説明

太陽電池モジュール

【課題】モジュール出力の低下を抑制し、信頼性を向上させる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールは、表面保護材と裏面保護材との間に、複数の太陽電池セルが配設され、太陽電池セルの電極同士をタブにより互いに電気的に接続して形成される。太陽電池モジュールは、電極10とタブ70の間に、複数の導電性粒子80を含む樹脂90からなる接着層を備える。導電性粒子80は、太陽電池セル20に平行な面における最大径Lよりも、太陽電池セルに垂直な面における最大厚みDの方が小さい扁平形状であり、導電性粒子80の厚み方向の両端は、それぞれ電極10とタブ70に接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護材と裏面保護材との間に、複数の太陽電池セルが配設され、太陽電池セルの電極同士をタブにより互いに電気的に接続してなる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルのバスバー電極同士が互いに銅箔等の導電材からなるタブにより電気的に接続され、ガラス、透光性プラスチックのなどの透光性を有する表面保護材と、PET(Poly Ethylene Terephtalate)等のフィルムからなる裏面保護材との間に、EVA等の透光性を有する封止材により封止されている。
【0003】
ここで、HIT太陽電池モジュールにおいて、銀ペーストからなるバスバー電極にタブをハンダ付けする場合、図5に示すように、バスバー電極10の表面、もしくはタブ70の太陽電池セル20側表面にフラックスを塗布し、タブ70をバスバー電極10表面に配置し、加熱する。尚、タブ70は、通常、銅箔等の金属製の材料からなり、この周囲に予めハンダがコーティングされている。又、HIT太陽電池モジュールでは、200℃程度の高温で樹脂を硬化させるタイプの銀ペーストが用いられている。このとき、バスバー電極10表面の酸化層を除去しながら、タブのハンダ部分と銀ペーストを合金化させることによりハンダ付けし、タブをバスバー電極に固定している。このようにハンダ付けを行った後は、太陽電池セル20側から、銀ペースト(バスバー電極10)、合金層100、ハンダ層及び銅箔(タブ70)が積層されている。
【0004】
この銀ペースト10と合金層100の界面には、銀ペースト10中の樹脂と同じ樹脂が介在していると考えられる。この界面の樹脂は、ハンダ付け時の高温の影響を受け、熱分解などを生じ、ダメージを受けてしまう。特に、ハンダから鉛が使用されなくなっていることに伴い、ハンダ付け時の温度が高くなる傾向にあり、加えられるダメージも大きくなっている。このような鉛フリー化に伴うバスバー電極の熱劣化を避ける方法として、ペースト樹脂に含まれる樹脂の、ガラス転移点の範囲とその量を規定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
尚、上記では、HIT太陽電池モジュールの構造について説明したが、通常の熱拡散法にて接合が形成される、結晶系の太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールでも同様であり、ハンダ付けを行った後は、太陽電池セル20側から、銀ペースト(バスバー電極10)、合金層100、ハンダ層及び銅箔(タブ70)が積層されている。又、熱拡散太陽電池モジュールでは、700℃程度の高温で樹脂を硬化させるタイプの銀ペーストが用いられている。
【特許文献1】特開2005−217184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の太陽電池モジュールにおいて、バスバー電極10とタブ70との界面において、熱ダメージを受けた樹脂が依然として残っており、又、フラックスの残渣などが溜まっているため、バスバー電極10とタブ70間の直列抵抗として作用し、モジュール出力の低下を引き起こす。
【0007】
更に、銀ペーストと合金層との界面では、銀ペーストと合金層との熱膨張係数の違いだけではなく、シリコンウェーハである太陽電池セルと銅箔の熱膨張係数の違いにより、温度サイクル試験中などに発生する応力が集中する。このため、モジュール出力の低下を引き起こし、モジュールの信頼性を低下させる要因となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、モジュール出力の低下を抑制し、信頼性を向上させる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、表面保護材と裏面保護材との間に、複数の太陽電池セルが配設され、太陽電池セルの電極同士をタブにより互いに電気的に接続してなる太陽電池モジュールであって、電極とタブの間に、複数の導電性粒子を含む樹脂からなる接着層を備え、導電性粒子は、太陽電池セルに平行な面における最大径よりも、太陽電池セルに垂直な面における最大厚みの方が小さい扁平形状であり、導電性粒子の厚み方向の両端は、それぞれ電極とタブに接する太陽電池モジュールであることを要旨とする。
【0010】
本発明の特徴に係る太陽電池モジュールによると、樹脂によりタブと電極間の接着強度を維持し、太陽電池セルとタブ間の電気的な接続を単一の導電性粒子よってとることができるため、モジュール出力の低下を抑制し、信頼性を向上させることができる。
【0011】
又、本発明の特徴に係る太陽電池モジュールにおいて、導電性粒子の硬度は、電極又はタブの硬度よりも小さいことが好ましい。
【0012】
この太陽電池モジュールによると、導電性粒子の厚み方向の両端が確実に電極及びタブに接することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、モジュール出力の低下を抑制し、信頼性を向上させる太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
(太陽電池モジュール)
本実施形態に係るシリコン系太陽電池セルは、図1に示すように、シリコンウェーハ20の両面に電極10、30を備える。電極10、30は銀ペーストからなり、少なくとも光入射側の電極は、くし型形状の集電極であり、セルの内部で発生したキャリアを収集し、ハンダ付けされたタブを通じて他のセルと直列に接続される。電極としては、バスバー電極及びフィンガー電極を有している。尚、図面では、両方の電極10、30がくし型形状を有した例を示している。
【0016】
熱拡散より接合が形成されている太陽電池モジュールでは、通常、銀粒、ガラスフリットなどが配合されたペーストを、500〜700℃の高温にて焼結させるセラミックスタイプの銀ペーストが、電極として用いられる。又、HIT太陽電池モジュールでは、樹脂溶剤中に銀粒が分散しており、これを200℃の低温にて硬化させる銀ペーストが、電極として用いられる。本発明は、熱拡散太陽電池モジュールにもHIT太陽電池モジュールにも適用可能である。
【0017】
次に、本実施形態に係る太陽電池モジュールは、図2に示すように、セル20表面の電極同士をタブ70により互いに、直列もしくは並列に電気的に接続することにより構成され、セル20は、樹脂からなる封止材50によって封止されている。又、セル20の光入射側には、表面保護材40が配置され、光入射側と反対側には、裏面保護材60が配置される。更に、太陽電池モジュールの強度を増し、架台に強固に取り付けるために、太陽電池モジュールの周りにAlフレームが取り付けられてもよい。
【0018】
表面保護材40としては、ガラスなどが適しており、裏面保護材60としては、Alなどの金属箔をPETフィルムなどで挟み込んだフィルムが用いられる。又、封止材50としては、EVA、EEA、PVB、シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等が用いられる。
【0019】
次に、本実施形態に係る太陽電池モジュールのセル20とタブ70との界面の拡大断面図を図3に示す。
【0020】
電極10とタブ70の間には、複数の導電性粒子80を含む樹脂90からなる接着層が配置される。導電性粒子80は、セル20に平行な面における最大径Lよりも、セル20に垂直な面における最大厚みDの方が小さい扁平形状である。又、導電性粒子80の厚み方向の両端は、電極10とタブ70に接する。導電性粒子80の硬度は、電極10又はタブ70の硬度よりも小さい。ここで、硬度の測定方法としては、JIS Z 2244に基づくビッカース硬度測定法が用いられる。
【0021】
導電性粒子80としては、例えば、Alが用いられるが、硬度がバスバー電極の銀ペーストやタブよりも小さいものであれば適用でき、例えば、銅、インジウム、鉛等でも構わない。
【0022】
尚、導電性粒子80の選択においては、樹脂90の硬化温度での硬度が特に重要となる。樹脂90の硬化温度において、電極及びタブよりも硬度の小さい導電性材料を、導電性粒子80に用いることができる。例えば導電性粒子80にスズを用いた場合には、電極材料として銀を用い、タブ材料に銅を用いることができる。又、導電性粒子80に銀を用いた場合には、電極やタブ材料として銅やタングステンを用いることができる。又、導電性粒子80としては、合金材料や、エポキシ、アクリル、ポリイミド、フェノール等からなる樹脂粒の表面を金属膜でコーティングしたものを用いることもできる。
【0023】
又、接着層の樹脂90としては、例えば、アクリル樹脂が挙げられる。その他、バスバー電極に用いられる高内部応力樹脂に対して比較的低内部応力である樹脂であれば、これに限られない。例えば、バスバー電極に用いられる樹脂よりも高分子量である樹脂系、エストラマーなどの構造柔軟性を持った樹脂、海島構造を持つ、例えば、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂の混合樹脂系などでも同様の効果が得られる。
【0024】
(作用及び効果)
従来、銀ペーストと合金層との熱膨張係数の違いだけではなく、シリコンウェーハである太陽電池セルと、タブに用いられる銅箔の熱膨張係数の違いにより、温度サイクル試験中などに発生する応力が集中、モジュール出力の低下を引き起こし、モジュールの信頼性を低下させていた。
【0025】
この現象は、硬度が高く柔軟性が低いセラミックタイプの銀ペーストを用いている、熱拡散法によって形成された太陽電池セルにおいて、より明らかである。但し、柔軟性に富む銀ペーストを用いたHIT太陽電池セルにおいても、上記の現象は生じている。これは、熱劣化した樹脂部においては、樹脂の柔軟性が低下してしまい、タブとセル(シリコンウェーハ)間の熱膨張による応力の緩和が十分に機能していないことによると考えられる。
【0026】
この信頼性の問題は、鉛フリー化に伴うタブ付け温度の上昇や、モジュール化時の抵抗ロス低減のために、タブの断面積を大きくした場合に、より明らかとなる。即ち、従来のハンダ付けを行う方法では、初期のモジュール出力及び温度サイクル耐性などの信頼性に問題がある。
【0027】
上記のような問題を解決するために、バスバー電極上に樹脂型のペーストをタブとセル間の接着層として塗布し、その上にタブを配置、硬化させることにより、セルとタブを電気的に接続させることは可能である。しかしながら、太陽電池セルの集電極に用いられる樹脂型の銀ペーストには、低抵抗であることが要求される。このようなペーストにおいては、銀粒同士をより強くひきつけあうことが求められるために、その内部応力が高くなってしまう。
【0028】
これは、一般的に樹脂型の導電性ペーストにおいては、導電性粒子間には、樹脂層が非常に薄く挟まっており、その樹脂層をトンネル電流が流れることにより、導電性が発現するためと考えられている。低抵抗のペーストにするためには、銀粒間の樹脂層の厚みを極力薄くする必要があるが、そのため、上記のように低抵抗のペーストにおいては、内部応力が高くなってしまうと考えられる。
【0029】
このような内部応力の高いペーストを接着層に用いた場合には、バスバー電極の断面積増により、ペースト自体の内部応力が更に高まってしまい、セルと銀ペースト間の接着力を低下させてしまうこともある。このようなバスバー電極とセル間の接着力の低下は、タブをハンダ付けした後のタブはがれ等を引き起こすことも考えられるため、使用しないことが望まれる。そのため、接着層に用いられるペーストの樹脂は、低内部抵抗を持っていることが必要となるが、その場合には、上記とは逆に比抵抗が高くなってしまうために、セルとタブ間に新たな抵抗が加わることになる。
【0030】
以上の理由から、バスバーとタブ間の接着層には、低内部応力の樹脂型ペーストを用いることが望ましいが、新たな抵抗の増加を回避するためには、バスバーとタブ間が単一の導通性粒子で導通をとられていることが必要となる。更に、上記のような場合において、バスバーとタブ間の抵抗を減らすためには、バスバーと導電性粒子、導電性粒子とタブの接触面積をできるだけ増やす必要がある。
【0031】
本実施形態に係る太陽電池モジュールは、バスバー電極とタブ間をハンダ付けで接続しないため、フラックスの残渣などの影響によるモジュールの初期の出力低下を抑止することができる。又、合金層での応力集中と疲労を緩和することが可能となるために、長期に渡る温度サイクル耐性を向上させることができる。具体的には、内部応力の低い樹脂により、タブとセル間の接着強度を維持し、セルとタブ間の電気的な接続を単一の導電性粒子によってとることにより、モジュール出力の低下を抑制し、信頼性を向上させることができる。更に、導電性粒子が両面から押しつぶされたような扁平形状をしており、セルの平行面での最大径よりも、垂直面の厚みのほうが小さいため、両面でそれぞれセル及びタブと接し、電気的な導通がとられることにより、両者の導通性に寄与する面積が増加し、出力の高いモジュールが得られる。
【0032】
又、タブとセルの接着は、導電性粒子を取り囲む樹脂によりなされているため、より強固な接着が可能となる。
【0033】
更に、導電性粒子の硬度は、電極又はタブの硬度よりも小さいため、導電性粒子の厚み方向の両端が確実に電極及びタブに接することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0035】
例えば、上記の実施形態では、集電極を銀ペーストとして説明したが、集電極の主成分はこれに限るものではない。
【0036】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明に係る薄膜系太陽電池モジュールについて、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができるものである。
【0038】
(実施例)
本発明の実施例に係る太陽電池セルとして、図3に示す太陽電池セルを以下のように作製した。実施例にかかる太陽電池セルは、HIT太陽電池セルである。
【0039】
まず、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などからなる樹脂中に、1μmφ程度の球状粉及び10μmφ程度のフレーク粉を混ぜた銀粒子を、20:80〜10:90wt%の割合で混合し、全体の0.5〜5%程度の有機溶剤によって粘度を調節したペーストを用意した。このペーストを、太陽電池セル20上にスクリーン印刷法でくし型形状にパターン形成し、200℃、1hの条件で硬化させてバスバー電極10を有する集電極を形成した。
【0040】
次に、接着層として、アクリル樹脂などからなる樹脂中に、20μmφ程度の球状のアルミ粒子を、95:5〜80:20wt%の割合で混合し、全体の0.5〜5%程度の有機溶剤によって粘度を調節したペーストを用意した。この接着層用ペーストの配合比は、上記の集電極形成用ペーストに対して、樹脂分が非常に多くなっているが、これはタブとセルの応力を緩和させるための樹脂層として機能させるためである。このペーストをバスバー電極10上に塗布し、その上にタブ70を配置した後、2MPaの圧力を加えた。その後、150℃、30分間の熱処理を行い、アクリル樹脂を硬化させた。
【0041】
アルミニウムは、銀やハンダなどよりも軟らかいために、上記の圧力にて扁平に変形し、セルと平行面での最大径はよりも、セルと垂直面での厚みのほうが小さくなる。実施例で得られた、サンプルを断面SEMで観察し、20μmの球の形状を観察したところ、セルと平行方向では30μm程度、セルと垂直方向には18μm程度に変形していた。このように、セルと平行面での最大径よりも、セルと垂直面での厚みのほうが小さくなっていることが確認できた。但し、バスバー電極10の上面は、メッシュ跡により最大で5μm程度の凹凸が生じている。このような場合には、導電性粒子がこの凹凸に沿うように変形するため、厚みとしては平均厚みを用いればよい。
【0042】
このように、タブ70を貼り付けたセルを用い、ガラス、EVA、セル、EVA、裏面保護材の順に積層させ、150℃での真空加熱を5分間行い、EVA樹脂を軟化させた。その後、大気圧での加熱圧着を5分間行い、EVA樹脂で太陽電池セルをモールドし、引き続き150℃の高温槽中に50分間保持して、EVA樹脂を架橋させて太陽電池モジュールとした。
【0043】
(比較例)
比較例に係る太陽電池セルとして、図4に示す太陽電池セルを作製した。比較例に係る太陽電池セルは、タブ70をバスバー電極10に貼り付けた後の加圧を行わずに、アクリル樹脂を硬化させたこと以外は、実施例に係る太陽電池セルの作製方法と同様である。加圧を行っていないため、比較例においては、導電性粒子が球状のままであった。
【0044】
(従来例)
従来例に係る太陽電池セルとして、図5に示す太陽電池セルを作製した。従来例に係る太陽電池セルは、タブ70をバスバー電極10にハンダ付けして接続した。ハンダ付けについては、タブ70のセル20側に有機酸系のフラックスを塗布し、乾燥させた後にバスバー電極10上に配置し、セル20及びタブ70に300℃程度の温風を吹きつけ、タブ70のハンダとバスバー電極10の銀ペーストを合金化させ、合金層100を形成した。
【0045】
(評価)
実施例、比較例、従来例に係る太陽電池モジュールにおいて、モジュールの出力と、タブを貼り付ける前(集電極を形成した直後)の出力を比較することにより、出力の相関を評価した。
【0046】
又、実施例、比較例、従来例に係る太陽電池モジュールにおいて、JIS C 8917に従い、温度サイクル試験を実施した。JIS試験では、−40℃〜90℃のサイクルを200サイクルと定められているが、更に長期間の信頼性を評価するために、400サイクルまで増やして試験を実施した。
【0047】
(結果)
上述したセル/モジュール出力相関と、温度サイクル試験の結果を表1に示す。
【表1】

【0048】
ここで、セル/モジュール出力相関の値は、モジュール化前後の抵抗成分に依存するパラメータであるFFに着目し、(モジュール化後のFF)/(集電極を形成した直後のセルのFF)の値を示している。又、温度サイクル試験の結果としては、(試験後のPmax)/(試験前のPmaxの値)を示している。
【0049】
表1に示すとおり、セル/モジュール出力相関を見ると、実施例>従来例>比較例の順になっている。これは、従来例では、バスバー電極とタブ間の合金層やフラックスの残渣などが抵抗成分として働いているためであると考えられる。又、比較例においては、導電性粒子が球状のままであるために、電気的な接続が点として行われているため、バスバー電極とタブ間の抵抗が増加したためであると考えられる。実施例においては、導電性粒子が圧力により扁平形状に変形しており、接触面積が増加し、接触抵抗が抵抗したものと考えられる。
【0050】
又、温度サイクル試験の結果(200サイクル)では、実施例、比較例において同等であり、従来例は、実施例、比較例よりも若干低い値を示している。これが400サイクルになると、更に差が大きくなる。即ち、実施例、比較例と従来例との差が0.5%から2.5%に拡大している。これは、タブとセル(シリコンウェーハ)の熱膨張係数の違いにより発生する応力が、応力緩和が可能な低内部応力である接着層と、応力緩和が不可能な合金層とに与える影響の違いによると考えられる。
【0051】
したがって、実施例に係る太陽電池モジュールによると、セル/モジュール出力相関と長期の温度サイクル試験の耐性を両立できることが分かった。
【0052】
(その他の実施例)
以上の説明は、HIT太陽電池セルにおける実施例であるが、熱拡散法により形成された結晶系セルにおいても同様である。即ち、セル(バスバー電極)とタブ間に、応力緩和が可能である接着層を設けた場合と、それが不可能な合金層を設けた場合とでは、温度サイクル耐性が大きく異なってしまう。更に、HIT太陽電池セルにおいて、集電極に用いている樹脂型の銀ペーストは、内部応力が高めであるものの、セラミックスのように焼結している銀ペーストに比べると内部応力が低めである。そのために、熱拡散法で作製される太陽電池セルよりはHIT太陽電池セルのほうが、温度サイクル耐性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る太陽電池セルの断面図である。
【図2】本実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。
【図3】本実施形態に係る太陽電池セルの拡大断面図である。
【図4】比較例に係る太陽電池セルの拡大断面図である。
【図5】従来例に係る太陽電池セルの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10…電極
20…太陽電池セル
30…電極
40…表面保護材
50…封止材
60…裏面保護材
70…タブ
80…導電性粒子
90…樹脂
100…合金層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護材と裏面保護材との間に、複数の太陽電池セルが配設され、前記太陽電池セルの電極同士をタブにより互いに電気的に接続してなる太陽電池モジュールであって、
前記電極と前記タブの間に、複数の導電性粒子を含む樹脂からなる接着層を備え、
前記導電性粒子は、前記太陽電池セルに平行な面における最大径よりも、前記太陽電池セルに垂直な面における最大厚みの方が小さい扁平形状であり、
前記導電性粒子の厚み方向の両端は、それぞれ前記電極と前記タブに接することを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記導電性粒子の硬度は、前記電極又は前記タブの硬度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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