説明

太陽光集光用ミラー及び太陽熱発電システム

【課題】簡素な構成であって、搬送や組立作業、交換等のメンテナンスがし易いにも関わらず、太陽光の集光効率が高い太陽光集光用ミラー及びそれを用いた太陽熱発電システムを提供する。
【解決手段】金属板PT1,PT2が塑性変形を生じるので、基板STの平面度(即ちフィルムミラーFMの平面度)はそのままに、ミラーの軸線に対して各基板STの傾いた状態が維持される。よって、太陽光集光用ミラーSLに太陽光Lが入射したときに、基板ST毎に出射方向が変化することなり、これにより集熱部に対して太陽光Lを効率的に集光させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光集光用ミラー及び太陽熱発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、天然ガス等の化石燃料エネルギーの代替エネルギーとして、自然エネルギーの利用が検討されている。その中でも、化石燃料の代替エネルギーとして最も安定しており、エネルギー量の多い太陽エネルギーが注目されている。
【0003】
しかしながら、太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを活用する観点からは、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、並びに(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であることが、問題となると考えられる。
【0004】
現在では、太陽電池の研究・開発が盛んに行われており、太陽光の利用効率も上昇してきているが、未だ十分な回収効率に達しているとは言い難い。
【0005】
一方、太陽光をエネルギーに変換する別方式として、太陽光をミラーで反射・集光して、得られた熱を媒体として発電する、太陽熱発電システムが注目されている。この方式を用いれば、得られた熱を蓄熱しておくことで昼夜を問わず発電が可能である上、長期的視野でみれば、発電効率は太陽電池より高いと考えられるため、太陽光を有効に利用できる。
【0006】
現在、太陽熱発電に用いられているミラーとして、ガラスを基材として利用したガラスミラーが用いられており、このようなガラスミラーを金属製の支持部材で支持することで、太陽光を集光させる為の反射体として用いている。しかし、大判のガラスミラーはガラス基材を薄くすると、設置の際に破損したり、強風による飛翔物により破損する問題があり、またガラス基材を厚くすると非常に重くなる為、設置の際の取り扱い性が困難であるとともに、輸送コストも多くなる。更に、太陽熱を効率よく集光させる為には、集光用の反射体を太陽の動きに追従させて駆動させる必要がある為、反射体の重量が大きいと駆動用電力の増大を招き、これにより自己消費電力量が大きくなる結果、発電効率を悪化させるという問題がある。そこで、ガラスミラーの代替として可撓性の基材(樹脂基材)上に光熱反射層を設けたフィルムミラーの使用が注目されている。
【0007】
ところで、フィルムミラー自体は薄く平面性が悪いため、アルミ等の金属基材上に貼り付けて太陽光集光用ミラーとして用いることが考えられる。しかるに、フィルムミラーを金属平板に貼り付けたとしても、平板上で波打ったりするので、これにより集光特性が悪化することが予想される。これに対し、特許文献1には、例えばパラボラ型に曲げて形成できるミラー構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/138087号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに、特許文献1のミラー構造は、無数に穴のあいた板状のスペーサの両側にメッシュ構造を設けて、その外側に光反射層を設けているため、スペーサを変形させることで光反射層を任意に曲げることはできるが、構成が複雑であり、安価に製造できないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、簡素な構成であって、搬送や組立作業、交換等のメンテナンスがし易いにも関わらず、太陽光の集光効率が高い太陽光集光用ミラー及びそれを用いた太陽熱発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の太陽光集光用ミラーは、
複数の基板と、
前記基板同士を傾き可能に接続する接続部と、
少なくとも前記基板上に設けられたフィルムミラーとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、前記フィルムミラーを前記基板に貼り付けるなどして、前記接続部により前記基板を傾けることによって、疑似凹面等を作成でき、簡素な構成でありながら、任意の集光位置に対して、前記フィルムミラーで反射した太陽光を集光させることができる。
【0013】
特に、太陽光線は完全な平行光ではなく、視野角0.52°〜0.54°に相当する角度範囲の傾きをもった光線である。よって、反射鏡から集熱部までの距離が数メートルと短い場合、この太陽光の視野角はほとんど無視できるが、タワー式太陽熱発電システムのように、反射鏡から集熱部までの距離が10m以上、または、50m以上と長くなる場合、平板に貼り付けたものの表面が波打ってしまった状態のフィルムミラーでは、集熱部の限られた面積の受光面外に反射光線が散乱してしまい、集光効率が低下してしまう恐れがある。これに対し本発明によれば、前記接続部により前記基板を傾けることで、反射光をより集熱部に集光することができるため、特に好適である。
【0014】
請求項2に記載の太陽光集光用ミラーは、請求項1に記載の発明において、前記基板は平板であることを特徴とする。これにより、前記フィルムミラーを貼り付けやすい。尚、基板が平板ではなく凹面形状のものも用いることができる。
【0015】
請求項3に記載の太陽光集光用ミラーは、請求項1又は2に記載の発明において、前記接続部は隣接する前記基板にまたがって設けられた塑性変形可能な板材であることを特徴とする。これにより前記基板を傾けた場合にも、前記接続部の平面性が殆ど変わらず、その上に前記フィルムミラーを貼り付けた場合にも、波打ち等を抑えることができる。「塑性変形」とは、変形後に形状が元に戻らず、変形後の形状を維持できる性質をいう。
【0016】
請求項4に記載の太陽光集光用ミラーは、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記フィルムミラーは、前記接続部を覆うようにして、隣接する前記基板にまたがって形成されていることを特徴とする。これにより、前記基板との間にまたがった前記フィルムミラーの部位も太陽光を反射することで接続部における集光効率のロスを防ぎ、更に集光効率を稼ぐことが可能になる。
【0017】
請求項5に記載の太陽光集光用ミラーは、請求項4に記載の発明において、前記フィルムミラーはハードコート層を有しないことを特徴とする。これにより前記フィルムミラーを曲げた場合にも、ハードコート層が剥がれるなどの問題を回避できる。但し、或る程度の可塑性を有するハードコート層であれば、ハードコート層を有するフィルムミラーであっても用いることは可能であるため、フィルムミラーが、接続部を覆うようにして、隣接する基板にまたがって形成されている場合であっても、ハードコート層を有するフィルムミラーの適用を全て排除するわけではない。
【0018】
請求項6に記載の太陽光集光用ミラーは、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記フィルムミラーは、前記接続部を覆わず、前記接続部が露出していることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の太陽光集光用ミラーは、請求項6に記載の発明において、前記フィルムミラーはハードコート層を有することを特徴とする。フィルムミラーが接続部で湾曲することがないため、ハードコート層の剥がれなどの問題が起きず、ハードコート層を有するフィルムミラーであっても好ましく用いることができる。
【0020】
請求項6に記載の太陽熱発電システムは、少なくとも1つの集熱部と、請求項1〜5のいずれかに記載の太陽光集光用ミラーとを有し、前記太陽光集光用ミラーは、太陽光を反射して前記集熱部に照射することを特徴とする。
【0021】
本発明の太陽光集光用ミラーは、複数の基板と、前記基板同士を傾き可能に接続する接続部と、少なくとも前記基板上に設けられたフィルムミラーとを有する。
【0022】
[フィルムミラー]
本発明のフィルムミラーについて説明する。「フィルムミラー」とは、フィルム状の樹脂基材に反射層を設けたフィルム状のミラーをいう。フィルムの厚さは、50〜400μmであり、好ましくは70〜250μmであり、特に好ましいのは100〜220μmである。厚さを50μm以上にすることにより、フィルムミラーを構造体に貼り付けた時に、ミラーがたわむことなく、良好な正反射率を得やすくなるため好ましい。また400μm以下にすることにより、取り扱い性が良好になるため好ましい。
【0023】
尚、フィルムミラーの表面から反射層までの厚さが、0.2mm以下であることが、タワー式太陽光発電システムに用いる太陽光集光用ミラーの反射部としては好ましい。その理由を以下に詳述する。
【0024】
タワー式太陽光発電システムのような反射部から集熱部までの距離が長いシステムにおいては、朝や夕方に、フィルムミラーに入射する太陽光の入射角が大きくなることがある。(例えば、45度以上)そのような場合、図8(b)に示すように表面層(フィルムミラーの表面から反射層の間にある層。1層でもよいし、複数層まとめて表面層と称してもよい。)が厚いと、以下のような問題が起きる。フィルムミラー表面にゴミ100が付着していた場合、ゴミ100の部分に入射する光Bは当然反射層102に到達せず、反射されないまたは散乱してしまい、集光効率には寄与しない。それに加えて、ゴミ100のない部分に入射する光Aも、表面層101内を透過し、反射層102で反射はされるのだが、入射角が大きいが故に、反射光がゴミ100でブロックされてしまい、集光効率に寄与しなくなってしまうという問題が発生する。それに対して、図8(a)に示すように表面層を0.2mm以下と薄くすると、集光効率の低下に寄与するのはゴミ100の部分に入射する光B´のみであり、図8(b)におけるAのような反射層で反射された光が集光効率の低下に寄与することを防止できる。従って、ゴミが付着した際の集光効率の低下を押さえることができるため好ましい。即ち、フィルムミラーの表面層を0.2mm以下と薄くすることにより、ゴミが表面に付着した際に、入射角が大きくても、光Aのような反射光の問題が発生せず、集光効率の低下を防止できるため好ましいのである。以下、フィルムミラーについて具体的に説明する。
【0025】
本発明の反射板に用いられるフィルムミラーは、可撓性の支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に設けられた光熱反射層を有する。
【0026】
(可撓性の支持体)
本発明の反射板に適用可能なフィルムミラーを構成する可撓性の支持体を構成する材料としては特に制限はないが、フレキシブル性や軽量化の点で、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、セルロース、ポリアミド等の樹脂が好ましく用いられる。また、可撓性を有する範囲であれば、支持体としてガラス材料を用いることも可能である。
【0027】
尚、本発明で「可撓性の支持体」という場合における「可撓性」とは、長さ1.5mの両端を支持しながら中央部を押し曲げた際に、5cm以上破損することなく屈曲が可能であれば、「可撓性」を有するものとする。但し、フィルムミラーをロール状に巻き取って運搬することを考慮すれば、同様の評価で10cm以上屈曲可能な支持体が好ましく用いられ、直径50cm程度の筒状部材に巻き取っても破損しない程度の可撓性を有することが特に好ましい。
【0028】
可撓性の支持体の厚さは、フィルムミラーとして求められる強度によって異なるが、概ね10〜125μmが好ましい。
【0029】
支持体表面には、面上に設けられる層等との密着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理等が施されていてもよい。
【0030】
また、支持体には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、ポリマー型の紫外線吸収剤のうちいずれかを含むことが好ましい。特に支持体の材料として樹脂が用いられる場合は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0031】
〈紫外線吸収剤〉
フィルムミラーの光入射側表面と光熱反射層との間の層に、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。更に、支持体に紫外線吸収剤を含有させてもよい。支持体に使用される紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ太陽光利用の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0033】
(アンカー層)
本発明で用いられるフィルムミラーでは、支持体と光熱反射層との接着性を高めることを目的として、アンカー層を形成してもよい。
【0034】
アンカー層は、光熱反射層と支持体との接着性を高める機能を有しているものであれば、特に限定はないが、樹脂からなることが好ましい。従って、アンカー層では、支持体と光熱反射層とを密着する高い密着性と、光熱反射層を真空蒸着法等で形成する時に付与する熱にも耐え得る高い耐熱性と、反射層が本来有する高い反射性能を引き出すための平滑性とを兼ね備えていることが要求される。
【0035】
本発明に係るアンカー層に使用する樹脂では、上記密着性、耐熱性及び平滑性の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。本発明において、アンカー層の厚さは、密着性、平滑性、反射層の反射率等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0036】
アンカー層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知の湿式コーティング方法が使用できる。
【0037】
(光熱反射層)
本発明に係る光熱反射層を構成する金属としては、例えば、銀または銀合金、その他、金、銅、アルミニウム、これらの合金も用いることができる。可視光領域における高い反射率を示すことから、特に、銀を使用することが好ましい。このような光熱反射層は、光及び熱を反射させる反射膜としての役割を果たす。光熱反射層を銀または銀合金からなる膜とすることにより、フィルムミラーの赤外域から可視光領域での反射率を高め、入射角による反射率の依存性を低減できる。赤外域から可視光領域とは、2500〜400nmの波長領域を意味する。入射角とは、膜面に対して垂直な線(法線)に対する角度を意味する。
【0038】
銀合金としては、光熱反射層の耐久性が向上する点から、銀と、金、パラジウム、スズ、ガリウム、インジウム、銅、チタンおよびビスマスからなる群から選ばれる1種以上の他の金属とからなる合金が好ましい。他の金属としては、高温耐湿性、反射率の点から、金が特に好ましい。
【0039】
光熱反射層が銀合金からなる膜である場合、銀は、反射層における銀と他の金属との合計(100原子%)中、90〜99.8原子%が好ましい。また、他の金属は、耐久性の点から0.2〜10原子%が好ましい。
【0040】
また、光熱反射層の膜厚は、60〜300nmが好ましく、80〜200nmが特に好ましい。反射層の膜厚が60nm未満では、膜厚が薄く、光を透過してしまうため、フィルムミラーの可視光領域での反射率が低下するおそれがある。200nm程度までは膜厚に比例して反射率も大きくなるが、200nm以上は膜厚に依存しない。むしろ光熱反射層の膜厚が300nmを超えると、光熱反射層の表面に凹凸が発生しやすくなり、これにより光の散乱が生じてしまい、可視光領域での反射率が低下するおそれがある。
【0041】
フィルムミラーには光沢が求められるが、金属箔を作製して接着する方法では表面凹凸があるために光沢を失う場合がある為、広い面積範囲で均一な表面粗さを求められるフィルムミラーでは、光熱反射層は、湿式法や乾式法で形成することが好ましい。
【0042】
湿式法とは、めっき法の総称であり、溶液から金属を析出させ膜を形成する方法である。具体例をあげるとすれば、銀鏡反応などがある。
【0043】
一方、乾式法とは、真空成膜法の総称であり、具体的に例示するとすれば、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法などがある。とりわけ、本発明には連続的に成膜するロールツーロール方式が可能な蒸着法が好ましく用いられる。すなわち、本発明に係るフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法としては、銀からなる反射層を銀蒸着によって形成する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。
【0044】
(腐食防止層)
本発明で用いられるフィルムミラーにおいて、光熱反射層の支持体から遠い側に隣接して腐食防止層を設けることができる。腐食防止層は、腐食防止剤を含み、光熱反射層を形成する金属、例えば、銀の腐食劣化を防ぐとともに、その上に形成する粘着層との接着力向上に寄与するものである。
【0045】
腐食防止層の形成に用いることのできる樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。
【0046】
腐食防止層の厚さは、密着性、耐候性等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0047】
腐食防止層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0048】
本発明に係る腐食防止層が含有する光熱反射層の腐食防止剤としては、大別して、銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤と酸化防止剤が好ましく用いられる。ここで、「腐食」とは、金属(銀)がそれをとり囲む環境物質によって、化学的または電気化学的に浸食されるか若しくは材質的に劣化する現象をいう(JIS Z0103−2004参照)。
【0049】
また、本発明に係るフィルムミラーにおいては、アンカー層が酸化防止剤を含有し、かつ腐食防止層が銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤を含有している態様も好ましい。
【0050】
なお、腐食防止剤の含有量は、使用する化合物によって最適量は異なるが、一般的には、0.1〜1.0g/m2の範囲内であることが好ましい。
【0051】
〈銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤〉
本発明に適用可能な銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤としては、アミン類およびその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する化合物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0052】
〈酸化防止剤〉
本発明に係る腐食防止層に用いられる光熱反射層の腐食防止剤としては、酸化防止剤を用いることもできる。
【0053】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤およびホスファイト系酸化防止剤を使用することが好ましい。
【0054】
(粘着層)
本発明で用いられるフィルムミラーにおいては、自己支持性の基材上にフィルムミラーを固定することを目的として、粘着層を設けることができる。
【0055】
粘着層としては、特に制限されず、例えば、ドライラミネート剤、ウェットラミネート剤、粘着剤、ヒートシール剤、ホットメルト剤等のいずれもが用いられる。例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴム等が用いられる。
【0056】
ラミネート方法は、特に制限されず、例えば、ロール式で連続的に行うのが経済性及び生産性の点から好ましい。
【0057】
粘着層の厚さは、粘着効果、乾燥速度等の観点から、通常1〜50μm程度の範囲であることが好ましい。
【0058】
また、本発明で用いられるフィルムミラーには、必要に応じて、下記の各層を形成することもできる。
【0059】
(ハードコート層)
本発明においては、フィルムミラーの最外層として、ハードコート層を設けることができる。このハードコート層は、フィルムミラー表面の傷つきや汚れの付着を防止する目的に設けられる。ハードコート層の厚みは、十分な耐傷性を得つつ、フィルムミラーにそりが発生するのを防止するという観点から、0.05μm以上、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは、1μm以上、10μm以下である。ハードコート層を形成する材料としては、透明性、耐候性、硬度、機械的強度等が得られるものであれば、特に限定されるものではない。ハードコート層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂などで構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
【0060】
活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーあるいは反応性希釈剤を含む組成物である。その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤等を含有しているものを用いてもよい。
【0061】
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得る。
【0062】
また、反応性希釈剤とは、塗工剤の媒体として塗工工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
【0063】
本発明において、ハードコート層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤および帯電防止剤などを用いることができる。
【0064】
レベリング剤は、特に、ハードコート層を塗工する際、表面凹凸低減に効果的である。レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤として、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば、東レダウコーニング(株)製SH190)が好適である。
【0065】
(ガスバリア層)
本発明に係るフィルムミラーにおいては、湿度の変動、特に高湿度によるフィルム基材及びフィルム基材で保護される各種機能層の劣化を防止することを目的として、ガスバリア層を設けることができる。
【0066】
本発明において、ガスバリア層の防湿性としては、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が、100g/m2・day/μm以下、好ましくは50g/m2・day/μm
以下、更に好ましくは20g/m2・day/μm以下となるようにガスバリア層の防湿
性を調整することが好ましい。また。酸素透過度としては、測定温度23℃、湿度90%RHの条件下で、0.6ml/m2/day/atm以下であることが好ましい。水蒸気
透過度は、例えば、MOCON社製の水蒸気透過度測定装置PERMATRAN−W3−33にて測定できる。
【0067】
本発明に適用可能なガスバリア層は、主には金属酸化物により形成されるが、金属酸化物からなるガスバリア層としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、または酸化珪素、酸化アルミニウムを出発材料とした複合酸化物、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化クロム等が挙げられ、特に水蒸気バリア性の観点から酸化珪素、酸化アルミニウム、または珪素、アルミニウムを出発材料とした複合酸化物が好ましい。これらは真空蒸着法、スパッタ法、イオンブレーティングなどのPVD法(物理蒸着法)、あるいは、CVD法(化学蒸着法)などの真空プロセスにより形成される。金属酸化物からなるガスバリア層の厚さは5〜800nmの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜300nmの範囲である。
【0068】
本発明において、フィルム基材上に酸化珪素層または酸化アルミニウム層、または酸化珪素、酸化アルミニウムを出発材料として形成した複合酸化物からなるガスバリア層は、酸素、二酸化炭素、空気などのガスまたは水蒸気に対する高いバリア作用に優れる。
【0069】
さらに、酸化珪素層または酸化アルミニウム層、または酸化珪素、酸化アルミニウムを出発材料とした複合酸化物層は、膜厚がそれぞれ1μm以下であり、それぞれの光線透過率の平均値は90%以上であることが好ましい。これによって、光損失がなく、太陽光を効率よく反射することができる。
【0070】
(犠牲防食層)
本発明に係るフィルムミラーには犠牲防食層を設けることができる。本発明でいう犠牲防食層とは、光熱反射層を犠牲防食により保護する層のことであり、犠牲防食層を光熱反射層と支持体との間に配置することにより、光熱反射層の耐食性を向上させることができる。本発明において、犠牲防食層としては、光熱反射層に好適に用いられる銀よりもイオン化傾向の高い銅が好ましく、銅の犠牲防食層は、銀から構成される反射層の下に設けることによって、銀の劣化を抑制することができる。
【0071】
[基板]
次いで、本発明に用いられる基板について説明する。「基板」は、フィルムミラーを支持する部材であって、好適にはフィルムミラーを貼り付け可能な平板であると好ましい。
【0072】
本発明の基板は自己支持性を有する。素材としては、樹脂製の平板であってもよいし、金属製の平板であってもよいが、以下のA及びBの何れかの構成を有すると好ましい。
【0073】
A:1対の金属平板と、該金属平板の間に設けられた中間層とを有し、該中間層は中空構造を有する層又は樹脂材料から構成される層である。例えば、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、不燃性無機フィラー混入樹脂等があげられる。
【0074】
B:中空構造を有する樹脂材料層からなる。
【0075】
本発明で「自己支持性」とは、基板として用いられる大きさに断裁された場合において、その対向する端縁部分を支持することで、基板を担持することが可能な程度の剛性を有することを表す。基板が自己支持性を有することで、太陽光集光用ミラーを設置する際に取り扱い性に優れるとともに、太陽光集光用ミラーを保持する為の保持部材を簡素な構成とすることが可能となる為、ミラーを軽量化することが可能となり、太陽追尾の際の消費電力を抑制することが可能となる。
【0076】
構成Aのように、基板を、1対の金属平板と、該金属平板の間に設けられた中間層からなる構成とし、中間層は中空構造を有する層か樹脂材料から構成される層とすることにより、金属平板による高い平面性を有するとともに、中間層が中空構造を有する層化、樹脂材料から構成される層とされていることにより、金属平板のみで基板を構成する場合に比べて、基板を大幅に軽量化することが可能となるとともに、比較的軽量な中間層により剛性を上げることができる為、軽量且つ自己支持性を有する支持体とすることが可能となる。中間層として樹脂材料から構成される層を用いる場合においても、中空構造を有する樹脂材料の層とすることで更に軽量化が可能である。また、中間層を中空構造とした場合には、中間層が断熱材としての機能を果たす為、裏面の金属平板の温度変化がフィルムミラーへ伝わることを抑制し、結露の防止や、熱による劣化を抑制することが可能となる。
【0077】
構成Aの表面層を形成する、金属平板としては、鋼板、銅板、アルミニウム板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム系合金めっき鋼板、銅めっき鋼板、錫めっき鋼板、クロムめっき鋼板、ステンレス鋼板など熱伝導率の高い金属材料が好ましく用いることができる。本発明においては、特に、耐腐食性の良好なめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板などにすることが好ましい。
【0078】
構成Aの中間層を中空構造とする場合、金属、無機材料(ガラス等)、樹脂等の素材を用いることができる。中空構造としては、発泡樹脂からなる気泡構造、金属、無機材料又は樹脂材料からなる壁面を有する立体構造(ハニカム構造等)や、中空微粒子を添加した樹脂材料等を用いることができる。発泡樹脂の気泡構造は、樹脂材料中にガスを細かく分散させ、発泡状または多孔質形状に形成されたものを指し、材料としては、公知の発泡樹脂材料を使用可能であるが、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン等が好ましく用いられる。ハニカム構造とは、空間が側壁で囲まれた複数の小空間で構成される立体構造全般を表すものとする。中空構造を樹脂材料からなる壁面を有する立体構造とする場合、壁面を構成する樹脂材料としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル誘導体、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン−ジエン類等のターポリマー、ABS樹脂、ポリオレフィンオキサイド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。なお、これらは一種類を単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。特に、熱可塑性樹脂のなかでもオレフィン系樹脂またはオレフィン系樹脂を主体にした樹脂、ポリプロピレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を主体にした樹脂が、機械的強度および成形性のバランスに優れている点で好ましい。樹脂材料には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
【0079】
また、中間層を樹脂プレートからなる層とすることも可能であり、この場合に中間層を構成する樹脂材料としては、前述のフィルムミラーの支持体を構成する材料と同様のものを好ましく用いることができる。
【0080】
中間層は、基板の全ての領域に設けられる必要はなく、金属平板の平面性及び基板としての自己支持性を担保できる範囲であれば、一部の領域に設けられていてもよい。中間層を上述の立体構造とする場合、金属平板の面積に対して、90〜95%程度の領域に立体構造を設けることが好ましく、発泡樹脂を用いる場合は、30〜40%程度の領域に設けることが好ましい。
【0081】
上記の構成Bのように、基板を、中空構造を有する樹脂材料からなる層とすることも可能である。基板を樹脂のみからなる層とした場合、自己支持性を持たせる程度の剛性を得る為に必要な厚みが大きくなり、結果として基板の重量が重くなるが、樹脂基材に中空構造を持たせることにより、自己支持性を持たせながら軽量化が可能となる。中空構造を有する樹脂材料からなる層とする場合、表面層として平滑な面を有する樹脂シートを設け、中空構造を有する樹脂材料を中間層として用いることが、フィルムミラーの正反射率を高める観点で好ましい。この樹脂シートの材料としては、前述のフィルムミラーの支持体を構成する材料と同様のものを好ましく用いることができ、中空構造を構成する樹脂材料としては、上述の発泡材料や、立体構造に用いられるものと同様の樹脂材料を好ましく用いることができる。
【0082】
[接続部]
「接続部」は、前記基板同士を接続する部材をいうが、1枚の金属の板材を複数の基板にわたって取り付けたような場合、基板間にまたがる部分を接続部と定義する。接続部の素材としては、鋼板、銅板、アルミニウム板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム系合金めっき鋼板、銅めっき鋼板、錫めっき鋼板、クロムめっき鋼板、ステンレス鋼板など熱伝導率の高い金属材料が好ましく用いることができる。本発明においては、特に、耐腐食性の良好なめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板などにすることが好ましい。基板のみならず、接続部の表面にもフィルムミラーが設けられると好ましい。また、接続部を、可塑性の樹脂やゴム又はシリコーンやシリコーンゴムによって構成してもよい。
【0083】
基板もしくは接続部の表面にフィルムミラーを設ける場合、両者の間に樹脂塗装層を設けると好ましい。樹脂塗装層は、ポリエステル系塗装、フッ素系塗装が好ましい。
【0084】
[保持部材]
本発明の太陽熱発電システムにおいては、更に、上述の太陽光集光用ミラーを、太陽を追尾可能な状態で保持する保持部材が設けられると好ましい。保持部材の形態としては、特に制限はなく、ミラーが所望の形状を保持できるように、複数個所を棒状の保持部材により、保持する形態が好ましい。保持部材は太陽を追尾可能な状態でミラーを保持する構成を有するが、太陽追尾に際しては、手動で駆動させてもよいし、別途駆動装置を設けて自動的に太陽を追尾する構成としてもよいが、本願発明の太陽熱発電システムによれば、ミラーが軽量化されている為、太陽追尾時の消費電力を抑制することが可能である為、駆動装置を設けて自動追尾する構成が好ましい。
【発明の効果】
【0085】
本発明によれば、簡素な構成であって、搬送や組立作業、交換等のメンテナンスがし易いにも関わらず、太陽光の集光効率が高い太陽光集光用ミラー及びそれを用いた太陽熱発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明にかかる太陽光集光用ミラーを用いた太陽熱発電システムの斜視図である。
【図2】太陽熱発電光システムを側方から見た図である。
【図3】太陽光集光用ミラーSLの分解図である。
【図4】太陽光集光用ミラーSLの変形前の断面図である。
【図5】太陽光集光用ミラーSLの変形後の斜視図である。
【図6】変形例にかかる基板を示す図である。
【図7】トラフ型の太陽光集熱システムに用いる太陽光集光用ミラーSLの斜視図である。
【図8】フィルムミラーの表面層が厚い場合にゴミが付着した様子(a)、フィルムミラーの表面層が薄い場合にゴミが付着した様子(b)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。図1は、本発明にかかる太陽光集光用ミラーを用いた太陽熱発電システムの斜視図である。図2は、かかる太陽熱発電光システムを側方から見た図である。ここでは、ビームダウン式の太陽熱発電光システムを説明するが、タワートップ式の太陽熱発電光システムにも適用できる。
【0088】
図1において、比較的大径の集光鏡11は、複数枚のミラーを楕円形状に沿って組み合わせてなり、3本の支持タワー12により所定の高さ位置に、反射面を下向き状態にして保持されている。集光鏡11の下方には、太陽光Lを熱エネルギーに変換するための集熱部14を有する熱交換施設13が建設されている。そして、支持タワー12の周囲の地上には、支持タワー12を取り囲んだ状態で、多数のヘリオスタット15が設けられている。集光鏡11には、最大入射放射照度5kW/m2以上の光が入射するようになっている。
【0089】
図2において、各ヘリオスタット15は、地面に植設された柱部PLと、柱部PLの上端に取り付けられた太陽光集光用ミラーSLとからなる。柱部PLは、不図示のアクチュエータによって軸線回りに回動可能であり、且つ太陽光集光用ミラーSLは、柱部PLに対して不図示のアクチュエータにより仰角を変更可能となっている。尚、最も熱交換器に近い太陽光集光用ミラーSLの距離は、光路長で10m以上である。
【0090】
図3は、太陽光集光用ミラーSLの分解図である。図4は、太陽光集光用ミラーSLの変形前の断面図である。図5は、太陽光集光用ミラーSLの変形後の斜視図である。図3,4に示すように、太陽光集光用ミラーSLは、複数(ここでは4枚)の矩形平行平板である基板ST同士の間隔をあけ、更に基板STの上下面に、矩形板状の金属板PT1,PT2を接着し、上方の金属板PT1上に樹脂塗装層CTを形成した上で、フィルムミラーFMを貼り付けてなる。フィルムミラーFMの平面度は、基板ST及び金属板PT1の平面度により高く維持される。尚、下方の金属板PT2の下面は、保持部材としての柱部PLの上端に溶接等により接合される。
【0091】
その後、太陽光集光用ミラーSLは、四隅を持ち上げるように押圧されて、各基板STがミラーの軸線を向くように変形する(図5)。このとき、金属板PT1,PT2が塑性変形を生じるので、基板STの平面度(即ちフィルムミラーFMの平面度)はそのままに、ミラーの軸線Xに対して各基板STの傾いた状態が維持される。よって、太陽光集光用ミラーSLに太陽光Lが入射したときに、基板ST毎に出射方向が変化することなり、これにより集熱部に対して太陽光Lを効率的に集光させることができる。本実施の形態によれば、金属板PT1の全体に(接続部にまたがるようにして)フィルムミラーFMを設けたので、高い反射効率を確保できる。
【0092】
尚、基板ST同士を傾ける前に、基板ST間に間隔を設けないこともできる。かかる場合、基板ST同士を傾けることで、断面三角状のスキマが生じることになるが、金属板PT1の塑性変形に起因するフィルムミラーFMの皺等を考慮すると、予め基板ST間に間隔を設けた方が好ましい。例えば基板ST間に間隔を設けない場合、接続部をのぞいて基板ST上にのみフィルムミラーFMを設けると良い。又、フィルムミラーFMと反対側の金属板PT2は必ずしも設ける必要はない。
【0093】
図6は、変形例にかかる基板の斜視図である。基板STの数及び並べ方は任意であって、例えば図6(a)に示すように3行4列に並べることもできる。又、基板STの形状も任意であって、例えば図6(a)に示すように、三角形の基板STを組み合わせても良い。
【0094】
又、図6(c)に示すように、基板STを開き角の小さな扇状に形成すれば、これを円状に組み合わせた後、金属板及びフィルムミラーを取り付けて円中心を押すように変形させることで、図6(d)に示すように、パラボラ状又は円錐状の太陽光集光ミラーSLを得ることができる。これにより、更に反射効率を向上できる。
【0095】
図7は、別な実施の形態を示す図である。図7(a)に示すように、細長い矩形板状の基板STを一列に並べ、金属板PT1、PT2及びフィルムミラーFMを貼り付けた後、列の両端を持ち上げるように変形させることで、図7(b)に示すように、樋状(略半円管状)の太陽光集光ミラーSLを得ることができる。このような太陽光集光ミラーSLは、集熱部までの距離が10m未満と短い、いわゆるトラフ型の太陽熱集光システムにおいて、蓄熱媒体を流すチューブTBに太陽光を集光させるために用いると好適である。トラフ型の太陽熱集光システムについては、特開2008-232524号公報に開示されている。
【符号の説明】
【0096】
11 集光鏡
12 支持タワー
13 熱交換施設
14 集光鏡
15 ヘリオスタット
CT 樹脂塗装層
FM フィルムミラー
L 太陽光
PL 柱部
PT1,PT2 金属板
SL 太陽光集光用ミラー
ST 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板と、
前記基板同士を傾き可能に接続する接続部と、
少なくとも前記基板上に設けられたフィルムミラーとを有することを特徴とする太陽光集光用ミラー。
【請求項2】
前記基板は平板であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光集光用ミラー。
【請求項3】
前記接続部は隣接する前記基板にまたがって設けられた塑性変形可能な板材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽光集光用ミラー。
【請求項4】
前記フィルムミラーは、前記接続部を覆うようにして、隣接する前記基板にまたがって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽光集光用ミラー。
【請求項5】
前記フィルムミラーはハードコート層を有しないことを特徴とする請求項4に記載の太陽光集光用ミラー。
【請求項6】
前記フィルムミラーは、前記接続部を覆わず、前記接続部が露出していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の太陽光集光用ミラー。
【請求項7】
前記フィルムミラーはハードコート層を有することを特徴とする請求項6に記載の太陽光集光用ミラー。
【請求項8】
太陽熱発電システムであって、
少なくとも1つの集熱部と、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽光集光用ミラーとを有し、前記太陽光集光用ミラーは、太陽光を反射して前記集熱部に照射することを特徴とする太陽熱発電システム。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−255981(P2012−255981A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130061(P2011−130061)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】