説明

太陽電池モジュール用裏面保護シート

【課題】意匠性にかかる需要者の要求を満たすために、黒色の外観を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートでありながら、十分な耐候性及び耐久性を備え、太陽電池モジュールの発電効率の向上に充分に寄与しうる太陽電池モジュール用裏面保護シートを低コストで提供すること。
【解決手段】この太陽電池モジュール用裏面保護シートは、750nm以上1500nm以下の近赤外線を反射する反射層と、透明密着層とを含む複数の層を、暗色系の有機顔料等を含む黒色接着剤からなる黒色接着剤層を介して積層してなる裏面保護シートであり、該黒色接着剤層は、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過することを特徴とする。このような裏面保護シートは、意匠性、耐久性、発電効率、生産性において優れたものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用裏面保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。一般に、太陽電池を構成する太陽電池モジュールは、受光面側から、透明前面基板、封止材、太陽電池素子、封止材及び裏面保護シートが順に積層された構成であり、太陽光が上記太陽電池素子に入射することにより発電する機能を有している。
【0003】
上記太陽電池モジュールにおいては、通常、上記裏面保護シートを、白色顔料を含む材料を用いて形成した白色裏面保護シートとする。このようにすることで、上記透明前面基板から入射した光のうち太陽電池素子で吸収されず透過してきた光を反射し、再度太陽電池素子に光を吸収させることにより、太陽電池モジュールの発電効率を向上させることができる(特許文献1)。
【0004】
しかし、太陽電池モジュールの発電効率向上に対する要求は、更に強くなってきており、より発電効率向上に寄与する裏面保護シートが求められている。
【0005】
また、太陽電池モジュールにおいては、意匠性の観点から裏面保護シートの外観を黒色にしたものが求められる場合がある。外観を黒色にするための方法としては、カーボンブラックを含む黒色系樹脂層を最外層に設ける方法が一般的である。
【0006】
しかし、カーボンブラックは太陽光に含まれる近赤外線を吸収するため、使用時に太陽電池モジュールの温度を上昇させてしまい、その結果、太陽電池モジュールの発電効率は低下する。
【0007】
一方、太陽電池モジュールは、長期間に渡って屋外に設置されることが一般的であり、常時、強い紫外線、熱線、風雨等といった過酷な環境に曝されることになる。このため、太陽電池モジュール用裏面保護シートには、極めて高い耐候性や耐久性が求められる。
【0008】
そこで、黒色層における蓄熱を抑制し、更に、反射光を太陽電池素子に入射させて、発電効率を向上させるために、赤外線透過性を有する顔料を樹脂に練り込んだ黒色系樹脂層と赤外線反射性とを有する白色系樹脂層と、耐候性を有する裏面保護層等を備え、これらの複数の層を接着剤等で接着して製造する太陽電池モジュール用裏面保護シートが開発されている。(特許文献2)。
【0009】
このような太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいては、異なる特性を有する複数の層を積層して製造する必要があるため、各層間の接着性及び接着耐久性については、更なる改善が求められていた。また、必須工程、及び必須部材が多いことにより、従来の裏面保護シートよりも、コストが高くなることについても、更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−100788号公報
【特許文献2】特開2010−199555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、意匠性にかかる需要者の要求を満たすために、黒色の外観を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートでありながら、十分な耐候性及び耐久性を備え、太陽電池モジュールの発電効率の向上に充分に寄与しうる太陽電池モジュール用裏面保護シートを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、反射層を含む複数の層を、特定の樹脂と暗色系の有機顔料等を含む黒色接着剤からなる黒色接着剤層を介して積層することによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1)太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて最外層に配置され、全光線を透過する透明密着層と、750nm以上1500nm以下の近赤外線を反射する反射層とを、少なくとも含む複数の層を積層してなる太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、
前記複数の層の間に形成される接着層のうちの少なくとも一つの層が、黒色接着剤層であり、前記黒色接着剤層は、主剤樹脂と暗色系の有機顔料を含む黒色接着剤からなり、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過することを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0014】
(2) 前記透明密着層の太陽電池用裏面保護シートにおける内側の面に、前記黒色接着剤層が配置されている(1)に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0015】
(3) 前記有機顔料がオキサジン系顔料である(1)又は(2)に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0016】
(4) 前記反射層が、白色顔料を含む樹脂からなる白色樹脂層である(1)から(3)いずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0017】
(5) 前記反射層が、金属蒸着層を樹脂基材の上に積層してなるか又は金属箔からなる金属反射層である(1)から(3)いずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【0018】
(6) (1)から(5)いずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートを積層してなる太陽電池モジュール。
【0019】
(7) 薄膜系太陽電池素子を積層してなる請求項6に記載の太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、意匠性の要求に応えるための黒色接着剤層60を近赤外線を透過する黒色接着剤層としたため、太陽電池モジュールを高温にすることを抑制して発電効率の向上にも充分寄与しながら、同時に、高い耐久性を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートを従来より低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】太陽電池モジュ−ルについて、その層構成の一例を例示する断面の模式図である。
【図2】裏面保護シート6の第1実施形態の断面を模式的に示す図である。
【図3】裏面保護シート6の第2実施形態の断面を模式的に示す図である。
【図4】実施例、比較例及び、参考例の裏面保護シートの波長500nmから1800nmの光の反射率(%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート(本明細書において、単に「裏面保護シート」とも言う。)について詳細に説明する。本発明は以下に記載される実施形態に限定されるものではない。
【0023】
先ず、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートが使用される太陽電池モジュールについて説明する。図1は、太陽電池モジュ−ルについて、その層構成の一例を例示する断面の模式図である。太陽電池を構成する太陽電池モジュール1は、図1に示すように入射光7の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、裏面保護シート6が順に積層された構成である。これらを順次積層し、例えば真空熱ラミネート加工により一体化する。この際のラミネート温度は、130℃〜190℃の範囲内とすることが好ましい。また、ラミネート時間は、5〜60分の範囲内が好ましく、特に8〜40分の範囲内が好ましい。このようにして、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュ−ル1を製造することができる。
【0024】
[太陽電池モジュール用裏面保護シートの全体構造]
本発明の第1実施形態に係る裏面保護シートを、図2を用いて説明する。裏面保護シート6は、黒色接着剤層60と、反射層61と、透明密着層62とを有する。反射層61と透明密着層62は黒色接着剤層60を介して接着される。太陽電池モジュール1においては、反射層61がモジュールの最外層側に、透明密着層62がモジュールの内層側即ち、背面封止材層5の側に配置される。
【0025】
ここで、一般的に太陽電池モジュール用の封止材の多くは透明或いは半透明であるので、太陽電池モジュール1を透明前面基板2側から見た場合、太陽電池素子4が配置されていない隙間の部分については、透明密着層62を通して、黒色接着剤層60の色が見えることになる。また、太陽電池素子4については、表面が黒色又はそれに近い暗色である場合が多い。特に近年需要が増えている薄膜系の太陽電池素子については、ほとんどの製品においてその表面は黒色又はそれに近い暗色である。裏面保護シート6は、黒色接着剤層60が黒色又はそれに近い暗色であるため、多くの太陽電池モジュール、とりわけ、薄膜系の太陽電池素子を搭載した薄膜型太陽電池モジュールの外観を黒色又はそれに近い暗色で統一し、意匠性の面で好ましいものとすることができる。
【0026】
裏面保護シート6においては、透明密着層62側から太陽電池素子4に吸収されなかった太陽光が入射する。入射光に含まれる近赤外線の多くは、黒色接着剤層60に吸収されることなく透過するため、反射層61まで到達する。反射層61は近赤外線を反射するものであるため、反射層61まで到達した近赤外線の多くは、黒色接着剤層60に戻るように反射される。反射した近赤外線は、黒色接着剤層60を透過し、更に反射して太陽電池素子4に吸収される。黒色接着剤層60が近赤外線を吸収しないため、黒色接着剤層60での近赤外線吸収による太陽電池モジュール1の温度上昇が抑制される。この結果、太陽電池モジュール1の温度上昇による発電効率低下を防ぐことができる。
【0027】
また、裏面保護シート6においては、上述の通り、太陽電池素子に吸収される近赤外線量が増大する。この結果、太陽電池モジュールの発電効率を向上させることができる。
【0028】
なお、薄膜型太陽電池モジュールにおいては、必ずしもモジュール内の全ての構成要素の温度を低く抑制することが発電効率の向上に寄与するわけではなく、アニール効果との関係により、黒色又は暗色である太陽電池素子の表面温度については50℃〜70℃程度にまで高めることが好ましい。本発明の裏面保護シート6は、意匠性に係る要求を満たすためにその外観を黒色又はそれに近い暗色に限定しながらも、反射層61で反射した近赤外線を裏面保護シート6の内部において蓄熱することなく、太陽電池素子4へとロスなく吸収させることができるため、黒色又は暗色である薄膜系の太陽電池素子の表面温度を効率よく上記温度に高めることができる。そのような点からも、本発明の裏面保護シート6は、特に薄膜系の太陽電池モジュールに好適に用いることができる。
【0029】
<黒色接着剤層>
黒色接着剤層60は、主として反射層61と透明密着層62を接合するために設けられる接着層である。本実施形態において黒色接着剤層60は、反射層61の上面、又は、該上面に対向する透明密着層62の下面に塗布された黒色接着剤が積層後に硬化することによって形成される。後述する通り、本発明に係る裏面保護シートにおいて黒色接着剤層60の配置はこれに限定されるものではないが、黒色接着剤層60がこの位置に形成されることにより、裏面保護シートを意匠性の面において好ましいものとしやすいというメリットがある。
【0030】
黒色接着剤層60には、十分な接着性と接着耐久性が求められるが、本発明の裏面保護シート6においては、そのような特性に加えて、その外観が黒色又はそれに近い暗色であること即ち可視光線を吸収すること、かつ、近赤外線を透過する性質を有するものであることが重要である。
【0031】
ここで、近赤外線とは、赤外線領域の内、もっとも可視領域に近い領域であるがその詳しい波長域は文献によっても値が様々である。本発明における近赤外線とは750nm以上2200nm以下の波長域の電磁波を指す。その内、特に蓄熱を促進する波長は1000nm以上1500nm以下である。
【0032】
黒色接着剤層60を形成する黒色接着剤には、硬化した状態において波長750nm以上1500nm以下の光線を透過する特性を有する接着剤を使用する。なお、「波長750nm以上1500nm以下の光線を透過する」とは、黒色接着剤層60において波長750nm以上1500nm以下の光線を15%以上透過、好ましくは50%以上透過、更に好ましくは80%以上透過することを意味する。また、可視光線、紫外線の透過率は黒色に着色されている範疇にあれば特に規定されない。
【0033】
黒色接着剤層60に用いる黒色接着剤組成物は、好ましくは主剤と硬化剤からなる2液タイプであり、更に有機顔料を含み、塗布性、ハンドリング性の観点から、組成物としては適宜溶剤が含まれる。
【0034】
[主剤]
主剤成分は、ポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールとの混合物を含む、ポリウレタン/ポリカーボネートジオール系が好ましい。主剤を構成するポリウレタンジオール及び脂肪族ポリカーボネートジオールは、ともに水酸基を有するポリオールであり、イソシアネート基を有する硬化剤と反応して、接着剤層を構成するものである。本発明においては、主剤を特定のポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールを所定量配合した混合物とすることによって、接着剤層の接着性及び耐候性を向上させている。
【0035】
主剤成分のポリウレタンジオールは、ウレタン構造をその繰り返し単位とし、その両末端に水酸基を有するポリウレタンである。ポリウレタンジオールの数平均分子量は、7000〜13000であることが好ましい。7000以上であると、硬化剤との反応性が良いため好ましく、13000以下であると溶剤への溶解が向上するためで好ましい。
【0036】
ポリウレタンジオールの水酸基価は、10〜50mgKOH/gの範囲であることが好ましい。ポリウレタンジオールの水酸基価が10mgKOH/g以上であると、添加された硬化剤成分の多くが主剤成分に含まれる水酸基と反応することとなり好ましく、50mgKOH/g以下であると硬化剤との反応がより進行するため好ましい。
【0037】
ポリウレタンジオールは、接着剤の主剤成分として、その接着性及び耐候性を向上させるため、脂肪族ポリカーボネートジオールと、1,6へキサンジオールとイソホロンジイソシアネートを反応させて得られることを特徴としている。以下、ポリウレタンジオールの構成成分である脂肪族ポリカーボネートジオール、1,6へキサンジオール及びイソホロンジイソシアネートについて説明する。
【0038】
脂肪族ポリカーボネートジオールは、下記のイソホロンジイソシアネートと反応することができるポリウレタンジオールの構成成分である。脂肪族ポリカーボネートジオールは、カーボネート構造を繰り返し単位とし、その両末端に水酸基を有するものである。その両末端の水酸基は、イソシアネート基と硬化反応することができる。
【0039】
脂肪族ポリカーボネートジオールは、アルキレンカーボネートとジオールを原料に用いて製造する方法、ジアルキルカーボネートやジアリールカーボネートとジオールを用いて製造する方法等を用いて製造することができる。本発明において使用される脂肪族ポリカーボネートジオールは、主剤成分に必要とされる性能に応じて、上記製造方法を適宜選択することにより製造することができる。
【0040】
脂肪族ポリカーボネートジオールの製造に使用できるアルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート等が挙げられる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等が、ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0041】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等の側鎖を持たないジオール、2−メチル−1,8オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール等の側鎖を持ったジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の環状ジオールを挙げることができる。なお、1種類のジオールを使用してもよいし、2種類以上のジオールを原料とした共重合ポリカーボネートジオールでもよい。
【0042】
脂肪族ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、1000〜2000であることが好ましい。1000以上であると、ジイソシネートとの硬化反応が起こり易いため好ましく、2000以下であると接着剤成分である溶剤への溶解性が向上するため好ましい。ポリカーボネートジオールの製造においては、モノマーの反応性が高く、高分子量化し易いため、所定の数平均分子量を有するポリカーボネートジオールを得るためには、反応速度等の制御が必要となる。
【0043】
脂肪族ポリカーボネートジオールは、市販のものを使用することもできる。耐久性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性に優れた接着剤を得るため、例えば、数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)、数平均分子量2000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5662」)を好適に使用することができる。
【0044】
1,6へキサンジオールは、脂肪族ジオールであり、下記イソホロンジイソシアネートと反応してポリウレタンジオールを形成することができる。1,6へキサンジオールは、常温で液状を示すもので、接着剤成分である溶剤に溶解し得るものである。
【0045】
1,6へキサンジオールと共にポリエステルジオールを使用することができる。ポリエステルジオールは、1,6へキサンジオールと同様に水酸基を2つ以上有するポリオールであるが、その基本骨格に嵩高い芳香族環を有するカルボン酸とのエステルとすることもできることから、イソホロンジイソシアネートと反応して得られるポリウレタンジオールに優れた硬化速度と凝集力を付与することができる。ポリエステルジオールとしては、例えば、イソフタル酸を使用して製造した芳香族ポリエステルジオールを挙げることができる。なお、本発明においてポリエステルジオールは、定法に従って、所定のカルボン酸化合物とジオールの組み合わせを採択することによって製造することができる。
【0046】
ポリエステルジオールの数平均分子量は、3000〜4000であることが好ましい。ポリエステルジオールの数平均分子量が3000以上であると、硬化剤との反応性が良くなるため好ましく、ポリエステルジオールの数平均分子量が4000以下であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。
【0047】
イソホロンジイソシアネートは、ポリウレタンジオールの構成成分であり、脂環族系ポリイソシアネートである。イソホロンジイソシアネートは、上記脂肪族ポリカーボネートジオール、1,6へキサンジオール又はポリエステルジオールの水酸基と反応し、主剤成分であるポリウレタンジオールを形成する。
【0048】
以上説明した脂肪族ポリカーボネートジオールと、脂肪族ジオールとイソホロンジイソシアネートを溶剤に溶解させ、混合し加熱還流することにより反応させて、主剤成分であるポリウレタンジオールの溶液を得ることができる。上記反応においては、脂肪族ポリカーボネートジオールと脂肪族ジオールのそれぞれが有する両末端の水酸基がイソホロンジイソシアネートのイソシアネート基と反応し、ウレタン結合を形成して硬化する。
【0049】
主剤成分であるポリウレタンジオールを製造する反応系における1,6へキサンジオールの配合量は、脂肪族ポリカーボネートジオール100質量部に対し、5〜15質量部、好ましくは2〜8質量部であることが好ましい。1,6へキサンジオールの配合量が5質量部以上であると、耐久性のある接着剤成分を得ることができるため好ましく、15質量部以下であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。
【0050】
また、ポリウレタンジオールを製造する反応系におけるポリエステルジオールの配合量は、脂肪族ポリカーボネートジオール100質量部に対し、50〜100質量部であることが好ましい。ポリエステルジオールの配合量が50質量部以上であると、耐久性のある接着剤成分を得ることができるため好ましく、100質量部以下であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。
【0051】
なお、脂肪族ポリカーボネートジオールと、脂肪族ジオールとイソホロンジイソシアネートを反応させる場合に使用することができる溶剤としては、これらの化合物を溶解させることができ、溶剤と反応しないものであれば、特に制限されるものではないが、溶剤等との相溶性とラミネート時の加工性の観点より酢酸エチル等のカルボン酸エステル系の溶剤を挙げることができる。
【0052】
主剤成分である脂肪族ポリカーボネートジオールは、イソシアネート基を有する硬化剤成分と反応する。脂肪族ポリカーボネートジオールは、ポリウレタンジオールを製造する際に使用した上記の脂肪族ポリカーボネートジオールと同一のものを使用することができる。
【0053】
主剤成分は、上記説明したポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールとの混合物である。混合物中におけるポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールの質量比率は、ポリウレタンジオール100質量部に対して、脂肪族ポリカーボネートジオール10から20質量部であることが好ましい。脂肪族ポリカーボネートジオールの量が10質量部以上であると、密着力が適度に低下するため好ましく、20質量部以下であると、ポリウレタンジオールと硬化剤との反応が起こり易くなるため好ましい。
【0054】
なお、主剤には、主剤成分であるポリウレタンジオール、脂肪族ポリカーボネートジオールの他に、必要に応じて、粘着付与剤、安定化剤、充填剤、可塑剤、軟化点向上剤、触媒等を添加剤として混合することができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。安定化剤としては、酸化防止剤、紫外線防止剤等が挙げられる。充填剤としては、無機フィラー等が挙げられる。
【0055】
[硬化剤]
黒色接着剤の硬化剤は、ポリイソシアネート化合物を主成分とするものである。ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であり、このイソシアネート基が上記主剤のポリウレタンジオール化合物中の水酸基と反応することにより、ポリウレタンジオール化合物を架橋する。このようなポリイソシアネート化合物としては、上記主剤のポリウレタンジオール化合物を架橋することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」)、イソシアヌレート変性のイソホロンジイソシアネート(以下、「ヌレート変性IPDI」)等を例示することができる。これらのポリイソシアネート化合物の中でも、HDIとヌレート変性IPDIとを組み合わせた混合物が水酸基に対する反応性を向上させる観点より好ましい。なお、硬化剤をHDIとヌレート変性IPDIとの混合物とする場合、HDIとヌレート変性IPDIは、70:30〜50:50(質量比)の範囲で使用することが好ましい。
【0056】
[主剤と硬化剤の配合]
接着剤成分は、主剤と硬化剤を主成分とするものであるが、主剤と硬化剤の配合比率は、(ポリイソシアネート化合物由来のイソシアネート基)/(ポリウレタンジオール化合物由来の水酸基)の比が1.0〜3.5の範囲であることが好ましく、更に、1.2〜3.0の範囲にあることが好ましい。主剤成分のポリウレタンジオール化合物と硬化剤成分のポリイソシアネート化合物との配合比率が上記範囲にあることにより、各基材を強固に接合することができる接着剤を得ることができるため好ましい。
【0057】
[有機顔料]
意匠性を備えるために接着剤を黒色とするための着色材料としては暗色系の有機顔料を用いる。合成樹脂の着色用途としては、一般的には黒色の顔料として、カーボンブラック等の無機系顔料が広く用いられているが、本発明では、これを暗色系の有機顔料とすることにより、黒色接着剤層60を近赤外線を透過する層とすることができる。接着剤に添加する暗色系の有機顔料の具体例としては、オキサジン系、ピロール系、キナクリドン系、アゾ系、ペリレン系、ジオキサン系、イソインドリノン系、インダスレン系、キノフタロン系、ペリノン系、フタロシアニン系等が挙げられる。耐UV接着性の観点から、特にオキサジン系の有機顔料を好ましく用いることができる。また、暗色系の有機顔料を添加することにより上記のポリウレタン/ポリカーボネートジオール系の接着剤は、熱耐久性や耐UV特性等の接着耐久性が向上する。この接着耐久性向上の観点からも、オキサジン系の有機顔料を特に好ましく用いることができる。
【0058】
オキサジン系有機顔料としては、例えば特開2003−105217号公報に記載されているようなジオキサジン系化合物等が好適に使用でき特に限定されない。好ましい含有量が固形分質量比で10%から30%が程度である。
【0059】
黒色接着剤層には、無機系の黒色顔料を所定の範囲内の比率で補助的に添加することにより、黒色の色味を好ましい色味に調色することもできる。無機系の黒色顔料の代表的なものとしてカーボンブラックが挙げられる。無機系の黒色顔料は、主剤樹脂に対する質量比で3以上50質量%以下の範囲で添加してもよい。添加量がこの範囲内であれば、本発明における黒色接着剤層60の好ましいその他の物性を保持したまま、黒色接着剤層60の外観を最適な色味に適宜調色することができる。
【0060】
[シランカップリング剤等の添加剤]
上記の他、必要に応じてシランカップリング剤、粘着付与剤、安定化剤、充填剤、可塑剤、軟化点向上剤、触媒等を添加剤として混合することができる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメトキシシラン等のメタクリルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシランを挙げることができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。安定化剤としては、酸化防止剤、紫外線防止剤等が挙げられる。充填剤としては、無機フィラー等が挙げられる。
【0061】
なお、上記シランカップリング剤の添加量は、接着剤の主剤と硬化剤との合計100質量部に対し、1から3質量%のシランカップリング剤であることが好ましい、シランカップリング剤の添加量が1質量%以上であると密着力が良好となるため好ましく、3質量%以下であると耐久性が向上するため好ましい。
【0062】
[溶剤]
上記の黒色接着剤組成物として、良好な塗布性及びハンドリング適正を得るために、溶剤成分を添加することが好ましい。このような溶剤成分としては、上記酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等のカルボン酸エステルを挙げることができるがこれに限定されない。なお、既に述べたように上記接着剤は、主剤と硬化剤の2液剤として構成されるが、主剤で使用される溶剤成分と硬化剤で使用される溶剤成分はそれぞれ独立に選択され、同一でも異なっていてもよい。
【0063】
(黒色接着剤層の形成)
以上説明した黒色接着剤組成物を反射層61及び/又は透明密着層62上に塗布又は積層して乾燥硬化することにより黒色接着剤層60を形成することができる。塗布の方法としては、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、或いは、印刷法等によって塗布することができる。塗布量は3g/m以上7g/m以下とし、黒色接着剤層60の厚さは、2.0〜8.0μmの範囲であることが好ましい。この範囲であれば、太陽電池モジュール用シート積層部材に必要な接着強度等に応じて適宜変更すればよく、また、この範囲であることにより、近赤外線を十分に透過できるため、近赤外線を効率よく透過することできる。
【0064】
なお、黒色性接着剤組成物はこれに限らず、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。溶液型の接着剤とする場合は、全固形物中の質量比で、暗色系の有機顔料が、20〜60質量%、主剤樹脂が20〜60質量%となるように混合した固形物を溶剤に添加して、該固形物の全組成物中での質量比が10%以上60%以下となるように組成物を調整すればよい。
【0065】
<反射層>
反射層61は、白色顔料を含む樹脂シート又は白色顔料を含むコート層(塗布膜や印刷膜)を形成した樹脂シートからなり、近赤外線を反射する白色樹脂層である。反射層61は黒色接着剤層60を透過してきた近赤外線を反射することにより、太陽電池モジュール1の発電効率向上に寄与する。なお、本明細書では、樹脂をシート状に加工したものの名称として樹脂シートという用語を使用するが、この用語は、樹脂フィルムも含む概念として使用される。
【0066】
反射層61を構成する樹脂シートとしては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)等のフッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂等の樹脂シートを好ましく用いることができる。ここで、本実施形態では反射層61は太陽電池モジュール1における最外層に配置されるため、高い耐候性、バリア性、耐加水分解性が求められる。そのような観点から以上のうちでも、ETFEに代表されるフッ素系樹脂或いはPETに代表されるポリエステル系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0067】
反射層61は、近赤外線を反射する機能を有する必要がある。そのために、粒径が0.5μm以上1.5μm以下の白色顔料を含む白色樹脂層を用いることが好ましく、粒径が0.8μm以上1.2μm以下であることがより好ましい。また、反射層61においては、粒径が0.8μm以上1.2μm以下の白色顔料の粒子が、全白色顔料の粒子中の80質量%以上であることが好ましい。白色顔料の粒径及び配分比を上記の範囲にすることにより、白色樹脂層は近赤外線を効率よく反射するため、上記白色顔料は太陽電池モジュールの発電効率向上に寄与する。近赤外線を反射とは、例えば、およそ750nm以上2200nm以下の波長領域において、積分反射率が85%以上である機能を意味する。
【0068】
粒径が0.5μm以上1.5μm以下の白色顔料の代表例は酸化チタンであり、本発明においても、白色顔料として、酸化チタンを用いることが好ましい。ここで、酸化チタンには表面処理された酸化チタンも含まれる。例えば、酸化チタンの場合、その製造は、以下のようにして行うことができる。
【0069】
含水酸化チタンを原料とし、そこに酸化チタン分に対して酸化アルミニウム換算で0.1質量%以上0.5質量%以下のアルミニウム化合物と炭酸カリウム換算で0.1質量%以上0.5質量%以下のカリウム化合物、及び、酸化亜鉛換算で0.2質量%以上1.0質量%以下の亜鉛化合物を添加し、乾燥、焙焼することによって製造することができる。
【0070】
反射層61の製造方法については、例えば、樹脂シート上に白色顔料を含むコート層を形成する方法、樹脂シート中に白色顔料を練り込む方法が挙げられる。いずれも、特に限定はなく従来公知の方法により製造することができる。
【0071】
樹脂シート上に白色顔料を含むコート層(塗布膜や印刷膜)を形成する場合は、通常の塗料用ないしインキ用ビヒクルを主成分とし、これに、白色顔料を添加し、更に、必要ならば、紫外線吸収剤、架橋剤、その他の添加剤を任意に添加し、塗料ないしインキ組成物を調整し、基材フィルムの表面に、通常のコ−ティング法或いは印刷法等を用いて塗布ないし印刷し、その塗布膜或いは印刷膜を形成することができる。
【0072】
樹脂シート中に白色顔料を練り込む場合は、樹脂シートを構成する樹脂を主成分とし、これに、白色顔料を添加し、更に、必要ならば、その他等の添加剤を任意に添加し、樹脂組成物を調整し、例えば、押し出し法、Tダイ法等のフィルム成形法により、フィルムないしシートを製造し、白色顔料を練り込み加工してなるシートを製造することができる。
【0073】
<透明密着層>
透明密着層62は、エチレン−酢酸ビニルアルコール共重合体樹脂(EVA樹脂)、又はポリエチレン等のポリオレフィンを使用した背面封止材層5と、裏面保護シート6との接着性を向上させる機能を有する。また、透明密着層62には、反射層61で反射された近赤外線を透過するものであること、また、意匠性の要請より透明若しくは半透明であることが求められる。このような観点から透明密着層62には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。これらの樹脂のなかでも、とりわけ透明性が高く外観上の濁りが少なく意匠性の面で優れるPETを、特に好ましく用いることができる。なお、「全光線を透過」とは、全光線透過率が80%以上である。
【0074】
<その他の層>
本発明の裏面保護シート6には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の層を設けてもよい。例えば、上記の反射層61の更に外側にフッ素系樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる耐候層(図示せず)を更に設けてもよい。この場合は意匠性向上のために耐候層を黒色としてもよい。或いは、反射層61と透明密着層62の間に、例えば裏面保護シート6の強度を増すための他の透明な補強層(図示せず)を設けてもよい。
【0075】
裏面保護シートにその他の層を設ける場合には、各層を接着するための接着層が複数の位置に形成される場合がある。このとき透明密着層62と黒色接着剤層60の間に配置される各層が透明であれば、複数の接着層のうち、反射層61よりも透明密着層側にある任意の接着層を黒色接着剤層60とすることにより、外観を黒色としつつ、十分な耐候性及び耐久性を備え、太陽電池モジュールの発電効率の向上に充分に寄与しうる裏面保護シートとすることができる。このような裏面保護シートも本発明の範囲である。
【0076】
また、例えば、近赤外線を反射する反射層と黒色顔料を含有する樹脂からなる黒色層を積層してなる裏面保護シートにおいても、そのような黒色層と他の層との接着剤による貼り合わせが必要であり接着層が設けられる場合が多い。このような裏面保護シートにおいても、着色機能を接着層に付与することで、容易に黒色層の色味の濃淡調整が可能となるメリットがある。本願発明の構成要件を満たす限りこのような裏面保護シートも本発明の範囲である。
【0077】
<太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法>
裏面保護シート6は、反射層61と透明密着層62の間に黒色接着剤層60を設けて、ドライラミネート加工により製造することができる。なお、その他の層を設けることにより、接着剤層が複数の層となる場合にも、同様の方法で各層を密着させて積層することができる。
【0078】
[太陽電池モジュール用裏面保護シートの他の実施形態]
本発明の第2実施形態に係る裏面保護シート6aを、図3を用いて説明する。裏面保護シート6aは、黒色接着剤層60と、透明密着層62とを有する点で、第1実施形態に係る裏面保護シート6と同様の構成を備える。ただし、第2実施形態に係る裏面保護シート6aにおいては、反射層が、反射層基材612上に金属蒸着膜611を形成してなる金属反射層61aである点において裏面保護シート6と異なる。
【0079】
裏面保護シート6aにおいては、第1の実施形態における反射層61を金属反射層61aとすることにより、近赤外線の反射率を更に向上させて、太陽電池モジュール1の発電効率の向上に寄与することが出来る。また、金属反射層61aは、高い耐久性を有し、かつ、水分、酸素等の太陽電池モジュール1内への侵入を防止する防湿性にも優れるため、太陽電池モジュール1の長期的な性能劣化を最小限に抑えることもできる。
【0080】
反射層基材612の表面に金属蒸着膜611を形成する方法は、特に制限されるものではなく、公知の蒸着方法を使用することができる。このような蒸着方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法やプラズマ化学気相法、熱化学気相法、光化学気相法等の化学気相成長法が挙げられる。
【0081】
金属蒸着膜611としては、金属酸化物を蒸着して形成された薄膜であれば特に制限されるものではない。金属酸化物の金属としては、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等が例示される。これらの中でも、特に珪素、アルミニウム、の金属が好ましい。特に好ましい金属酸化物はシリカアルミナである。
【0082】
金属蒸着膜611の厚さは、特に制限されるものではないが、5〜100nmであることが好ましく、10〜60nmであることが好ましい。金属蒸着膜611の厚さが5nm以上であることにより、十分な防湿性や耐候性を付与することができ、金属蒸着膜611の厚さが100nm以下であることにより、金属蒸着膜611自体の割れやクラッキングの発生を抑制することができるため好ましい。
【0083】
金属反射層61aは金属箔であってもよい。金属反射層61aとして金属箔を用いる場合は、アルミニウム箔を好適に用いることができる。アルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは20〜40μm程度とすることが好ましい。厚みが上記範囲未満であると積層時に皺が発生する等の不都合を生じるおそれがあるため好ましくなく、一方、上記範囲を超えても反射性能、防湿性は向上せず、コストが高くなるため好ましくない。なお、このように金属反射層61aを金属箔とする場合は、金属反射層61aの外層側に、例えば耐候性PETからなる耐候層(図示せず)を更に設けることによって裏面保護シート6aに、より好ましい耐候性を付与することができる。
【0084】
裏面保護シート6aにおいては、金属反射層61aと透明密着層62の間に、黒色接着剤層60及び接着層60aを介して、中間層64を積層することが好ましい。中間層64は、主に強度確保及びコーティング部の負担を軽減する目的で配置される層である。
【0085】
中間層64に使用することができる材料としては、適切な強度と、金属反射層61a及び透明密着層62との間で両層に対して高い密着性を有するものであればよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等の樹脂を例示することができる。中間層64の製造は従来公知の成膜方法を用いて行うことができる。中間層64の厚みとしては、特に制限されるものではないが、12〜250μmが好ましい。12μm以上であると、必要な機械強度を得ることが出来るため好ましく、250μm以下であると加工適性が向上し好ましい。
【0086】
本発明の第2実施形態に係る裏面保護シートは、金属反射層での近赤外線の高い反射率と、黒色接着剤層60の近赤外線の高い透過率の相乗効果により、太陽電池モジュールの発電効率が更に向上する。
【0087】
また、反射層が金属反射層61aである第2実施形態に係る裏面保護シート6aは、ガス、特に酸素及び水蒸気バリアー性に優れるため、特に、アモルファスシリコンやCIGS化合物系といった薄膜系の太陽電池素子を備える薄膜型太陽電池モジュールに好適に用いることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例、参考例、比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例等に限定されるものではない。
【0089】
<試験例1>
本発明に係る裏面保護シートの接着性、接着耐久性を評価するために、以下に示す方法で2種の接着剤を製造し、該接着剤を用いた接着性測定用試料を作成した。
【0090】
[黒色接着剤(接着剤1)]
[主剤]
窒素雰囲気下、攪拌機、窒素導入管を備えたフラスコに、エチレングリコール(32.3質量部)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(270.8質量部)、1、6−ヘキサンジオール(122.9質量部)、アジピン酸(228.1質量部)、イソフタル酸(664質量部)を加え、180℃から220℃にて窒素にてバブリングさせ、酸価2mgKOH/gまで反応させ、酢酸エチル(860質量部)を加え、ポリエステルジオールHの50%溶液を得た。得られた樹脂の水酸基価は、32mgKOH/gであり、数平均分子量は約3500であった。
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたフラスコに数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」以下、「PDC1000」と略す。)を100質量部、上記ポリエステルジオールH(50質量部)、1、6−ヘキサンジオール(2質量部)、イソホロンジイソシアネート(23.8質量部)、酢酸エチル(175.8質量部)を加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、ポリウレタンジオールの50%溶液を得た。得られた樹脂の水酸基価は、14mgKOH/gであり、数平均分子量は約8000であった。
上記のポリウレタンジオール100質量部と脂肪族ポリカーボネートジオール(B)(PDC1000)の15質量部を混合して主剤を調整した。
【0091】
[硬化剤]
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIアダクト:2官能)とイソシアヌレート変性のイソホロンジイソシアネート(ヌレート変性IPDI)の混合物を使用した。上記アダクト変性HDI及びヌレート変性IPDIの混合比(HDIアダクト)/(ヌレート変性IPDI)を6:4(質量比)とした。
有機顔料:ジオキサジン化合物
溶剤:酢酸エチル
上記主剤(固形分率50質量%)、上記硬化剤(固形分率10質量%)、上記有機顔料(固形分率20質量%)を、上記溶剤に溶解させて、固形分塗布量2〜15g/m(硬化後膜厚2〜15μm)となるように調整して製造し、塗布、乾燥、硬化した。
[有機顔料を含まない接着剤(接着剤2)]
有機顔料を含有しないこと以外は接着剤1同様に調整して製造した。
[接着性測定用試料(実施例1〜3、参考例1〜3)]
以下の種類の樹脂シートを下記の表1に示す組み合わせにより接着剤1及び接着剤2で接着して、実施例1〜3及び参考例1〜3の接着性測定用試料を作成した。試料作成は、接着剤1又は2を、表1に示す樹脂シート1にグラビアコートし(塗布量は7g/m)し、厚み3μm(乾燥状態)の接着剤層を形成し、表1に示す樹脂シート2を積層し、45〜55℃、168時間のエージング処理をして加熱硬化させることにより行った。
樹脂シート1、2については、それぞれ以下の樹脂を使用した。
ETFE:25μm、商品名:25PW、旭硝子社製
PET:50〜250μm、商品名:ルミラーS10、東レ社製
PE:50〜100μm、商品名:三菱樹脂社製
【0092】
<評価1>
実施例1〜3、参考例1〜3の試料に対して下記の方法で接着性に関する試験を行い、測定結果により接着性を評価した。試験片はすべて15mm幅である。
(接着性試験)
JIS K6854−3に準拠し、T型はく離接着強さ試験方法によって、実施例1〜3、参考例1〜3の各試料の剥離強度(N)を初期値及び下記の各耐久試験実施後の値を測定することにより行った。各試料測定には、剥離試験装置(「株式会社エー・アンド・デイ」社製、商品名「TENSILON RTA−1150−H」)を用いて、剥離条件50mm/minで23℃にて測定を行い、3回の測定の平均値を採用した。
(プレッシャークッカー(P.C.T)試験)
JIS C60068−2−66に準拠し、温度120℃、湿度85%、圧力1.6気圧下で耐久性試験を96時間行った。試験後の試料を、恒温高湿槽により、5分間、温度120℃の環境下においた状態で上記接着性試験を実施した。
(ダンプヒート(D.H.)試験)
JIS C8917に準拠し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で各試料の耐久性試験を1000時間行った。試験後の試料を、恒温高湿槽により、5分間、温度120℃の環境下においた状態で上記接着性試験を実施した。
(高強度キセノン照射試験)
JIS C8917に準拠し、ブラックパネル温度(BPT)63℃、湿度50%の条件で各試料の耐久性試験を500時間行った。試験後の試料を、恒温高湿槽により、5分間、温度120℃の環境下においた状態で上記接着性試験を実施した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1から、本発明の裏面保護シートは、黒色の外観を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートでありながら、同様の構成で黒色の外観を有さない裏面保護シートと比較しても、実用上遜色のないと言える十分に高い耐候性及び耐久性を備えるものであることが分かる。特に熱耐久性については、接着剤層を構成する接着剤に黒色有機顔料を添加することにより、接着剤層の接着耐久性をより好ましい値へと向上できることが分かる。
【0095】
<試験例2>
本発明に係る裏面保護シートの近赤外線の反射性(透過性)を評価するために、実施例比較例及び参考例として、以下に示す方法で、反射性測定用資料を作製した。
[反射性測定用試料(実施例4、比較例1、参考例4)]
反射層となる樹脂基材として下記の樹脂を用いた。
反射層1:シリカ蒸着PET:12μm、商品名:テックバリアLX、三菱樹脂社製
黒色接着層を構成する接着剤として下記の接着剤を用いた。
黒色接着剤(接着剤1):試験例1で用いた接着剤1と同じものを用いた。
無機系顔料を含む黒色接着剤(接着剤3):接着剤1と同じ上記主剤、(配合接着剤全体に対する質量比で50質量%)、接着剤1と同じ上記硬化剤(同比10質量%)、カーボンブラック(同比40質量%)を、接着剤1と同じ上記溶剤に溶解させて、固形分塗布量2〜15g/m(硬化後膜厚2〜15μm)となるように調整して製造した。なお、カーボンブラックについては、接着剤1と同程度の色味の黒色とするための必要量として上記の量を添加した。
[実施例4]:上記反射層1からなるシート上に、接着剤1をグラビアコートし(塗布量は7g/m)し、厚み3μm(乾燥状態)の接着剤層を形成し、45〜55℃、168時間のエージング処理をして過熱硬化させることにより試料を作成した。
[参考例4]:上記反射層1からなる単層シートを試料とした。
[比較例1]:上記反射層1からなるシート上に、接着剤3をグラビアコートし(塗布量は7g/m)し、厚み3μm(乾燥状態)の接着剤層を形成し、45〜55℃、168時間のエージング処理をして加熱硬化させることにより試料を作成した。
[接着性測定用試料(実施例1〜3、参考例1〜3)]
15mm幅に切断した以下の種類の樹脂シートを下記の表1に示す組み合わせにより接着剤1及び接着剤2で接着して、実施例1〜3及び参考例1〜3の接着性測定用試料を作成した。試料作成は、接着剤1又は2を、表1に示す樹脂シート1にグラビアコートし(塗布量は7g/m)し、厚み3μm(乾燥状態)の接着剤層を形成し、表1に示す樹脂シート2を積層し、45〜55℃、168時間のエージング処理をして加熱硬化させることにより行った。
【0096】
<評価2>
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「U−4100」)を用いて、実施例4、参考例4及び比較例1の試料について光を入射したときの、波長500nmから1750nmの光の反射率(%)を評価した。尚、実施例4、比較例1については、黒色層側(接着剤を塗布した側)から、光を入射したものである。評価結果を図4に示した。
【0097】
図4から本発明の裏面保護シートは、暗色系の有機顔料を含む黒色接着剤層を備えることにより、黒色層における近赤外線透過率が向上し、よって、黒色の外観を有するものでありながら、従来の無機系黒色顔料を添加した場合と比較して、近赤外線の反射率が格段に高く、黒色の外観を有しない同様の構成からなる裏面保護シートと比較しても、特に近赤外線領域においては実用上の差異はない程度に十分に高い反射率を有することが分かる。
【0098】
以上より、本発明の裏面保護シートは、意匠性にかかる需要者の要求を満たすために、黒色の外観を有する裏面保護シートでありながら、十分な耐候性及び耐久性を備え、太陽電池モジュールの発電効率の向上に充分に寄与しうるものでありかつ、その構成上、部材及び工程が節約できるため生産性も高いものであることが分かる。
【符号の説明】
【0099】
1 太陽電池モジュール
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
60 黒色接着剤層
61 反射層
62 透明密着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて最外層に配置され、全光線を透過する透明密着層と、
750nm以上1500nm以下の近赤外線を反射する反射層とを、少なくとも含む複数の層を積層してなる太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、
前記複数の層の間に形成される接着層のうちの少なくとも一つの層が、黒色接着剤層であり、
前記黒色接着剤層は、主剤樹脂と暗色系の有機顔料を含む黒色接着剤からなり、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過することを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記透明密着層の太陽電池用裏面保護シートにおける内側の面に、前記黒色接着剤層が配置されている請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記有機顔料がオキサジン系顔料である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
前記反射層が、白色顔料を含む樹脂からなる白色樹脂層である請求項1から3いずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
前記反射層が、金属蒸着層を樹脂基材の上に積層してなるか又は金属箔からなる金属反射層である請求項1から3いずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートを積層してなる太陽電池モジュール。
【請求項7】
薄膜系太陽電池素子を積層してなる請求項6に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−216689(P2012−216689A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81110(P2011−81110)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】