説明

太陽電池モジュールおよび太陽電池付き屋根

【課題】エネルギー変換効率の低下を抑えることができる太陽電池モジュールおよび太陽電池付き屋根提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール本体8aの裏面に熱交換塗料層8bが設けられているので、太陽電池モジュール本体8aに照射された太陽光による熱の一部は熱交換塗料層8bによって運動エネルギーに変換され、蓄熱されることなく放出される。
したがって、温度上昇に起因する太陽電池モジュール8のエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールおよび太陽電池付き屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築構造物の屋根上に太陽電池を設置し、この太陽電池から住宅に電力を供給し、省エネルギー化を図ることが実施されている。太陽電池を屋根に設置するにあたっては、既設の屋根の上に、太陽電池モジュールが設けられたパネル状の太陽電池ユニットを専用架台により固定する架台固定式、あるいは、瓦に太陽電池モジュールを内蔵させたいわゆる太陽電池付き瓦を、屋根面に敷設するといった手段が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−243598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、太陽電池モジュールは太陽光により発電するものであるが、太陽電池モジュール自身が過度に熱せされると、エネルギー変換効率が低下する傾向があるが、上記のような架台固定式や太陽電池瓦の場合、熱対策を施して、エネルギー変換効率の低下を抑える手段が必要となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、エネルギー変換効率の低下を抑えることができる太陽電池モジュールおよび太陽電池付き屋根提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図2〜図5に示すように、太陽電池モジュール8であって、太陽電池モジュール本体8aの裏面の少なくとも一部に、熱交換塗料を塗布してなる熱交換塗料層8bが設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、太陽電池モジュール本体8aの裏面の少なくとも一部に熱交換塗料層8bが設けられているので、太陽電池モジュール本体8aに照射された太陽光による熱の一部は熱交換塗料層8bによって運動エネルギーに変換され、蓄熱されることなく放出される。
したがって、温度上昇に起因する太陽電池モジュール8のエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図1〜図4に示すように、太陽電池付き屋根であって、建物の屋根面32に、請求項1に記載の太陽電池モジュール8がその裏面の熱交換塗料層8bと前記屋根面42との間に通気層Sを介在させた状態で設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、屋根面42に設けられた太陽電池モジュール8に照射された太陽光による熱の一部は熱交換塗料層8bによって運動エネルギーに変換され、蓄熱されることなく放出される。
したがって、温度上昇に起因する太陽電池モジュール8のエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。
また、太陽電池モジュール8の裏面の熱交換塗料層8bと屋根面42との間の通気層Sを通る空気流によって、太陽電池モジュール8の熱放散が促進されて温度上昇が抑制されるので、温度上昇に起因する太陽電池モジュール8のエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽電池モジュール本体の裏面の少なくとも一部に熱交換塗料層が設けられているので、太陽電池モジュール本体に照射された太陽光による熱の一部は熱交換塗料層によって運動エネルギーに変換され、蓄熱されることなく放出される。
したがって、温度上昇に起因する太陽電池モジュールエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態を示すもので、太陽電池付き屋根を備えた建物の外観斜視図である。
【図2】同、図1におけるX−X線断面図である。
【図3】同、図1におけるY−Y線断面図である。
【図4】同、図3の要部拡大部である。
【図5】同、太陽電池モジュールの断面図である。
【図6】同、太陽電池モジュールを実験の際に支持ブロックによって支持した状態を示す斜視図である。
【図7】太陽光に晒した際における熱交換塗料層を有する太陽電池モジュールと通常の太陽電池モジュールの裏面温度差を示すグラフである。
【図8】太陽光に晒した際における熱交換塗料層を有する太陽電池モジュールと通常の太陽電池モジュールの表面温度差を示すグラフである。
【図9】時刻の経過に伴う日射量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る太陽電池付き屋根を備えた建物の外観斜視図である。
図1に示す建物1は、基礎2上に構築された建物本体3と、この建物本体3の上に形成された屋根4とを備えたものである。
屋根4は、複数の屋根パネル41が桁方向に配列されてなり、屋根パネル41は、図2に示すように框材を矩形枠状に組み立てるとともに、この矩形枠の内部に補強用の桟材を縦横に組み付けて枠体41aを構成し、枠体41aの上面に野地板等の面材41bが設けられてなるものである。そして、屋根パネル41が複数配列されることによって、棟5の両側に棟5から軒先に向かって下り勾配を有する屋根面42が形成されている。
【0013】
前記棟5の両側に形成された屋根面42のうちの片側の屋根面42には、図2に示すように、太陽電池モジュール8が前記屋根面42との間に通気層Sを介在させた状態で設けられている。
太陽電池モジュール8は、矩形薄板状をなすものであり、太陽電池モジュール本体8aと、この太陽電池モジュール本体8aの裏面に設けられた熱交換塗料層8bとによって構成されている。
太陽電池モジュール本体8aは、図5に示すように、単結晶シリコンのPVセル8cを強化ガラス8dとバックシート8eとの間に、EVA樹脂8fを使って封入したものである。
熱交換塗料層8bは、太陽電池モジュール本体8aの裏面全体に熱交換塗料を塗布することによって形成されている。なお、熱交換塗料層8bは、太陽電池モジュール本体8aの裏面全体に設けてもよいし、一部に設けてもよい。一部に設ける場合、PVセル8cに対向する太陽電池モジュール本体8aの裏面に設けるのが望ましい。
熱交換塗料は、赤外線が変換された熱エネルギーを、蓄熱することなくエネルギー変換し、もって運動エネルギーとして放出するものである。
【0014】
すなわち、太陽光線等に含まれる赤外線は、熱交換塗料によって形成された熱交換塗料層8bに当たると、熱エネルギーに変換されて、熱交換塗料層8bに分散、移動するが、熱交換塗料層8bの熱交換作用の強い放熱物質に接触することにより、直ちにエネルギー変換され、このエネルギー変換が表層で起きるために、大半の熱は運動エネルギーとして消費、放出される。このようにして、熱は熱交換塗料層8bに蓄熱されることなく、直ちに急激に放出されてしまう。
この熱交換塗料としては、株式会社エコロテック製の「消熱塗料ネオコート」が知られている。この製品は、アクリルポリオールを主剤とし、イソシアネート樹脂を硬化剤としている。
【0015】
ここで、熱交換塗料層8bを有する太陽電池モジュール8と、熱交換塗料層を有しない通常の太陽電池モジュールとを、それぞれ一定の時間太陽光に晒し、それぞれのモジュール8の表面と裏面の温度を測定し、表面どうしの温度差、裏面どうしの温度差を測定した。図6は太陽電池モジュール8を支持ブロック15によって下方から支持した状態を示しており、この状態で太陽電池モジュール8をそれぞれ一定の時間太陽光に晒した。
その実験結果を図7および図8に示す。なお、図9は時刻の経過に伴う、日射量の変化を示すグラフである。
図7に示すように、モジュール裏面温度は、朝6時から時刻の経過に伴って、熱交換塗料層8bを有する太陽電池モジュール8の方が、熱交換塗料層を有しない通常の太陽電池モジュールより低くなり、16時ころから温度差がほぼ無くなることが分かった。本実験で使用した熱交換塗料は25℃以下の場合、消熱効果が低くなるためであるが、熱交換塗料を塗布することによって、太陽電池モジュール8の裏面の温度が低くなるのが分かった。
また、図8に示すように、モジュール表面温度は、朝7時ころから熱交換塗料層8bを有する太陽電池モジュール8の方が、熱交換塗料層を有しない通常の太陽電池モジュールより若干低くなり、16時ころから温度差がほぼ無くなることが分かった。本実験で使用した熱交換塗料は25℃以下の場合、消熱効果が低くなるためであるが、熱交換塗料を裏面に塗布することによって、太陽電池モジュール8の表面の温度も若干低くなるのが分かった。
このように、熱交換塗料層8bを有する太陽電池モジュール8は、熱交換塗料層を有しない通常の太陽電池モジュールに比して、温度が低くなるので、温度上昇に起因するエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。
【0016】
上記のように構成された太陽電池モジュール8は以下のように屋根面42に取り付けられている。
すなわち、図2および図3に示すように、太陽電池モジュール8には、その周縁部が縦枠部9A、上枠部9B及び下枠部9Cの一対の突出片91A、93B、95C内に嵌め込まれることによってフレーム9が取り付けられている。また、図1および図2に示すように、屋根面42上には、支持レール10がその縦枠支持部102をビスB4で固定することによって取り付けられており、この支持レール10に縦枠部9Aが支持されることによって太陽電池モジュール8が取り付けられている。
具体的には、上下方向に互いに隣接する太陽電池モジュール8は、図3および図4に示すように、下方に配置される太陽電池モジュール8の上枠部9Bと上方に配置される太陽電池モジュール8の下枠部9Cとにおいて、下枠部9Cの鍔部92Cが上枠部9Bの枠本体91Bの上面に当接するとともに、上枠部9Bの当接片92Bが下枠部9Cの枠本体91Cの側面に当接することによって、互いに遊嵌している。
また、左右方向に互いに隣接する太陽電池モジュール8は、右側に配置される太陽電池モジュール8の縦枠部9Aと左側に配置される太陽電池モジュール8の縦枠部9Aとにおいて、支持レール10の縦枠受部101に各縦枠部9Aの固定片92AがビスB3でそれぞれ固定されている。さらに、これら両縦枠部9Aの上面に形成された開口Kには、ビスB2によりカバー部材93Aが取り付けられている。つまり、左右に隣接する太陽電池モジュール8どうしの間に、カバー部材93Aが配置されている。
このようにして太陽電池モジュール8が、前記屋根面42との間に空気流通層Sを介在させた状態で設けられることによって、太陽電池付き屋根が構成されている。
【0017】
また、通気層Sは、太陽電池モジュール8の軒先側に取り付けられた面戸46の隙間423と、屋根面42の棟5側に形成されて屋根裏に通じる屋内開口部424とに連通している。また、屋内開口部424には、建物1内に配される図示しない蓄熱手段に連通する伝熱手段13が接続されている。
ここで、伝熱手段13を屋根面42の棟5側に形成された屋内開口部424に接続したのは、通気層S内で加熱された空気を屋根4の棟5側からそのまま伝熱手段13に伝達することができるためである。つまり、温度の高い空気は屋根4の棟5側に上昇し易いことから、伝熱手段13を棟5側に設けた方が軒先側に設ける場合よりも集熱率が高くなるため好ましい。
そして、蓄熱手段に蓄熱された熱を床暖房に利用できるとともに、暖房機器等に使用される電力を削減することが可能となる。
【0018】
本実施の形態によれば、屋根面42に設けられた太陽電池モジュール本体8aに照射された太陽光による熱の一部は熱交換塗料層8bによって運動エネルギーに変換され、蓄熱されることなく放出される。
したがって、温度上昇に起因する太陽電池モジュール8のエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。
また、太陽電池モジュール8の裏面の熱交換塗料層8bと屋根面42との間の通気層Sを通る空気流によって、太陽電池モジュール8の熱放散が促進されて温度上昇が抑制されるので、温度上昇に起因するエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。
さらに、通気層Sには蓄熱手段に連結する伝熱手段13が接続されているので、太陽電池モジュール8を介して太陽熱によって加熱された通気層Sの空気が伝熱手段13を介して蓄熱手段で蓄熱され、その結果、蓄熱手段に蓄熱された熱を床暖房に利用できるとともに、暖房機器等に使用される電力を削減することが可能となる。
【0019】
なお、本実施の形態では、太陽電池モジュール8を屋根に設けた例について説明したが、太陽電池モジュール本体の裏面に熱交換塗料を塗布してなる熱交換塗料層が設けられてなる太陽電池モジュールを、瓦本体に設けることによって太陽電池付き瓦を製造し、この太陽電池付き瓦をその裏面の熱交換塗料層と屋根面との間に通気層を介在させた状態で敷設してもよい。
【符号の説明】
【0020】
8 太陽電池モジュール
8a 太陽電池モジュール本体
8b 熱交換塗料層
42 屋根面
S 通気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュール本体の裏面の少なくとも一部に、熱交換塗料を塗布してなる熱交換塗料層が設けられていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
建物の屋根面に、請求項1に記載の太陽電池モジュールがその裏面の熱交換塗料層と前記屋根面との間に通気層を介在させた状態で設けられていることを特徴とする太陽電池付き屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−132209(P2012−132209A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285321(P2010−285321)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】