説明

太陽電池用バックシートおよび太陽電池

【課題】 高温・多湿下に静置した後でも、水蒸気バリア性に優れた太陽電池用バックシートを提供する。
【解決手段】 白色乳化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムと、第一の水性ラテックス層と、第一の無機蒸着層とを該順に連続して有する第一の積層ユニットと、末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルムと、第二の水性ラテックス層と、第二の無機蒸着層とを該順に連続して有する、第二の積層ユニットとを、接着層を介して、第一の無機蒸着層側と第二の無機蒸着層側が対向するように配置された太陽電池用バックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気バリア性に優れた太陽電池用バックシートおよび太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池用バックシートが広く検討されている。例えば、特許文献1には、耐候性・耐加水分解性を有する基材フィルムと、透明プライマー層と、無機化合物からなる蒸着層と、オーバーコート層と、耐熱性を有する基材フィルムとからなる太陽電池用バックシートが記載されている。また、特許文献2には、基材フィルムの表面にバリア層を設けた積層ユニット同士を接着剤で、バリア層同士が対向するように貼り合わせた太陽電池用バックシートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−227203号公報
【特許文献2】特開2008−130647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明者が検討したところ、上述のような太陽電池用バックシートは、近年の太陽電池用バックシートの要求に見合ったものではないことが分かった。すなわち、特許文献1に記載の太陽電池用バックシートでは、水蒸気バリア性能が十分ではない。一方、特許文献2では、バリア層として、アルミ箔を用いることが想定されており、絶縁性保護のニーズに沿っていない。さらに、特許文献2において、アルミ箔を用いない場合、必要な水蒸気バリア性能を満たすようにすると、コストが高くなったり、薄膜化が難しくなったりする等の問題がある。
すなわち、新たな太陽電池用バックシートの開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本願発明者が検討を行った結果、ラミネート型太陽電池用バックシートにおいて、バリア性能を高めるためには、基材フィルムの上に、有機層と無機蒸着層を該順に積層した積層ユニット同士を対向させた構成とすることが有効であることが分かった。しかしながら、本発明者がさらに検討したところ、単に、積層ユニット同士を対向させた構成では、高温下に静置した後の水蒸気バリア性が不十分であることが分かった。この理由として、基材フィルムと有機層の間の界面部において、基材フィルムが加水分解を起こしてしまうことが理由であることが分かった。そこで、基材フィルムとして、白色乳化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムと末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルムをそれぞれ選択し、さらに、有機層として、水性ラテックスを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には以下の手段により上記課題は解決された。
【0006】
(1)白色乳化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムと、第一の水性ラテックス層と、第一の無機蒸着層とを該順に連続して有する第一の積層ユニットと、末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルムと、第二の水性ラテックス層と、第二の無機蒸着層とを該順に連続して有する、第二の積層ユニットとを、接着層を介して、第一の無機蒸着層側と第二の無機蒸着層側が対向するように配置された太陽電池用バックシート。
(2)接着層の厚みが2μm以上10μm未満である(1)に記載の太陽電池用バックシート。
(3)白色化剤が酸化チタン粒子である、(1)または(2)に記載の太陽電池用バックシート。
(4)前記末端カルボキシル基量が10当量/ton〜30当量/tonである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
(5)無機蒸着層が酸化アルミニウムまたは酸化珪素を主成分とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
(6)第一の水性ラテックス層および第二の水性ラテックス層の少なくとも一方の厚みが、0.5〜3.0μmである、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
(7)第一の水性ラテックス層および第二の水性ラテックス層の少なくとも一方が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂およびオレフィン樹脂から選択されるいずれかの樹脂を主成分とする、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
(8)接着層が二液型ポリウレタン系接着剤を硬化して形成される、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
(9)第一の積層ユニットと、第二の積層ユニットをニップロールにより貼り合せてなる、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートを有する太陽電池素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高温・高湿下に長時間放置した後においても、高い水蒸気バリア性を維持できる太陽電池用バックシートを提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の太陽電池用バックシートの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明の太陽電池用バックシートの詳細について、図1を例にして説明する。本発明の太陽電池用シートは、白色乳化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルム11と、第一の水性ラテックス層12と、第一の無機蒸着層13とを該順に連続して有する第一の積層ユニット1と、末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム21と、第二の水性ラテックス層22と、第二の無機蒸着層23とを該順に連続して有する、第二の積層ユニット2とを、接着層3を介して、第一の無機蒸着層側と第二の無機蒸着層側が対向するように配置されたものである。このような構成とすることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムの耐加水分解性が向上し、高温多湿下に長時間おいた場合でも、水蒸気バリア性を維持することが可能になる。
尚、図1は、本発明の構成の一例であり、他の層を有していても良い。具体的には、第一の積層ユニットおよび/または第二の積層ユニットに、水性ラテックス層および無機蒸着層が複数ずつ設けられていても良いし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の機能性層が含まれていても良い。
【0011】
白色乳化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルム
白色化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルム(白色化剤を含有するPETフィルム)は、PET樹脂に白色顔料を練り混んだ後製膜したものや、白色顔料を分散したバインダーをPETフィルム上に塗工したものが使用される。具体的には、特開2002−26354号公報や特開2006−210557号公報に記載の技術を採用できる。
白色化剤を含有するPETフィルムの厚みは50μm〜200μmが好ましく、100μm〜200μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、入射光を反射させて太陽電池素子に戻すことにより、太陽電池素子の電力変換効率を向上させることができる。また、同時に入射光を反射することにより、太陽電池モジュール内の加温を下げたり、入射側と反対側への太陽光の浸入を防いだりすることで、バックシートの部材の劣化を低減することができる。
白色化剤としては、酸化チタンや酸化ケイ素等の無機白色材料、有機白色顔料、有機白色染料などを適用することができ、無機白色材料が好ましく、酸化ケイ素がさらに好ましい。本発明では、白色化剤の含量は、0.5〜60.0g/m2であることが好ましく、1.0〜50.0g/m2であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、太陽電池素子に入射されなかった入射光成分を十分に太陽電池素子側に反射させることができる。
白色化剤は、粒子状であることが好ましく、平均粒子径が100nm〜30μmであることが好ましい。
白色化剤を含有するPETフィルムの数平均分子量は13,000〜50,000であることが望ましい。
【0012】
水性ラテックス層
本発明では、白色乳化剤を含有するPETフィルムと第一の無機蒸着層の間および耐加水分解性PETフィルムと第二の無機蒸着層の間に、それぞれ、水性ラテックス層を設ける。このような水性ラテックス層を設けることにより、それぞれのPETフィルムの耐加水分解性が向上し、高温下での水蒸気バリア性が向上する傾向にある。
尚、第一の水性ラテックス層と第二の水性ラテックス層は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていても良い。
【0013】
水性ラテックス層とは、水性ラテックスを塗工したのちに分散媒を除去するとともに分散質(高分子材料)を融着させて形成させる連続層を意味する。
水性ラテックス層は、例えば、疎水性高分子材料を水系分散媒に分散させた水性ラテックスを、100℃以上の温度で加熱乾燥して水系分散媒を蒸発除去して形成することができる。加熱乾燥の段階で、通常は、水性ラテックス層の下層に融着する。
ここで、疎水性高分子材料としては、ポリオレフィン系などの合成樹脂、シリコーンゴムなどのシリコーン樹脂、ポリエステル系などの合成繊維、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、天然ゴムなどの天然高分子が例示され、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂およびオレフィン樹脂から選択されるいずれかの樹脂を主成分とする高分子材料が好ましい。水のみを用いることが望ましいが、水を主たる分散媒としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば有機溶剤を含有していてもよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルセロソルブが例示され、イソプロピルアルコール、n-ブチルセロソルブが好ましい。分散媒に対する有機溶媒としては20重量%以下であることが望ましい。水系ラテックス層を形成するための組成物は、疎水性高分子材料20〜50重量%と、水系分散媒80〜50重量%からなることが好ましい。また、これ以外の成分を含んでいてもよい。 例えば、架橋剤を含んでいても良い。架橋剤を含めることにより、架橋された高分子材料の層を形成できる。架橋剤としては、アクリレートや多官能イソシアネート、カルボジイミドが挙げられる。
水性ラテックス層の厚さは、0.5〜3.0μmが好ましく、0.7〜2.0μmであることがさらに好ましく、0.8〜1.5μmであることがよりさらに好ましい。
【0014】
無機蒸着層
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)がある。生産性ならびにコストの観点で真空蒸着法が好ましい。無機蒸着層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Mg、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、SiまたはAlの金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物がさらに好ましく、SiまたはAlの金属酸化物が特に好ましく、酸化珪素が最も好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
無機酸化物の平均表面粗さ(Ra)は0.05〜10nmの範囲が好ましく、0.1〜5nmがより好ましく、0.1〜3nmが最も好ましい。無機酸化物層のRaは、平滑な基材や平滑なアンダーコート層を用いることで達成することが可能である。基材の入手性、ハンドリング性から平滑なアンダーコート層を設置することが好ましい。平滑な下地層は有機材料のコーティングによって得ることができる。
【0015】
無機蒸着層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜300nmの範囲内であり、好ましくは10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜100nmである。膜厚を5nm以上とすることにより、より均一な膜とすることができ、ガスバリア性層としての機能を向上させることができる。また、膜厚を300nm以下とすることにより、薄膜の柔軟性を十分に保つことができ、曲げや引張りなどの外力の要因により薄膜が破壊するのをより効果的に抑制することができる。無機蒸着層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0016】
末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム
本発明では、末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム(耐加水分解性PETフィルム)を用いる。このような範囲とすることにより、高温高湿環境下での使用でも強度低下を引き起こすまでの時間を延ばすことができる。また、耐加水分解性PETの末端カルボキシル基量は、好ましくは10当量/ton〜30当量/tonであり、より好ましくは15当量/ton〜25当量/tonである。
このような末端カルボキシ基量を有するPETの製造方法は、公知の方法に従って製造でき、例えば、特許4320928号公報の記載を参酌できる。
耐加水分解性PETフィルムの厚さは、50〜200μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。
耐加水分解性PETフィルムの数平均分子量は13,000〜50,000であることが好ましく、15,000〜35,000であることがより好ましい。
また、耐加水分解性PETフィルムは添加剤を含んでいてもよく、耐加水分解改質剤、固相重合促進剤、酸化防止材、着色剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、難燃材等が挙げられる。
【0017】
接着層
本発明では、第一の積層ユニットと第二の積層ユニットが、無機蒸着層同士が対向するように接着層を介して配置されている。ここで、接着層は、接着剤を主成分とする層であり、通常、接着層の70重量%以上が、接着剤であることをいい、接着層の80重量%以上が接着剤であることが好ましい。接着剤の種類は特に定めるものではないが、ウェットラミネーション用接着剤、ホットメルトラミネーション用接着剤、ドライラミネーション用接着剤、ノンソルベント接着剤などが好ましく、ウェットラミネーション用接着剤、ドライラミネーション用接着剤が好ましい接着層の厚みを得る観点から好ましく、フィルム中の残留溶媒量を低くする観点から、ドライラミネーション用接着剤が好ましい。
ドライラミネーション用接着剤としては、酢酸ビニル系、アクリル樹脂系、塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリビニルアセタール系、非晶性ポリエステル系などの熱可塑性樹脂を用いるもの、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴム・エラストマーを用いるもの、ポリウレタン系のように架橋反応を用いるものなどがある。材料の入手性、使いやすさ、接着性能の観点からポリウレタン系接着剤が好ましい。
ポリウレタン系接着剤には一液反応型と二液反応型があるが、接着強度の安定性やポットライフの観点、ならびに炭酸ガスなどの発泡による影響の少なさから二液混合型が好ましい。二液ポリウレタン型接着剤は、ポリエステルポリオールとジイソシアネートの硬化タイプ、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートの硬化タイプを例示することができ、いずれも好ましい。
太陽電池は屋外で用いられるため、接着剤は耐候性材料であることが好ましい。接着剤は初期接着力だけでなく環境試験後の接着力を保持できることが望ましい。太陽電池用バックシートは通常促進評価として85℃、85%相対湿度(RH)の環境で2000時間以上の保存が必要とされるが、105℃、100%RH、168時間の保存の物性値に相当することが知られている。
接着層の厚さは、2μm以上10μm未満が好ましく、3μm〜8μmがより好ましく、4〜6μmがさらに好ましい。
【0018】
他の構成層
本発明の太陽電池用バックシートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の構成層を含んでいても良い。例えば、耐加水分解性PETフィルムおよび白色化剤を含有するPETフィルムのほかに必要に応じてPETフィルムや他の樹脂フィルムを積層して用いてもよい。このような樹脂フィルムは、例えば、太陽電池用バックシートとしての絶縁性、特に部分放電圧を確保するために用いられる。このような用途に用いられる樹脂フィルムの層厚は、例えば、部分放電圧1000V以上の仕様であれば合計300μm以上となるように構成することが好ましい。
また、他の構成層としては、無機蒸着層と有機層とからなるガスバリアユニットや、他の機能性層などが挙げられる。例えば、図1における第一の積層ユニット1または第二の積層ユニット2と接着層3の間に、易接着層等を設けることもできる。
【0019】
第一の積層ユニットと第二の積層ユニットは接着層によって第一の無機蒸着層側と第二の無機蒸着層側が対向するように配置される。ここで、第一の無機蒸着層側とは、第一の無機蒸着層と接着層の間に他の構成層が含まれない場合は、第一の無機蒸着層が接着層に接することをいい、上述のように、易接着層などが設けられている場合は、白色化剤を含有するPETフィルムよりも無機蒸着層に近い側が接着層側となることを意味する。第二の積層ユニットについても同様である。
【0020】
第一の積層ユニットと第二の積層ユニットの貼り合わせ方法は公知の方法を採用できるが、通常、接着剤を、第一の積層ユニット側に塗布し、ニップロール等で貼り合わせる。ニップロールは合成ゴム、シリコンゴムなどの弾力性のある材質のものが望ましい。ニップロールは40〜80℃の温度で加熱することが好ましい。また、ニップロールは同じ材質のものを上下2本用意し、0.1〜10MPaの圧力をかけながら等速度で互いに反転させる方向に回転駆動させて試料を通過させる方法が好ましい。
【0021】
水蒸気透過率
本発明における第一の積層ユニットおよび第二の積層ユニットは、MOCON社製AQUATRANを用い、40℃、相対湿度90%の条件で測定した水蒸気透過率が、それぞれ、0.2g/m2・day以下であることが好ましく、0.02g/m2・day以下であることがより好ましい。
【0022】
(太陽電池)
本発明の太陽電池用バックシートは、太陽電池に用いる。太陽電池素子は通常、一対の基板の間に、太陽電池として働くアクテイブ部分が設けられた構成をしているが、この一対の基板のバックシート側に用いることができる。
本発明の太陽電池用バックシートが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、特開2009−38236号公報等の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<水蒸気透過率>
水蒸気透過率測定装置として、MOCON社製AQUATRANを用い、40℃、相対湿度90%の条件で測定した。
【0024】
<末端カルボキシル基量>
PETフィルムを1mm角以下の大きさに裁断したのち、試料0.1gをベンジルアルコール20mlに加えて230℃で溶解し、クロロホルムを加えて塩基性に対する安定溶液とした。次にこの溶液を、フェノールレッドを指示薬にして、0.01NのNaOHのベンジルアルコールで滴定して、末端カルボキシル基量を定量した。
【0025】
<湿熱耐性評価>
実施例および比較例の太陽電池用バックシートは、それぞれ、PETフィルム同士がEVAシート(三井ファブロ製、ソーラーエバRC02B)を介して対向するようにして真空ラミネータ―(エヌシーピー社製)を用いてラミネートし、湿熱耐性評価用のモデル系で評価を行った。なお端面は1mmのアルミシートで周囲をかしめて封止し湿熱経時中の端面からの水蒸気の浸入がおこらないようにした。このようにして作製した湿熱耐性評価用のモデル試料を85℃85%RH2000時間前後の水蒸気透過率を比較することでバックシートの湿熱耐性を評価した。
【0026】
実施例1
第一の積層ユニットの製造
125μm厚の白色PETフィルム(東レ製ルミラーE20、白色化剤として酸化チタン粒子を含む)上に、ポリエステル系ラテックス(東洋紡製バイロナールMD−1200)をバーコート塗布し、160℃1分間で乾燥し水性ラテックス層を設置した。固形分膜厚は1.0μmであった。この水性ラテックス層上に、EB+イオンガン方式でプラズマアシスト可能な蒸着装置(シンクロン製、ACE1350IAD)を用い、イオンアシスト電圧:900V、酸素ガス流量:50sccm、アルゴンガス流量:8sccm)の条件でSiO(大阪チタニウムテクノロジーズ製)を蒸着源にして蒸着膜を形成し、表面に珪素酸化物の薄膜が形成された第一の積層ユニットを作製した。成膜速度は5nm/secで、無機蒸着層の厚みは50nmであった。また、無機蒸着層の表面粗さ(Ra)は1.57nmであった。第一の積層ユニットの水蒸気透過率は0.05g/m2・dayであった。
【0027】
第二の積層ユニットの製造
次に、テレフタル酸とジエチレングリコールを脱水縮合したのち、固相重合後に作製したPET樹脂ペレットを、溶融製膜して作製したPETフィルム(厚み:188μm、数平均分子量15,000、末端カルボキシル基量35当量/tonの耐加水分解性PET上に、ポリエステル系ラテックス(東洋紡製バイロナールMD−1200)をバーコート塗布し、160℃1分間で乾燥し水性ラテックス層を設置した。固形分膜厚は1.0μmであった。この水性ラテックス層上に、EB+イオンガン方式でプラズマアシスト可能な蒸着装置(シンクロン製、ACE1350IAD)を用い、イオンアシスト電圧:900V、酸素ガス流量:50sccm、アルゴンガス流量:8sccm)の条件でSiO(大阪チタニウムテクノロジーズ製)を蒸着源にして蒸着膜を形成し、表面に珪素酸化物の薄膜が形成された第二の積層ユニットを作製した。成膜速度は5nm/secで、無機蒸着層の厚みは50nmであった。また、蒸着フィルムの表面粗さ(Ra)は1.57nmであった。第二の積層ユニットの水蒸気透過率は0.05g/m2・dayであった。
【0028】
貼り合わせ
次に、第一の積層ユニットと第の積層ユニットを蒸着面が対向するようにドライラミネーションを行った。接着剤として大日精化製セイカボンドE−372(主剤)とC−76−2.0(硬化剤)を用いた。両者を配合比(質量)で17:2となるよう秤量し、酢酸エチルで10倍希釈した均一塗布液をスピンコーターで塗布した。接着剤濃度を変えるための希釈溶媒には酢酸エチルを用いた。90℃5分で溶剤を乾燥したのち、70℃のニップロールを通過させラミネートし、40℃、48時間のエージングを行った。
このようにして太陽電池用バックシート試料A−1を作製した。接着層の厚さはエージング後の試料のマイクロメーターによる無作為測定点10点の平均値とした。
【0029】
実施例2
実施例1の接着剤塗工液の希釈倍率を変えることで接着厚みを変化させた以外は実施例1と同じ方法で太陽電池用バックシート試料A−2〜5を作製した。
【0030】
実施例3
実施例1の水性ラテックス層を塗布液の希釈倍率を変えることにより水性ラテックス層の厚みを変えた以外は実施例1と同じ方法で太陽電池用バックシート試料A−6〜9を作製した。
【0031】
実施例4
実施例1の耐加水分解性PETを、固相重合条件を変えることにより末端カルボキシル基を変えた以外は実施例1と同じ方法で太陽電池用バックシート試料A−10〜12を作製した。
【0032】
比較例1
実施例1の水性ラテックス層を、非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロン270)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)溶液(7.5質量%)で設置した以外は実施例1と同じ方法で太陽電池用バックシート試料R−1を作製した。
【0033】
比較例2
実施例1の耐加水分解PET樹脂を、固相重合せずに作製した以外は実施例1と同じ方法で太陽電池用バックシート試料R−2を作製した。
【0034】
比較例3
実施例1の白色PETを透明PET(東レ製ルミラーS10、125μm)に変えた以外は実施例1と同じ方法で太陽電池用バックシートR−3を作製した。
【0035】
実施例5
実施例1の第一の積層ユニットを、アクリル樹脂バインダーに酸化チタン粒子(平均粒径約0.4μm)を質量比1:1で分散した白色塗布層を固形分10g/m2透明PET(125μm厚、東レ製S10)に設置した以外は実施例1と同じ方法にて太陽電池用バックシートA-13を作製した。
【0036】
実施例6
実施例5の白色塗布層を、酸化チタン粒子の代わりに硫酸バリウム(平均粒径約0.4μm)とした以外は実施例5と同じ方法にて太陽電池用バックシートA-14を作製した。
【0037】
実施例7
実施例5の白色塗布層を、酸化チタン粒子の代わりに炭酸カルシウム(平均粒径約0.4μm)とした以外は実施例5と同じ方法にて太陽電池用バックシートA-15を作製した。
【0038】
実施例8
接着剤として一液型ポリウレタン接着剤(ADEKA製ボンタイターU)を用いた以外は実施例1と同じ方法で太陽電池用バックシートA-16を作製した。
【0039】
実施例9
接着剤を非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロン600)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)溶液(7.5質量%)を用いた以外は実施例1と同じ方法で太陽電池用バックシートA-17を作製した。
【0040】
実施例10
実施例1の接着剤を二液型ポリウレタン接着剤(三井化学ポリウレタン製A-315/A10、脂肪族イソシアネート系)とした太陽電池用バックシートA-18、および二液型ポリウレタン接着剤(DIC製 LX-401A/SP-60、ポリエーテルポリウレタン系)とした太陽電池用バックシートA-19を作製した。
【0041】
実施例11
実施例1の貼り合わせをニップロールを使用する代わりに、油圧プレス機で1MPa、10秒間プレスする以外は実施例1と同じ方法で太陽電調バックシートA−20を作製した。
【0042】
以下にバックシートの構成と湿熱耐性評価結果を示す
【表1】

【0043】
上記の結果より、本発明の太陽電池用バックシートは、湿熱耐性の高い太陽電池用バックシートとして使用できることがわかった。
【符号の説明】
【0044】
1 第一の積層ユニット
11 白色乳化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルム
12 第一の水性ラテックス層
13 第一の無機蒸着層
2 第二の積層ユニット
21 末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム
22 第二の水性ラテックス層
23 第二の無機蒸着層
3 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色乳化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムと、第一の水性ラテックス層と、第一の無機蒸着層とを該順に連続して有する第一の積層ユニットと、末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルムと、第二の水性ラテックス層と、第二の無機蒸着層とを該順に連続して有する、第二の積層ユニットとを、接着層を介して、第一の無機蒸着層側と第二の無機蒸着層側が対向するように配置された太陽電池用バックシート。
【請求項2】
接着層の厚みが2μm以上10μm未満である請求項1に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項3】
白色化剤が酸化チタン粒子である、請求項1または2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
前記末端カルボキシル基量が10当量/ton〜30当量/tonである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項5】
無機蒸着層が酸化アルミニウムまたは酸化珪素を主成分とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
第一の水性ラテックス層および第二の水性ラテックス層の少なくとも一方の厚みが、0.5〜3.0μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項7】
第一の水性ラテックス層および第二の水性ラテックス層の少なくとも一方が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂およびオレフィン樹脂から選択されるいずれかの樹脂を主成分とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項8】
接着層が二液型ポリウレタン系接着剤を硬化して形成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項9】
第一の積層ユニットと、第二の積層ユニットをニップロールにより貼り合せてなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートを有する太陽電池素子。

【図1】
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【公開番号】特開2011−171417(P2011−171417A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32166(P2010−32166)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】