説明

太陽電池封止用樹脂シートの製造方法

【課題】有機過酸化物、架橋助剤、シランカップリング剤などの添加剤が均一に含浸されて、均一に架橋することができ、耐ブロッキング性に優れ、ガラスとの優れた密着性を保有し、更にはフィッシュアイのない太陽電池封止用樹脂シートの製造方法を提供する。
【解決手段】有機過酸化物を含有する液体を、リボンブレンダー、V型ブレンダーおよびナウター型ミキサーから選ばれる混合機内に供給して、エチレン共重合体のペレットと上記混合機内で撹拌および混合することによって、上記添加剤などを含浸させたペレットを製造し;次に、このペレットを用いて太陽電池封止用樹脂シートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池素子を封止するために用いられる太陽電池封止用樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギーとして太陽光発電が脚光を浴び、太陽光発電用の太陽電池モジュールの開発が盛んに進められている。太陽電池モジュールとしては、シリコン系の素子を利用したものや、化合物半導体素子を利用したものなど様々なものが市場に登場しているが、その構造例としては、結晶シリコン系においては、一般的に、保護ガラス、太陽電池封止用樹脂シート、太陽電池素子、太陽電池封止用樹脂シート、バックシートという構成になっている。太陽電池モジュールの製造の際、上記各層を積層した状態で太陽電池封止用樹脂シートを加熱することによって、太陽電池封止用樹脂シート中の樹脂が溶融して太陽電池素子を封止し、さらには保護ガラスやバックシートなどと接着する。
【0003】
一般的な太陽電池封止用樹脂シートには、透明性、柔軟性、加工性、耐久性に優れるエチレン・酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう)が主成分として使用されている。
【0004】
上記のようなEVA樹脂を用いた太陽電池封止用樹脂シートを製造する方法としては、例えば、有機過酸化物、架橋助剤、及びシランカップリング剤とEVA樹脂とを混練機で60℃に加熱しながら混練後、それにつづく練りロールにより均一に混練し、次いでシート成形を実施するカレンダー成形方法(特許文献1)や、例えば、予めマスターバッチを製造し、マスターバッチとを共に押出機にて溶融混練しながら成形する方法(特許文献2)が開示されている。しかしながら、カレンダー成形方法では樹脂のメルトフローレートがある程度低い樹脂しか使用できないという制限があり、更には設備が大掛かりであり、小ロット生産には不向きであるという欠点が存在する。また、紫外線吸収剤などの添加剤が滑剤として働く場合があり、その場合、最悪、ロールにうまく巻きつかなくなる懸念がある。一方、マスターバッチに前記有機過酸化物を含有させて製造する場合、マスターバッチ製造時も含め、複数回に亘って、有機過酸化物が押出機内での加熱や混練に伴う摩擦熱にさらされるため、有機過酸化物の分解を常に考慮する必要がある。EVA樹脂内で有機過酸化物が分解するとEVA樹脂の架橋が進行してしまい、樹脂シート押出後のシート厚みが不均一になったり、あるいはシート内にゲルやフィッシュアイが発生し、これらが品質低下に繋がる。
【0005】
また、特許文献3では、EVA樹脂ペレットに有機過酸化物などを混合し、一昼夜放置させることで含浸させ、その後、シートを成形する製造方法が開示されている。しかしながら、この方法では、EVA樹脂の内部に有機過酸化物が充分に含浸せず、成形後のシートを架橋させた時に架橋度がシート面内でばらついてしまうといった問題点があった。
【0006】
そこで、特許文献4〜6のように、エチレン共重合体ペレットと有機過酸化物とをタンブラー、等の装置を用いて、有機過酸化物を樹脂ペレット中に均一に含浸させる方法が開示されている。特許文献5には、エチレン共重合体と有機過酸化物を回転容器内で回転させることによって含浸を行う技術が開示されている。しかしながら特許文献5に開示された回転混合機を用いる方法は、実施例で含浸工程に7時間も要しているように、含浸の効率が低く、生産性に問題があった。また長時間撹拌を行うことにより、樹脂ペレットが破砕して微粉を生じる問題も含んでいる。特許文献6には、撹拌装置付オートクレーブを用いて含浸を行う技術が開示されている。しかしながら本発明者らの検討に拠れば、撹拌装置付オートクレーブを用いると、回転羽に直接接するペレット粒子が、破砕して微粉を生じさせたり、せん断により局部的に発熱し固着する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−84967号公報
【特許文献2】特開2009−256459号公報
【特許文献3】特開2006−186233号公報
【特許文献4】特開平8−316508号公報
【特許文献5】特開2010−258436号公報
【特許文献6】国際公開第2011/016557号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、短時間で有機過酸化物が均一に含浸されて均一に架橋することができ、かつ撹拌に伴う微粉の発生や過度の発熱を防止しフィッシュアイのない太陽電池封止用樹脂シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽電池封止用樹脂シートの製造方法は、有機過酸化物を含有する液体を、リボンブレンダー、V型ブレンダー、およびナウター型ミキサーから選ばれる混合機内に供給して、エチレン共重合体のペレットと前記混合機内で撹拌することによって前記有機過酸化物を含浸させたペレットを製造し、このペレットを用いて太陽電池封止用樹脂シートを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池封止用樹脂シートの製造方法は、エチレン共重合体ペレットに有機過酸化物などを含有させるにあたって、エチレン共重合体のペレットと有機過酸化物を含有する液体とをリボンブレンダー、V型ブレンダーおよびナウター型ミキサーから選ばれる混合機に供給して撹拌および含浸させている。そのため、タンブラーミキサーに比べて、エチレン共重合体ペレットと有機過酸化物への熱負荷や物理的なダメージを低減している。エチレン共重合体ペレットに有機過酸化物を分解させることなく均一に含浸させることができる。
【0011】
次いで、得られたペレットを、通常の押出機などを用いて太陽電池封止用樹脂シートを製造しているので、有機過酸化物、架橋助剤、シランカップリング剤などの添加剤が均一に含浸されて、均一に架橋することができる。そのため、耐ブロッキング性に優れ、ガラス、バックシートなどの保護部材及び太陽電池素子との優れた密着性を保有し、更にはフィッシュアイのない太陽電池封止用樹脂シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の太陽電池封止用樹脂シートの製造方法は、好ましくは、有機過酸化物を含有する液体をリボンブレンダー、V型ブレンダー、およびナウター型ミキサーから選ばれる混合機内に供給する。そして、混合機内において、エチレン共重合体ペレットが室温または25〜60℃となるように加熱しながら、有機過酸化物を含有する液体とエチレン共重合体ペレットとを撹拌混合する。それにより、エチレン共重合体ペレット中に有機過酸化物が含有したペレットを製造する。
【0013】
次に、この有機過酸化物含有の樹脂ペレットを、Tダイ押出機などで押出して太陽電池封止用樹脂シートを製造する。
【0014】
本発明におけるリボンブレンダーは、固定容器内にリボン(螺旋)状の回転翼を備え、リボン回転によって内容物を撹拌するものである。逆円錐形ないし横置きU字型の容器内に一つの回転翼を持つ一軸式リボンブレンダーなどがある。リボンブレンダーによれば、良好な混合運動を行うことが可能であり、有機過酸化物などを均一に含浸させられる点で好ましい。リボンブレンダーとしては例えば、株式会社大川原製作所より提供されているリボコーン(製品名)などが具体的に例示される。
【0015】
V型ブレンダーは、V型容器が回転し、容器内の内容物が全体に移動して対流運動を行うため、有機過酸化物を均一に含浸させることが出来る。
【0016】
ナウター型ミキサーは、スクリューが自転回転しながら更に逆円錐状容器内を公転し、有機過酸化物を均一に含浸させることができる。
【0017】
これらの混合機は、ジャケットのような外表面に温度制御用媒体などが流通できる構造を有することが、温度を制御する上で好ましい。また混合機は、これらのうち、逆円錐形のリボンブレンダーもしくは逆円錐形のナウター型ミキサーが特に好適に用いることができる。
【0018】
本発明で用いられる有機過酸化物は、リボンブレンダー、V型ブレンダーおよびナウター型ミキサーから選ばれる混合機内においてエチレン共重合体のペレットに含浸させる条件下にて液状であることが好ましい。固体であっても、前記混合機内においてエチレン共重合体のペレットに有機過酸化物を含浸させる条件下にて融解して液状となってもよく、または、ペレットへの親和性の高い溶媒に溶解して使用してもよい。
【0019】
このような有機過酸化物としては、半減期が10時間以下であり、かつ分解温度が105℃以下であるものが好ましい。また安全性の面から、最高保存温度が10℃以上であるものが好ましい。このような有機過酸化物の例としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーフタレート、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキセン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-アミルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソノノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ジ(ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、エチル-3,3-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0020】
これらのうち好ましい有機過酸化物は、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキセン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルーパーオキシベンゾエートである。
【0021】
有機過酸化物の好適な配合量は、有機過酸化物の種類によっても異なるが、エチレン共重合体100重量部に対して、0.1〜5重量部、とくに0.2〜2重量部の割合とするのが効果的である。太陽電池封止用樹脂シート内に、有機過酸化物を含有することにより、上記エチレン共重合体を架橋することができる。上記エチレン共重合体を架橋することにより、太陽電池封止材用樹脂シートの耐熱性や耐候性が良好となり、長期屋外暴露においてもクリープが発生しづらくなる。
【0022】
本発明で用いられるエチレン共重合体としては、エチレン単位含有量が60〜85重量%、好ましくは65〜85重量%であるエチレン共重合体を主成分とし、エチレンと共重合するモノマー単位含有量が40〜15重量%、好ましくは35〜20重量%であることが好ましい。また、成形性、機械的強度等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999)が0.5〜150g/10分、とくに1〜100g/10分のものを使用するのが好ましい。このようなエチレン含量及びメルトフローレートのエチレン共重合体を使用することにより、柔軟性、透明性、成形性、耐プロッキング性、太陽電池素子保護性に優れた太陽電池封止用樹脂シートを得ることができる。
【0023】
上記エチレン共重合体は、エチレンと極性モノマーの共重合体及びエチレンと炭素数3以上のα-オレフィンの共重合体から選ばれる一種又は二種以上でありうる。エチレン・極性モノマー共重合体における極性モノマーの例には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸オクチル、マレイン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸の塩、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種又は二種以上などを例示することができる。
【0024】
不飽和カルボン酸の塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩などを挙げることができる。また上記エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンの共重合体における炭素数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを挙げることができる。
【0025】
好適なエチレン共重合体としてより具体的には、エチレン・酢酸ビニル共重合体のようなエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n-ブチル共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体及びそのアイオノマーなどを代表例として例示することができる。これらの中では、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はエチレン・アクリル酸エステル共重合体が好ましく、とりわけ易入手性、成形性、透明性、柔軟性、接着性、耐候性などの太陽電池封止材の要求物性に対する適合性を考慮すると、エチレン・酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0026】
本発明において、リボンブレンダー、V型ブレンダーおよびナウター型ミキサーから選ばれる混合機内で、エチレン共重合体のペレットに有機過酸化物を含浸させる方法について特に制限はない。混合機内への各成分の添加順序としては、ペレットと有機過酸化物を全量投入後、混合を開始してもよく;ペレットと有機過酸化物を分割して投入してもよく;ペレットの攪拌下に、徐々に有機過酸化物を添加してもよい。より均一に短時間で含浸を終了させる方法としては、ペレットを全量投入後に攪拌下に、有機過酸化物を含有する液体を徐々に供給添加することが好ましい。
【0027】
エチレン共重合体のペレットに有機過酸化物などを含浸させるときの混合機の保温温度は、有機過酸化物が分解しない程度の温度に制御されることが好ましい。樹脂ペレットの温度が低いと、ペレットに有機過酸化物を含浸させるのに長い時間を必要とし、高すぎる場合、ペレット同士あるいは混合機にペレットが融着することから、適切な温度で制御されることが望まれる。混合機の保温温度としては、室温〜50℃が好ましく、より好ましくは35〜45℃である。
【0028】
含浸時間が短かすぎると、有機過酸化物などをエチレン共重合体のペレットに充分に含浸させることができない。含浸時間が長すぎると、ペレットから微粉発生や、攪拌による摩擦熱の蓄積などによる融着が起きるため、適切な時間内で実施されることが好ましい。含浸時間は温度によっても変化するが、通常、好ましい範囲としては10分〜180分、より好ましくは20分〜60分で含浸することができる。
【0029】
太陽電池封止用樹脂シートの物性を向上させる目的で、架橋助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、酸化防止剤などを、有機過酸化物とともに添加してもよい。
【0030】
架橋助剤は、封止樹脂の絶縁性や耐熱性を向上させるのに有用である。架橋助剤として、多官能アリル化合物や多官能(メタ)アクリレート化合物のような多官能不飽和化合物を例示することができる。多官能不飽和化合物の具体例には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメリット酸トリアリル、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのような多官能アリル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、多官能ウレタンアクリレート、多官能エポキシアクリレートなどのような多官能(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。これらのうち好ましくは、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。架橋助剤は一種単独で使用してもよく、二種以上が併用されて構わない。
【0031】
太陽電池封止用樹脂シートにおける架橋助剤の含有量は、エチレン共重合体100重量部に対し、0.1〜5重量部程度とすることができ、好ましくは0.2〜1.5重量部である。
【0032】
紫外線吸収剤の例には、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;フェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系の化合物などが含まれる。紫外線吸収剤の吸収波長は、太陽電子素子の光感度波長を考慮して決定される。
【0033】
太陽電池封止用樹脂シートにおける紫外線吸収剤の含有量は、太陽電子素子の光感度波長を考慮して決定されるが、通常は、エチレン共重合体100重量部に対して1重量部以下であり、好ましくは0.5重量部以下である。
【0034】
光安定剤の例には、ベンゾエート系光安定剤や、ヒンダードアミン系光安定剤などが含まれる。光安定剤の具体例には、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。例えば、BASF社製のChimassorb2020、Chimassorb944、Tinuvin622、Uninul5050、Tinuvin144、Tinuvin765、Tinuvin770、Uvinul4050、FlamestabNOR166などのヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。光安定剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上が併用されて構わない。
【0035】
太陽電池封止用樹脂シートにおける光安定剤の含有量は、エチレン共重合体100重量部に対して0.01〜0.5重量部程度であり、好ましくは0.05〜0.3重量部である。
【0036】
シランカップリング剤は、ガラス、バックシートなどの保護部材や太陽電池素子などに対する接着性を向上させるために有用である。シランカップリング剤としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基のような不飽和基、アミノ基またはエポキシ基などともに、アルコキシ基のような加水分解可能な官能基を有する化合物を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例には、N-(β-アミノエチ)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシオクチルトリメトキシシランなどが含まれる。シランカップリング剤は一種単独で使用してもよく、二種以上が併用されて構わない。
【0037】
太陽電池封止用樹脂シートにおけるシランカップリング剤の含有量は、エチレン共重合体100重量部に対して0.01〜0.5重量部程度であり、好ましくは0.05〜0.3重量部である。
【0038】
酸化防止剤の例には、BASF社製のIrganox1010、Irganox1076、Irganox1330、住友化学社製のスミライザーGM、スミライザーGA−80などのフェノール系酸化防止剤や、ADEKA社製のADKSTAB PEP−8、ADK STAB PEP−24、ADK STAB2112、ADK STAB PEP−36、ADK STAB HP−10などのリン系酸化防止剤が含まれる。
【0039】
本発明の方法にて有機過酸化物を含浸させたエチレン共重合体のペレットは、押出成形機に供給し、公知の方法によりシート状に成形することによって太陽電池封止用樹脂シートを製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
酢酸ビニル含量28重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体のペレット100重量部に、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン 0.1重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート 0.2重量部、トリアリルイソシアヌレート 0.4重量部、及びγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.5重量部の配合液を、逆円錐形容器で螺旋リボン回転翼を使用したミキサーであるリボコーン含浸装置(株式会社大川原製作所製リボンミキサ)にてペレット攪拌下のもとに滴下し、室温にて40分攪拌を実施し押出成形用ペレットを作成した。その後、Tダイ付押出機にて幅1000mm、厚さ約600μmの成形シートを100mにロール状に巻き取った。
【0042】
(実施例2)
リボコーン含浸装置に代えて、ナウターミキサー含浸装置(ホソカワミクロン株式会社製ナウタミキサVN)を使用した以外は、すべて実施例1と同様にして、成形シートをロール状に巻き取った。
【0043】
(比較例1〜4)
実施例1のリボコーン含浸装置に代えて、各々表1に示す含浸装置ならびに含浸時間を採用した以外は、すべて実施例1と同様にして、成形シートをロール状に巻き取った。
【0044】
各実施例および比較例で得られた成形シートの架橋特性、フィッシュアイ、耐ブロッキング性、ガラス密着性を、下記(1)〜(4)の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0045】
(1)架橋特性バラツキ
ロール状の成形シートのTD方向から10cm間隔及び、MD方向から10m間隔に試料を1.5g採取し、150℃の圧縮成形機を用いて7分間加圧下で加熱することにより架橋シートを得た。この架橋シートから1gを100mlのキシレンに浸漬し、110℃、12時間加熱した後、金網で濾過して不溶解分を捕集し、乾燥後秤量することによって各箇所のゲル分率を求めて、下記式により架橋特性のバラツキを評価した。
最大バラツキ量(%)=(ゲル分率%の最大値)−(ゲル分率%の最小値)
○:最大バラツキ量が5%未満
×:最大バラツキ量が5%以上
【0046】
(2)フィッシュアイ
得られた成形シートのフィッシュアイの発生状況を、下記評価基準にて目視で評価を実施した。
A:フィッシュアイがほとんどなく、外観が良好。
B:フィッシュアイがやや見られるものの、外観はほぼ良好。
C:フィッシュアイが大量に観察され、外観が不良。
【0047】
(3)耐ブロッキング性
ロール状に巻き取って得られた成形シートをロールから巻きだしながら、ブロッキングによるフィルム間の張り付きの有無を目視にて下記の基準で評価した。
○:良好(フィルム間の張り付きがない又はほとんどない)
×:劣る(フィルムの張り付きがある)
【0048】
(4)ガラス密着性
得られたシートをガラス上に積層し、150℃15分の真空ラミネートを実施し、得られた試験片をJIS K6854に準拠し、オートグラフ(島津製作所製)を用い、180度剥離方法にて10mm幅の試験片を300mm/minで剥離した際の測定結果で評価した。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、耐ブロッキング性に優れ、ガラス、バックシートなどの保護部材及び太陽電池素子との優れた密着性を保有し、更にはフィッシュアイのない太陽電池封止用樹脂シートの製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機過酸化物を含有する液体を、リボンブレンダー、V型ブレンダー、およびナウター型ミキサーから選ばれる混合機内に供給して、エチレン共重合体のペレットと前記混合機内で撹拌混合することによって、前記有機過酸化物を含浸させたペレットを製造し、
前記有機過酸化物を含浸させたペレットを用いて、太陽電池封止用樹脂シートを製造することを特徴とする太陽電池封止用樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記混合機の形状が逆円錐型であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池封止用樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
さらに架橋助剤を前記混合機内に供給して、エチレン共重合体ペレットに前記架橋助剤を含浸させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池封止用樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
さらに紫外線吸収剤、酸化防止剤及びカップリング剤を前記混合機内に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池封止用樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記有機過酸化物を含浸させたペレットを、押出機に供給し溶融混練して前記押出機から押出すことによりシート状に成形する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池封止用樹脂シートの製造方法。


【公開番号】特開2013−112787(P2013−112787A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262170(P2011−262170)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】