説明

太陽電池セルの梱包方法

【課題】 硬質の樹脂等で作製された部材で太陽電池セルの位置決めを行なう梱包方法においては、太陽電池セルのエッジ部が損傷したり、逆にエッジ部が鋭利で十分な強度を有している場合には、位置決め部材を削って屑が発生するという問題がある。
【解決手段】 太陽電池セルを高強度繊維で作られた布で包み梱包箱に収める事を特徴とする太陽電池セルの梱包方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル輸送する時の梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池セルを輸送のために梱包する方法として、例えば、図4及び図5に示す方法がある。図4は、梱包箱4の蓋を取り外して、かつ、太陽電池セル1の上に載せてある緩衝材を取り外した状態を上から見た図である。太陽電池セル1は、例えば厚さ0.2mm程度のステンレス基板上に半導体膜を形成し、その表面に薄い樹脂膜を設けて作製された太陽電池セルで、この太陽電池セル1を数十枚重ねているもので、その厚みは数センチになっている。太陽電池セルの周囲に設けられているのは仕切り材3で、太陽電池セルが所定の位置で動かないように位置決めしているものである。
【0003】
この時、仕切り材3は硬質な樹脂によって作製されていることが多い。それは、何回も再使用することに耐えられるようにするためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例のような場合、太陽電池セルのエッジ部で仕切り材が削られて屑が出る。あるいは、太陽電池セルのエッジ部の半導体層の剥がれが発生することがある。
【0005】
上記従来例においては、太陽電池セルと仕切り材の間に2〜3mm程度の隙間が設けられている。この程度の隙間がないと、太陽電池セルと仕切り材の摩擦抵抗が大きく、太陽電池セルを取り出し難くなる。そのための隙間であるが、運送時には振動等により、太陽電池セルがこの隙間の分だけ何度も移動することになる。何度も移動して、太陽電池セルのエッジ部が仕切り材に何度も衝突することになる。
【0006】
この衝突により、太陽電池セルのエッジ部で仕切り材が削られて屑が出る。あるいは、太陽電池セルのエッジ部の半導体層が剥がれてしまうものである。
【0007】
仕切り材が削られて屑が出る場合は、その屑が太陽電池セルに付着してしまうので、屑を除去する工程が必要となり、コスト増となってしまう。
【0008】
また、太陽電池セルのエッジ部の半導体層が剥がれてしまう場合には、その剥がれ部から剥がれが拡大して電気特性が低下する懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者等は上記課題を鋭意検討した結果、以下のような梱包方法により上記課題を解決する事ができるとの結論に至った。
【0010】
本発明に係わる太陽電池セルの梱包方法によれば、太陽電池セルを高強度繊維で作られた布で包み梱包箱に収める事を特徴とする。
【0011】
これにより、太陽電池セルのエッジ部が直接他の部材に衝突することがなくなり、太陽電池セルのエッジ部が他の部材を削ってしまう、もしくは、太陽電池セルのエッジ部に損傷が発生するのを防止することができる。
【0012】
この時、前記布が高強度繊維ではない通常の繊維で作られている場合には、布が容易に切れてしまう懸念もあるが、高強度繊維を使用した布であることでその懸念は無い。
【0013】
また、太陽電池セルは矩形であり、高強度繊維で作られた布は、太陽電池セルを配置する領域と前記領域と同じ幅で前記領域から延出する領域からなり、梱包箱は、梱包箱の内壁より離間した位置に設けられた仕切り材を有し、布の延出した領域で太陽電池セルを縦と横の2方向から包み、梱包箱の仕切り材の内側に収めた事を特徴とする。
【0014】
これにより、梱包箱の内壁部より離れた内部位置に太陽電池セルが置かれることになり、太陽電池セルはより梱包箱外部からの衝撃を受け難くなる。
【0015】
加えて、布の延出した領域にはマジックテープ(登録商標)があり、このマジックテープ(登録商標)で包みを固定する事により、太陽電池セルを包んだ布を緩まないように固定してしまうことができる。これにより、布の中で積層された太陽電セルが個別にずれることを防止できる。もし、少数のセルがずれてしまうと、ずれたセルにのみ衝撃力が集中してしまう可能性があるが、それを防ぐことができる。
【0016】
また、布の固定方法としてマジックテープ(登録商標)を用いることで、固定が非常に容易で繰返しの固定に耐えることができる。
【0017】
このとき、太陽電池セルは金属基板上に半導体層を形成した太陽電池セルであり、梱包箱は樹脂で形成されている場合がより好適である。このような太陽電池セルは、例えば多結晶シリコンセルのように割れたりすることなく、エッジ部が鋭利である場合があるため、本発明の梱包方法がより有用となる。
【0018】
その上、布は遮光性を有した布である事が好ましい。布が遮光性を有していることで、あえて遮光するための部材を用いる必要がなくなる。例えば、アモルファスシリコン太陽電池セルのように、太陽電池セルの種類によっては、光を受けることで発電性能が低下するものがある。そのような太陽電池セルの輸送用梱包では、太陽電池セルを遮光するための部材が必要となるが、本発明では、前記布がその機能を果たしてくれる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように本発明によれば、以下の効果がある。
【0020】
太陽電池セルを高強度繊維で作製した柔軟性がある布で包むことで、太陽電池セルのエッジ部が損傷することを防ぐ。また逆に、太陽電池セルのエッジ部で仕切り材等の梱包部材を損傷させることもないので、梱包部材から削り屑がでてしまうといった問題もない。さらに、この布が遮光性を有していることで、別途、遮光のための部材を用意する必要がない。これは、例えばアモルファスシリコン太陽電池セルのように、光を受けることで発電性能が低下する太陽電池セルに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に各構成要素について述べるが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0022】
〔太陽電池セル〕
本発明に用いる太陽電池セルの種類としては、アモルファスシリコン太陽電池、アモルファスシリコンと薄膜微結晶シリコンとのハイブリッド太陽電池、結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、銅インジウムセレナイド太陽電池、化合物半導体太陽電池等等を挙げることができる。
【0023】
本発明は、太陽電池セルのエッジ部で仕切り材等の部材を削る可能性のある太陽電池セルに好適である。例えばステンレス基板上に半導体層が形成された太陽電池セルでは、エッジ部は特に鋭利な刃物のような形状を有するため効果的である。
【0024】
また、光を受けることによって発電性能が低下する性質を有する太陽電池セルに好適である。太陽電池セルを太陽電池モジュールに仕上げる工場まで輸送する間に、発電性能が低下しては品質の管理ができず困るような場合もある。このような太陽電池セルに対して本発明の特徴とする遮光性を有する布で光を遮ることが有用である。このような太陽電池セルの例としては、アモルファスシリコン半導体層を有した太陽電池セルを挙げることができる。
【0025】
〔布〕
本発明に用いる布の特性としては、高強度繊維で作られていることである。エッジ部の機械強度が十分に強く、鋭利な形状をしている太陽電池セルを包んだ場合にも容易に切断されることはなく、何回も繰返し使用できるものである。
【0026】
高強度繊維とは、例えばアラミド繊維をあげることができる。この繊維は東レ・デュポンの「ケブラー」、帝人の「テクノーラ」などの商標名で展開されているものがある。高強度繊維は、「引張弾性率」で50000MPa程度以上、「引張強度」で2900MPa程度以上の値を示すものである。
【0027】
また、他の高強度繊維として、カーボンファイバー等も挙げることができる。
【0028】
その上、遮光性があることが有用である。アモルファスシリコン半導体層を有し、光を受けることで発電性能が低下する太陽電池セルを梱包輸送する場合においても、光を遮って太陽電池セルの発電性能低下を抑えることができる。
【0029】
そして、柔軟性を有していることである。柔軟性を有しているというのは、布で包もうとする物体の形状に容易に追従する性質を有するものである。このように柔軟性を有していることで太陽電池セルを容易に包むことができ、その結果、太陽電池セルのエッジ部が梱包箱に直接あたらなくなり、梱包箱の削りとりがなくなるとともに、太陽電池セルの損傷も防止できる。
【0030】
以上の特性は布として有していれば良いので、必ずしも1層の布である必要はない。例えば、柔軟性を有した高強度繊維で作られた布が内側で、十分な遮光性を有した布が外側で、この2層の布が重ね合わされて作製されていても良い。
【0031】
〔仕切り材〕
本発明で、梱包箱内に仕切り材を用いる場合には、その仕切り材は、例えば硬質な樹脂で作製されたものが好適である。十分な機械強度を有していることで何回も繰り返して使用することに耐えることができ、軽くて運送費用を抑えることができる。
【0032】
以下に実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
本実施例は、梱包箱内にその内壁より離間した位置に仕切り材を設けた実施例であり、以下、図1、図2を用いて説明する。
【0034】
図1は、本実施例の梱包方法を実施した状態から、梱包箱4の蓋を取り外して、かつ、太陽電池セル1の上に載せてある緩衝材を取り外した状態を上から見た図であり、図2は図1のAA’断面図である。本実施例の太陽電池セル1は、厚さ0.15mmのステンレス基板上に厚さ1μm程度のアモルファスシリコンの光起電力層を形成したもので、幅25cm、長さ37cmの長方形の形状をしている。この太陽電池セル1を50枚積層し、布2で包んでいる。布2は、高強度繊維であるカーボンファイバーで作製したもので、柔軟性を有し、かつ、十分な強度を有している。ここで、十分な強度を有しているというのは、以下のようなことを意味している。
【0035】
本実施例の太陽電池セル1は上記の構成であり、そのエッジ部は厚さ0.15mmのステンレス基板と同じことである。よって、金属としての十分な機械的強度を有して、かつ、鋭利であるため、まるで刃物のようであり、このエッジ部に触る布を切断してしまう可能性がある。布は1度の梱包では切断されないかもしれないが、繰返し使用するうちに切断されてしまう可能性が高い。それに対して、上記のような高強度繊維を用いれば、繰返し使用しても切断される心配が非常に少ない。つまり、十分な強度というのは、太陽電池セルのエッジ部で容易に切断されない十分な強度、という意味である。
【0036】
さらに、布2は遮光性を有している。本実施例のアモルファスシリコン太陽電池が光を受けて発電性能が低下する事に関して、有意な性能低下が発生しない程度の光強度までに光を遮ることのできるものである。
【0037】
ここで仕切り材3は、底部3a、仕切り部3bを有し、底部3aは梱包箱4の内側底部にちょうど収まる寸法であるため、仕切り材3は、梱包箱4の中で動くことがない。
【0038】
この仕切り材3に対して、上記布2に包まれた太陽電池セル1が納められている。これにより、梱包箱4の内壁より離間した位置に太陽電池セル1が存在することになる。この状態では、梱包箱4の壁に外側から衝撃を受けたりした場合でも、太陽電池セル1はこの壁から離れているので、この衝撃で損傷を受ける可能性が非常に少ない。
【実施例2】
【0039】
本実施例は、大きなコンテナ内に上記同様の太陽電池セル1を50枚積層し布2で包んだ物を複数個詰め込んだことを特徴とする。その他特記しない点については、実施例1と同様である。
【0040】
図3は、本実施例のコンテナの断面図である。コンテナ内には仕切り壁7が設けられ、実施例1と同様の布2で包んだ50枚積層した太陽電池セル1が積み重ねられているものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の梱包状態を上から見た図。
【図2】図1の断面AA'での断面図。
【図3】実施例2の梱包状態を上から見た図。
【図4】従来例の梱包状態を上から見た図。
【図5】図2の断面BB'での断面図。
【符号の説明】
【0042】
1 太陽電池セル
2 布
3 仕切り材
4 梱包箱
5 マジックテープ(登録商標)
6 コンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルを高強度繊維で作られた布で包み梱包箱に収める事を特徴とする太陽電池セルの梱包方法。
【請求項2】
前記太陽電池セルは矩形であり、前記高強度繊維で作られた布は、太陽電池セルを配置する領域と前記領域と同じ幅で前記領域から延出する領域からなり、前記梱包箱は、梱包箱の内壁より離間した位置に設けられた仕切り材を有し、前記布の延出した領域で前記太陽電池セルを縦と横の2方向から包み、前記梱包箱の仕切り材の内側に収めた事を特徴とする請求項1記載の太陽電池セルの梱包方法。
【請求項3】
前記布の延出した領域にはマジックテープ(登録商標)があり、該マジックテープ(登録商標)で包みを固定する事を特徴とする請求項1記載の太陽電池セルの梱包方法。
【請求項4】
前記太陽電池セルは金属基板上に半導体層を形成した太陽電池セルであり、前記梱包箱は樹脂で形成されている事を特徴とする請求項1記載の太陽電池セルの梱包方法。
【請求項5】
前記布は遮光性を有した布である事を特徴とする請求項1記載の太陽電池セルの梱包方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−41350(P2006−41350A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221729(P2004−221729)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】