説明

太陽電池モジュール

【課題】 この発明は、開口部からの水分の浸透による影響を少なくして太陽電池モジュールの信頼性を向上させるとともに、その歩留まりも向上させることにある。
【解決手段】 表面保護部材12と、裏面保護部材13と、配線部材16によって電気的接続された複数の太陽電池11と、表面保護部材12と裏面保護部材13との間に、複数の太陽電池を封止する封止部材14と、太陽電池11の出力を取り出すための出力配線20と、を備え、1枚の太陽電池11の面と対向する箇所の裏面保護部材13に、開口部13aが設けられ、出力配線20が開口部13aを経て裏面保護部材13の外部に取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンで無尽蔵に供給される太陽光を直接電気に変換することができるため、新しいエネルギー源として期待されている。
【0003】
一般に、太陽電池1枚当たりの出力は数W程度である。このため、家屋やビル等の電源として太陽電池を用いる場合には、複数の太陽電池を接続することにより出力を高めた太陽電池モジュールが用いられる。太陽電池モジュールは、複数の太陽電池がその表裏面の電極に電気的に接続された配線部材により直列及び/又は並列に接続された構造を有している。
【0004】
複数の太陽電池を配線部材で接続したものを、透光性部材からなる表面保護部材と裏面保護部材との間に配設し、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)などを主成分とする充填材で封止することで、耐候性や耐衝撃性を高め、屋外で実用的な電気出力を取り出すことができるように構成されている。
【0005】
図17は、従来の太陽電池モジュールを示す概略断面図である。太陽電池モジュールは、ガラスなどの透光性部材からなる表面保護部材301と、太陽電池303、透光性封止部材302、304、裏面保護部材305とを備える。
【0006】
この太陽電池モジュールは、表裏面に電極が形成された複数の太陽電池303をインナーリード線306で接続し、表面保護部材301と裏面保護部材305で挟み込んで、透光性封止部材302、304で封止して構成されている。
【0007】
太陽電池の出力を太陽電池モジュールの外部に取り出す必要があり、図17に示すように、裏面保護部材305と裏面側の封止部材304にそれぞれ開口部305b、304bを設け、この開口部305b、304bから太陽電池303に接続された出力配線(取り出し電極)307を外部に引き出している。この開口部305b部分には、図示はしないが端子ボックスが取り付けられ、開口部305bから取り出された出力配線307が端子ボックス内の端子と接続され、外部回路と接続する太陽電池モジュールが知られている(例えば、特許文献1の図4参照)。
【0008】
上記した特許文献1に記載した、太陽電池モジュールは、裏面封止部材304と裏面保護部材305のそれぞれに出力配線307の端部が露出するように、例えば、40mm×70mmの開口部304b、305bを設けるとともに、太陽電池303と出力配線307との間に、封止部材309を配置している。この封止部材309は、接着部材310と防湿部材311との積層体から構成されている。そして、裏面側封止部材304と裏面保護部材305の開口部304b、305bより十分大きい寸法に形成され、出力配線307と太陽電池303との間に配置されている。
【0009】
上述のように、各部材を配置し重ね合わせたものをラミネータによって、減圧下で全体を加熱しながら加圧し一体化することにより、裏面側封止部材304と裏面保護部材305の開口部304b、305bに出力配線307の端部が露出した状態で積層される。したがって、必要時に出力配線307の端部を折り曲げることによって、図17に示すように、きわめて容易に開口部304b、305bを通して、出力配線307を外部に取り出すことができる。
【0010】
そして、この開口部304b、305bは、接着部材310と防湿部材311との積層体から構成される封止部材309によって封止されるため、開口部からの水分などが太陽電池モジュール内部に浸透して、太陽電池モジュールの出力性能を損なうことなく、信頼性を保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−356349号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記特許文献1に記載のものにおいては、開口部304b、305bを設ける位置については考慮していない。
【0013】
開口部304b、305bから取り出される出力配線307は、接続される端子ボックスとの関係から出力配線307間のピッチ等を考慮する必要がある。また、開口部304b、305bから浸入する水分の影響による特性低下の対策が必要である。
【0014】
開口部を設ける位置も特性や歩留まりに影響すると考えられる。
【0015】
この発明は、開口部からの水分の浸透による影響を少なくして太陽電池モジュールの信頼性を向上させるとともに、その歩留まりも向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、表面保護部材と、裏面保護部材と、前記表面保護部材と裏面保護部材との間に配設され、配線部材によって電気的接続された複数の太陽電池と、前記表面保護部材と裏面保護部材との間に、前記複数の太陽電池を封止する封止部材と、太陽電池の出力を取り出すための出力配線と、を備えた太陽電池モジュールであって、1枚の太陽電池の面と対向する箇所の前記裏面保護部材に、開口部が設けられ、前記出力配線が前記開口部を経て裏面保護部材の外部に取り出されることを特徴とする。
【0017】
また、この発明は、前記開口部を覆うように封止フィルムが配設されるとともに、前記封止フィルムに、前記出力配線が挿入されるスリットが設けられ、前記出力配線が封止フィルムのスリットから前記開口部を経て裏面保護部材の外部に取り出されるように構成することができる。
【0018】
また、前記裏面保護部材の開口部を被覆して端子ボックスを裏面保護部材に取り付ければよい。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、裏面保護部材の開口部は1枚の太陽電池の裏面に対向して設けられているので、開口部の影響は1枚の太陽電池にのみに限定でき、特性低下の影響を最小限に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施形態に係る太陽電池モジュールの概略断面図である。
【図2】この発明に用いられる太陽電池の構成を示す概略断面図である。
【図3】太陽電池モジュールを製造する製造装置の概略構成図である。
【図4】この発明の実施形態のラミネート前の出力配線の取り出し部分を示す部分断面図である。
【図5】この発明の実施形態のラミネート後の出力配線の取り出し部分を示す部分断面図である。
【図6】この発明の実施形態の太陽電池モジュールの開口部部分を示す平面図である。
【図7】この発明の第1の実施形態の太陽電池モジュールの出力配線部分を裏面側から見た平面図である。
【図8】図7のA1−A1線断面図である。
【図9】図7のA2−A2線断面図である。
【図10】この発明の第2の実施形態の太陽電池モジュールの出力配線部分を裏面側から見た平面図である。
【図11】図10のB2−B2線断面図である。
【図12】図10のB1−B1線断面図である。
【図13】この発明の第3の実施形態の太陽電池モジュールの出力配線部分を裏面側から見た平面図である。
【図14】この発明の第4の実施形態の太陽電池モジュールの出力配線部分を裏面側から見た平面図である。
【図15】この発明の第5の実施形態の太陽電池モジュールの出力配線部分を裏面側から見た平面図である。
【図16】この発明の他の実施形態のラミネート後の出力配線の取り出し部分を示す部分断面図である。
【図17】従来の太陽電池モジュールを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0022】
この発明の実施形態に係る太陽電池モジュール10の概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、この実施形態に係る太陽電池モジュール10の側面拡大断面図である。
【0023】
太陽電池モジュール10は、太陽電池11、表面保護部材12、裏面保護部材13及び封止部材14を備える。太陽電池モジュール10は、表面保護部材12と裏面保護部材13との間に、複数の太陽電池11を封止することにより構成される。
【0024】
複数の太陽電池11は配線部材16によって互いに接続される。太陽電池11と配線部材16との接続は、半田または樹脂接着剤を用いて接続される。
【0025】
太陽電池11は、太陽光が入射する受光面と、受光面の反対側に設けられた裏面とを有する。太陽電池11の受光面上及び裏面上には電極が形成される。太陽電池11の構成については後述する。
【0026】
配線部材16は、太陽電池11の受光面上に形成された電極と、この太陽電池に隣接する他の太陽電池11の裏面上に形成された電極とに接続される。これにより、隣接する太陽電池11、11間は電気的に接続される。配線部材16は、薄板状の銅箔と、銅箔の表面にメッキされた半田とを含む。
【0027】
配線部材16と太陽電池11とを半田で接続させる場合には、配線部材16の表面にメッキされた半田を溶融させて、太陽電池11の電極と接続させる。
【0028】
また、樹脂接着剤を用いる場合には、配線部材16と太陽電池11との間に樹脂接着剤を配設し、樹脂接着剤を介して太陽電池11と配線部材16とが接続される。樹脂接着剤は、共晶半田の融点以下、即ち、約200℃以下の温度で硬化することが好ましい。樹脂接着剤としては、例えば、導電性接着フィルムが用いられる。導電性接着フィルムとしては、樹脂接着成分とその中に分散した導電性粒子とを少なくとも含んで構成されている。この内部に導電性粒子が分散された樹脂接着成分がポリイミドなどからなる基材フィルム上に設けられている。樹脂接着成分は熱硬化性樹脂を含有する組成物からなり、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いるか2種以上を組み合わせて用いられ、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0029】
導電性粒子としては、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子及びニッケル粒子などの金属粒子、或いは、金メッキ粒子、銅メッキ粒子及びニッケルメッキ粒子などの導電性又は絶縁性の核粒子の表面を金属層などの導電層で被覆してなる導電性粒子が用いられる。
【0030】
表面保護部材12は、封止部材14の受光面側に配置されており、太陽電池モジュール10の表面を保護する。表面保護部材12としては、透光性及び遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等を用いることができる。
【0031】
裏面保護部材13は、封止部材14の裏面側に配置されており、太陽電池モジュール10の背面を保護する。裏面保護部材13としては、PET(Polyethylene Terephthalate)等の樹脂フィルム、Al箔を樹脂フィルムでサンドイッチした構造を有する積層フィルムなどを用いることができる。この図1に示す実施形態においては、この裏面保護部材13は、PET等の樹脂フィルムで構成している。
【0032】
封止部材14は、表面保護部材12と裏面保護部材13との間で太陽電池11を封止する。封止部材14としては、EVA、EEA、PVB、シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等の透光性の樹脂を用いることができる。この実施形態では、EVA樹脂を用いている。
【0033】
なお、以上のような構成を有する太陽電池モジュール10の外周には、Al(アルミニウム)フレーム(図示しない)を取り付けることができる。
【0034】
配線部材16は、モジュール外部に出力を取り出す出力配線20と接続される。出力配線20は、太陽電池11からの電気出力を端子ボックス40の端子と接続されるもので、通常、厚さ0.1mm〜0.3mm程度、幅6mmの銅箔にその全面を半田コートしたものを所定の長さに切断し、配線部材16に半田付けされている。また、出力配線20の表面は、絶縁性フィルムによって被覆されている。
【0035】
裏面保護部材13には、出力配線20を取り出すための開口部13aが設けられている。この裏面保護部材13に設ける開口部13aは、後述するように、1枚の太陽電池11の面と対向する箇所に設けられている。また、裏面側の封止部材14も後述するように、出力配線20を取り出す開口部が設けられている。これら開口部は、例えば、40mm×70mmの矩形形状に形成されている。
【0036】
この実施形態は、これら開口部より十分大きな大きさの封止フィルム30を有する。この封止フィルム30には、後述するように、出力配線20が挿入されるスリット部が設けられている。このスリット部は、出力配線20の厚さと僅かに広い幅を有し、複数の出力配線20が挿入される長さを有している。この封止フィルム30のスリット部に出力配線20を挿入することで、出力配線20は、その間隔並びに長さなどを規定することができる。
【0037】
開口部13aを覆うように封止フィルム30を配置すると、出力配線20は、太陽電池モジュール10の裏面保護部材13から所定の長さ並びに間隔で取り出されることになる。そして、この封止フィルム30により開口部13aからの水分の浸入を抑制できる。
【0038】
裏面保護部材13の開口部13aを被覆するように、シリコーン樹脂などで端子ボックス40が取り付けられる。開口部13aから取り出された出力配線20が端子ボックス40内の端子と接続され、外部回路と接続される。
【0039】
次に、太陽電池11の構成について説明する。
【0040】
太陽電池11は、光電変換部、電極を備える。この電極は、例えば、フィンガー電極及びバスバー電極を備える。
【0041】
光電変換部は、太陽光を受けることによりキャリアを生成する。ここで、キャリアとは、太陽光が光電変換部に吸収されて生成される正孔と電子とをいう。光電変換部は、内部にn型領域とp型領域とを有しており、n型領域とp型領域との界面で半導体接合が形成される。光電変換部は、単結晶Si、多結晶Si等の結晶系半導体材料、GaAs、InP等の化合物半導体材料等の半導体材料などにより構成される半導体基板を用いて形成することができる。光電変換部は、一例として互いに逆導電型を有する単結晶シリコンと非晶質シリコン層との間に真性な非晶質シリコン層を介挿し、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改善した太陽電池が用いられる。
【0042】
フィンガー電極は、光電変換部からキャリアを収集する電極である。フィンガー電極は、光電変換部の受光面略全域にわたって複数本形成される。フィンガー電極は、樹脂材料をバインダーとし、銀粒子等の導電性粒子をフィラーとした樹脂型導電性ペーストを用いて形成することができる。なお、フィンガー電極は、光電変換部の受光面上及び裏面上において同様に形成される。
【0043】
バスバー電極は、複数本のフィンガー電極からキャリアを集電する電極である。バスバー電極は、フィンガー電極と交差するように形成される。バスバー電極は、樹脂材料をバインダーとし、フィンガー電極と同様に銀粒子等の導電性粒子をフィラーとした樹脂型導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0044】
ここで、バスバー電極の本数は、光電変換部の大きさなどを考慮して、適当な本数に設定することができる。
【0045】
次に、太陽電池10の構成の一例として、光電変換部が所謂HIT構造を有する場合について、図2を参照しながら説明する。図2は、太陽電池の構成を示す概略断面図である。
【0046】
図2に示すように、光電変換部120は、透光性導電膜114、p型非晶質シリコン層113、i型非晶質シリコン層112、n型単結晶シリコン基板110、i型非晶質シリコン層116、n型非晶質シリコン層117及び透光性導電膜118を備える。
【0047】
n型単結晶シリコン基板110の受光面側には、i型非晶質シリコン層112を介して、p型非晶質シリコン層113が形成される。p型非晶質シリコン層113の受光面側には、透光性導電膜114が形成される。一方、n型単結晶シリコン基板110の裏面側には、i型非晶質シリコン層116を介して、n型非晶質シリコン層117が形成される。n型非晶質シリコン層117の裏面側には、透光性導電膜118が形成される。
【0048】
フィンガー電極及びバスバー電極からなる電極115、119は、透光性導電膜114の受光面側及び透光性導電膜118の裏面側それぞれに形成される。
【0049】
出力配線20の太陽電池モジュールからの取り出しについて、図4及び図5を参照して説明する。図4は、この実施形態のラミネート前の出力配線の取り出し部分を示す部分断面図、図5はこの実施形態のラミネート後の出力配線の取り出し部分を示す部分断面図である。
【0050】
図4及び図5に示すように、裏面側封止部材14bと裏面保護部材13には、それぞれ開口部14c、13aが形成されている。これら開口部14c、13aを完全に覆うように、出力配線20が挿入されるスリット部30aを有する封止フィルム30が裏面封止部材14bと太陽電池11との間に配置されている。この封止フィルム30は、PETやPVF等の樹脂フィルムで構成されている。
【0051】
スリット部30aに出力配線20を挿入し、封止フィルム30が裏面保護部材13と太陽電池11との間に配設される。このスリット部30aは、出力配線20の厚さと僅かに広い幅を有し、複数の出力配線20が挿入される長さを有している。この封止フィルム30のスリット部30aに出力配線20を挿入することで、出力配線20は、その間隔並びに長さなどを規定することができる。
【0052】
開口部13a、14cを覆うように、封止フィルム30を配置すると、出力配線20は、太陽電池モジュール10の裏面保護部材13から所定の長さ並びに間隔で取り出されることになる。
【0053】
この封止フィルム30は、予め、裏面側封止部材14bの開口部14cの箇所を覆うように、所定の場所に仮止めし、その後、スリット部30aに出力配線20を挿入するように構成する。このように構成することにより、モジュール化する際の作業時に、封止フィルム30が移動することが無くなり、組み立て作業性が向上する。
【0054】
図5に示すように、ラミネート後は、開口部13a、14cの箇所には、封止フィルム30が位置し、これら開口部13a、14c内にも封止フィルム30が案内され、開口部13a、14cを水密的に封止される。そして、裏面保護部材13の開口部13aの箇所に端子ボックス40の底部40aがシリコーン樹脂50などにより接着される。端子ボックス40の底部40aには、出力配線20が挿入される開口部40cが設けられている。この開口部40cは、開口部13a、14cの大きさより小さく形成されている。また、底部40aは、開口部13a、14cを完全に被覆するように、開口部13a、14cより大きく形成している。すなわち、開口部13a、14cの大きさは、端子ボックス40の開口部40cより大きく、端子ボックス40より小さい。
【0055】
開口部13a、14c、開口部40cを経て取り出された出力配線20は、端子ボックス40内の端子台40bに接続される。そして、図示はしないが端子ボックス40の上蓋を底部40aに取り付けて太陽電池モジュール10が構成される。
【0056】
次に、上記太陽電池モジュール10の製造方法について、図3を参照して説明する。図3は太陽電池モジュール10を製造する製造装置の概略構成図である。この装置は、下側ハウジング200とこの下側ハウジングに気密に結合される上側ハウジング202とを備える。下側ハウジング200の上部開口部には、略面一の状態でヒータプレート201が配置される。この上側ハウジング202には、下側ハウジング200の開口部に対向する側にゴム製のダイアフラム203が設けられている。下側ハウジング200と上側ハウジング202の周縁部には、両者を結合した時の気密状態を保持するためのパッキン204が全周に渡って取り付けられている。
【0057】
更に、下側ハウジング200には、図示はしないが真空ポンプが接続されている。
【0058】
そして、太陽電池モジュール10を製造するにあたっては、まず、製造装置のヒータプレート201上に、下側から表面保護部材12、表面側のEVAシート14a(封止部材)、配線部材16により接続された複数の太陽電池セル11…、開口部14cの箇所に封止フィルム30、EVAシート14b(封止部材)、裏面保護部材13をこの順序で積み重ねる。封止フィルム30のスリット部30aには、出力配線20が挿入され、出力配線20が所定の位置に位置決めされて、仮保持されている。
【0059】
上記のように、ヒータプレート201上に各構成部品を積み合わせた後、下側ハウジング200と上側ハウジング202とを結合させる。その後、下側ハウジング200を図示しない真空ポンプにより排気する。この時ヒータプレート201を約130℃〜200℃に加熱する。この状態で、ダイアフラム203がヒータプレート201上に載置された太陽電池モジュール10側に押し付けられる。そして、EVAシート14a、14bがゲル状化し、所定のEVA層(封止層)14を構成する。これにより、太陽電池セル11…が表面側の表面保護部材12と裏面側の裏面保護部材13との間に挟まれた状態でEVA層(封止層)14内に封止される。そして、EVAシート14bの開口部14cには、封止フィルム30の一部が入り込んで一体化され、開口部14cが閉塞される。
【0060】
その後、裏面保護部材13の開口部13aを閉塞するようにして、端子ボックス40がシリコーン樹脂50により裏面保護部材13に取り付けられる。
【0061】
図6は、この実施形態の太陽電池モジュールの出力配線と開口部部分を示す平面図、図7は、この実施形態の太陽電池モジュールの出力配線20〜20部分を裏面側から見た平面図である。
【0062】
図6及び図7に示すように、この発明の実施形態においては、この裏面保護部材13に設ける開口部13aは、1枚の太陽電池11の面と対向する箇所に設けられている。裏面保護部材13の開口部13aが臨む箇所には封止フィルム30が配設されている。そして、封止フィルム30により、開口部13aの部分からの水分浸入を抑制する。また、開口部13aから浸入した水分は、1枚の太陽電池11の裏面側に到達する。このため、水分による太陽電池11の特性低下も1枚の太陽電池11に限られ、太陽電池モジュール10の特性低下への影響を最小限に留めることができる。
【0063】
また、太陽電池11、11間に開口部13aが臨まないように形成されているので、太陽電池11、11間から表面側への水分の浸入もさらに抑制できる。特に、表面保護部材12としてガラスを用い、太陽電池11として所謂HIT構造のものを用いた場合、水分による表面側のガラスからの不純物により、非晶質層の特性が低下する。この実施形態のように、1枚の太陽電池11の裏面に対向するように、開口部13aを設けることで、太陽電池11、11間の隙間から表面側へ水分が回り込むことが抑制され、太陽電池11の特性低下を防ぐことができる。
【0064】
封止フィルム30のスリット30aを介して開口部13aから導出される出力配線20は、この実施形態においては、4本ある。このため、端子ボックス40の端子台には、4つの端子が設けられ、それぞれ該当する出力配線20〜20が接続される。端子ボックス40の端子間には逆流防止ダイオードが接続されている。これら出力配線20〜20には、他の出力配線と絶縁する絶縁材20aが取り付けられている。
【0065】
この図7においては、6個のストリングを直列に接続している。一番左端のストリングの出力配線20が封止フィルム30のスリット部30aから引き出される。左から2番目と3番目のストリングが出力線20で接続され、この出力線20が封止フィルム30のスリット部30aから引き出される。
【0066】
また、一番右端のストリングの出力配線20が、封止フィルム30のスリット部30aから引き出される。そして、右から2番目と3番目のストリングが出力線20で接続され、この出力線20が封止フィルムのスリット部30aから引き出される。
【0067】
このようにして、6個のストリングから出力配線20〜20として裏面保護部材13の開口部13aから引き出され、そして、端子ボックス40の所定の端子に接続されて太陽電池モジュールが構成されている。通常、出力配線20は、順番に上に重ねて接続しいくため、全体の厚みが増加していくことになる。厚みが増していった場合、ラミネート時に太陽電池モジュールの裏面保護部材13を突き破ることが危惧される。このため、全体の厚みを薄くする方が好ましい。
【0068】
図8は、図7のA1−A1線断面図、図9は図7のA2−A2線断面図であり、出力配線の端子部分の断面図である。このように、太陽電池11の裏面側に接続している配線部材16に出力配線20を重ねて行くと、厚みは厚くなる。図9において、重なる出力配線間には絶縁シート20bが挿入されている。
【0069】
そこで、厚みを薄くするように、出力配線20の接続を考慮したものを図10ないし図12に示す。
【0070】
この接続方法は、太陽電池11の受光面側に接続している配線部材16に次の出力配線用の配線部材を接続する。図10は、このように配線したこの発明の第2の実施形態の太陽電池モジュールの出力配線20〜20部分を裏面側から見た平面図、図11は、図10のB2−B2線断面図、図12は図10のB1−B1線断面図であり、出力配線の端子部分の断面図である。図8および図11と、図9及び図12から明らかなように、太陽電池11の受光面側に接続している配線部材16に次の出力配線用の配線部材を接続したものにおいては、その厚みを薄くすることができる。
【0071】
図13は、この発明の第3の実施形態を示す配線した太陽電池モジュールの出力配線20〜20部分を裏面側から見た平面図である。この図に示す実施形態は、配線部材16、16の間に、出力配線20〜20を配置するように構成したものである。このように構成することにより、端子ボックス40を小型化することができる。
【0072】
図14は、この発明の第4の実施形態を示す配線した太陽電池モジュールの出力配線20〜20部分を裏面側から見た平面図である。この図に示す実施形態は、配線部材16,16の間に、3本の出力配線20〜20を配置し、1本の出力配線20を配線部材16と太陽電池11の端部との間に配置するように構成したものである。このように構成することにより、配線部材16と出力配線20との間に距離が取れるため、出力配線20の接続が少しずれた場合でも配線部材16と出力配線20とが重なることが低減できる。出力配線20と配線部材11とが重なると、ラミネート時等に太陽電池11の割れが発生しやすくなるが、この実施形態ではその懸念を解消できる。
【0073】
図15は、この発明の第5の実施形態を示す配線した太陽電池モジュールの出力配線20〜20部分を裏面側から見た平面図である。この図に示す実施形態は、配線部材16,16の間に、2本の出力配線20〜20を配置し、2本の出力配線20、20をそれぞれ配線部材16と太陽電池11の端部との間に配置するように構成したものである。このように構成することにより、第4の実施形態よりさらに、配線部材16と出力配線20との間に距離が取れる。このため、出力配線20の接続が少しずれた場合でも配線部材16と出力配線20とが重なることが低減できる。出力配線20と配線部材11とが重なると、ラミネート時等に太陽電池11の割れが発生しやすくなるが、この実施形態ではその懸念を解消できる。
【0074】
図16はこの発明の他の実施形態を示す概略断面図である。
【0075】
この図16に示す実施形態は、裏面保護部材13からの水分の透過量をより抑制するために、PETの樹脂フィルム13d、13dでAl箔13eをサンドイッチした構造を有する積層フィルムを用いたものである。このような積層フィルムを用いた場合、裏面保護部材13の開口部13aを出力配線20が接触しないように大きく開口している。この開口部13aも1枚の太陽電池11の面と対向する箇所に設けられている。そして、この開口部13aは封止フィルム30で覆われているので、開口部13aの下には、封止フィルム30が存在し、水分の浸入を抑制している。そして、開口部13aの中心に位置する所に出力配線20が挿入されるスリット部30aを設けている。この結果、スリット部30aを通して案内される出力配線20は、開口部13aの端部とは確実に隔離され、裏面保護部材13のAl箔13eとの絶縁性が確保される。
【0076】
尚、上記した各実施形態においては、開口部13aをスリット部30aを有する封止フィルム30で覆うように構成しているが、封止フィルム30を無くしてもよい。この封止フィルム30を無くすと、水分の浸入抑制効果は落ちるが、開口部13aは1枚の太陽電池11の裏面に対向して設けられているので、開口部13aの影響は1枚の太陽電池11にのみに限定でき、太陽電池モジュール10の特性低下の影響を最小限に留めることができる。
【0077】
また、上記した封止フィルム30として、樹脂フィルムと接着部材の積層フィルムを用いることができる。この場合、裏面側封止部材14bを封止フィルム30と太陽電池11との間に配置するように構成する。
【0078】
また、この発明は、薄膜シリコンや化合物半導体を用いた薄膜太陽電池モジュールにも適用することができる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
10 太陽電池モジュール、11 太陽電池、12 表面保護部材、13 裏面保護部材、13a 開口部、14 封止部材、16 配線部材、30 封止フィルム、30a スリット部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護部材と、裏面保護部材と、前記表面保護部材と裏面保護部材との間に配設され、配線部材によって電気的接続された複数の太陽電池と、前記表面保護部材と裏面保護部材との間に、前記複数の太陽電池を封止する封止部材と、太陽電池の出力を取り出すための出力配線と、を備えた太陽電池モジュールであって、
1枚の太陽電池の面と対向する箇所の前記裏面保護部材に、開口部が設けられ、前記出力配線が前記開口部を経て裏面保護部材の外部に取り出されることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記開口部を覆うように封止フィルムが配設されるとともに、前記封止フィルムに、前記出力配線が挿入されるスリットが設けられ、前記出力配線が封止フィルムのスリットから前記開口部を経て裏面保護部材の外部に取り出されることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記裏面保護部材の開口部を被覆して端子ボックスが前記裏面保護部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−54662(P2011−54662A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200470(P2009−200470)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】