説明

太陽電池モジュール用裏面保護シート、太陽電池モジュール用裏面一体化シート及び太陽電池モジュール

【課題】長期耐久性に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール用裏面保護シートが、フッ素系樹脂を主成分とするフッ素系樹脂層と、無延伸ポリプロピレン系樹脂層と、ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリエチレンナフタレートポリカーボネート系樹脂層、又は変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層と、耐候性樹脂を主成分とする耐候性樹脂層と、が順次配置される構成を含む4層以上の積層構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用裏面保護シート、太陽電池モジュール用裏面一体化シート及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。一般に、太陽電池を構成する太陽電池モジュールは、受光面側から、透明前面基板、充填材、太陽電池素子、充填材及び裏面保護シートが順に積層された構成であり、太陽光が上記太陽電池素子に入射することにより発電する機能を有している。
【0003】
上記太陽電池はその性質上、屋外で使用されることが多いため、太陽電池モジュールを構成する部材には高い耐久性が求められる。なかでも、太陽電池モジュールに用いられる裏面保護シートは、主として太陽電池モジュールの裏面を保護するため、機械強度に優れ、且つ、耐加水分解性等の耐久性に優れることが要求されている。
【0004】
現在、このような太陽電池モジュール用裏面保護シ−トとしては、耐候性等に優れたプラスチック基材等が最も一般的に使用される。例えば、特許文献1には、フッ素系樹脂フィルムと金属箔との複合フィルムを使用した太陽電池モジュール用の裏面保護シートが開示されている。また、特許文献2には、金属箔の代わりに、無機酸化物が樹脂のシートに蒸着されたバリアフィルムを使用した太陽電池モジュール用の裏面保護シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−174296号公報
【特許文献2】特開2001−44472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されるような太陽電池モジュール用裏面保護シートは、現在広く使用されており、その耐久性はおよそ20〜25年程度である。現在、さらに優れた耐久性を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートの開発が盛んに行われている。
【0007】
しかしながら、太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐久性は、耐熱性、耐加水分解性、耐候性、防湿性等の様々な物性が影響して決まるため、耐久性を改善することは困難である。このため、耐久性に非常に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートは得られていないのが現状である。
【0008】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、長期耐久性に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは以上の課題を解決するために鋭意研究を重ねた、その結果、フッ素系樹脂を主成分とするフッ素系樹脂層と、無延伸ポリプロピレン系樹脂層と、ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリエチレンナフタレートポリカーボネート系樹脂層、又は変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層と、耐候性樹脂を主成分とする耐候性樹脂層と、が順次配置される構成を含む4層以上の積層構造を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートであれば、耐久性が50年程度(従来のおよそ2倍)になることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) フッ素系樹脂を主成分とするフッ素系樹脂層と、無延伸ポリプロピレン系樹脂層からなる第1中間層と、ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリカーボネート系樹脂層、及び変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層より選択される1以上の層からなる第2中間層と、耐候性樹脂を主成分とする耐候性樹脂層と、が順次配置される構成を含む4層以上の積層構造を有する太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0011】
(2) 前記フッ素系樹脂が、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体であり、前記耐候性樹脂がポリエチレンである(1)に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0012】
(3) 前記フッ素系樹脂層の厚みが15μm以上75μm以下であり、無延伸ポリプロピレン系樹脂層の厚みが20μm以上180μm以下であり、前記第2中間層の総厚みが20μm以上180μm以下であり、前記耐候性樹脂層の厚みが15μm以上180μm以下である(1)又は(2)に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0013】
(4) 前記積層構造の各層は、接着剤層を介して積層され、前記接着剤層は、主剤と硬化剤とを含む2液タイプの接着剤で形成され、前記主剤は、下記のポリウレタンジオール(A)と、脂肪族ポリカーボネートジオール(B)との混合物を含み、前記ポリウレタンジオール(A)は、少なくとも脂肪族ポリカーボネートジオール(C)と、1,6へキサンジオール(D)と、イソホロンジイソシアネート(E)と、を原料とする反応物であり、前記ポリウレタンジオール(A)の数平均分子量は、7000から13000である(1)から(3)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0014】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートと、裏面側の充填材層と、が積層工程によりあらかじめ一体化された、太陽電池モジュール用裏面一体化シート。
【0015】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート、又は(5)に記載の太陽電池モジュール用裏面一体化シートを使用した太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、太陽電池モジュール用裏面保護シートは、4層以上の特定の積層構造を有するため、その耐久性が従来の太陽電池モジュール用裏面保護シートと比較して非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】太陽電池モジュールを示す図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、太陽電池モジュールについて簡単に説明した後、太陽電池モジュール用裏面保護シート、太陽電池モジュール用裏面一体化シートの順に詳細に説明する。本発明は以下に記載される実施形態に限定されるものではない。
【0019】
先ず、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート、太陽電池モジュール用裏面一体化シートが使用される一般的な太陽電池モジュールについて、図1を用いて説明する。太陽電池モジュール1は、例えば、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面充填材層3、太陽電池素子4、背面充填材層5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。
【0020】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、上記の裏面保護シート6にあたり、太陽電池モジュール用裏面一体化シートは、上記の裏面保護シート6と上記背面充填材層5とを一体化させたものにあたる。これらの詳細については後述する。
【0021】
また、裏面保護シート6に本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを使用した太陽電池モジュール、裏面保護シート6と背面充填剤層5とを一体化させたものに本発明の太陽電池モジュール用裏面一体化シートを使用した太陽電池モジュールが、本発明の太陽電池モジュールにあたる。
【0022】
太陽電池モジュールは、例えば、上記の各層を形成する部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。また、太陽電池モジュールは、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、例えば、Tダイ押出成形等により、太陽電池素子の表面側及び裏面側のそれぞれに、前面充填材層及び背面充填材層を溶融積層して、太陽電池素子を前面充填材層及び背面充填材層でサンドし、次いで、透明前面基板及び背面保護シートを順次積層し、次いで、これらを真空吸引等により一体化して加熱圧着する方法で製造してもよい。
【0023】
なお、太陽電池モジュールにおいて、透明前面基板、太陽電池素子及び前面充填材層は、従来公知の材料を特に制限なく使用することができる。また、太陽電池モジュールは、上記部材以外の部材を含んでもよい。
【0024】
<太陽電池モジュール用裏面保護シート>
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、フッ素系樹脂を主成分とするフッ素系樹脂層と、無延伸ポリプロピレン系樹脂層からなる第1中間層と、ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリカーボネート系樹脂層、又は変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層より選択される1以上の層からなる第2中間層と、耐候性樹脂を主成分とする耐候性樹脂層と、が順次配置される構成を含む4層以上の積層構造を有する。例えば、図2に示すような構造を有する。図2は本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの一例を示す模式図であり、太陽電池モジュール用裏面保護シート10は、フッ素系樹脂層11と、無延伸ポリプロピレン系樹脂層12と、ポリエチレンナフタレート系樹脂層13と、耐候性樹脂層14とを有し、各層は接着剤で接着されており、各層間には接着剤層15が設けられている。
【0025】
フッ素系樹脂、無延伸ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、耐候性樹脂は、いずれも太陽電池モジュール用裏面保護シートに求められる物性を充分に満たし、且つ太陽電池モジュール用裏面保護シートに使用される材料の中でも非常に優れた耐加水分解性を有する。このように非常に優れた耐加水分解性を有し、且つ太陽電池モジュール用裏面保護シートとして好適な物性を有する材料を組み合わせることで、本発明は、従来の太陽電池モジュール用裏面保護シートと比較して、非常に優れた耐久性を有する。本発明の効果は、上記フッ素系樹脂層と耐候性樹脂層との間に、無延伸ポリプロピレン系樹脂層と、ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリカーボネート系樹脂層、又は変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層とを備えることで奏される。以下、各層についてさらに詳細に説明する。
【0026】
[フッ素系樹脂層]
フッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂を主成分とする。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエ−テルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエ−テルとヘキサフルオロプロピレン共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、又は、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。また、これらの樹脂を2種以上併用してもよい。これらの中では、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)の使用が非常に好ましい。
【0027】
テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)は、機械的あるいは化学的強度に優れ、具体的には、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、耐突き刺し性等の諸堅牢性に優れる材料である。したがって、ETFEは、太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐久性向上に寄与する。特に、ETFEは、太陽電池モジュール用裏面保護シートに用いられる材料の中でも耐加水分解性に優れる。
【0028】
フッ素系樹脂層には、例えば、フッ素系樹脂層の加工性、耐熱性、耐光性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤、その他の樹脂等を添加することができる。これら添加剤等の添加量としては、特に限定されず、その目的に応じて、任意に添加することができる。一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、滑剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、着色用添加剤、顔料、改質用樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、特に着色用添加剤は、太陽電池モジュール用裏面保護シート用の材料に好ましく添加される。以下、着色用添加剤について説明する。
【0029】
着色用添加剤としては、例えば、白色化剤、黒色化剤等の無彩色系、あるいは、赤、橙、黄、緑、青、紫、その他等の有彩色系等の種々の染料・顔料等の着色剤の1種ないし2種以上を使用することができる。具体的には、特開2004−200322号公報に記載されるものを使用することができる。これらの着色用添加剤は、その周囲の環境に合う意匠性、装飾性等を付与するという作用効果を奏する。また、白色化剤を使用することで、上記意匠性、装飾性の付与以外にも、太陽電池モジュ−ルにおいて透過した太陽光を光反射あるいは光拡散させて再利用するための光反射性、光拡散性等を、太陽電池モジュールに付与する効果、太陽電池モジュ−ルを屋根等に設置した場合に照り返す太陽光等を光反射あるいは光拡散させるという効果も得られる。
【0030】
上記の着色用添加剤は、フッ素系樹脂層中におよそ5〜80質量%含まれることが好ましい。
【0031】
フッ素系樹脂層は、例えば、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他の成膜化法を用いて成膜したものが挙げられる。
【0032】
フッ素系樹脂層の厚さは、特に限定されないが、およそ10〜75μmが好ましく、およそ15〜50μmがより好ましく、およそ20〜40μmが最も好ましい。フッ素系樹脂層の厚さが、およそ10μm以上であることにより、太陽電池モジュール用裏面保護シートに十分な耐候性を付与することができ、フッ素系樹脂層の厚さが、およそ75μm以下であることにより、ラミネート加工時のフィルム搬送適性を付与することができる。また、成膜されるフッ素系樹脂層は、延伸フィルムであってもよいし、未延伸フィルムであってもよい。
【0033】
フッ素系樹脂層の表面は、他の層との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、あらかじめ、所望の表面処理層を設けることができる。表面処理層は、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いたプラズマ処理、グロ−放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理をフッ素系樹脂層の表面に任意に施すことにより設けることができる。
また、フッ素系樹脂層の表面には、高い防湿性やガスバリア性を付与するために、金属酸化膜層、金属箔等を設けてもよい。金属酸化物層、金属箔は、従来公知の方法で設けることができる。
【0034】
[第1中間層]
無延伸ポリプロピレン樹脂層(第1中間層)には、ポリプロピレン系樹脂が含まれる。使用可能なポリプロピレン系樹脂は、特に限定されず、一般的なものを使用可能である。一般的なのポリプロピレン系樹脂の具体例としては、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等の各種ポリプロピレン、メタロセン触媒ポリプロピレン等が挙げられる。また、上記ホモポリマーや共重合体に、本発明の効果を害さない範囲で、その他の樹脂成分を含んでもよい。また、無延伸ポリプロピレン系樹脂層には、本発明の効果を害さない範囲で、他の樹脂、一般的な添加剤を含有してもよい。一般的な添加剤としては、上記フッ素系樹脂層の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0035】
無延伸ポリプロピレン系樹脂層は、加水分解により劣化することが無く、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成する層の中でも、特に耐加水分解性に優れる。また、無延伸ポリプロピレン系樹脂層は水蒸気バリア性にも優れるため、無延伸ポリプロピレン系樹脂層よりも内側の層が加水分解により劣化することを充分に抑えることができる。また、無延伸ポリプロピレン系樹脂層は、低コストで作製することができるため、耐久性に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造コストを抑えることができる。なお、無延伸ポリプロピレン系樹脂層は、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成する他の層と比較して、耐熱性、機械的強度がやや低い傾向にあるが、後述する、ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリカーボネート系樹脂層、又は変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層を有することにより、太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐熱性や機械的強度が低くなることを抑えることができる。
【0036】
無延伸ポリプロピレン系樹脂層の製造は、フッ素系樹脂層と同様に従来公知の成膜方法を用いて行うことができる。
【0037】
無延伸ポリプロピレン系樹脂層の厚みは、特に限定されないが、およそ20〜180μmが好ましく、およそ30〜140μmがより好ましく、およそ50〜120μmが最も好ましい。無延伸ポリプロピレン系樹脂層の厚みがおよそ20μm以上であれば、太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐加水分解性が充分に高まるという理由で好ましく、およそ160μm以下であれば加工適性が満たされるという理由で好ましい。
【0038】
また、無延伸ポリプロピレン系樹脂層には、フッ素系樹脂層と同様に他の層との密着性を向上させるための表面処理を施してもよい。また、無延伸ポリプロピレン系樹脂層上には、バリア性等をさらに向上させるために金属酸化物膜、金属箔を従来公知の方法で設けてもよい。
【0039】
[第2中間層]
第2中間層は、ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリカーボネート系樹脂層、及び変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層より選択される1層以上の層からなる。先ずこれらの層の共通点について説明した後、各層について説明する。
【0040】
これらの層は、いずれも耐加水分解性、耐熱性、機械的強度、難燃性に優れる。これらの層と、フッ素系樹脂層、無延伸ポリプロピレン系樹脂層、後述する耐候性樹脂層とを組み合わせることで、耐久性に非常に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートが得られる。
【0041】
これらの樹脂層の製造は、フッ素系樹脂層と同様に従来公知の成膜方法を用いて行うことができる。
【0042】
これらの層の厚みは、特に限定されず、好ましい厚みは層の種類等によってやや異なるが、いずれの層を採用しても、およそ20〜180μmが好ましく、およそ30〜160μmがより好ましく、およそ40〜140μmが最も好ましい。層の厚みが、およそ20μm以上であれば、必要な機械的強度が得られるという理由で好ましく、およそ180μm以下であれば加工適性が満たされるという理由で好ましい。
【0043】
また、これらの層には、フッ素系樹脂層と同様に他の層との密着性を向上させるための表面処理を施してもよい。また、これらの層上には、バリア性等を向上させるために金属酸化物膜、金属箔を従来公知の方法で設けてもよい。
【0044】
次いで、各層について説明する。以下、ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリカーボネート系樹脂層、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層について、この順で説明する。
【0045】
先ず、ポリエチレンナフタレート系樹脂層について説明する。ポリエチレンナフタレート系樹脂層に含まれるポリエチレンナフタレート系樹脂としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸を主成分とするものであることが好ましく、ポリエチレンナフタレート樹脂の単体樹脂を使用することができる。また、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、ポリエチレンナフタレートを構成する酸成分(2,6−ナフタレンジカルボン酸)及びグリコール成分(エチレングリコール)のうち少なくとも一方の成分の一部を、他の酸成分、グリコール成分で置換した共重合ポリエステルを使用することもできる。また、ポリエチレンナフタレート系樹脂は、本発明の効果を害さない範囲で、酸成分、グリコール成分以外の他の樹脂成分を含んでもよい。また、ポリエチレンナフタレート系樹脂層は、本発明の効果を害さない範囲で、他の樹脂、一般的な添加剤を含有してもよい。一般的な添加剤としては、上記フッ素系樹脂層の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0046】
ポリエチレンナフタレート系樹脂層は、耐加水分解性、耐熱性、機械的強度、難燃性に優れることに加え、寸法安定性にも優れる。寸法安定性が優れる結果、ポリエチレンナフタレート系樹脂層を採用すると、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層を採用する場合と比較して、太陽電池モジュールの製造が容易になる。また、ポリエチレンナフタレート系樹脂層を採用すると、ポリカーボネート系樹脂層を採用する場合と比較して、太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐久性をより向上させることができる。
【0047】
次いで、ポリカーボネート系樹脂層について説明する。ポリカーボネート系樹脂は主鎖中に炭酸エステル結合をもつ線状高分子であって、ビスフェノールAを原料として製造されるものが一般的である。ポリカーボネート系樹脂とは、ポリカーボネートを主成分とする樹脂であるが、他の樹脂成分が含有されていてもよい。また、ポリカーボネート系樹脂層は、本発明の効果を害さない範囲で、他の樹脂、一般的な添加剤を含有してもよい。一般的な添加剤としては、上記フッ素系樹脂層の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0048】
ポリカーボネート系樹脂は、太陽電池モジュール用裏面保護シートに使用する材料に求められる物性を有し、特に、耐加水分解性、寸法安定性、耐熱性、難燃性が非常に高い。ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネートを主成分とするため、上記ポリカーボネートの有する性質を持つ。このようなポリカーボネート系樹脂を、上記フッ素系樹脂、後述する耐候性樹脂と組み合わせて使用することで、太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐久性は高まる。ポリカーボネートは優れた寸法安定性を有するため、ポリカーボネート系樹脂層の採用は、後述する変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層の採用と比較して、太陽電池モジュールの製造を容易にする。また、ポリカーボネートは、上記のポリエチレンナフタレート、変性ポリフェニレンエーテルと比較して、安価である。
【0049】
次いで、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層について説明する。変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層は、変性ポリフェニレンエーテルを主成分とする層である。変性ポリフェニレンエーテルは、芳香族ポリエーテル構造を持つポリフェニレンエーテル(PPE)を主成分とした、熱可塑性樹脂に属する合成樹脂ポリマーアロイの総称である。ポリフェニレンエーテルと混合する熱可塑性樹脂は特に限定されないが、ポリスチレン系樹脂の使用が好ましい。ポリフェニレンエーテルと熱可塑性樹脂との混合による変性が、製造容易の観点から好ましいが、フェノール系モノマーに他のモノマーを共重合させることによる変性等であってもよい。
【0050】
ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレンー1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレンで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層には、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂以外の他の樹脂を含有させてもよい。また、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層には、フッ素系樹脂層に含有されるような各種添加剤を含有させてもよい。
【0053】
変性ポリフェニレンエーテルは、太陽電池モジュール用裏面保護シートに使用する材料に求められる物性を有し、特に、耐加水分解性、耐熱性、難燃性が非常に高い。変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層は、変性ポリフェニレンエーテルを主成分とするため、上記変性ポリフェニレンエーテルの有する性質を持つ。このようなポリフェニレン系樹脂を、上記無延伸ポリプロピレン系樹脂層等と組み合わせて使用することで、太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐久性は非常に高くなる。変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層を採用すると、上記ポリカーボネート系樹脂層を採用する場合と比較して、より耐久性が高まる。
【0054】
[耐候性樹脂層]
耐候性樹脂層とは特開2002−83988号公報に記載される耐候性樹脂と同様のものを使用することができる。耐候性樹脂層は充填材と接する層である。このため、使用する材料の選択は、例えば充填材との密着性を考慮して行うことができる。特に、充填材としてオレフィン系の充填材を用い、耐候性樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレンを使用することが非常に好ましい。ポリエチレン、ポリプロピレンはオレフィン系の充填材との密着性も高く、また、これらの材料の組み合わせは太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐久性向上に寄与する。耐候性樹脂層には、耐候性樹脂以外の樹脂を含有させてもよい。また、耐候性樹脂層には、フッ素系樹脂層に含有されるような各種添加剤を含有させてもよい。
【0055】
ポリエチレンは、特に限定されず、従来公知の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンのいずれも使用することができる。
【0056】
ポリプロピレンを耐候性樹脂層に用いる場合、無延伸ポリプロピレン系樹脂層にすることが好ましく、無延伸ポリプロピレン系樹脂層は上記で説明したものと同様である。
【0057】
特に耐候性樹脂層には、フッ素系樹脂層と同様に着色用添加剤を含有させることが好ましい。含有させることのできる着色用添加剤としては、上記と同様のものを挙げることができる。特に白色化剤の使用が好ましい。
【0058】
耐候性樹脂層の製造は、フッ素系樹脂層と同様に従来公知の成膜方法を用いて行うことができる。
【0059】
耐候性樹脂層の厚みは、特に限定されないが、およそ15〜180μmが好ましく、およそ20〜170μmがより好ましく、およそ25〜160μmが最も好ましい。耐候性樹脂層の厚みがおよそ15μm以上であれば、必要な機械的強度が得られるという理由で好ましく、およそ180μm以下であれば加工適性が満たされるという理由で好ましい。
【0060】
また、耐候性樹脂層には、フッ素系樹脂層と同様に他の層との密着性を向上させるための表面処理を施してもよい。また、耐候性樹脂層上には、バリア性等を向上させるために金属酸化物膜、金属箔を従来公知の方法で設けてもよい。
【0061】
[その他の樹脂層]
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、フッ素系樹脂層と、ポリカーボネート系樹脂層又は変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層と、耐候性樹脂層とが順次配置される構成を含む4層以上であればよく、本発明の効果を害さない範囲で他の層をさらに含んでもよい。その他の樹脂層に含有される成分、厚み等は適宜変更可能であり、その他の樹脂層の製造方法も特に限定されず、上述の必須の層と同様に従来公知の方法で製造することができる。
【0062】
[太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法]
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、各層の間に接着剤層を設けて、ドライラミネート加工により製造することができる。
【0063】
接着剤層に使用可能な接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレ−ト系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、セルロ−ス系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノ−ル樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコ−ン系接着剤、無機系接着剤等を挙げることができる。これらの接着剤は従来公知の組成系、使用方法で用いることができる。本発明においては、以下の接着剤層を設けることが好ましい。下記接着剤層は、接着性及び耐候性に優れるからである。
【0064】
[接着剤層]
本発明において好適な接着剤層は2液タイプの接着剤を用いて形成される。2液タイプの接着剤とは、主剤と硬化剤とを使用直前に混合するタイプの接着剤である。以下、2液タイプの接着剤を構成する主剤、硬化剤及び溶剤等について説明する。
【0065】
[主剤]
上記接着剤の主剤成分は、ポリウレタンジオール(A)と脂肪族ポリカーボネートジオール(B)との混合物を含む。この混合物に含まれる(A)成分、(B)成分はイソシアネート基を有する硬化剤と反応して、接着剤層を構成する。
【0066】
主剤成分のポリウレタンジオール(A)は、ウレタン構造をその繰り返し単位とし、その両末端に水酸基を有する。(A)成分の数平均分子量は、7000〜13000である。7000以上であると、硬化剤との反応性が良いため好ましく、13000以下であると溶剤への溶解が向上するためで好ましい。
【0067】
ポリウレタンジオール(A)は、脂肪族ポリカーボネートジオール(C)、1,6へキサンジオール(D)、イソホロンジイソシアネート(E)を反応させて得られる。この(A)成分の使用により、接着剤層の接着性及び耐候性が向上する。以下、(C)〜(E)成分について説明する。
【0068】
脂肪族ポリカーボネートジオール(C)は、カーボネート構造を繰り返し単位とし、その両末端に水酸基を有する。両末端の水酸基は、イソシアネート基と硬化反応する。
【0069】
脂肪族ポリカーボネートジオール(C)の製造方法は、特に限定されず、従来公知の手法を採用することができる。例えば、アルキレンカーボネートとジオールとを原料に用いて製造できる。なお、(C)成分は市販品であってもよい。
【0070】
脂肪族ポリカーボネートジオール(C)の数平均分子量は、およそ1000〜2000であることが好ましい。1000以上であると、ジイソシネートとの硬化反応が起こり易いため好ましく、2000以下であると接着剤成分である溶剤への溶解性が向上するため好ましい。なお、数平均分子量は、反応速度等を制御することで調整できる。
【0071】
1,6へキサンジオール(D)成分は、常温で液状を示すもので、接着剤成分である溶剤に溶解し得るものである。(D)成分の配合量は、脂肪族ポリカーボネートジオール(C)100質量部に対し、およそ5〜15質量部であることが好ましい。
【0072】
1,6へキサンジオール(D)と共に、芳香族ポリエステルジオール等のポリエステルジオール(H)を使用することができる。(H)成分は、その基本骨格を、嵩高い芳香族環を有するカルボン酸とのエステルとすることもできることから、イソホロンジイソシアネート(E)と反応して得られるポリウレタンジオール(A)に優れた硬化速度と凝集力を付与することができる。なお、(H)成分は、従来公知の方法で製造できる。
【0073】
ポリエステルジオール(H)の配合量は、脂肪族ポリカーボネートジオール(C)100質量部に対し、およそ50〜100質量部であることが好ましい。
【0074】
ポリエステルジオール(H)の数平均分子量は、およそ3000〜4000であることが好ましい。3000以上であると、高耐久であるため好ましく、4000以下であると加工適性が良好であるため好ましい。
【0075】
イソホロンジイソシアネート(E)は、上記脂肪族ポリカーボネートジオール(C)、1,6へキサンジオール(D)又はポリエステルジオール(H)の水酸基と反応し、主剤成分であるポリウレタンジオール(A)を形成する。
【0076】
以上説明した脂肪族ポリカーボネートジオール(C)、脂肪族ジオール(D)、イソホロンジイソシアネート(E)を溶剤に溶解させ、混合し加熱還流することにより反応させて、主剤成分であるポリウレタンジオール(A)の溶液を得ることができる。なお、使用する溶剤は、各成分を溶解させることができ、溶剤と反応しないものであればよい。
【0077】
主剤成分である脂肪族ポリカーボネートジオール(B)は、イソシアネート基を有する硬化剤成分と反応する。(B)成分はポリウレタンジオール(A)を製造する際に使用した上記の脂肪族ポリカーボネートジオール(C)と同一のものを使用することができる。
【0078】
混合物中におけるポリウレタンジオール(A)と脂肪族ポリカーボネートジオール(B)の質量比率は、ポリウレタンジオール(A)100質量部に対して、脂肪族ポリカーボネートジオール(B)およそ10〜20質量部であることが好ましい。
【0079】
なお、主剤には、上記必須成分の他に、必要に応じて、粘着付与剤、安定化剤、充填剤、可塑剤、軟化点向上剤、触媒等を添加剤として混合することができる。
【0080】
[硬化剤]
上記接着剤の硬化剤は、ポリイソシアネート化合物を主成分とするものである。ポリイソシアネート化合物としては、従来公知のものを使用できる。本発明において硬化剤は、イソホロンジイソシアネートのヌレート体(F)と、ヘキサメチレンジイソシアネート系2官能ポリウレタンジイソシアネート(G)との混合物を含み、これらの質量比率がおよそ(F):(G)=30:70〜50:50であるものが好ましい。
【0081】
[溶剤]
上記接着剤成分である主剤及び硬化剤には、良好な塗布性及びハンドリング適性を得るために、カルボン酸エステル等の溶剤成分を添加することが好ましい。なお、上記接着剤は、主剤と硬化剤の2液剤として構成されるが、主剤で使用される溶剤成分と硬化剤で使用される溶剤成分はそれぞれ独立に選択され、同一でも異なっていてもよい。
【0082】
[その他の成分]
接着剤成分には、主剤、硬化剤及び溶剤の他、必要に応じてシランカップリング剤、粘着付与剤、安定化剤、充填剤、可塑剤、軟化点向上剤、触媒等を添加剤として混合することができる。太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐久性を向上させる観点から、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤の使用量は、主剤と硬化剤との合計100質量部に対し、およそ1〜3質量部であることが好ましい。
【0083】
<太陽電池モジュール用裏面一体化シート>
本発明の太陽電池モジュール用裏面一体化シートは、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートと背面充填材層とが一体化したものである。あらかじめ積層して一体化シートとしておけば、太陽電池モジュールの作製における工数を軽減できる他、部材の輸送や管理を簡略化できる等の面でメリットがある。先ず、背面充填材層について、説明する。
【0084】
[背面充填材層]
背面充填材層に使用される材料は、特に限定されず、太陽電池モジュールの充填層として使用される公知の樹脂を好ましく使用することができる。このような樹脂としては、例えば、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリビニルブチラール、エチレン系アイオノマー、α−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなる共重合体(オレフィン系充填材)等が挙げられる。
【0085】
上記樹脂の中でも、α−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなるシラン共重合体を好ましく使用することができる。このような樹脂を使用することにより、太陽電池素子等の他部材との充分な密着性が得られる。特に本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの背面充填材層と接する層が、ポリエチレンを主成分とする耐候性樹脂層の場合に密着性が強い。α−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなる共重合体とは、例えば、特開2003−46105号公報に記載されるような共重合体を指す。
【0086】
[背面充填材層の製造方法]
後述する本発明の太陽電池モジュール用裏面一体化シートの製造の際に、背面充填材層からなる充填材シートを使用する場合には、あらかじめ以下の方法で充填材シートを作製する。
【0087】
充填材シートの製造は、例えば、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、すなわち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。
【0088】
充填材シートは、多層であってもよく、多層の充填材シートは例えば従来公知のTダイ多層共押出し法を用いて製造することができる。
【0089】
[太陽電池モジュール用裏面一体化シートの製造方法]
太陽電池モジュール用裏面一体化シートの製造方法は、特に限定されず、接着剤を介して張り合わせるドライラミネート法、充填材シートと本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートとの間に変性オレフィン系等の接着性樹脂を溶融押し出ししてサンドラミネートする押し出し同時ラミネーション法、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート及び背面充填材シートをこれらの厚さ方向に加圧するのと同時に、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート側から加熱することにより、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートに面した側を軟化又は溶融させる熱ラミネーション法、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート上に、充填材シートを構成する樹脂組成物を溶融押し出しする溶融充填材押し出し法等が挙げられる。
【0090】
これらの製法の中でも、反り抑制の観点からは、積層時の背面充填材層の内部応力を小さくできる、熱ラミネーション法、ドライラミネート法、溶融充填材押し出し法が好ましく、なかでも溶融状態でラミネートする溶融充填材押し出し法が最も好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
<実施例1>
以下に示す方法で、フッ素系樹脂層と、無延伸ポリプロピレン系樹脂層と、ポリエチレンナフタレート系樹脂層と、耐候性樹脂層とが順次積層した4層構造の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0093】
[フッ素系樹脂層]
フッ素系樹脂層として、25μmのETFEシート(旭硝子社製、商品名「アフレックス」)を使用した。
【0094】
[無延伸ポリプロピレン系樹脂層]
無延伸ポリプロピレン系樹脂層として、80μmの無延伸ポリプロピレン系樹脂シート(三菱樹脂社製、商品名「アートプライ」)
【0095】
[ポリエチレンナフタレート系樹脂層]
ポリエチレンナフタレート系樹脂層として、50μmのポリエチレンナフタレート系樹脂シート(帝人デュポン社製、商品名「テオネックス」)を使用した。
【0096】
[耐候性樹脂層の作製]
直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.920g/cm、住友化学社製、商品名「スミカセン−L」)80質量部に、白色化剤として酸化チタン(石原産業社製、商品名「タイペーク」)を20質量部添加し、ポリエチレン系樹脂組成物を調製し、このポリエチレン系樹脂組成物を押し出し機で押し出して140μmの耐候性樹脂層を作製した。
【0097】
[接着剤の製造]
先ず、主剤の調製について説明する。主剤は、ポリウレタンジオール(A)と脂肪族ポリカーボネートジオール(B)とを混合してなる。以下、ポリウレタンジオール(A)、脂肪族ポリカーボネートジオール(B)の順で説明する。
【0098】
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたフラスコに数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(C)(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)(100質量部)、1、6−ヘキサンジオール(D)、イソホロンジイソシアネート(E)、ポリエステルジオール(H)、酢酸エチルを加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、ポリウレタンジオール(A)の50質量%溶液を得た。得られた樹脂の数平均分子量は約8000であった。
【0099】
脂肪族ポリカーボネートジオール(B)としては、数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)を用いた。
【0100】
上記ポリウレタンジオール(A)100質量部に対して、上記脂肪族ポリカーボネートジオール(B)を混合した。固形分50質量%になるように、混合物に酢酸エチルをさらに配合した。この混合物を主剤として用いた。
【0101】
次いで、硬化剤の調製について説明する。イソホロンジイソシアネートのヌレート体(F)と、二官能性HDIウレタン系イソシアネート(G)(旭化成ケミカルズ社製「デュラネートD101」)とを混合した。固形分量が50質量%になるように混合物に酢酸エチルをさらに配合した。この混合物を硬化剤として用いた。
【0102】
次いで、シランカップリング剤について説明する。シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた。固形分50質量%になるようにシランカップリング剤と酢酸エチルとを混合した。この混合物をシランカップリング剤として使用した。
【0103】
上記主剤100質量部に対して、硬化剤、シランカップリング剤を混合した。ここで得られた混合物が接着剤にあたる。
【0104】
[太陽電池モジュール用裏面保護シートの作製]
これらの層を下記のドライラミネート加工により接合し、5日間40℃でエージングすることにより、実施例1の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0105】
無延伸ポリプロピレン系樹脂層と対向するETFE樹脂層にグラビアロールコート法により、上記接着性混合液を1mあたり4.0〜6.0g/m(乾燥状態)になるようにコーティングして接着剤層を形成した。その後、この接着剤層に、無延伸ポリプロピレン系樹脂層を重ね合わせ、フッ素系樹脂層と無延伸ポリプロピレン系樹脂層とを積層させた。無延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリエチレンナフタレート系樹脂層との間、ポリエチレンナフタレート系樹脂層と耐候性樹脂層との間も、同様に積層させた。
【0106】
<実施例2>
耐候性樹脂層として、白色化剤としての酸化チタンを10質量%配合した80μmの無延伸ポリプロピレン系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様の方法で実施例2の太陽電池モジュール用保護シートを製造した。
【0107】
<実施例3>
上記の方法で製造した接着剤に変えて、接着剤として、ポリエステルウレタンを主成分とする接着剤(三井化学社製、商品名「タケラック」)に硬化剤(三井化学社製、商品名「タケネート」)を混合してなる接着性混合液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の太陽電池モジュール用裏面保護シートを製造した。
【0108】
<比較例1>
無延伸ポリプロピレン系樹脂層及びポリエチレンナフタレート系樹脂層の変わりに、これらの層の合計厚みと同じ厚みのポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET)をフッ素系樹脂層と耐候性樹脂層との間に設けた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0109】
<耐久性評価>
縦150mm、横10mmの実施例及び比較例の太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐久性を、太陽電池モジュールの国際規格IEC 61730に準じた方法で評価した。温度85℃、湿度85%RHに設定した環境試験機内に8000時間放置した。その太陽電池モジュール用裏面保護シートを取り出しその縦方向の破断強度を5回測定し平均値を求めた。その平均値を放置前の破断強度の測定値で割った値を破断強度保持率(%)とし、下記基準で評価した。
破断強度保持率(%)
=(8000時間経過後の破断強度)/(初期の破断強度)×100
◎:破断強度保持率 80%以上
○:破断強度保持率 50%以上80%未満
×:破断強度保持率 5%以上50%未満
【0110】
「◎」、「○」の評価の場合、太陽電池モジュールの性能維持に必要な機能が維持されるという理由で、50年以上の屋外耐久性があると推測される。「×」の評価の場合、外部環境からの保護機能が低下し、太陽電池モジュールの効率低下を招くという理由で、20年程度の屋外耐久性しかないと推測される。
【表1】

【0111】
上記の評価結果から明らかなように、フッ素系樹脂を主成分とするフッ素系樹脂層と、第1中間層と、第2中間層と、耐候性樹脂を主成分とする耐候性樹脂層と、が順次配置される積層構造を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートは、非常に高い耐久性を備える。
【0112】
太陽電池モジュール用裏面保護シートを製造するための接着剤として、ポリウレタンジオール(A)と、脂肪族ポリカーボネートジオール(B)との混合物を含むものを使用することで、さらに耐久性が高まることが確認された。
【符号の説明】
【0113】
1 太陽電池モジュール
2 透明前面基板
3 前面充填材層
4 太陽電池素子
5 背面充填材層
6 裏面保護シート
10 太陽電池モジュール用裏面保護シート
11 フッ素系樹脂層
12 無延伸ポリプロピレン系樹脂層
13 ポリエチレンナフタレート系樹脂層
14 耐候性樹脂層
15 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂を主成分とするフッ素系樹脂層と、
無延伸ポリプロピレン系樹脂層からなる第1中間層と、
ポリエチレンナフタレート系樹脂層、ポリカーボネート系樹脂層、及び変性ポリフェニレンエーテル系樹脂層より選択される1以上の層からなる第2中間層と、
耐候性樹脂を主成分とする耐候性樹脂層と、が順次配置される構成を含む4層以上の積層構造を有する太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記フッ素系樹脂が、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体であり、
前記耐候性樹脂がポリエチレンである請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂層の厚みが15μm以上75μm以下であり、
無延伸ポリプロピレン系樹脂層の厚みが20μm以上180μm以下であり、
前記第2中間層の総厚みが20μm以上180μm以下であり、
前記耐候性樹脂層の厚みが15μm以上180μm以下である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
前記積層構造の各層は、接着剤層を介して積層され、
前記接着剤層は、主剤と硬化剤とを含む2液タイプの接着剤で形成され、
前記主剤は、下記のポリウレタンジオール(A)と、脂肪族ポリカーボネートジオール(B)との混合物を含み、
前記ポリウレタンジオール(A)は、少なくとも脂肪族ポリカーボネートジオール(C)と、1,6へキサンジオール(D)と、イソホロンジイソシアネート(E)と、を原料とする反応物であり、
前記ポリウレタンジオール(A)の数平均分子量は、7000から13000である請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートと、裏面側の充填材層と、が積層工程によりあらかじめ一体化された、太陽電池モジュール用裏面一体化シート。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート、又は請求項5に記載の太陽電池モジュール用裏面一体化シートを使用した太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−74419(P2012−74419A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216142(P2010−216142)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】