説明

太陽熱高回収装置とそれを利用した融雪システム。

【課題】日射により建築構造物の内部へ熱移動し蓄熱された熱は、放熱し更に断熱材や内部で蓄熱され高温となっていた。この高温となった熱エネルギーは、エネルギー利用される事は無かった。屋根材や屋上材、外壁材等の外皮は、特に夏期間等の炎天下に高温となり、変形する恐れが有った。次に、積雪地方での建築構造物の屋根や屋上への積雪は、人力で雪下ろしを行っていた、この重労働で有る雪下ろし作業を年配者が行わざるを得ない状況となっており、地域によっては、死活問題となっていた。
【解決手段】遮熱材を用いて屋内への熱移動を阻止し、更にはその熱エネルギーを遮熱材を用いて熱回収装置に集中させ、エネルギー回収効率を格段に向上させた。これらの装置やシステムは、逆流も可能なポンプシステムを併用する事により、屋根や屋上などに積った積雪を融雪させる事も可能な複合システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、日射により建築構造物の外皮が放射する輻射熱を遮熱材を用いて、屋内への熱移動を阻止し、その熱エネルギーを効率良く回収し、熱交換作用により外皮を冷却する装置であり、また屋根や屋上の積雪を融雪を行う事が可能な複合装置である。
【背景技術】
【0002】
従来、日射により建築構造物の外皮である屋根や屋上、外壁で発生する輻射熱は、外部へ再放出するか、建築構造物内部へ熱移動し蓄熱されていた。この蓄熱された熱エネルギーは、更に内部または外部へ自然放出し自然消費されていた。
【0003】
特に夏期間の炎天下に、屋根材や屋上材、外壁材が高温となり、変形する恐れが有る為、空気通気層を用いて高温となる事を抑制する工法を行っていた。また近年、屋根材や屋上材、外壁材の製造メーカーは、それらが高温となる事を抑制する為、より遮熱効果の高い製品を開発し、製造販売している。
【0004】
建築構造物内部へ熱移動し、蓄熱された熱エネルギーを更に内部に影響する事を抑制する為、繊維系や発泡系の断熱材を施して、伝導熱移動や対流熱移動を抑制していた。
【0005】
次に、積雪地方での建築構造物の屋根や屋上への積雪は、自然融解により融雪していた。自然融解による融雪は、大雪時には追いつかない状況となり積雪量が増していた。
【0006】
屋根や屋上の積雪量の負荷回避の為、昔から屋根の雪降ろし作業を人力で行っていた。特に過疎化が進む地域においては、この作業を年配者が行わざるを得ない状況となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−314983。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
日射により建築構造物内部へ熱移動し蓄熱された熱は、放熱し更に内部で高温となっていた。この高温となった熱エネルギーは、内部または外部へ自然放熱し自然消費され、エネルギー利用される事は無かった。屋根材や屋上材、外壁材等の外皮は、特に夏期間等の炎天下に高温となり、変形する恐れが有った。
【0009】
それらを抑制する為、空気通気層を用いる工法は、工事作業の工程が数工程増加し、作業コストにも反映されていた。また近年増え続けている遮熱効果が付加された屋根材や屋上材、外壁材は、高額製品となっている。
【0010】
建築構造物内部への熱移動を抑制していた繊維系や発泡系の断熱材は、内部放熱し、特に夏期間等は更に高温となり、断熱材に蓄熱されていた。その蓄熱された高温の熱は、外気温が下がった夜間でさえ、建築構造物内部へ影響を与え、熱帯夜の原因の一つとなっていた。
【0011】
次に、積雪地方での建築構造物の屋根や屋上への積雪は、自然融解により融雪していた為、大雪時には追いつかない状況となり積雪量が増していた。積雪量増加により、構造物への重量負荷も増加する為、構造物への重量負荷が増すと開口部の開閉が不可能になり、構造物自体の倒壊の恐れが有った。
【0012】
これらを回避する為、屋根の雪降ろし作業を行っていたが。作業は人力が主体で、過酷な重労働であった。特に過疎化が進む地域においては、この重労働で有る雪下ろし作業を年配者が行わざるを得ない状況となっており、地域によっては、死活問題となっていた。
【0013】
高所で傾斜が有り、更に積雪が有る屋根や屋上は、必然的に滑落しやすい危険箇所となっており、作業中に滑落する犠牲者が毎年のように報告されている。過疎化が進む地域においては、必然的に滑落犠牲者は、年配者に多く発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するために、第一発明は、遮熱材を用いて屋内への熱移動を阻止し、更にはその熱エネルギーを遮熱材を用いて熱回収装置に集中させ、エネルギー回収効率を格段に向上させた装置である。
【0015】
第二発明は、請求項1の装置により、熱回収したエネルギーを水又は不凍液へ熱交換させ、タンクに蓄え、更には既存の温水器を併用し、温水器が温水を作る際のエネルギー消費を極力抑制させるシステムである。
【0016】
第三発明は、熱回収装置のうちの完成された熱交換装置は、ラジエター状の放熱器を用いた輻射熱移動により熱エネルギーを回収する熱交換装置である。第四発明は、これらの装置やシステムはと逆流も可能なポンプシステムを併用する事により、屋根や屋上などに積った積雪を融雪させる事も可能な複合システムである。
【発明の効果】
【0017】
第一発明、第二発明によれば、屋内に及ぼす輻射熱を抑止する事で、過ごし易い環境を作ることができ、また屋根や屋上、外壁が高温となる事を抑止できる。熱を必要としない箇所から熱を回収し、熱エネルギーとしてタンクに蓄え、必要とする時に利用する事が出来る。特に多くの温水の利用を目的とする浴場や工場では、太陽熱による温水利用の為、環境保全に役立つ。
【0018】
第三発明によれば、この熱エネルギーとして回収する際の回収効率を格段に上げる事と、完成された既製品を利用する為、このシステムを構築する際のコストダウンや作業効率のアップが期待される。
【0019】
第四発明によれば、屋根や屋上に積った積雪を融雪する事により、過酷であった雪下ろし作業から開放される。積雪地方の過疎地での高齢者の滑落事故を抑止する事が出来る

【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の一実施形態を、図1に示す。
太陽Kから放たれる日射K1により、建築構造物の外皮であるCは、異常なほどの高温となる。この高温となった熱をエネルギーとしてBで熱交換し、温水に変換する。この温水をFに蓄える事で必要の無い時にはエネルギーとして蓄える事が出来る。
【0021】
この蓄えた温水を給湯装置や暖房放熱機等の熱エネルギーを消費する装置Hで利用する際に、必要であれば温水器Mで再加熱する事で更に高温の温水を供給できる。給湯装置等の熱エネルギーを消費する装置Hで消費された温水が減少した場合には、給水装置GによりタンクFに供給し増量する。
【0022】
増量されたタンクFは、Gより給水された事で水温が下がる事が予想されるが、日射時にはタンクFと熱交換装置Bとで温水が巡回することにより、熱交換装置Bで暖められた温水が再びタンクFに戻る為、次第にタンク内の温度が高温となってくる。
【0023】
このように熱交換装置Bでは、供給される冷水でCやDの高温と熱交換する事により、CやDが高温となる事も抑制できる。これは、図5で示す従来の高温抑制の手段である対流の有る通気空間を必要としない。
【0024】
更にこの従来の手段によると、D2から入りD3方向で空気が滞留もしくは排出される事でD1の温度上昇を抑えるが、断熱材A1で熱エネルギーが蓄えられ、更に屋内であるIに高温が移動してしまう、それにより屋内Iが暑い空間となり、または夏期間の熱帯夜の原因の一つとなりうる。
【0025】
この発明の一実施形態は、このような従来の不具合を解決するものであるが、図2で示す様に遮熱材Aを用いる事により、構造物に蓄熱しない、屋内であるIに熱移動させないという、必要の無い所への熱移動を抑止する事が、大きな特徴である。
【0026】
これらは逆に、遮熱材Aの反射により、熱交換装置Bへ熱移動が集中する事で、エネルギー回収率が格段に向上し、屋内の熱エネルギーを必要とする場所へ多くのエネルギーを供給出来るという合理的性があり、自然エネルギーの合理的活用手段とも言える。
【0027】
熱交換装置Bは、図3と図4に示すように、大きく分け二つの種類の熱交換装置とする。これは、利用しようとする構造建築物の目的や構造により、熱回収効率の良い手段が、二つに分かれる為である。
【0028】
一つ目の熱交換装置Bは、図3に示すように完成された熱交換装置であり、ラジエター状の装置である。Cが発する輻射熱と、遮熱材Aに反射され戻る輻射熱を回収目的としている為、輻射熱を回収し易い素材で構成される。
【0029】
対照的に図4に示す二つ目の熱交換装置は、現場組立て型の熱交換装置であり、B1がCもしくはCを固定する資材に接触し、CもしくはCを固定する資材の伝導熱を回収目的としている。必然と伝導熱を回収し易い素材、熱伝導率が高い素材で構成される。
【0030】
次に図8の通り、寒冷地の朝晩の凍結する恐れの有る場合に、不凍液を用いて熱交換を行う。熱交換装置Bにて温められた不凍液は、熱交換装置Lにて更に給水装置Gより供給された水を温めタンクFに蓄えられる。必要に応じてタンクFより、給湯装置や暖房放熱機等の熱エネルギーを消費する装置Hで利用される。
【0031】
図6の通り、温水器Mを併用し、好みの高い温度の温水を供給がする事も可能であり、幅広いニーズに対応できる。この温水器Mは、電気、ガス、灯油の既存の各種温水器が利用でき、特に深夜電力を利用するエコキュート等の温水器は、昼にこの発明で温められた温水を安価な深夜電力で再加熱する為、経済的な熱エネルギーを作り出すことが可能となる。
【0032】
更に空間D、タンクF、タンクFの各所に温度センサーを設置し、温度管理する事により、タンクF、タンクFの熱エネルギーとしての蓄えを浪費する事無い、効率の良い温水生産システムも導入可能とする。
【0033】
この発明の二実施形態を、図7に示す。
積雪寒冷地での利用、一実施形態の他に、更に冬期間の積雪時に融雪を行う事を目的とする装置である。図6の温水器を併用した装置を利用して行う融雪手段であり、特に深夜電力を利用するエコキュート等の温水器は、安価な深夜電力を利用する為、経済的である。
【0034】
これは図6のシステムに対し、タンクFの温水器Mにて温められた温水を熱交装置Lへ逆流させ、熱交換装置Lで熱交換された不凍液も逆流させる。タンクF1に溜めた不凍液も逆流させ熱交換装置Bに送り出す事により、熱交換装置Bから放熱され外皮Cへ熱移動され、積雪Oを融雪する手段である。
【0035】
基本的な設置手段は図6と同じであるが、管を流れる水もしくは不凍液を逆流させるポンプシステムの設置が主な増設作業である。その為作業コスト、材料コストが安価で設置できる特徴がある。

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の基本的な形を示す図であり、太陽熱により加熱されたCの熱エネルギーをGからF経由で供給される水に熱交換後、再度Fに備蓄を行い、必要に応じてMにて再加熱され、Hで消費する様子を示す。
【図2】この発明の熱エネルギー回収部分を示す図であり、太陽熱により加熱されたCの熱エネルギーをAの遮熱材により、内部への熱移動を抑止し、それらをより効率良く熱エネルギーとして回収する様子を示す。
【図3】Cとの熱交換装置で有るが、ラジエター状の輻射熱移動にて熱交換をする装置であり、エネルギー交換される水もしくは不凍液が通る配管が一体型である装置を示す。
【図4】Cとの熱交換装置で有るが、伝導熱移動にて熱交換する装置であり、屋根材Cもしくはそれを固定する資材に直接接触し、熱エネルギーを伝導熱移動にて回収する装置であり、エネルギー交換される水もしくは不凍液が通る配管が分離型である装置を示す。
【図5】従来の外皮と断熱材構造を示す図であり、断熱材A1がCからの輻射熱を受け、熱移動しており、更に構造物内部Iへ熱移動している様子を示す。
【図6】Cとの熱交換後のエネルギー移動が、熱エネルギーを消費する装置Hに直接供給するのでは無く、不凍液を経由してエネルギー移動をする様子を示す図であり、主に積雪寒冷地において、B3等の配管が凍結する恐れが有る場合に用いる手段を示す。
【図7】積雪地域において図6の手段を利用し、Cに積雪した雪Oを融雪する手段を示す図であり、温水器等で加熱された熱エネルギーを逆流させる事により、Cに積雪した雪Oを融雪する事も出来る様子を示す。
【図8】温水機Mを利用せず太陽熱エネルギーのみで、熱エネルギーを消費し、給湯装置Hをまかなう様子を示す図であり、更にB3等の配管が凍結する恐れが有る場合に用いる手段を示す。
【符号の説明】
【0037】
A:遮熱材。
A1:断熱材。
B:Cとの熱交換装置。
B1:Bの装置の外側。
B2:Bの装置の内側。
B3:Bのエネルギー交換される水および不凍液が通る配管。
C:屋根、屋上、外壁等の構造体の外皮。
D:BとCの間の対流の無い空間。
D1:外皮を冷やす為の対流のある通気空間。
D2:D1の下部。
D3:D1の上部。
E:AとBの間の空間。
F:熱交換された温水を蓄えるタンク。
F1:不凍液を蓄えるタンク。
G:給水装置。
H:給湯装置や暖房放熱機等の熱エネルギーを消費する装置。
I:構造体の内部空間(屋内)。
J:構造体の外部空間(屋外)。
K:太陽。
K1:太陽が放つ電磁波。
L:不凍液との熱交換装置。
M:温水器。
N:構造物の外皮を支える垂木。
O:屋根や屋上に積雪した雪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射による建築構造物の外皮が発する輻射熱を遮熱材を用いて屋内への熱移動を阻止し、更にはその熱エネルギーを遮熱材を用いて熱回収装置に集中させ、エネルギー回収効率を格段に向上させた装置。
【請求項2】
請求項1の装置により、熱回収した熱エネルギーを水又は不凍液へ熱交換させ、タンクに蓄え、更には既存の温水器を併用し、温水器が温水を作る際のエネルギー消費を極力抑制させるシステム。
【請求項3】
熱回収装置の中の完成された熱交換装置であり、放熱効果の高い特徴を利用し、高熱吸収、高熱回収の効果を求めたラジエター状の放熱器であり、輻射熱移動により熱エネルギーを回収する熱交換装置。
【請求項4】
これらの装置とシステムは、逆流も可能なポンプシステムを併用する事により、屋根や屋上などに積った積雪を融雪させる事も可能な複合システムにもなりうる。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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