説明

太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの再生処理方法

【課題】リサイクル及びリユース処理を簡便にするために、太陽電池モジュールそのものにリサイクル及びリユースに関する情報を付与する。
【解決手段】受光面ガラス1と、受光面側封止EVA層2と、太陽電池セル3と、裏面側封止EVA層4と、裏面封止耐侯性フィルム5とを備えた太陽電池モジュールであって、太陽電池セル3が配列されていない非発電領域位置1aに、情報保持媒体7として非接触型のICチップを載置する。このICチップには、ICチップを搭載する太陽電池モジュールについてのリサイクル処理方法に関する情報を載置前にあらかじめ書き込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュールに係り、より詳細には、太陽電池モジュールのリサイクル及びリユース技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、屋外暴露状態において長期にわたって使用することを目的としているため、耐候性・耐久性・長期動作信頼性等を第一義として開発、生産されてきた。例えば、結晶系太陽電池モジュールの信頼性試験については、JISC8917やIEC1215に規定されており、これをクリアすることは勿論のこと、各太陽電池メーカーが独自にさらに安全マージンを持たせた高い信頼性を目指している。
【0003】
住宅用太陽電池モジュールは、1996年度にスタートした個人住宅向け政府補助が効を奏し、環境問題意識の高まりとともにその普及速度は目覚しい。このような急速な普及は、一般家庭の標準的な消費電力を賄う約3kWの太陽電池モジュールを一軒の住宅の屋根に設置することが可能であること、太陽電池モジュールの直流出力を交流に変換する高効率パワーコンディショナーが開発されたこと、住宅屋根にマッチする外観の太陽電池モジュール及びその施工方法が開発されたことなど、供給者側の市場開発努力が結実した結果である。
【0004】
一方、住宅用太陽電池モジュールの普及とともに、ビル建築物、倉庫、体育館、大人数収容の公共建築物などに設置する、産業用太陽電池モジュールの普及も目覚しい。ビル建築物などを対象にした産業用分野の発電システムについては、平成4年度にスタートしたNEDOフィールドテスト事業の需要創出によるところが大きいが、最近では民間独自の導入も図られるようになってきている。これらの特徴は、3kW程度の発電量の一般家庭用と異なり、その発電規模が10kW以上と大規模である上、設置面積も大きいことである。
【0005】
ところで、新エネルギー導入大綱を達成すべく、上述の如く太陽光発電システムの導入・普及が官民を挙げて積極的に推進されている。しかしながら、人が造った機器である限り必ず寿命があり、最終的には処分あるいはリサイクルされるものである。
【0006】
太陽光発電システムは未だ導入初期の段階にあり、また耐用年数が長いことから、使用後の処理に対するニーズは現段階では少ない。しかし、今後の大量導入に備え、太陽電池モジュールの処分やリサイクルについて考慮しておくことは、商品としての性質上からも極めて重要かつ必要な課題である。
【0007】
一方で、このような将来のリサイクルを考慮した商品も提案され初めている(特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1に記載の太陽電池モジュールは、個々の構成材料への分離が容易で、分別回収しやすく、さらには個々の構成材料がリサイクルしやすく、特に太陽電池素子のリサイクル性を考慮している。具体的には、表面材と裏面材を接合解除が可能な状態で接合しており、少なくとも表面材と太陽電池素子は密着、もしくは表面材は固体層と密着し、固体層は太陽電池素子と密着しており、太陽電池素子に表面材、裏面材、固体層のいずれの残渣も残さずに太陽電池素子と表面材及び裏面材とを分離できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−269535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、太陽電池モジュールは製造会社またはその太陽電池モジュールの構造、仕様によって、使われている部材の内容や種類が異なっており、各製造会社または各構成部材によってリサイクル処理やリユース処理の方法が異なる可能性がある。
【0011】
従って、上記特許文献1のような太陽電池モジュールを提供しても、これをリサイクルまたはリユース処理するときに、その太陽電池モジュールの構成材料や構造自体が分からなければ、容易に分離処理してリサイクル処理やリユース処理をすることができないといった問題があった。
【0012】
現在のところ、どのような太陽電池モジュールでも処理できるというリサイクル及びリユース処理方法が確立されておらず、各太陽電池モジュールの処理方法に関する情報を知るためには、各々、太陽電池モジュールの機種名と製造会社を調べ、その製造会社に問い合わせなければならないのが実状である。また、太陽電池モジュールの設計や開発段階において、上記特許文献1のような簡単に分解できてリサイクルまたはリユースしやすい部材や構造を採用していたのでは、長期信頼性が確保できない恐れがあるといった問題もある。
【0013】
それに加えて、太陽電池モジュールの具体的、定量的な寿命について、明確な定義は未だ存在しない。最近では、太陽電池モジュール(太陽電池システム)の製造者保証は10年が一般的となってきたが、この期間を過ぎて発電しなくなるわけではなく、いつ寿命が訪れるのかわからないというのが実状である。さらには、製造会社またはその太陽電池モジュールの構造、仕様によって、寿命が異なる可能性もある。
【0014】
従って、寿命の訪れた太陽電池モジュールを処理しようとするときには、使用年数、製造会社、構造、構成部材等が異なる様々な太陽電池モジュールを処理しなければならなくなる可能性があるということを念頭におかねばならない。
【0015】
このようなことから、太陽電池モジュール自体にリサイクルやリユースに関する情報を付与させておくということは、リサイクル処理やリユース処理を行う上で有益なことである。
【0016】
本発明はこのような実状に鑑みて創案されたものであって、その目的は、リサイクル及びリユース処理を簡便にするために、太陽電池モジュールそのものにリサイクルやリユースに関する情報を付与した太陽電池モジュールを提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の太陽電池モジュールは、情報を保持する媒体を有することを特徴とするものであり、情報を付与する方法としては、シールや光学式情報識別パターン、非接触読取型の情報記録媒体等の情報保持媒体を太陽電池モジュールそのものが有するように構成することができる。
【0018】
その媒体に書き込まれた情報は、太陽電池モジュールのリサイクル及び/またはリユースを含む処理方法に関する情報であり、詳しくは、太陽電池モジュールの製造年月日、製造会社名、構成部材名、及び太陽電池モジュールの構成部材要素に関する情報であって、リサイクルまたはリユース可能部材と、リサイクル対象外部材との分類及び分別方法、リサイクルまたはリユース可能部材のリサイクルまたはリユース方法、リサイクル対象外部材の処理方法を含む情報である。
【0019】
また、その媒体を太陽電池モジュールに保有させる方法は、太陽電池モジュール内部に封止する方法、または印刷や貼付等により太陽電池モジュール上に付与する方法、構成部材上に付与する方法であることを特徴としている。
【0020】
構成部材上に付与する場合においては、部材上に印刷や貼付を行う以外に、部材成形時に形成することも可能である。
【0021】
情報保持媒体が太陽電池モジュールの表面上に付与されていれば、当然、視認や光学式読み取り等によって情報の取得が可能である。また、情報保持媒体として、シールや光学式情報識別パターンが太陽電池モジュール内部に封止されている場合、または構成部材上に付与されている場合には、太陽電池モジュールの表面上になくても、太陽電池モジュールの光入射面から視認することができる構造であれば、視認または光学式読み取り等によって情報の取得が可能である。また、視認できない構造であっても、情報保持媒体として非接触読取型の情報記録媒体を用いることで、情報の保有及び取り出しが可能である。
【0022】
また、このような太陽電池モジュールがリサイクルまたはリユースに関する情報を有していることや、その情報がどこに収納されているのかを明示する必要がある。なぜなら、リサイクルまたはリユース等の処理は製造してから長い年月の後に必要なことであり、また、太陽電池モジュールの種類も多岐にわたるので、そのような情報の所在を明示することが重要になる。また、そのような管理がなされている製品であることを明示することは、今後の社会環境においては製品の優位性を示すことにもなる。従って、情報保持媒体を視認できるように明確に付与すること、または太陽電池モジュール上に情報保持媒体の位置を示す表示を付与することは、重要である。
【0023】
このようにして情報を付与された太陽電池モジュールを処理する際には、情報保持媒体に保持された情報を読み取り、その読み取った情報に従い、または読み取った情報を参考にして、簡便で且つ適切な太陽電池モジュールのリサイクルまたはリユースを含む処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の太陽電池モジュールは、上記のように構成したので、太陽電池モジュールそのものにリサイクルやリユースに関する情報を付与することができ、太陽電池モジュールを処理する際に、情報保持媒体に保持された情報を読み取ることで、簡便で且つ適切な太陽電池モジュールのリサイクルやリユースを含む処理を行うことができる。また、このような管理がなされている製品であることを明示することによって、製品の優位性を示すことができる。
【0025】
さらに、太陽電池モジュールの表面上に情報保持媒体を取り付ける場合または印刷によって付与する場合には、剥がれや損傷、汚れや埃の付着、及び印刷が消えてしまう等の可能性があるが、情報保持媒体を太陽電池モジュール内部に封止する場合は、剥がれや損傷、汚れや埃の付着、及び印刷が消えてしまう等の問題は無く、太陽電池モジュールのリサイクルまたはリユース処理時まで情報を保持しておくことができる。
【0026】
さらにまた、情報保持媒体として非接触読取型の情報記録媒体を用いると、汚れや埃など読み取り機との間にモノがあっても読み取ることができ、その上、太陽電池モジュールのリサイクルまたはリユース処理後にはその情報記録媒体自体もリサイクルが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、本発明の実施形態1による太陽電池モジュールの構造を模式的に示す平面図、(b)は、同断面図である。
【図2】本発明の実施形態2による太陽電池モジュールの構造を模式的に示す断面図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態2による太陽電池モジュールの構造を模式的に示す裏面図、(b)は同断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0029】
[実施形態1]
図1(a)は、本発明の実施形態1に係る太陽電池モジュールの平面図であり、同図(b)はその断面図である。
【0030】
図1に示す太陽電池モジュールは、スーパーストレート型構造の結晶系太陽電池モジュールであって、受光面ガラス1と、受光面側封止EVA層2と、太陽電池セル3と、裏面側封止EVA層4と、裏面封止耐侯性フィルム5とを備えている。
【0031】
太陽電池セル3は、配線材6にて複数枚、直列接続され、図1(a)に示すようにマトリックス状に配列されている。
【0032】
図1に示す太陽電池モジュールは、受光面ガラス1として厚さ3.2mmの白板強化ガラスを用い、この受光面ガラス1の片面(裏面側)に、厚さ0.6mmの受光面側封止EVA層2を積層し、その上に厚さ約250μmの多結晶シリコンの太陽電池セル3を載置している。さらに、太陽電池セル3が配列されていない非発電領域、例えば図1(a)に
示される位置1aに、情報保持媒体7として非接触型のICチップを載置する。
【0033】
このICチップには、ICチップを搭載する太陽電池モジュールについてのリサイクル処理方法に関する情報を載置前にあらかじめ書き込んでおく。情報の例として、その太陽電池もモジュールの製造年月日、製造会社名、構成部材名をはじめ、太陽電池モジュールのリユース方法や各構成部材の原料及びリサイクルを含む処理方法が挙げられる。また、このICチップは、不揮発性で、比較的安価のものを用いる。また、小型軽量のバッテリーレス方式のもので、交信距離が30cm以下の近接型のものが好ましい。
【0034】
また、ICチップのような記録媒体以外の情報保持媒体として、情報が印刷されたシート状のものや、光学式情報識別パターン(バーコード、2次元コード等)も用いることができ、これらの場合も同様に載置することができる。ただし、これらの場合は、保持できる情報量が比較的少ないので、情報としてコード・ナンバー等を書き込んでおき、太陽電池モジュールの再生処理の際にそのコード・ナンバーを読み込み、通信ネットワークを介して、太陽電池モジュールのリユース方法や各構成部材の原料及びリサイクルを含む処理方法等の情報を取得するように構成するのが望ましい。
【0035】
受光面ガラス1と受光面側封止EVA層2の積層体に情報保持媒体7を載置後は、厚さ0.4mmの裏面側封止EVA層4及び厚さ約100μmの裏面封止耐侯性フィルム(PET:ポリエチレンテレフタレート系)5を順次積層する。
【0036】
このようにして材料セッティングされた積層体を公知の封止加工技術、例えばオートクレーブ法や真空ラミネート法等により一体化を行い、次いで各層のEVAを架橋反応させることによりモジュール一体化を行う。
【0037】
以上のモジュール一体化加工を終了した後、モジュールの周辺枠材8及び電気出力取り出しのため端子ボックス9を設置することにより、太陽電池モジュールが完成する。なお、本実施形態1を適用する太陽電池モジュールにおいて、受光面ガラス及び各EVA層、耐侯性フィルム、太陽電池セル等の厚さや種類は上記した数値に限定されるものではない。また、太陽電池セルマトリックスの配線方法も任意である。
【0038】
そして、本実施形態1では、以上のようにして作製した太陽電池モジュールを、一定期間(例えば10年以上)使用した後に再生処理工場にて処理を行う際、情報保持媒体7の
ICチップ載置箇所に専用の読取り機を近づけて、情報保持媒体7に保持されている前記情報を読み取り、その情報に従い、またはその情報を参考にして、簡便で且つ適切な太陽電池モジュールのリサイクル処理やリユース処理を行うことができる。
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2について、図2及び図3を参照しながら説明する。
【0039】
図2及び図3(a)は本実施形態2を示す太陽電池モジュールの平面図であり、図3(b)は図3(a)の断面図である。
【0040】
本実施形態2では、情報保持媒体を太陽電池モジュール内部に封止しない場合を示している。すなわち、本実施形態2では、製造された太陽電池モジュールの表面上に情報保持媒体7を付与するものであり、例えば図2に示すように、受光面ガラス1表面上の太陽電池セル3が配列されていない非発電領域1bに、情報保持媒体7として情報や光学式情報識別パターンが印刷されたシールやICチップのような記憶媒体を貼り付けるか、または情報保持媒体7としてコード・ナンバーのような識別表示を印刷する。ここで、情報がどこに収納されているのかを明示するために、情報保持媒体7の位置を示す表示も同時に取り付けまたは印刷する。
【0041】
また、情報保持媒体を受光面ガラスに取り付ける以外にも、図3のように太陽電池モジュールの裏側、すなわち、裏面封止耐侯性フィルム5上に同様に情報保持媒体7を取り付けまたは印刷することもできる。太陽電池モジュールが採光型であって、裏面封止耐侯性フィルム5が透明色であっても、太陽電池セル3が配列された箇所の裏面に付与すれば、採光率には影響はしない。
【0042】
そして、このようにして作製した太陽電池モジュールの再生処理を行う際、情報保持媒体7に保持されている情報を読み取り、その情報に従い、またはその情報を参考にして、簡便で且つ適切な太陽電池モジュールのリサイクル処理やリユース処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 受光面ガラス
2 受光面側封止EVA層
3 太陽電池セル
4 裏面側封止EVA層
5 裏面封止耐侯性フィルム
6 配線材
7 情報保持媒体
8 周辺枠材
9 端子ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を保持する媒体を有することを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記情報保持媒体に書き込まれた情報が、当該太陽電池モジュールのリサイクル及び/
またはリユースを含む処理方法に関する情報であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記情報保持媒体に書き込まれた情報が、当該太陽電池モジュールの構成部材要素に関する情報であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記情報保持媒体は、当該太陽電池モジュールの内部に封止されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記情報保持媒体は、当該太陽電池モジュールの光入射面から読み取りができるように付与されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記情報保持媒体は、当該太陽電池モジュールの光入射面から視認できるように付与されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
当該太陽電池モジュール上に前記情報保持媒体の位置を示す表示が付与されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−272654(P2009−272654A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189857(P2009−189857)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【分割の表示】特願2004−275710(P2004−275710)の分割
【原出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】