説明

太陽電池モジュール及びその製造方法

【課題】隔壁部における界面剥離を低減して、寿命を向上させた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールは、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層5を有して構成され、窓極として機能する第一電極と、少なくとも一部に電解質層を介して第一電極と対向して配される第二電極とを備える。第一電極を設ける第一基材または第二電極を設ける第二基材は隔壁部を有する。第一基材2と第二基材7の相対する側の面にはそれぞれ、第一酸化膜3と第二酸化膜8が配される。各ユニットセル20に対応するように、該第一酸化膜には局所的に重ねて第一導電膜4が、該第二酸化膜には局所的に重ねて第二導電膜9が、それぞれ配される。隣接するユニットセルのうち、一方のユニットセルを構成する第一導電膜と、他方のユニットセルを構成する第二導電膜とは、隔壁部の頂面において、両者の間に配された導電性接着部材13によって接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池をはじめとする湿式太陽電池(以下、DSC(Dye-Sensitized Solar Cell) と略記する。)のユニットセルを直列接続してなる太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DSCを大型化する方法としては、セル内に配線を施して内部抵抗を下げることで電流を得る方法と、基板内でセルを分割し、それぞれのセルを直列に接続することで高電圧低電流のミニモジュールとする方法がある。このうち、後者のように単一の基板内に直列DSCモジュールを形成する方法としては、電流の経路形状から名付けられたZ型、W型と呼ばれるモジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このZ型、W型と呼ばれるモジュールは、例えば、図7及び図8にそれぞれ示すように、何れも基材101と透明導電層102と半導体層103からなる三層構造の透明基板を光が入射する側の作用極(窓側電極)108とし、一方、透明導電層102を塗布した基材101を対極109として、この作用極108と対極109とで電解質層(電解液もしくは電解質ゲル)105を挟み込んだ構造をしている。
【0004】
そして、Z型のモジュールは図7に示すように、隔壁106で分割された各セル110a,b,c…を、作用極108はいずれか一方側に、対極109は他方側となるようにそれぞれ分けて配置するとともに、隣接する各セル110a,b,c…の作用極108と対極109とをセル間接続部材107を用いて繋ぎ合わせて電気接続した構造をしている。
【0005】
一方、W型のモジュールは、図8に示すように、隔壁106で分割された各セル110a,b,c…を隣接する作用極108と対極109とが交互になるように配置して裏面入射可能とするとともに、隣り合う一対のセル110a,110b,110c…の作用極108と対極109とを同一基材101上に設けて接続した構造をしている。
【0006】
このうちZ型のモジュールは、W型のモジュールのように光電変換効率の劣る裏面入射となるユニットセルが存在しないことから、W型モジュールに比べてモジュール単位での発電効率の向上が図れる。しかしながら、Z型のモジュールは、作用極と対極とを接続する構成が複雑となることから、製造時の作業性が低く、また多くの製造工程も要するので、製造コストが嵩む等の問題がある。
【0007】
Z型のモジュールにおいて良好な特性を得る方法としては、例えば、作用極と対極との間に、オレフィン樹脂からなる絶縁性材料中に導電剤を含んだ導電性材料を設け、両極間を電気的に接続するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、Z型のモジュールからさらに進んだ構造として、一つの基板上にユニットセルを並べて配し、隣接するユニットセル同士を電気的に接続してなるモノシリック型モジュールを実現しようとするアイデアも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
発電効率の面で有利なZ型モジュールを作製する場合、基板上に多くのユニットセルを並べて配し、それぞれ隣接したセルの作用極と対極とを接続部材を用いて直列に接続しなければならないが、接続に用いる領域は非発電領域となるため、極力狭くする必要がある。また、電解液が隣接するユニットセル間を往来しないように、ユニットセル間の分離性に優れた構造の開発が期待されている。
【0009】
そこで、いずれか一方の電極(対極または作用極)を設けた基材に、隣接するユニットセル間を分離する隔壁部を備えた構成を有するモジュールを考案し、本発明者らは先に出願をしている(特許文献4参照)。
【0010】
図9に示すように、このモジュールは、隣接するユニットセル120間を分離する隔壁部121を備えた透明部材からなる第一基材122と、第一電極として機能する導電層123と、導電層上に設けた多孔質酸化物半導体層124とからなる構造体を、光が入射する側の窓極(作用極)基板125とする。一方、第二基材126と第二電極として機能する導電層127と、電極部材128とからなる構造体を、対極基板129とする。そして、窓極基板125と対極基板129との間に電解質層130(電解液もしくは電解質ゲル)を設けてなる。また、窓極基板125の導電層123は一端が隔壁部121の頂面まで延び、この頂面において対極基板129との間に導電性接着部材131を設けることによって間接接続するように構成されたものである。
【0011】
この構成によれば、従来に比べて隣接するユニットセル間の構成が簡単となり、ひいては組立の容易性を格段と向上させることが可能となる。しかも、上記隔壁部を利用して隣接するユニットセル同士を接続するようにしたことにより、隔壁部の厚みを調整するだけで、ユニットセル同士の接続に用いられて非発電領域となる部分を極力狭めた構成とすることができる。
【0012】
ところで、このようなモジュールに用いられている基材として、ガラス基板やプラスチック基板が広く用いられている。ところが、上述した隔壁部を備える構成を、たとえばプラスチック基板に採用しようとした場合には、プラスチック基板と封止部やセル間接合部(ハイミランシート)との接着強度が弱いため、僅かな応力でも破断が生じてしまう虞があった。
【0013】
また、プラスチック基板を採用する際は、副次的に、以下の(イ)〜(ホ)に列挙するような課題もあった。
(イ)プラスチック基板と酸化チタン等からなる多孔質酸化物半導体層との密着性が低いため、多孔質酸化物半導体層の厚さを大きくすることができない(多孔質酸化物半導体層の厚さが大きくなると層形成時の収縮応力により剥離してしまう)。その結果、モジュールの寿命低下を招く。
(ロ)プラスチック基板は、ガラス基板等と比べて熱膨張率が大きいため、熱により基板に反りが発生するという問題もある。この反りは、モジュールにおいて、接合部、多孔質酸化物半導体層、導電膜などの亀裂、剥離または劣化を引き起こす。
【0014】
(ハ)プラスチック基板は気体通過性が高いため、電解液(メトキシアセトニトリルやヨウ素など揮発性成分を含む)の揮発や、水分が透過することによる、電解液の吸湿劣化を引き起こす。
(二)色素吸着後の酸化チタン等からなる多孔質酸化物半導体層は、100℃程度の昇温で発電特性が劣化する。しかし、セル封止用の接着剤は120〜140℃の昇温工程を必要とするため、高い性能の封止モジュールを作ることが難しい。
(ホ)熱プレス方式によるセル間接続法を用いる場合、封止不良が発生しやすいため、封止後に正常に全セルが接合されているかどうか検査する必要がある。
【特許文献1】特開平8−306399号公報
【特許文献2】特開2005−93252号公報
【特許文献3】特開2004−303463号公報
【特許文献4】特願2005−190247
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、隔壁部における界面剥離を低減して、寿命を向上させた太陽電池モジュールを提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、色素担持した多孔質半導体層の劣化を防止して、寿命を向上させた太陽電池モジュールの製造方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1に係る太陽電池モジュールは、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有して構成され、窓極として機能する第一電極と、少なくとも一部に電解質層を介して前記第一電極と対向して配される第二電極とを備え、前記第一電極を設ける第一基材または前記第二電極を設ける第二基材は、隣接するユニットセル間を分離する隔壁部を有する太陽電池モジュールであって、前記第一基材と前記第二基材の相対する側の面にはそれぞれ、第一酸化膜と第二酸化膜が配されるとともに、各ユニットセルに対応するように、該第一酸化膜には局所的に重ねて第一導電膜が、該第二酸化膜には局所的に重ねて第二導電膜が、それぞれ配されており、前記隣接するユニットセルのうち、一方のユニットセルを構成する前記第一導電膜と、他方のユニットセルを構成する前記第二導電膜とは、前記隔壁部の頂面において、両者の間に配された導電性接着部材によって接合されていることを特徴とする。
本発明の請求項2に係る太陽電池モジュールは、請求項1において、前記第一基材において、前記第一酸化膜が設けられる面の表面粗さが5μm以下であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る太陽電池モジュールは、請求項1において、前記第一基材及び前記第二基材は、それぞれ異なる部材からなり、それらの熱膨張率差が−30×10−7/K以上、100×10−7/K以下であることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る太陽電池モジュールは、請求項1において、前記第一導電膜または前記第二導電膜のうちいずれか一方は、ユニットセル内で分離されていることを特徴とする。
本発明の請求項5に係る太陽電池モジュールは、請求項1において、前記第一基材または前記第二基材の少なくとも一方において、前記第一酸化膜あるいは前記第二酸化膜が配された面とは反対側の面には、無機膜が配されていることを特徴とする。
本発明の請求項6に係る太陽電池モジュールは、請求項1において、前記第一基材及び前記第二基材は、熱膨張率が300×10−7/K以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に係る太陽電池モジュールの製造方法は、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有して構成され、窓極として機能する第一電極と、少なくとも一部に電解質層を介して前記第一電極と対向して配される第二電極とを備え、前記第一電極を設ける第一基材または前記第二電極を設ける第二基材は、隣接するユニットセル間を分離する隔壁部を有し、前記第一基材と前記第二基材の相対する側の面にはそれぞれ、第一酸化膜と第二酸化膜が配されるとともに、各ユニットセルに対応するように、該第一酸化膜には局所的に重ねて第一導電膜が、該第二酸化膜には局所的に重ねて第二導電膜が、それぞれ配されており、前記隣接するユニットセルのうち、一方のユニットセルを構成する前記第一導電膜と、他方のユニットセルを構成する前記第二導電膜とは、前記隔壁部の頂面において、両者の間に配された導電性接着部材によって接合されていることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法であって、前記第一電極と前記第二電極とのセル間接続及び封止を、不活性ガス雰囲気下または真空下で行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、第一電極を設ける第一基材と第二電極を設ける第二基材の相対する側の面にそれぞれ、第一酸化膜と第二酸化膜を配した上に、局所的に重ねて第一導電膜と第二導電膜を個別に配する構成を備えている。ゆえに、隣接するユニットセル間に位置する隔壁部において、両者(第一導電膜と第二導電膜)の間に接着部材を配して貼りあわせた際に、接着強度の向上が図れる。これにより隔壁部における界面剥離を低減することができ、その結果、寿命を大きく向上させた太陽電池モジュールを提供することができる。
【0019】
また、本発明では、前記第一電極と前記第二電極とのセル間接続及び封止を、不活性ガス雰囲気下または真空下で行なうことで、色素担持した多孔質半導体層の劣化を防止して、特性低下を抑制することができる。その結果、寿命を大きく向上させた太陽電池モジュールの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る太陽電池モジュールの一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る太陽電池モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、隣接するユニットセル20間を分離する隔壁部21を備えた透明部材からなる第一基材2と、その隔壁部側の一主面の全域に亘って配される第一酸化膜3と、第一酸化膜3に局所的に重ねて配され、第一電極として機能する第一導電膜4と、第一導電膜4の上に配される多孔質酸化物半導体層5とからなる構造体を、光が入射する側の窓極(作用極)基板6とする。一方、両面が平板状の第二基材7と、その一主面の全域に亘って配される第二酸化膜8と、第二酸化膜8に局所的に重ねて配され、第二電極として機能する第二導電膜9と、電極部材10とからなる構造体を、対極基板11とする。そして、窓極基板6と対極基板11との間に電解質層12(電解液もしくは電解質ゲル)を設けてなる。
図1には、第一基材2に隔壁部21を設けた構成例を示したが、隔壁部21を対極基板11に設けてもよい(不図示)。第一基材2に代えて対極基板11に隔壁部21を配置しても、前述した本発明の効果は得られる。
上記構成とした場合、第一導電膜4には光透過性が求められるため、後述するような透明導電膜が好適に用いられる。これに対して、第二導電膜9は、必ずしも光透過性を備えていなくてもよいので、透明導電膜の他に、不透明な導電膜を適用しても構わない。
【0022】
また、本発明の太陽電池モジュール1においては、各ユニットセルごとに、窓極基板6の第一導電膜4はその一端が隔壁部21の頂面まで延び、この頂面において、隣接するユニットセルの対極基板11を構成する第二導電膜9との間に設けられた導電性接着部材13によって電気的にも機械的にも接合されるように構成されている。
通常、太陽電池の封止に用いる、アイオノマー型ホットメルト接着剤(三井デュポンポリケミカル/ハイミランが代表)はプラスチックや、ガラスへの密着性が低いため、様々な応力がかかる大型太陽電池の封止に使用する場合、接着下地がプラスチックもしくはガラスとならないようにする必要がある。
【0023】
そこで本発明では、第一基材2と前記第二基材7のセル側内面の全域に亘って第一酸化膜3や第二酸化膜8を設ける。第一酸化膜3や第二酸化膜8としては、酸化チタンをはじめとし、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化クロム、酸化ニオブなどの絶縁性の金属酸化膜が好適である。第一酸化膜3や第二酸化膜8をなす金属酸化膜には、緻密・透明であり、非導電性であることが求められ、例えばスパッタ法などにより成膜される。
このように、酸化チタン等の金属酸化膜を接着下地とすることで導電性接着部材13による接着、封止において高い接着力が得られ、これにより隔壁部21における界面剥離を低減することができ、その結果、モジュール寿命を大きく向上することができる。なお、SiOでは十分な接着力が得られず、この金属酸化膜としては不適当である。
【0024】
第一基材2は、表面に導電材料からなる膜(層)を形成することにより電気を通す導電性を有し、光透過性の高い透明な部材であれば何でも良く、特に制限されない。この第一基材2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等のプラスチック、酸化チタンやアルミナ等のセラミックス、汎用のガラスを用いることができる。
【0025】
隣接するユニットセル20間を分離する隔壁部21は、本実施形態の場合、第一基材2と一体化されており、例えば、第一基材2の表面に凹凸加工を施すことで形成することができる。この凹凸加工は、第一基材2としてガラス板を用いた場合、エッチング法等を用いることで行なうことができる。また、第一基材2がプラスチックである場合は、射出成形や切削法ダイスタンプ法等簡便な方法で凹凸加工を施すことができる。しかも、第一基材2にプラスチックを用いた場合、経済的に、軽量なモジュールを得ることができる。
このように、第一基材2に凹凸加工を施し、隔壁部21を第一基材2と一体化して形成することで、両極基板を接着する導電性接着部材13と電解質層12との接触面積が低減し、セルの耐薬品性が向上するとともに、暗電流の問題が起こりにくいものとなる。
【0026】
前記第一基材2において、前記第一金属酸化膜3が設けられる面の表面粗さRzが5μm以下であることが好ましい。
第一基材2では、隔壁部21を形成するために凹凸加工などの表面加工を行う場合が有るが、その際、加工後、研磨をせずに粗いまま導電層4を形成し、酸化チタン等からなる多孔質酸化物半導体層5を形成すると、該多孔質酸化物半導体層5が剥離する現象が見られる。平滑な基板ではこのような現象が起こらないため、基板の表面粗度を制御する必要がある。具体的には、表面粗さRzを5μm以下とすることで、第一基材2と多孔質酸化物半導体層5との密着性を向上する基ことができ、多孔質酸化物半導体層5の剥離を防止することができる。
【0027】
また、第一基材2は途中熱プレスの工程を経ることから、このときに用いるプラスチックは例えば、ポリカーボネートやポリアリレート等、耐熱温度が130℃以上を有するエンジニアリングプラスチックが望ましい。
第一基材2がプラスチックからなる場合、熱膨張率が300×10−7/K以下であることが好ましい。これにより基板の反りを抑制することができる。
【0028】
モジュールのようにサイズの大きい太陽電池では、基板の熱膨張率の相違によりセルが大きく歪む場合がある。そのため、第一基材2及び第二基材7はほぼ同じ熱膨張率の材料を併用する必要が有る。前記第一基材2及び前記第二基材7が、それぞれ異なる部材からなる場合、それらの熱膨張率差が−30×10−7/K以上、100×10−7/K以下であることが好ましい。これによりセルの反り、歪みを抑制することができる。
さらに、第一基材2は、その上に第一電極として機能する第一導電膜4を設けた後、色素担持用の多孔質半導体として高分子バインダを含む酸化チタン(TiO)を焼結する場合、500℃程度の高熱に耐える導電性耐熱ガラスが望ましい。
【0029】
第一電極として機能する第一導電膜4は、第一基材2上に形成された導電材料からなる導電性の膜であり、例えば、スズ添加インジウム(ITO)や酸化スズ(SnO)、フッ素添加スズ(FTO)等の透明な酸化物半導体を単独で、もしくは複数種類を複合化したものが好ましい。第一導電膜4が第一基材2上に形成される場合、光透過率の高いものが好適である。
【0030】
また、第一導電膜4は、隔壁部21の一方の側面とこれに連なる頂面のみを覆うように設けられ、隣接する位置にあるセル構造体を直列に繋ぎ合わせるセル間接続部材として作用する。したがって、本実施形態の場合、第一導電膜4をそのまま利用して窓極と対極とを電気的に接続可能とする構成となっている。
そして、第一基材2上に光透過率の高い透明な第一導電膜4を形成することにより、窓極(作用極)基板とする。
【0031】
多孔質酸化物半導体層5は、第一導電膜4の上に設けられており、その表面には増感色素が担持されている。多孔質酸化物半導体層5を形成する半導体としては特に限定されず、通常、光電変換素子用の多孔質酸化物半導体を形成するのに用いられるものであれば、いかなるものでも用いることができる。このような半導体としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、酸化タングステン(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb)などを用いることができる。
【0032】
多孔質酸化物半導体層5を形成する方法としては、例えば、市販の酸化物半導体微粒子を所望の分散媒に分散させた分散液、あるいは、ゾル−ゲル法により調製できるコロイド溶液を、必要に応じて所望の添加剤を添加した後、スクリーンプリント法、インクジェットプリント法、ロールコート法、ドクターブレード法、スプレー塗布法など公知の塗布方法により塗布した後、この溶媒やバインダーを加熱処理により除去して空隙を形成させ多孔質化する方法などを適用することができる。
【0033】
増感色素としては、ビピリジン構造、ターピリジン構造などを配位子に含むルテニウム錯体、ポルフィリン、フタロシアニンなどの含金属錯体、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などを適用することができ、これらの中から、用途、使用半導体に適した挙動を示すものを特に限定なく選ぶことができる。
【0034】
一方、第二基材7は、その内面に第二電極として機能する導電層9を設けることにより導電性を備え、光透過性の高い部材である必要はなく、特に制限されない。この第二基材7としては、ガラス板を使用するのが一般的であるが、ガラス板以外にも、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等のプラスチック、酸化チタンやアルミナ等のセラミックスを用いることができる。中でも、第二基材7としては、熱膨張に起因した反りの発生を抑えるために、窓極を構成する第一基材2と同じ材料またはほぼ同じ熱膨張率の材料が好ましい。なお、第二基材7の内面に設けられる導電層としては、上述した導電層と同様の部材が用いられる。
【0035】
第二基材7がプラスチックからなる場合、熱膨張率が300×10−7/K以下であることが好ましい。これにより基板の反りを抑制することができる。
モジュールのようにサイズの大きい太陽電池では、基板の熱膨張率の相違によりセルが大きく歪む場合がある。そのため、第一基材2及び第二基材7はほぼ同じ熱膨張率の材料を併用する必要がある。具体的には、例えば前記第一基材2及び前記第二基材7が、それぞれ異なる部材からなる場合、それらの熱膨張率差が−30×10−7/K以上、100×10−7/K以下であることが好ましい。これによりセルの反り、歪みを抑制することができる。
【0036】
両極基板の張り合わせ工程の温度(140℃)を基準にすると熱膨張率差100×10−7/Kのとき、30cmのセルが0.3mm以上歪むことになり、これ以上の変形は許容できない(実験は30×10−7/Kのホウケイ酸ガラスと150×10−7/KのPETを使用して実験し、導電膜の亀裂などによりセルとして機能しないことを確認した)。なお300×10−7/Kの制限は、これ以上の熱膨張率を持つ場合、透明導電膜と基板との間で亀裂が発生することから記載した。但し、熱膨張率に注目されることはないが、フレキシブル太陽電池の基板としてPETが併用されることが多く、これらの基板は約150×10−7/Kの熱膨張率をもつ。
【0037】
また、電極部材10は、窓極との間で起電力を生じさせる電極であり、例えば、化学的に安定な白金やカーボンが好適に用いられる。電極部材10の形成方法に関しては、例えば、電極部材10が白金からなる場合、スパッタ法や蒸着法といった真空成膜法、基板表面に塩化白金酸溶液等の含白金溶液を塗布後に熱処理を加える湿式成膜法等を用いて行なうことができる。
【0038】
また、電解質層12をなす電解液は、電解質が液中で解離して陽イオンと陰イオンを生じ電導性を有する溶液をいう。この電解液としては、例えば、酸化還元対を含む有機溶媒や、イオン液体(室温溶融塩)等を用いることができる。
酸化還元対も特に限定されるものではないが、例えばヨウ素/ヨウ化物イオン、臭素/臭化物イオン等を選ぶことができ、前者であればヨウ化物塩(リチウム塩、四級化イミダゾリウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等を単独、あるいは複合して用いることができる)とヨウ素を単独、あるいは複合して添加することにより与えることができる
【0039】
有機溶媒としては、アセトニトリルやメトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等を用いた揮発性電解液が例示される。
また、イオン液体としては、例えば、四級化イミダゾリウム誘導体、四級化ピリジニウム誘導体、四級化アンモニウム誘導体といった四級化された窒素原子を有する化合物をカチオンとしたものがある。
【0040】
また、このような電解液を適当なゲル化剤、充填剤を導入することにより流動性を抑えて擬似固体化したもの、いわゆるゲル電解質を電解質層12として用いても構わない。
電解液には、更に必要に応じてリチウム塩やtert−ブチルピリジン等種々の添加物を加えても構わない。更に、このような電解液と同様に電荷輸送能力を有する高分子固体電解質等を電解質層12として用いても構わない。
【0041】
導電性接着部材13は、加熱加圧することで接合する異方性導電接着剤が好適である。異方性導電接着剤は、接着・導電・絶縁という3つの機能を兼ね備えた接続材料であって、熱圧着することにより、その厚み方向には導通性、面方向には絶縁性という電気的異方性をもつ。このような導電性接着部材13としては、例えば、ペースト状のACP(Anisotropic Conductive Film) 等が挙げられる。また、導電性を向上させるために、金属導線を異方性接着剤と組み合わせることも有効である。なお、金属導線と組み合わせて利用する場合は、異方性導電接着剤に代えて、絶縁性接着部材であるNCP(Non Conductive Paste)を用いてもよい。
【0042】
そして、窓極基板6と対極基板11とを、窓極基板6に設けた多孔質酸化物半導体層5と、対極基板11に設けた電極部材10とが向かい合うように配置し、窓極基板6の隔壁部21の頂面に設けられた第一導電膜4と対極基板11の第二導電膜9(または電極部材10)との間、及び前記隔壁部21の頂面において、第一酸化膜3と第二酸化膜8との間に導電性接着部材13を配して間接接続して熱プレスにより貼り合せする。
その後、セル内に電解液を注入して封止することにより、図1に示すような、ユニットセル20を直列接続してなる太陽電池モジュール1とする。
【0043】
ところで、第一基材2及び第二基材7にプラスチック基板を用いる場合、プラスチック基板においてはガス透過率が高いことから、電解液漏洩等により寿命が低減する現象が見られる。これを避けるためにガスバリア層を形成する必要がある。
そこで、図2に示す太陽電池モジュール1Bのように、前記第一基材2または前記第二基材7の少なくとも一方において、前記金属酸化膜(第一金属酸化膜3または第二金属酸化膜8)が設けられた面とは反対側の面に、無機膜14,15が設けられていることが好ましい。これにより水分の透過を抑制することができるため、電解液漏洩を防止して、寿命を向上することができる。
【0044】
無機膜14,15は、200℃以下の低温で成膜できればスパッタ法やゾルゲル法など成膜方法は問わない。また、十分緻密な膜が得られる場合には、上述した金属酸化膜(第一酸化膜3及び第二酸化膜8)や両極の第一導電膜4と第二導電膜9、あるいは対極に用いるPt膜などにより、無機膜14,15の本機能を兼ねてもよいが、併用が最も望ましい。無機膜14,15の材料に、上述した金属酸化膜(第一酸化膜3及び第二酸化膜8)と同じものを選ぶことにより、該金属酸化膜と同時に作製できるため、工程をより簡素化できる。
【0045】
また、後述するように、製造時において、熱プレス方式によってセル間接続及び封止する場合、封止不良が発生しやすいため、封止後に正常に全セルが接合されているかどうか検査する必要がある。
【0046】
そこで、図3に示す太陽電池モジュール1Cのように、前記第一電極4及び前記第二電極9がそれぞれ備える透明導電膜(導電層4,9)のうちいずれか一方が、ユニットセル20内で2つに分離されていることが好ましい。図3では、第一電極4側の第一導電膜4が、ユニットセル20内で2つに分離されている場合を例として示している。
【0047】
前記第一電極4及び前記第二電極9がそれぞれ備える透明導電膜(第一導電膜4、第二導電膜9)のうちいずれか一方が、ユニットセル20内で分離、すなわち、何れか一方の基板では、のすべてのユニットセル内においてパターンが2つに切断され、また切断により2つに分かれたパターンのそれぞれにテスト端子を接続できる箇所を持つ構造とする。その際、他方の基板では、透明導電膜が切断されていない構造とする。これにより接合時のチェックマーカーとして利用することができる。
【0048】
以下では、本発明に係る太陽電池モジュール1Bの製造方法の一例について説明する。
図4は、太陽電池モジュール1を構成する窓極(作用極)基板6を作製する工程を順に示す概略断面図であり、図5は、太陽電池モジュール1における対極基板11を作製する工程を順に示す概略断面図である。そして、図6は、本発明に係る太陽電池モジュール1Bの製造例を示す概略断面図である。
【0049】
まず、窓極(作用極)の作製方法について図4に基づき説明する。
図4(a)に示すように、凹凸加工を施すことが可能な第一基材2を準備する。第一基材2は、汎用のガラス板でも差し支えないが、凹凸加工が施しやすく、経済的で、軽量なモジュールを得ることができる樹脂板(プラスチック板)が好ましい。
【0050】
次に、図4(b)に示すように、この第一基材2の一方の面に凹凸加工を施し、凹部21と凸部(以下、隔壁部21と呼ぶ)を形成する。これにより、この凸部は、第一基材2と一体化されたものとなり、隣接するユニットセル20間を分離する隔壁部21として機能する。凹凸加工の方法としては、例えば、射出成形や切削法、ダイスタンプ法等の簡便な方法が挙げられる。
【0051】
そして、この凹部21の深さ(すなわち、凸部の高さ)は、板間距離の関係から、100μm以下、多孔質酸化物層の厚さ以上が好ましい。凹部21の深さが100μm以上であると、電解質層12が厚すぎて内部抵抗が大きくなり好ましくなく、一方、多孔質酸化物層の厚さより凹部21の深さが浅いと、対極とぶつかってしまい両極間に多孔質酸化物層が収納されないためである。
【0052】
次いで、図4(c)に示すように、凹凸加工が施された第一基材2の表面上に第一酸化膜3を設ける。第一酸化膜3の形成方法としては、例えば、スパッタ法等により、酸化チタン等の絶縁性の金属酸化物からなる薄膜を形成する。この第一酸化膜3は、厚すぎると光透過性が劣り、一方、薄すぎると密着性向上の効果が十分に得られないので、例えば酸化チタン膜の場合、0.01μm〜0.5μm程度の膜厚にするとよい。
【0053】
また、第一基材2にプラスチック基板を用いる場合、ガスバリア層として、第一酸化膜3が設けられた面とは反対側の面に、無機膜14を形成する。無機膜14は、200℃以下の低温で成膜できればスパッタ法やゾルゲル法など成膜方法は問わない。無機膜14の材料に第一酸化膜3と同じものを選ぶことで、第一酸化膜3と同時に作製できるため、工程をより簡素化できる。
【0054】
次いで、図4(d)に示すように、第一酸化膜3上に第一導電膜4を設ける。第一導電膜4の形成方法としては、第一導電膜4を構成する材料に応じて公知の方法を用いて行なえばよく、例えば、スパッタ法やCVD法(気相成長法)、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法等により、スズ添加酸化インジウム(ITO)等の酸化物半導体からなる薄膜を形成する。この第一導電膜4は、厚すぎると光透過性が劣り、一方、薄すぎると導電性が損なわれるので、例えばITO膜の場合、光透過性と導電性の両方を考慮して、0.030μm〜1μm程度の膜厚にするとよい。
【0055】
引き続き、図4(d)に示すように、この成膜された第一導電膜4の上に、レジスト(不図示)をスクリーン印刷法等により形成し、このレジストをマスクとして第一導電膜4の一部を除去する。その後、レジストを除去することにより、凹凸加工が施された第一基材2の一面上に、隔壁部21の一方の側面とこれに連なる頂面のみを覆うように第一導電膜4を作製する。これにより、窓極用の導電性基板が得られる。
【0056】
さらに、図4(e)に示すように、窓極用の導電性基板における第一導電膜4上に、多孔質酸化物半導体層5を形成する。多孔質酸化物半導体層5の形成方法としては、例えば、二酸化チタン(TiO)の粉末を分散媒と混ぜてペーストを調製し、これをスクリーン印刷法やインクジェットプリント法、ロールコート法、ドクターブレード法、スピンコート法等により導電層上に塗布し、焼成する。そして、この多孔質酸化物半導体層5は、1μm〜20μm程度に形成する。
【0057】
そして、図4(e)に示すように、多孔質酸化物半導体層5の粒子間に、増感色素を担持させることで、窓極基板6を構成する。増感色素の担持は、例えば、多孔質酸化物半導体層5が形成された導電性基板を色素液に浸漬することでなし得る。
【0058】
次に、対極基板11の作製方法について図5に基づき説明する。
図5(a)に示すように、プラスチックよりなる第二基材7を準備し、この第二基材7の一面に第二酸化膜8を設ける。第二酸化膜8の形成方法としては、第一基材2の場合と同様に、例えば、スパッタ法等により、酸化チタン等の金属酸化物からなる薄膜を形成する方法が好適である。この第二酸化膜8は、厚すぎると光透過性が劣り、一方、薄すぎると密着性向上の効果が十分に得られないので、例えば酸化チタン膜の場合、0.01μm〜0.5μm程度の膜厚にするとよい。
【0059】
また、第二基材2にプラスチック基板を用いる場合、ガスバリア層として、前記第二酸化膜8が設けられた面とは反対側の面に、無機膜15を形成する。無機膜15は、200℃以下の低温で成膜できればスパッタ法やゾルゲル法など成膜方法は問わない。無機膜15の材料に第二酸化膜8と同じものを選ぶことにより、第二酸化膜8と同時に作製できるため、工程をより簡素化できる。
【0060】
次に、図5(b)に示すように、この第二酸化膜8上に第二導電膜9を設ける。第二導電膜9の形成方法としては、第一基材2の場合と同様に、第二導電膜9の材料に応じて公知の方法を用いて行なえばよく、例えば、スパッタ法やCVD法(気相成長法)、蒸着法等により、スズ添加酸化インジウム(ITO)等の酸化物半導体からなる薄膜を形成する。この第二導電膜9は、厚すぎると光透過性が劣り、一方、薄すぎると導電性が損なわれるので、例えばITO膜の場合、光透過性と導電性の両方を考慮して、0.030μm〜2μm程度の膜厚にするとよい。
【0061】
引き続き、図5(c)に示すように、この成膜された第二導電膜9の上に、レジスト(不図示)をスクリーン印刷法等により形成し、このレジストをマスクとして第二導電膜9の一部を除去する。その後、レジストを除去することにより、所望の形状をしたユニットセルパターンをなす第二導電膜9を作製する。これにより、対極用の導電性基板が得られる。
【0062】
次いで、図5(d)に示すように、対極用の導電性基板において、パターン化された第二導電膜9の上に、予め剥離可能なレジストαをスクリーン印刷法等により形成した後、第二導電膜9及びレジストを覆うように電極部材10を形成する。この電極部材10としては、例えば白金やカーボンを用いることができ、スパッタ法や蒸着法といった真空成膜法によって形成できるほか、基板表面に塩化白金溶液等の含白金溶液を塗布後に熱処理を加える湿式成膜法等によって形成してもよい。この電極部材10の厚さは、0.01μm〜5μm程度が好ましい。0.01μmより薄いと電極の実効面積が不足となり、5μmを越えると成膜コストが過大となることから好ましくない。
【0063】
その後、第二基材7から、レジストαと一緒に、その上に位置する電極部材10の一部を剥離することにより除去する。これにより、図5(e)に示した構成の対極基板11を得る。
【0064】
そして図6(a)に示すように、図4(e)に示した窓極基板6と図5(e)に示した対極基板11とを、窓極基板6に設けた多孔質酸化物半導体層5と対極基板11に設けた電極部材10とが向かい合うように配置し、窓極基板6の隔壁部21の頂面に設けられた導電層4と対極基板11の導電層9(または電極部材10)との間、及び前記隔壁部21の頂面において、第一酸化膜3と第二酸化膜8との間に導電性接着部材13を配して間接接続して熱プレスにより貼り合せする(図6(b)参照)。
【0065】
このとき、本発明の太陽電池モジュール1の製造方法では、前記窓極基板6と前記対極基板11との接続及び封止を、不活性ガス雰囲気下または真空下で行なうことを特徴とする。
【0066】
色素を吸着した後の多孔質酸化物半導体は大気中で100℃以上の温度に曝したときに特性が低下する。これは空気中の水分や酸素による影響と考えられる。
そこで本発明では、モジュールを熱プレス法にてセル間接続、封止を行なう工程において、温度は140℃以下とし、さらに、アルゴン、窒素等の不活性ガスによる置換を行なう、または1kPa以下の真空下で行なう。これにより色素担持した多孔質半導体層の劣化が防止され、特性の低下を防止することができる。また、真空ラミネータ(均一圧力を印加するための装置で、劣化防止を目的としたものではない。)を用いて貼り合わせを行なってもよい。
【0067】
その後、セル内に電解液を注入して封止することにより、図2に示すような、ユニットセル20を直列接続してなる太陽電池モジュール1Bとする。
ここで、熱プレス方式によってセル間接続及び封止をする場合、封止不良が発生しやすいため、封止後に正常に全セルが接合されているかどうか検査する必要がある。
【0068】
そこで図3に示したように、前記第一電極4及び前記第二電極9がそれぞれ備える透明導電膜(第一導電膜4、第二導電膜9)のうちいずれか一方が、ユニットセル20内で分離、すなわち、何れか一方の基板では、のすべてのユニットセル内においてパターンが2つに切断され、また切断により2つに分かれたパターンのそれぞれにテスト端子を接続できる箇所を持つ構造とする。他方の基板では、透明導電膜が切断されていない構造とする。これにより接合時のチェックマーカーとして利用することができる。
【0069】
以上のようにして得られる太陽電池モジュールは、第一基材と第二基材の相対する側の面に、それぞれ第一酸化膜と第二酸化膜とを配することで、両者の間に導電性接着部材を配して貼りあわせる際に、接着強度を向上することができる。これにより隔壁部における界面剥離を低減することができ、その結果、寿命が大きく向上したものとなる。
以上、本発明の太陽電池モジュールについて説明してきたが、本発明は上記の例に限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、色素増感型太陽電池をはじめとする湿式太陽電池のユニットセルを直列接続してなる太陽電池モジュール及びその製造方法に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図及び平面図である。
【図4】窓極(作用極)基板を作製する工程を示す概略断面図である。
【図5】対極基板を作製する工程を示す概略断面図である。
【図6】太陽電池モジュールの製造例を示す概略断面図である。
【図7】従来のZ型太陽電池モジュールの構造例を示す概略断面図である。
【図8】従来のW型太陽電池モジュールの構造例を示す概略断面図である。
【図9】従来の太陽電池モジュールの構造例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 太陽電池モジュール、2 第一基材、3 第一酸化膜、4 第一導電膜(第一電極)、5 多孔質酸化物半導体層、6 窓極(作用極)基板、7 第二基材、8 第二酸化膜、9 第二導電膜(第二電極)、10 電極部材、11 対極基板、12 電解質層、13 導電性接着部材、14、15 無機膜、20 ユニットセル、21 隔壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有して構成され、窓極として機能する第一電極と、少なくとも一部に電解質層を介して前記第一電極と対向して配される第二電極とを備え、
前記第一電極を設ける第一基材または前記第二電極を設ける第二基材は、隣接するユニットセル間を分離する隔壁部を有する太陽電池モジュールであって、
前記第一基材と前記第二基材の相対する側の面にはそれぞれ、第一酸化膜と第二酸化膜が配されるとともに、各ユニットセルに対応するように、該第一酸化膜には局所的に重ねて第一導電膜が、該第二酸化膜には局所的に重ねて第二導電膜が、それぞれ配されており、
前記隣接するユニットセルのうち、一方のユニットセルを構成する前記第一導電膜と、他方のユニットセルを構成する前記第二導電膜とは、前記隔壁部の頂面において、両者の間に配された導電性接着部材によって接合されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第一基材において、前記第一酸化膜が設けられる面の表面粗さが5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第一基材及び前記第二基材は、それぞれ異なる部材からなり、それらの熱膨張率差が−30×10−7/K以上、100×10−7/K以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第一導電膜または前記第二導電膜のうちいずれか一方は、ユニットセル内で分離されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記第一基材または前記第二基材の少なくとも一方において、前記第一酸化膜あるいは前記第二酸化膜が配された面とは反対側の面には、無機膜が配されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記第一基材及び前記第二基材は、熱膨張率が300×10−7/K以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有して構成され、窓極として機能する第一電極と、少なくとも一部に電解質層を介して前記第一電極と対向して配される第二電極とを備え、
前記第一電極を設ける第一基材または前記第二電極を設ける第二基材は、隣接するユニットセル間を分離する隔壁部を有し、
前記第一基材と前記第二基材の相対する側の面にはそれぞれ、第一酸化膜と第二酸化膜が配されるとともに、各ユニットセルに対応するように、該第一酸化膜には局所的に重ねて第一導電膜が、該第二酸化膜には局所的に重ねて第二導電膜が、それぞれ配されており、
前記隣接するユニットセルのうち、一方のユニットセルを構成する前記第一導電膜と、他方のユニットセルを構成する前記第二導電膜とは、前記隔壁部の頂面において、両者の間に配された導電性接着部材によって接合されていることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第一電極と前記第二電極とのセル間接続及び封止を、不活性ガス雰囲気下または真空下で行なうことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−65998(P2008−65998A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239497(P2006−239497)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「太陽光発電技術研究開発革新的次世代太陽光発電システム技術研究開発 大面積・集積型色素増感太陽電池の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】