説明

太陽電池パネルの異常検知装置

【課題】太陽電池パネル本体の異常を検知することが可能であり、かつ、バイパスダイオードの異常を容易に検知することが可能な太陽電池パネルの異常検知装置を提供する。
【解決手段】太陽電池パネル本体3の正極側または負極側の一方に交流電源5を設けると共に、他方に測定手段6を設け、異常判定部11は、交流電源5を制御してバイパスダイオード4を逆方向バイアスし、そのときの入力電圧または入力電流と、出力電圧または出力電流とを基に太陽電池パネル本体3の異常を判定するパネル本体異常判定部12と、交流電源5を制御してバイパスダイオード4を順方向バイアスし、そのときの入力電圧または入力電流と、出力電圧または出力電流とを基にバイパスダイオード4の異常を判定するバイパスダイオード異常判定部13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの故障等の異常を検知する太陽電池パネルの異常検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽電池パネルが出力する直流電流−電圧特性から太陽電池パネルの故障等の異常を検知する太陽電池パネルの異常検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8(a)に示すように、太陽電池発電システムでは、一般に、複数の太陽電池パネル82を直列接続して太陽電池モジュール81を形成している。各太陽電池パネル82の太陽電池パネル本体83の端部から延びる正極と負極との間には、それぞれバイパスダイオード84が設けられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ここで、一例として、図示左から2番目の太陽電池パネル本体83に影がかかるなどして出力が低下した場合を考える。太陽電池パネル本体83での出力が低下すると、後段(図示右側)の太陽電池パネル82からみると、出力が低下した太陽電池パネル本体83は抵抗体となる。そのため、後段の太陽電池パネル82からの電流は、図示破線矢印で示すように、出力が低下した太陽電池パネル本体83をバイパスして、抵抗が略ゼロであるバイパスダイオード84を流れるようになる。このように、バイパスダイオード84は、後段の太陽電池パネル82からの電流をバイパスする役割を果たしている。
【0005】
しかし、図8(b)に示すように、出力が低下した太陽電池パネル本体83に対応するバイパスダイオード84が故障し開放状態となってしまうと、後段の太陽電池パネル82からの電流は、図示破線矢印で示すように、全て太陽電池パネル本体83に流れ込んでしまうことになる。上述のように、出力が低下した太陽電池パネル本体83は抵抗体となるので、流れ込んだ電流により太陽電池パネル本体83は発熱する。その結果、太陽電池パネル本体83が過熱して損傷してしまったり、過熱した太陽電池パネル本体83が熱源となって火災が発生してしまうおそれが生じる。
【0006】
このような問題を避けるために、太陽電池パネルの異常を検知する際には、太陽電池パネル本体の異常を検知するだけでなく、バイパスダイオードの異常も検知する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−201827号公報
【特許文献2】特開平11−330521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の太陽電池パネルの異常検知装置では、バイパスダイオードの異常を検知することができないという問題があった。
【0009】
バイパスダイオードの異常を検知する方法としては、例えば、定期的にテスター等で検査を行い、バイパスダイオードが故障していないかどうかを確認することが考えられるが、非常に面倒であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、太陽電池パネル本体の異常を検知することが可能であり、かつ、バイパスダイオードの異常を容易に検知することが可能な太陽電池パネルの異常検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、太陽電池パネルの異常を検知する太陽電池パネルの異常検知装置であって、前記太陽電池パネルは、太陽電池パネル本体と、該太陽電池パネル本体の正極にカソードが電気的に接続され、前記太陽電池パネル本体の負極にアノードが電気的に接続されたバイパスダイオードと、を有し、前記太陽電池パネル本体の正極側または負極側のいずれか一方に設けられ、前記太陽電池パネルに、直流電圧を重畳した交流電圧を印加可能な交流電源と、前記太陽電池パネル本体の正極側または負極側の他方に設けられ、前記太陽電池パネルから出力される電圧または電流を測定する測定手段と、前記交流電源を制御して前記太陽電池パネルに入力する入力電圧または入力電流を制御すると共に、その入力電圧または入力電流と、前記測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを比較して、前記太陽電池パネルの異常を判定する異常判定部を有する制御装置と、を備え、前記異常判定部は、前記交流電源を制御して前記バイパスダイオードを逆方向バイアスし、そのときの入力電圧または入力電流と、前記測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを基に、前記太陽電池パネル本体の異常を判定するパネル本体異常判定部と、前記交流電源を制御して前記バイパスダイオードを順方向バイアスし、そのときの入力電圧または入力電流と、前記測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを基に、前記バイパスダイオードの異常を判定するバイパスダイオード異常判定部と、を備えた太陽電池パネルの異常検知装置である。
【0012】
前記測定手段は、前記太陽電池パネル本体の正極側または負極側の他方に設けられ、前記太陽電池パネルから出力される電圧を測定する電圧測定手段であり、前記異常判定部は、前記交流電源を制御して前記太陽電池パネルに印加する入力電圧を制御すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記太陽電池パネルの異常を判定するように構成され、前記パネル本体異常判定部は、前記交流電源を制御し交流電圧に重畳する直流電圧の大きさを制御して、前記交流電源から前記太陽電池パネルに、前記バイパスダイオードが逆方向バイアスされるように入力電圧を印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記太陽電池パネル本体の異常を判定するように構成され、前記バイパスダイオード異常判定部は、前記交流電源を制御し交流電圧に重畳する直流電圧の大きさを制御して、前記交流電源から前記太陽電池パネルに、前記バイパスダイオードが順方向バイアスされるように入力電圧を印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記バイパスダイオードの異常を判定するように構成されてもよい。
【0013】
前記交流電源を前記太陽電池パネル本体の正極側に設けると共に、前記電圧測定手段を前記太陽電池パネル本体の負極側に設け、前記パネル本体異常判定部は、前記太陽電池パネルが発電をしていないときに、前記交流電源を制御し交流電圧に正の直流電圧を重畳した入力電圧を前記太陽電池パネルに印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記太陽電池パネル本体の異常を判定するように構成され、前記バイパスダイオード異常判定部は、前記太陽電池パネルが発電をしていないときに、前記交流電源を制御し交流電圧に負の直流電圧を重畳した入力電圧を前記太陽電池パネルに印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記バイパスダイオードの異常を判定するように構成されてもよい。
【0014】
前記交流電源と前記太陽電池パネルとの間に、直流成分を除去するコンデンサを挿入するか否かを切り替え可能なスイッチング回路をさらに備え、前記異常判定部は、前記太陽電池パネルが発電をしているときに、前記コンデンサを挿入し、前記太陽電池パネルが発電をしていないときに、前記コンデンサを挿入しないように前記スイッチング回路を切り替えるように構成され、前記パネル本体異常判定部は、前記太陽電池パネルが発電をしているときに、前記交流電源を制御し直流電圧を重畳しない交流電圧を入力電圧として前記太陽電池パネルに印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記太陽電池パネル本体の異常を判定するように構成されてもよい。
【0015】
前記パネル本体異常判定部または前記バイパスダイオード異常判定部が、前記太陽電池パネル本体または前記バイパスダイオードの異常を検知したときに、警報を発する警報手段をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、太陽電池パネル本体の異常を検知することが可能であり、かつ、バイパスダイオードの異常を容易に検知することが可能な太陽電池パネルの異常検知装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る太陽電池パネルの異常検知装置の概略構成図である。
【図2】(a)は、図1の太陽電池パネルの異常検知装置において、太陽電池パネル本体の異常を判定する際の入力電圧の波形を示す図であり、(b)は、太陽電池パネル本体における入力電圧の周波数と入出力比の関係を示すグラフ図である。
【図3】(a)は、図1の太陽電池パネルの異常検知装置において、バイパスダイオードの異常を判定する際の入力電圧の波形を示す図であり、(b)は、バイパスダイオードにおける入力電圧の周波数と入出力比の関係を示すグラフ図である。
【図4】図1の太陽電池パネルの異常検知装置の異常判定部における異常判定処理の制御フローを示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートにおけるパネル本体異常判定処理の制御フローを示すフローチャートである。
【図6】図4のフローチャートにおけるバイパスダイオード異常判定処理の制御フローを示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る太陽電池パネルの異常検知装置の概略構成図である。
【図8】(a),(b)は、バイパスダイオードが故障した際の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る太陽電池パネルの異常検知装置の概略構成図である。
【0020】
図1に示すように、太陽電池パネルの異常検知装置1は、太陽電池パネル2の異常を検知するためのものであり、交流電源5と、測定手段としての電圧測定手段6と、制御装置10と、警報手段20と、を主に備えている。
【0021】
太陽電池パネル2は、太陽電池パネル本体3と、太陽電池パネル本体3の正極にカソードが電気的に接続され、太陽電池パネル本体3の負極にアノードが電気的に接続されたバイパスダイオード4と、を有している。図中、太陽電池パネル本体3の正極を+、負極を−として示している。
【0022】
太陽電池パネルの異常検知装置1では、太陽電池パネル本体3の正極側または負極側のいずれか一方に交流電源5が設けられ、他方に電圧測定手段6が設けられる。ここでは、交流電源5を太陽電池パネル本体3の正極側に設けると共に、電圧測定手段6を太陽電池パネル本体3の負極側に設けた場合を説明する。
【0023】
交流電源5としては、太陽電池パネル2に対して、直流電圧を重畳した交流電圧を印加可能なものを用いる。つまり、交流電源5としては、バイアス機能を有するものを用いるとよい。また、交流電源5としては、出力する交流電圧の周波数が可変であるものを用いることが望ましい。
【0024】
電圧測定手段6は、太陽電池パネル2から出力される電圧(出力電圧)Voutを測定するものであり、検出抵抗7と出力側交流電圧計8とから構成される。検出抵抗7は、一端が太陽電池パネル本体3の負極に電気的に接続され、他端が接地される。出力側交流電圧計8は、検出抵抗7に並列接続される。
【0025】
また、太陽電池パネルの異常検知装置1では、太陽電池パネル本体3の正極側には、交流電源5から太陽電池パネル2に印加する入力電圧Vinを測定する入力側交流電圧計9が設けられている。
【0026】
制御装置10は、交流電源5を制御して太陽電池パネル2に印加する入力電圧Vinを制御すると共に、その入力電圧Vinと電圧測定手段6(出力側交流電圧計8)で測定した出力電圧Voutの比(以下、入出力比という)を基に、太陽電池パネル2の異常を判定する異常判定部11を有している。異常判定部11は、制御装置10の制御基板10a内の基本回路10bに実装され、メモリ(RAM、ROM)やCPU、I/Oインターフェイス、ソフトウェア等を適宜組み合わせて実現される。
【0027】
制御装置10の出力端14と交流電源5とは、出力用制御信号線16を介して接続されており、制御装置10から交流電源5に、交流電源5が太陽電池パネル2に印加する電圧(入力電圧Vin)を制御する信号(以下、Vin信号という)を送信できるようになっている。
【0028】
また、制御装置10の入力端15と、出力側交流電圧計8および入力側交流電圧計9とは、それぞれ入力用制御信号線17を介して接続されており、出力側交流電圧計8で測定した出力電圧Voutと、入力側交流電圧計9で測定した入力電圧Vinとが、それぞれ制御装置10に入力されるようになっている。
【0029】
さて、異常判定部11は、太陽電池パネル本体3の異常を判定するパネル本体異常判定部12と、バイパスダイオード4の異常を判定するバイパスダイオード異常判定部13と、を備えている。
【0030】
本実施の形態においては、パネル本体異常判定部12とバイパスダイオード異常判定部13は、太陽電池パネル2が発電をしていない夜間などに、異常の判定を行うようになっている。
【0031】
まず、パネル本体異常判定部12について説明する。
【0032】
パネル本体異常判定部12は、交流電源5を制御し交流電圧に重畳する直流電圧の大きさを制御して、交流電源5から太陽電池パネル2に、バイパスダイオード4が逆方向バイアスされるように入力電圧Vinを印加すると共に、入力側交流電圧計9で測定した入力電圧Vinと出力側交流電圧計8で測定した出力電圧Voutの比から入出力比(Vout/Vin)を演算し、その入出力比を基に、太陽電池パネル本体3の異常を判定するように構成されている。
【0033】
本実施の形態では、交流電源5が太陽電池パネル本体3の正極側に接続されているので、パネル本体異常判定部12は、図2(a)に示すような交流電圧に正の直流電圧を重畳した入力電圧Vinを太陽電池パネル2に印加するようになっている。重畳する直流電圧は、交流成分を含む入力電圧Vin全体の値が正となるように適宜設定すればよい。これにより、バイパスダイオード4は常に逆方向バイアスされることとなり、電流は全て太陽電池パネル本体3側を通り、正極側から負極側に向かって流れることになる。
【0034】
ここで、交流電源5が出力する交流電圧の周波数を変化させたときの入出力比の関係(すなわち太陽電池パネル本体3の交流通過特性)を図2(b)に示す。図2(b)に示すように、正常品(図示実線)に比べて、故障品(図示破線)は入出力比が全体的に小さくなっていることが分かる。また、故障はしていないが劣化している劣化品(図示一点鎖線)については、100kHz未満の周波数領域において、正常品に比べて入出力比が小さくなっていることが分かる。
【0035】
つまり、太陽電池パネル本体3が故障したり劣化したりして異常な状態となると、入出力比が小さくなる。よって、本実施の形態では、入出力比が予め設定した閾値以下であるときに、太陽電池パネル本体3に異常があると判定するようにパネル本体異常判定部12を構成した。なお、これに限らず、例えば、正常品の交流通過特性を予め取得しておき、測定した入出力比と、正常品の交流通過特性における入出力比との乖離が大きくなったときに、太陽電池パネル本体3に異常があると判定するようにパネル本体異常判定部12を構成してもよい。パネル本体異常判定部12は、太陽電池パネル本体3に異常があると判定すると、後述する警報手段20に異常信号を送信する。
【0036】
また、図2(b)から分かるように、太陽電池パネル本体3の異常を判定する際に交流電源5から出力する交流電圧の周波数としては、故障のみを判定する場合は100kHz以上(好ましくは、100kHz以上1000kHz未満)とし、故障・劣化の両者を判定する場合は、100kHz未満(好ましくは、1kHz以上10kHz未満)とすればよい。なお、100kHz以上の周波数と、100kHz未満の周波数の両者でそれぞれ異常の判定を行えば、故障であるか劣化であるかも判定することが可能となる。
【0037】
次に、バイパスダイオード異常判定部13について説明する。
【0038】
バイパスダイオード異常判定部13は、交流電源5を制御し交流電圧に重畳する直流電圧の大きさを制御して、交流電源5から太陽電池パネル2に、バイパスダイオード4が順方向バイアスされるように入力電圧Vinを印加すると共に、入力側交流電圧計9で測定した入力電圧Vinと出力側交流電圧計8で測定した出力電圧Voutの比から入出力比を演算し、その入出力比を基に、バイパスダイオード4の異常を判定するように構成されている。
【0039】
本実施の形態では、交流電源5が太陽電池パネル本体3の正極側に接続されているので、バイパスダイオード異常判定部13は、図3(a)に示すような交流電圧に負の直流電圧を重畳した入力電圧Vinを太陽電池パネル2に印加するようになっている。重畳する直流電圧は、交流成分を含む入力電圧Vin全体の値が負となるように、適宜設定すればよい。これにより、バイパスダイオード4は常に順方向バイアスされることとなり、電流は全て抵抗が略ゼロであるバイパスダイオード4側を通り、負極側から正極側に向かって流れることになる。
【0040】
ここで、交流電源5が出力する交流電圧の周波数を変化させたときの入出力比の関係(すなわちバイパスダイオード4の交流通過特性)を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、正常品(図示実線)に比べて、故障品(図示破線)は入出力比が全体的に小さくなっていることが分かる。
【0041】
つまり、上述の太陽電池パネル本体3と同様に、バイパスダイオード4が故障して異常な状態となると、入出力比が小さくなる。よって、本実施の形態では、入出力比が予め設定した閾値以下であるときに、バイパスダイオード4に異常があると判定するようにバイパスダイオード異常判定部13を構成した。なお、これに限らず、例えば、正常品の交流通過特性を予め取得しておき、測定した入出力比と、正常品の交流通過特性における入出力比との乖離が大きくなったときに、バイパスダイオード4に異常があると判定するようにバイパスダイオード異常判定部13を構成してもよい。バイパスダイオード異常判定部13は、バイパスダイオード4に異常があると判定すると、後述する警報手段20に異常信号を送信する。
【0042】
また、図3(b)から分かるように、バイパスダイオード4の異常を判定する際に交流電源5から出力する交流電圧の周波数は、10000kHz未満(好ましくは1kHz以上1000kHz未満)とすればよく、煩雑さを避けるために、太陽電池パネル本体3の異常を判定する際に用いる周波数と同じ周波数を用いることが望ましい。
【0043】
なお、本実施の形態では、入力側交流電圧計9で測定した入力電圧Vinと、出力側交流電圧計8で測定した出力電圧Voutとを用いて入出力比を演算したが、これに限らず、交流電源5へ送信する指示値(Vin信号の指示値)をそのまま入力電圧Vinとして用いて入出力比を演算するように、パネル本体異常判定部12とバイパスダイオード異常判定部13を構成してもよい。この場合、入力側交流電圧計9は省略可能である。
【0044】
警報手段20は、パネル本体異常判定部12またはバイパスダイオード異常判定部13が、太陽電池パネル本体3またはバイパスダイオード4の異常を検知したときに、警報を発するものである。
【0045】
本実施の形態では、警報手段20は、パネル本体異常判定部12またはバイパスダイオード異常判定部13から異常信号を受信すると、警告灯21を点灯して太陽電池パネル本体3またはバイパスダイオード4の異常を検知したことを管理者に知らせると共に、モニタ22に太陽電池パネル本体3またはバイパスダイオード4の異常を検知したことを表示し、これと同時期に、警報メール送信手段23により、管理者の携帯電話等に警報メールを送信して、太陽電池パネル本体3やバイパスダイオード4の異常を検知したことを通知するよう構成されている。
【0046】
次に、太陽電池パネルの異常検知装置1の異常判定部11における異常判定処理の制御フローについて図4〜6を用いて説明する。この異常判定処理は、太陽電池パネル2が発電をしていない夜間などに実行される。
【0047】
異常判定処理を実行するトリガは特に限定するものではなく、管理者が所望するときに実行するようにしてもよいし、夜間の設定した時間になると自動的に実行するようにしてもよい。また、夜間の設定した時間範囲において、所定の時間間隔で(たとえば1時間おきに)実行するようにしてもよい。
【0048】
図4に示すように、異常判定処理では、パネル本体異常判定処理(ステップS1)とバイパスダイオード異常判定処理(ステップS2)を実行し、処理を終了するようになっている。
【0049】
まず、ステップS1のパネル本体異常判定処理について説明する。
【0050】
図5に示すように、パネル本体異常判定処理では、ステップS11にて、パネル本体異常判定部12が、制御装置10の出力端14から交流電源5にVin信号を送信し、交流電源5から太陽電池パネル2に、正の直流電圧を重畳した交流電圧を印加する。
【0051】
その後、ステップS12にて、入力側交流電圧計9で入力電圧Vinを検出すると共に、ステップS13にて、出力側交流電圧計8で出力電圧Voutを検出する。ステップS12,S13にて検出された入力電圧Vin、出力電圧Voutは、入力端15から制御装置10に入力される。
【0052】
入力電圧Vinと出力電圧Voutを検出した後、ステップS14にて、パネル本体異常判定部12が、入力電圧Vinと出力電圧Voutの比である入出力比を演算し、ステップS15にて、演算した入出力比が予め設定した閾値以下か判定する。
【0053】
ステップS15にてNOと判断された場合、ステップS16にて、パネル本体異常判定部12が、太陽電池パネル本体3に異常がないと判定し、処理を終了する。
【0054】
ステップS15にてYESと判断された場合、ステップS17にて、パネル本体異常判定部12が、太陽電池パネル本体3に異常があると判定し、ステップS18にて、警報手段20に異常信号を送信した後、処理を終了する。
【0055】
次に、ステップS2のバイパスダイオード異常判定処理について説明する。
【0056】
図6に示すように、バイパスダイオード異常判定処理では、ステップS21にて、バイパスダイオード異常判定部13が、制御装置10の出力端14から交流電源5にVin信号を送信し、交流電源5から太陽電池パネル2に、負の直流電圧を重畳した交流電圧を印加する。
【0057】
その後、ステップS22にて、入力側交流電圧計9で入力電圧Vinを検出すると共に、ステップS23にて、出力側交流電圧計8で出力電圧Voutを検出する。ステップS22,S23にて検出された入力電圧Vin、出力電圧Voutは、入力端15から制御装置10に入力される。
【0058】
入力電圧Vinと出力電圧Voutを検出した後、ステップS24にて、バイパスダイオード異常判定部13が、入力電圧Vinと出力電圧Voutの比である入出力比を演算し、ステップS25にて、演算した入出力比が予め設定した閾値以下か判定する。
【0059】
ステップS25にてNOと判断された場合、ステップS26にて、バイパスダイオード異常判定部13が、バイパスダイオード4に異常がないと判定し、処理を終了する。
【0060】
ステップS25にてYESと判断された場合、ステップS27にて、バイパスダイオード異常判定部13が、バイパスダイオード4に異常があると判定し、ステップS28にて、警報手段20に異常信号を送信した後、処理を終了する。
【0061】
本実施の形態の作用を説明する。
【0062】
本実施の形態に係る太陽電池パネルの異常検知装置1では、交流電源5で重畳する直流電圧の大きさを制御して、交流電源5から太陽電池パネル2に、バイパスダイオード4が逆方向バイアスされるように入力電圧Vinを印加し、そのときの入出力比を基に太陽電池パネル本体3の異常を判定し、さらに、交流電源5で重畳する直流電圧の大きさを制御して、交流電源5から太陽電池パネル2に、バイパスダイオード4が順方向バイアスされるように入力電圧Vinを印加し、そのときの入出力比を基に、バイパスダイオード4の異常を判定している。
【0063】
これにより、太陽電池パネル本体3の異常を検知することができ、かつ、バイパスダイオード4の異常を検知することが可能な太陽電池パネルの異常検知装置1を実現できる。バイパスダイオード4の異常を検知することにより、太陽電池パネル2の過熱による故障や火災の発生を未然に防ぐことができる。
【0064】
また、太陽電池パネルの異常検知装置1は、交流電源5でのバイアスを切り替えるのみで太陽電池パネル本体3とバイパスダイオード4の両者の異常を検知できるので、システム構成が簡易であり、テスター等を用いて手作業でバイパスダイオード4の検査を行う従来技術と比較して、バイパスダイオード4の異常を容易に検知することが可能である。
【0065】
なお、本実施の形態では、交流電源5を太陽電池パネル本体3の正極側に、電圧測定手段6を太陽電池パネル本体3の負極側に設けた場合を説明したが、交流電源5を太陽電池パネル本体3の負極側に、電圧測定手段6を太陽電池パネル本体3の正極側に設けるようにしてもよい。この場合、太陽電池パネル本体3の異常を判定する際には、交流電源5で交流電圧に負の直流電圧を重畳するようにし、バイパスダイオード4の異常を判定する際には、交流電源5で交流電圧に正の直流電圧を重畳するように構成すればよい。
【0066】
また、本実施の形態では、入力電圧と出力電圧との比を用いてバイパスダイオード4の異常を判定しているが、入力電流と出力電流との比を用いることや、入力交流値(電圧又は電流)の位相と出力交流値(電圧又は電流)の位相との差を用いることも可能である。
【0067】
例えば、入力電流と出力電流との比を用いる場合には、入力側交流電圧計9に替えて入力側交流電流計を用い、出力側交流電圧計8に替えて出力側交流電流計を測定手段として用いるようにすればよい。また、入力交流値の位相と出力交流値の位相との差を用いる場合には、入力電圧又は入力電流の位相を算出する手段を設け、出力電圧又は出力電流の位相を算出する手段を設けるとよい。
【0068】
つまり、測定手段は、電圧測定手段6に限らず、太陽電池パネル2から出力される電圧または電流を測定する手段であればよい。また、異常判定部11は、交流電源5を制御して太陽電池パネル2に入力する入力電圧または入力電流を制御すると共に、その入力電圧または入力電流と、測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを比較して、太陽電池パネル2の異常を判定するよう構成されればよい。この場合、パネル本体異常判定部12は、交流電源5を制御してバイパスダイオード4を逆方向バイアスし、そのときの入力電圧または入力電流と、測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを基に、太陽電池パネル本体3の異常を判定することになる。また、バイパスダイオード異常判定部13は、交流電源5を制御してバイパスダイオード4を順方向バイアスし、そのときの入力電圧または入力電流と、測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを基に、バイパスダイオード4の異常を判定することになる。
【0069】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0070】
図7に示す太陽電池パネルの異常検知装置71は、図1の太陽電池パネルの異常検知装置1において、太陽電池パネル2で発電をしている最中にも、太陽電池パネル本体3の異常を検知できるようにしたものである。
【0071】
太陽電池パネルの異常検知装置71は、交流電源5と太陽電池パネル2との間に、直流成分を除去するコンデンサ72を挿入するか否かを切り替え可能なスイッチング回路73を備えている。
【0072】
また、太陽電池パネルの異常検知装置71では、異常判定部11は、太陽電池パネル2が発電をしているときに、コンデンサ72を挿入し、太陽電池パネル2が発電をしていないときに、コンデンサ72を挿入しないようにスイッチング回路73を切り替えるように構成される。
【0073】
さらに、太陽電池パネルの異常検知装置71では、パネル本体異常判定部12は、太陽電池パネル2が発電をしているときに、交流電源5を制御し直流電圧を重畳しない交流電圧を入力電圧Vinとして太陽電池パネル2に印加すると共に、その入力電圧Vinと電圧測定手段6で測定した出力電圧Voutの比である入出力比を基に、太陽電池パネル本体3の異常を判定するように構成される。なお、バイパスダイオード異常判定部13は、太陽電池パネル2が発電をしているときには動作しないよう構成される。
【0074】
太陽電池パネルの異常検知装置71では、太陽電池パネル2が発電をしているときには、交流電源5と太陽電池パネル2との間にコンデンサ72が挿入されるので、太陽電池パネル2で発電した直流電流が交流電源5側に流れ込むことが抑制される。また、交流電源5で交流電圧のみを印加すると、印加した交流電圧に太陽電池パネル2自身で発電した直流電圧が重畳されることとなり、上述の交流電源5にて交流電圧に正の直流電圧を重畳した場合と同様に、バイパスダイオード4が逆方向バイアスされた状態になる。よって、パネル本体異常判定部12にて入出力比を演算し、演算した入出力比が予め設定した閾値以下となれば、太陽電池パネル本体3に異常があると判定することができる。
【0075】
このように、太陽電池パネルの異常検知装置71によれば、太陽電池パネル2が発電していないときのみならず、太陽電池パネル2が発電しているときにも、太陽電池パネル本体3の異常を検知することが可能となる。
【0076】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0077】
例えば、上記実施の形態では、1つの太陽電池パネル2の異常を検知する場合を説明したが、複数の太陽電池パネル2を直列に接続した太陽電池モジュールの異常を検知することも可能である。この場合、太陽電池モジュール全体における正極側または負極側のいずれか一方に交流電源5を設け、他方に電圧測定手段6を設けることになる。このように構成することで、太陽電池モジュールを構成する太陽電池パネル2のうち、いずれかの太陽電池パネル2で太陽電池パネル本体3やバイパスダイオード4に異常が発生したときに、パネル本体異常判定部12やバイパスダイオード異常判定部13で異常と判定することが可能になる。
【0078】
また、上記実施の形態では、入力電圧Vinと出力電圧Voutを測定し、これらの比である入出力比を基に、太陽電池パネル本体3やバイパスダイオード4の異常を判定する場合を説明したが、太陽電池パネル2を流れる電流を測定し、その電流の値を基に(つまり電流の値が予め設定した閾値以下であるか否かにより)、太陽電池パネル本体3やバイパスダイオード4の異常を判定するようにしてもよい。この場合、太陽電池パネル本体3の異常を検知する際と、バイパスダイオード4の異常を検知する際とで電流の向きが変わるので、電流計とCT(Current Transformer;変流器)を組み合わせるなどして、正極側から負極側、負極側から正極側の両方向で電流を測定できるように構成するとよい。
【符号の説明】
【0079】
1 太陽電池パネルの異常検知装置
2 太陽電池パネル
3 太陽電池パネル本体
4 バイパスダイオード
5 交流電源
6 電圧測定手段(測定手段)
7 検出抵抗
8 出力側交流電圧計
9 入力側交流電圧計
10 制御装置
11 異常判定部
12 パネル本体異常判定部
13 バイパスダイオード異常判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルの異常を検知する太陽電池パネルの異常検知装置であって、
前記太陽電池パネルは、太陽電池パネル本体と、該太陽電池パネル本体の正極にカソードが電気的に接続され、前記太陽電池パネル本体の負極にアノードが電気的に接続されたバイパスダイオードと、を有し、
前記太陽電池パネル本体の正極側または負極側のいずれか一方に設けられ、前記太陽電池パネルに、直流電圧を重畳した交流電圧を印加可能な交流電源と、
前記太陽電池パネル本体の正極側または負極側の他方に設けられ、前記太陽電池パネルから出力される電圧または電流を測定する測定手段と、
前記交流電源を制御して前記太陽電池パネルに入力する入力電圧または入力電流を制御すると共に、その入力電圧または入力電流と、前記測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを比較して、前記太陽電池パネルの異常を判定する異常判定部を有する制御装置と、
を備え、
前記異常判定部は、
前記交流電源を制御して前記バイパスダイオードを逆方向バイアスし、そのときの入力電圧または入力電流と、前記測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを基に、前記太陽電池パネル本体の異常を判定するパネル本体異常判定部と、
前記交流電源を制御して前記バイパスダイオードを順方向バイアスし、そのときの入力電圧または入力電流と、前記測定手段で測定した出力電圧または出力電流とを基に、前記バイパスダイオードの異常を判定するバイパスダイオード異常判定部と、
を備えたことを特徴とする太陽電池パネルの異常検知装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記太陽電池パネル本体の正極側または負極側の他方に設けられ、前記太陽電池パネルから出力される電圧を測定する電圧測定手段であり、
前記異常判定部は、前記交流電源を制御して前記太陽電池パネルに印加する入力電圧を制御すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記太陽電池パネルの異常を判定するように構成され、
前記パネル本体異常判定部は、前記交流電源を制御し交流電圧に重畳する直流電圧の大きさを制御して、前記交流電源から前記太陽電池パネルに、前記バイパスダイオードが逆方向バイアスされるように入力電圧を印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記太陽電池パネル本体の異常を判定するように構成され、
前記バイパスダイオード異常判定部は、前記交流電源を制御し交流電圧に重畳する直流電圧の大きさを制御して、前記交流電源から前記太陽電池パネルに、前記バイパスダイオードが順方向バイアスされるように入力電圧を印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記バイパスダイオードの異常を判定するように構成される
請求項1記載の太陽電池パネルの異常検知装置。
【請求項3】
前記交流電源を前記太陽電池パネル本体の正極側に設けると共に、前記電圧測定手段を前記太陽電池パネル本体の負極側に設け、
前記パネル本体異常判定部は、前記太陽電池パネルが発電をしていないときに、前記交流電源を制御し交流電圧に正の直流電圧を重畳した入力電圧を前記太陽電池パネルに印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記太陽電池パネル本体の異常を判定するように構成され、
前記バイパスダイオード異常判定部は、前記太陽電池パネルが発電をしていないときに、前記交流電源を制御し交流電圧に負の直流電圧を重畳した入力電圧を前記太陽電池パネルに印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記バイパスダイオードの異常を判定するように構成される
請求項2記載の太陽電池パネルの異常検知装置。
【請求項4】
前記交流電源と前記太陽電池パネルとの間に、直流成分を除去するコンデンサを挿入するか否かを切り替え可能なスイッチング回路をさらに備え、
前記異常判定部は、前記太陽電池パネルが発電をしているときに、前記コンデンサを挿入し、前記太陽電池パネルが発電をしていないときに、前記コンデンサを挿入しないように前記スイッチング回路を切り替えるように構成され、
前記パネル本体異常判定部は、前記太陽電池パネルが発電をしているときに、前記交流電源を制御し直流電圧を重畳しない交流電圧を入力電圧として前記太陽電池パネルに印加すると共に、その入力電圧と前記電圧測定手段で測定した出力電圧の比を基に、前記太陽電池パネル本体の異常を判定するように構成される
請求項3記載の太陽電池パネルの異常検知装置。
【請求項5】
前記パネル本体異常判定部または前記バイパスダイオード異常判定部が、前記太陽電池パネル本体または前記バイパスダイオードの異常を検知したときに、警報を発する警報手段をさらに備えた
請求項1〜4いずれかに記載の太陽電池パネルの異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−238716(P2012−238716A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106556(P2011−106556)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】