説明

太陽電池セルの電流電圧出力特性および欠陥の検査装置

【課題】 太陽電池を製造する際の生産効率および歩留まりを向上さるために、太陽電池の構成部材である太陽電池セルの発電性能や欠陥の有無を高速および高精度で測定する検査装置を提供する。
【解決手段】 本発明の太陽電池セルの検査装置は、被測定物となる太陽電池セルの電流電圧特性を測定するIV測定部と、前記太陽電池セルの欠陥を検査する欠陥検査部を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池セルの電流電圧特性の測定および欠陥の検査が可能な検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの利用方法として、シリコン型の太陽電池が知られている。太陽電池の製造においては、太陽電池が目的の発電能力を有しているかどうかの性能評価が重要である。性能評価には、通常、出力特性の測定がされる。
【0003】
出力特性は、光照射下において、太陽電池の電流電圧特性を測定する光電変換特性として行われる。光源としては、太陽光が望ましいのであるが、天候により強度が変化することから、ソーラシミュレータが使用されている。ソーラシミュレータでは、太陽光に代えてキセノンランプやメタルハライドランプ等を使用している。また、これらの光源を長時間点灯していると、温度上昇などにより光量が変化する。そこで、これらのランプのフラッシュ光を用い、横軸を電圧、縦軸を電流として、収集したデータをプロットすることにより太陽電池の出力特性曲線を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ソーラシミュレータと異なる方法として、特許文献2では、シリコンの多結晶型の太陽電池素子に対して順方向に電圧を印加することで、エレクトロルミネッセンス(EL)を生じさせる方法を提案している。太陽電池素子から発光されるELを観察することによって、電流密度分布が分かり、電流密度分布の不均一から太陽電池素子の欠陥を知ることができる。すなわち、発光しない部分が欠陥部分と判断でき、この欠陥部分の面積が予め決められた量より少なければ、所定の発電能力を有するものと判断できることになる。
【0005】
図10は、特許文献2に記載された測定装置の構成を模式的に示す図である。測定装置10は、暗室11と、この暗室11の上部に設けられたCCDカメラ12と、暗室11の床面に載置された太陽電池セル13に電流を流す電源14と、CCDカメラ12からの画像信号を処理する画像処理装置15とから構成されている。
【0006】
暗室11には窓11aがあり、ここにCCDカメラ12のファインダー12aがあって、ここから肉眼で覗くことで、CCDカメラ12の撮影画像を確認することができる。画像処理装置15としては、パソコンを使用している。
【特許文献1】特開2007−88419
【特許文献2】WO/2006/059615
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽電池は、図9のように構成されている。図9は、太陽電池Mの構成の説明図で、(a)は、太陽電池の内部の太陽電池セルが分かるように記載した平面図で、(b)はその断面図である。
【0008】
図9(a)の平面図に示す様に、太陽電池は角型の太陽電池セル28がリード線29により複数個直列に接続されたストリング25を形成し、さらにそのストリングを複数列リード線29により接続した構成となっている。
【0009】
また太陽電池の断面構造は、図9(b)に示す様に、上側に配置された裏面材22と下側に配置された透明カバーガラス21の間に、充填材23、24を介して複数列のストリング25をサンドイッチした構成を有する。
【0010】
裏面材22は例えばポリエチレン樹脂などの材料が使用される。充填材23、24には例えばEVA樹脂(ポリエチレンビニルアセテート樹脂)などが使用される。ストリング25は、上記のように電極26、27の間に、太陽電池セル28をリード線29を介して接続した構成である。
【0011】
このような太陽電池Mは、上記のように構成部材を積層しラミネート装置などにより、真空の加熱状態下で圧力を加え、EVAを架橋反応させてラミネート加工して得られる。
【0012】
このような太陽電池のコストを削減する要求がある。このためには、太陽電池の歩留まりの向上(生産性の向上)が必要である。したがって太陽電池の構成部材である太陽電池セルをストリング状(図9(a)の25)またはマトリックス状のパネル(図9(a)の30)に接続加工される際に、所定の発電能力を有し、クラック・フィンガー断線・欠けなどの欠陥が無い太陽電池セルを使用する必要である。したがって太陽電池セル単体で発電性能および欠陥の有無を太陽電池セルをストリング状またはマトリックス状に接続加工する前に測定検査する必要がある。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたもので、太陽電池を製造する際の生産性および歩留まりを向上さるために、太陽電池の構成部材である太陽電池セルの発電性能および欠陥の有無を高速および高精度で測定する検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の太陽電池セルの検査装置の一つの形態は、被測定物となる太陽電池セルの電流電圧出力特性を測定するIV測定部と、前記太陽電池セルの欠陥を測定する欠陥検査部を有することを特徴としている。
【0015】
上記の形態の太陽電池セルの検査装置を以下のような構成とすることもできる。
【0016】
前記IV測定部は、光源手段、光量調整手段、端子接続手段、負荷指令手段、IV特性解析手段、IV測定データ収集手段、IV測定部制御手段およびIV特性表示手段を有し、さらに前記欠陥測定部は、電源手段、撮影手段、通電手段、画像解析手段、欠陥表示手段および欠陥検査部制御手段を有するように構成することもできる。
【0017】
前記欠陥検査部は、撮影手段を配置した暗室内に被測定物である太陽電池セルを搬入および搬出するための開口部を設けるように構成することもできる。
【0018】
前記欠陥検査部の前に、前記太陽電池セルの加熱部を設け、前記欠陥検査部において前記加熱部にて加熱された太陽電池セルの欠陥を測定する構成とすることもできる。またこの構成の検査装置において、前記IV測定部の前に、前記太陽電池セルの予熱部を設けることもできる。
【0019】
前記欠陥検査部の後にマーキング部を設け、前記IV測定部および前記欠陥検査部の太陽電池セルの検査結果を太陽電池セルにマーキングするような構成とすることもできる。
【0020】
前記IV測定部、前記欠陥検査部における前記被測定物の搬入および搬出は、吸着機能を有する搬送ベルトにより行うように構成することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の太陽電池セルの検査装置は、被測定物となる太陽電池セルの電流電圧特性を測定するIV測定部と、前記太陽電池セルの欠陥を測定する欠陥検査部を有するので、1台の装置で太陽電池セルの電流電圧特性及び欠陥の有無を測定することができるので、太陽電池セルの検査を高効率で行うことができる。
また本発明の太陽電池セルの検査装置により良好と判断された太陽電池セルは、後工程の製造装置、例えばハンダ付け装置などを本発明の検査装置に接続し図9(a)に示すストリング25を製造することも可能である。これにより太陽電池の生産性を飛躍的に向上させることが可能となる。さらに製造される太陽電池をランク分けすることができる。
【0022】
前記IV測定部は、光源手段、光量調整手段、端子接続手段、負荷調整手段、IV測定データ収集手段、IV特性解析手段、IV特性表示手段およびIV測定部制御手段を有し、さらに前記欠陥検査部は、電源手段、撮影手段、通電手段、画像解析手段、欠陥表示手段および欠陥測定部制御手段を有する。このように構成するとにより、太陽電池セルを、その電流電圧出力特性によりランク分けしたり、その欠陥の有無の程度によりランク分けをすることができる。太陽電池セルを有効に活用することが可能になる。
【0023】
前記欠陥検査部は、撮影手段を配置した遮光性部材で構成された筐体内に被測定物である太陽電池セルを搬入および搬出するための常時開口している開口部を設けることにより欠陥検査部の暗室の遮光用のシャッターを設ける必要がなく、またシャッターが閉じる動作が不要になり、太陽電池セルの検査時間を短縮することができる。
【0024】
前記欠陥検査部の前に、前記太陽電池セルの加熱部を設け、前記欠陥検査部において前記加熱部にて加熱された太陽電池セルの欠陥を検査する構成とすることにより、太陽電池セルの欠陥のうちクラックをEL発光により欠陥検査する際にセルが昇温しているので結晶粒界を除外した状態で検査できるのでクラックを正確に判定することができる。
このように太陽電池セルを加熱する場合に、IV測定部の前に予熱部を設けることによりタクトタイムが長くなることなく太陽電池セルを加熱してEL発光により欠陥検査を正確に行うことができる。
【0025】
前記欠陥検査部の後にマーキング部を設け、前記IV測定部および前記欠陥検査部の太陽電池セルの検査結果の情報を太陽電池セルにマーキングすることにより、以下の効果が得られる。
太陽電池の製造工程において太陽電池セルの欠陥に起因する太陽電池の性能不良が発生した場合に、どのような欠陥により性能不良が発生したか追跡することができ、欠陥検査部の判定基準を修正することが可能である。また太陽電池を実際に使用している時に、性能不良が発生した場合に、どのような欠陥により性能不良が発生したか追跡することができ、欠陥検査部の判定基準を修正することが可能である。
【0026】
前記IV測定部、前記欠陥検査部における前記被測定物の搬入および搬出は、吸着機能を有する搬送ベルトを使用しているので、太陽電池セルを搬送中に位置ずれすることがなく太陽電池セルのIV特性および欠陥の有無を正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】被測定物である太陽電池セルの説明図である。
【図2】本発明の実施例1の検査装置の全体構成の正面図である。
【図3】本発明の実施例1の検査装置のIV測定部の構成の説明図である。
【図4】端子接続手段(通電手段)の説明図である。
【図5】IV測定部の電流電圧出力特性測定のブロック図である。
【図6】本発明の実施例1の検査装置の欠陥検査部の説明図である。
【図7】本発明の実施例2の検査装置の全体構成の正面図である。
【図8】本発明の実施例3の検査装置の全体構成の正面図である。
【図9】本発明の検査装置にて測定する太陽電池の構成の説明図で(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図10】従来の太陽電池の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
<1>被測定物(太陽電池セル)
図1は、太陽電池セル200の構成を示す図である。図1(a)は、太陽電池セル200を表側接続電極側(以下、表側という)から見た平面図である。図1(b)は、太陽電池セル200を裏側接続電極側(以下、裏側という)から見た平面図である。
太陽電池セル200は、厚さを略0.16mmとする矩形状の平板形状に形成されている。図1(a)に示すように、本実施形態に係る太陽電池セル200の表側には、太陽電池セル200の一辺から対向する一辺に亘って2本の表側接続電極201が設けられている。また太陽電池セル200の表側には、表側接続電極201に直交するように太陽電池セル200の一辺から対向する一辺に亘って複数のフィンガー部203が設けられている。また、図1(b)に示すように、太陽電池セ200の裏側には、表側接続電極201と同様に太陽電池セル10の一辺から対向する一辺に亘って2本の裏側接続電極202が、設けられている。表側接続電極201および裏側接続電極202の表面には、タブリードとハンダ付けするためのハンダがコーティングされている。なお表側接続電極と裏側接続電極をバスバーという。
【0029】
<2>装置の全体構成
本発明の装置100は、図2に示すように、セル投入部40、セル搬送部50、IV測定部60、欠陥検査部70、およびセル搬出部80からなる。セル投入部40は、ストッカーに収納された測定前の被測定物である太陽電池セルを、セル搬送部の投入側にセットする。セル搬送部50は、被測定物である太陽電池セルを搬送しIV測定部および欠陥検査部に供給し測定完了した太陽電池セルを搬出部のセル搬出位置まで搬送する。IV測定部60は、太陽電池セルのIV特性(電流電圧出力特性)を測定する。欠陥検査部70は、太陽電池セルの欠陥(フィンガー断線、クラック、欠け等)を検査する。セル搬出部80は、セル搬出位置に搬送された太陽電池セルをランク分けしてストッカーに収納する。各部の詳細は、以下説明する。
【0030】
<2>セル投入部の構成
太陽電池セル投入部40は、太陽電池セル200をセル搬送部50の投入位置に供給する。図2に示すように、太陽電池セル投入部40には、セルローディング装置41が備えられている。セルローディング装置41は、検査前の被測定物である太陽電池セル200が重ねて収容されたストッカー42から搬送部50までを往復して移動することができる。具体的には、セルローディング装置41は、ストッカー42から太陽電池セル200を一枚ごと吸着させた後、搬送部50の搬送ベルト51上の所定の位置(投入位置)に載置する。
【0031】
<3>セル搬送部の構成
搬送部50は、太陽電池セル200を位置決めしながら、IV測定部60、欠陥検査部70およびセル搬出部80に間欠搬送する工程を行う。図2に示すように、搬送部50には、搬送ベルト51、搬送ローラ55a、55b、吸着装置56等が備えられている。搬送ベルト51は、セル投入部40側の位置に配設された搬送ローラ55aと、セル搬出部80側の位置に配設された搬送ローラ55bとに巻回されている。搬送ベルト51は、金属製等の薄い平板状のベルトである。また、搬送ローラ55a、55bの回転軸に接続された図示しないローラ駆動装置が駆動することにより、各搬送ローラ55a、55bが矢印方向に回転する。各搬送ローラ55a、55bの回転により、搬送ベルト51の搬送面52に載置された太陽電池セルは、IV測定部60、欠陥検査部70およびセル搬出部80の順に搬送される。
【0032】
また、吸着装置56は、搬送ベルト51の搬送面52の下側に搬送ベルト51の移動方向に亘って配設されている。尚図2においては、搬送ベルト51との間に隙間を持たせて記載している。実際は、図3、図4、図6のようになっている。吸着装置56は、搬送面52に載置された太陽電池セル200を搬送ベルト51に吸着させて位置決めを行うことができる。また、図2に示すように、搬送ベルト51には、搬送ベルト51の移動方向に亘って複数の吸着孔53(図4参照)が連続して形成されている。本実施形態の搬送ベルト51には、搬送ベルト51の幅方向における左右両側に2列の吸着孔53が形成されている。各々1列ずつの吸着孔53は、搬送ベルト51上に載置された太陽電池セルのバスバー以外の箇所を吸着できる位置に複数個形成される。
【0033】
<4>IV測定部60の構成
本IV測定部は、太陽電池セルに疑似太陽光を照射し、太陽電池セルから出力される電流電圧特性の測定を行う部分である。以下IV測定部の構成について説明する。
【0034】
<4−1>IV測定部60の全体構成
図3は、IV測定部60の構成を示す。図3において、(a)は太陽電池セル200の搬送方向を直角な方向から見た正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。IV測定部は、略矩形箱形の筐体61内に光源手段62、光量調整手段63、端子接続手段64(図4参照)および被測定物である太陽電池セル200が配置されている。また筐体61には、<2>で説明したセル搬入部の搬送ベルトが通過できるような構成となっている。筐体61には、搬送ベルトの通過部分のみ開口部61aが設けられている。この開口部は、搬送ベルトが筐体61へ入る部分と出る部分の2箇所設けられている。さらにこの開口部の寸法は、被測定物である太陽電池セル200とセル搬送部が通過できるように決められる。
本IV測定部の筐体外に負荷指令手段65、IV特性解析手段66、IV測定データ収集手段67、IV測定部制御手段68およびIV特性表示手段69が設けられている。
【0035】
<4−2>光源手段62
IV測定部に使用される、光源用ランプとして、キセノンランプやメタルハライドランプ等が用いられる。本実施形態の場合、図3に示すように光源用ランプは略矩形箱形の筐体61の上部に設けられている。
【0036】
<4−3>光量調整手段63
光量調整手段は、図3に示すように光源ランプと被測定物である太陽電池セルの間にフィルター等を設け適正なスペクトル分布を有する疑似太陽光を照射する。また照射光の強度は、光源ランプ62の電源回路62a(図5参照)からのランプ電圧を調整することにより、適正な強度の照射光を被測定物である太陽電池セルに照射する。
【0037】
<4−4>端子接続手段64
端子接続手段は、図4に示すように、太陽電池セルの表面側(受光面側)のバスバー部201と裏面側のバスバー部202にプローブPを接触させて、太陽電池セルに照射光を照射させた際に発生する電流出力および電圧出力を取り出す。太陽電池セルにて発生する電流出力および電圧出力は、IV特性解析手段66に転送される。プローブPは太陽電池セルの表面側と裏面側とで昇降式となっている。
【0038】
以下IV測定部の出力特性測定のブロック図(図5)を参照しながら説明する。
<4−5>負荷指令手段65
太陽電池セルの表面側(受光面側)に照射光の照度が規定の照度であることが確認された後、IV測定部制御手段68により電子負荷装置65aに負荷指示値を指示し被測定体の太陽電池セルに印加する電流または電圧を変更する。
【0039】
<4−6>IV特性解析手段66
IV特性解析手段66は、電子負荷装置65aから太陽電池セルに印加する電流を時間的に変化させながら出力される電圧を計測し、その結果を保存して太陽電池セルの出力特性曲線のデータを作成し、所定の出力特性を有するか否か判断する。解析手段としては、パソコンなどのコンピュータを使用することができる。上記の場合は、電子負荷装置からの指示値を電流制御した場合であるが、電圧制御することも可能である。この場合は出力電流を測定することになる
【0040】
<4−7>IV測定データ収集手段67
IV測定データ収集手段は、太陽電池セル200が出力する電流と電圧、及び、照度検出器62bから検出される照度のデータを収集する。このIV測定データ収集手段は、データ処理ボードとアナログ出力ボードを備え、アナログ信号をデジタル信号に変換して収集する電子回路を主体に形成したデータ収集ボードとして構成したものである。
【0041】
<4−8>IV測定部制御手段68
IV測定部制御手段は、IV測定部の光源手段62、端子接続手段64、負荷指令手段65、IV特性解析手段66、IV測定データ収集手段67、IV特性表示手段69を制御する。IV特性解析手段66は、パソコンを使用しても良いし、別置きの制御装置としても良い。
【0042】
<4−9>IV特性表示手段69
IV特性表示手段は、IV特性解析手段66にて作成した太陽電池セルの出力特性曲線を表示する。出力特性曲線を表示は、パソコンのディスプレイに表示させても良いし、別途表示器を設け表示させても良い。
【0043】
<4−10>IV測定部の動作
太陽電池セルは、図3に示すように、受光面を上に向けて搬送ベルトにて吸着されてIV測定部に搬入される。太陽電池セルは、セル投入部にて搬送ベルトに対して所定の位置に吸着されるので位置のずれは搬送方向の搬送ベルトの停止位置のばらつき程度であり、IV測定には十分対応可能である。
【0044】
IV測定部に到達した太陽電池セルは、図4に示すように、端子接続手段により、太陽電池セルの表面側と裏面側のバスバー部に、プローブ端子Pが接続される。太陽電池セルには、光源ランプにより受光面側(表面側)に光源光が照射される。照射光は、パルス状に照射される。パルス波形としては、波形の頂部が4msec〜10msecの平坦部を有するミドルパルス波形等が使用される。太陽電池セルに照射される照射光の照度は、測定前に照度検出器62bにより確認される。この照射光の照度の確認は、被測定物である太陽電池セル毎に行う必要はなく、定期的に確認すれば良い。規定照度であることを確認した後、測定を行う。光源ランプの発光は、1回発光でもよいし、複数回とし、予備測定を行いその後本測定を行っても良い。
【0045】
電流電圧出力特性測定は、図5に示すように、IV測定部制御手段68により負荷指令手段65へ電流制御または電圧制御により一定時間間隔で電流指令値または電圧出力値を変更する。電流制御の場合は、電流指令値を変更しながら電圧出力値を取得する。1回の光源ランプの発光で200点から400点の電流および電圧の測定データが得られる。この一定時間間隔毎の電流および電圧の測定データをIV測定データ収集手段67にて収集し、IV特性解析手段66に転送しIV特性曲線および出力特性曲線を作成する。その後、得られたIV特性曲線および出力特性曲線は、IV特性表示手段69により表示させる。
電流電圧出力特性測定が電圧制御の場合は、電圧指令値を変更しながら電流出力値を取得し、上記と同様の動作を行う。
【0046】
また出力された電流および電圧の測定データをIV特性解析手段66に転送しIV特性曲線および出力特性曲線を作成する以外に、太陽電池セルの出力特性結果の情報にランク分けした情報を付与する。この各太陽電池セルの出力特性結果の情報とランク情報は、太陽電池セルと紐づけされ本発明の検査装置の全体制御装置90に転送され格納される。
【0047】
<5>欠陥検査部70の構成
本欠陥検査部は、太陽電池セルに順方向の電流を印加し、太陽電池セルをEL発光させることによりセルのマイクロクラックなどの欠陥検査を行う部分である。以下欠陥検査部の構成について説明する。
【0048】
<5−1>欠陥検査部の全体構造
図6は、欠陥検査部の構成を示す図で、(a)は太陽電池セル200の搬送方向を直角な方向から見た正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。略矩形箱形の暗室内71にEL発光した状態のセル画像を撮影するためのカメラ74、被測定物である太陽電池セルおよび通電手段73(図4参照)が設けられている。また欠陥検査部には、<2>で説明したセル搬入部の搬送ベルトが通過できるような構成となっている。また暗室には、搬送ベルトの通過部分のみ開口部72が設けられている。この開口部は、搬送ベルトが暗室へ入る部分と出る部分の2箇所設けられている。さらにこの開口部の寸法は、以下のように決められる。開口部の幅寸法は、搬送ベルトにて吸着された太陽電池セルを暗室内に搬入できるように、また欠陥検査が終了し暗室から太陽電池を搬出できるよう、太陽電池セルの幅よりも僅か広い程度でよい。開口部の高さ寸法は、搬送ベルトとセルの厚さの合計よりも大きければ良い。しかし開口部の高さ寸法の隙間は、欠陥検査の際に太陽電池セルの画像撮影に支障ないように極力少なくすることが望ましい。
【0049】
このように暗室の搬送ベルトの通過部分に必要最低限の寸法の開口部を設けることにより、開口部の扉の開閉動作の確認が不要になり太陽電池セルの欠陥検査の高速化を図ることができる。
【0050】
<5−2>太陽電池セルの暗室内へ位置決め
太陽電池セルは、セル投入部にて搬送ベルトに対して所定の位置に搬送されるので位置のずれは搬送方向の暗室内の搬送ベルトの停止位置のばらつき程度である。撮影用カメラで画像撮影が可能であれば特に搬送方向に対する精密な位置決め手段は、不要である。
【0051】
<5−3>通電手段
通電手段73は、図4に示すように、IV測定部の端子接続手段64と同様の構成となっている。太陽電池セルの表面側(受光面側)と裏面側のバスバー部にプローブPを接触させ、電源手段(図10の電源14)により太陽電池セルに順方向の電流を印加する。プローブはセルの表面側と裏面側とで昇降式となっている。
【0052】
<5−4>撮影用カメラ
撮影用カメラ74は、図示のように暗室上部に固定されている。太陽電池セルから発するEL発光は、1,000nmから1,300nmの波長の微弱な光であり、暗室内で発光させ、撮影用カメラ74でこの微弱な光を撮影する。このため、撮影用カメラ74としては微弱な光に対する感度の良いCCDカメラを用いる必要がある。
【0053】
<5−5>その他機器
上記の他に、図示を省略するが、図10の従来例で示した電源14やパソコンを利用した画像処理装置15が設けられている。
【0054】
<5−6>欠陥検査部の動作
太陽電池セルは、受光面を上に向けて搬送ベルトにて吸着されて本欠陥検査部の暗室内に搬入される。太陽電池セルは、セル投入部にて搬送ベルトに対して所定の位置に吸着される。欠陥検査部における太陽電池セルの位置のずれは搬送方向の暗室内の吸着ベルトの停止位置のばらつき程度であるが、ごく僅かである。したがってその停止位置のばらつきは、撮影用カメラの画像処理により十分対応可能である。
【0055】
暗室71の所定の位置に達した太陽電池セルは、図示しない電源手段との間で通電手段によりプローブPが太陽電池セルのバスバー部に接続がされる。太陽電池セルは、暗室内に配置されている。太陽電池セルに電源から順方向の電流を流す。太陽電池セルがEL発光するので、カメラ74で撮影する。暗室は、一部開口部があるものの最小限にしているので太陽電池セル200から発するEL光の撮影には問題ない。
【0056】
撮影用カメラ74により撮影した画像は、図示しないパソコンなどからなる画像処理装置15(図10参照)に画像データを送る。画像処理装置は、各太陽電池セルの画像から発光しない部分を取り出して分析し、太陽電池セルの合否を判断する。尚撮影画像を分析し欠陥の種類や暗部の状況、検査した欠陥(フィンガー断線・クラック・欠け等)の程度によりによりランク付けを行うことも可能である。
【0057】
また欠陥検査部にて欠陥検査した結果に基づき太陽電池セルをランク分けした情報は、太陽電池セルと紐づけされ本発明の検査装置の全体制御装置90に転送され格納される。
【0058】
<6>セル搬出部の構成
太陽電池セル搬出部80は、IV測定部60および欠陥検査部70にて測定および検査が完了した太陽電池セル200をストッカーなどに収納する。
図2に示すように、セル搬出部80には、セルアンローディング装置81が備えられている。セルアンローディング装置81は、搬出位置からストッカー82まで往復して移動する。具体的には、セルアンローディング装置81は、搬出位置から測定および検査が完了した太陽電池セル200を一枚ごと吸着させた後、ストッカー82の位置に載置する。
【0059】
ストッカー82は、測定検査した太陽電池セル200の結果によりランク分けして収納できるようにランク毎のストッカー82a〜82dを用意することができる。ストッカーの数量は、本実施例の数量には限定されることはなく適宜変更することができる。太陽電池セル200は、太陽電池セル200毎に全体制御装置90に保存された出力特性結果の情報とランク情報、および欠陥検査結果とランク情報に基づきストッカー82に収納される。
【0060】
このように太陽電池セルをランク分けすることにより、ランク分けされた太陽電池セル毎にアッセンブラ装置(ストリンガー装置)によりハンダ付けして図9(a)のストリング25を製造することができる。したがって製造されたストリング25もランク分けが可能となる。同一ランクのストリングを複数列使用してマトリックス状に形成することにより太陽電池モジュールのランク分けをすることができる。これにより太陽電池モジュールの歩留まりを向上させることができる。
【0061】
また本発明の検査装置をアッセンブラ装置(ストリンガー装置)と直結することにより太陽電池モジュールの生産性を更に向上させることができる。
【実施例2】
【0062】
本実施例では、図7に示すように、IV測定部と欠陥検査部の間に加熱部300を設け被測定物である太陽電池セル200を50℃程度に加熱する。加熱された太陽電池セルを欠陥検査部へ搬送し太陽電池セルの欠陥を検査する。加熱部の構成を以下に説明する。
【0063】
<7>加熱部の構成
加熱部300は、太陽電池セル200を加熱する工程を行う。
図7(a)に示すように、本実施形態の加熱部300には、加熱炉301内に搬送ベルト51の上部に、ヒータ302が備えられている。ヒータ302の数量は、1つ以上で良く、使用するヒータの加熱能力に応じて、複数個設けることができる。ただしヒータ302の数量は、本発明の装置の搬送方向の長さを考慮すると極力数量を少なくすることが望ましい。またヒータ302を複数個設ける場合は、太陽電池セルの搬送方向と直角な方向に並列状態で設けることが望ましい。各ヒータ302は、例えば熱風ヒータやIRランプ等を使用することができる。また各ヒータ302は、搬送ベルト51で搬送されている太陽電池セル200を直接加熱する他、加熱炉301内の雰囲気を加熱することで、太陽電池セル200全体を満遍なく加熱する。
【0064】
さらに、各ヒータ302は、全体制御装置90内の温度制御装置により加熱する温度がコントロールされている。具体的には、加熱炉301内には、搬送ベルト51に近接した位置に図示しない温度検出装置が設けられている。温度制御装置は、温度検出装置に基づいて、太陽電池セルが所定の温度になるように制御している。
【0065】
本発明の検査装置のサイクルタイムを短縮する必要がある場合は、図7(b)に示すように、IV測定部の前に予熱部304を設けることができる。予熱部304の加熱炉303内にヒータ302が設けられている。これにより太陽電池セルを、その電流電圧特性に影響を及ぼさない程度の温度に加熱することができる。
【0066】
尚欠陥検査部前で太陽電池セルを加熱する温度は、通常50℃に程度に設定される。この温度は、以下のように設定される。欠陥検査部において太陽電池セルに順方向の電圧を印加しEL発光させ、カメラで太陽電池セルを撮影し、太陽電池セル内にフィンガー断線・クラック・欠け等の欠陥が存在すると、その撮影画像には線状や面状の暗部が形成される。この撮影画像には、太陽電池セル内に存在する結晶粒界も線状の暗部として現れる。太陽電池セルをある温度に加熱するとこの結晶粒界が消滅する。これにより線状の暗部のうち結晶粒界による暗部をクラックによる暗部と判定することがなくなる。したがって太陽電池セル内の欠陥判定の精度を向上させることができる。このように加熱部300の加熱温度は設定される。
【実施例3】
【0067】
本実施例では、図8に示すように、本発明の実施例1の検査装置の欠陥検査部の搬出側にマーキング部400を設けている。尚実施例2の検査装置に本実施例と同様の形態でマーキング部を設けることもできる。マーキングの方法としては、公知のレーザマーキング加工などが使用できる。マーキング部では、IV測定部の出力特性測定結果とそのランク情報、および欠陥検査部にて検査した欠陥検査結果とそのランク情報をバーコード化したり、QRコード化して太陽電池セルの発電に影響しない箇所にレーザ加工によりマークを付与する。本実施例の図面では、マーキング部は太陽電池セルの受光面側の上方に配置されているが、マーキング部をセル搬出部の下方に配置することも可能である。このように太陽電池セルに測定結果や検査結果をマークすることにより、以下のような効果が発現する。太陽電池の製造工程において太陽電池セルの欠陥に起因する太陽電池の性能不良が発生した場合に、どのような欠陥により性能不良が発生したか追跡することができ、欠陥検査部の判定基準を修正することが可能である。また太陽電池を実際に使用している時に、性能不良が発生した場合に、どのような欠陥により性能不良が発生したか追跡することができ、欠陥検査部の判定基準を修正することが可能である。
【0068】
これにより太陽電池セルの品質を高精度に検査することができ、太陽電池モジュールの生産性や歩留まりを格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0069】
100 検査装置
200 太陽電池セル(被測定物)
300 加熱部
304 予熱部
400 マーキング部
11 暗室
12 CCDカメラ
13 太陽電池セル
14 電源
15 画像処理装置
21 透明カバーガラス
22 裏面材
23、24 充填材
25 ストリング
26、27 電極
28 太陽電池セル
29 リード線
30 マトリックス
40 セル投入部
41 セルローディング装置
42 ストッカー
50 セル搬送部
51 搬送ベルト
52 搬送面
53 吸着孔
55 搬送ローラ
56 吸着装置
60 IV測定部
61 筐体
62 光源手段
63 光量調整手段
64 端子接続手段
65 負荷指令手段
66 IV特性解析手段
67 IV測定データ収集手段
68 IV測定部制御手段
69 IV測特性表示手段
70 欠陥検査部
71 筐体
72 開口部
73 通電手段
74 撮影用カメラ
80 セル搬出部
81 セルアンローディング装置
82 ストッカー
90 全体制御装置
M 太陽電池
P プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物となる太陽電池セルの電流電圧出力特性を測定するIV測定部と、前記太陽電池セルの欠陥を測定する欠陥検査部を有することを特徴とする太陽電池セルの検査装置。
【請求項2】
前記IV測定部は、光源手段、光量調整手段、端子接続手段、負荷指令手段、IV特性解析手段、IV測定データ収集手段、IV測定部制御手段およびIV特性表示手段を有し
さらに前記欠陥測定部は、電源手段、撮影手段、通電手段、画像解析手段、欠陥表示手段および欠陥検査部制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セルの検査装置。
【請求項3】
前記欠陥検査部は、撮影手段を配置した暗室に被測定物である太陽電池セルを搬入および搬出するための開口部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池セルの検査装置。
【請求項4】
前記欠陥検査部の前に、前記太陽電池セルの加熱部を設け、前記欠陥検査部において前記加熱部にて加熱された太陽電池セルの欠陥を測定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池セルの検査装置。
【請求項5】
前記IV測定部の前に、前記太陽電池セルの予熱部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の太陽電池セルの検査装置。
【請求項6】
前記欠陥検査部の後にマーキング部を設け、前記IV測定部および前記欠陥検査部の太陽電池セルの検査結果を太陽電池セルにマーキングすることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池セルの検査装置。
【請求項7】
前記IV測定部、前記欠陥検査部における前記被測定物の搬入および搬出は、吸着機能を有する搬送ベルトにより行うことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の太陽電池セルの検査装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−138981(P2011−138981A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299123(P2009−299123)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【出願人】(509045313)日清紡アルプステック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】