説明

太陽電池用アルミニウムペースト

【課題】 電気的特性・膜強度・膜外観を保ちながら裏面電極の反りを抑制できる太陽電池用アルミニウムペーストを提供する。
【解決手段】 アルミニウムペーストに少量のSn粉末が含まれていることから、このペーストを用いて印刷・乾燥・焼成によりシリコン基板12の裏面に全面電極26を形成すると、そのシリコン基板12の反りが低減される。しかも、Snを添加するとアルミニウムから成る全面電極26の耐水性が向上し、更に、添加量がAl 100(質量部)に対して0.3〜5.0(質量部)すなわちペースト100(質量部)中に0.21〜3.5(質量部)と極めて少量であるため、全面電極26の導電性、膜強度や外観には全く影響を与えない。また、膜厚を薄くすることなく反りを抑制できるので、BSF効果を十分に享受できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の裏面電極用に好適なアルミニウムペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般的なシリコン系太陽電池は、p型多結晶半導体であるシリコン基板の上面にn+層を介して反射防止膜および受光面電極が備えられると共に、下面にp+層を介して裏面電極が備えられた構造を有している。受光により半導体のp−n接合に電力が生じ、これを電極を通して取り出すようになっている。
【0003】
上記n+層はシリコン基板にn型のドーパントであるP(燐)などを拡散して形成したもので、例えば厚みが160〜300(μm)のシリコン基板において0.2〜0.6(μm)程度の厚みで設けられる。また、反射防止膜は窒化珪素、二酸化チタン、二酸化珪素等の薄膜から成るもので、十分な可視光透過率を保ちつつ表面反射率を低減して受光効率を高めるために設けられている。受光面電極は銀等を導体成分として含む厚膜材料から成るもので、この反射防止膜上に所謂ファイヤースルー法等で形成される。
【0004】
一方、裏面電極は、帯状に設けられた例えば2本の帯状電極と、その帯状電極上を除く略全面に設けられた全面電極とから構成されている。全面電極はアルミニウムを導体成分とする厚膜材料から成るもので、帯状電極は銀を導体成分とする厚膜材料から成るものである。この帯状電極は裏面電極に導線等を半田付け可能にする目的で設けられている。
【0005】
上記全面電極を形成するに際しては、スクリーン印刷法などを用いて裏面にアルミニウムペーストを塗布し、乾燥後、ペースト組成に応じた温度で焼成処理を施す。このとき、ペースト中のアルミニウムがシリコン基板に拡散して前記p+層が形成され、裏面側にpp+層間のフェルミ準位の差による電界ができ、生成キャリアの収集効率が向上するBSF(Back Surface Field)効果が得られる。上記のアルミニウムペーストには、例えば、アルミニウム粉末に、有機質ビヒクルと、アルミニウム電極の強度を向上させるためのガラスフリットとが添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−090734号公報
【特許文献2】特開2003−223813号公報
【特許文献3】特開2001−313402号公報
【特許文献4】特開2008−166344号公報
【特許文献5】特開2007−234625号公報
【特許文献6】特公平06−105792号公報
【特許文献7】特開2007−273760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した太陽電池において、近年、コストダウンを図ることを目的として、シリコン基板厚みを200(μm)以下に薄くすることが検討されている。しかしながら、シリコン基板を薄くすると、電極形成のための焼成時にシリコンとアルミニウムの熱膨張率の差に起因して基板に応力が発生するので、シリコン基板が反り、延いては製造工程で割れる等の問題があった。
【0008】
これに対して、基板厚みを薄くした場合の反りを低減する技術が種々提案されている。例えば、アルミニウム電極の厚さ寸法を薄くするものがある(例えば特許文献1を参照。)。この技術によれば焼成時の応力が小さくなるので反りが抑制されるが、裏面へのアルミニウム拡散量が少なくなり延いてはBSF効果が減じられるので電気的特性が低下すると共に、ブリスターや玉が発生し易く膜外観も低下する問題がある。
【0009】
また、アルミニウムペーストにシリカやアルミナ等の熱膨張率がアルミニウムよりも小さく且つ融点がアルミニウムよりも高い無機化合物粉末を添加することも提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。この技術によれば、添加した無機化合物粉末によってアルミニウム電極の熱膨張率が小さくされることから、焼成時の応力が小さくなり延いては反りが抑制されるが、絶縁材料割合が多くなるので電気的特性が低下する。しかも、アルミニウムの焼結が無機化合物粉末で阻害されるため、膜強度も低下する問題がある。
【0010】
また、アルミニウムペーストにシリコン粉末を添加することが提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。シリコン粉末はアルミニウム電極の熱膨張率を低下させ延いては反りを抑制する目的で添加されるが、Al-Si共晶点は577(℃)でアルミニウムの融点660(℃)よりも低いので、膜中の液相量が多くなり、延いては裏面に形成される合金層の厚みも増加する。このため、上記目的に反し、却って反りが増大することとなる。Al-Mg合金粉末或いはMg粉末を添加することも提案されているが(例えば、特許文献4を参照。)、Al割合が高い範囲ではAl-Mg共晶点が450(℃)と低いので、シリコン粉末を添加した場合と同様に却って反りが増大する。
【0011】
また、アルミニウムよりも融点の高いアルミニウム含有合金粉末をアルミニウムペーストに添加するものがある(例えば、特許文献5を参照。)。合金の構成元素としては、チタンやバナジウム等が挙げられている。この技術によれば、合金粉末添加によって固相の析出温度が上昇するため、液相量が低下し延いては反りが抑制される。しかしながら、高融点合金粉末によってアルミニウム電極の導電性が低下する問題がある。これら特許文献1〜5に記載の技術では、反りを抑制できないか、電気的特性、引っ張り強度、膜外観等、他の特性が低下するので、太陽電池特性が得られない。
【0012】
本発明は、以上の事情を背景として為されたもので、その目的は、電気的特性・膜強度・膜外観を保ちながら裏面電極の反りを抑制できる太陽電池用アルミニウムペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、Al粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池用アルミニウムペーストであって、前記Al粉末100質量部に対してSn粉末を0.3乃至5.0質量部の範囲内の割合で含むことにある。
【発明の効果】
【0014】
このようにすれば、アルミニウムペーストには少量のSn粉末が含まれていることから、このペーストを用いて印刷・乾燥・焼成によりシリコン基板に裏面電極を形成すると、そのシリコン基板の反りが低減される。Al-Sn共晶点は228(℃)であってAlの融点よりも著しく低いにも拘わらず、如何なる作用によるものかも定かではないが、Si粉末やMg粉末等を添加した場合とは異なり、反りが抑制されるのである。しかも、Snを添加するとアルミニウム電極の耐水性が向上し、更に、添加量が0.3〜5.0(質量部)と極めて少量であるため、アルミニウム電極の導電性、膜強度や外観には全く影響を与えない。また、膜厚を薄くすることなく反りを抑制できるので、BSF効果を十分に享受できる。したがって、裏面電極に用いた場合に反りが抑制されると共に、電気的特性・膜強度・耐水性・外観に優れた太陽電池用アルミニウムペーストが得られる。
【0015】
なお、Sn添加量が0.3(質量部)未満では、シリコン基板の反りを抑制する効果が十分に得られない。一方、5.0(質量部)を越えても反り低減効果は殆ど変化せず、ブリスターや玉が多量に発生して膜外観が著しく低下する。そのため、Sn粉末量はAl粉末100(質量部)に対して0.3〜5.0(質量部)の範囲とすることが必須である。
【0016】
因みに、前記特許文献6には、Al粉末100(質量部)に対して5〜50(質量部)のSn粉末を含むアルミニウムペーストが記載されているが、上述したように5.0(質量部)を越える多量のSn粉末を添加するとブリスターや玉が多量に発生する。上記特許文献6は、アルミニウム電極のメッキを可能とし延いてはリード線をはんだ付け可能とする目的でSn粉末を添加したもので、反りの抑制や膜外観等は全く考慮されていない。
【0017】
また、前記特許文献7には、低融点のはんだ合金(すなわちSn合金)で被覆したアルミニウム粉末を用いたアルミニウムペーストが記載されている。このアルミニウムペーストはアルミニウムが溶融しない程度の低温焼成として基板の反りを抑制するもので、はんだ合金でアルミニウム粉末が相互に固着されると共に基板に裏面電極が固着される。そのため、このアルミニウムペーストで裏面電極を形成しても、シリコン基板にアルミニウムが拡散しないことからp+層が形成されないのでBSF効果が得られない。はんだ合金で被覆しないアルミニウム粉末を用いた第1電極層を基板側に設け、被覆したアルミニウム粉末を用いた第2電極層をその上に設けた2層構造とすることでBSF効果と反り抑制が可能となる旨が説明されているが、このような2層構造とすることは工程が煩雑になって製造コストの上昇をもたらすし、第1電極層を形成する際の反りを抑制するためにはこれを薄くする必要があるので、反りを抑制しつつ十分なBSF効果を得ることは困難である。
【0018】
ここで、好適には、前記Sn粉末は平均粒径が2乃至10(μm)の範囲内である。Sn粉末の粒径が2(μm)以上であれば、凝集が生じがたいのでペースト調製時に一層良好な分散性が得られる。また、粒径が10(μm)以下であれば、一層少ない添加量で良好な分散性が得られる。平均粒径は、2.5〜5.0(μm)が一層好ましい。また、Sn粉末の添加量は、1.0〜5.0(質量部)の範囲が一層好ましい。
【0019】
また、好適には、前記アルミニウムペーストは、ペースト全体100(質量部)中に、アルミニウム粉末を60(質量部)以上80(質量部)以下の範囲、ガラス粉末を5(質量部)以下の範囲でそれぞれ含むものである。Sn粉末はペースト100(質量部)中に0.21〜3.5(質量部)の範囲で含まれる。アルミニウム粉末を60(質量部)以上にすれば、電極の導電性が一層高められると共に基板へのAl拡散量が一層多くなる。また、アルミニウム粉末を80(質量部)以下に留めれば、ビヒクル量を十分に多くできるので印刷性に一層優れたペーストが得られる。ガラス粉末は基板への電極の固着強度を高めるためには添加されることが必須であるが、十分に高い導電性を得るためには5(質量部)以下に留めることが望ましい。なお、有機質ベヒクルは、例えば上記アルミニウム粉末、ガラス粉末、およびSn粉末の他のペーストの残部を占める。
【0020】
また、好適には、前記アルミニウム粉末は、平均粒径が2乃至9(μm)の範囲内である。粒径が大きくなると分散性が劣る傾向があり、また、粒径が著しく小さくなっても凝集などに起因して分散性が劣る傾向が生ずるので、上記粒径範囲が好ましい。上記観点から、アルミニウム粉末の平均粒径は、5〜7(μm)の範囲が一層好ましい。
【0021】
また、前記有機質ビヒクルは特に限定されない。例えば、セルロース系高分子、アクリル樹脂等の適宜の樹脂をターピネオールやブチルカルビトール等で溶解したものを用いることができる。
【0022】
また、ガラス粉末も特に限定されない。鉛系、ビスマス系、硼珪酸系等、種々のものを用い得る。但し、対環境性を考慮すると、非鉛系が好ましい。また、ガラス粉末の平均粒径は例えば1乃至10(μm)の範囲内が好適である。
【0023】
また、前記アルミニウムペーストは、前記各成分の他に、その特性を妨げない範囲で他の添加物を適宜含むことができる。添加物としては、例えば、ペーストに一般的に使用されるフタル酸エステルやアジピン酸エステルなどの可塑剤、ビニル系ポリマーやポリカルボン酸などに代表される分散剤などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例のアルミニウムペーストが裏面電極の形成に適用された太陽電池の断面構造を示す模式図である。
【図2】図1の太陽電池の裏面電極を示す図である。
【図3】Sn添加量とシリコン基板の反りとの関係の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0026】
図1は、本発明の一実施例の太陽電池用アルミニウムペーストが適用されたシリコン系太陽電池10の断面構造を模式的に示す図である。図1において、太陽電池10は、例えばp型多結晶半導体であるシリコン基板12と、その上下面にそれぞれ形成されたn+層14およびp+層16と、そのn+層14上に形成された反射防止膜18および受光面電極20と、そのp+層16上に形成された裏面電極22とを備えている。上記シリコン基板12の厚さ寸法は例えば100〜200(μm)の範囲内、例えば180(μm)程度で、125×125(mm)程度の矩形薄板状或いは直径125(mm)程度の円板状を成すものである。
【0027】
上記のn+層14およびp+層16は、シリコン基板12の上下面に不純物濃度の高い層を形成することで設けられたもので、その高濃度層の厚さ寸法はn+層14が例えば70〜100(nm)程度、p+層16が例えば500(nm)程度である。n+層14は、一般的なシリコン系太陽電池では100〜200(nm)程度であるが、本実施例ではそれよりも薄くなっており、シャローエミッタと称される構造を成している。なお、n+層14に含まれる不純物は、n型のドーパント、例えば燐(P)で、p+層16に含まれる不純物は、p型のドーパント、例えばアルミニウム(Al)である。
【0028】
また、前記の反射防止膜18は、例えば、窒化珪素 Si3N4等から成る薄膜で、例えば可視光波長の1/4程度の光学的厚さ、例えば80(nm)程度で設けられることによって10(%)以下、例えば2(%)程度の極めて低い反射率に構成されている。
【0029】
また、前記の受光面電極20は、例えば一様な厚さ寸法の厚膜導体から成るもので、受光面24の略全面に多数本の細線部を有する櫛状を成す平面形状で設けられている。上記の厚膜導体は、Agを67〜98(wt%)の範囲内、例えば94.3(wt%)程度、およびガラスを2〜33(wt%)の範囲内、例えば5.7(wt%)程度を含む厚膜銀から成るものである。上記ガラスは例えば硼珪酸ガラスや鉛ガラスである。
【0030】
また、前記の裏面電極22は、図2に模式的に示すように、p+層16上に帯状に設けられた厚膜銀からなる帯状電極28と、その帯状電極28上を除く略全面に一部がその帯状電極28に重なるように設けられたアルミニウムを導体成分とする厚膜から成る全面電極26とから構成されている。全面電極26を構成する厚膜はアルミニウム、微量のSn、およびガラスから成るもので、例えば、アルミニウム100(質量部)に対して、Snが0.3〜5(質量部)程度、ガラスが2.9(質量部)程度含まれている。なお、上記の帯状電極28は、裏面電極22に導線等を半田付け可能にするために設けられたものである。
【0031】
本実施例の太陽電池10は、上述したように受光面24側からn+層14、p型シリコン基板12、p+層16が備えられたn+pp+構造を有していることから、BSF効果が好適に得られている。そのため、高い集電効率を有する利点がある。
【0032】
上記の太陽電池10は、例えば、以下のようにしてアルミニウムペーストを調製すると共に、これを用いて裏面の全面電極26を形成することにより製造される。まず、アルミニウム粉末 100(質量部)と、有機質ビヒクル 32〜40(質量部)と、ガラス粉末 2.9(質量部)と、Sn粉末 0.3〜5.0(質量部)とを混合する。ペースト全体を100(wt%)とすると、アルミニウム粉末が70(wt%)、ガラス粉末が2.0(wt%)、Sn粉末が0.21〜3.5(wt%)、ベヒクルが24.5〜27.79(wt%)になる。アルミニウム粉末は、例えば平均粒径が6(μm)程度の球状或いは球状に近い粉末である。また、ガラス粉末は例えばSiO2-B2O3-ZnO系ガラスで、例えば平均粒径は5(μm)程度である。また、Sn粉末は水−アトマイズ法で製造した球状粒子で、表1に示すように平均粒径が2.5〜10(μm)のものを用いた。このような組成で調合した試料を例えば三本ロールミルで混練し、アルミニウムペーストを得た。
【0033】
【表1】

【0034】
なお、上記の表1において、実施例1〜9および比較例13,14はSn粉末を用いたものであるが、実施例10、11はSn粉末に代えてSn/Ag3/Cu0.5合金を用いた異なる実施例、比較例12は何ら金属粉末等が添加されていないもの、比較例15はSi粉末を添加したもの、比較例16はSiO2粉末を添加したものである。各実施例および比較例の金属粉末等の粒径および添加量は表1に示した通りである。また、比較例13,14は、Sn粉末の添加量をそれぞれAl粉末100(質量部)に対して0.1(質量部)、8.0(質量部)としたものである。
【0035】
次いで、例えば厚さ寸法が180(μm)程度、大きさが125×125(mm)程度の矩形薄板状のp型シリコン基板12を用意し、これに表面銀電極すなわち受光面電極20と、裏面銀電極すなわち帯状電極28とを、それぞれ例えば厚膜スクリーン印刷法で印刷形成し、乾燥処理を施す。次いで、これに上記のアルミニウムペーストを例えば厚膜スクリーン印刷法を用いて印刷する。印刷製版には例えばステンレス製200メッシュを用い、ペースト付量は7(mg/cm2)とした。印刷後、80(℃)で乾燥し、大気雰囲気中で近赤外線高速焼成炉を用いて焼成温度700〜800(℃)で焼成した。すなわち、銀電極およびアルミニウム電極を一括焼成した。これにより、前記受光面電極20および裏面電極22が形成され、前記太陽電池10が得られる。
【0036】
上記のようにして製造した太陽電池10について、反り、膜強度、耐水性、および外観を評価した。結果を表1の右欄に示す。反りは、受光面24側を上にして水平面に置き、下面の高さを反り量とした。また、膜強度は、粘着テープを全面電極26に貼り付けて引き剥がし、電極膜の剥離の有無を評価した。剥離しなかった場合を○、剥離した場合を×とした。また、耐水性は、全面電極26を80(℃)の温水中に漬け、膜面に気泡が発生するか否かを評価した。2分以下で気泡が発生したものを×、2〜10分で気泡が発生したものを△、気泡が発生するまでの時間が10分以上のものを○とした。また、外観は、膜表面を観察してブリスターや玉が発生していた場合を×、ない場合を○とした。
【0037】
上記評価結果に示されるように、Al 100(質量部)に対して、Snを0.3〜5.0(質量部)の範囲で含む、すなわちペースト100(質量部)中にSnを0.21〜3.5(質量部)の範囲で含む実施例1〜9では、反りが1.0〜1.8(mm)であった。また、Sn/Ag3/Cu0.5を2.0(質量部)含む実施例10,11でも反りが1.0〜1.2(mm)に留まった。また、実施例では何れも膜強度、外観ともに良好で、耐水性も実施例1がやや劣る他は全て良好であった。
【0038】
これに対して、Snを添加しない比較例12では反りが2.4(mm)、また、0.1(質量部)添加した比較例13でも反りが2.2(mm)と、何れも2(mm)以上の大きな反りであった。Siを添加した比較例15でも反りが2.6(mm)と大きい結果であった。また、Snを添加しない比較例12は、耐水性、外観共に劣っていた。SnをAl 100(質量部)に対して0.1(質量部)すなわちペースト100(質量部)中に0.07(質量部)含む比較例13およびSiを添加した比較例15では、上記反りが大きいことに加えて耐水性がやや劣っていた。SnをAl 100(質量部)に対して8.0(質量部)すなわちペースト100(質量部)中に5.6(質量部)含む比較例14では、反りは1.3(mm)と小さくなったものの、ブリスターや玉が多く見られ、外観が劣る結果となった。また、SiO2を添加した比較例16は、反りは1.2(mm)と小さくなったものの、膜強度が弱く、耐水性も不十分であった。
【0039】
上記の評価結果によれば、Sn或いはSn合金をAl 100(質量部)に対して0.3〜5.0(質量部)すなわちペースト100(質量部)中に0.21〜3.5(質量部)含む場合に、反りを2.0(mm)未満の小さい値にすることができ、膜強度が高く、良好な外観が得られることが明らかである。特に、添加量をAl 100(質量部)に対して1.0(質量部)すなわちペースト100(質量部)中に0.7(質量部)以上にすれば、反りが1.4(mm)以下に留まると共に、耐水性も十分に高められる。
【0040】
図3は、横軸にAl 100(質量部)に対するSnまたはSn合金の添加量を、縦軸に反り量をとって、上記の評価結果をグラフに表したものである。添加量がAl 100(質量部)に対して0.3(質量部)すなわちペースト100(質量部)中に0.21(質量部)を越えたところから急激に反りが小さくなる傾向が認められ、Al 100(質量部)に対して1.0(質量部)以上すなわちペースト100(質量部)中に0.7(質量部)以上であれば、反りの変化が略横這いになることが判る。また、相違は比較的小さいものの、粒径が大きい方が反りが小さくなる傾向が認められた。
【0041】
以上説明したように、本実施例によれば、アルミニウムペーストに少量のSn粉末が含まれていることから、このペーストを用いて印刷・乾燥・焼成によりシリコン基板12の裏面に全面電極26を形成すると、そのシリコン基板12の反りが低減される。しかも、Snを添加するとアルミニウムから成る全面電極26の耐水性が向上し、更に、添加量がAl 100(質量部)に対して0.3〜5.0(質量部)すなわちペースト100(質量部)中に0.21〜3.5(質量部)と極めて少量であるため、全面電極26の導電性、膜強度や外観には全く影響を与えない。また、膜厚を薄くすることなく反りを抑制できるので、BSF効果を十分に享受できる。
【0042】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0043】
10:太陽電池、12:シリコン基板、14:n+層、16:p+層、18:反射防止膜、20:受光面電極、22:裏面電極、24:受光面、26:全面電極、28:帯状電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池用アルミニウムペーストであって、
前記Al粉末100質量部に対してSn粉末を0.3乃至5.0質量部の範囲内の割合で含むことを特徴とする太陽電池用アルミニウムペースト。
【請求項2】
前記Sn粉末は平均粒径が2乃至10(μm)の範囲内である請求項1の太陽電池用アルミニウムペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−66353(P2011−66353A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217944(P2009−217944)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】