説明

太陽電池バックシート及びそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】高温多湿下における過酷な保存条件下においても、バリア性劣化およびこのバリア性劣化に伴う太陽電池バックシートの外観不良を伴わない、耐湿熱性に優れた太陽電池バックシート及びこの太陽電池バックシートを用いた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】樹脂フィルムからなる基材の少なくとも一方の面に、プライマー層を積層し、前記プライマー層上に第一の無機化合物層を積層し、前記第一の無機化合物層の上に第一のガスバリア被覆層を積層し、さらにその上に第二の無機化合物層、第二のガスバリア被覆層を順次積層してなるガスバリア積層フィルムの両面に、接着剤層を介して高分子フィルムを積層してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールを構成する一部材である太陽電池バックシートと、この太陽電池バックシートを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する内外各方面の関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制のために、様々な努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇し、地球環境に重大な影響を及ぼす。この地球規模の問題を解決するために、化石燃料の代替エネルギーとして様々な検討が行われており、特に太陽光発電については、そのクリーン性や無公害性という点から期待が高まっている。
【0003】
太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、シリコン、カドミウム−テルル、ゲルマニウム−ヒ素などの半導体が用いられている。現在、多用されているものに、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等がある。太陽電池の構造としては、太陽電池素子単体(セル)をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年)に亘ってセルを保護するために種々パッケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを「太陽電池モジュール」と呼んでいる。
【0004】
一般的に、太陽電池モジュールは、太陽光が当たる面をガラス面で覆い、太陽電池モジュール内の太陽電池素子単体の固定及び保護、電気絶縁の目的で、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性プラスチックからなる充填材で間隙を埋め、さらに太陽電池モジュール裏面はバックシートで保護された構成になっている。
【0005】
これらの太陽電池モジュールは、主に屋外で使用されるため、その構成や材質構造などにおいて、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性等の耐久性が要求されると共に、バックシートには外部からの水蒸気(水分)の進入を遮断するためのガスバリア性も要求される。これは水分の透過により充填材が剥離したり、変色したり、配線の腐蝕を起こしたりした場合に、モジュールの出力そのものに影響を与える恐れがあるためである。すなわち、太陽電池モジュールに用いられるバックシートにあっては、高い耐久性および高いガスバリア性が要求される。
【0006】
これらの要求を満たすため、従来から、基材側からのアプローチとして、耐候性や難燃性に優れ、太陽電池モジュールの充填材として良く使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体と良好な接着性を有するポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂をポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム基材やアルミニウム箔基材の両面に積層したものが太陽電池バックシートに多く使用されてきた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、フッ素樹脂は高価であり、アルミニウム箔はガスバリア性に極めて優れているが、短絡あるいは絶縁不良等の電気的トラブルの恐れがある。
【0007】
そのため、電気絶縁性に優れるポリエチレンテレフタレートなどの耐候性フィルムを用いた太陽電池バックシートも開発されるようになっており、エチレン−酢酸ビニル共重合体と良好な接着性を持たせるために、ポリエステルフィルムの一方に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を貼りあせた太陽電池バックシートも開発されている。また、優れたガスバリア性を付与する対策として、無機化合物を蒸着させたガスバリアフィルムを上記耐候性
を有する基材と共に積層させることが検討されている(例えば、特許文献2〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平8−500214号公報
【特許文献2】特表2002−520820号公報
【特許文献3】特開2001−111073号公報
【特許文献4】特開2002−100788号公報
【特許文献5】特開2002−134771号公報
【特許文献6】特開2002−26354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、太陽電池モジュールは、上述したように自然環境において20〜30年間の製品保証を行う必要がある。そのことから、太陽電池モジュールを過酷条件下で保存することで製品性能評価が行われている。この過酷条件は、例えば、85℃−85%相対湿度下に2000〜3000時間保管することで行われるものであり、基材の耐候性やガスバリア性能などを本環境で促進試験することで自然環境化での性能劣化が検討されている。
【0010】
一方、上記過酷条件でも2000〜3000時間の評価時間を要することから、さらに過酷な条件での促進評価が求められるようになり、例えば、PCT評価(加圧蒸気による促進試験)で120℃−100%相対湿度下に100時間という評価形態も行われるようになってきた。しかしながら、このPCT評価の場合、従来提案されてきたバリアフィルムを積層した太陽電池バックシートでは、その過酷な保存評価環境によって、太陽電池バックシートがバリア性劣化と基材劣化に伴う外観不良を伴う結果となり、実用における信頼性を保証できるものではなかった。ここでの、太陽電池バックシートのバリア性劣化および外観不良は、太陽電池の性能についても影響を与える恐れがあり、太陽電池普及のためにクリアすべき課題であった。
【0011】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、高温多湿下における過酷な保存条件下においても、バリア性劣化およびこのバリア性劣化に伴う太陽電池バックシートの外観不良を伴わない、耐湿熱性に優れた太陽電池バックシート及びこの太陽電池バックシートを用いた太陽電池モジュールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、樹脂フィルムからなる基材の少なくとも一方の面に、プライマー層を積層し、前記プライマー層上に第一の無機化合物層を積層し、前記第一の無機化合物層の上に第一のガスバリア被覆層を積層し、さらにその上に第二の無機化合物層、第二のガスバリア被覆層を順次積層してなるガスバリア積層フィルムの両面に、接着剤層を介して高分子フィルムを積層してなることを特徴とする太陽電池バックシートである。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記ガスバリア積層フィルムにおいて、前記プライマー層が、シランカップリング剤あるいはその加水分解物と、ポリオールと、イソシ
アネート化合物との複合物からなることを特徴とする請求項1に記載する太陽電池バックシートである。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記シランカップリング剤あるいはその加水分解物に、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくともどちらか一方と反応する官能基を含むことを特徴とする請求項2に記載する太陽電池バックシートである。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記複合物中に、一般式M(OR)n(M:金属元素、R:CH、Cなどのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシドあるいは前記金属アルコキシドの加水分解物を添加することを特徴とする請求項2または3に記載する太陽電池バックシートである。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記ガスバリア積層フィルムにおいて、前記基材が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載する太陽電池バックシートである。
【0017】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記ガスバリア積層フィルムにおいて、前記プライマー層の厚さが0.01〜1μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載する太陽電池バックシートである。
【0018】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記ガスバリア積層フィルムにおいて、前記無機化合物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化亜鉛あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載する太陽電池バックシートである。
【0019】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記ガスバリア積層フィルムにおいて、ガスバリア被覆層が、水溶性高分子化合物と、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物および/またはその重合物の少なくとも1種類以上とを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載する太陽電池バックシートである。
【0020】
また、本発明の請求項9に係る発明は、前記ガスバリア被覆層において、前記水溶性高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、デンプンのうちの少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項8に記載する太陽電池バックシートである。
【0021】
また、本発明の請求項10に係る発明は、前記ガスバリア被覆層において、金属アルコキシド中の金属がSi、Al、Ti、Zrあるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項8または9に記載する太陽電池バックシートである。
【0022】
次に、本発明の請求項11に係る発明は、前記高分子フィルムの一方に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を貼り合わせたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載する太陽電池バックシートである。
【0023】
次に、本発明の請求項12に係る発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載する太陽電池バックシートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム等からなる基材の少なくとも一方の面に、プライマー層を積層し、その上に、第一の無機化合物層、第一のガスバリア被覆
層、第二の無機化合物層、第二のガスバリア被覆層を順次積層したことを特徴とするガスバリア積層フィルムの両面に、接着剤層を介して高分子フィルムを積層した太陽電池バックシートであり、さらに、その一実施形態として、充填剤であるエチレン−酢酸ビニル共重合体と良好な接着性を持たせるために、高分子フィルムの一方に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を積層した構成の太陽電池バックシートであり、更に、この太陽電池バックシートを用いた太陽電池モジュールである。そのため、従来提案されてきたバリアフィルムを積層した太陽電池バックシートでは性能が不十分であった、高温多湿の環境下においても、ガスバリア劣化が起こりにくく、太陽電池モジュールの外観不良も伴わない長期信頼性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の太陽電池バックシートの、一実施形態での構成例を断面で示す模式図である。
【図2】本発明に係る太陽電池モジュールの、一実施形態での構造例を断面で示す模式図である。
【図3】本発明に係る太陽電池モジュールの、一実施形態での製造工程を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の太陽電池バックシート12の、一実施形態での構成例を断面で示す模式図である。本発明の太陽電池バックシートの一例の構成は、2つの主面を有する樹脂フィルムからなる基材1の少なくとも一方の主面上に、プライマー層2と、第一の無機化合物層3、第一のガスバリア被覆層4、次いで第二の無機化合物層5と第二のガスバリア被覆層6を積層したガスバリア積層フィルム7の両面に、接着剤層8を介して高分子フィルム9を積層し、高分子フィルム9のいずれか片面に接着剤層10を介してエチレン−酢酸ビニル共重合体11を積層した太陽電池バックシート12である。
【0027】
上述した基材1は透明な樹脂フィルムからなっており、種類としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系フィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等のエンプラフィルム等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械強度や寸法安定性を有するものが良い。特にこれらの中で二軸方向に任意に延伸された二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステル系フィルムが好ましいが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。厚さは特に制限を受けるものでないが、実用的には3〜200μmの範囲とすることがより好ましい。また、前記フィルムには種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などが添加されていても良い。
【0028】
プライマー層2としては、例えばアクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリエステルポリオール、及びポリウレタンポリオール等から選択されるポリオール類と、イソシアネート化合物との2液反応によって得られる有機高分子、またはポリイソシアネート化合物および水との反応によりウレア結合を有する有機化合物、ポリエチレンイミンまたはその誘導体、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール、また有機変性コロイダルシリカのような無機シリカ、シランカップリング剤およびその加水分解物のような有機シラン化合物を主剤とするものなどが挙げられる。特にアクリルポリオールと、イソシアネート化合物と、シランカップリング剤との組み合わせが好ましい。この組み合わせからなるプライマー層2を用いると、基材1と無機化合物層3との間に、
安定した高い密着性を得ることができる。
【0029】
イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその水素添加体などの各種ジイソシアナート系モノマーを使用することが可能である。また、これらのジイソシアナート系モノマーをトリメチロールプロパンやグリセロールなどの3官能の活性水素含有化合物と反応させたアダクトタイプや、水と反応させたビューレットタイプや、イソシアネート基の自己縮合を利用したトリマー(イソシアヌレート)タイプなど3官能の誘導体やそれ以上の多官能性誘導体を用いても構わない。
【0030】
シランカップリング剤の例としては、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えばエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤或いはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる
さらに、これらのシランカップリング剤のうち、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基を含むものや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むものがある。さらにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むものや、ビニルトリメトキシシラン、ビニル(β−メトキシエトキシ)シラン等のようなシランカップリング剤にアルコール等を付加し水酸基等を付加したものでも良く、これら1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0031】
これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシア化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固な透明プライマー層2を形成し、他端のアルコキシ基等の加水分解によって生成したシラノール基が無機化合物中の金属や、無機化合物の表面の活性の高い水酸基等と強い相互作用により無機化合物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。よって上記シランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
【0032】
また、ポリオールとは高分子中に二つ以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応させるものである。中でもアクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールもしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオールが特に好ましい。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシルブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオール等が好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性を考
慮するとヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0033】
ポリオールとシランカップリング剤の配合比は、質量比換算で1/1〜1000/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1〜100/1の範囲にあることである。溶解および希釈溶剤としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル・酢酸ブチル等のエステル類、メタノール・エタノール・イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン・キシレン等の芳香族炭化水素類等を単独及び任意に配合したものが用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0034】
またシランカップリング剤とポリオールの配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加される触媒としては、反応性及び重合安定性の点から塩化錫(SnCl、SnCl)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)Cl)、錫アクコキシド等の錫化合物、チタンキレートであることが好ましい。特に、環境面から、チタンキレートを用いることが好ましい。添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果が得られないため、3官能オルガノシランに対してモル比換算で1/10〜1/10000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1/100〜1/2000の範囲にあることが望ましい。
【0035】
更に上記混合物の調液時に液安定性を向上させるために、金属アルコキシド或いはその加水分解物を添加しても一向に構わない。この金属アルコキシドとは、テトラエトキシシラン(Si(OC)、トリプロポキシアルミニウム(Al(OC)など一般式M(OR)n(M:金属元素、R:CH、Cなどの一般式Cn2n+1で表されるアルキル基)で表せるもの或いはその加水分解物である。なかでもテトラエトキシシランやトリプロポキシアルミニウム或いは両者の混合物が、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。この金属アルコキシドの加水分解物を得る方法は、シランカップリング剤とともに加水分解を行っても構わないし、単独に酸等を添加して行ったのち添加しても構わない。
【0036】
プライマー層2は、このようなシランカップリング剤を直接或いはあらかじめ加水分解反応させたものまたは金属アルコキシドとともに加水分解したもの(このときに上述した反応触媒等を一緒に添加しても一向に構わない)を、ポリオールやイソシアネート化合物と混合して複合溶液を作製するか、またはシランカップリング剤、ポリオールを溶媒中にあらかじめ混合しておき(この時上述した反応触媒、金属アルコキシドを一緒に添加しても一向に構わない)加水分解反応を行ったもの、更にはシランカップリング剤とポリオールを混合しただけのもの(この時上述した反応触媒、金属アルコキシドを一緒に添加しても一向に構わない)の中に、イソシアネート化合物を加え複合溶液を作製し、この複合溶液の薄膜を基材1の上にコーティングして形成する。
【0037】
プライマー層2の厚みは、一般的には乾燥後の厚さで、0.005〜5μmの範囲になるようにコーティングすることが望ましく、より好ましくは0.01〜1μmである。0.01μm未満の場合は塗工技術の点から均一な塗膜が得られ難く、逆に1μmを越える場合は不経済となる傾向がある。
【0038】
次に、第一の無機化合物層3あるいは第二の無機化合物層5に使用される材料としては、例えばケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、及びマグネシウムなどの酸化物、それらの窒化物、及びそれらの弗化物、及びこの酸化物、窒化物、及び弗化物の複合物があげられる。なかでも、酸化ケイ素はバリア性が高く、高温高湿下においても高い
バリア性を維持し、安全性も高いため、好ましい。
【0039】
第一の無機化合物層3あるいは第二の無機化合物層5は、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの真空プロセスにより形成され得る。例えば、酸化ケイ素の蒸着層をフィルム片面に形成する場合、蒸着物質として一酸化ケイ素あるいは二酸化ケイ素を用い、0.133Pa〜1.33×10−3Paの真空下で、抵抗加熱、誘導加熱、あるいは電子ビームで加熱蒸発させる。酸素ガスを供給しながら行う反応蒸着法も採用でき、この場合、金属ケイ素を用いてもよい。
【0040】
第一の無機化合物層3あるいは第二の無機化合物層5の膜厚は、用途や第一のガスバリア被覆層4あるいは第二のガスバリア被覆層6の膜厚によって変わるが、数nmから500nmが望ましい。しかし、5nm以下では、薄膜の連続性に問題があり、また300nmを超えると、クラックが発生しやすいため、好ましくは、5nmから300nmである。
【0041】
第一のガスバリア被覆層4あるいは第二のガスバリア被覆層6は、ガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を第一の無機化合物層3あるいは第二の無機化合物層5にコーティング後、加熱乾燥し形成される。
【0042】
第一のガスバリア被膜層4あるいは第二のガスバリア被覆層6の塗布液に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)は乾燥状態でのガスバリアー性はプラスチックの中では最もすぐれており、これを第一のガスバリア被膜層4あるいは第二のガスバリア被覆層6のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いてもよい。
【0043】
また金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH,C等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0044】
この溶液中にガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
【0045】
乾燥後の第一のガスバリア被覆層4あるいは第二のガスバリア被覆層6の厚みは特に限定しないが、厚みが50μmを越えるとクラックが生じ易くなる可能性があるため、0.01〜50μmとすることが望ましい。ガスバリア被覆層の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等を用いることができる。これらの塗工方式を用いて第一の無機化合物層3あるいは第二の無機化合物層5の上に塗布する。
【0046】
第一のガスバリア被覆層4あるいは第二のガスバリア被覆層6の乾燥法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射などで熱をかけて、水やアルコールなどの溶媒を飛ばす方法であれば、これらのいずれでも、またこれらを2種類以上組み合わせてもかまわない。
【0047】
以上、ガスバリア積層フィッルム7について説明したが、本発明の太陽電池バックシートは、このガスバリア積層フィッルム7の両面に接着剤層8を会して高分子フィルム9が積層されている。更にまた、本発明の太陽電池バックシートは、この高分子フィルムの一方に接着剤層10を介してエチレン−酢酸ビニル共重合体11が貼り合わされている構成をとる。
【0048】
高分子フィルム9は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル等を使用し、25μm〜200μmの範囲のものが好ましい。また、高分子フィルム9には、必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理など接着性を向上させるための表面処理を施すことが可能である。
【0049】
エチレン−酢酸ビニル共重合体11は、モジュール充填剤のエチレン−酢酸ビニル共重合体充填剤との密着性を持たせる機能を担うものであり、モジュール充填剤のエチレン−酢酸ビニル共重合体と同様な架橋剤、カップリング剤、UV吸収剤、酸化防止剤等を含むものを用いてもよいが、特に限定せず、85℃での高温高湿耐性のあるものが好ましい。厚みは、25μm〜200μmの範囲のものが好ましい。
【0050】
また、接着剤層8および接着剤層10は、透明で、接着力が強いものであればよく、例えば、イソシアネート等の硬化、加熱等の硬化、光等の硬化等を用いて接着するもの、あるいは粘着剤等が使用できる。
【0051】
上述したガスバリア積層フィルム7と高分子フィルム9とエチレン−酢酸ビニル共重合体11とを接着剤8あるいは10により貼り合わせる際は、ドライラミネートなどの公知の手法を用いることができ、具体的には、グラビアコート、ロールコート、バーコート、リバースコート等の手法を用いて、ポリウレタン系接着剤をドライ固形分として0.1〜10g/mの範囲で積層させることで、貼り合わせることができる。
【0052】
[太陽電池モジュール]
次に、本発明の太陽電池バックシートを用いた太陽電池モジュールについて説明する。本発明に係る太陽電池モジュールは、例えば、図2に示す太陽電池モジュール18のように、ガラス板13と、配線14を配設した光起電力素子としての太陽電池セル15と、太陽電池バックシート12と、充填剤層16と、枠体(スペーサー)17とを備え、枠体(スペーサー)17によって固定されたガラス板13と太陽電池バックシート12との間に、太陽電池素子15を配置した状態で充填剤層16が充填された構造を有している。
【0053】
上記した太陽電池モジュール18は、図3に示すように、下記(1)〜(4)の工程を経ることによって製造される。
(1)約120〜160℃に加熱された天板上に、ガラス板12と、充填材層16と、太陽電池セル15と、充填材層16と、太陽電池バックシート12とを順次積層した状態でセットする。
(2)チャンバー19、20を真空引きする。
(3)チャンバー19を大気開放し、耐熱性を有するゴムシート21を太陽電池モジュール18に密着させる。
(4)そして、熱と圧力により充填材層16であるエチレン酢酸ビニル共重合体を溶融させ、太陽電池セル15の間に包埋し、この太陽電池セル15を挟み込むガラス板13と太陽電池バックシート12と接着しながら、充填材層16を架橋・固化させる。
【0054】
なお、上記した(4)の工程では、ラミネート後に別ラインに設けたオーブンにて架橋反応をさせるケースと、ラミネーター内部で架橋反応をさせるケースとに分類される。前者はスタンダードキュアといわれるタイプで、後者はファストキュアといわれるタイプである。通常、太陽電池モジュールの充填材層として用いられる材料は、酢酸ビニル含有量が10〜40質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、太陽電池セルの耐熱性、物理的強度を確保するために、熱あるいは光などによりエチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋している。
【0055】
熱架橋を行う場合は、通常有機過酸化物が用いられ、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものが使用される。通常、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが用いられ、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイドなどが用いられる。
【0056】
光硬化を行う場合には、光増感剤が用いられ、水素引き抜き型(二分子反応型)である、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントンなどが用いられる。また、内部開裂型開始剤としては、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタールなど、α−ヒドロキシアルキルフェノン型として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノンなどが使用できる。さらに、α−アミノアルキルフェノン型として、2−メチル−1−[4(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが、またアシルフォスフィンオキサイドなども用いられる。
【0057】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体には太陽電池モジュール18を構成するガラス板13との接着を考慮してシランカップリング剤も配合されており、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが配合される。
【0058】
さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体には接着性及び硬化を促進する目的でエポキシ基含有化合物を配合されている場合もあり、エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アクリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブ
チルグリシジルエーテル等の化合物や、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや質量平均分子量が数千から数十万のポリマーを配合されているケースもある。
【0059】
さらに、充填材層16の架橋、接着性、機械的強度、耐熱性、耐湿熱性、耐候性などを向上させる目的で、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はアリル基含有化合物を添加されており、(メタ)アクリル酸誘導体、例えばそのアルキルエステルやアミドが最も一般的である。この場合、アルキル基としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基の他に、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、アクリルアミドが代表的である。また、アリル基含有化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が配合される。
【0060】
さらに、難燃性を付与するための無機化合物や、耐候性を付与するための紫外線吸収剤、酸化劣化防止のための酸化防止剤も種々に配合されている。すなわち、太陽電池モジュール18を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体は、太陽電池モジュールとして要求される機能を満たすべく、各種添加剤を配合した樹脂組成物であることが挙げられる。
【0061】
以上のようにして製造された、本発明に係る太陽電池モジュール18は、上記太陽電池バックシート12を用いることによって、太陽電池モジュールとして実際に利用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の環境下においても、ガスバリア劣化が起こりにくく、太陽電池モジュールの外観不良も伴わない。
【0062】
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0063】
<実施例1>
厚さ12μmの二軸延伸PETを基材とし、下記の割合で混合したプライマー層溶液をグラビアコート法により、0.2μmの厚みで塗工した。このプライマー層上に、酸化ケイ素を電子ビーム方式により加熱させ、所定の膜組成になるように調整し、膜厚40nmの酸化ケイ素蒸着層を形成した。この酸化ケイ素蒸着層の上面に下記の割合で混合したガスバリア被覆層溶液をグラビアコート法により、0.3μmの厚みで塗工した。さらに、このガスバリア被覆層上に膜厚20nmの酸化ケイ素蒸着層、さらに膜厚約0.3μmのガスバリア被覆層を形成し、ガスバリア積層フィルムを作製した。
[プライマー層溶液]
γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン1質量部と、アクリルポリオール9質量部と、ポリエステルポリオール1質量部とを量りとり、希釈溶媒中に混合攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてTDI(2,4−トリレンジイソシアネート)をアクリルポリオールとポリエステルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈したものをプライマー層溶液とした。
[ガスバリア被覆層溶液]
テトラエトキシシシラン10gに塩酸(0.1N)89gを加え、30分間攪拌し加水分解させた固形分3w質量%(SiO換算)の加水分解溶液とポリビニルアルコールの3質量%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール=90:10 質量比)とを混合したものをガスバリア被覆層溶液とした。
【0064】
<比較例1>
実施例1と同様の材料を用いて、PET基材上に、膜厚約0.2μmのプライマー層、膜
厚20nmの酸化ケイ素蒸着層、膜厚約0.3μmのガスバリア被覆層を積層し、比較例1のガスバリア積層フィルムを作製した。
【0065】
<比較例2>
上記PET基材には、上記プライマー層、酸化ケイ素蒸着層、ガスバリア被覆層、いずれの処理も施さず、厚さ12μmの二軸延伸PET基材そのものを比較例2のフィルムとした。
【0066】
[太陽電池バックシートの作製]
上記実施例1、比較例1のガスバリア積層フィルムと、比較例2のフィルムを中にしてその両面に、ポリカーボネート系接着剤を用いたドライラミネートにより、ポリエチレンテレフタレート50μmをサンドイッチ状に積層して、実施例1、比較例1、比較例2の太陽電池バックシートを作製した。更に、この積層サンプルの片面にポリカーボネート系接着剤を用いたドライラミネートにより、エチレン−酢酸ビニル共重合体(100μm)を積層して、実施例1、比較例1、比較例2の太陽電池バックシートの一実施形態としての太陽電池裏面封止用シートを作製した。各シートの水蒸気透過度を、モダンコントロール社製のPERMATRAN3/31を用いて、JIS K7129 B法に準拠し、40℃、相対湿度90%の雰囲気下で測定した。その値を表1に示す。
【0067】
[太陽電池モジュールの作製]
次に、上記の実施例1、比較例1、比較例2の太陽電池バックシートである太陽電池裏面封止用シートを用いて太陽電池モジュールを作製した。具体的に、太陽電池モジュール用充填剤として、スタンダードキュアタイプのエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂組成物を用いた。太陽電池セルは、多結晶系シリコンのものを用いた。A4サイズの強化ガラス上に、同じサイズで厚さ600μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シートで挟み込んだ太陽電池セルを載置し、さらにその上に太陽電池裏面封止用シートを配置した。また、事前に40℃で3分間予備加熱を行った後、150℃で真空引き6分、圧着8分、圧力1気圧の条件でラミネートを施した。その後、150℃に加温したオーブン中に30分保管し、架橋反応を進行させた。その後、端子ボックスの接着及びアルミフレームによる枠組みを行うことで、それぞれ実施例1、比較例1、比較例2の太陽電池モジュールを作製した。
【0068】
上記太陽電池モジュールを、PCT(プレッシャークッカーテスト)で、120℃×100%R.H.にて、24時間、48時間および72時間の加速劣化試験を行った。評価は、加速劣化試験時間ごとの外観不良箇所を調べた。外観不良が無い場合を ○ 、外観不良が10個未満の場合 × 、外観不良が10個以上の場合を ×× とした。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

表1に示した結果から、比較例1に示した、PET基材上に、プライマー層、酸化ケイ素蒸着層、ガスバリア被覆層を一度だけ積層したガスバリア積層フィルム、あるいは、比較例2に示した、PET基材に、プライマー層、酸化ケイ素蒸着層、ガスバリア被覆層、いずれの処理も施さなかったフィルムの両面に、接着剤を介して高分子フィルムを積層し、充填剤であるエチレン−酢酸ビニル共重合体と良好な接着性を持たせるために、高分子フィルムの一方に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を貼りあせた、比較例1および比較例2の太陽電池バックシートは、太陽電池バックシートのエチレン−酢酸ビニル共重合体の高温高湿環境下による変性から、太陽電池モジュールにおいて、外観不良をともなう結果となった。
【0070】
一方、実施例1に示した、PET基材上に、プライマー層、酸化ケイ素蒸着層、ガスバ
リア被覆層を積層し、さらに、酸化ケイ素蒸着層、ガスバリア被覆層を積層したガスバリア積層フィルム用いた場合の太陽電池バックシートは、水蒸気透過度の測定値からわかるようにガスバリア積層フィルムのバリア性が大きく向上し、PCT試験での高温多湿の環境におけるバリア劣化、水蒸気透過が抑制され、太陽電池バックシートおよび太陽電池モジュールにおいて、外観不良をともなわない結果が得られた。
【符号の説明】
【0071】
1・・・基材 2・・・プライマー層 3・・・第一の無機化合物層
4・・・第一のガスバリア被覆層 5・・・第二の無機化合物層
6・・・第二のガスバリア被覆層 7・・・ガスバリア積層フィルム
8・・・接着剤層 9・・・高分子フィルム 10・・・接着剤層
11・・・エチレン−酢酸ビニル共重合体 12・・・太陽電池バックシート
13・・・ガラス板 14・・・配線 15・・・太陽電池セル
16・・・充填剤層 17・・・枠体 18・・・太陽電池モジュール
19、20・・・チャンバー 21・・・ゴムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムからなる基材の少なくとも一方の面に、プライマー層を積層し、前記プライマー層上に第一の無機化合物層を積層し、前記第一の無機化合物層の上に第一のガスバリア被覆層を積層し、さらにその上に第二の無機化合物層、第二のガスバリア被覆層を順次積層してなるガスバリア積層フィルムの両面に、接着剤層を介して高分子フィルムを積層してなることを特徴とする太陽電池バックシート。
【請求項2】
前記ガスバリア積層フィルムにおいて、前記プライマー層が、シランカップリング剤あるいはその加水分解物と、ポリオールと、イソシアネート化合物との複合物からなることを特徴とする請求項1に記載する太陽電池バックシート。
【請求項3】
前記シランカップリング剤あるいはその加水分解物に、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくともどちらか一方と反応する官能基を含むことを特徴とする請求項2に記載する太陽電池バックシート。
【請求項4】
前記複合物中に、一般式M(OR)n(M:金属元素、R:CH、Cなどのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシドあるいは前記金属アルコキシドの加水分解物を添加することを特徴とする請求項2または3に記載する太陽電池バックシート。
【請求項5】
前記ガスバリア積層フィルムにおいて、前記基材が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載する太陽電池バックシート。
【請求項6】
前記ガスバリア積層フィルムにおいて、前記プライマー層の厚さが0.01〜1μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載する太陽電池バックシート。
【請求項7】
前記ガスバリア積層フィルムにおいて、前記無機化合物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化亜鉛あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載する太陽電池バックシート。
【請求項8】
前記ガスバリア積層フィルムにおいて、ガスバリア被覆層が、水溶性高分子化合物と、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物および/またはその重合物の少なくとも1種類以上とを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載する太陽電池バックシート。
【請求項9】
前記ガスバリア被覆層において、前記水溶性高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、デンプンのうちの少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項8に記載する太陽電池バックシート。
【請求項10】
前記ガスバリア被覆層において、金属アルコキシド中の金属がSi、Al、Ti、Zrあるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項8または9に記載する太陽電池バックシート。
【請求項11】
前記高分子フィルムの一方に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を貼り合わせたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載する太陽電池バックシート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載する太陽電池バックシートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−33595(P2012−33595A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170219(P2010−170219)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】