説明

太陽電池用ガラス基板の製造方法

【課題】廃ガラスを効率良くリサイクル可能な太陽電池用ガラス基板の製造方法を創案し、ガラス製品のリサイクル率を高め、近年の環境的要請を満たすこと。
【解決手段】本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、ガラス原料の一部に廃ガラスを用い、ガラス原料をガラス溶融窯で溶融した後、ガラス基板に成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用ガラス基板の製造方法に関し、具体的には廃ガラスをリサイクル可能な太陽電池用ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境的観点から、太陽電池の需要が高まっており、単結晶シリコン、多結晶シリコンまたはアモルファスシリコン太陽電池は、主に家庭用発電、商業用発電等に利用されている。その他の太陽電池として、カルコパイライト系薄膜多結晶太陽電池、CdTe太陽電池、色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池等が開発されており、これらも実用化されつつある。
【0003】
太陽電池は、一般的に、基板表面に電極膜、光吸収層、電極膜を備え、その上に保護用のカバーガラスを備えた構造を有している。太陽電池用基板は、電極膜や光吸収層が熱処理工程により形成されるため、耐熱性が要求される。このため、太陽電池用基板として、ガラス基板が用いられている。
【特許文献1】国際公開第08/098968号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境的観点から、資源のリサイクルが推進されており、ガラス製品もその例外ではない。しかし、ガラス製品全体で見ると、リサイクル率は高いとは言えず、環境的要請を満たしているとは言い難い。したがって、ガラス製品から発生した廃ガラスのリサイクルを推進する必要がある。
【0005】
また、ガラス製品を製造する過程において、相当量の廃ガラスが発生するが、環境的観点から、この廃ガラスもリサイクルし、ガラス製品に還元する必要性が高い。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、廃ガラスを効率良くリサイクル可能な太陽電池用ガラス基板の製造方法を創案し、ガラス製品のリサイクル率を高め、近年の環境的要請を満たすことを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、廃ガラスをガラス原料の一部に用い、このガラス原料で太陽電池用ガラス基板を作製することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、ガラス原料の一部に廃ガラスを用い、ガラス原料をガラス溶融窯で溶融した後、ガラス基板に成形することを特徴とする。
【0008】
第二に、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、ガラス原料中の廃ガラスの含有量が1〜90質量%であることを特徴とする。
【0009】
第三に、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、ガラス組成として、下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜75%、Al 1〜18%、B 0〜12%、MgO 0〜10%、CaO 0〜20%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、RO(MgO+CaO+SrO+BaO:MgO、CaO、SrOおよびBaOの合量) 5〜25%、NaO 0〜20%、KO 0〜15%、ZrO0〜10%含有するように、ガラス原料を調合することを特徴とする。
【0010】
第四に、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、ガラス組成として、下記酸化物換算の質量%で、As+Sb+SnO+SO(As、Sb、SnOおよびSOの合量)を0.05〜5%含有するように、ガラス原料を調合することを特徴とする。
【0011】
第五に、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、液相粘度が104.0dPa・s以上になるように、ガラス原料を調合することを特徴とする。ここで、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。「液相温度」は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値である。
【0012】
第六に、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、歪点が560℃以上になるように、ガラス原料を調合することを特徴とする。ここで、「歪点」は、ASTM C336−71の方法に基づいて測定した値を指す。このようにすれば、熱処理工程でガラス基板が変形する事態を防止することができる。
【0013】
第七に、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、廃ガラスのガラス組成が下記(1)〜(8)のいずれかであることを特徴とする。
(1)下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、MgO 1〜6%、CaO 2〜12%、NaO 10〜15%、KO 0〜4%、SO 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(2)下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、MgO 0〜4%、CaO 6〜14%、NaO 10〜15%、KO 0〜4%、SO 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(3)下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、B 0〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、BaO 0〜5%、NaO 0〜20%、KO 0〜10%、Sb 0〜1%、TiO 0〜5%、Fe 0〜1%含有、
(4)下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜75%、Al 0〜30%、B 0〜30%、MgO 0〜10%、CaO 0〜30%、NaO 0〜15%、KO 0〜15%、ZrO 0〜30%、ZnO 0〜5%、TiO 0〜5%、Fe 0〜1%、SO 0〜1%含有、
(5)下記酸化物換算の質量%で、SiO 55〜65%、Al 1〜3%、MgO 0〜1%、CaO 0〜2%、SrO 8〜12%、BaO 5〜12%、ZrO 0〜3%、NaO 6〜9%、KO 7〜12%、ZnO 0〜1%、CeO 0〜1%、TiO 0〜1%、Fe 0〜1%、Sb 0〜1%、NiO 0〜0.02%、CoO 0〜0.003%含有、
(6)下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜60%、Al 1〜6%、MgO 0〜3%、CaO 1〜5%、SrO 0〜3%、BaO 0〜2%、PbO 20〜25%、NaO 4〜8%、KO 6〜10%、Sb 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(7)下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜70%、Al 0〜8%、MgO 0〜8%、CaO 0〜12%、SrO 0〜14%、BaO 0〜14%、ZrO 0〜10%、NaO 0.5〜5%、KO 1〜10%、Fe 0〜1%、SO 0〜1%含有、
(8)下記酸化物換算の質量%で、SiO 55〜75%、Al 2〜20%、B 1〜12%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜1%、As 0〜2%、Sb 0〜2%、SnO 0〜1%、Fe 0〜1%含有。
【0014】
第八に、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、CRT用ガラスの廃ガラスをガラス原料の一部に用いることを特徴とする。
【0015】
第九に、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法は、フロート法でガラス基板を成形することを特徴とする。このようにすれば、大型のガラス基板を安定して作製することができ、結果として、ガラス基板の作製コストを低廉化することができる。
【0016】
第十に、本発明の太陽電池用ガラス基板は、上記のいずれかに記載の方法で作製されてなることを特徴とする。
【0017】
第十一に、本発明の太陽電池用ガラス基板は、歪点が560℃以上であり、且つカルコパイライト系薄膜多結晶太陽電池または色素増感型太陽電池に用いることを特徴とする。なお、「カルコパイライト系薄膜多結晶太陽電池」は、IB−IIIB−VIB族の化合物を用いた太陽電池を指し、CuInSe:CIS系、Cu(In,Ga)Se:CIGS系、Cu(In,Ga)(Se,S):CIGSS系等の光吸収層を有する太陽電池を指す。
【0018】
第十二に、本発明の太陽電池用カバーガラスは、ガラス原料の一部に廃ガラスを用い、ガラス原料をガラス溶融窯で溶融した後、カバーガラスに成形することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法において、ガラス原料中の廃ガラスの含有量は1〜90質量%、10〜85質量%、特に30〜75質量%が好ましい。廃ガラスの含有量が少なくなると、廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。一方、廃ガラスの含有量が多くなると、ガラス組成を調整し難くなるとともに、溶融時にガスを発生させる炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、清澄剤等をガラス原料中に導入し難くなり、このことに起因して、溶融ガラスの均質性が低下したり、脱泡し難くなる等の不具合が発生しやすくなる。なお、不均質なガラス基板は、熱処理により、ガラス基板に歪みが入りやすく、これが割れ等の原因になるおそれがある。また、泡がガラス基板表面に露出すると、電極膜を均一に成膜し難くなる。なお、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法において、廃ガラスの粒度は10mm以下、特に5mm以下が好ましい。廃ガラスの粒度が大きくなると、ガラスの均質性が低下しやすくなる。
【0020】
本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法において、ガラス基板は、ガラス組成として、下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜75%、Al 1〜18%、B 0〜12%、MgO 0〜10%、CaO 0〜20%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、RO(MgO+CaO+SrO+BaO) 5〜25%、NaO 0〜20%、KO 0〜15%、ZrO0〜10%含有することが好ましい。
【0021】
本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法において、ガラス基板のガラス組成を上記のように限定した理由を以下に説明する。
【0022】
SiOは、ガラスネットワークを形成する成分であるとともに、歪点を高める成分であり、その含有量は50〜75%、より好ましくは50〜60%である。SiOの含有量が少なくなると、高温粘度が低くなり過ぎ、液相粘度が低下しやすくなるとともに、廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。一方、SiOの含有量が多くなると、高温粘度が高くなり過ぎ、溶融性や成形性が低下しやすくなる。
【0023】
は、融剤として働き、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、その含有量は0〜12%、好ましくは0〜8%である。Bの含有量が多くなると、高温粘度が低くなり過ぎ、液相粘度が低下しやすくなるとともに、歪点が低下しやすくなる。
【0024】
Alは、歪点を高める成分であり、その含有量は1〜18%、好ましくは4〜15%である。Alの含有量が少なくなると、廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。一方、Alの含有量が多くなると、高温粘度が高くなり過ぎ、溶融性や成形性が低下しやすくなる。
【0025】
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは1〜8%である。MgOの含有量が少なくなると、窓ガラス等の廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。一方、MgOの含有量が多くなると、歪点が上昇する傾向があるものの、高温粘度が低くなり過ぎ、またガラスが失透しやすくなるため、液相温度が上昇し、液相粘度が低下しやすくなる。
【0026】
CaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、その含有量は0〜20%、好ましくは2〜10%である。CaOの含有量が少なくなると、窓ガラス、瓶ガラス、CRT用ファンネルガラス等の廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。一方、CaOの含有量が多くなると、歪点が上昇する傾向があるものの、高温粘度が低くなり過ぎ、またガラスが失透しやすくなるため、液相温度が上昇し、液相粘度が低下しやすくなる。
【0027】
SrOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、その含有量は0〜15%、好ましくは2〜12%である。SrOの含有量が多くなると、歪点が上昇する傾向があるものの、高温粘度が低くなり過ぎ、またガラスが失透しやすくなるため、液相温度が上昇し、液相粘度が低下しやすくなる。一方、SrOの含有量が少なくなると、CRT用パネルガラス等の廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。
【0028】
BaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、その含有量は0〜15%、好ましくは2〜12%である。BaOの含有量が少なくなると、CRT用パネルガラス等の廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。一方、BaOの含有量が多くなると、歪点が上昇する傾向があるものの、高温粘度が低くなり過ぎ、またガラスが失透しやすくなるため、液相温度が上昇し、液相粘度が低下しやすくなる。
【0029】
RO(MgO+CaO+SrO+BaO)は104.0dPa・sにおける温度や溶融温度を低下させる成分であり、その含有量は5〜25%、好ましくは10〜25%、より好ましくは17〜25%である。RO(MgO+CaO+SrO+BaO)の含有量が少なくなると、歪点が低下する傾向にあり、高温粘度104.0dPa・sにおける温度や溶融温度が上昇する傾向にある。一方、RO(MgO+CaO+SrO+BaO)の含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなり、ガラス基板に成形し難くなる。
【0030】
ZrOは、歪点を高める成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは0〜6%である。ZrOの含有量が多くなると、高温粘度が高くなり過ぎ、溶融性や成形性が低下しやすくなる。
【0031】
NaOは、高温粘度を大幅に低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、その含有量は0〜20%、好ましくは0.5〜8%である。NaOの含有量が少なくなると、窓ガラス、瓶ガラス、CRT用パネルガラス、CRT用ファンネルガラス、PDP用ガラス基板等の廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。一方、NaOの含有量が多くなると、高温粘度が低くなり過ぎ、液相粘度が低下しやすくなるとともに、歪点が低下しやすくなる。
【0032】
Oは、高温粘度を大幅に低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、その含有量は0〜15%、好ましくは0〜13%である。KOの含有量が少なくなると、CRT用パネルガラス、CRT用ファンネルガラス、PDP用ガラス基板等の廃ガラスのリサイクルを推進し難くなる。一方、KOの含有量が多くなると、高温粘度が低下しやすくなり、液相粘度が低下しやすくなるとともに、歪点が低下しやすくなる。
【0033】
As、Sb、SnO、SOは、清澄剤であり、ガス放出によりガラスを均質化させる成分であり、As+Sb+SnO+SOの含有量は0.05〜5%、好ましくは0.1〜1.0%である。As+Sb+SnO+SOの含有量が少なくなると、清澄効果が乏しくなり、脱泡し難くなるとともに、ガラスを均質化し難くなる。一方、As+Sb+SnO+SOの含有量が多くなると、ガスが発生し過ぎるため、溶解中の溶融ガラスの表面に泡層が生じ、ガラスを均質に加熱し難くなったり、泡層に起因した泡が製品に流れ込みやすくなる。
【0034】
なお、上記成分以外にも他の成分(例えば、Fe、TiO、CeO、NiO、CoO)を20%までガラス組成中に添加することができる。
【0035】
本発明のガラス基板の製造方法において、液相粘度が104.0dPa・s以上、104.4dPa・s以上、104.8dPa・s以上、特に105.0dPa・s以上になるように、ガラス原料を調合することが好ましい。液相粘度が104.0dPa・sより低いと、成形時にガラスに結晶が析出しやすくなり、ガラス基板の製造効率が低下する。ガラス原料中の廃ガラスの含有量が多い場合、成形時にガラスが失透しやすくなるため、液相粘度を上記範囲に規制する必要性が高い。
【0036】
本発明のガラス基板の製造方法において、歪点が560℃以上、570℃以上、特に580℃以上になるように、ガラス原料を調合することが好ましい。歪点が560℃より低いと、高温の熱処理工程でガラス基板が熱変形しやすくなる。
【0037】
本発明のガラス基板の製造方法において、熱膨張係数が75〜95×10−7/℃、特に80〜90×10−7/℃になるように、ガラス原料を調合することが好ましい。このようにすれば、ガラス基板の熱膨張係数が、CIS等の光吸収層、酸化チタン等の酸化物半導体多孔質膜等の熱膨張係数に整合し、材料間の残留応力を低減することができ、結果として、これらの材料の剥離を防止することができる。ここで、「熱膨張係数」は、直径5.0mm、長さ20mmの円柱を測定試料とし、ディラトメーターで30〜380℃の温度範囲における線熱膨張係数の平均値を指す。
【0038】
本発明のガラス基板の製造方法において、104.0dPa・sにおける温度が1200℃以下、1170℃以下、特に1150℃以下になるように、ガラス原料を調合することが好ましい。このようにすれば、フロート法、オーバーフローダウンドロー法、ロールアウト法等でガラス基板を成形しやすくなる。104.0dPa・sにおける温度が1200℃より高いと、成形の際に成分揮発によって溶融ガラスが変質しやすく、また成形温度が高温になるため、成形装置への負荷が大きくなり、結果として、成形装置のライフが短くなり、ガラス基板の作製コストが高騰する。一方、104.0dPa・sにおける温度が低過ぎると、歪点が低下する傾向があるため、104.0dPa・sにおける温度を1050℃以上とするのが好ましい。ここで、「104.0dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0039】
現在、種々のガラス製品が市場に流通しているが、環境的観点から、ガラス製品から発生する廃ガラスをリサイクルする必要性が高い。特に、窓ガラス、瓶ガラス、蛍光ランプ用ガラス、ガラスファイバー、CRTパネルガラス、CRTファンネルガラス、PDP用ガラス基板、LCD用ガラス基板等は、流通量が多く、廃ガラスをリサイクルする必要性が高い。これらのガラス組成は、製造メーカーにより多少異なるが、概ね以下に示す通りである。
(1)窓ガラスは、下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、MgO 1〜6%、CaO 2〜12%、NaO 10〜15%、KO 0〜4%、SO 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(2)瓶ガラスは、下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、MgO 0〜4%、CaO 6〜14%、NaO 10〜15%、KO 0〜4%、SO 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(3)蛍光ランプ用ガラスは、下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、B 0〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、BaO 0〜5%、NaO 0〜20%、KO 0〜10%、Sb 0〜1%、TiO 0〜5%、Fe 0〜1%含有、
(4)ガラスファイバーは、下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜75%、Al 0〜30%、B 0〜30%、MgO 0〜10%、CaO 0〜30%、NaO 0〜15%、KO 0〜15%、ZrO 0〜30%、ZnO 0〜5%、TiO 0〜5%、Fe 0〜1%、SO 0〜1%含有、
(5)CRTパネルガラスは、下記酸化物換算の質量%で、SiO 55〜65%、Al 1〜3%、MgO 0〜1%、CaO 0〜2%、SrO 8〜12%、BaO 5〜12%、ZrO 0〜3%、NaO 6〜9%、KO 7〜12%、ZnO 0〜1%、CeO 0〜1%、TiO 0〜1%、Fe 0〜1%、Sb 0〜1%、NiO 0〜0.02%、CoO 0〜0.003%含有、
(6)CRTファンネルガラスは、下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜60%、Al 1〜6%、MgO 0〜3%、CaO 1〜5%、SrO 0〜3%、BaO 0〜2%、PbO 20〜25%、NaO 4〜8%、KO 6〜10%、Sb 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(7)PDP用ガラス基板は、下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜70%、Al 0〜8%、MgO 0〜8%、CaO 0〜12%、SrO 0〜14%、BaO 0〜14%、ZrO 0〜10%、NaO 0.5〜5%、KO 1〜10%、Fe 0〜1%、SO 0〜1%含有、
(8)LCD用ガラス基板は、下記酸化物換算の質量%で、SiO 55〜75%、Al 2〜20%、B 1〜12%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜1%、As 0〜2%、Sb 0〜2%、SnO 0〜1%、Fe 0〜1%含有。
【0040】
本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法において、CRT用ガラス(CRTパネルガラス、CRTファンネルガラス)の廃ガラスを原料の一部に用いることが好ましい。使用済みブラウン管テレビを解体して素材の種類別等に分別し、できるだけ多くの部材を資源として再利用することが要請されており、(財)家電製品協会では、リサイクルプラントが開発され、家電メーカー各社においても解体手段が種々提案されている。特に、ブラウン管テレビの構成部品において、CRT用ガラスは大きい容積を占め、これを分別して、ガラス原料としてリサイクルする必要性が高い。そこで、CRT用ガラスの廃ガラスを原料の一部に用いて、太陽電池用ガラス基板を作製すると、上記要請を的確に満たすことができる。
【0041】
本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法において、成形方法は、フロート法、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、リドロー法、ロールアウト法等が利用可能である。特に、フロート法は、大型のガラス基板を安価に作製することができる。フロート法の場合、ガラス組成中に、清澄剤として、As、Sbを添加しないことが好ましい。このようにすれば、As、Sbがフロートバス中で還元されて、金属異物が析出する事態を防止することができる。
【0042】
本発明の太陽電池用ガラス基板は、上記のいずれかに記載の方法で作製されてなることを特徴とする。ここで、本発明の太陽電池用ガラス基板の技術的特徴(好適なガラス組成、ガラス特性等)は、上記した通りであり、ここでは、その記載を省略する。
【0043】
本発明の太陽電池用ガラス基板は、歪点が560℃以上であり、且つカルコパイライト系薄膜多結晶太陽電池に用いることが好ましい。カルコパイライト系薄膜多結晶太陽電池は、まずガラス基板上にスパッタリング等により電極(例えばMo)を成膜した後、スパッタリング法、蒸着法等により光吸収層の前駆体を作製し、300〜650℃に熱処理して光吸収層を成膜する。続いて、バッファー層(例えばCdS)を化学析出法等で形成するとともに、窓層(例えばZnO)および透明導電膜(例えばITO)をスパッタリング法等で形成する。光吸収層を成膜する際、熱処理温度を高温にすると、熱拡散による粒子の再構成等を推進することができる。本発明の太陽電池用ガラス基板は、廃ガラスのリサイクルを推進できる効果に加えて、歪点が560℃以上であるため、高温で熱処理してもガラス基板が変形し難く、ガラス基板上に光吸収層を安定して成膜することができ、結果として、カルコパイライト系薄膜多結晶太陽電池の特性を高めることができる。
【0044】
本発明の太陽電池用ガラス基板は、歪点が560℃以上であり、且つ色素増感型太陽電池に用いることが好ましい。色素増感型太陽電池は、まずガラス基板上に透明導電膜(例えばITO、FTO、ATO)をスパッタリング法等で成膜した後、酸化物半導体微粒子をガラス基板上に塗布し、熱処理することで酸化物半導体多孔質膜を成膜する。ここで、酸化物半導体多孔質膜を成膜する際の熱処理温度は600℃を超える場合もある。次に、酸化物半導体多孔質膜に色素を吸着させる。続いて、酸化物半導体多孔質膜を成膜したガラス基板と透明導電膜を成膜したガラス基板により、セルを作製し、ヨウ素レドックス等の酸化還元対を含む電解質溶液でセル内を満たす。本発明の太陽電池用ガラス基板は、廃ガラスのリサイクルを推進できる効果に加えて、歪点が560℃以上であるため、高温で熱処理温度してもガラス基板が変形し難く、ガラス基板上に酸化物半導体多孔質膜を安定して成膜することができ、結果として、色素増感型太陽電池の特性を高めることができる。
【0045】
本発明の太陽電池用ガラス基板は、板厚が4mm以下、3mm以下、特に2mm未満が好ましい。ガラス基板の板厚が小さい程、太陽電池を薄型化、軽量化することができる。
【0046】
本発明の太陽電池用カバーガラスの製造方法は、ガラス原料の一部に廃ガラスを用い、ガラス原料をガラス溶融窯で溶融した後、カバーガラスに成形することを特徴とする。本発明の太陽電池用ガラス基板は、光が入射しない側に使用する基板のみならず、光が入射する側の基板(カバーガラス)に使用してもよい。光が入射する側の基板に使用する場合、紫外線着色を防止するために、ガラス組成中にTiOを0.1〜5%添加してもよい。また、機械的強度を高めるために、ガラス基板の表面を強化処理(物理強化または化学強化)してもよい。なお、本発明の太陽電池用ガラス基板が有する技術的特徴(ガラス組成、公的な特性等)は、本発明の太陽電池用カバーガラスも同様に有することができるが、便宜上、その説明は省略する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
表1は廃ガラスのガラス組成を示し、表2は本発明の実施例(試料No.1〜7)を示し、表3は本発明の比較例(試料No.8、9)を示している。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
次のようにして、表2、3に記載の各試料を調製した。5mm以下の大きさに粉砕した各廃ガラスを用意し、廃ガラスと酸化物原料を混合して、表2、3に記載のガラス組成になるように、ガラス原料を作製した。次に、ガラス原料を連続溶融炉で溶融し、得られた溶融ガラスをガラス基板に成形した。続いて、得られたガラス基板を200mm角の大きさに切断加工し、各試料を得た。
【0053】
得られた各試料につき、歪点、液相温度、液相粘度、104.0dPa・sにおける温度、均質性を評価した。
【0054】
歪点は、ASTM C336−71に記載の方法で測定した値である。
【0055】
液相温度は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値である。
【0056】
液相粘度は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0057】
104.0dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
【0058】
均質性は、各試料を10mm×40mmに切断し、光路長40mmにおける透過光を目視観察することで評価した。均質性が非常に良いものを「◎」、良いものを「○」、悪いものを「×」で評価した。
【0059】
表2から明らかなように、試料No.1〜7は、廃ガラスのリサイクル率が10%以上、歪点が535℃以上、液相温度が1080℃以下、液相粘度が104.4dPa・s以上であり、均質性の評価も良好であった。
【0060】
一方、表3から明らかなように、試料No.8は、廃ガラスのリサイクル率が100%であるため、均質性の評価が不良であった。なお、試料No.9は、廃ガラスのリサイクル率が0%であり、近年の環境的要請を満たしていない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の太陽電池用ガラス基板は、カルコパイライト系薄膜多結晶太陽電池、色素増感型太陽電池のみならず、シリコン太陽電池(単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、微結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池を含む)、CdTe太陽電池、有機薄膜太陽電池に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料の一部に廃ガラスを用い、ガラス原料をガラス溶融窯で溶融した後、ガラス基板に成形することを特徴とする太陽電池用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
ガラス原料中の廃ガラスの含有量が1〜90質量%であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
ガラス組成として、下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜75%、Al 1〜18%、B 0〜12%、MgO 0〜10%、CaO 0〜20%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、RO(MgO+CaO+SrO+BaO) 5〜25%、NaO 0〜20%、KO 0〜15%、ZrO0〜10%含有するように、ガラス原料を調合することを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
ガラス組成として、下記酸化物換算の質量%で、As+Sb+SnO+SOを0.05〜5%含有するように、ガラス原料を調合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
液相粘度が104.0dPa・s以上になるように、ガラス原料を調合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
歪点が560℃以上になるように、ガラス原料を調合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池用ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
廃ガラスのガラス組成が下記(1)〜(8)のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用ガラス基板の製造方法。
(1)下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、MgO 1〜6%、CaO 2〜12%、NaO 10〜15%、KO 0〜4%、SO 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(2)下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、MgO 0〜4%、CaO 6〜14%、NaO 10〜15%、KO 0〜4%、SO 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(3)下記酸化物換算の質量%で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、B 0〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、BaO 0〜5%、NaO 0〜20%、KO 0〜10%、Sb 0〜1%、TiO 0〜5%、Fe 0〜1%含有、
(4)下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜75%、Al 0〜30%、B 0〜30%、MgO 0〜10%、CaO 0〜30%、NaO 0〜15%、KO 0〜15%、ZrO 0〜30%、ZnO 0〜5%、TiO 0〜5%、Fe 0〜1%、SO 0〜1%含有、
(5)下記酸化物換算の質量%で、SiO 55〜65%、Al 1〜3%、MgO 0〜1%、CaO 0〜2%、SrO 8〜12%、BaO 5〜12%、ZrO 0〜3%、NaO 6〜9%、KO 7〜12%、ZnO 0〜1%、CeO 0〜1%、TiO 0〜1%、Fe 0〜1%、Sb 0〜1%、NiO 0〜0.02%、CoO 0〜0.003%含有、
(6)下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜60%、Al 1〜6%、MgO 0〜3%、CaO 1〜5%、SrO 0〜3%、BaO 0〜2%、PbO 20〜25%、NaO 4〜8%、KO 6〜10%、Sb 0〜1%、Fe 0〜1%含有、
(7)下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜70%、Al 0〜8%、MgO 0〜8%、CaO 0〜12%、SrO 0〜14%、BaO 0〜14%、ZrO 0〜10%、NaO 0.5〜5%、KO 1〜10%、Fe 0〜1%、SO 0〜1%含有、
(8)下記酸化物換算の質量%で、SiO 55〜75%、Al 2〜20%、B 1〜12%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜1%、As 0〜2%、Sb 0〜2%、SnO 0〜1%、Fe 0〜1%含有。
【請求項8】
CRT用ガラスの廃ガラスをガラス原料の一部に用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
フロート法でガラス基板を成形することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法で作製されてなることを特徴とする太陽電池用ガラス基板。
【請求項11】
歪点が560℃以上であり、且つカルコパイライト系薄膜多結晶太陽電池または色素増感型太陽電池に用いることを特徴とする請求項10に記載の太陽電池用ガラス基板。
【請求項12】
ガラス原料の一部に廃ガラスを用い、ガラス原料をガラス溶融窯で溶融した後、カバーガラスに成形することを特徴とする太陽電池用カバーガラスの製造方法。





【公開番号】特開2010−143790(P2010−143790A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323012(P2008−323012)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】