説明

太陽熱集熱壁装置

【課題】空気の吸引量を大きくでき、また低コスト化も図ることができる太陽熱集熱壁装置を提供する。
【解決手段】建物の外壁面2に対しスパンドレルパネル11を所定間隔離隔して配置固定し、外壁面2とスパンドレルパネル11の間の空間部12内の空気を屋内に取り込み自在としてなり、スパンドレルパネル11の周縁部には桟部材が設けられ、一辺の桟部材24が外壁面2との間に隙間を設けて固定されることにより、スパンドレルパネル11の一辺略全長に渡って空間部12と連通する空気導入口15が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面に設けられ太陽光を集熱して加熱された空気を室内に取り込む太陽熱集熱壁装置に関し、特にスパンドレルパネルの下部全長に渡って空気を取り込む空気導入口を形成してなる太陽熱集熱壁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーの有効活用のため、建物の壁面に太陽熱を集熱するパネルを設けてなり、パネルと外壁面との間に形成される空間部の空気を加熱し、この加熱された空気を屋内に取り込む太陽熱集熱壁装置が知られている。集熱のためのパネルとして、一方向に沿う凸部と凹部とが複数設けられて角波形を形成したスパンドレルを単体あるいは複数連結してなるスパンドレルパネルを用いることで、構造を簡単にし、低コストに太陽熱集熱壁装置を構成することができる。
【0003】
スパンドレルを用いた太陽熱集熱壁装置は、スパンドレルパネルの四辺を建物の外壁面に対して直接ネジ止め固定することによって取付けられていた。この場合において、スパンドレルパネルと外壁面の間に形成される空間部に空気を導くため、スパンドレルパネルの下辺に空気導入口が形成されていた。このようにスパンドレルパネルの下辺に空気導入口を設けた太陽熱集熱壁装置としては、特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−92314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スパンドレルパネルは、凹凸を有した角波状に形成されるので、外部と空間部とを連通させる空気導入口は、スパンドレルパネルのうち屋外側に張り出した凸部の領域に設けられることとなり、空気導入口の大きさに制限があるため、空気の吸引量も制限されていた。また、空気導入口は、スパンドレルパネルの下辺に設けられる下桟に孔加工を施すことにより形成されるが、その加工にもコストがかかっていた。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、空気の吸引量を大きくでき、また低コスト化も図ることができる太陽熱集熱壁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る太陽熱集熱壁装置は、建物の外壁面に対しスパンドレルパネルを所定間隔離隔して配置固定し、前記外壁面とスパンドレルパネルの間の空間部内の空気を屋内に取り込み自在としてなる太陽熱集熱壁装置において、
前記スパンドレルパネルの周縁部には桟部材が設けられ、一辺の前記桟部材が前記外壁面との間に隙間を設けて固定されることにより、前記スパンドレルパネルの一辺略全長に渡って前記空間部と連通する空気導入口が形成されてなることを特徴として構成されている。
【0008】
また、本発明に係る太陽熱集熱壁装置は、前記建物の外壁面に対して固定される枠体を、前記スパンドレルパネルの外形状に略適合するように設け、該枠体の屋外側に前記スパンドレルパネルを固定してなることを特徴として構成されている。
【0009】
さらに、本発明に係る太陽熱集熱壁装置は、前記枠体を構成する下枠に対し、長手方向複数箇所に小片状の下固定部材を固定し、該下固定部材に対して前記スパンドレルパネルの下辺に設けられる桟部材が固定されることで、下辺の桟部材を前記外壁面との間に隙間を設けて固定することを特徴として構成されている。
【0010】
さらにまた、本発明に係る太陽熱集熱壁装置は、前記下固定部材は前記下枠に対して固定される枠固定面部と、前記下桟に対して固定される桟固定面部とが、段差をなすように形成されてなることを特徴として構成されている。
【0011】
そして、本発明に係る太陽熱集熱壁装置は、前記枠体を構成する縦枠に対し、前記スパンドレルパネルの縦辺周縁部を覆う縦カバー材が取付けられることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る太陽熱集熱壁装置によれば、スパンドレルパネルの周縁部には桟部材が設けられ、一辺の桟部材が外壁面との間に隙間を設けて固定されて、スパンドレルパネルの一辺略全長に渡って空間部と連通する空気導入口が形成されてなることにより、空気導入口がスパンドレルパネルの形状にかかわらず一辺の略全長に渡って形成されるので、スパンドレルパネルに孔を設ける場合に比べて空気の流路を大きくでき、空気をより多く吸引することができる。また、スパンドレルパネルに対する孔加工を不要とできるので、加工コストを低減することもできる。
【0013】
また、本発明に係る太陽熱集熱壁装置によれば、建物の外壁面に対して固定される枠体を、スパンドレルパネルの外形状に略適合するように設け、枠体の屋外側にスパンドレルパネルを固定してなることにより、スパンドレルパネルを枠体に取付けるのに伴い空間部及び空気導入口を形成でき、施工を容易にすることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る太陽熱集熱壁装置によれば、枠体を構成する下枠に対し、長手方向複数箇所に小片状の下固定部材を固定し、下固定部材に対してスパンドレルパネルの下辺に設けられる桟部材が固定されて、下辺の桟部材を外壁面との間に隙間を設けて固定することにより、簡易な部品により下枠と下桟を離隔して固定することができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係る太陽熱集熱壁装置によれば、下固定部材は下枠に対して固定される枠固定面部と、下桟に対して固定される桟固定面部とが、段差をなすように形成されてなることにより、各面部を下枠と下桟にそれぞれ当接させ固着することで、下枠と下桟を容易に固定することができる。
【0016】
そして、本発明に係る太陽熱集熱壁装置によれば、枠体を構成する縦枠に対し、スパンドレルパネルの縦辺周縁部を覆う縦カバー材が取付けられることにより、スパンドレルパネルが温度変化により伸縮しても、周縁部を覆っていることで外観が変化しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における太陽熱集熱壁装置の縦断面図である。
【図2】本実施形態における太陽熱集熱壁装置の横断面図である。
【図3】図1のうち上枠付近の拡大図である。
【図4】図1のうち下枠付近の拡大図である。
【図5】図2のうち縦枠付近の拡大図である。
【図6】スパンドレルパネルの正面分解図である。
【図7】スパンドレルの長さが伸縮した場合における、縦枠付近の横断面図である。
【図8】スパンドレルの連結部分付近横断面図である。
【図9】太陽熱集熱壁装置の取付過程を表した正面図である。
【図10】上枠に対して上桟を取付ける直前の状態の縦断面図である。
【図11】下枠に対して下桟を取付ける直前の状態の縦断面図である。
【図12】建物の角部付近に太陽熱集熱壁装置を設けた場合の縦枠付近横断面図である。
【図13】建物の角部を挟んで二面に渡り太陽熱集熱壁装置を設けた場合の縦枠付近横断面図である。
【図14】片流れタイプの屋根に沿って設ける太陽熱集熱壁装置の正面図である。
【図15】切妻タイプの屋根に沿って設ける太陽熱集熱壁装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には本実施形態における太陽熱集熱壁装置の縦断面図を、図2には本実施形態における太陽熱集熱壁装置の横断面図を、それぞれ示している。本実施形態の太陽熱集熱壁装置3は、建物の外壁面2と所定間隔離隔してスパンドレルパネル11が配置固定され、外壁面2とスパンドレルパネル11の間に空間部12を形成し、スパンドレルパネル11の下辺には空気導入口15が形成され、建物駆体1には吸気口13が形成されると共に、吸引装置14が配置されている。スパンドレルパネル11が太陽熱によって加熱されることにより、空気導入口15から空間部12に導かれた空気が加熱され、吸引装置14により吸気口13を介して加熱された空気が屋内側に導かれるようになっている。
【0019】
太陽熱集熱壁装置3の上方には、上側窓4が配設され、また太陽熱集熱壁装置3の下方には、下側窓5が配設される。ただし、建物における窓の配置によって、太陽熱集熱壁装置3の周囲に窓が配置されていないものであってもよい。
【0020】
本実施形態の太陽熱集熱壁装置3は、概ね方形状をなすように形成されており、図1及び図2に示すように、外壁面2に対して四周に渡る枠体10が取付けられており、この枠体10の屋外側にスパンドレルパネル11が取付けられることで、スパンドレルパネル11と外壁面2の間に空間部12を形成している。
【0021】
スパンドレルパネル11は、図2に示すように、屋外側に張り出した凸部21と、屋内側に引っ込んだ凹部22とが、角波形状をなすように配列されてなるスパンドレル20を有してなり、スパンドレル20の上辺周縁部には上桟23が、スパンドレル20の下辺周縁部には下桟24が、それぞれ設けられる。また、スパンドレル20の左右の縦辺周縁部は、縦カバー材25によって覆われる。スパンドレル20の裏面側には、横方向に伸びる横桟26が、上下方向に複数設けられている。
【0022】
枠体10は、上辺の上枠30と下辺の下枠31及び縦辺の縦枠32によって、スパンドレルパネル11の外形状に略適合するように設けられている。本実施形態では、スパンドレルパネル11が略長方形状であるから、枠体10も同様に長方形状をなすように形成されている。スパンドレルパネル11が枠体10の屋外側に取付けられることで、スパンドレルパネル11と外壁面2との間に空間部12が形成される。
【0023】
図3には、図1のうち上枠30付近の拡大図を示している。上枠30は、外壁面2に対して当接する外壁固定面部30aを備え、この外壁固定面部30aから略L字状をなすように突出し上桟23を固定する桟固定面部30bを有している。すなわち、桟固定面部30bは外壁固定面部30aより屋外側に位置し、これに屋外側から固定される上桟23を外壁面2と離隔して配置させる。
【0024】
外壁固定面部30aには、ビス34が打ち込まれ、このビス34は建物駆体1まで達する長さを有している。これによって、上枠30は外壁面2及び建物駆体1に対して固定される。外壁固定面部30aの下端部には、外壁面2に固定される小片状の引掛け金具33に対し引掛け係合する引掛け部30cが形成されている。また、桟固定面部30bの上部には、上桟23を係合させる被係合部30dが形成されている。
【0025】
スパンドレルパネル11の上桟23は、上枠30に対して当接し外壁面2と離隔して対向する外壁対向面部23aと、その上端部から屋外側に向かって伸びスパンドレル20の上面を覆う天面部23bとを有している。外壁対向面部23aは、上部で上枠30の桟固定面部30bに当接し、ネジ止め固定されており、また下部はスパンドレル20の凹部22に当接して、ネジ止め固定されている。外壁対向面部23aの上端部屋内側には、上枠30の被係合部30dに対して係合する係合部23cが形成されている。この係合部23cによる係合と外壁対向面部23aにおけるネジ止めにより、上桟23が上枠30に固定される。
【0026】
図4には、図1のうち下枠31付近の拡大図を示している。下枠31は、外壁面2に対して当接する外壁固定面部31aと、この外壁固定面部31aの下端から屋外側に向かって伸びる屋外延出面部31bとで、断面略L字状をなすように形成されている。下枠31の外壁固定面部31aに対しては、屋外側から下固定部材27がネジ止めされ、この下固定部材27を介してスパンドレルパネル11の下桟24が固定される。
【0027】
スパンドレルパネル11の下桟24は、下固定部材27を介して下枠31に固定され外壁面2と離隔して対向する外壁対向面部24aと、その下端部から屋外側に向かって伸びスパンドレル20の下面を覆う下面部24bとで、断面略L字状をなすように形成されている。
【0028】
下固定部材27は、下枠31の長手方向に沿って複数設けられる小片状の金具であって、下枠31の外壁固定面部31aに対して当接する枠固定面部27aと、下桟24の外壁対向面部24aに対して当接する桟固定面部27bとが、段部27cにより段差状をなすように形成されている。下固定部材27が段差状であることにより、枠固定面部27aが下枠31に当接した状態で、桟固定面部27bは枠固定面部27aよりも屋外側に配置され、桟固定面部27bに固定される下桟24が、外壁面2と離隔した状態で対向配置されることとなる。
【0029】
図5には、図2のうち縦枠32付近の拡大図を示している。縦枠32は、外壁面2に対してネジ止め固定される外壁固定面部32aと、外壁固定面部32aから見付方向内側に向かって外壁面2に当接しながら伸びる延長面部32bと、外壁固定面部32aから屋外側に向かって伸びる屋外延出面部32cとを有している。縦枠32の外壁固定面部32aに対しては、屋外側から外壁面2及び建物駆体1に対してビスが打ち込まれて固定がなされる。
【0030】
スパンドレルパネル11の左右周縁部には、縦カバー材25が取付けられる。縦カバー材25は、縦枠32の外壁固定面部32aに対して屋外側から当接し、縦枠32と共に外壁面2及び建物駆体1に対してビス止め固定される枠固定面部25aと、この枠固定面部25aから屋外側に向かって伸びる桟固定面部25bと、桟固定面部25bの屋外端部からスパンドレルパネル11の周縁部を覆うように伸びる被覆面部25cとを有している。桟固定面部25bは、中桟26の端面に当接してネジ止め固定される。
【0031】
スパンドレルパネル11の上辺において上桟23が上枠30に対して固定され、スパンドレルパネル11の下辺において下桟24が下固定部材27を介して下枠31に固定されていることにより、スパンドレルパネル11と外壁面2との間には空間部12が形成される。また、下固定部材27は小片状であるため、下桟24と外壁面2との間は、スパンドレルパネル11の下辺略全長に渡って開口し、空間部12と連通する空気導入口15となる。この空気導入口15から空間部12に導かれた空気は、スパンドレルパネル11が太陽光線に晒されることにより加熱される。
【0032】
このように、スパンドレルパネル11を外壁面2に固定された枠体10に対して取付ける構造としたことで、空気導入口15をスパンドレルパネル11の一辺略全長に渡って開口させることができ、空気を取り入れる面積を大きくすることができるので、空気の吸引量を大きくすることができる。また、スパンドレルパネル11と外壁面の間の隙間を空気導入口15としているので、下桟24に孔加工を施す必要がなく、加工の低コスト化を図ることができる。
【0033】
また、図4に示すように、下固定部材27の桟固定面部27bには、下桟24との固定に用いられるネジを挿通するネジ孔27dが形成されており、このネジ孔27dは上下方向に長い長孔状に形成されている。スパンドレルパネル11は、加熱されることにより熱膨張する。ここで、スパンドレルパネル11は上下辺で枠体10に対して固着されているが、ネジ孔27dが上下方向に長い長孔状であることにより、伸縮に対する裕度を設けることができ、スパンドレルパネル11の破損等を防止することができる。
【0034】
また、スパンドレルパネル11を外壁面2に固定された枠体10に対して取付ける構造としたことにより、スパンドレルパネル11の運搬や施工も容易にすることができる。図6には、スパンドレルパネル11の正面分解図を示している。図6(a)は1枚のスパンドレル20でスパンドレルパネル11を構成する場合、図6(b)は2枚のスパンドレル20を横方向に連設してスパンドレルパネル11を構成する場合、図6(c)は3枚のスパンドレル20でスパンドレルパネル11を構成する場合を、それぞれ示している。
【0035】
図6(a)に示すように、1枚のスパンドレル20でスパンドレルパネル11を構成する場合、上桟23と下桟24及び中桟26は、それぞれスパンドレル20の幅よりも長く、両端部がそれぞれ突出した状態となっている。これらの突出した部分は、スパンドレル20の幅方向における調整代である。スパンドレル20は、複数の型材を左右方向に組み合わせて所定幅寸法となるように形成されているため、型材の組み合わせによって若干幅方向寸法が異なる場合がある。各桟部材に調整代が設けられていることにより、スパンドレル20の幅寸法の差異を吸収することができる。
【0036】
図7には、スパンドレル20の長さが異なる場合における、縦枠32付近の横断面図を示している。図7(a)はスパンドレル20の幅寸法が想定される最小の場合であり、図7(b)はスパンドレル20の幅寸法が想定される最大の場合である。いずれの場合においても、縦カバー材25の被覆面部25cが、スパンドレルパネル11の調整幅よりも幅広に形成されているので、スパンドレル20の左右周縁部は縦カバー材25の被覆面部25cで覆われて、外観に変化がないようにすることができる。
【0037】
図6(b)のように、2枚のスパンドレル20でスパンドレルパネル11を構成する場合、図中右側のスパンドレル20については、連結される左側辺の調整幅は0であり、縦枠32に対して固定される右側辺にのみ、調整代を設けるようにしている。図中左側のスパンドレル20についても、連結される右側辺の調整幅は0であり、縦枠32に対して固定される左側辺にのみ、調整代を設けるようにしている。
【0038】
図8には、スパンドレル20の連結部分付近横断面図を示している。この図に示すように、連結される一方のスパンドレル20の横桟26には、連結用金具28が固定される。連結用金具28は、外壁面2に当接してネジ止め固定される外壁固定面部28aと、中桟26に当接してネジ止め固定される桟固定面部28bとが、段部28cを介して段差状をなすように形成されており、これによって一方のスパンドレル20の横桟26が外壁面2に固定される。また、連結される一方のスパンドレル20の先端部には係合部20aが形成されている。
【0039】
連結される他方のスパンドレル20の先端部には、被係合部20bが形成されており、連結される一方のスパンドレル20の先端部に形成された係合部20aが係合し、両者が連結される。
【0040】
図6(c)のように、3枚のスパンドレル20でスパンドレルパネル11を構成する場合には、左右のスパンドレル20は2枚の場合と同様であり、中央のスパンドレル20は両側とも調整代は0としている。スパンドレル20の枚数がこれ以上の場合であっても、同様である。
【0041】
本実施形態では、建物の外壁面2に枠体10を取付け、その枠体10にスパンドレル20を取付ける構成であるため、複数のスパンドレル20を組み合わせる場合に、スパンドレル20の状態で運搬し、現場でそれぞれ枠体10に対し取付けることができる。したがって、大きいパネルの状態で運搬する必要がなく、運搬を容易にすることができる。また、各スパンドレル20の大きさを適切に設定することで、スパンドレル20を一人で持ち運び、枠体10に取付けることができるので、一人でも施工を可能とすることができる。
【0042】
太陽熱集熱壁装置3の取付方法について説明する。図9には、太陽熱集熱壁装置3の取付過程を表した正面図を示している。図9(a)に示すように、まず、建物の外壁面2に対して、所定位置に引掛け金具33を固定する。次に、図9(b)に示すように、枠体10を外壁面2に対して取付ける。このとき、上枠30を引掛け金具33に対して引っ掛けるように係合させ、これによって枠体10の位置を定める。この段階では、枠体10のうち上枠30と下枠31を、外壁面2並びに建物駆体1に対してビス止め固定する。また、枠体10は上枠30と下枠31の両端部がそれぞれ縦枠32の側面に突き当てられる、いわゆる縦勝ちの構成となっている。
【0043】
続いて、スパンドレル20を枠体10に対して取付けて、スパンドレルパネル11を形成する。図10には、上枠30に対して上桟23を取付ける直前の状態の縦断面図を示している。上枠30は、前述のように屋外側上端部に被係合部30dを有しており、この被係合部30dに対して上桟23の係合部23cを引っ掛けるように係合させ、上桟23の外壁対向面部23aを上枠30の桟固定面部30bに当接させた上で、両者をネジ止め固定する。なお、上枠30にはビス孔30eが形成されており、上枠30の端面が縦枠32の端面に突き当てられた状態で、縦枠32側からビス孔30eに対してビスが挿通され、上枠30と縦枠32が連結されている。すなわち、この段階で縦枠32は上枠30にのみ固定されていて、外壁面2及び建物駆体1に対しては縦カバー材25の取付に伴い固定される。
【0044】
図11には、下枠31に対して下桟24を取付ける直前の状態の縦断面図を示している。下桟24の長手方向複数箇所には、予め下固定部材27をネジ止め固定しておき、下固定部材27を下枠31の外壁固定面部31aに対して当接させた上で、両者をネジ止め固定する。
【0045】
このように上桟23と下桟24を、それぞれ上枠30と下枠31に対して固定した上で、さらに縦辺について縦カバー材25を屋外側から取付ける。縦カバー材25については、枠固定面部25aを縦枠32の外壁固定面部32aに当接させ、縦カバー材25と縦枠32を共にビス34によって外壁面2及び建物駆体1に対して固定する。これによって、枠体10は縦枠32を含む四周に渡って外壁面2及び建物駆体1に対して固定される。このようにしてスパンドレル20を外壁面2に対して取付け、図9(c)に示すようにスパンドレルパネル11を形成する。
【0046】
以上のように、外壁面2にスパンドレルパネル11の外形状と略適合する枠体10を取付け、その枠体10に対してスパンドレル20を取付けて固定し、スパンドレルパネル11を構成するようにしたので、比較的小さいスパンドレル20を順次枠体10に取付けることで大きいスパンドレルパネル11を形成できるので、一人ないし少人数でも太陽熱集熱壁装置3を施工することができる。また、スパンドレルパネル11の形成に伴って、スパンドレルパネル11の下辺略全長に渡る空気導入口15も形成されるので、空気導入口15のための加工を不要とでき、低コスト化を図ることができる。
【0047】
本実施形態の太陽熱集熱壁装置3は、建物の角部付近にも設けることができる。図12には、建物の角部付近に太陽熱集熱壁装置3を設けた場合の縦枠32付近横断面図を示している。建物の角部付近に太陽熱集熱壁装置3を設ける場合の取付構造は、図1〜2に示す取付構造と概ね同様であるが、縦枠32と縦カバー材25が当接して互いに固定される位置は、外壁面2の角部近傍となるため、そのままビスを打っても、対向する位置に建物駆体1が存在しない。このため、縦枠32については、外壁固定面部32aよりも見付方向内側である延長面部32bの位置において、建物駆体1に対する固定がなされ、別のネジにて縦カバー材25と縦枠32とが固定されるようにしている。
【0048】
図13には、建物の角部を挟んで二面に渡り太陽熱集熱壁装置3を設けた場合の縦枠32付近横断面図を示している。この図に示すように、スパンドレルパネル11は、建物の二面に渡って設けることもできる。この場合、外壁面2の各面に対して、それぞれ枠体10が設けられ、各枠体10に対しそれぞれスパンドレルパネル11が取付けられる。このうち、一方の面に設けられる縦枠32の形状が異なっている。
【0049】
一方の面に設けられる縦枠32は、屋外延出面部32cからさらに外壁面2のコーナー部分に沿うように延出されており、先端部には被係合部32eが形成されている。他方の面に設けられる縦枠32は、これまで説明したものと同じ形状を有しており、屋外延出面部32cの先端部が、一方の面に設けられる縦枠32の被係合部32eに対して係合し、両者が連結される。また、図12の場合と同様、縦枠32を固定するビス34は、延長面部32bの位置に打ち込まれる。
【0050】
枠体10には、その形状を変えることで、様々な形状のスパンドレルパネル11を取付けることができる。したがって、様々な形状の外壁面2に対応した太陽熱集熱壁装置3を形成することができる。図14には、片流れタイプの屋根に沿って設ける太陽熱集熱壁装置3の正面図を示している。この図に示すように、一方の縦枠32を他方の縦枠32よりも長くすると共に、上枠30を傾斜状に配置して台形状の枠体10を構成し、上辺が傾斜した台形状のスパンドレルパネル11を取付けることで、図14に示すような形状の太陽熱集熱壁装置3を容易に形成することができる。この場合、外壁面2に取付けられる引掛け金具33は、図14に示されているように、上枠30の傾斜に合わせて設けられる。
【0051】
図15には、切妻タイプの屋根に沿って設ける太陽熱集熱壁装置3の正面図を示している。この場合、上枠30を2本設け、それぞれ傾斜状として突き合わせることで、上辺を三角形状とした枠体10を形成することができる。この枠体10に対して、上辺が三角形状を有してなるスパンドレルパネル11を取付けることで、図15に示すような形状の太陽熱集熱壁装置3を容易に形成することができる。図15の場合においても、引掛け金具33は、上枠30の傾斜に合わせて設けられる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では、スパンドレルパネルの下辺に空気導入口15を形成しているが、その他の辺、例えば縦辺に空気導入口15を形成するようにしてもよい。ただし、空気は加熱に伴い下から上へ流れるので、効率よく空気を取り込むためには、下辺に空気導入口15を設けるのが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1 建物駆体
2 外壁面
3 太陽熱集熱壁装置
10 枠体
11 スパンドレルパネル
12 空間部
15 空気導入口
20 スパンドレル
23 上桟
24 下桟
25 縦カバー材
27 下固定部材
30 上枠
31 下枠
32 縦枠
33 引掛け金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面に対しスパンドレルパネルを所定間隔離隔して配置固定し、前記外壁面とスパンドレルパネルの間の空間部内の空気を屋内に取り込み自在としてなる太陽熱集熱壁装置において、
前記スパンドレルパネルの周縁部には桟部材が設けられ、一辺の前記桟部材が前記外壁面との間に隙間を設けて固定されることにより、前記スパンドレルパネルの一辺略全長に渡って前記空間部と連通する空気導入口が形成されてなることを特徴とする太陽熱集熱壁装置。
【請求項2】
前記建物の外壁面に対して固定される枠体を、前記スパンドレルパネルの外形状に略適合するように設け、該枠体の屋外側に前記スパンドレルパネルを固定してなることを特徴とする請求項1記載の太陽熱集熱壁装置。
【請求項3】
前記枠体を構成する下枠に対し、長手方向複数箇所に小片状の下固定部材を固定し、該下固定部材に対して前記スパンドレルパネルの下辺に設けられる桟部材が固定されることで、下辺の桟部材を前記外壁面との間に隙間を設けて固定することを特徴とする請求項2記載の太陽熱集熱壁装置。
【請求項4】
前記下固定部材は前記下枠に対して固定される枠固定面部と、前記下桟に対して固定される桟固定面部とが、段差をなすように形成されてなることを特徴とする請求項3記載の太陽熱集熱壁装置。
【請求項5】
前記枠体を構成する縦枠に対し、前記スパンドレルパネルの縦辺周縁部を覆う縦カバー材が取付けられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の太陽熱集熱壁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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