説明

太陽電池モジュール用封止材、太陽電池モジュールおよびその製造方法

【課題】耐衝撃性に優れた太陽電池モジュールを容易に製造できる太陽電池モジュール用封止材を提供する。また、耐衝撃性に優れた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池モジュール用封止材は、硬化性アクリル成分を主成分として含有する。本発明の太陽電池モジュール10は、一対の保護部材11,12と、一対の保護部材11,12の間に設けられた封止層13と、封止層13の内部に設けられた太陽電池14セルとを備え、封止層13は、上記太陽電池モジュール用封止材を硬化させた硬化物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール製造の際に使用される封止材に関する。また、太陽電池モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷を低減できることから、光起電力を利用した太陽光発電が急速に普及している。太陽光発電においては、太陽電池モジュールを備えた発電パネルが広く使用されている。
例えば、特許文献1には、太陽電池モジュールとして、太陽光が入射する側に配置された透光性基板(前面保護部材)と、裏面シート(裏面保護部材)と、これら保護部材の間に設けられた充填材(封止材)と、封止層の内部に設けられた太陽電池素子(太陽電池セル)とを備えるものが記載されている。透光性基板(前面保護部材)としては、ガラスや合成樹脂などからなる基板が例示されている。ガラス基板としては、白板ガラス、強化ガラス、倍強化ガラス及び熱線反射ガラスが具体的に挙げられている。また、合成樹脂基板としては、ポリカーボネート樹脂が具体的に挙げられている。充填材(封止材)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やポリビニルブチラート(PVB)からなるシート状物が記載されている。
また、特許文献2には、受光面保護層(前面保護部材)としてアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの透明樹脂を用いることで、太陽電池モジュールが軽量化できることが記載されている。また、封止材としては、EVAが挙げられている。
ところが、従来の太陽電池モジュールは耐衝撃性が充分ではなく、特に前面保護部材に衝撃が加わると、破損することがあった。とりわけ、特許文献2に記載されているように太陽電池モジュールの軽量化のために前面保護部材として透明樹脂板を用いると、耐衝撃性が低くなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−177068号公報
【特許文献2】特開2009−266958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐衝撃性に優れた太陽電池モジュールを容易に製造できる太陽電池モジュール用封止材を提供することを目的とする。また、耐衝撃性に優れた太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]硬化性アクリル成分を主成分として含有する太陽電池モジュール用封止材。
[2]前記硬化性アクリル成分は、メチルメタクリレートと、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体とを含有することを特徴とする[1]に記載の太陽電池モジュール用封止材。
CH=CRCOO(RO)・・・(1)
(式中、RはHまたはCHを、RはC、C、または、Cを、Rはアルキル基を、nは2以上の整数を示す。)
[3]前記硬化性アクリル成分は、(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする[2]に記載の太陽電池モジュール用封止材。
[4]前記(メタ)アクリル系重合体は、メチルメタクリレート単位とメチルメタクリレート単位以外の(メタ)アクリル系単量体単位とを有する(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする[3]に記載の太陽電池モジュール用封止材。
[5]前記硬化性アクリル成分は、下記一般式(2)で示されるアクリル系重合性単量体を含有することを特徴とする[1]に記載の太陽電池モジュール用封止材。
CH=CHCOOC2n+1・・・(2)
(式中、nは4〜18の整数を示す。)
[6]前記硬化性アクリル成分は、(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする[5]に記載の太陽電池モジュール用封止材。
[7]前記(メタ)アクリル系重合体は、下記一般式(2)で示されるアクリル系重合性単量体単位を有するアクリル系重合体を含有することを特徴とする[6]に記載の太陽電池モジュール用封止材。
CH=CHCOOC2n+1・・・(2)
(式中、nは4〜18の整数を示す。)
[8]一対の保護部材と、該一対の保護部材の間に設けられた封止層と、該封止層の内部に設けられた太陽電池セルとを備え、前記封止層は、[1]〜[7]のいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材を硬化させた硬化物からなることを特徴とする太陽電池モジュール。
[9]前記一対の保護部材のうち光入射側に配置される保護部材が樹脂製であることを特徴とする[7]に記載の太陽電池モジュール。
[10]一対の保護部材を互いに対向するように配置すると共に、前記一対の保護部材の間に太陽電池セルを配置する配置工程と、前記一対の保護部材の間に[1]〜[7]のいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材を充填する充填工程と、充填した太陽電池モジュール用封止材を硬化させる硬化工程とを有することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
[11]前記一対の保護部材のうち光入射側に配置される保護部材が樹脂製であることを特徴とする[10]に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の太陽電池モジュール用封止材によれば、耐衝撃性に優れた太陽電池モジュールを容易に製造できる。
本発明の太陽電池モジュールは、耐衝撃性に優れたものである。特に、前面保護部材として透明樹脂板を用いても充分な耐衝撃性が得られる。
本発明の太陽電池モジュールの製造方法によれば、耐衝撃性に優れた太陽電池モジュールを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の太陽電池モジュールを製造する際の配置工程について説明する図である。
【図3】図1の太陽電池モジュールを製造する際の充填工程について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<太陽電池モジュール用封止材>
本発明の太陽電池モジュール用封止材(以下、「封止材」と略す。)は、硬化性アクリル成分を主成分として含有する。ここで、硬化性アクリル成分は、加熱又は活性エネルギー線の照射等によって重合して硬化可能な(メタ)アクリル単量体および(メタ)アクリル重合体(オリゴマー、ポリマー)である。また、「主成分」とは、70質量%以上のことである。硬化性アクリル成分の含有率は好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0009】
封止材は、硬化性に優れる上に硬化物の透明性及び耐衝撃性に優れることから、硬化性アクリル成分として、メチルメタクリレート(A)と、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(B)とを含有することが好ましい。以下、メチルメタクリレート(A)と(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(B)とを含む封止材のことを「MMA系封止材」という。
CH=CRCOO(RO)・・・(1)
(式中、RはHまたはCHを、RはC、C、または、Cを、Rはアルキル基を、nは2以上の整数を示す。)
【0010】
(B)成分である一般式(1)の(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体の具体例としては、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシテトラブチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシレーテッド2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシテトラブチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートとの総称であり、「(メタ)アクリル」とはアクリルとメタクリルとの総称である。
硬化物の耐候性の観点からnは15以下であることが好ましく、Rの炭素数は1以上10以下であることが好ましい。なかでも、透明性により優れることから、特に2−エトキシレーテッド2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。2−エトキシレーテッド2−エチルヘキシルアクリレートは、一般式(1)において、RがH、RがC、Rが2−エチルヘキシル基、nが2の化合物である。
【0011】
硬化性アクリル成分において、メチルメタクリレート(A)の含有量は、硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して、25〜65質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量が前記下限値以上であると、封止材の粘度が適切な範囲になり、また、硬化物の透明性がより高くなる。一方、(A)成分の含有量が前記上限値以下であると、硬化物の柔軟性が良好となる。
また、上記(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(B)の含有量は、機械的特性と透明性の両立の点で、硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して、25〜65質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。
【0012】
また、MMA系封止材は、硬化性アクリル成分として下記一般式(2)で示される1個の台座部に対して突起部が3個形成されていることが好ましアクリル系ラジカル重合性単量体(E)を含有してもよい。アクリル系ラジカル重合性単量体(E)の含有量は、硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して、3〜35質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
CH=CHCOOC2n+1・・・(2)
(式中、nは4〜18の整数を示す。)
一般式(2)のアクリル系重合性単量体の具体例としては、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられる。
【0013】
一方、MMA系以外の封止材として、硬化性アクリル成分として前記一般式(2)で示されるアクリル系ラジカル重合性単量体(E)を含有する飽和アルキルアクリレート系封止材が挙げられる。
飽和アルキルアクリレート系封止材におけるアクリル系ラジカル重合性単量体(E)としては、硬化性、耐衝撃性の観点から、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(E)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
飽和アルキルアクリレート系封止材におけるアクリル系ラジカル重合性単量体(E)の含有量は、硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%であることがより好ましい。
【0014】
また、封止材は、硬化性アクリル成分として(メタ)アクリル系重合体(C)を含有することができる。ここで、(メタ)アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル系単量体単位とを有する重合体を意味する。
【0015】
MMA系封止材の(メタ)アクリル系重合体(C)としては、封止材の粘度を容易に調整できることから、メチルメタクリレート単位とメチルメタクリレート単位以外の(メタ)アクリル系単量体単位とを有する(メタ)アクリル系重合体(C1)が好ましい。
メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。また、メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体としては、後述する一般式(2)で示されるアクリル系重合性単量体であってもよい。これらのうち、硬化物の透明性および機械的特性の両立の点から、ブチルメタクリレートが好ましく、n−ブチルメタクリレートがより好ましい。
上記単量体成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0016】
該(メタ)アクリル系重合体(C1)においては、作業性の良い粘度に容易に調整できることから、メチルメタクリレート単位の含有量が30〜80質量%で、メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリル系ラジカル単量体単位の含有量が20〜70質量%であることが好ましい。さらには、メチルメタクリレート単位の含有量が30〜60質量%で、メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリル系ラジカル単量体単位の含有量が40〜70質量%であることが好ましい。
【0017】
また、該(メタ)アクリル系重合体(C1)には、メチルメタクリレート単位及びメチルメタクリレート以外の(メタ)アクリル系ラジカル単量体単位の他に、その他の単量体単位を有してもよい。その他の単量体としては、スチレン単位、酢酸ビニル単位等が挙げられる。その他の単量体単位の含有量は、メチルメタクリレート(A)および上記(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(B)に対する(メタ)アクリル系重合体(C1)の溶解性を損なわない範囲とすることが好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル系重合体(C1)の含有量は、粘度をより容易に調整できることから、硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して、10〜40質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。
【0019】
また、飽和アルキルアクリレート系封止材の(メタ)アクリル系重合体(C)としては、封止材の硬化性に優れ、硬化物の耐衝撃性に優れることから、下記一般式(2)で示されるアクリル系ラジカル重合性単量体単位を含むアクリル系重合体(C2)が好ましい。
CH=CHCOOC2n+1・・・(2)
(式中、nは4〜18の整数を示す。)
一般式(2)のアクリル系重合性単量体の具体例としては、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられる。これらのうち、硬化性、耐衝撃性の観点から、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。上記単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、該アクリル系重合体(C2)は、一般式(2)以外の単量体単位を含んでもよく、このような単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキブチルアクリレート等が挙げられる。
【0021】
アクリル系重合体(C2)の含有量は、封止材の粘度をより容易に調整できることから、硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して、10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
【0022】
また、封止材の硬化性アクリル成分は、(メタ)アクリル系重合体(C)として、上記の(メタ)アクリル系重合体(C1)及びアクリル系重合体(C2)以外の(メタ)アクリル系重合体を含んでもよい。
【0023】
また、硬化性アクリル成分は、硬化物の柔軟性や耐衝撃性をより向上させることを目的として、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(D)をさらに含むことが好ましい。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(D)の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロプレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種以上を使用できる。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの中でも、硬化物の柔軟性や強度の点から、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロプレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、ポリアルキレングリコールジメタクリレートの分子量が500以上のものがより好ましい。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(D)の含有量は、硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して0.5〜7質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0024】
また、硬化性アクリル成分は、水酸基を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(F)を含むことができる。
水酸基を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(F)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトン開環付加物またはε−カプロラクトン開環付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたは2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体や3量体等の末端に水酸基を有する(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の透明性の観点から、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(F)の含有量は硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して1〜10質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。
【0025】
また、硬化性アクリル成分は、太陽電池モジュールの保護部材に対する硬化物の密着性向上を目的として、リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(G)をさらに含むことができる。
リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(G)の具体例としては、メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、メタクリロイルオキシエチルフェニルアシッドフォスフェート、メタクリロイルポリオキシエチルアシッドフォスフェート、メタクリロイルポリオキシプロピルアシッドフォスフェート等が挙げられる。これらは1種以上を使用できる。上記の具体例の中でも、硬化物の透明性の観点から、メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェートが好ましい。
リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(G)の含有量は、硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して0.01〜3質量%であることが好ましく、0.03〜1質量%であることがより好ましい。
【0026】
封止材の成分には、上記(A)、(B)、(D)〜(G)成分以外のラジカル重合性ビニル単量体が1種以上含まれてもよい。
(A)、(B)、(D)〜(G)成分以外のラジカル重合性ビニル単量体の具体例として、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルフォリン、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等が挙げられる。
また、(A)、(B)、(D)〜(G)成分以外のラジカル重合性ビニル単量体は、1分子中に2個以上の二重結合を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体であってもよい。
1分子中に2個以上の二重結合を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
封止材には、硬化を促進するために、重合開始剤が含まれることが好ましい。重合開始剤としては、熱重合型、光重合型が挙げられるが、硬化物の耐候性が良好になる点では、熱重合型の重合開始剤が好ましい。
熱重合型重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、メチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル等が挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等が挙げられる。
これらのなかでも、特に硬化性に優れる点から、ジラウロイルパーオキサイド、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、レドックス反応を利用して硬化させる場合には、ジベゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物とN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン等の芳香族3級アミン類;ハイドロパーオキサイドと金属石鹸類;クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のパーオキサイドとチオ尿素類等の組み合わせが採用される。
【0029】
重合開始剤の含有量は、硬化性アクリル成分の総量100質量部に対して0.1〜1.0質量部であることが好ましい。重合開始剤の含有量が前記下限値以上であれば、硬化をより促進させることができ、前記上限値以下であれば、低コストにできる。
【0030】
また、封止材には、硬化物に対する接着性を向上させるために、シランカップリング剤を含有させてもよい。
シランカップリング剤(H)としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グルシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グルシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。なお、シランカップリング剤(H)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものであっても、硬化性アクリル成分には含めないものとする。
シランカップリング剤(H)の含有量は、硬化性アクリル成分の総量100質量部に対して0.01〜3.0質量部であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量が前記下限値以上であれば、充分な接着性が得られ、前記上限値以下であれば、機械的特性の低下を防止できる。
【0031】
また、封止材には、必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、消泡剤、重合抑制剤、充填剤、ワックス等の各種添加剤等が含まれてもよい。
【0032】
上記封止材によれば、太陽電池セルの周囲に供給した後に重合して硬化させることにより、無色透明な封止層を形成することができる。
【0033】
また上記封止材を硬化して作成したフィルムで太陽電池セルを貼り合わせた後、真空脱気しながら圧着させてもよい。
【0034】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールの一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の太陽電池モジュールの断面図を示す。本実施形態の太陽電池モジュール10は、前面保護部材11と、裏面保護部材12と、前面保護部材11および裏面保護部材12の間に設けられた封止層13と、封止層13の内部に多数設けられた太陽電池セル14,14・・・とを備える。
【0035】
前面保護部材11は、光入射側に配置された板状の保護部材である。前面保護部材11は樹脂製であり、特に、光を透過させる必要があるため、透明樹脂が使用される。透明樹脂の中でも、透明性の点から、アクリル樹脂、ポリカーボネート、環状オレフィン重合体が好適に使用される。
前面保護部材11の厚さは0.5〜3mmであることが好ましく、0.7〜2mmであることがより好ましい。前面保護部材11の厚さが前記下限値以上であれば、より高い耐衝撃性を確保でき、前記上限値以下であれば、より軽量化できる。
【0036】
裏面保護部材12は、光入射側と反対側に配置された板状の保護部材である。裏面保護部材12は樹脂製であり、例えば、アクリル樹脂、繊維強化エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート等が使用される。これらの中でも、耐衝撃性をより高くできることから、ポリカーボネート、アクリル樹脂又は繊維強化エポキシ樹脂が好ましく、繊維強化エポキシ樹脂がより好ましい。繊維強化エポキシ樹脂に含まれる繊維としては、ガラス繊維、セルロース繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、高強度ポリエステル繊維、ボロン繊維、窒化珪素繊維、ナイロン繊維等が挙げられる。繊維の形態は短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
裏面保護部材12の厚さは1〜3mmであることが好ましく、1.2〜2mmであることがより好ましい。裏面保護部材12の厚さが前記下限値以上であれば、より高い耐衝撃性を確保でき、前記上限値以下であれば、より軽量化できる。
【0037】
封止層13は、上記封止材を硬化させた硬化物からなる透明樹脂層である。
封止層13の厚さは太陽電池セル14を封止できる厚さにされ、0.5〜3mmであることが好ましく、0.7〜2.5mmであることがより好ましい。前面保護部材11の厚さが前記下限値以上であれば、より高い耐衝撃性を確保でき、前記上限値以下であれば、より軽量化できる。
【0038】
太陽電池セル14としては、公知のものを使用することができ、例えば、シリコン系(単結晶型、多結晶型、アモルファス型)、化合物系、色素増感系のセルを使用することができる。
通常、太陽電池セル14は、タブ線15を介して電気的に直列に接続されている。
【0039】
封止層13が上記封止材の硬化物からなる太陽電池モジュール10は、前面保護部材11が樹脂製であるにもかかわらず、耐衝撃性に優れる。
また、太陽電池モジュール10は、前面保護部材11が樹脂製であり、軽量化であるため、設置作業の作業性が高く、また、設置する躯体の強度を高めにする必要がない。
【0040】
<太陽電池モジュールの製造方法>
上記太陽電池モジュール10の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の太陽電池モジュール10の製造方法は、下記の配置工程と充填工程と硬化工程とを有する。
【0041】
配置工程は、図2に示すように、前面保護部材11と裏面保護部材12とを互いに対向するように配置すると共に、前面保護部材11と裏面保護部材12との間に太陽電池セル14を配置する工程である。
前面保護部材11と裏面保護部材12との間に太陽電池セルを配置するためには、予め複数の太陽電池セル14,14・・・をタブ線15によって電気的に直列に接続し、これら太陽電池セル14を、スペーサ16aを介して裏面保護部材12に取り付ける。
また、前面保護部材11と裏面保護部材12とを互いに対向するように配置するためには、前面保護部材11と裏面保護部材12との間にスペーサ16bを介在させることにより間隔をあけると共に、前面保護部材11とスペーサ16b、裏面保護部材12とスペーサ16bとを接着する。スペーサ16bを接着した後、前面保護部材11と裏面保護部材12とはジグを用いて固定してもよい。
スペーサ16a,16bとしては、配置工程の作業性が高くなることから、両面接着テープが好ましいが、樹脂やセラミックスの成形品を用いることもできる。スペーサ16a,16bが成形品である場合には、前面保護部材11又は裏面保護部材12に接着剤により接着してもよいし、接着剤により接着せずにジグのみで前面保護部材11と裏面保護部材12とを固定してもよい。
【0042】
充填工程は、前面保護部材11と裏面保護部材12との間の空間に上記封止材を充填する工程である。
充填方法としては、例えば、図3に示すように、封止材を注入する針状ノズル17をスペーサ16bに刺して前面保護部材11と裏面保護部材12との間に挿入し、その針状ノズル17を介して封止材を徐々に注入して充填する方法を採ることができる。針状ノズル17の挿入位置は、封止材の粘度、太陽電池モジュールの構造や大きさ等によって適宜選択される。また、針状ノズル17の本数は1本でもよいし、2本以上であってもよい。また封止材を注入する場合には、前面保護部材11と裏面保護部材12との間の空間に空気抜きの孔を設けることが好ましい。
充填する封止材は予め脱気しておくことが好ましい。封止材を脱気しておけば、封止層に気泡が生じることを抑制できる。
【0043】
硬化工程は、充填した封止材を硬化させる工程である。
封止材を硬化させるためには、封止材がラジカル重合開始剤を含む場合には加熱する方法、光重合開始剤を含む場合には活性エネルギー線(紫外線、電子線等)を照射する方法が採られる。
加熱する方法を採る場合には、熱風による加熱、赤外線照射による加熱が適用される。加熱温度は、封止材に含まれる単量体又はラジカル重合開始剤の種類にもよるが、40〜120℃にすることが好ましい。
活性エネルギー線を照射する場合には、封止材全体に活性エネルギー線を当てるために、光源を前面保護部材11に対向するように配置することが好ましい。
【0044】
上記配置工程と充填工程と硬化工程とを有する太陽電池モジュールの製造方法によれば、耐衝撃性に優れた太陽電池モジュールを容易に製造することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。
上記実施形態では、太陽電池セル14を裏面保護部材12にスペーサ16aを介して接着されていたが、太陽電池セル14は裏面保護部材12に接着されていなくてもよい。
また、本発明においては前面保護部材が樹脂製でなく、ガラス製であっても構わない。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。以下の記載中、「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
冷却器を備えた反応容器にメチルメタクリレート(A−1)40部(硬化性アクリル成分の総量100質量%に対して32.9質量%、以下同じ。)、2−エトキシレーテッド2−エチルヘキシルアクリレート(B−1)40部(32.9質量%)、n−ブチルアクリレート(E−1)19部(15.6質量%)、4−ヒドロキシプロピルメタクリレート(F−1)2.3部(1.9質量%)、メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(G−1)0.12部(0.1質量%)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(重合禁止剤)0.061部を入れた。次いで、撹拌しながら、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとの共重合体(メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート=40/60、質量比、質量平均分子量60,000)(C−1)20部(16.5質量%)を少量ずつ加えた。
全て加えた後、得られた液を60℃まで加熱し、60℃を維持したまま2時間撹拌した。2時間後、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとの共重合体(C−1)が完全に溶解したことを確認した後、冷却した。さらに、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート0.61部を添加して、封止材1を得た。得られた封止材1には真空脱気処理を施した。
次いで、複数の太陽電池セルを銅製のタブ線により電気的に直列に接続し、これらを、厚さ0.5mmの両面接着テープを用いて、裏面保護部材になる厚さ1.6mmのガラス繊維強化エポキシ樹脂板の片面に接着した。
次いで、上記裏面保護部材の太陽電池セルを接着した側の面の周縁部に厚さ1.0mmの両面接着テープを貼り付け、さらにその両面接着テープによって前面保護部材になる厚さ0.8mmのアクリル樹脂板を接着し、固定した。
次いで、前面保護部材と裏面保護部材との間の両面接着テープに針状ノズルを刺し、その針状ノズルを介して上記封止材1を前面保護部材と裏面保護部材との間に注入し、充填した。
充填後、針状シリンジを抜き、熱風乾燥機により90℃、30分間加熱し、封止材1を硬化させて、厚さ1.0mmの封止層を形成して、太陽電池モジュールを得た。
なお、上記のように、封止材を注入、硬化して太陽電池モジュールを製造する方法のことを表1では「A法」と表記する。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、封止材1に代えて、封止材1にさらにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(H−1)0.61部を添加した封止材2を用いた以外は同様にして太陽電池モジュールを得た。なお、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを添加する直前に添加した。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、裏面保護部材の周縁部に貼り付ける両面接着テープの厚さを2.0mmに変更して、封止層の厚さを2.0mmとした以外は同様にして太陽電池モジュールを得た。
【0049】
(実施例4)
実施例1において、前面保護部材の厚みを1.5mmに変更した以外は同様にして、太陽電池モジュールを得た。
【0050】
(実施例5)
実施例1において、前面保護部材の厚みを1.5mmに、裏面保護部材を厚さ1.5mmのアクリル樹脂板に変更した以外は同様にして、太陽電池モジュールを得た。
【0051】
(実施例6)
実施例1において、裏面保護部材を炭素繊維強化エポキシ樹脂に変更した以外は同様にして太陽電池モジュールを得た。
【0052】
(実施例7)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び窒素注入管の付いた反応容器に2−エチルヘキシルアクリレート100質量部、トルエン80質量部を入れ、100ml/分の容量で窒素をバブリングしながら、トルエン20質量部に溶解したアゾビソイソブチロニトリル0.3質量部を滴下により添加した。滴下終了後2時間重合反応を行った。なお、重合反応は65℃で行った。その後、トルエンを除去して、2−エチルヘキシルアクリレートポリマー(質量平均分子量450,000)(C−2)を得た。
冷却器を備えた反応容器に2−エチルヘキシルアクリレート(E−2)70部(70質量%)を入れ、攪拌しながら上記2−エチルヘキシルアクリレートポリマー(C−2)30部(30質量%)を加えた。得られた液を60℃まで加熱し、60℃を維持したまま2時間攪拌した。2時間後、2−エチルヘキシルアクリレートポリマー(C−2)が完全に溶解したことを確認した後、冷却した。さらにジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート0.5部、を添加して封止材3を得た。得られた封止材3には真空脱揮処理を施した。
次いで、複数の太陽電池セルを銅製のタブ線により電気的に直列に接続し、これらを、厚さ0.5mmの両面接着テープを用いて、裏面保護部材になる厚さ1.6mmのガラス繊維強化エポキシ樹脂板の片面に接着した。
次いで、上記裏面保護部材の太陽電池セルを接着した側の面の周縁部に厚さ2.0mmの両面接着テープを貼り付け、さらにその両面接着テープによって前面保護部材になる厚さ0.8mmのアクリル樹脂板を接着し、固定した。
次いで、前面保護部材と裏面保護部材との間の両面接着テープに針状ノズルを刺し、その針状ノズルを介して上記封止材3を前面保護部材と裏面保護部材との間に注入し、充填した。
充填後、針状シリンジを抜き、熱風乾燥機により90℃、30分間加熱し、封止材3を硬化させて、厚さ2.0mmの封止層を形成して、太陽電池モジュールを得た。
【0053】
(実施例8)
実施例7において、封止材3に代えて、封止材3にさらにγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(H−2)0.5部を添加した封止材4を用いた以外は同様にして太陽電池モジュールを得た。なお、γ―アクリロキシプロピルトリメトキシシランは、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを添加する直前に添加した。
【0054】
(実施例9)
実施例8において、熱風乾燥機での硬化条件を50℃×5時間に変更した以外は同様にして太陽電池モジュールを得た。
【0055】
(比較例1)
複数の太陽電池セルを銅製のタブ線により電気的に直列に接続し、これらを、2枚の厚さ0.45mmのエチレン酢酸ビニル共重合体フィルム(EVAフィルム)で挟んだ。次いで、太陽電池セルを挟んだEVAフィルムを、前面保護部材である厚さ1.5mmのアクリル樹脂板と裏面保護部材である厚さ1.5mmのアクリル樹脂板とで挟んだ。これらを、真空脱気しながら圧着して、太陽電池モジュールを得た。
なお、上記のように、フィルム状の封止材を用いて太陽電池モジュールを製造する方法のことを表1では「B法」と表記する。
【0056】
各実施例および各比較例の太陽電池モジュールの耐衝撃性を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
[耐衝撃性評価]
JIS R3212に準拠して、水平に配置した太陽電池モジュールの前面保護部材に鋼球(227±28g、直径約38mm)を高さ100cmの位置から落下させた後の状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
○:外観に変化なし。
×:亀裂が発生した。
【0057】
【表1】

【0058】
封止層がアクリル系の封止材により形成された実施例1〜9の太陽電池モジュールは、前面保護部材がアクリル樹脂板であるにもかかわらず、耐衝撃性に優れていた。
前面保護部材がアクリル樹脂板、封止層がEVAフィルム、裏面保護部材がアクリル樹脂板である比較例1の太陽電池モジュールは、耐衝撃性が不充分であった。
【符号の説明】
【0059】
10 太陽電池モジュール
11 前面保護部材
12 裏面保護部材
13 封止層
14 太陽電池セル
15 タブ線
16a,16b スペーサ
17 針状ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性アクリル成分を主成分として含有する太陽電池モジュール用封止材。
【請求項2】
前記硬化性アクリル成分は、メチルメタクリレートと、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体とを含有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用封止材。
CH=CRCOO(RO)・・・(1)
(式中、RはHまたはCHを、RはC、C、または、Cを、Rはアルキル基を、nは2以上の整数を示す。)
【請求項3】
前記硬化性アクリル成分は、(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュール用封止材。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体は、メチルメタクリレート単位とメチルメタクリレート単位以外の(メタ)アクリル系単量体単位とを有する(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする請求項3に記載の太陽電池モジュール用封止材。
【請求項5】
前記硬化性アクリル成分は、下記一般式(2)で示されるアクリル系重合性単量体を含有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用封止材。
CH=CHCOOC2n+1・・・(2)
(式中、nは4〜18の整数を示す。)
【請求項6】
前記硬化性アクリル成分は、(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする請求項5に記載の太陽電池モジュール用封止材。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系重合体は、下記一般式(2)で示されるアクリル系重合性単量体単位を有するアクリル系重合体を含有することを特徴とする請求項6に記載の太陽電池モジュール用封止材。
CH=CHCOOC2n+1・・・(2)
(式中、nは4〜18の整数を示す。)
【請求項8】
一対の保護部材と、該一対の保護部材の間に設けられた封止層と、該封止層の内部に設けられた太陽電池セルとを備え、前記封止層は、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材を硬化させた硬化物からなることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記一対の保護部材のうち光入射側に配置される保護部材が樹脂製であることを特徴とする請求項8に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
一対の保護部材を互いに対向するように配置すると共に、前記一対の保護部材の間に太陽電池セルを配置する配置工程と、
前記一対の保護部材の間に請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材を充填する充填工程と、
充填した太陽電池モジュール用封止材を硬化させる硬化工程とを有することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記一対の保護部材のうち光入射側に配置される保護部材が樹脂製であることを特徴とする請求項10に記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−191196(P2012−191196A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37673(P2012−37673)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】