説明

天面開口式マルチパック

【課題】吊下状態での持ち運びに適した板紙製の天面開口式マルチパックを提供する。
【解決手段】上下2段に集積した缶を包み込む板紙製のマルチパックにおいて、前板2及び後板3からそれぞれ延出した天板4同士を天面中央部で貼り合わせ、その両側に把手穴8を形成し、前面板2からこれに繋がる内フラップ5の端縁にかけて、2本の切目線10に挟まれた直線帯状の引裂帯11を下段側の缶のやや上方で水平方向に設け、天板4に繋がる外フラップ6の後部に、内フラップ5との貼合部を切断する切目線12を入れ、引裂帯11を切除して、外フラップ6の切目線12を切断し、天板4を後方へ開くと、前面及び端面上部から天面全体が開口するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飲料等の缶を複数本纏めて包装するマルチパックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビール等の飲料缶の包装に使用する段ボール製ラップランドケースとして、下記特許文献1には、図4に示すようなものが記載されている。このラップランドケースは、複数本の缶Cを纏めて包み込むように底板50、前板51、後板52及び天板53を連設し、前板51及び後板52の端縁から延びる内フラップ54に、底板50及び天板53の端縁から延びる外フラップ55を貼り合わせて端面を閉止することにより封緘される。
【0003】
このラップラウンドケースでは、前板51の中央付近に設けた指入穴56から両端方向へV字状にジッパ形切目線57が入れられ、その両側の内フラップ54に切目線57に連続して端縁へ至るミシン目状切目線58が入れられ、また、上方の外フラップ55の後部に内フラップ54との貼合部を切断する切目線59が入れられている。
【0004】
これにより、指入穴56に指を入れ、前板51を手前に引っ張りつつ、前板51の切目線57を切断し、前板51の上部を引き上げて、前板51に繋がる両側の内フラップ54の切目線58を切断し、続いて、天板53に繋がる上方の外フラップ55の切目線59を切断し、天板53を後方へ開くと、前面及び端面上部から天面全体が開口して、ケース内から缶Cを取り出せるようになっている。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2601679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多数本の飲料缶を上下2段に集積して吊下状態で持ち運べるようにするため、上記のようなラップラウンドケースの天面に把手穴を形成した場合、その把手穴に指を入れて持ち運ぶ際、収納した缶の荷重により、把手穴の周辺で天板が破れたり、前面板やこれに繋がる内フラップが切目線に沿って裂けたりする恐れがある。
【0007】
そこで、この発明は、吊下状態での持ち運びに適した板紙製の天面開口式マルチパックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明は、上下2段に集積した缶を包み込むように底板、前板、後板及び天板を連設し、前板及び後板の端縁から延びる内フラップに、底板及び天板の端縁から延びる外フラップを貼り合わせて端面を閉止する板紙製のマルチパックにおいて、前板及び後板からそれぞれ天板を延出し、天面中央部で天板同士を貼り合わせ、その両側に把手穴を形成し、前面板からこれに繋がる内フラップの端縁にかけて、2本の切目線に挟まれた直線帯状の引裂帯を下段側の缶のやや上方で水平方向に設け、天板に繋がる外フラップの後部に、内フラップとの貼合部を切断する切目線を入れ、引裂帯を切除して、外フラップの切目線を切断し、天板を後方へ開くと、前面及び端面上部から天面全体が開口するようにしたのである。
【発明の効果】
【0009】
このマルチパックでは、把手穴に指を入れて持ち運ぶ際、収納した缶の荷重が作用しても、把手穴の間で天板が重なり合っているので、把手穴の周辺から天板が破れにくく、また、前面板の切断手段が水平な直線帯状の引裂帯となっているので、前面板やこれに繋がる内フラップが切目線に沿って裂ける現象も防止される。そのほか、開封したとき、上段側の缶が飛び出すこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
このマルチパックは、30本の飲料缶を上下2段に集積して包装するものであり、図1に示す板紙製ブランクから形成される。このブランクでは、底板1に前板2と後板3とが連設され、前板2及び後板3に天板4がそれぞれ連設されている。前板2及び後板3の端縁には内フラップ5が、底板1及び天板4の端縁には外フラップ6がそれぞれ連設され、後板3に繋がる天板4の外縁には折込片7が連設されている。
【0012】
各天板4には、外縁寄り中央部に把手穴8が形成され、この把手穴8から基端角へ向けて、吊下状態での持ち運び時に撓みを許容して把手穴8への指の挿入を容易にするため、斜め方向の罫線9が入れられている。
【0013】
前板2からこれに繋がる内フラップ5の端縁にかけては、2本のジッパ形切目線10に挟まれた直線帯状の引裂帯11が水平方向に設けられている。この引裂帯11は、包装状態で下段側の缶のやや上方に位置し、一方の内フラップ5の端部側を始端として引っ張ると、終端まで途切れることなく切断できるようになっている。また、後方の天板4に繋がる外フラップ6には、斜めに横切るミシン目状切目線12が入れられている。
【0014】
このようなブランクを組み立てて缶を包装するには、図2に示すように、缶を集積して載せた底板1から前板2及び後板3を起立させ、これらに繋がる天板4を、それぞれ後方及び前方へ折り曲げて天面中央部で貼り合わせると共に、各天板4に繋がる外フラップ6も貼り合わせ、折込片7を内側へ折り込んで、後方の天板4の内面に貼り付ける。
【0015】
続いて、内フラップ5及び外フラップ6を順次内側へ折り曲げて貼り合わせ、端面を閉止して封緘する。このとき、後部上方のフラップ6は、切目線12の外側の部分で内フラップ5に貼り付ける。
【0016】
上記のように包装した状態では、把手穴8に指を入れて持ち運ぶ際、収納した缶Cの荷重が作用しても、把手穴8の間で天板4が重なり合い、さらに折込片7で補強されているので、把手穴8の周辺から天板4が破れにくく、また、前面板2の切断手段が水平な直線帯状の引裂帯11となっているので、前面板2及びこれに繋がる内フラップ5が切目線10に沿って裂ける現象も防止される。
【0017】
一方、このマルチパックを開封する際には、引裂帯10を一方の内フラップ5から前面板2を経て他方の内フラップ5まで引っ張って切除し、生じた隙間に指を入れ、図3に示すように、切目線12を切断して、天板4を後方へ開く。
【0018】
このように開封すると、前面及び端面上部から天面全体が開口するので、缶Cを容易に取り出すことができ、前面板2及びその両側に繋がる内フラップ5が下段側の缶Cのやや上方で切断されているので、上段側の缶Cが飛び出すこともない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施形態に係るマルチパックのブランクを示す図
【図2】同上の包装状態を示す斜視図
【図3】同上の開封状態を示す斜視図
【図4】従来のラップラウンドケースの開封状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0020】
1 底板
2 前板
3 後板
4 天板
5 内フラップ
6 外フラップ
7 折込片
8 把手穴
9 罫線
10 切目線
11 引裂帯
12 切目線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下2段に集積した缶を包み込むように底板、前板、後板及び天板を連設し、前板及び後板の端縁から延びる内フラップに、底板及び天板の端縁から延びる外フラップを貼り合わせて端面を閉止する板紙製のマルチパックにおいて、前板及び後板からそれぞれ天板を延出し、天面中央部で天板同士を貼り合わせ、その両側に把手穴を形成し、前面板からこれに繋がる内フラップの端縁にかけて、2本の切目線に挟まれた直線帯状の引裂帯を下段側の缶のやや上方で水平方向に設け、天板に繋がる外フラップの後部に、内フラップとの貼合部を切断する切目線を入れ、引裂帯を切除して、外フラップの切目線を切断し、天板を後方へ開くと、前面及び端面上部から天面全体が開口するようにしたことを特徴とする天面開口式マルチパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−62686(P2006−62686A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245404(P2004−245404)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【出願人】(598177119)レンゴー・リバーウッド・パッケージング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】