説明

太陽熱温水器

【課題】構造が簡単で部品数が少なく安価に製造でき、しかも集熱性能の高い太陽熱温水器の集熱器を提供する。また、美的感覚に優れ、安全性が高く、設置が容易な太陽熱温水器の貯湯槽を提供する。
【解決手段】ひとつの集熱器は、受熱室及び流路を金型成型した発泡スチロール等の底基板に、樹脂等のシート材で蓋をし、該底基板とシート材をその四周で水圧に耐えるよう部材で挟持し、水圧で脹れ上がる該底基板とシート材を梁部材で抑制する。別の集熱器2は、受熱室及び流路を金型成型した発泡スチロール等の底基板に、樹脂等のシート材で蓋をし、接着剤で組み立てる。水圧の高い部分では接着箇所を密に配することで水圧を分散し耐える。また、該保温容器を大幅な上げ底にすることで脚部を形成し、傾斜した屋根の上に設置する際、該脚部を所望の寸法に切断することで、別途架台を必要としない安価な貯湯槽3ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱温水器に関するもので、より詳しくは、集熱器の構造に関するものと、屋外とりわけ傾いた屋根に取付ける貯湯槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、貯湯槽とパネル状の集熱器を有し、集熱器に照射された太陽熱により、集熱器内部にある受熱室で水を加熱しつつ、貯湯槽と集熱器の間で水を循環させる太陽熱温水器がある。しかし、実用化されている太陽熱温水器は、受熱室に金属やガラスの管または、2枚の金属薄板に凹凸の水路を形成し接合したものを採用している。このため集熱器、ひいては太陽熱温水器全体の構造が複雑化、堅ろう化し、コストが高くなっている。
【0003】
受熱室を管や金属板の接合体で作られる理由を考察する。
そもそも、太陽熱温水器の原点は洗面器に水を汲み置き、照りつける太陽光の下に放置することにある。水泳用のプールは箱形で空間を有効に利用する意味で理想的である。受熱室の理想は箱型の直方体といえる。
【0004】
プールは温水器として二つの欠点がある。第一の欠点は放熱の問題である。加熱された温水が最も表面に集まり、熱を受ける一方で放熱する。また、昼間暖められた温水が、夜間には極めて効率的に冷却される。この問題は保温用蓋をつけることがひとつの解決策となる。特許文献1は箱に蓋を付けただけの太陽熱温水器が開示されている。また貯湯槽と集熱器を隔て、集熱器で温めた温水を貯湯槽に循環し保温することが有効である。
【0005】
プールの第二の欠点は受熱効率の問題である。プールでは水面が水平で太陽光線に正対できない。地球上の北緯35度に存在する日本では、水平から約35度傾けた面で太陽光を受けると最も効率が良い。水平では受熱量が半減する。また、ポンプを使用しないで温水を貯湯槽に循環するためには温水を対流させる必要があり、受熱室内の水にしかるべき高低差を与えなければならない。この意味からも受熱室は傾けて設置するのが望ましい。
受熱室を傾けると、受熱室の最深部ではかなり大きな水圧が働く。風呂に温水を1回供給するには横1m、縦2mほどの受光面積が必要で、35度も傾けると、最大水圧は0.1気圧以上、総圧力では軽く1トンを超える。容器に単純な蓋をしたのでは水が噴き出してしまう。蓋を接着したとしても、水圧により蓋は大きく湾曲する。湾曲すると接着剤の局部に応力が集中し、受熱室は極めて簡単に破壊される。
【0006】
特許文献2は、受熱室をガラスや樹脂の管形状とし、水圧に耐える構成としている。また、特許文献3は、2枚の金属薄板をプレス加工で水路の凹凸を形成し、向かい合わせに接合したものを受熱室としている。受熱室を水路に細分化し、管と同じ効果を狙っている。特許文献4は受熱室をホースやチューブにしている。このように、受熱室の構造は全て水圧に耐えるための対策と考えられる。反面、これらの対策が太陽熱温水器を複雑化、大型化、高価なものにしている。更に管構造にすることで受光面が減少し、非効率な熱変換器となっている。
【0007】
以上の考察より、箱型の受熱室に適切な水圧対策が施されれば理想的な集熱器を実現できる。
【0008】
特許文献5は箱型の容器を熱伝導を抑制したガラス板で蓋をする単純な受熱室を開示している。しかし、放熱にのみ配慮し、水圧にはまったく配慮していない。特許文献6は箱型の容器をプラスチック板で蓋をする単純な受熱室を開示している。本案に最も近い受熱室である。しかし、これも水圧にはまったく配慮せず、実用化には至っていない。
【0009】
特許文献7のように貯湯槽に関しても多数の提案がなされている。従来の太陽熱温水器は、特許文献8に見られるように、家屋の傾斜した屋根に設置され、集熱部と貯湯部を一体化しているものが多い。屋根の上に設置してあるが故に、破損や落下に対する配慮が必要で、堅ろうな構造が当然と考えられている。このため、全ての太陽熱温水器は金属のカバーを施している。堅ろう化の結果、特許文献9で見られるように多くの太陽熱温水器が架台を必要としている。さらに、金属でカバーするがため、建築物のような形状にしたものは無い。ただ、特許文献10で見られるように、美観の目的で建築物の覆いをしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公昭36−15183
【特許文献2】特公昭37−9135
【特許文献3】実開昭51−39247
【特許文献4】実開昭60−14463
【特許文献5】特開2005−265251
【特許文献6】実公昭38−23674
【特許文献7】実公昭45−2384
【特許文献8】特公昭62−13584
【特許文献9】特開平10−2622
【特許文献10】実開昭60−133366
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本案は、断熱素材を金型で成型した箱型容器に、透明樹脂等の平板で蓋をすることで箱型の受熱室を形成し、水圧対策を加えることで、シンプルで安価な集熱器を実現することを目指している。さらに、断熱素材を金型で保温容器および保温蓋に成型することで、建造物の一部に見える形状および色彩の貯湯槽を実現し、美観を高めた太陽熱温水器を提供することである。さらに、大幅な軽量化を実現することで、架台等を必要とせず、設置が容易な太陽熱温水器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本案請求項1に関わる集熱器は、発泡スチロール等保温性に優れ熱可塑性の原材料で、中央に長方形で浅い凹みのある底基板を成型する。該凹みに蓋をすることで閉じた空間、つまり受熱室を形成する。蓋は保温性、透光性に優れた樹脂等のシートが好ましい。シール材として接合面に接着剤を切れ目無く塗布する。底基板と蓋を重ね合わせた後、底基板と蓋の組立体の四周を挟持部材で挟圧する。前記左辺の挟持部材と右辺の挟持部材の間に複数の矯正梁を差し渡し、ねじで固定する。底基板側にも矯正梁を配置する。
【0013】
本案の請求項2に関わる集熱器は、水圧を抑え込むための挟持部材と矯正梁を利用しない。底基板と蓋を張り合わせる接着剤だけで水圧に耐える。そのため受熱室を接着面で細分化し、圧力を分散する構造とする。具体的には、中央に長方形で浅い凹みのある底基板を成型する。凹み自身は長方形であるが、凹みの中に複数の接着用凸部(直線)を残す。接着用凸部と凹みの外周に接着剤を塗布する。凹みの外周には接着剤を切れ目無く塗布する。シート材の蓋を接着することで集熱器は完成する。
【0014】
本案の請求項3に関わる貯湯槽の保温容器は、発泡スチロール等保温性に優れた材料を金型で成型する。保温容器の底よりも下に脚部分を長く形成する。この脚を屋根の傾斜にあわせて切断することで、傾斜のある屋根に特別な架台なしに設置できる。貯湯槽の保温容器の蓋は、発泡スチロール等保温性に優れた材料を金型で屋根等に似せ成型する。保温容器の外面に窓の絵などをペイントすると更に建築物の一部らしく見える。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成した貯湯槽と集熱器は非常にシンプルで、熱変換効率に優れ、美観に優れ、軽量である。貯湯槽の脚部を屋根の傾斜にあわせ切断するので、特別な架台の必要も無く、針金を使って四方に張架するだけでよい。したがって設置工事も簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に関わる太陽熱温水器の代表実施例
【図2】実施例1の集熱器の斜視図
【図3】実施例1の集熱器の分解・斜視図
【図4】実施例1の挟持部材を示す斜視図
【図5】実施例1の矯正梁を示す斜視図
【図6】実施例2の集熱器の分解・斜視図
【図7】実施例2の背面を示す斜視図
【図8】接着剤の濡れ性と塗布量の比較をする断面図
【図9】実施例3の貯湯槽の分解図
【図10】実施例3の貯湯槽の底面図
【実施例】
【0017】
図1は本案の代表実施例である。屋根の上に貯湯槽3が針金8に張架され設置されている。また、集熱器2が同じく針金8に張架され、貯湯槽3より低い位置に設置されている。貯湯槽3は給水ホース4で市水を供給され、貯留する。貯湯槽3は冷水を供給するチューブ6及び温水を回収するチューブ7で集熱器2と連通している。貯湯槽3に貯留された水は自然循環し温められる。貯湯槽3には採湯ホース5が接続され、求めに応じ温水を湯船に供給する。
【0018】
前記貯湯槽3は請求項3に関わる実施例で、実施例3として解説する。前記集熱器2は請求項2に関わる実施例で、実施例2として解説する。因みに、実施例1は請求項1に関わる集熱器の実施例であり、図2にこれを示す。実施例1は実施例2と同等の機能を備えており、入れ替えることができる。
【0019】
代表実施例は自然循環型であり、貯湯槽と集熱器を分離したタイプであるが、実施例1および実施例2の集熱器は、自然循環型でも強制循環型でも、更には水以外の熱媒を利用する太陽熱温水器にも適用できる。また、貯湯槽と集熱器が別体の太陽熱温水器でも、一体的に組み立てられたタイプでも適用できる。実施例3の貯湯槽は実施例2の集熱器と共に使用されているが、どんなタイプの集熱器と組み合わせても適用できる。
【0020】
代表実施例として実施例2を示したが、本案をより理解できるよう、実施例1から解説する。図2は実施例1、つまり請求項1に関わる集熱器1の外観である。集熱器1の四周には挟持部材13があり、左右の挟持部材13の間に差し渡した複数の矯正梁16がある。冷水を供給するチューブ6及び温水を回収するチューブ7の位置が実施例2とは異なっている。
【0021】
図3は内部構造を説明するため図2を分解した図である。解説の都合で挟持部材13と矯正梁16は表記していない。底基板11は発泡スチロールを金型で成型したもので、およそ縦2.02m、横1.02、厚さ0.1mの薄い直方体である。蓋12は縦2m、横1m、厚さ3mmの透明な樹脂シートである。市販のシート材を裁断することなく、そのまま使用している。底基板11の中央には周囲より一段低くなった圧接面11aがある。圧接面11aは基本的に幅10mmの帯状で、縦2m、横1mの四角い枠形をしており、周囲より2.5mm低くなっている。圧接面11aには図示しない接着剤を切れ目無く塗布し底基板11と蓋12を重ね合わせ接着する。接着剤はシール効果を期待して使用する。
【0022】
実施例1では冷水を供給するチューブ6を蓋12の上部左端に連結した。効果的な対流を起こすには冷水を周囲の温水と混ぜることなく、受熱室11bの最深部に導く必要がある。本来、圧接面11aより内側には直ちに受熱室11bが形成されるべきであるが、底基板11の左辺だけは圧接面11aを幅広にし、左辺の溝11cを掘る。左辺の溝11cは幅15mm深さ15mmの溝である。左辺の溝11cは受熱室11bの最深部まで続き、下辺の溝11dにつながる。下辺の溝11dは幅15mm深さ15mmの溝である。水は下辺の溝11dで受熱室11bの幅いっぱいに開き、受熱室11bを上昇する。受熱室11bの上辺には上辺の溝11eが深さ15mm幅15mmで『へ』の字に掘られている。『へ』の字の効果で温水は温水の通過穴12bの近傍に集まる。
【0023】
図4は実施例1の一部を斜視図にし、分解したものである。この図を使って水圧に耐える構造を説明する。底基板11と蓋12は重ね合わせられている。蓋12は底基板11より僅かに高くなっている。挟持部材13は断面C形のチャンネル材である。底基板11と蓋12をその四周で挟圧する。4本の挟持部材13はコーナー金具14とねじ15で結合する。4本の挟持部材13の作用で受熱室の四周に働く水圧を抑え込むことができる。
【0024】
四周に働く圧力を抑えたとしても、蓋12や底基板11の中央部は水圧で脹らむ。これを抑えるため更なる工夫が必要である。図5は蓋12中央部の脹らみを抑える構造を解説している。左辺の挟持部材13aから右辺の挟持部材13bに複数の矯正梁16を差し渡し、ねじ15で締結する。矯正梁16は蓋12側だけでなく、底基板11側にもある。矯正梁16は水圧が働かない状態ではチャンネル材の材厚分だけ隙間があるが、水圧で蓋12または底基板11が材厚分を超えて脹れたときには、当接し脹らみを抑える働きがある。
【0025】
実施例1の変形例を列挙する。
【0026】
実施例1では蓋12の上部左端には冷水の通過穴12aを設けた。この穴は管用テーパーねじになっている。この穴には配管プラグ17がねじ込まれ、更に冷水を供給するチューブ6がつながれている。蓋12の上部中央には温水の通過穴12bが開いている。この穴は管用テーパーねじになっている。この穴には配管プラグ17がねじ込まれ、更に温水を回収するチューブ7がつながれている。冷水の通過穴12aを集熱器の左上に配置したが、この位置は左上に限られるものではない。冷水の通過穴12aを集熱器の下辺に配置したほうが、底基板11の構造が簡単になる。また、冷水の通過穴12aおよびを温水の通過穴12bを集熱器の蓋12に設けたが、底基板11に設けても良い。むしろ底基板11に設けたほうが金型で細工しやすい利点がある。集熱器の分解・組立性を考慮し配管プラグ17を使用したが、配管プラグ17は必ずしも必要なものではない。
【0027】
受熱室11bの面は太陽光を吸収し熱に変換する。発泡スチロール原料の染料を替えることで、変換効率を高めることができる。見た目の問題で高変換率の染料を使用できない場合は、受熱室11bに塗料を塗ることで変換効率を改善できる。
【0028】
実施例1の底基板11には左辺の溝11cがあるが、この溝は冷水が導かれる穴の位置に依存し、必ずしも必要なものではない。また、下辺の溝11dは冷水が受熱室11bの幅いっぱいに開く助けをしている。助けであり必ずしも必要なものではない。上辺の溝11eの機能は、温水を温水の通過穴12b近傍に集めることであり、必要不可欠のものではない。
前述のように底基板11の圧接面11aが周囲より一段低くなっている。この段差は蓋12を組立てる際のガイドの働きであるが、必ずしも必要ではない。無いほうが返って底基板11を小さくできる。
【0029】
前述の接着剤は水漏れ防止のパッキングの機能である。接着剤の代わりにゴム製パッキングを使用してもよい。また底基板にパッキングの機能を果たす部位を形成すればゴム製パッキングも必要ない。
【0030】
前述の挟持部材13は市販のアルミ製C形チャンネル材を使っている。C形は挟み込むための最低の条件であり、挟み込めればI形でもその他の特殊形状でも構わない。また、材質がアルミである必然性も無い。
【0031】
前述のコーナー金具14は集熱器1の四隅で同じものを使用できる形状にしてある。その為ねじを使わない穴がある。このねじを使わない穴は、集熱器を屋根の上に設置する際の張架用の針金8を係止する穴として用いる。穴ではなく切り欠きのほうが便利かもしれない。挟持部材13の形状を工夫すればコーナー金具14自身が不要になる。
【0032】
前述のねじは、前記チャンネル材がアルミ製なので、セルフタップのねじを使用できる。前述の矯正梁16は市販のアルミフレームを使用したが、断面2次モーメントが大きく、軽量であればどんな材質、どんな形状でもかまわない。また、矯正梁の本数、矯正梁を何処に配置するかは、個々の設計に依存し一律に定められるものではない。矯正梁をねじ15で固着したが、矯正梁と前記チャンネル材13の断面形状を工夫すれば、必ずしもねじを使用する必要は無い。
【0033】
図6は実施例2、つまり請求項2に関わる集熱器2を斜視図にし、分解したものである。集熱器2は底基板21と蓋22、および図示していないが、両者を接合する接着剤からなっている。
【0034】
底基板21は発泡スチロールを金型で成型したもので、およそ縦2m、横1m、厚さ0.1mの薄い直方体である。底基板21の左側面上部には冷水の通過穴21cがあり、冷水を供給するチューブ6が図示しない接着剤を塗布したうえで、差し込まれている。冷水の通過穴21cは左辺の溝21eに連通している。左辺の溝21eは幅約15mm、深さ約15mmで接着面21aに掘られた縦長の溝である。つまり、溝は受熱室から隔離されている。左辺の溝21eは下辺の溝21fまで延びている。左辺の溝21eは冷水の通過穴21cを連通させるため、溝の上部だけ深くなっている。冷水はこの溝を伝って最も深い部分、つまり下辺の溝21fまで下る。下辺の溝21fは幅15mm深さ15mmの水平の溝である。冷水はこの溝を伝い受熱室21bの幅一杯に広がる。下辺の溝21fは受熱室21bへつながっている。受熱室21bには複数の接着用凸部21hが形成されている。接着用凸部21hは縦長リブの形状である。長いものも短いものもある。接着用凸部21hの高さは全て接着面21aに等しい。接着用凸部21hは蓋22を底基板21に接着する際、同時に接着する。下辺の溝21fで横に広がった冷水は、複数の接着用凸部21hの間を通って上昇する。凸部と凸部の間隔は受熱室の深い方が狭くなっている。つまり、水圧が高いところでは受熱室21bを細分化し、圧力を分散させ接着が破壊されないようにしている。水が上昇し水圧が減少するに従って凸部と凸部の間隔は広がり、やがて上辺の溝21gに到達する。上辺の溝21gは幅15mm深さ15mmの溝である。実施例では左上がりに傾いている。温水を温水の通過穴21dに集める作用がある。上辺の溝21gの左端は更に一段深くなっており、底基板21の左側面に開けた温水の通過穴21dに連通している。温水の通過穴21dには図示しない接着剤を塗布したうえで温水を回収するチューブ7が差し込まれている。
【0035】
蓋22は縦2m、横1m、厚さ3mmの透明な樹脂シートである。市販のシート材を裁断することなく、そのまま使用している。蓋22の四隅に穴22aが開いている。穴22aはハトメ23で補強されている。この穴には集熱器2を屋根の上に張架する際の針金8を固着する。ハトメ23を使用した目的は、針金8が穴22aを破壊するのを防止することにある。また、蓋22の上面には遮光ペイント22bが施されている。遮光ペイント22bは接着剤と同じパターンで塗られている。一般的に接着剤は紫外線に弱く、これを保護する狙いがある。
【0036】
図7は実施例2の裏側を見たものである。4箇所に脚取付け穴21jが凹んでいる。このうち2箇所には集熱器の傾斜調整脚24が挿入され接着剤で固定されている。集熱器の傾斜調整脚24は発泡スチロール製で、元々は直方体をしている。集熱器2を設置する際に適切に切断し、屋根の傾斜に対し調整を行うものである。
【0037】
実施例2の変形例を列挙する。
【0038】
底基板21の材質は発泡スチロールに限定されない。例えば樹脂で外カバーを別途作成し、このカバーを保温材の金型に組み込んだ後、保温材を流し込んで底基板21を成型しても請求項2を回避できるものではない。また例えば、樹脂など発泡スチロールより保温性に劣る材料で底基板21を成型しても請求項2を回避できるものではない。また、薄い直方体の発泡スチロール等の素材を準備し、切削加工その他で、流路や受熱室を形成したものも請求項2を回避できるものではない。
【0039】
底基板21の最も高い面は接着面21aであるが、実施例1で述べたガイドとなる段を形成しても良い。冷水の通過穴と温水の通過穴は不可欠なものではあるが、底基板21の側面にある必要は無い。背面にあったほうが金型の構造が簡単である。また、実施例1で述べたように蓋22にあっても良い。左辺の溝21eは冷水の通過穴と関連があり、必ずしも必要なものではない。穴を開ける部品や場所を変えると、上辺、下辺、左辺の溝はさまざまな形状に変化する。極端な話ではあるが、全ての溝をなくし受熱室と接着用凸部だけにすることも可能である。実施例2では接着用凸部21hの長さに変化を付けているが、全ての凸部の長さを下辺の溝21fから上辺の溝21gまでとしても構わない。
【0040】
蓋22の材質として透明な樹脂シートを採用しているが、金属板でも構わない。必ずしも光を通過する必要は無い。また市販のシート材を使ったが、成型した樹脂成型部品でも構わない。前述の針金8を固定する形状は、必ずしも穴である必要は無い。また、穴を採用したとしても、必ずしもハトメ23を使用する必要も無い。更に、針金8の係止構造を蓋22に持たせることも必然ではない。蓋22の表面に、遮光性の塗料を塗っている。塗装は蓋22の表面に限らず、裏面でも良い。接着剤と親和性に優れた塗料であれば、裏面に塗装した方が、接着強度が増し良い効果が得られる。また、塗装に限定されるものではない。金属のシート等を貼り付けても良い。そもそも耐光性に優れた接着剤であれば遮光の必要も無い。
【0041】
実施例2の集熱器2において、接着剤は極めて重要である。接着剤で全ての水圧を受け止めなければならない。図8は接着剤の使用方法を示す断面図である。下側は発泡スチロール製の底基板21であり、上側は樹脂製の蓋22である。間に接着剤の断面が4種類、B−1からB−4まで示されている。B−1は濡れ性が比較的悪い接着剤が少量塗付された状態である。この場合は最も接着強度に劣る。接着剤が少ないため、水の入り込む隙間が生じ、上下に引き裂く水圧が作用する。濡れ性が悪いため、接着剤のコーナーに鋭い切れ込みが残り応力集中が発生する。B−2は比較的濡れ性の良い接着剤が少量塗布された状態である。応力集中は軽いが水の入り込む隙間があり、好ましくない。B−3は濡れ性が比較的悪い接着剤が適量塗付された状態である。水の入り込む隙間が無いのは好ましいが、応力集中は発生する。B−4は濡れ性が良く適量塗付された状態である。水の入り込む隙間が無く、応力集中も発生しないので、理想的である。このように接着剤は底基板21と蓋22の両方に対し濡れ性の良いものを、適量を塗布する必要がある。
【0042】
図1の貯湯槽3は請求項3に関わる本発明の実施例3である。貯湯槽3は小さな屋根があり、絵で窓が描かれており、建物の一部のようで自然に見える。架台は無いが 屋根の傾斜に合わせ安定的に設置されている。針金で四方に張架するだけの簡単な方法で固定されている。金属製のカバーは無い。
【0043】
図9は実施例3の分解図である。市水は給水ホース4からボールタップ33を通して、貯水量が一定水準に保たれるよう保温容器31に供給される。保温容器31に蓄えられた市水は冷水を供給するチューブ6を通して集熱器3に自然循環の作用で供給され、温水になった後チューブ7で回収される。この循環が繰り返され、やがて保温容器31には温水が貯留される。温水は求めに応じ採湯ホース5から湯船に給湯される。採湯ホース5の先端には採湯用浮子34が取り付けられている。採湯用浮子34の作用で、常に水面近くの温水を湯船に供給する。
【0044】
保温容器31は発泡スチロールを金型で成型したものであり、同じく発泡スチロールを屋根の形をした金型で成型した保温蓋32と組み合わせる。金型を使用するため、形を採光窓に似せることは容易である。
【0045】
保温容器31は一定水準の水が蓄えられると、凡そ200kgにもなる。発泡スチロール製の保温容器31を直接、針金8で結わえることはできない。そこで、4本の枠材35をコーナー金具36で井桁に組立て枠とし、保温容器の枠挿入溝31cに嵌め込む。コーナー金具36には針金8を係止する穴が開いている。
【0046】
図10は貯湯槽3を底側から見た図である。屋根に設置する前の保温容器31は、大幅な上げ底になっており、保温容器の脚部31aが形成されている。この保温容器の脚部31aは、貯湯槽3を屋根の上に設置する際、鋸等で屋根の傾斜に合わせ切断する。保温容器の目隠し31bは給水ホース4、採湯ホース5を隠す目的がある。
【0047】
実施例3の変形例を列挙する。
【0048】
貯湯槽3をより採光窓に似せるために、保温容器31と保温蓋32には塗装をしてもよいし、シールを貼ってもよい。前述の枠材35とコーナー金具36の組立体を保温容器の枠挿入溝31cに嵌め込み張架用針金8を係止する構造は、本案の要旨ではなく、様々な変形が考えられる。前述の保温容器の目隠し31bは、本案の要旨ではなく、様々な変形が考えられる。本案は採光窓の形で違和感を解消しようとするものであるが、レンガで作った暖炉の煙突に似せた貯湯槽も考えられる。
【符号の説明】
1 実施例1の集熱器
2 実施例2の集熱器
3 実施例3の貯湯槽
4 給水ホース
5 採湯ホース
6 冷水を供給するチューブ
7 温水を回収するチューブ
8 針金
11 底基板
11a 圧接面
11b 受熱室
11c 左辺の溝
11d 下辺の溝
11e 上辺の溝
12 蓋
12a 冷水の通過穴
12b 温水の通過穴
13 挟持部材
13a 左辺の挟持部材
13b 右辺の挟持部材
14 コーナー金具
15 ねじ
16 矯正梁
17 配管プラグ
21 底基板
21a 接着面
21b 受熱室
21c 冷水の通過穴
21d 温水の通過穴
21e 左辺の溝
21f 下辺の溝
21g 上辺の溝
21h 接着用凸部
21j 脚取付け穴
22 蓋
22a ハトメ用穴
22b 遮光ペイント
23 ハトメ
24 集熱器の傾斜調整脚
31 保温容器
31a 保温容器の脚部
31b 保温容器の目隠し
31c 枠挿入溝
32 保温蓋
33 ボールタップ
34 採湯用浮子
35 枠材
36 コーナー金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の蓋体と、中央に受熱室用凹みを有する底基板を重ね合わせ、その四周を断面『コの字』の挟持部材で挟圧し、左右2本の該挟持部材の間に矯正梁を差し渡したことを特徴とする太陽熱温水器の集熱器。
【請求項2】
平板状の蓋体と、中央に受熱室用凹みを有し該受熱室用凹み内に接着用凸部を残す底基板を、該受熱室用凹みの外周と該接着用凸部に接着剤を使用し貼り合わせたことを特徴とする太陽熱温水器の集熱器。
【請求項3】
発泡スチロール製保温容器と発泡スチロール製保温蓋を含み、該保温容器は上げ底にして切断自在な脚部を形成し、該保温蓋は屋根の形状で、該保温容器と該保温蓋を組立てると採光窓を思わせる外観であることを特徴とする太陽熱温水器の貯湯槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate