説明

太陽電池模擬電源装置

【課題】 太陽光発電用系統連系インバータの評価試験等での使用に適した小型で安価な太陽電池模擬電源装置を提供する。
【解決手段】 直流定電流発生装置1により出力電流を発生させ、出力電圧を生成するための複数のダイオードDからなる電圧生成手段2を直流定電流発生装置1に並列に接続した。更に、電圧生成手段2と並列に太陽電池の漏れ電流を擬似発生させる第1抵抗素子R1を配置すると共に、出力電流経路に太陽電池の内部抵抗を模擬して第2抵抗素子R2を介在させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の特性を模擬して太陽光発電用系統連系インバータの評価試験を行う際に太陽電池に代えて使用する太陽電池模擬電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電用系統連系インバータの試験において、インバータに入力する直流電源は、太陽電池の代わりに太陽電池模擬電源装置が用いられる。これは、太陽電池を使ったのでは様々な日照条件での再現性ある試験を行うことが困難なためである。このような用途で使用される太陽電池模擬電源装置は、接続予定の太陽電池の様々な日照条件下における出力特性を再現可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような特性を示す太陽電池模擬電源装置は複雑な構成なため大型で高価なものとなっている。一方で、特許文献2に開示されている太陽光発電システムの機能検証装置では太陽電池の代わりに直流発電機を用い、その出力に可変抵抗を接続してインバータの最大電力追従検証を行う構成が開示されている。
【特許文献1】特開平8−184653号公報
【特許文献2】特開平11−175176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
太陽光発電用系統連系インバータの開発初期段階での評価試験、例えば最大電力追従機能の実現性評価や制御安定性の評価においては、太陽電池の基本的な特性を出力できる模擬電源で十分な場合が多く、太陽電池の模擬特性の精巧さよりも小型で持ち運び易くそして安価なものが望まれている。そのため、上記特許文献2に記載されているような構成のものが好まれている。
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示された模擬電源は、直流発電機を使用しているため図5に示すような出力特性を示し、太陽光発電より風力発電に近い特性となっていた。そのため、より実際の太陽光発電の特性に近く、それでいて安価で移動し易いものが望まれていた。尚、図6は太陽電池の出力特性の概略を示すもので、図5,図6において(a)は出力電流−出力電圧特性を示し、(b)は出力電力−出力電圧特性を示している。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、太陽光発電用系統連系インバータの評価試験等での使用に適した小型で安価な太陽電池模擬電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、太陽光発電用系統連系インバータの評価試験を行う際に使用する太陽電池模擬電源装置であって、出力電流を発生させるための直流定電流発生装置と、出力電圧を発生させるために前記直流定電流発生装置に並列に接続した半導体素子からなる電圧生成手段とを有することを特徴とする。
この構成によれば、太陽電池の出力する電流−電圧特性と略同一の特性を得ることができ、系統連系インバータの評価試験を太陽電池を接続した如く行うことができる。そして、小型に構成できるし安価に作製できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記直流定電流発生装置と並列に、太陽電池の漏れ電流を擬似発生させる第1抵抗素子を配置すると共に、前記出力電流経路に太陽電池の内部抵抗を模擬する第2抵抗素子を介在させたことを特徴とする。
この構成によれば、漏れ電流や太陽電池の内部抵抗を再現でき、より太陽電池に近い特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、太陽電池の出力する電流−電圧特性と略同一の特性を得ることができ、系統連系インバータの評価試験を太陽電池を接続した如く行うことができる。そして、小型に構成できるし安価に作製できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る太陽電池模擬電源装置の一例を示し、太陽光発電電流を擬似発生させるための直流定電流発生装置1と、複数のダイオードDが直列接続された電圧生成手段2を備え、P,Nは出力端子である。電圧生成手段2は直流定電流発生装置1に並列に接続され、且つ出力端子P,N間に配置されている。直流定電流発生装置1は、所定の電流を発生させることができる公知の定電流源が使用できる。
【0010】
図2はこの太陽電池模擬電源装置の出力特性を示している。具体的に、電圧生成手段2は、272個のダイオードDを直列接続して構成され、出力端子P,N間に負荷抵抗3を接続した状態での出力電流(I)−出力電圧(V)特性を示している。例えば、直流定電流発生装置1の出力電流Idcを6.32Aで一定として、負荷抵抗3を変化させた場合がS1であり、出力電流Idcを5.06Aで一定として、負荷抵抗3を変化させた場合がS2である。そして、出力電流Idcを更に変化させ、1.26Aまで変化させた場合を示している。
【0011】
この出力特性に示すように、最大出力電力1100Wの1kW系統連系インバータ用の太陽電池模擬電源装置を構成し、上記図6の太陽電池の出力特性と比較しても、太陽電池のI−V特性が模擬できていることがわかる。そして、直流定電流発生装置1の出力電流Idcを変化させることで、日照条件が変化した場合の、太陽電池の出力変化を模擬でき、系統連系インバータの評価試験を太陽電池を接続した如く行うことができる。
よって、太陽光発電用系統連系インバータの開発段階における最大電力点追従機能に実現性評価や制御安定性の評価を容易に行うことができ、直流定電流発生装置1とダイオードDのシンプルな構成であるため、小型、軽量、低価格とすることができる。
【0012】
図3は本発明の他の例を示している。直流定電流発生装置1と電圧生成手段2の構成は上記図1と同様であるが、電圧生成手段2に並列に第1抵抗素子R1を設け、一方の出力端子Pに直列に第2抵抗素子R2を設けている点が異なっている。
第1抵抗素子R1は例えば1000Ω、第2抵抗素子は例えば1Ωであり、第1抵抗素子R1は太陽電池に発生する漏れ電流を擬似発生させるために設けられ、第2抵抗素子R2は太陽電池の内部抵抗を擬似発生させるために設けられている。
【0013】
このように構成された太陽電池模擬電源装置の出力特性は図4に示すようになる。この図4に示すように、T1は直流定電流発生装置1の出力電流Idcを6.32Aで一定として、負荷抵抗3を変化させた場合であり、T2は出力電流Idcを5.06Aで一定として、負荷抵抗3を変化させた場合である。そして、同様にして出力電流Idcを1.26Aまで変化させた場合を示し、何れも上記図2のS1,S2等の特性に比べて、より実際の太陽電池に近い特性を得ることができる。
このように、第1抵抗素子R1は太陽電池に発生する漏れ電流を擬似発生させ、第2抵抗素子により太陽電池の内部抵抗を擬似発生させることで、より実際の太陽電池に近い特性を得ることができる。
【0014】
尚、上記実施形態は、電圧生成手段2としてダイオードを複数連結したものを使用しているが、ツェナーダイオードやバリスタも同様に定電圧を生成させることができる。そのため、生成させたい電圧に合わせてこれらの半導体素子を複数連結して電圧生成手段2を構成しても良い。
また、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2の値は上記数値に限定するものではなく、第1抵抗素子は漏れ電流を擬似発生させるための抵抗、第2抵抗素子は内部抵抗を擬似発生させるものであり、実際に使用する太陽電池の特性に合わせて設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る太陽電池模擬電源装置の実施形態の一例を示す構成図である。
【図2】図1の装置の出力電流−出力電圧特性を示す。
【図3】本発明の他の形態を示す構成図である。
【図4】図3の装置の出力電流−出力電圧特性を示す
【図5】従来の太陽電池模擬電源装置の特性を示し、(a)は出力電流−出力電圧特性、(b)は出力電力−出力電圧特性である。
【図6】太陽電池の特性を示し、(a)は出力電流−出力電圧特性、(b)は出力電力−出力電圧特性である。
【符号の説明】
【0016】
1・・直流定電流発生装置、2・・電圧生成手段、D・・ダイオード、R1・・第1の抵抗素子、R2・・第2の抵抗素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電用系統連系インバータの評価試験を行う際に使用する太陽電池模擬電源装置であって、出力電流を発生させるための直流定電流発生装置と、出力電圧を発生させるために前記直流定電流発生装置に並列に接続した半導体素子からなる電圧生成手段とを有することを特徴とする太陽電池模擬電源装置。
【請求項2】
前記直流定電流発生装置と並列に、太陽電池の漏れ電流を擬似発生させる第1抵抗素子を配置すると共に、前記出力電流経路に太陽電池の内部抵抗を模擬する第2抵抗素子を介在させた請求項1記載の太陽電池模擬電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−244947(P2009−244947A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87606(P2008−87606)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】