縄索類を解き、着底基盤および天蓋の各環金具同士を、1本または複数本の縄索類を用いて繋ぎ仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に縄索類による仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返し実施するようにした、前記請求項1ないし11何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁による底棲生物の養殖方法。
【請求項1】
所定大きさの平板状とした着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設して礁本体を形成し、該礁本体筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋した状態に組み合わせてなるものとしたことを特徴とする天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項2】
所定大きさの平板状とした着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設して礁本体を形成すると共に、該礁本体筒型保護壁内側の礁内空間に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだ上、当該筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋を、脱着自在に施蓋した状態に組み合わせてなるものとしたことを特徴とする天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項3】
所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設して礁本体を形成すると共に、該礁本体筒型保護壁内側の礁内空間に、上下複数の階層状とした棲息用定着棚を組み込んだ上、当該筒型保護壁の上端開口には、その開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋を脱着自在に施蓋した状態に組み合わせ、1本または複数本の縄索類によって着底基盤および天蓋の夫々に設けてある各環金具同士を連結して仮固定してなるものとしたことを特徴とする天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項4】
棲息用定着棚が、格段毎の上面壁を凹凸岩礁地肌状の擬岩壁面に形成されてなるものとした、前記請求項1ないし3何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項5】
着底基盤およびこれに立設された筒型保護壁からなる礁本体、ならびに当該礁本体の筒型保護壁上端開口に対し、遮光用天蓋を施蓋した組み立て状態にあって、その重心位置が、海底設置姿勢の左右前後中央にあり、しかも上下中央よりも下側の配置とし、望ましくは上下高さの1/3以下の配置となるよう、各部品の寸法、形状および密度を設定してなるものとした、前記請求項1ないし4何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項6】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、適宜合成樹脂からなるバインダーにより、大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を同一方向とするかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項7】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、適宜合成樹脂からなるバインダーにより、大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を同一方向とするかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化することにより、各壁面の肉厚方向断面が破れ目地状の積層構造のものとした貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項8】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、硬化剤及び硬化促進剤の添加された適宜合成樹脂からなるバインダーの適量、および、樹脂重量の10ないし30%に相当するロックウールまたはグラスウールと共に十分混練され、それら扁平貝殻小片の扁平面間に加わる粘着力と扁平面に平行する方向の粘着力との差により、それら大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混ざった状態のものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項9】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別して直径または長径が1ないし8mm程度、望ましくはその中5mm前後のもので過半数を占めるようにすると共に、夫々の輪郭全周に渡る縁形状を滑らかに成形加工してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、硬化剤及び硬化促進剤の添加された適宜合成樹脂からなるバインダーの適量、および、樹脂重量の10ないし30%に相当するロックウールまたはグラスウールと共に十分混練され、それら扁平貝殻小片の扁平面間に加わる粘着力と扁平面に平行する方向の粘着力との差により、それら大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項10】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別して直径または長径が1ないし8mm程度、望ましくはその中5mm前後のもので過半数を占めるようにすると共に、夫々の輪郭全周に渡る縁形状を滑らかに成形加工してなる多量の扁平貝殻小片が、単独でかまたは増量材として適量の低吸水性鉱物質粒状体を加えた上、硬化剤及び硬化促進剤の添加された適宜合成樹脂、望ましくはウレタン系合成樹脂またはビニルエステル系合成樹脂からなるバインダーの適量、および、樹脂重量の10ないし30%に相当するロックウールまたはグラスウールと共に十分混練され、それら扁平貝殻小片の扁平面間に加わる粘着力と扁平面に平行する方向の粘着力との差により、それら大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項11】
着底基盤および筒型保護壁からなる礁本体と遮光用天蓋、ならびに必要に応じて内装された棲息用定着棚の夫々を、貝殻を破砕、選別して直径または長径が1ないし8mm程度のもの、望ましくはその中5mm前後のもので過半数を占めるようにすると共に、夫々の輪郭全周に渡る周縁形状を滑らかに成形加工してなる扁平貝殻小片を50ないし85%、その他を30ないし70メッシュの粒度とした硅砂や破砕ガラス、天然鉱石粒など一種類または複数種類組み合せてなる低吸水性鉱物質粒状体とした混合物が、硬化剤及び硬化促進剤の添加された適宜合成樹脂、望ましくは脂肪族系変性ウレタン樹脂からなるバインダーの適量、および、樹脂重量の10ないし30%に相当するロックウールまたはグラスウールと共に十分混練され、それら扁平貝殻小片の扁平面間に加わる粘着力と扁平面に平行する方向の粘着力との差により、それら大半の扁平貝殻小片が、その扁平面を混練方向と同じかその方向に傾斜した姿勢のものもそれらに混在状としたものに揃えられ、各形状に圧縮、成型、固化してなる貝穀小片組成物から形成されてなるものとした、前記請求項1ないし5何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁。
【請求項12】
平板状の着底基盤の上面中央付近に、透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を脱着可能に立設、一体化してなる礁本体と、該礁本体筒型保護壁の上端面開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状とした遮光用天蓋とを、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設し、その後を追って投下された天蓋を、礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋、仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返し実施するようにした、前記請求項1ないし11何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁による底棲生物の養殖方法。
【請求項13】
所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設一体化してなる礁本体と、当該筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋とを、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、環金具に縄索類を繋いで繰り降ろし、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設して縄索類を解き、その後を追って環金具に縄索類を繋ぎ繰り降ろした天蓋を、該礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋し、投下用の縄索類を解き、着底基盤および天蓋の各環金具同士を、1本または複数本の縄索類を用いて繋ぎ仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に縄索類による仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返し実施するようにした、前記請求項1ないし11何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁による底棲生物の養殖方法。
【請求項14】
所定大きさの平板状で、その上面四隅付近にロープ繋着用の環金具を固着して着底基盤とし、その上面中央付近に、ポーラス素材製とした透水性ある周壁面の複数適所に点在状配置とした海流出入口を開口し、円筒状もしくは八角形以上の正多角形筒状に形成した筒型保護壁を、適宜連結金具によって脱着可能に立設一体化してなる礁本体と、当該筒型保護壁の礁内空間中に収容可能な寸法、形状の上下複数階層状とした棲息用定着棚、および筒型保護壁の上端開口部分を閉鎖状とし得る平面形状であって透水性平板状となし、その上面の1箇所または均衡する複数箇所にロープ繋着用の環金具を固着した遮光用天蓋を、夫々船舶に搭載して設置対象箇所の海上まで輸送し、環金具に縄索類を繋いで繰り降ろし、水中に没入した礁本体の着底基盤裏面を海底に接地させると共に、それと一体の筒型保護壁が自立するよう沈設して縄索類を解き、その後を追って適所に縄索類を繋ぎ、海中に降ろした棲息用定着棚を、当該該礁本体筒型保護壁の礁内空間中に収容、設置して縄索類を解き、それに続いて環金具に縄索類を繋ぎ繰り降ろした天蓋を、該礁本体筒型保護壁の上端開口に組み合わせて施蓋し、投下用の縄索類を解き、着底基盤および天蓋の各環金具同士を、1本または複数本の縄索類を用いて繋ぎ仮留めして外光を遮り、各海流出入口を通じて海流に伴うプランクトンやバクテリアの流入と排泄物の流出とを可能とするバリアフリー環境を築き、その培養環境の下、所定期間に渡り天然および/または人工孵化の種苗を管理棲息させ、収穫期に縄索類による仮留めを解いて天蓋を外し、筒型保護壁上端開口を通じて礁内空間に増殖した底棲動物を収穫し、再度施蓋仮留めして管理し、必要に応じて天然および/または人工孵化の種苗を礁内空間かあるいは礁近傍周辺に放流するという工程を繰り返し実施するようにした、前記請求項1ないし11何れか一項記載の天蓋付き底棲生物用養殖礁による底棲生物の養殖方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【公開番号】特開2007−75044(P2007−75044A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269249(P2005−269249)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(504193767)
【出願人】(505349965)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(504193767)
【出願人】(505349965)
【Fターム(参考)】
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