説明

太陽電池用ポリエステルフィルム

【課題】可視光領域と近赤外領域において高い反射率と、小さい反射指向性が要求される薄膜系太陽電池素子に好適な太陽電池用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】空洞含有ポリエステルフィルムであって、波長400〜1200nmの範囲における平均反射率が70%以上、95%以下であり、波長700〜1200nmの範囲における平均透過率が5%以上、30%以下である太陽電池用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用ポリエステルフィルムに関する。より詳しくは、太陽電池用バックシートに用いた際、反射率、特に赤外領域において、高い反射率が得られる太陽電池用バックシートに適した太陽電池用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因となる石油エネルギーに代わる、エネルギー手段として、太陽電池が注目を浴びており、その需要が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムであり、その心臓部は半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子単体をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年以上)に亘って素子を保護するため種々のパッケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性樹脂からなる充填材で間隙を埋め、裏面を耐熱、耐候性プラスチック材料などのバックシートと呼ばれる複数の層構成を有する保護シートで保護された構成になっている。
【0003】
バックシートは、例えば、薄膜シリコンを用いた太陽電池モジュールの場合、太陽電池素子側からポリエステルフィルム/接着剤/金属箔又は金属系薄膜層を有するフィルムなどの防湿層/接着剤/ポリフッ化ビニルフィルム又はポリエステル系高耐久防湿フィルム(最外層)などの積層構成が一般的である。
【0004】
太陽電池の変換効率を向上するために、太陽電池素子や太陽電池用バックシートの改良がなされている。例えば、太陽電池モジュールの前面側から入射した光が太陽電池素子を透過した場合にも、その光を反射することで太陽電池素子に再入射させ、光を有効に利用させることにより光起電力が向上する。
【0005】
したがって、太陽電池用バックシートには高い反射率と均一に近傍素子へ反射させるために小さい反射指向性が求められる。さらに太陽電池素子として用いられる結晶シリコンは、波長が400〜1200nmの範囲に感度を有し、可視光領域より、むしろ近赤外光領域に高い感度を有する。そのため、太陽電池用バックシートの反射特性は、可視光領域のみならず近赤外光領域(波長700〜1200nm)も重要となる。そこで、太陽電池用バックシートに用いられるポリエステルフィルムとしては例えば以下のものが提案されている。
【0006】
特許文献1ではポリエチレンテレフタレート樹脂に非相溶樹脂を混合し、フィルム製膜時に生成した気泡を利用して反射効率を向上させた太陽電池裏面封止用フィルムが提案されており、波長560nmにおける反射率が84から87%の太陽電池裏面封止用フィルムが例示されている。
【0007】
特許文献2ではプラスチックフィルムを構成するプラスチックに白色着色剤を配合した太陽電池裏面保護膜用プラスチックフィルムが提案されており、波長600〜1400nmの範囲における平均反射率が82から93%の太陽電池裏面保護膜用プラスチックフィルムが例示されている。
【0008】
特許文献3ではポリエステル樹脂に硫酸バリウム粒子を含有させた太陽電池裏面保護膜用白色ポリエステルフィルムが提案されており、波長400〜700nmの可視光領域における平均反射率が86から97%の太陽電池裏面保護膜用白色ポリエステルフィルムが例示されている。
【0009】
特許文献4では白色顔料を練り込んだ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや、微細な気泡を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムまたは光反射性を有する塗膜層を設けた樹脂フィルムを使用した太陽電池モジュールが提案されており、全光線反射率が95%及び97%のバックカバーフィルムが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−85270号公報
【特許文献2】特開2007−208179号公報
【特許文献3】特開2009−182186号公報
【特許文献4】特開2000−114565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、太陽電池用バックシートには太陽電池モジュールの高い変換効率を得るために可視光領域のみならず、近赤外領域においても高い反射率が求められ、その要求は今後ますます強まることが予想される。
【0012】
一般にフィルムに光反射性を付与するには前記特許文献にあるように、フィルムに発泡剤または白色顔料を添加する手法が用いられ、これら添加剤の添加量を増加させることによって反射率の向上が行なわれてきた。しかし、このような方法では可視光領域、近赤外領域とも反射率の向上は小さいものであるばかりでなく、発泡剤や白色顔料の大量添加によって、引っ張り強度等機械的強度が低下したり、折れ皺が発生しやすくなったりするため、強度の維持に限界があった。
【0013】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、可視光領域のみならず、近赤外領域においても高い反射率と、小さい反射指向性が要求される太陽電池用バックシートに好適な太陽電池用ポリエステルフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者等は、太陽電池用ポリエステルフィルムの反射率、特に近赤外領域の反射率について鋭意検討した結果、前記太陽電池構成において、発泡剤または白色顔料を大量に添加し、光反射フィルム単体での反射率を向上させるという従来技術とは異なり、所定の近赤外線透過率を有する白色フィルムを用いることによって、背面に配せられたアルミニウム箔等の金属性防湿層などの光反射性層が有する高い反射率を有効に利用することによって、可視光領域のみならず、特に近赤外領域においても高い反射率を得ることができ、且つ、小さい反射指向性を有することを見いだし、本願発明に至ったものである。
【0015】
すなわち、前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
本願の第1の発明は、空洞含有ポリエステルフィルムであって、波長400〜1200nmの範囲における平均反射率が70%以上、95%以下であり、波長700〜1200nmの範囲における平均透過率が5%以上、30%以下である太陽電池用ポリエステルフィルムである。
本願の第2の発明は、ポリエステルフィルム中の環状三量体含有量が5000ppm以下である前記太陽電池用ポリエステルフィルムである。
本願の第3の発明は、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する前記太陽電池用ポリエステルフィルムである。
本願の第4の発明は、前記太陽電池用ポリエステルフィルムと、当該太陽電池用ポリエステルフィルムの片面に配する光反射性層とを有する太陽電池用バックシートである。
本願の第5の発明は、前記光反射層がアルミニウムおよび銀のいずれか少なくとも1種を含む金属箔または金属系薄膜層である前記太陽電池用バックシートである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムを用いた太陽電池用バックシートは可視光領域のみならず、近赤外領域においても高い反射率が得られ、且つ、小さい反射指向性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムの構成主体は、空洞含有ポリエステルフィルムである。フィルムに含有される空洞の量、形態を制御することよって、波長400〜1200nmの範囲における平均反射率が70%以上、95%以下であり、波長700〜1200nmの範囲における平均透過率が5%以上、30%以下である太陽電池用ポリエステルフィルムが得られる。係る太陽電池用ポリエステルフィルムの背面に金属層などの光反射性層を配することにより、高い光反射性と小さい反射指向性を有する太陽電池用バックシートを得ることができる。本発明の空洞含有ポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル系樹脂に、該樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂を適度に分散させ、これを延伸することによって得ることができる。
【0018】
上記ポリエステル系樹脂とは、ジカルボン酸(またはそのエステル誘導体)とグリコールから形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとするものである。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル(メチルエステルなどのアルキルエステルなど)誘導体などや、その他公知の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。また、グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる方法の他、ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させるか、あるいはジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させるなどの方法によって製造することができる。
【0019】
本発明に用いるポリエステル系樹脂の重縮合時に用いられるポリエステル重縮合触媒はアンチモン化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物から選ぶことができる。また、重縮合触媒は1種でもよく、2種以上の触媒を併用しても良い。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムに用いるポリエステル組成物は、前記重縮合触媒の他、マグネシウム化合物とカリウム化合物およびリン化合物を同一の反応缶に添加することによって製造される。その詳細についは後述する。
【0021】
ポリエステルの重縮合時に用いられるポリエステル重縮合触媒としては、特に限定されないが三酸化アンチモンが安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるため好適である。三酸化アンチモンを触媒とするポリエステル樹脂を得るには公知の方法を用いることができる。例えば特許第4023220号公報中に挙げられているポリエステル樹脂が例示できる。
【0022】
また、上記以外にも重縮合触媒として、ゲルマニウム化合物、又はチタン化合物を用いることも好ましい。さらに好ましい重縮合触媒としては、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する触媒、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒、リン化合物のアルミニウム塩を含有する触媒が挙げられる。アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒を用いることにより、三酸化アンチモン触媒を用いて重合されたポリエステル樹脂を用いた場合より、製膜工程中の押し出し機内、延伸工程、および熱固定工程での環状三量体の生成を低減できるためである。この理由については定かではないがアルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒はポリエステル樹脂の熱劣化を抑制する作用があるものと推察される。
【0023】
以下に本発明で用いることができる、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒について詳述するが、当然これに限定するものではない。
【0024】
前記アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物として、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物を限定なく使用することができる。
【0025】
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
【0026】
前記アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜0.05モル%が好ましく、さらに好ましくは、0.005〜0.02モル%である。添加量が0.001モル%未満であると触媒活性が十分に発揮されない場合があり、添加量が0.05モル%以上になると、熱安定性や熱酸化安定性の低下、触媒に起因する異物の発生や着色の増加が問題になる場合が発生する。この様にアルミニウム成分の添加量が少なくても本発明の重合触媒は十分な触媒活性を示す点に大きな特徴を有する。その結果、熱安定性や熱酸化安定性が優れ、触媒に起因する異物や着色を低減することができる。
【0027】
前記重縮合触媒を構成するフェノール系化合物としては、フェノール構造を有する化合物であれば特に限定はされないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-メチルフェノール、2,6-ジイソプロピル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-オクチル-4-n-プロピルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-n-オクチルフェノール、2-イソプロピル-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-2-エチル-6-tert-オクチルフェノール、2-イソブチル-4-エチル-6-tert-ヘキシルフェノール、2-シクロヘキシル-4-n-ブチル-6-イソプロピルフェノール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール−ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール−ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4,4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4-tert-ブチル−2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス(n−オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ビス[(3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチリックアシッド)グリコールエステル、N,N'-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、2,2'-オギザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル−2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[1,1-ジメチル2-{β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2-ビス[4-(2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシンナモイルオキシ))エトキシフェニル]プロパン、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス-[-3-(3'-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)]プロピオネート、1,1,3-トリス[2-メチル-4-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-5-tert-ブチルフェニル]ブタンなどを挙げることができる。
【0028】
これらは、同時に二種以上を併用することもできる。これらのうち、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0029】
これらのフェノール系化合物をポリエステルの重合時に添加することによって、アルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0030】
前記フェノール系化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10−7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10−6〜0.005モルである。また、本発明では、フェノール系化合物にさらにリン化合物をともに用いても良い。
【0031】
前記重縮合触媒を構成するリン化合物としては特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0032】
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、芳香環構造を有する基である化合物が特に好ましい。
【0033】
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルが特に好ましい。
【0034】
前記のリン化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10−7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10−6〜0.005モルである。
【0035】
前記の重縮合触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0036】
本発明で用いるポリエステルの触媒は、重合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。例えば、テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応による重合は、通常チタン化合物や亜鉛化合物などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒に代えて、もしくはこれらの触媒に共存させて本発明の請求項に記載の触媒を用いることもできる。また、前記の触媒は、溶融重合のみならず固相重合や溶液重合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によっても太陽電池用ポリエステルフィルムの製造に適したポリエステル樹脂を製造することが可能である。
【0037】
このようなポリエステル系樹脂の代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンブチレンテレフタレート、ポリエチレン?2,6?ナフタレートなどが挙げられる。このポリエステルはホモポリマーであってもよく、第3成分を共重合したものであっても良い。本発明では、構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニット、プロピレンテレフタレートユニット、ブチレンテレフタレートユニットあるいはエチレン?2,6?ナフタレートユニットが70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であるポリエステルを用いることが推奨される。
【0038】
上記のポリエステル系樹脂に非相溶の熱可塑性樹脂(以下、単に「非相溶性熱可塑性樹脂」という場合がある)は、空洞発現剤として作用し、フィルム中の空洞形成に寄与するものである。非相溶の熱可塑性樹脂はポリエステル系樹脂中に分散状態で均一に混入し延伸時にベース樹脂との界面で剥離を起こして空洞形成源となる。本発明で用いることができる非相溶性熱可塑性樹脂としては、一般的な方法で上記ポリエステル系樹脂に溶融混合した際に相分離するものであれば特に限定されず、ホモポリマーであっても、共重合成分を有するポリマーであっても構わない。本発明では、好適な形状を有する空洞発現の点からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0039】
上記のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの各樹脂が挙げられる。中でも、高温でも軟化し難く、優れた空洞発現性を発揮し得る点で、ポリメチルペンテン樹脂が好適である。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
本発明のフィルム形成に当たっては、非相溶性熱可塑性樹脂の使用量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対し、3質量部以上、より好ましくは4質量部以上であって、20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは4質量部以上8質量部以下とすることが推奨される。非相溶性熱可塑性樹脂の使用量が上記範囲を下回ると、空洞形成が不十分となり、反射指向性が大きくなる場合がある。他方、非相溶性熱可塑性樹脂の使用量が上記範囲を超えると裏面に配した光反射層の反射効果を十分に利用できず、特に近赤外領域の反射率が十分得られないばかりでなくフィルム製造時にフィルム破れや折れ皺の発生が生じ易くなり、生産性が著しく低下する。
【0041】
前記非相溶性熱可塑性樹脂にさらに他の非相溶性熱可塑性樹脂を分散性樹脂として配合して用いることがより好ましい。分散性樹脂とはポリエステル系樹脂と空洞発現剤として添加する前記非相溶性熱可塑性樹脂との両方に対して非相溶な熱可塑性樹脂であり、かつ前記空洞発現剤よりも表面張力(表面エネルギー)が大きい樹脂である。分散性樹脂を配合することにより、ポリエステルに対して非相溶の熱可塑性樹脂を原料樹脂中に微細分散させる「分散作用」を発揮し、空洞発現剤とポリエステル系樹脂との解離をより好適に行わしめ、ひいては微細な空洞を均一に形成せしめる作用を有するものである。このような機能を有する分散性樹脂としては例えばポリスチレン系樹脂が挙げられる。
【0042】
ポリスチレン系樹脂としては、ホモポリマーの他、種々の共重合成分を有する共重合ポリマーであってもよい。ただし、後者の場合には、共重合成分が本発明の効果を損なわないことが要求される。
【0043】
分散性樹脂の含有量の下限は非相溶性熱可塑性樹脂100質量部に対して10質量部、好ましくは15質量部、さらに好ましくは20質量部である。上限は50質量部、好ましくは40質量部であり、特に好ましくは30質量部である。分散性樹脂の含有量が10質量部未満では、空洞の分散性が低下する。一方、50質量部を超えると、空洞の大きさが不均一となる場合がある。
【0044】
波長700〜1200nm領域の比較的長い波長を有する近赤外光は、大きな屈折率差を有する空洞界面(空気/樹脂界面)で反射しやすい。そのため、前述のように空洞発現剤及び分散性樹脂を用いることにより好適に空洞を形成しやすくなる。特に、本発明では近赤外光の反射には空洞の形状が重要である。すなわち、空洞の厚さ方向に対して平面方向に広がる扁平な空洞の場合は、近赤外線の反射と光線透過とを良好にバランス化することができる。本発明は前述のように空洞発現剤と分散性樹脂を好適な範囲に制御することで空洞をより均一に発現させ、さらに空洞の厚さに対して扁平な空洞を形成させる。さらに、フィルムを形成するポリエステル樹脂を固相重合により固有粘度を比較的高くすることにより空洞発現剤との界面剥離をより大きくすることができる。これによりより好適に空洞を発現させることが可能となる。
【0045】
前記のごとく添加剤の種類と濃度によりフィルム中に生じる空洞含有量およびその形状を制御することによって、波長400〜1200nmの範囲における平均反射率が70以上、95%以下であり、波長700〜1200nmの範囲における平均透過率が5%以上、30%以下である太陽電池用ポリエステルフィルムを得ることができる。空洞含有量が少ない場合は、波長400〜1200nmの範囲における平均反射率が70%未満となり、反射指向性が大きくなる場合がある。一方、空洞含有量が多い場合は、機械的強度が低下するだけでなく、波長400〜1200nmの範囲における平均反射率が95%を越え、フィルム背面に配せられた金属層などの反射性層の反射特性を十分活用できない場合がある。また、波長400〜1200nmの範囲における平均反射率の下限は72%がより好ましく、75%がさらにこのましい。また、波長400〜1200nmの範囲における平均反射率の上限は、93%が好ましく、90%がより好ましい。
【0046】
また、近赤外領域である波長700〜1200nmの範囲における平均透過率が5%未満では、背面に配せられた金属層などの反射性層の反射特性を十分活用できない。波長700〜1200nmの範囲における平均透過率が30%を越えると反射指向性が大きくなる場合がある。波長700〜1200nmの範囲における平均透過率の下限は6%以上が好ましく、8%以上がより好ましい。また、波長700〜1200nmの範囲における平均透過率の上限は28%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。
【0047】
近赤外領域の光線は可視光領域の光線より散乱されにくいものの、空洞形状の曲面が球状に近似する場合は大きく散乱される。そのため、近赤外領域の平均透過効率を上記範囲にするためには、空洞形状が長く扁平になるよう制御することが好ましい。これらは前述のように好適にはポリエステル樹脂の固有粘度、添加する非相溶性熱可塑性樹脂の種類、組合せ(特に、分散剤との組合わせ)、およびその濃度を適宜調製することにより達成することができる。
【0048】
本発明のフィルムは、60°グロス値が70以下であることが好ましく、は60以下であることがより好ましい。60°グロス値が70以下である場合、光の反射指向性が小さく、太陽電池に照射された光線がより効率よく利用することができる。
【0049】
本発明のフィルム形成に当たっては、ハンドリング性付与のため、フィルム中に粒子を含有させてもよい。粒子の種類及び含有量は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどのポリエステルに対し不活性な無機粒子が例示される。これらの中でも工業的に入手が容易な二酸化チタンが好ましい。酸化チタンには、主にルチル型とアナターゼ型の2つの結晶形態が知られているが、アナターゼ型は紫外線の分光反射率が非常に大きいのに対し、ルチル型は紫外線の吸収率が大きい(分光反射率が小さい)という特性を有している。これらは必要に応じて選択することができる。
【0050】
また、これらの不活性な無機粒子は、いずれか一種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0051】
本発明のフィルムにおける酸化チタン粒子の含有量は、該フィルム全量に対し、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上であって、30質量%以下、好ましくは20質量%以下であることが推奨される。酸化チタン粒子の含有量が上記範囲を下回る場合には、十分なハンドリング性が確保できない場合がある。他方、酸化チタン粒子の含有量が上記範囲を超える場合には、フィルム製造の際に、延伸などの操作が困難となり、生産性が低下する場合がある。
【0052】
また、上記酸化チタン粒子は、その平均粒径が下限0.02μm、好ましくは0.05μm、より好ましくは0.1μmであって、上限は3μm、好ましくは2μm、より好ましくは1μmであることが推奨される。酸化チタン粒子の平均粒径が上記範囲を下回る場合は十分なハンドリング性が得られない場合があり、上記範囲を超えると粗大表面突起が生成する場合があり、積層される金属箔等の防湿層に悪影響を及ぼす場合がある。
【0053】
前記粒子の平均粒子径の測定は下記方法によって求めることができる。
粒子を電子顕微鏡または光学顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(多孔質シリカの場合は凝集体の粒径)を測定し、その平均値を平均粒子径とする。
【0054】
ポリエステルに上記粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0055】
中でも、本発明ではポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中、又はエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度のため、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出し等する方法(マスターバッチ法)により、更に滑剤凝集物を低減することができ、表面の粗大突起数も少なくすることができるため好適である。
【0056】
本発明のポリエステルフィルムは環状三量体含有量が5000ppm以下であることが好ましい。4000ppm以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは3500ppm以下である。前記環状三量体含有量が5000ppm以下であると、フィルムの加水分解が抑制され、耐久性と言う太陽電池部材としての重要な特性を保持する効果を得やすい。
【0057】
前記耐久性は105℃、100%RH、0.03MPa下、192時間後における破断伸度保持率で評価することができる。この破断伸度保持率は好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。係る範囲にあることにより、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、屋外での長期使用に耐えうる高い耐加水分解性を奏することができる。
【0058】
ポリエステルフィルムの環状三量体の含有量を上記範囲にするためには、固相重合法によってオリゴマー低減処理を行ったポリエステル樹脂を原料に用いることが好ましい。
【0059】
本発明で言う固相重合法とは、前述のごとく固相状態で減圧下あるいは不活性ガス気流下でポリエステル樹脂を加熱し、さらに重縮合を進める方法である。固相状態にて減圧下で加熱する方法と不活性ガス気流下で熱処理する方法を組み合わせてもよい。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重縮合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。また、該ポリエステル樹脂中に含まれている環状三量体等のオリゴマーやアセトアルデヒド等の副生成物を除去する等の手段を取ることも何ら制約を受けない。さらに、例えば、超臨界圧抽出法等の抽出法でポリエステル樹脂を精製し前記の副生成物等の不純物を除去する等の処理を行うことを取り入れても良い。
【0060】
上記の固相重合は、180℃以上、融点未満の温度で行うことが望ましく、特に195〜235℃が好ましい。融点以上では、ポリエステル樹脂が溶融するので実用的でなく、また、180℃未満では環状三量体の減少速度が著しく遅いので好ましくない。さらに、固相重合は、不活性気体流通下又は減圧下で行う必要がある。この不活性気体とは、固相重合後に得られるポリエステル樹脂の劣化を生じないような気体を意味し、一般には安価な窒素を用いるのが好ましい。不活性気体中の水分量は、固相重合中にポリエステル樹脂の極限粘度が低下しない範囲であればよく、通常、500ppm以下である。減圧下で固相重合する場合には、通常、真空度は0.1KPa以下、さらに好ましくは0.05KPa以下である。
【0061】
固相重合の装置は、回転式固相重合装置、塔式静置固相重合装置、流動床式固相重合装置、種々の撹拌翼を有する固相重合装置等のペレット状樹脂を均一に加熱できるものが好ましい。
【0062】
ポリエステルフィルムの耐久性の点からは、固相重合により高分子量化したポリエステルや、低酸価のポリエステルを用いることも好ましい。これによりポリエステルフィルムの耐加水分解性をより向上させることができる。固相重合によりポリエステルを高分子量化する場合、固有粘度は0.65〜0.80dl/gであることが高度な耐熱性、耐加水分解性を得るためには好ましく、より好ましくは0.70〜0.75dl/gである。尚、ポリエステルの固有粘度は、ポリエステルをパラクロロフェノール(6質量部)と、1,1,2,2−テトラクロルエタン(4質量部)の混合溶媒に溶解し、30℃で測定することができる。
【0063】
尚、本発明で用いるポリエステル中には、他の任意の重縮合体や制電剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
【0064】
本発明のポリエステルフィルムは、単層ポリエステルフィルムであっても良いし、最外層と中心層を有する、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであっても良い。3層構成における層構成として、表裏の最外層の構成は同組成であっても異組成であっても構わないが、2種3層(A層/B層/A層)が平面性の点から好適である。
【0065】
本発明において3層構成とする場合、最外層(上記2種3層の場合はA層)に粒子を含有し、中心層(上記2種3層の場合はB層)には非相溶性熱可塑性樹脂を含む層であることが好ましい。
【0066】
A層に粒子を含有させる理由は、金属又は金属酸化物系薄膜層や塗布層等の防湿機能層を積層するなど後加工工程でのハンドリング性付与及び表面積を大きくすることによって前記機能層との密着性を向上させるためである。最外層に粒子を添加する場合は、加工性に適した十分なハンドリング性が得られる。本発明の積層フィルムのハンドリング性は、積層フィルム面同士の動摩擦係数(μd)により評価することができる。この場合、加工性の点から動摩擦係数(μd)が0.7以下であることが好ましい。
【0067】
本発明で用いるフィルムの厚さは、特に制限しないが、30〜350μmの範囲で、使用する規格に応じて任意に決めることができる。基材フィルムの厚みの上限は、250μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、さらに好ましくは75μmであり、特に好ましくは100μmである。フィルム厚みが30μm未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが300μmを超えると、コスト高となる。
【0068】
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について説明する。本発明のフィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、目的とするフィルムの組成からなる混合物(例えば、ポリエステル系樹脂、非相溶性熱可塑性樹脂、分散性樹脂、無機粒子を含む混合物)を溶融し、フィルム状に押出成形して未延伸フィルムとした後、必要に応じ、長手方向または幅方向の一軸方向に延伸し、あるいは二軸方向に逐次二軸延伸または同時二軸延伸し、熱固定処理を施した、二軸配向ポリエステルフィルムが好適である。
【0069】
ポリエステル系樹脂、非相溶性熱可塑性樹脂、無機粒子を含む混合物からなるペレットを十分に真空乾燥した後、270〜295℃でシート状に溶融押出しし、冷却固化せしめて未配向のキャストフィルムを得る。得られたキャストフィルムを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【0070】
その後、フィルムの両端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き220〜240℃の熱処理ゾーンに導き、熱固定処理、冷却を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0071】
また、本発明のフィルムを製造する際には、突起の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去することが好ましい。ポリエステル中の異物を除去するために、溶融押出しの際に溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合のSi、Ti、Sb、Ge、Cu、Alを主成分とする凝集物、及び高融点有機物が除去性能に優れ好適である。
【0072】
溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)は、25μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが25μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μm以下の濾材を使用して溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、突起の少ないフィルムを得るには重要である。押し出し機内における溶融樹脂の滞留時間は環状三量体生成の観点からはできるだけ短くすることが好ましい。
【0073】
本発明のポリエステルフィルムは他素材との接着性を付与するために、フィルム表面に表面改質処理を行ってもよい。表面改質処理とは例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理が挙げられる。
【0074】
また、本発明において、エチレン−ビニルアセテート共重合体などの太陽電池の封止樹脂との接着性を向上させる目的で、前記太陽電池用性ポリエステルフィルムの片面に易接着層を設けることができる。易接着層としては封止樹脂と良好な接着性を有するものであれば特に限定されないが共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を含む易接着層が好適である。
【0075】
これらの易接着層を形成する塗布液としては例えば、特許3567927号公報、特許3589232号公報、特許3589233号公報等に例示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル溶液、アクリル溶液、ポリウレタン溶液等が挙げられる。易接着層はこれら塗布液を縦方向の一軸延伸ポリエステルフィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な易接着層の塗布量は、0.05〜0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、封止樹脂との密着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。
【0076】
易接着層には易滑性を付与するために微粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が易接着層から脱落しやすくなる。易接着層に含有させる粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。これらの粒子の中でも、比較的安価に入手できる点から、シリカ粒子が好適である。
【0077】
塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0078】
本発明の太陽電池用バックシートは太陽電池用ポリエステルフィルムと、太陽電池用ポリエステルフィルムの片面に配する光反射性層を配する。これにより、太陽電池用ポリエステルフィルムを透過した光、特に近赤外線領域の波長を有する光が背面に配された光反射性層により効率的に反射され、太陽電池の変換効率を向上することができる。
【0079】
光反射性層は太陽電池用ポリエステルフィルムに直接積層されても良いが、接着層や他の透明フィルム層を介して配されてもよい。また、光反射性層はアルミ箔などの金属箔膜層であってもよいし、金属薄膜層が積層された透明フィルム層であっても構わない。本発明の太陽電池用バックシートの態様としては、例えば、ポリエステルフィルム/接着剤/金属箔又は金属系薄膜層を有するフィルム/接着剤/ポリフッ化ビニルフイルム又はポリエステル系高耐久防湿フィルムといった構成が例示される。ここで光反射性層として用いられる金属箔又は金属系薄膜層を有するフィルムとしては、水蒸気バリア性を有し、400〜1200nmの波長範囲における反射率が比較的高い金属または金属薄膜積層フィルムを好適に用いることができる。
【0080】
前記金属の種類としてはアルミニウム、錫、マグネシウム、銀、ステンレスなどが挙げられるが中でもアルミニウム、銀が比較的高い反射率を有し、工業的に入手しやすいため好適である。金属層は金属箔をして使用しても良いし、ポリエステルフィルム等に薄膜として積層してもよい。これら金属を薄膜として積層する方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等を用いることができる。
【0081】
本発明においてはポリエステルフィルム、金属箔又は金属系薄膜層を有するフィルムなどの光拡散性層、ポリフッ化ビニルフイルム又はポリエステル系高耐久防湿フィルムの各層間を、真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネ−ション法等の通常の成形法を利用し、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池用バックシートを製造することができる。上記において、各層間の接着性等を高めるために、接着剤を介して積層するのが好ましい。接着剤としては例えば(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、その他等の樹脂をビヒクルの主成分とする加熱溶融型接着剤、溶剤型接着剤、光硬化型接着剤等が挙げられる。
【0082】
ここで、高耐久防湿フィルムとは耐候性を向上させる目的で積層されるものであり、高耐久防湿フィルムとしては、例えばポリテトラフロロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニデン(PVDF)、もしくはポリフッカビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、あるいはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル等の樹脂に紫外線吸収剤を練り混んだ樹脂組成物からなるフィルムが挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において用いた評価方法を以下に説明する。
【0084】
1.平均反射率の測定
分光光度計(島津製作所社製自記分光光度計「UV−3150」)に積分球を装着し、標準白色板(SpereOptics社製白色標準板「ZRS−99−010−W」)の反射率を100%として校正し、分光反射率を測定した。測定は波長400〜1200nmの領域で1nm刻みに行い平均値を求めた。尚、フィルム単体の測定時は試料フィルム背面に無反射の黒台紙を背面に配し測定した。光反射性層を配したときの測定は試料フィルム背面にアルミニウム箔(厚さ11μm、算術的表面粗さ(Ra=0.11μm)を背面に配し測定した。
【0085】
2.平均透過率の測定
分光光度計(島津製作所社製自記分光光度計「UV−3150」)に積分球を装着し、無試料の透過率を100%として校正し、分光透過率を測定した。測定は波長700〜1200nmの領域で1nm刻みに行い平均値を求めた。
【0086】
3.ポリエステルフィルム中の環状三量体の含有量
ポリエステルフィルム中の環状三量体の含有量は以下の方法で測定した。細砕したフィルム試料100mgを精秤し、ヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロホルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロホルム20mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル10mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とした。次いで下記の高速液体クロマトグラフ法で環状三量体を定量した。
【0087】
(測定条件)
装置:L−7000(日立製作所製)
カラム:μ−Bondasphere C18 5μ 100オングストローム 3.9mm×15cm(Waters製)
溶媒:溶離液A:2%酢酸/水(v/v)
溶離液B:アセトニトリル
グラジエントB%:10→100%(0→55分)
流速:0.8ml/分
温度:30℃
検出器:UV−259nm
【0088】
4.平均粒子径
不活性粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−51O型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも300個の粒子について各粒子の外周をトレースし、画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、これらの平均を平均粒子径とした。
【0089】
5.ポリエステルの固有粘度
ポリエステルをパラクロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒を使用して溶解し、温度30℃にて測定した。
【0090】
6.破断伸度保持率(耐加水分解性評価)
耐加水分解性評価として、JIS−60068−2−66で規格化されているHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)を行った。機器はエスペック社製EHS−221を用い、105℃、100%RH、0.03MPa下の条件で行った。
フィルムを70mm×190mmにカットし、治具を用いてフィルムを設置した。各フィルムは各々が接触しない距離を保ち設置した。105℃、100%RH、0.03MPaの条件下で192時間処理を行った。処理前、処理後の破断伸度をJIS−C−2318−1997 5.3.31(引張強さ及び伸び率)に準拠して測定し、下記式に従い破断伸度保持率を算出した。
破断伸度保持率(%)=[(処理後の破断伸度(MPa))/(処理前の破断伸度(MPa))]×100
【0091】
7.反射指向性(60°グロス値)
表面光沢度計(日本電色工業社製グロスメーター:VG-SENSOR)使用し、光の入射方向の角度(入射角)を60度、受光側の角度(受光角)60度の条件で測定した。
【0092】
8.光電変換効率
太陽電池としてPE−CVD法により作製した微結晶シリコン薄膜を用いた太陽電池を用意し、前面にガラス板、背面にアルミニウム箔を背面に配した試料フィルムを配置し、EVAを充填剤として、真空ラミネート法で積層、一体化して太陽電池モジュールを作製した。得られた太陽電池モジュールの光電変換効率(%)を測定し、下記基準により評価した。
○:変換効率 10.5%以上
×: 変換効率 10.5%未満
【0093】
(1)ポリエステル樹脂(A−1及びA−2)の重合
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、高純度テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03質量部、トリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kg/cm 、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻した。
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。
重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステル(A−1)を得た。この際、溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は5μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
ポリエステル樹脂(A−1)を回転型真空重合装置を用いて、0.5mmHgの減圧下、220℃で固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル樹脂(A−2)を得た。
【0094】
(2)ポリエステル樹脂(B−1及びB−2)の重合
高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造したビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びオリゴマーの混合物に対し、重縮合触媒として塩化アルミニウムの13g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.015mol%とIrganox 1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の10g/lエチレングリコール溶液を酸成分に対してIrganox 1425として0.02mol%を加えて、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間撹拌した。次いで50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(1Torr)としてさらに275℃、13.3Paで固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステル(B−1)を得た。 この際溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は20μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
ポリエステル(A−1)を回転型真空重合装置を用いて、0.5mmHgの減圧下、220℃で固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル樹脂(B−2)を得た。
【0095】
(3)ポリエステル樹脂(C)の重合
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、高純度テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03質量部、トリエチルアミンを0.16質量部と平均粒径2.5μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成PETに対し、2000ppmとなるよう添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kg/cm 、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻した。
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。
重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステル(C)を得た。この際、溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は20μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
【0096】
(4)マスターペレット(A)の作製
メルトフローレート180のポリメチルペンテン樹脂70質量%とメルトフローレート2.0のポリスチレン樹脂30質量%を二軸押出機に投入し、260℃で溶融混合して非相溶性熱可塑性樹脂マスターバッチペレットを得、70℃の熱風で4時間乾燥させマスターペレット(A)を得た。
【0097】
(5)マスターペレット(B)の作製
真空オーブンを用い、平均粒径:0.2μmのアナターゼ型酸化チタン粒子(ルチル型混入率3%)を170℃、10Paの条件で乾燥した。また、上記のポリエステル樹脂(A−1)を140℃、10Paの条件で6時間乾燥した。乾燥後の上記酸化チタン粒子50質量%と上記ポリエステル樹脂(A−1)50質量%を、ベント式二軸押出機に供給して270℃で予備混練した。予備混練後の溶融樹脂を連続的にベント式単軸混練機に供給し、275℃で混練して押出し、得られたストランドを冷却、切断してアナターゼ型酸化チタン粒子含有マスターバッチペレット(B)を得た。
【0098】
(6)マスターペレット(C)の作製
アナターゼ型酸化チタン粒子に代えて、平均粒径:0.3μmのルチル型酸化チタン粒子(アナターゼ型混入率5%)を用い、上記マスターペレット(B)と同様にして、ルチル型酸化チタン粒子含有マスターバッチペレット(C)を得た。
【0099】
(7)マスターペレット(D)の作製
真空オーブンを用い、平均粒径:0.7μmの硫酸バリウム粒子を170℃、10Paの条件で乾燥した。また、上記のポリエステル樹脂(A−1)を140℃、10Paの条件で6時間乾燥した。乾燥後の上記硫酸バリウム粒子50質量%と上記ポリエステル樹脂(A−1)50質量%を、ベント式二軸押出機に供給して270℃で予備混練した。予備混練後の溶融樹脂を連続的にベント式単軸混練機に供給し、275℃で混練して押出し、得られたストランドを冷却、切断してマスターバッチペレット(D)を得た。
【0100】
(実施例1)
ポリエステル樹脂(A−2)94質量部を、真空乾燥機で180℃3時間真空乾燥した後、マスターペレット(A)を6質量と混合し、2軸スクリュー押し出し機に投入し、T−ダイスより290℃で溶融押し出して、静電気的に冷却回転ロールに密着固化することにより未延伸シートを得た。次に、該未延伸シートをロール延伸機により80℃で3.1倍に縦延伸を行った後、テンターにて125℃で3.6倍に横延伸するとともに、さらにテンターにて220℃で10秒間熱固定処理、170℃で4%の緩和熱処理を行い、厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0101】
(実施例2)
ポリエステル樹脂(A−2)93質量部、マスターペレット(A)を7質量とした以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0102】
(実施例3)
ポリエステル樹脂(A−2)92質量部、マスターペレット(A)を8質量とした以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0103】
(実施例4)
ポリエステル樹脂(A−2)をポリエステル樹脂(A−1)に替えた以外は実施例2と同様にして、厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0104】
(実施例5)
ポリエステル樹脂(A−2)94.0質量部を、真空乾燥機で180℃3時間真空乾燥した後、マスターペレット(A)を6.0質量と混合して中間層(B層)用原料とし、ポリエステル樹脂(A−2)99.6質量部、マスターペレット(B)0.4質量部を混合して外層(A層)用原料として2台の2軸スクリュー押し出し機に別々に投入し、T−ダイス内で積層した後、T−ダイスより290℃で溶融押し出し、静電気的に冷却回転ロールに密着固化することにより未延伸シートを得た。次いで、実施例1と同様にして厚さ50μm、層厚比A層/B層/A層=10/80/10のポリエステルフィルムを得た。
【0105】
(実施例6)
マスターペレット(B)をマスターペレット(C)に替えた以外は実施例5と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0106】
(実施例7)
ポリエステル樹脂(A−2)をポリエステル樹脂(B−2)に替えた以外は実施例2と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0107】
(実施例8)
中間層(B層)用原料、外層(A層)用原料、ともにポリエステル樹脂(A−2)からポリエステル樹脂(B−2)に替えた以外は実施例6と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0108】
(実施例9)
最終厚さ50μmから100μmに変更した以外は実施例8と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0109】
(実施例10)
最終厚さ50μmから188μmに変更した以外は実施例8と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0110】
(実施例11)
(塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(平均粒径1.4μm)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部に前記凝集体シリカ粒子の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、塗布液を得た。
実施例8と同様にして未延伸シートを得た。次いで、前記未延伸シートの片面に前記塗布液を最終塗布量が0.08g/m2となるように塗布した後、135℃で乾燥させた。
その後、実施例8と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0111】
(実施例12)
実施例1で得たポリエステルフィルムの片面に以下のようにして銀積層フィルムを貼り合わせた。ダイコート方式により粘着剤(X395−270S−1:サイデン化学社製)をWETで30g/m2となるよう塗布し、100℃で1分乾燥させ粘着剤層を形成した。50nmの厚さの金属銀層を蒸着法で積層された12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着面に重ねて、二本のゴムロール間に導き、圧着して接着させ、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0112】
(比較例1)
ポリエステル樹脂(A−1)とポリエステル樹脂(C)をシリカ粒子濃度300ppmになるように混合し、ポリエステルフィルムの原料とした以外は実施例1と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0113】
(比較例2)
ポリエステル樹脂(A−2)を97質量部、マスターペレット(A)を3質量部とした以外は実施例1と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0114】
(比較例3)
ポリエステル樹脂(A−2)を90質量部、マスターペレット(A)を10質量部とした以外は実施例1と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0115】
(比較例4)
ポリエステル樹脂(A−2)を90質量部、メルトフローレート180のポリメチルペンテン樹脂を10質量部とした以外は実施例1と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0116】
(比較例5)
ポリエステル樹脂(A−2)と、マスターペレット(C)を酸化チタン粒子濃度35%になるように混合し、ポリエステルフィルムの原料とした以外は実施例1と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0117】
(比較例6)
ポリエステル樹脂(A−2)と、マスターペレット(D)を硫酸バリウム粒子濃度35%になるように混合し、ポリエステルフィルムの原料とした以外は実施例1と同様にして厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0118】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、可視光領域のみならず、近赤外領域においても高い反射率と、小さい反射指向性が要求される薄膜系太陽電池素子を有する太陽電池における太陽電池用バックシートの構成部材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞含有ポリエステルフィルムであって、
波長400〜1200nmの範囲における平均反射率が70%以上、95%以下であり、
波長700〜1200nmの範囲における平均透過率が5%以上、30%以下である太陽電池用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルム中の環状三量体含有量が5000ppm以下である請求項1に記載の太陽電池用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する請求項1又は2の太陽電池用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用ポリエステルフィルムと、当該太陽電池用ポリエステルフィルムの片面に配する光反射性層とを有する太陽電池用バックシート。
【請求項5】
前記光反射層がアルミニウムおよび銀のいずれか少なくとも1種を含む金属箔または金属系薄膜層である請求項4の太陽電池用バックシート。

【公開番号】特開2011−97039(P2011−97039A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216877(P2010−216877)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】