太陽電池モジュールの製造方法、および該製造方法によって製造した太陽電池モジュール
【課題】太陽電池モジュール裏面のバックシートのシワの発生を防止することができる製造方法、ならびに該製造方法で製造した太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明に係るラミネート装置1においては、ステージ6上に被ラミネート体である太陽電池モジュール10が複数載置されているが、各太陽電池モジュール10は上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに載置されている。すなわち、各太陽電池モジュール10はパンチングメタル3が備えた梁部材15の直下にならぬように載置されている。
【解決手段】本発明に係るラミネート装置1においては、ステージ6上に被ラミネート体である太陽電池モジュール10が複数載置されているが、各太陽電池モジュール10は上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに載置されている。すなわち、各太陽電池モジュール10はパンチングメタル3が備えた梁部材15の直下にならぬように載置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの製造方法、および該製造方法によって製造した太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンなエネルギー源としての重要性が認められ、その需要が高まりつつある。太陽電池の利用分野は、大型機器類のパワーエネルギー源から、精密な電子機器類の小型電源まで多岐に渡っており、太陽電池を備えた様々な太陽光発電装置は広く普及しつつある。
【0003】
太陽電池モジュールは、基板と太陽電池素子とバックシートとを樹脂等の封止材でラミネート封止を行うことによって製造するのが一般的である。例えば、特許文献1には、ラミネート封止を行う一般的なラミネート装置が開示されている。具体的には、本文献に開示されているラミネート装置は、上部真空室、下部真空室、両真空室の間に設置されたダイヤフラム(伸縮シート)、保護シート、および被ラミネート体を載置する熱板によって構成される。上部真空室がダイヤフラムに接する面には、排気ラインと導通した多数の空孔部を有する平板(以下、パンチングメタルと称す)が用いられている。ラミネート封止は、下部真空室と上部真空室との圧力差により、被ラミネート体と共に伸縮性シートを下方の熱板に押し付け、支持シートを介して伸縮シートと熱板とにより被ラミネート体を挟み込んで加圧することによって実現される。
【0004】
例えば、特許文献2には、上述したようなラミネート装置によって製造した太陽電池モジュールが開示されている。具体的には、封止樹脂を介して太陽電池素子をガラス板と耐候性樹脂フィルムとで挟持した、ラミネート構造の太陽電池モジュールが開示されている。該太陽電池モジュールは、ガラス板、封止樹脂シート、太陽電池素子、封止樹脂シート、および、耐候性樹脂フィルムを重ね合わせる工程と、熱ラミネートによる封止工程と、炉に入れて架橋反応を進ませてガラス板および耐候性樹脂フィルムと封止樹脂シートとの接着性を上げるキュア工程と、端部を切断除去して整形するトリミング工程とからなる。
【0005】
最近では、ラミネート装置の生産性を向上するために、多数の被ラミネート体を同時にまとめてラミネートしたり、太陽電池モジュール自体が大型の基板で形成されたりすることから、ラミネート装置の大型化が進んでいる。それにより、パンチングメタルも大型化することによって、該パンチングメタルが自重で下方に撓んで変形してしまうという問題がある。
【0006】
そのため、ラミネート装置では、パンチングメタルを下側から支持する梁部材を設けることによって、パンチングメタルの変形を抑える技術が一般化されつつある。梁部材を設けた従来のラミネート装置を図14に示す。なお、実際には、基板7と太陽電池素子8との間には第1封止材が挟まれており、太陽電池素子8とバックシート9との間には第2封止材が挟まれているが、図面の簡略化のため、図面上では第1封止材および第2封止材は太陽電池素子8の一体として示しており、別体としての図示を省略している。
【0007】
図14に示すように、ラミネート装置20は、上チャンバ2およびステージ6を備えており、上チャンバ2の開口端側には、パンチングメタル3、ダイヤフラム4、および保護シート5が順に設けられている。上チャンバ2とパンチングメタル3とによって形成される空間は上部真空室となっている。また、上チャンバ2が下降し、ステージ6と当接した際に、上チャンバ2およびステージ6に囲まれる空間が下部真空室(下チャンバ)となる。
【0008】
ここで、パンチングメタル3には梁部材15が設けられており、パンチングメタル3は梁部材15によって下方から支えられ、自重で下方に撓むことを防いでいる。したがって、ラミネート装置20によれば、パンチングメタル3が自重で下方に撓み、変形することなく、基板7、太陽電池素子8、およびバックシート9のラミネート封止を行うことができる。結果、太陽電池モジュール10が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−15696号公報(2000年1月18日公開)
【特許文献2】特開2000−277772号公報(2000年10月6日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したラミネート装置20の場合、脱気処理時において、ダイヤフラム4がパンチングメタル3および梁部材15に密着した際に、梁部材15がダイヤフラム4に負荷を与えてしまう。その状態を図15に示す。
【0011】
図15に示すように、梁部材15の角の部分(図中の領域11)がダイヤフラム4に与える負荷が特に大きい。そのため、ラミネート処理を繰り返していく内に、梁部材15の角の跡がダイヤフラム4に転写され、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。そこで、ダイヤフラム4が波状に変形した場合のラミネート封止について、図16を参照して説明する。図16(a)は、加圧時のラミネート装置20を示す概略図である。図16(b)および(c)は、太陽電池モジュール10のバックシート9に掛かる圧力を示す概略図である。
【0012】
ラミネート処理を繰り返していく結果、図16(a)に示すように、ダイヤフラムにおける図中の領域12は、パンチングメタル3側に対して凹となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凸となる)。一方、ダイヤフラム4における図中の領域13は、パンチングメタル3側に対して凸となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凸となる)。
【0013】
ここで、ラミネート封止は、被ラミネート体を加圧し、封止材を溶融する短時間の熱処理を行うラミネート工程と、被ラミネート体の密着性を向上させるために長時間の熱処理を行うキュア工程とに大別される。ラミネート工程において、波状に変形したダイヤフラム4で被ラミネート体を加圧すると、ラミネート時にダイヤフラム4が変形した部分にバックシート9を介して圧接される第2封止材が不均一に加圧されてしまう。より詳しくは、図16(b)に示すように、ダイヤフラム4がパンチングメタル3側に対して凹となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凸となる)箇所では、バックシート9および第2封止材に大きな圧力を与える(図中の領域12)。一方、ダイヤフラム4がパンチングメタル3側に対して凸となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凹となる)箇所では、バックシート9および第2封止材に与える圧力は小さくなる(図中の領域13)。
【0014】
その結果、ラミネート工程において、波状に変形したダイヤフラム4で被ラミネート体を加圧すると、バックシート9および第2封止材において、波状に変形した部分に対応する箇所(図中の領域13)に特異な形状が形成されてしまう。より詳しくは、ダイヤフラム4の波状の凹凸が第2封止材に転写される。
【0015】
その後、被ラミネート体がキュア工程に入ると、図16(c)に示すように、バックシート9において、上述した特異な形状が形成された領域にシワが発生してしまう。より詳しくは、ラミネート時に、特にバックシート9および第2封止材に与える圧力が小さかった箇所では、バックシート9と第2封止材との密着性が弱くなっているため、キュア処理時にバックシート9と第2封止材とが離間して隙間が発生し、それが原因となってシワが発生すると考えられる。実際にバックシート9に形成されるシワを図17に示す。本図に示すテープ14は幅10mmのテープであり、形成されるシワ(凹凸)の大きさの比較のために設けている。
【0016】
図17に示すように、バックシート9には、主に図中のMD方向に波状のシワが形成されてしまう。結果、バックシート9にシワが形成された太陽電池モジュール10が製造されてしまう。バックシート9にシワが形成されてしまうと、太陽電池モジュール10の耐候性および耐湿性が悪くなり、モジュール寿命が短くなってしまう虞がある。また、バックシート9にシワがあることで太陽電池モジュール10の見た目も悪くなってしまう。
【0017】
ここで、以上では、パンチングメタル3に設けられた梁部材15によってダイヤフラム4が波状に変形してしまう形態を示したが、必ずしも梁部材15によってダイヤフラム4が波状に変形してしまうわけではない。例えば、ラミネート装置によっては、パンチングメタル3のダイヤフラム4側の面自体に凸構造を設け、該凸構造を梁部材15として機能させる場合もある。この場合は、パンチングメタル3に形成された凸構造がダイヤフラム4に当接することによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。
【0018】
また、他のラミネート装置では、パンチングメタル3を設けていない場合がある。しかし、パンチングメタル3が存在しない場合でも、上チャンバ2の天井を支えるために、天井の底面下に支持部材として凸状の梁部材を備えている場合がある。この場合は、上述した従来のラミネート装置20と同様に、前記の凸状の梁部材がダイヤフラム4に当接することによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。このように、ラミネート装置において、ダイヤフラムに当接する面に形成された凸形状によって、ダイヤフラムの変形が誘発されてしまう。結果、太陽電池モジュールのバックシートにシワが形成されてしまう。
【0019】
そこで、本発明は前記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽電池モジュール裏面のバックシートのシワの発生を防止することができる製造方法、および該製造方法で製造した太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、前記の課題を解決するために、上部チャンバと、前記上部チャンバに張架され、かつ、上部密閉空間を前記上部チャンバと構成できるダイヤフラムと、前記上部チャンバにおいて、前記ダイヤフラムと対向する面に設けられた凸構造と、太陽電池素子を含む被ラミネート体を載置できるステージを有し、かつ、前記上部チャンバと当接することによって下部密閉空間を前記ダイヤフラムと構成できる下部チャンバと、前記ステージに載置された前記被ラミネート体を加熱できる加熱機構と、前記上部密閉空間および前記下部密閉空間を真空にできる排気部とを備えたラミネート装置を用いた太陽電池モジュールの製造方法であって、前記上部チャンバにおいて前記凸構造が設けられていない位置に対応する前記ステージ上の位置のみに、前記被ラミネート体を戴置する載置工程を備えていることを特徴としている。
【0021】
前記の方法によれば、ステージ上に被ラミネート体である太陽電池モジュールが複数載置されているが、被ラミネート体は、上部チャンバにおいて凸構造が設けられていない位置に対応するステージ上の位置のみに載置されている。すなわち、各被ラミネート体は、ダイヤフラムを挟んで凸構造の直下にならぬように載置されている。
【0022】
ラミネート装置においては、ダイヤフラムが上部チャンバの凸構造に密着した際に、凸構造の凸部がダイヤフラムに与える負荷が大きい。そのため、ラミネート処理を繰り返していく内に、凸構造の凸部の跡がダイヤフラムに転写され、ダイヤフラムが波状に変形してしまう。そこで、本発明に係る製造方法によれば、ダイヤフラムにおいて凸構造の跡がついた箇所が被ラミネート体に接触することがない。そのため、加熱工程において、波状に変形したダイヤフラムで被ラミネート体を加圧しても、該被ラミネート体において、特異な形状(凹凸)が形成されてしまうのを防ぐことができる。したがって、その後の硬化工程において、被ラミネート体における特異な形状に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0023】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記上部チャンバにおいて、前記ダイヤフラムに対向する面に、複数の空孔部を有する平板を備えており、前記平板の前記ダイヤフラム側の面に前記凸構造が設けられていることを特徴としている。
【0024】
パンチングメタル等の複数の空孔部を有する平板が自重で下方に撓んでしまうのを防ぐため、あるいは、平板を上部チャンバに当接するため等に、平板に凸構造が備えられている場合がある。前記の方法によれば、そのような場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0025】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記凸構造は、前記平板の一部が凸状になって構成されていることを特徴としている。
【0026】
前記の方法によれば、平板の撓みを防止すると共に、平板の重量を低減するために、該平板の一部を凸状にして凸構造を構成している場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0027】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記凸構造は、前記平板を前記上部チャンバに当接して支える支持部材であることを特徴としている。
【0028】
平板が自重で下方に撓んでしまうのを防ぐため、あるいは、平板を上部チャンバに当接するため等に、平板を上部チャンバに当接して支える支持部材を備えている場合がある。前記の方法によれば、そのような場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0029】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記支持部材は、前記上部チャンバに備えられた部材に、前記平板を固定する締結部材であることを特徴としている。
【0030】
前記の方法によれば、上部チャンバに備えられた部材に平板を当接して支えるための締結部材が平板に備えられている場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0031】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記支持部材は、前記平板に備えられた梁部材であることを特徴としている。
【0032】
前記の方法によれば、平板が自重で下方に撓んでしまうのを防ぐための梁部材が平板に備えられている場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0033】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記被ラミネート体は、基板、第1封止材、前記太陽電池素子、第2封止材、およびバックシートを順に積層したものであることを特徴としている。
【0034】
前記の構成によれば、ダイヤフラムにおいて凸構造の跡がついた箇所が太陽電池モジュールのバックシートに接触することがないので、バックシート上における特異な形状に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0035】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記被ラミネート体が前記上部チャンバ内に含まれるように、前記上部チャンバと前記下部チャンバとを当接する当接工程と、前記当接工程の後、前記上部密閉空間および前記下部密閉空間の内部を前記排気部が真空状態にする真空引き工程と、前記真空引き工程の後、前記上部密閉空間の内部を大気開放すると同時に、前記被ラミネート体を前記加熱機構が加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後、前記第1封止材および前記第2封止材を硬化させる硬化工程とをさらに備えていることを特徴としている。
【0036】
前記の構成によれば、ダイヤフラムにおいて凸構造の跡がついた箇所が被ラミネート体のバックシートに接触することがない。そのため、加熱工程において、波状に変形したダイヤフラムで被ラミネート体を加圧しても、バックシートおよび封止材において、特異な形状(凹凸)が形成されてしまうのを防ぐことができる。したがって、その後の硬化工程において、バックシート上における特異な形状に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0037】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいては、前記の課題を解決するために、上述したいずれかの太陽電池モジュールの製造方法によって製造されたことを特徴としている。
【0038】
前記の構成によれば、太陽電池モジュールのバックシートにシワが形成されないので、耐候性および耐湿性が良好であり、モジュール寿命が長い太陽電池モジュールが得られる。また、バックシートにシワが形成されないので、太陽電池モジュールの見た目が悪くなることもない。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法によれば、ダイヤフラムにおいて凸構造の跡がついた箇所が被ラミネート体のバックシートに接触することがない。そのため、加熱工程において、波状に変形したダイヤフラムで被ラミネート体を加圧しても、バックシートおよび封止材において、特異な形状(凹凸)が形成されてしまうのを防ぐことができる。したがって、その後の硬化工程において、バックシード上における特異な形状に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係るラミネート装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るパンチングメタルの一構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るパンチングメタルの一構成例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るパンチングメタルの一構成例を示す図である。
【図5】(a)は、待機時のラミネート装置および各真空室の圧力状態を示す図であり、(b)は、真空引き時のラミネート装置および各真空室の圧力状態を示す図であり、(c)は、加圧時のラミネート装置および各真空室の圧力状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るラミネート装置において、上チャンバとステージとの位置関係を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るラミネート装置に適用し得る梁部材の一構成例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るラミネート装置に適用し得る梁部材の一構成例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るラミネート装置に適用し得る梁部材の一構成例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る上チャンバの天井の底面下に凸状の支持部材を備えているラミネート装置を示す概略図である。
【図11】本発明に対する比較の実施形態に係るラミネート装置において、上チャンバとステージとの位置関係を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るラミネート装置が備えるパンチングメタルを示す概略図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るラミネート装置が備えるパンチングメタルを示す概略図である。
【図14】梁部材をパンチングメタルに設けた従来のラミネート装置を示す概略図である。
【図15】従来のラミネート装置において、上チャンバをダイヤフラムがパンチングメタルおよび梁部材に密着した状態を示す図である。
【図16】(a)は、加圧時のラミネート装置を示す概略図であり、(b)は、太陽電池モジュールのバックシートに掛かる圧力を示す概略図であり、(c)は、太陽電池モジュールのバックシートに掛かる圧力を示す概略図である。
【図17】太陽電池モジュールのバックシートに形成されるシワを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明に従った実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、本発明を実施するために好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲は以下の実施の形態および図面に限定されるものではない。
【0042】
〔第1の実施形態〕
(ラミネート装置1の構成)
まず、本発明の第1の実施形態に係るラミネート装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るラミネート装置1の構成を示す概略図である。
【0043】
太陽電池モジュール10は、基板7、太陽電池素子8、およびバックシート9の順に積層してなる。ラミネート装置1は、被ラミネート体である基板7、太陽電池素子8、およびバックシート9を封止材でラミネート封止を行うことによって太陽電池モジュール10を製造する装置である。なお、実際には、基板7と太陽電池素子8との間には第1封止材が挟まれており、太陽電池素子8とバックシート9との間には第2封止材が挟まれているが、図面の簡略化のため、図面上では第1封止材および第2封止材は太陽電池素子8の一体として示しており、別体としての図示を省略している。これは以降のすべての図について適用される。
【0044】
図1に示すように、ラミネート装置1は、上チャンバ2(上部チャンバ)と、該上チャンバ2に対向する下チャンバ(下部チャンバ)を備えている。下チャンバは、被ラミネート体を載置可能なステージ6を備えている。上チャンバ2は、一端が開口端であり、他端が閉口端である両端を持った形状をしている。該上チャンバ2の下方、すなわち開口端側(ステージ6側)には、パンチングメタル3、ダイヤフラム4、および保護シート5が順に張架して設けられている。上チャンバ2とダイヤフラム4とによって形成される空間は上部真空室(上部密閉空間)となっている。また、上チャンバ2が下降し、下チャンバと当接した際に、上チャンバ2およびステージ6に囲まれる空間が下部真空室(下部密閉空間)となる。
【0045】
上チャンバ2がダイヤフラム4に接する面には、図示しない排気ラインと導通した多数の穴を有する平板(以下、パンチングメタル3と称す)が用いられている。この際、パンチングメタル3のダイヤフラム4側の面には、凸構造をした梁部材15が設けられており、パンチングメタル3は梁部材15によって下方から支えられ、自重で下方に撓むことを防いでいる。また、ダイヤフラム4は、膨張および伸縮が可能であり、被ラミネート体を加圧する加圧手段である。一方、保護シート5は、ダイヤフラム4に封止材が付着するのを防止するためのシートである。さらに、保護シート5は、ラミネート封止時に封止材より発生するガスによるダイヤフラム4の劣化を防ぐ役割もある。ステージ6は、複数の被ラミネート体を載置可能な熱板(加熱機構)によって構成されており、戴置された被ラミネート体を所定の温度に加熱できる。また、ステージ6には図示しない複数のリフトピンが設けられており、ステージ6上面から突出させたり、ステージ6内に格納させたりすることができるように構成されている。
【0046】
上部真空室および下部真空室はそれぞれ制御弁を有する排気ライン(排気部)に接続されており、該排気ラインには図示しない真空ポンプと外気導入部とが接続されている。ここで、外気導入部は各真空室内に空気や窒素等の気体を導入することができるように構成されている。上部真空室および下部真空室では、制御弁を切り替えることによって、排気ラインの接続先を真空ポンプと外気導入部とのいずれかに切り替えることによって、それぞれの真空室内を大気圧状態と真空状態とで任意に制御することができる。詳しくは後述するが、ラミネート封止は、下部真空室と上部真空室との圧力差により、ダイヤフラム4を下方のステージ6に押し付け、保護シート5を介してダイヤフラム4とステージ6とにより被ラミネート体を挟み込んで加圧して熱処理することによって実現される。
【0047】
ここで、本実施形態に係るパンチングメタル3の構成例を図2〜4に示す。上述したように、パンチングメタル3は、図2に示すような多数の穴11(空孔部)を有する平板である。しかし、穴11の形状は、円形であっても、角形であってもよく、角穴、格子、十字、あるいはスリット等でもよく、特に限定はない。例えば、図3および図4に示すように、複数のスリット12が形成されたパンチングメタル3a,3bも本実施形態に適用可能である。また、図3および図4から明らかなように、スリット12(または穴11)のサイズおよび配置等には特に限定はない。
【0048】
なお、パンチングメタル3は必ずしも金属板である必要はなく、例えば、セラミック板、樹脂製の板、あるいはこれらの材料と金属との複合材料等であってもよい。
【0049】
(ラミネート封止方法)
ラミネート封止は、被ラミネート体を加圧し、封止材を溶融する短時間の熱処理を行うラミネート工程と、被ラミネート体の密着性を向上させるために長時間の熱処理を行うキュア工程とに大別される。以下では、それぞれの工程について、図5を参照して説明する。図5(a)は、待機時のラミネート装置1および各真空室の圧力状態を示す図である。図5(b)は、真空引き時のラミネート装置1および各真空室の圧力状態を示す図である。図5(c)は、加圧時のラミネート装置1および各真空室の圧力状態を示す図である。これらの図では、ラミネート装置1を分かりやすくするために、梁部材15を省略している。また、これらの図に示されている表の「チャンバ」の欄は上部真空室および下部真空室を「上」および「下」で表しており、「チャンバ位置」の欄は上チャンバ2が「上昇」しているのか、あるいは「下降」しているのかを表している。また、「圧力状態」の欄は各真空室内が「大気圧」であるのか、あるいは「真空」であるのかを表している。
【0050】
まず、基板7と太陽電池素子8との間に封止材(第1封止材)を挟み、太陽電池素子8とバックシート9との間に別の封止材(第2封止材)を挟んだ被ラミネート体をステージ6上に図示しない供給装置が載置する。この際、図5(a)に示すように、上チャンバ2は上昇しており、各真空室内は大気圧状態になっている。なお、本図では図示していないが、ステージ6からは複数のリフトピンが突出しており、被ラミネート体はリフトピン上に載置される。したがって、被ラミネート体とステージとは、リフトピンによって離間されている。
【0051】
そして、被ラミネート体をステージ6に搬送した後、図5(b)に示すように、上チャンバ2は図示しない昇降機構により下降する。そして、上チャンバ2がステージ6に当接することによって、下部真空室が形成される。この際、図示しない排気ラインを介して各真空室に接続された図示しない真空ポンプは、両真空室を真空状態にして真空引きし、被ラミネート体を構成する基板7、バックシート9、および封止材の各部材間が脱気処理される。ここで、脱気処理は、ラミネート封止した太陽モジュール10の各部材間に気泡を残存させないために行われる。この時リフトピンはステージ6上から突出したままであり、被ラミネート体はステージ6から離間されたままである。
【0052】
このとき、ダイヤフラム4および保護シート5は、パンチングメタル3側に吸着され、パンチングメタル3および梁部材15に密着して当接する。
【0053】
続いて、脱気処理が十分に行われた後、図5(c)に示すように、上部真空室内を大気圧状態にし、上部真空室と下部真空室の圧力差によりダイヤフラム4を膨張させ、保護シート5を介して被ラミネート体をステージ6に押し付け、加圧する。被ラミネート体が加圧されるのに連動してリフトピンもステージ6内に格納されることによって、被ラミネート体の下面とステージ6とが当接し、被ラミネート体は加熱される。この状態で封止材の軟化点以上の温度で熱処理することによって、封止材が溶融しラミネート処理が完了する。そして、制御弁を切り替えて下部真空室の内部を大気圧状態(大気開放)にし、開閉機構により上チャンバ2を上昇させ、封止した太陽電池モジュール10を外部に搬送する。以上が、ラミネート工程である。
【0054】
その後、太陽電池モジュール10は加熱炉に搬送され、長時間の熱処理によって封止材の架橋反応を起こすことにより、封止材の耐湿性および封止材による基板7、太陽電池素子8、およびバックシート9の接着性を向上させる硬化処理(キュア処理)が実施される。これがキュア工程である。
【0055】
(シワの抑制)
ここで、ラミネート装置1においては、図5(b)に示された脱気処理時において、ダイヤフラム4がパンチングメタル3および梁部材15に密着した際に、梁部材15によってダイヤフラム4が負荷を受けるが、特に梁部材15の角の部分がダイヤフラム4に与える負荷が大きい。そのため、ラミネート処理を繰り返していく内に、梁部材15の角の跡がダイヤフラム4に転写され、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。ダイヤフラム4が波状に変形した状態でラミネート封止を行うと、ラミネート時にダイヤフラム4が変形した部分にバックシート9を介して圧接される第2封止材が不均一に加圧されてしまう。より詳しくは、ダイヤフラム4がパンチングメタル3側に対して凹となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凸となる)箇所では、バックシート9および第2封止材に大きな圧力を与え、ダイヤフラム4がパンチングメタル3側に対して凸となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凹となる)箇所では、バックシート9および第2封止材に与える圧力は小さくなる。
【0056】
その結果、ラミネート工程において、波状に変形したダイヤフラム4で被ラミネート体を加圧すると、バックシート9および第2封止材において、波状に変形した部分に対応する領域に特異な形状が形成されてしまう。より詳しくは、ダイヤフラム4の波状の凹凸が第2封止材に転写される。
【0057】
その後、被ラミネート体がキュア工程に入ると、バックシート9において、上述した特異な形状が形成された領域にシワが発生してしまう。
【0058】
より詳しくは、ラミネート時に、特にバックシート9および第2封止材に与える圧力が小さかった箇所では、バックシート9と第2封止材との密着性が弱くなっているため、キュア処理時にバックシート9と第2封止材とが離間して隙間が発生し、それが原因となってシワが発生すると考えられる。
【0059】
そこで、本実施形態では、被ラミネート体を梁部材15の直下を避けて設置することを特徴としている。その詳細を図6に示す。図6は、ラミネート装置1において、上チャンバ2とステージ6との位置関係を示す図である。本図では、梁部材15の位置を分かりやすくするために、ダイヤフラム4および保護シート5は省略している。
【0060】
図6に示すように、本実施形態においては、ステージ6上に被ラミネート体である太陽電池モジュール10が複数載置されているが、各太陽電池モジュール10は上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに載置されている。すなわち、各太陽電池モジュール10は、ダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下にならぬように載置されている。これによって、ダイヤフラム4において梁部材15の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、シワの発生原因となる特異な形状(凹凸)は形成されない。したがって、その後のキュア工程においては、特異な形状に起因したシワはバックシート9上に発生しない。
【0061】
このように、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが形成されないので、耐候性および耐湿性が良好であり、モジュール寿命が長い太陽電池モジュール10が得られる。また、バックシート9にシワが形成されないので、太陽電池モジュール10の見た目が悪くなることもない。
【0062】
一般的にラミネート装置は、図6に示したような棒状の梁部材を備えているとは限らない。例として、ラミネート装置に適用し得る梁部材の構成例を図7〜9に示す。図7に示すように、矩形状であり、なおかつ格子状の梁部材15aを備えたパンチングメタル3cも本実施形態に適用可能である。この場合も、太陽電池モジュール10は、ダイヤフラム4を挟んで梁部材15aの直下とならないように配置する。すなわち梁部材15aの格子内に配置することによって、ダイヤフラム4において梁部材15aの跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、バックシート9のシワの発生を防ぐことができる。
【0063】
また、梁部材は必ずしも板状である必要はなく、図8に示すように、円柱状またはパイプ状の梁部材15bを備えるパンチングメタル3dであってもよい。さらには、円柱状またはパイプ状の梁部材15bが竜骨構造になっていてもよい。あるいは、図9に示すように、枠型あるいは箱型をした梁部材15cを備えるパンチングメタル3eであってもよい。いずれの場合も、太陽電池モジュール10を、ダイヤフラム4を挟んで梁部材15b,15cの直下とならないように配置することによって、ダイヤフラム4において梁部材15b,15cの跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、バックシート9のシワの発生を防ぐことが可能である。さらに、図9に示したように、梁部材が枠型あるいは箱型をしている方が、梁部材が板状をしている場合よりも強度が高まるという効果も奏する。
【0064】
なお、以上ではパンチングメタル3に梁部材15を備えた構成を示したが、必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、ラミネート装置によっては、パンチングメタル3を設けない場合もある。しかし、パンチングメタル3が存在しない場合でも、上チャンバ2の天井を支えるために、天井の底面下に凸状の支持部材を備えている場合がある。その場合のラミネート装置を図10に示す。ここで、上チャンバ2の天井とは、上チャンバ2の閉口端における開口端側の面である。
【0065】
図10に示すように、排気ポンプ17がラミネート装置1aの上チャンバ2に排気配管を介して複数箇所で導通されており、ラミネート装置1aはパンチングメタル3を備えていないが、上チャンバ2の天井を支えるために、梁部材15を天井の支持部材(凸構造)として設ける場合がある。
【0066】
このようなラミネート装置1aにおいても、上チャンバ2に設けられた梁部材15がダイヤフラム4に当接することによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまい、結果、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが形成されてしまう。そこで、このようなラミネート装置1aにおいても、ダイヤフラム4を挟んで上チャンバ2の天井に設けられた梁部材15の直下とならないように太陽電池モジュール10を配置することによって、ダイヤフラム4において梁部材15の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、バックシート9のシワの発生を防ぐことが可能である。
【0067】
このように、パンチングメタル3に限らず、何らかの凸構造をもつ面がダイヤフラム4に当接すれば、ダイヤフラム4の変形が誘発されてしまう。したがって、太陽電池モジュール10のバックシート9には、シワが発生してしまう。しかし、本実施形態においては、上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに太陽電池モジュール10を配置することによって、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが発生するのを防ぐことができる。
【0068】
(比較の形態)
図11に本発明の比較の形態として、バックシート9上にシワが発生するときのラミネート封止方法の実施形態を示す。具体的なラミネート封止方法の手順については、上述したとおりであるので、ここでは言及しない。
【0069】
図11に示すように、本形態では、ステージ6上に被ラミネート体である太陽電池モジュール10が複数載置されているが、各太陽電池モジュール10は上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに載置されている。すなわち、各太陽電池モジュール10は、ダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下になるように載置されている。
【0070】
この際、太陽電池モジュール10がダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下にあることから、ラミネート工程において、ダイヤフラム4の梁部材15の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10を加圧した際にバックシート9と封止材とを不均一に押し、シワの発生原因となる特異な形状(凹凸)が形成される。その後、キュア工程を実施すると、特異な形状に起因して、バックシート9上の特異な形状の少なくとも一部においてシワが形成される。
【0071】
バックシート9にシワが形成されてしまうと、太陽電池モジュール10の耐候性および耐湿性が悪くなり、モジュール寿命が短くなってしまう虞がある。また、バックシート9にシワがあることで太陽電池モジュール10の見た目も悪くなってしまう。
【0072】
以上のことから、本発明のラミネート封止方法によれば、各太陽電池モジュール10がダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下にならぬように載置することによって、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが発生するのを防ぐことができる。また、太陽電池モジュール10がダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下にならないようにするだけでよいので、新たな処理工程を必要とすることなく、シワの発生を防いでラミネート封止を行うことができる。
【0073】
〔第2の実施形態〕
以下には、本発明の第2の実施形態に係るラミネート装置について、図12を参照して説明する。図12は、本実施形態に係るラミネート装置が備えるパンチングメタル3fを示す概略図である。
【0074】
上述した第1の実施形態に係るラミネート装置1においては、パンチングメタル3に梁部材15を備えた構成を示したが、必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、本実施形態に係るラミネート装置では、図12に示すように、パンチングメタル3f自体が凹凸形状をしており、上チャンバ2の開口端側の面に凸状の凸構造13を備えている。このように、パンチングメタル3f自体が凸構造13を備え、一体型になっていることによって、梁部材15を別途設ける必要がなくなり、ラミネート装置を構成する部品点数の削減、およびパンチングメタル3fを支持可能に梁部材15を固定する固定構造の省略ができる。それによって、ラミネート装置1の構造を第1の実施形態と比較して簡略化できると共に、パンチングメタル3fの撓みを抑えることができる。
【0075】
ここで、太陽電池モジュール10をラミネート封止する際、パンチングメタル3fの凸構造13がダイヤフラム4に当接することによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。結果、太陽電池モジュール10のバックシート9にはシワが形成されてしまう。そこで、本実施形態においても、上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに、被ラミネート体である太陽電池モジュール10を載置する。すなわち、ダイヤフラム4を挟んで凸構造13の直下にならぬように太陽電池モジュール10をステージ6上に載置する。これによって、ダイヤフラム4において凸構造13の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、シワの発生原因となる特異な形状(凹凸)は形成されない。したがって、その後のキュア工程においては、特異な形状に起因したシワはバックシート9上に発生しない。
【0076】
このように、第1の実施形態と同様に、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが形成されないので、耐候性および耐湿性が良好であり、モジュール寿命が長い太陽電池モジュール10が得られる。また、バックシート9にシワが形成されないので、太陽電池モジュール10の見た目が悪くなることもない。
【0077】
なお、具体的な太陽電池モジュール10の製造方法等は、上述した第1の実施形態と同様であるため、ここでは言及しない。
【0078】
〔第3の実施形態〕
以下には、本発明の第3の実施形態に係るラミネート装置について、図13を参照して説明する。図13は、本実施形態に係るラミネート装置が備えるパンチングメタル3gを示す概略図である。
【0079】
本実施形態に係るラミネート装置では、図13に示すように、上チャンバ2の天井部分に設けられた梁部材15dに、ボルト等の締結部材16によってパンチングメタル3gが固定されている。この場合、太陽電池モジュール10をラミネート封止する際に、図5(b)に示すように、パンチングメタル3gに設けられた締結部材16がダイヤフラム4に当接して負荷を与えることによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。結果、太陽電池モジュール10のバックシート9にはシワが形成されてしまう。このように、パンチングメタル3gに、梁部材15あるいは凸構造13等が設けられていなくても、パンチングメタル3gがダイヤフラム4に当接する面に何らかの凸構造があれば、ダイヤフラム4の変形が誘発されてしまう。したがって、太陽電池モジュール10のバックシート9には、シワが発生してしまう。
【0080】
そこで、本実施形態においても、上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに、被ラミネート体である太陽電池モジュール10を載置する。すなわち、ダイヤフラム4を挟んで凸構造13の直下にならぬように太陽電池モジュール10をステージ6上に載置する。これによって、ダイヤフラム4において締結部材16の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、シワの発生原因となる特異な形状(凹凸)は形成されない。したがって、その後のキュア工程においては、特異な形状に起因したシワはバックシート9上に発生しない。
【0081】
このように、第1および第2の実施形態と同様に、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが形成されないので、耐候性および耐湿性が良好であり、モジュール寿命が長い太陽電池モジュール10が得られる。また、バックシート9にシワが形成されないので、太陽電池モジュール10の見た目が悪くなることもない。
【0082】
なお、具体的な太陽電池モジュール10の製造方法等は、上述した第1の実施形態と同様であるため、ここでは言及しない。
【0083】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
また、以上では太陽電池モジュールを構成する各部材について特に言及していないが、従来公知の材料を適用できるのは言うまでもない。例えば、基板7としてはガラス基板等が適用できるし、封止材としてはエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等が適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、太陽電池モジュールを製造時に、基板、太陽電池素子、およびバックシート等をラミネート封止する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1,20 ラミネート装置
2 上チャンバ
3,3a〜3g パンチングメタル
4 ダイヤフラム
5 保護シート
6 ステージ
7 基板
8 太陽電池素子
9 バックシート
10 太陽電池モジュール
13 凸構造
14 テープ
15,15a〜15d 梁部材
16 締結部材
17 排気ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの製造方法、および該製造方法によって製造した太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンなエネルギー源としての重要性が認められ、その需要が高まりつつある。太陽電池の利用分野は、大型機器類のパワーエネルギー源から、精密な電子機器類の小型電源まで多岐に渡っており、太陽電池を備えた様々な太陽光発電装置は広く普及しつつある。
【0003】
太陽電池モジュールは、基板と太陽電池素子とバックシートとを樹脂等の封止材でラミネート封止を行うことによって製造するのが一般的である。例えば、特許文献1には、ラミネート封止を行う一般的なラミネート装置が開示されている。具体的には、本文献に開示されているラミネート装置は、上部真空室、下部真空室、両真空室の間に設置されたダイヤフラム(伸縮シート)、保護シート、および被ラミネート体を載置する熱板によって構成される。上部真空室がダイヤフラムに接する面には、排気ラインと導通した多数の空孔部を有する平板(以下、パンチングメタルと称す)が用いられている。ラミネート封止は、下部真空室と上部真空室との圧力差により、被ラミネート体と共に伸縮性シートを下方の熱板に押し付け、支持シートを介して伸縮シートと熱板とにより被ラミネート体を挟み込んで加圧することによって実現される。
【0004】
例えば、特許文献2には、上述したようなラミネート装置によって製造した太陽電池モジュールが開示されている。具体的には、封止樹脂を介して太陽電池素子をガラス板と耐候性樹脂フィルムとで挟持した、ラミネート構造の太陽電池モジュールが開示されている。該太陽電池モジュールは、ガラス板、封止樹脂シート、太陽電池素子、封止樹脂シート、および、耐候性樹脂フィルムを重ね合わせる工程と、熱ラミネートによる封止工程と、炉に入れて架橋反応を進ませてガラス板および耐候性樹脂フィルムと封止樹脂シートとの接着性を上げるキュア工程と、端部を切断除去して整形するトリミング工程とからなる。
【0005】
最近では、ラミネート装置の生産性を向上するために、多数の被ラミネート体を同時にまとめてラミネートしたり、太陽電池モジュール自体が大型の基板で形成されたりすることから、ラミネート装置の大型化が進んでいる。それにより、パンチングメタルも大型化することによって、該パンチングメタルが自重で下方に撓んで変形してしまうという問題がある。
【0006】
そのため、ラミネート装置では、パンチングメタルを下側から支持する梁部材を設けることによって、パンチングメタルの変形を抑える技術が一般化されつつある。梁部材を設けた従来のラミネート装置を図14に示す。なお、実際には、基板7と太陽電池素子8との間には第1封止材が挟まれており、太陽電池素子8とバックシート9との間には第2封止材が挟まれているが、図面の簡略化のため、図面上では第1封止材および第2封止材は太陽電池素子8の一体として示しており、別体としての図示を省略している。
【0007】
図14に示すように、ラミネート装置20は、上チャンバ2およびステージ6を備えており、上チャンバ2の開口端側には、パンチングメタル3、ダイヤフラム4、および保護シート5が順に設けられている。上チャンバ2とパンチングメタル3とによって形成される空間は上部真空室となっている。また、上チャンバ2が下降し、ステージ6と当接した際に、上チャンバ2およびステージ6に囲まれる空間が下部真空室(下チャンバ)となる。
【0008】
ここで、パンチングメタル3には梁部材15が設けられており、パンチングメタル3は梁部材15によって下方から支えられ、自重で下方に撓むことを防いでいる。したがって、ラミネート装置20によれば、パンチングメタル3が自重で下方に撓み、変形することなく、基板7、太陽電池素子8、およびバックシート9のラミネート封止を行うことができる。結果、太陽電池モジュール10が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−15696号公報(2000年1月18日公開)
【特許文献2】特開2000−277772号公報(2000年10月6日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したラミネート装置20の場合、脱気処理時において、ダイヤフラム4がパンチングメタル3および梁部材15に密着した際に、梁部材15がダイヤフラム4に負荷を与えてしまう。その状態を図15に示す。
【0011】
図15に示すように、梁部材15の角の部分(図中の領域11)がダイヤフラム4に与える負荷が特に大きい。そのため、ラミネート処理を繰り返していく内に、梁部材15の角の跡がダイヤフラム4に転写され、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。そこで、ダイヤフラム4が波状に変形した場合のラミネート封止について、図16を参照して説明する。図16(a)は、加圧時のラミネート装置20を示す概略図である。図16(b)および(c)は、太陽電池モジュール10のバックシート9に掛かる圧力を示す概略図である。
【0012】
ラミネート処理を繰り返していく結果、図16(a)に示すように、ダイヤフラムにおける図中の領域12は、パンチングメタル3側に対して凹となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凸となる)。一方、ダイヤフラム4における図中の領域13は、パンチングメタル3側に対して凸となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凸となる)。
【0013】
ここで、ラミネート封止は、被ラミネート体を加圧し、封止材を溶融する短時間の熱処理を行うラミネート工程と、被ラミネート体の密着性を向上させるために長時間の熱処理を行うキュア工程とに大別される。ラミネート工程において、波状に変形したダイヤフラム4で被ラミネート体を加圧すると、ラミネート時にダイヤフラム4が変形した部分にバックシート9を介して圧接される第2封止材が不均一に加圧されてしまう。より詳しくは、図16(b)に示すように、ダイヤフラム4がパンチングメタル3側に対して凹となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凸となる)箇所では、バックシート9および第2封止材に大きな圧力を与える(図中の領域12)。一方、ダイヤフラム4がパンチングメタル3側に対して凸となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凹となる)箇所では、バックシート9および第2封止材に与える圧力は小さくなる(図中の領域13)。
【0014】
その結果、ラミネート工程において、波状に変形したダイヤフラム4で被ラミネート体を加圧すると、バックシート9および第2封止材において、波状に変形した部分に対応する箇所(図中の領域13)に特異な形状が形成されてしまう。より詳しくは、ダイヤフラム4の波状の凹凸が第2封止材に転写される。
【0015】
その後、被ラミネート体がキュア工程に入ると、図16(c)に示すように、バックシート9において、上述した特異な形状が形成された領域にシワが発生してしまう。より詳しくは、ラミネート時に、特にバックシート9および第2封止材に与える圧力が小さかった箇所では、バックシート9と第2封止材との密着性が弱くなっているため、キュア処理時にバックシート9と第2封止材とが離間して隙間が発生し、それが原因となってシワが発生すると考えられる。実際にバックシート9に形成されるシワを図17に示す。本図に示すテープ14は幅10mmのテープであり、形成されるシワ(凹凸)の大きさの比較のために設けている。
【0016】
図17に示すように、バックシート9には、主に図中のMD方向に波状のシワが形成されてしまう。結果、バックシート9にシワが形成された太陽電池モジュール10が製造されてしまう。バックシート9にシワが形成されてしまうと、太陽電池モジュール10の耐候性および耐湿性が悪くなり、モジュール寿命が短くなってしまう虞がある。また、バックシート9にシワがあることで太陽電池モジュール10の見た目も悪くなってしまう。
【0017】
ここで、以上では、パンチングメタル3に設けられた梁部材15によってダイヤフラム4が波状に変形してしまう形態を示したが、必ずしも梁部材15によってダイヤフラム4が波状に変形してしまうわけではない。例えば、ラミネート装置によっては、パンチングメタル3のダイヤフラム4側の面自体に凸構造を設け、該凸構造を梁部材15として機能させる場合もある。この場合は、パンチングメタル3に形成された凸構造がダイヤフラム4に当接することによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。
【0018】
また、他のラミネート装置では、パンチングメタル3を設けていない場合がある。しかし、パンチングメタル3が存在しない場合でも、上チャンバ2の天井を支えるために、天井の底面下に支持部材として凸状の梁部材を備えている場合がある。この場合は、上述した従来のラミネート装置20と同様に、前記の凸状の梁部材がダイヤフラム4に当接することによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。このように、ラミネート装置において、ダイヤフラムに当接する面に形成された凸形状によって、ダイヤフラムの変形が誘発されてしまう。結果、太陽電池モジュールのバックシートにシワが形成されてしまう。
【0019】
そこで、本発明は前記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽電池モジュール裏面のバックシートのシワの発生を防止することができる製造方法、および該製造方法で製造した太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、前記の課題を解決するために、上部チャンバと、前記上部チャンバに張架され、かつ、上部密閉空間を前記上部チャンバと構成できるダイヤフラムと、前記上部チャンバにおいて、前記ダイヤフラムと対向する面に設けられた凸構造と、太陽電池素子を含む被ラミネート体を載置できるステージを有し、かつ、前記上部チャンバと当接することによって下部密閉空間を前記ダイヤフラムと構成できる下部チャンバと、前記ステージに載置された前記被ラミネート体を加熱できる加熱機構と、前記上部密閉空間および前記下部密閉空間を真空にできる排気部とを備えたラミネート装置を用いた太陽電池モジュールの製造方法であって、前記上部チャンバにおいて前記凸構造が設けられていない位置に対応する前記ステージ上の位置のみに、前記被ラミネート体を戴置する載置工程を備えていることを特徴としている。
【0021】
前記の方法によれば、ステージ上に被ラミネート体である太陽電池モジュールが複数載置されているが、被ラミネート体は、上部チャンバにおいて凸構造が設けられていない位置に対応するステージ上の位置のみに載置されている。すなわち、各被ラミネート体は、ダイヤフラムを挟んで凸構造の直下にならぬように載置されている。
【0022】
ラミネート装置においては、ダイヤフラムが上部チャンバの凸構造に密着した際に、凸構造の凸部がダイヤフラムに与える負荷が大きい。そのため、ラミネート処理を繰り返していく内に、凸構造の凸部の跡がダイヤフラムに転写され、ダイヤフラムが波状に変形してしまう。そこで、本発明に係る製造方法によれば、ダイヤフラムにおいて凸構造の跡がついた箇所が被ラミネート体に接触することがない。そのため、加熱工程において、波状に変形したダイヤフラムで被ラミネート体を加圧しても、該被ラミネート体において、特異な形状(凹凸)が形成されてしまうのを防ぐことができる。したがって、その後の硬化工程において、被ラミネート体における特異な形状に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0023】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記上部チャンバにおいて、前記ダイヤフラムに対向する面に、複数の空孔部を有する平板を備えており、前記平板の前記ダイヤフラム側の面に前記凸構造が設けられていることを特徴としている。
【0024】
パンチングメタル等の複数の空孔部を有する平板が自重で下方に撓んでしまうのを防ぐため、あるいは、平板を上部チャンバに当接するため等に、平板に凸構造が備えられている場合がある。前記の方法によれば、そのような場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0025】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記凸構造は、前記平板の一部が凸状になって構成されていることを特徴としている。
【0026】
前記の方法によれば、平板の撓みを防止すると共に、平板の重量を低減するために、該平板の一部を凸状にして凸構造を構成している場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0027】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記凸構造は、前記平板を前記上部チャンバに当接して支える支持部材であることを特徴としている。
【0028】
平板が自重で下方に撓んでしまうのを防ぐため、あるいは、平板を上部チャンバに当接するため等に、平板を上部チャンバに当接して支える支持部材を備えている場合がある。前記の方法によれば、そのような場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0029】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記支持部材は、前記上部チャンバに備えられた部材に、前記平板を固定する締結部材であることを特徴としている。
【0030】
前記の方法によれば、上部チャンバに備えられた部材に平板を当接して支えるための締結部材が平板に備えられている場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0031】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記支持部材は、前記平板に備えられた梁部材であることを特徴としている。
【0032】
前記の方法によれば、平板が自重で下方に撓んでしまうのを防ぐための梁部材が平板に備えられている場合でも、太陽電池モジュールのバックシートにおいて、該凸構造に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0033】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記被ラミネート体は、基板、第1封止材、前記太陽電池素子、第2封止材、およびバックシートを順に積層したものであることを特徴としている。
【0034】
前記の構成によれば、ダイヤフラムにおいて凸構造の跡がついた箇所が太陽電池モジュールのバックシートに接触することがないので、バックシート上における特異な形状に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0035】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、前記被ラミネート体が前記上部チャンバ内に含まれるように、前記上部チャンバと前記下部チャンバとを当接する当接工程と、前記当接工程の後、前記上部密閉空間および前記下部密閉空間の内部を前記排気部が真空状態にする真空引き工程と、前記真空引き工程の後、前記上部密閉空間の内部を大気開放すると同時に、前記被ラミネート体を前記加熱機構が加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後、前記第1封止材および前記第2封止材を硬化させる硬化工程とをさらに備えていることを特徴としている。
【0036】
前記の構成によれば、ダイヤフラムにおいて凸構造の跡がついた箇所が被ラミネート体のバックシートに接触することがない。そのため、加熱工程において、波状に変形したダイヤフラムで被ラミネート体を加圧しても、バックシートおよび封止材において、特異な形状(凹凸)が形成されてしまうのを防ぐことができる。したがって、その後の硬化工程において、バックシート上における特異な形状に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【0037】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいては、前記の課題を解決するために、上述したいずれかの太陽電池モジュールの製造方法によって製造されたことを特徴としている。
【0038】
前記の構成によれば、太陽電池モジュールのバックシートにシワが形成されないので、耐候性および耐湿性が良好であり、モジュール寿命が長い太陽電池モジュールが得られる。また、バックシートにシワが形成されないので、太陽電池モジュールの見た目が悪くなることもない。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法によれば、ダイヤフラムにおいて凸構造の跡がついた箇所が被ラミネート体のバックシートに接触することがない。そのため、加熱工程において、波状に変形したダイヤフラムで被ラミネート体を加圧しても、バックシートおよび封止材において、特異な形状(凹凸)が形成されてしまうのを防ぐことができる。したがって、その後の硬化工程において、バックシード上における特異な形状に起因したシワの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係るラミネート装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るパンチングメタルの一構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るパンチングメタルの一構成例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るパンチングメタルの一構成例を示す図である。
【図5】(a)は、待機時のラミネート装置および各真空室の圧力状態を示す図であり、(b)は、真空引き時のラミネート装置および各真空室の圧力状態を示す図であり、(c)は、加圧時のラミネート装置および各真空室の圧力状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るラミネート装置において、上チャンバとステージとの位置関係を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るラミネート装置に適用し得る梁部材の一構成例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るラミネート装置に適用し得る梁部材の一構成例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るラミネート装置に適用し得る梁部材の一構成例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る上チャンバの天井の底面下に凸状の支持部材を備えているラミネート装置を示す概略図である。
【図11】本発明に対する比較の実施形態に係るラミネート装置において、上チャンバとステージとの位置関係を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るラミネート装置が備えるパンチングメタルを示す概略図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るラミネート装置が備えるパンチングメタルを示す概略図である。
【図14】梁部材をパンチングメタルに設けた従来のラミネート装置を示す概略図である。
【図15】従来のラミネート装置において、上チャンバをダイヤフラムがパンチングメタルおよび梁部材に密着した状態を示す図である。
【図16】(a)は、加圧時のラミネート装置を示す概略図であり、(b)は、太陽電池モジュールのバックシートに掛かる圧力を示す概略図であり、(c)は、太陽電池モジュールのバックシートに掛かる圧力を示す概略図である。
【図17】太陽電池モジュールのバックシートに形成されるシワを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明に従った実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、本発明を実施するために好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲は以下の実施の形態および図面に限定されるものではない。
【0042】
〔第1の実施形態〕
(ラミネート装置1の構成)
まず、本発明の第1の実施形態に係るラミネート装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るラミネート装置1の構成を示す概略図である。
【0043】
太陽電池モジュール10は、基板7、太陽電池素子8、およびバックシート9の順に積層してなる。ラミネート装置1は、被ラミネート体である基板7、太陽電池素子8、およびバックシート9を封止材でラミネート封止を行うことによって太陽電池モジュール10を製造する装置である。なお、実際には、基板7と太陽電池素子8との間には第1封止材が挟まれており、太陽電池素子8とバックシート9との間には第2封止材が挟まれているが、図面の簡略化のため、図面上では第1封止材および第2封止材は太陽電池素子8の一体として示しており、別体としての図示を省略している。これは以降のすべての図について適用される。
【0044】
図1に示すように、ラミネート装置1は、上チャンバ2(上部チャンバ)と、該上チャンバ2に対向する下チャンバ(下部チャンバ)を備えている。下チャンバは、被ラミネート体を載置可能なステージ6を備えている。上チャンバ2は、一端が開口端であり、他端が閉口端である両端を持った形状をしている。該上チャンバ2の下方、すなわち開口端側(ステージ6側)には、パンチングメタル3、ダイヤフラム4、および保護シート5が順に張架して設けられている。上チャンバ2とダイヤフラム4とによって形成される空間は上部真空室(上部密閉空間)となっている。また、上チャンバ2が下降し、下チャンバと当接した際に、上チャンバ2およびステージ6に囲まれる空間が下部真空室(下部密閉空間)となる。
【0045】
上チャンバ2がダイヤフラム4に接する面には、図示しない排気ラインと導通した多数の穴を有する平板(以下、パンチングメタル3と称す)が用いられている。この際、パンチングメタル3のダイヤフラム4側の面には、凸構造をした梁部材15が設けられており、パンチングメタル3は梁部材15によって下方から支えられ、自重で下方に撓むことを防いでいる。また、ダイヤフラム4は、膨張および伸縮が可能であり、被ラミネート体を加圧する加圧手段である。一方、保護シート5は、ダイヤフラム4に封止材が付着するのを防止するためのシートである。さらに、保護シート5は、ラミネート封止時に封止材より発生するガスによるダイヤフラム4の劣化を防ぐ役割もある。ステージ6は、複数の被ラミネート体を載置可能な熱板(加熱機構)によって構成されており、戴置された被ラミネート体を所定の温度に加熱できる。また、ステージ6には図示しない複数のリフトピンが設けられており、ステージ6上面から突出させたり、ステージ6内に格納させたりすることができるように構成されている。
【0046】
上部真空室および下部真空室はそれぞれ制御弁を有する排気ライン(排気部)に接続されており、該排気ラインには図示しない真空ポンプと外気導入部とが接続されている。ここで、外気導入部は各真空室内に空気や窒素等の気体を導入することができるように構成されている。上部真空室および下部真空室では、制御弁を切り替えることによって、排気ラインの接続先を真空ポンプと外気導入部とのいずれかに切り替えることによって、それぞれの真空室内を大気圧状態と真空状態とで任意に制御することができる。詳しくは後述するが、ラミネート封止は、下部真空室と上部真空室との圧力差により、ダイヤフラム4を下方のステージ6に押し付け、保護シート5を介してダイヤフラム4とステージ6とにより被ラミネート体を挟み込んで加圧して熱処理することによって実現される。
【0047】
ここで、本実施形態に係るパンチングメタル3の構成例を図2〜4に示す。上述したように、パンチングメタル3は、図2に示すような多数の穴11(空孔部)を有する平板である。しかし、穴11の形状は、円形であっても、角形であってもよく、角穴、格子、十字、あるいはスリット等でもよく、特に限定はない。例えば、図3および図4に示すように、複数のスリット12が形成されたパンチングメタル3a,3bも本実施形態に適用可能である。また、図3および図4から明らかなように、スリット12(または穴11)のサイズおよび配置等には特に限定はない。
【0048】
なお、パンチングメタル3は必ずしも金属板である必要はなく、例えば、セラミック板、樹脂製の板、あるいはこれらの材料と金属との複合材料等であってもよい。
【0049】
(ラミネート封止方法)
ラミネート封止は、被ラミネート体を加圧し、封止材を溶融する短時間の熱処理を行うラミネート工程と、被ラミネート体の密着性を向上させるために長時間の熱処理を行うキュア工程とに大別される。以下では、それぞれの工程について、図5を参照して説明する。図5(a)は、待機時のラミネート装置1および各真空室の圧力状態を示す図である。図5(b)は、真空引き時のラミネート装置1および各真空室の圧力状態を示す図である。図5(c)は、加圧時のラミネート装置1および各真空室の圧力状態を示す図である。これらの図では、ラミネート装置1を分かりやすくするために、梁部材15を省略している。また、これらの図に示されている表の「チャンバ」の欄は上部真空室および下部真空室を「上」および「下」で表しており、「チャンバ位置」の欄は上チャンバ2が「上昇」しているのか、あるいは「下降」しているのかを表している。また、「圧力状態」の欄は各真空室内が「大気圧」であるのか、あるいは「真空」であるのかを表している。
【0050】
まず、基板7と太陽電池素子8との間に封止材(第1封止材)を挟み、太陽電池素子8とバックシート9との間に別の封止材(第2封止材)を挟んだ被ラミネート体をステージ6上に図示しない供給装置が載置する。この際、図5(a)に示すように、上チャンバ2は上昇しており、各真空室内は大気圧状態になっている。なお、本図では図示していないが、ステージ6からは複数のリフトピンが突出しており、被ラミネート体はリフトピン上に載置される。したがって、被ラミネート体とステージとは、リフトピンによって離間されている。
【0051】
そして、被ラミネート体をステージ6に搬送した後、図5(b)に示すように、上チャンバ2は図示しない昇降機構により下降する。そして、上チャンバ2がステージ6に当接することによって、下部真空室が形成される。この際、図示しない排気ラインを介して各真空室に接続された図示しない真空ポンプは、両真空室を真空状態にして真空引きし、被ラミネート体を構成する基板7、バックシート9、および封止材の各部材間が脱気処理される。ここで、脱気処理は、ラミネート封止した太陽モジュール10の各部材間に気泡を残存させないために行われる。この時リフトピンはステージ6上から突出したままであり、被ラミネート体はステージ6から離間されたままである。
【0052】
このとき、ダイヤフラム4および保護シート5は、パンチングメタル3側に吸着され、パンチングメタル3および梁部材15に密着して当接する。
【0053】
続いて、脱気処理が十分に行われた後、図5(c)に示すように、上部真空室内を大気圧状態にし、上部真空室と下部真空室の圧力差によりダイヤフラム4を膨張させ、保護シート5を介して被ラミネート体をステージ6に押し付け、加圧する。被ラミネート体が加圧されるのに連動してリフトピンもステージ6内に格納されることによって、被ラミネート体の下面とステージ6とが当接し、被ラミネート体は加熱される。この状態で封止材の軟化点以上の温度で熱処理することによって、封止材が溶融しラミネート処理が完了する。そして、制御弁を切り替えて下部真空室の内部を大気圧状態(大気開放)にし、開閉機構により上チャンバ2を上昇させ、封止した太陽電池モジュール10を外部に搬送する。以上が、ラミネート工程である。
【0054】
その後、太陽電池モジュール10は加熱炉に搬送され、長時間の熱処理によって封止材の架橋反応を起こすことにより、封止材の耐湿性および封止材による基板7、太陽電池素子8、およびバックシート9の接着性を向上させる硬化処理(キュア処理)が実施される。これがキュア工程である。
【0055】
(シワの抑制)
ここで、ラミネート装置1においては、図5(b)に示された脱気処理時において、ダイヤフラム4がパンチングメタル3および梁部材15に密着した際に、梁部材15によってダイヤフラム4が負荷を受けるが、特に梁部材15の角の部分がダイヤフラム4に与える負荷が大きい。そのため、ラミネート処理を繰り返していく内に、梁部材15の角の跡がダイヤフラム4に転写され、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。ダイヤフラム4が波状に変形した状態でラミネート封止を行うと、ラミネート時にダイヤフラム4が変形した部分にバックシート9を介して圧接される第2封止材が不均一に加圧されてしまう。より詳しくは、ダイヤフラム4がパンチングメタル3側に対して凹となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凸となる)箇所では、バックシート9および第2封止材に大きな圧力を与え、ダイヤフラム4がパンチングメタル3側に対して凸となる(すなわち、被ラミネート体側に対して凹となる)箇所では、バックシート9および第2封止材に与える圧力は小さくなる。
【0056】
その結果、ラミネート工程において、波状に変形したダイヤフラム4で被ラミネート体を加圧すると、バックシート9および第2封止材において、波状に変形した部分に対応する領域に特異な形状が形成されてしまう。より詳しくは、ダイヤフラム4の波状の凹凸が第2封止材に転写される。
【0057】
その後、被ラミネート体がキュア工程に入ると、バックシート9において、上述した特異な形状が形成された領域にシワが発生してしまう。
【0058】
より詳しくは、ラミネート時に、特にバックシート9および第2封止材に与える圧力が小さかった箇所では、バックシート9と第2封止材との密着性が弱くなっているため、キュア処理時にバックシート9と第2封止材とが離間して隙間が発生し、それが原因となってシワが発生すると考えられる。
【0059】
そこで、本実施形態では、被ラミネート体を梁部材15の直下を避けて設置することを特徴としている。その詳細を図6に示す。図6は、ラミネート装置1において、上チャンバ2とステージ6との位置関係を示す図である。本図では、梁部材15の位置を分かりやすくするために、ダイヤフラム4および保護シート5は省略している。
【0060】
図6に示すように、本実施形態においては、ステージ6上に被ラミネート体である太陽電池モジュール10が複数載置されているが、各太陽電池モジュール10は上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに載置されている。すなわち、各太陽電池モジュール10は、ダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下にならぬように載置されている。これによって、ダイヤフラム4において梁部材15の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、シワの発生原因となる特異な形状(凹凸)は形成されない。したがって、その後のキュア工程においては、特異な形状に起因したシワはバックシート9上に発生しない。
【0061】
このように、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが形成されないので、耐候性および耐湿性が良好であり、モジュール寿命が長い太陽電池モジュール10が得られる。また、バックシート9にシワが形成されないので、太陽電池モジュール10の見た目が悪くなることもない。
【0062】
一般的にラミネート装置は、図6に示したような棒状の梁部材を備えているとは限らない。例として、ラミネート装置に適用し得る梁部材の構成例を図7〜9に示す。図7に示すように、矩形状であり、なおかつ格子状の梁部材15aを備えたパンチングメタル3cも本実施形態に適用可能である。この場合も、太陽電池モジュール10は、ダイヤフラム4を挟んで梁部材15aの直下とならないように配置する。すなわち梁部材15aの格子内に配置することによって、ダイヤフラム4において梁部材15aの跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、バックシート9のシワの発生を防ぐことができる。
【0063】
また、梁部材は必ずしも板状である必要はなく、図8に示すように、円柱状またはパイプ状の梁部材15bを備えるパンチングメタル3dであってもよい。さらには、円柱状またはパイプ状の梁部材15bが竜骨構造になっていてもよい。あるいは、図9に示すように、枠型あるいは箱型をした梁部材15cを備えるパンチングメタル3eであってもよい。いずれの場合も、太陽電池モジュール10を、ダイヤフラム4を挟んで梁部材15b,15cの直下とならないように配置することによって、ダイヤフラム4において梁部材15b,15cの跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、バックシート9のシワの発生を防ぐことが可能である。さらに、図9に示したように、梁部材が枠型あるいは箱型をしている方が、梁部材が板状をしている場合よりも強度が高まるという効果も奏する。
【0064】
なお、以上ではパンチングメタル3に梁部材15を備えた構成を示したが、必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、ラミネート装置によっては、パンチングメタル3を設けない場合もある。しかし、パンチングメタル3が存在しない場合でも、上チャンバ2の天井を支えるために、天井の底面下に凸状の支持部材を備えている場合がある。その場合のラミネート装置を図10に示す。ここで、上チャンバ2の天井とは、上チャンバ2の閉口端における開口端側の面である。
【0065】
図10に示すように、排気ポンプ17がラミネート装置1aの上チャンバ2に排気配管を介して複数箇所で導通されており、ラミネート装置1aはパンチングメタル3を備えていないが、上チャンバ2の天井を支えるために、梁部材15を天井の支持部材(凸構造)として設ける場合がある。
【0066】
このようなラミネート装置1aにおいても、上チャンバ2に設けられた梁部材15がダイヤフラム4に当接することによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまい、結果、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが形成されてしまう。そこで、このようなラミネート装置1aにおいても、ダイヤフラム4を挟んで上チャンバ2の天井に設けられた梁部材15の直下とならないように太陽電池モジュール10を配置することによって、ダイヤフラム4において梁部材15の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、バックシート9のシワの発生を防ぐことが可能である。
【0067】
このように、パンチングメタル3に限らず、何らかの凸構造をもつ面がダイヤフラム4に当接すれば、ダイヤフラム4の変形が誘発されてしまう。したがって、太陽電池モジュール10のバックシート9には、シワが発生してしまう。しかし、本実施形態においては、上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに太陽電池モジュール10を配置することによって、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが発生するのを防ぐことができる。
【0068】
(比較の形態)
図11に本発明の比較の形態として、バックシート9上にシワが発生するときのラミネート封止方法の実施形態を示す。具体的なラミネート封止方法の手順については、上述したとおりであるので、ここでは言及しない。
【0069】
図11に示すように、本形態では、ステージ6上に被ラミネート体である太陽電池モジュール10が複数載置されているが、各太陽電池モジュール10は上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに載置されている。すなわち、各太陽電池モジュール10は、ダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下になるように載置されている。
【0070】
この際、太陽電池モジュール10がダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下にあることから、ラミネート工程において、ダイヤフラム4の梁部材15の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10を加圧した際にバックシート9と封止材とを不均一に押し、シワの発生原因となる特異な形状(凹凸)が形成される。その後、キュア工程を実施すると、特異な形状に起因して、バックシート9上の特異な形状の少なくとも一部においてシワが形成される。
【0071】
バックシート9にシワが形成されてしまうと、太陽電池モジュール10の耐候性および耐湿性が悪くなり、モジュール寿命が短くなってしまう虞がある。また、バックシート9にシワがあることで太陽電池モジュール10の見た目も悪くなってしまう。
【0072】
以上のことから、本発明のラミネート封止方法によれば、各太陽電池モジュール10がダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下にならぬように載置することによって、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが発生するのを防ぐことができる。また、太陽電池モジュール10がダイヤフラム4を挟んで梁部材15の直下にならないようにするだけでよいので、新たな処理工程を必要とすることなく、シワの発生を防いでラミネート封止を行うことができる。
【0073】
〔第2の実施形態〕
以下には、本発明の第2の実施形態に係るラミネート装置について、図12を参照して説明する。図12は、本実施形態に係るラミネート装置が備えるパンチングメタル3fを示す概略図である。
【0074】
上述した第1の実施形態に係るラミネート装置1においては、パンチングメタル3に梁部材15を備えた構成を示したが、必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、本実施形態に係るラミネート装置では、図12に示すように、パンチングメタル3f自体が凹凸形状をしており、上チャンバ2の開口端側の面に凸状の凸構造13を備えている。このように、パンチングメタル3f自体が凸構造13を備え、一体型になっていることによって、梁部材15を別途設ける必要がなくなり、ラミネート装置を構成する部品点数の削減、およびパンチングメタル3fを支持可能に梁部材15を固定する固定構造の省略ができる。それによって、ラミネート装置1の構造を第1の実施形態と比較して簡略化できると共に、パンチングメタル3fの撓みを抑えることができる。
【0075】
ここで、太陽電池モジュール10をラミネート封止する際、パンチングメタル3fの凸構造13がダイヤフラム4に当接することによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。結果、太陽電池モジュール10のバックシート9にはシワが形成されてしまう。そこで、本実施形態においても、上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに、被ラミネート体である太陽電池モジュール10を載置する。すなわち、ダイヤフラム4を挟んで凸構造13の直下にならぬように太陽電池モジュール10をステージ6上に載置する。これによって、ダイヤフラム4において凸構造13の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、シワの発生原因となる特異な形状(凹凸)は形成されない。したがって、その後のキュア工程においては、特異な形状に起因したシワはバックシート9上に発生しない。
【0076】
このように、第1の実施形態と同様に、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが形成されないので、耐候性および耐湿性が良好であり、モジュール寿命が長い太陽電池モジュール10が得られる。また、バックシート9にシワが形成されないので、太陽電池モジュール10の見た目が悪くなることもない。
【0077】
なお、具体的な太陽電池モジュール10の製造方法等は、上述した第1の実施形態と同様であるため、ここでは言及しない。
【0078】
〔第3の実施形態〕
以下には、本発明の第3の実施形態に係るラミネート装置について、図13を参照して説明する。図13は、本実施形態に係るラミネート装置が備えるパンチングメタル3gを示す概略図である。
【0079】
本実施形態に係るラミネート装置では、図13に示すように、上チャンバ2の天井部分に設けられた梁部材15dに、ボルト等の締結部材16によってパンチングメタル3gが固定されている。この場合、太陽電池モジュール10をラミネート封止する際に、図5(b)に示すように、パンチングメタル3gに設けられた締結部材16がダイヤフラム4に当接して負荷を与えることによって、ダイヤフラム4が波状に変形してしまう。結果、太陽電池モジュール10のバックシート9にはシワが形成されてしまう。このように、パンチングメタル3gに、梁部材15あるいは凸構造13等が設けられていなくても、パンチングメタル3gがダイヤフラム4に当接する面に何らかの凸構造があれば、ダイヤフラム4の変形が誘発されてしまう。したがって、太陽電池モジュール10のバックシート9には、シワが発生してしまう。
【0080】
そこで、本実施形態においても、上チャンバ2において梁部材15が設けられていない位置に対応するステージ6上の位置のみに、被ラミネート体である太陽電池モジュール10を載置する。すなわち、ダイヤフラム4を挟んで凸構造13の直下にならぬように太陽電池モジュール10をステージ6上に載置する。これによって、ダイヤフラム4において締結部材16の跡がついた箇所が太陽電池モジュール10のバックシート9に接触することがないので、シワの発生原因となる特異な形状(凹凸)は形成されない。したがって、その後のキュア工程においては、特異な形状に起因したシワはバックシート9上に発生しない。
【0081】
このように、第1および第2の実施形態と同様に、太陽電池モジュール10のバックシート9にシワが形成されないので、耐候性および耐湿性が良好であり、モジュール寿命が長い太陽電池モジュール10が得られる。また、バックシート9にシワが形成されないので、太陽電池モジュール10の見た目が悪くなることもない。
【0082】
なお、具体的な太陽電池モジュール10の製造方法等は、上述した第1の実施形態と同様であるため、ここでは言及しない。
【0083】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
また、以上では太陽電池モジュールを構成する各部材について特に言及していないが、従来公知の材料を適用できるのは言うまでもない。例えば、基板7としてはガラス基板等が適用できるし、封止材としてはエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等が適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、太陽電池モジュールを製造時に、基板、太陽電池素子、およびバックシート等をラミネート封止する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1,20 ラミネート装置
2 上チャンバ
3,3a〜3g パンチングメタル
4 ダイヤフラム
5 保護シート
6 ステージ
7 基板
8 太陽電池素子
9 バックシート
10 太陽電池モジュール
13 凸構造
14 テープ
15,15a〜15d 梁部材
16 締結部材
17 排気ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部チャンバと、
前記上部チャンバに張架され、かつ、上部密閉空間を前記上部チャンバと構成できるダイヤフラムと、
前記上部チャンバにおいて、前記ダイヤフラムと対向する面に設けられた凸構造と、
太陽電池素子を含む被ラミネート体を載置できるステージを有し、かつ、前記上部チャンバと当接することによって下部密閉空間を前記ダイヤフラムと構成できる下部チャンバと、
前記ステージに載置された前記被ラミネート体を加熱できる加熱機構と、
前記上部密閉空間および前記下部密閉空間を真空にできる排気部とを備えたラミネート装置を用いた太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記上部チャンバにおいて前記凸構造が設けられていない位置に対応する前記ステージ上の位置のみに、前記被ラミネート体を戴置する載置工程を備えていることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記上部チャンバにおいて、前記ダイヤフラムと対向する面に、複数の空孔部を有する平板を備えており、
前記平板の前記ダイヤフラム側の面に前記凸構造が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記凸構造は、前記平板の一部が凸状になって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記凸構造は、前記平板を前記上部チャンバに当接して支える支持部材であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記支持部材は、前記上部チャンバに備えられた部材に、前記平板を固定する締結部材であることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記支持部材は、前記平板に備えられた梁部材であることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記被ラミネート体は、基板、第1封止材、前記太陽電池素子、第2封止材、およびバックシートを順に積層したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記被ラミネート体が前記上部チャンバ内に含まれるように、前記上部チャンバと前記下部チャンバとを当接する当接工程と、
前記当接工程の後、前記上部密閉空間および前記下部密閉空間の内部を前記排気部が真空状態にする真空引き工程と、
前記真空引き工程の後、前記上部密閉空間の内部を大気開放すると同時に、前記被ラミネート体を前記加熱機構が加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記第1封止材および前記第2封止材を硬化させる硬化工程とをさらに備えていることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法によって製造されたことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項1】
上部チャンバと、
前記上部チャンバに張架され、かつ、上部密閉空間を前記上部チャンバと構成できるダイヤフラムと、
前記上部チャンバにおいて、前記ダイヤフラムと対向する面に設けられた凸構造と、
太陽電池素子を含む被ラミネート体を載置できるステージを有し、かつ、前記上部チャンバと当接することによって下部密閉空間を前記ダイヤフラムと構成できる下部チャンバと、
前記ステージに載置された前記被ラミネート体を加熱できる加熱機構と、
前記上部密閉空間および前記下部密閉空間を真空にできる排気部とを備えたラミネート装置を用いた太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記上部チャンバにおいて前記凸構造が設けられていない位置に対応する前記ステージ上の位置のみに、前記被ラミネート体を戴置する載置工程を備えていることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記上部チャンバにおいて、前記ダイヤフラムと対向する面に、複数の空孔部を有する平板を備えており、
前記平板の前記ダイヤフラム側の面に前記凸構造が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記凸構造は、前記平板の一部が凸状になって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記凸構造は、前記平板を前記上部チャンバに当接して支える支持部材であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記支持部材は、前記上部チャンバに備えられた部材に、前記平板を固定する締結部材であることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記支持部材は、前記平板に備えられた梁部材であることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記被ラミネート体は、基板、第1封止材、前記太陽電池素子、第2封止材、およびバックシートを順に積層したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記被ラミネート体が前記上部チャンバ内に含まれるように、前記上部チャンバと前記下部チャンバとを当接する当接工程と、
前記当接工程の後、前記上部密閉空間および前記下部密閉空間の内部を前記排気部が真空状態にする真空引き工程と、
前記真空引き工程の後、前記上部密閉空間の内部を大気開放すると同時に、前記被ラミネート体を前記加熱機構が加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記第1封止材および前記第2封止材を硬化させる硬化工程とをさらに備えていることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法によって製造されたことを特徴とする太陽電池モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−162000(P2012−162000A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24300(P2011−24300)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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