説明

太陽電池用保護シートおよび太陽電池

【課題】透過率、バリア性、耐光性および密着性のいずれにも優れた太陽電池用保護シートを提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池用保護シートは、プラスチックフィルムの上に、無機層と、有機層と、紫外線遮断層と、フッ素樹脂フィルムとを有し、紫外線遮断層は、平均組成式が下記式(1)で表される化合物を含むバインダー中に無機微粒子が分散された層であり、かつ、紫外線遮断層の屈折率が、紫外線遮断層に隣接する層であって、フッ素樹脂フィルムが設けられている側の層の屈折率よりも高く、さらに、フッ素樹脂フィルムが該紫外線遮断層が設けられている側の最表層であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は太陽電池用保護シートおよび太陽電池に関する。特に、太陽電池用フロントシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池の表面を保護するための太陽電池用保護シートについて広く検討されている。太陽電池は、永年に渡って屋外に置かれることから、高いバリア性および高い耐光性が求められる。さらに、複数の層を積層した太陽電池用保護シートについては、これらの層間の密着性も求められる。加えて、太陽電池用保護シートを、フロントシートに用いる場合、高い透過率も求められる。そして、近年、このような保護シートの基材フィルムとしてプラスチックフィルムを用いたものが用いられている。そして、このようなプラスチックフィルムを保護するために、表面にフッ素樹脂膜を設けたフィルムが知られている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−187825号公報
【特許文献1】特開2000−138388号公報
【特許文献1】特開2010−53317号公報
【特許文献1】特開2004−168057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者が上記文献を検討したところ、いずれも、高い透過率、高いバリア性、高い耐光性、高い密着性および高い湿熱耐性のいずれかに欠けることが分かった。また、耐光性を高めるために、有機系紫外線吸収剤を含む層を設ける技術が知られているが、かかる技術では耐光性が不十分であり、さらに、バリア性や密着性なども劣る場合があることが分かった。
本願発明は、従来技術の問題点を解決することを目的とするものであって、透過率、バリア性、耐光性および密着性のいずれにも優れた太陽電池用保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者が鋭意検討を行った結果、かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、紫外線吸収能力を有する層を設け、かつ、該層の屈折率を隣接する層よりも高くすることに到達した。
このような手段を採用することにより、耐光性が向上するだけでなく、密着性やバリア性も向上させることが可能になる。本願発明の手段は、太陽電池保護シートを構成する層の数が増えるため、当業者に避けられる手段である。しかしながら、このような構成を採用することにより、単に、耐光性を改善しただけでなく、バリア性や密着性も向上できた点に本願発明の大いなる意義がある。
【0006】
具体的には、以下の手段により、本願発明の課題は達成された。
(1)プラスチックフィルムの上に、無機層と、有機層と、紫外線遮断層と、フッ素樹脂フィルムとを有し、紫外線遮断層は、平均組成式が下記式(1)で表される化合物を含むバインダー中に無機微粒子が分散された層であり、かつ、紫外線遮断層の屈折率が、紫外線遮断層に隣接する層であって、フッ素樹脂フィルムが設けられている側の層の屈折率よりも高く、さらに、フッ素樹脂フィルムが該紫外線遮断層が設けられている側の最表層であることを特徴とする、太陽電池用保護シート。
式(1)
1mSi(OR2n(4-m-n/2)
(式中、R1はメチル基、エチル基およびフェニル基から選択される基であり、R1として、2種類以上の基が含まれていてもよく、R2は炭素数1〜8のアルキル基であり、R2として、2種類以上のアルキル基が含まれていてもよい。0.2≦m≦2であり、nは0.01≦n≦3であり、かつ、m+n<4である。)
(2)前記無機微粒子が、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タグステンおよびストロンチウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む酸化物である、(1)に記載の太陽電池用保護シート。
(3)プラスチックフィルムの一方の面上に、無機層、有機層、紫外線遮断層およびフッ素樹脂フィルムが設けられている、(1)または(2)に記載の太陽電池用保護シート。
(4)前記紫外線遮断層とフッ素樹脂フィルムとが接着層によって貼りあわされている、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(5)前記無機微粒子が、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タグステンおよびストロンチウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む無機微粒子の表面をケイ素およびアルミニウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む化合物で覆われている無機微粒子である、(1)、(3)または(4)に記載の太陽電池用保護シート。
(6)無機層が、珪素およびアルミの少なくとも1種と、酸素および窒素の少なくとも1種を含む(1)〜(5)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(7)前記無機微粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(8)前記無機微粒子が、セリウムおよび亜鉛のうち少なくとも1つ以上の元素を含む無機微粒子、または、これらの無機微粒子表面をケイ素、アルミニウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む化合物で覆われている無機微粒子である、(1)、(3)、(4)、(6)、(7)いずれか1項に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
(9)フッ素樹脂フィルムの厚さが、10μm〜1000μmである、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(10)有機層が、(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化してなる層である、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(11)全光線透過率が85%以上である、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(12)前記接着層がウレタン系接着剤を含む、(4)〜(10)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(13)プラスチックフィルムがポリエステル樹脂フィルムである、(1)〜(12)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(14)フロントシート用である、(1)〜(13)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(15)(1)〜(14)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートを有する太陽電池素子。
【発明の効果】
【0007】
本願発明により、透過率、バリア性、耐光性、密着性および湿熱耐性いずれにも優れた太陽電池用保護シートを提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本願発明の太陽電池用保護シートの実施形態の一例を示す図である。
【図2】図2は、本願発明の太陽電池素子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本願発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明の太陽電池用保護シートは、プラスチックフィルムの上に、無機層と、有機層と、紫外線遮断層と、フッ素樹脂フィルムとを有し、紫外線遮断層は、平均組成式が下記式(1)で表される化合物を含むバインダー中に無機微粒子が分散された層であり、かつ、紫外線遮断層の屈折率が、紫外線遮断層に隣接する層であって、フッ素樹脂フィルムが設けられている側の層の屈折率よりも高く、さらに、フッ素樹脂フィルムが、該紫外線遮断層が設けられている側の最表層であることを特徴とする。
式(1)
1mSi(OR2n(4-m-n/2)
(式中、R1はメチル基、エチル基およびフェニル基から選択される基であり、R1として、2種類以上の基が含まれていてもよく、R2は炭素数1〜8のアルキル基であり、R2として、2種類以上のアルキル基が含まれていてもよい。0.2≦m≦2であり、nは0.01≦n≦3であり、かつ、m+n<4である。)
【0011】
このような構成とすることにより、透過率、バリア性、耐光性および密着性のいずれにも優れた太陽電池用保護シートを得ることができる。有機層と無機層を積層したガスバリアフィルムにおいて、バリア性や密着性を高める方法は種々検討されている。例えば、有機層に添加剤を添加したり、有機層や無機層の製膜方法を工夫したり、有機層および無機層の積層数を多くする等の方法である。これに対し、本願発明では、無機系紫外線遮断層を設けることにより、ガスバリアフィルム自身の性能をより向上させる手段を何ら採用しなくても、得られる太陽電池用保護シートのバリア性をより向上させることができるという利点がある。もちろん、本願発明の太陽電池用保護シートにおいても、従来から公知のガスバリアフィルムのバリア性を高める手段を併用してもよいことはいうまでもない。
【0012】
本願発明では、プラスチックフィルムの一方の面上に、紫外線遮断層およびフッ素樹脂フィルムが設けられており、紫外線遮断層の屈折率が、紫外線遮断層に隣接する層であって、フッ素樹脂フィルムが設けられている側の層の屈折率よりも高い。このような構成とすることにより、優れた耐光性を発揮させることが可能になる。本願発明における、前記屈折率の差は、0.01〜0.2であることが好ましく、0.02〜0.1であることがより好ましい。
ここで、紫外線遮断層に隣接する層は、通常、接着層であり、紫外線遮断層、接着層、フッ素樹脂フィルムの順に、隣接して積層していることが好ましい。
【0013】
本願発明では、プラスチックフィルムの一方の面上に、無機層、有機層、紫外線遮断層およびフッ素樹脂フィルムが設けられていることが好ましい。図1は、本願発明の太陽電池用保護シートの好ましい実施形態の一例を示したものであって、1は基材フィルムを、2は有機層を、3は無機層を、4は紫外線遮断層を、5は接着層を、6はフッ素樹脂フィルムをそれぞれ示している。通常は、有機層2と無機層3が一体になってバリア能を向上させる。有機層2および無機層3は、それぞれ、1層ずつであってもよいが、複数層が交互に積層されていてもよい。
本願発明では、無機層に加え、無機系紫外線遮断層もバリア層としての役割を果たし、バリア性を相乗的に向上させる。
また、本願発明の太陽電池用保護シートは、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の構成層を有していても良い。
【0014】
以下に、本願発明の好ましい層構成を例示するが、本願発明は、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。尚、/で区切られる層の間には、他の機能層を有していても良いが、他の機能層を有していない方が好ましい。
プラスチックフィルム/有機層/無機層/紫外線遮断層/接着層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/有機層/無機層/有機層/紫外線遮断層/接着層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/有機層/無機層/有機層/紫外線遮断層/有機層/接着層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/無機層/有機層/紫外線遮断層/接着層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/無機層/有機層/無機層/紫外線遮断層/接着層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/無機層/有機層/無機層/紫外線遮断層/有機層/無機層/接着層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/有機層/無機層/接着層/紫外線遮断層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/有機層/無機層/有機層/接着層/紫外線遮断層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/無機層/有機層/接着層/紫外線遮断層/フッ素樹脂フィルム
プラスチックフィルム/無機層/有機層/無機層/接着層/紫外線遮断層/フッ素樹脂フィルム
【0015】
本願発明の太陽電池用保護シートは、シート全体としての厚みが、50μm以上となるように構成することが好ましく、100μm以上となるように構成することがより好ましい。上限値は特に定めるものではないが、例えば、2000μm以下とすることができる。
本願発明の太陽電池用保護シートは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが好ましい。
本願発明における反射率は、以下の方法に従って測定した場合、15%以下が好ましく、10%以下が好ましい。このような範囲とすることにより、太陽電池素子の発電変換効率が向上する傾向にある。
(反射率の測定方法)
島津UV2550を使用して、標準白色版を硫酸バリウムとして、拡散反射率の測定を行った。
【0016】
1.プラスチックフィルム
本願発明では、基材フィルムとして、好ましくは、ポリエステルフィルムを用いる。ポリエステル基材フィルムを用いることにより、バリア性能がより向上する傾向にある。
ポリエステル基材フィルムに用いられるポリエステルの種類は特に定めるものではないが、芳香族ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)がさらに好ましく、PETまたはPENがさらに好ましい。また、2種類以上のポリエステルの混合物であってもよい。
ポリエステルの数平均分子量は、13,000〜50,000であることが好ましく、15,000〜35,000であることがより好ましい。
ポリエステル基材フィルムの厚みは5μm〜1000μmが好ましく、10μm〜500μmであることがより好ましい。すなわち、本願発明におけるフィルムには、厚さが250μm未満のフィルムも、厚さが250μm以上のシートの両方を含む趣旨である。
このような厚さとすることにより、寸法安定性の向上とフィルムのクニックが起こりにくくなり、バリア能の安定した太陽電池用保護シートを供給できるようになる。
【0017】
2.有機層
本願発明における有機層は有機ポリマーを主成分とする、有機層であることが好ましい。ここで主成分とは、有機層を構成する成分の第一の成分が有機ポリマーであることをいい、通常は、有機層を構成する成分の80重量%以上が有機ポリマーであることをいう。
有機ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステルおよびアクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂、あるいはポリシロキサン等の有機珪素ポリマーなどが挙げられる。
本願発明における有機層は、ガラス転移温度(Tg)が100℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。下限値は特に定めるものではないが、−20℃以上であることが好ましい。
【0018】
本願発明における有機層は、好ましくは、重合性化合物を含む重合性組成物を硬化してなるものである。
(重合性化合物)
重合性化合物は、好ましくは、ラジカル重合性化合物および/またはエーテル基を官能基に有するカチオン重合性化合物であり、より好ましくは、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物、および/または、エポキシまたはオキセタンを末端または側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられ、(メタ)アクリレート系化合物および/またはスチレン系化合物が好ましく、(メタ)アクリレート系化合物がさらに好ましい。
【0019】
本願発明で用いることができる(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
【0020】
以下に、本願発明で好ましく用いられる(メタ)アクリレート系化合物の具体例を示すが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
(重合開始剤)
本願発明における有機層を、重合性化合物を含む重合性組成物を塗布硬化させて作成する場合、該重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
【0026】
(有機層の形成方法)
有機層の形成方法としては、特に定めるものではないが、例えば、溶液塗布法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本願発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
【0027】
本願発明では、通常、重合性化合物を含む組成物を、光照射して硬化させるが、照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm2以上が好ましく、0.5J/cm2以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物を採用する場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0028】
有機層を構成する重合性化合物の重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは重合性組成物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0029】
本願発明における有機層は、厚さが、0.3μm〜10μmの範囲であることが好ましく、5μm〜10μmの範囲であることがより好ましい。
有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満が好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いほうが好ましいがあまりに高すぎると、耐屈曲性等の問題が生じる。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は、0.03〜0.5GPaであり、0.03〜0.3Paであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、耐屈曲性が良化し耐傷性も実用上問題ないレベルまで向上させることが可能になる。
【0030】
3.無機層
本願発明における無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、特に、珪素およびアルミの少なくとも1種と、酸素および窒素の少なくとも1種を含む化合物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。本願発明における無機層は実質的にこれらの成分のみからなることが好ましい。ここで、実質的とは、例えば、意図的に添加される成分としては含まないことをいい、不純物等の成分までも排除するものではないことを意味する。例えば、99重量%以上がこれらの成分で構成されることをいう。
本願発明により形成される無機層の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm以下がより好ましい。無機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0031】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmであり、好ましくは50〜400nmであり、さらに好ましくは100〜200nmである。
【0032】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層の積層は、所望の層構成に応じて有機層と無機層を順次繰り返し製膜することにより行うことができる。無機層を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの真空製膜法で形成する場合、有機層も前記フラッシュ蒸着法のような真空製膜法で形成することが好ましい。バリア性積層体を作製する間、途中で大気圧に戻すことなく、常に1000Pa以下の真空中で有機層と無機層を積層することが特に好ましい。圧力は100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることがさらに好ましい。
本願発明では、プラスチックフィルムの表面に有機層または無機層を設けることが好ましい。また、該有機層または無機層の表面に無機層または有機層を設けることが好ましい。
有機層および無機層の積層数は特に定めるものではないが、通常は、3〜30層である。
【0033】
4.紫外線遮断層
本願発明における紫外線遮断層は、平均組成式が式(1)で表される化合物を含むバインダー中に無機微粒子が分散された層である。
【0034】
(バインダー)
最初に式(1)で表される化合物を含むバインダーについて説明する。
式(1)
1mSi(OR2n(4-m-n/2)
(式中、R1はメチル基、エチル基およびフェニル基から選択される基であり、R1として、2種類以上の基が含まれていてもよく、R2は炭素数1〜8のアルキル基であり、R2として、2種類以上のアルキル基が含まれていてもよい。0.2≦m≦2であり、nは0.01≦n≦3であり、かつ、m+n<4である。)
1は、メチル基、エチル基およびフェニル基から選択される基であり、メチル基および/またはエチル基であることが好ましい。R2はメチル基および/またはエチル基であることが好ましい。R1およびR2は、それぞれ、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
さらに、0.2≦m≦1であることが好ましく、0.1≦n≦2であることが好ましい。
【0035】
ここで、平均組成とは、NMR(核磁気共鳴スペクトル)測定結果、ポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定結果に従って特定される組成をいう。
本願発明で用いるバインダーの分子量は、重量平均分子量(Mw)が1000〜10000であることが好ましい。
【0036】
このようなバインダーを採用することにより、紫外線を照射しても、プラスチックフィルムとコーティング層との高い密着性が保たれ、かつ、高い透明性、高い紫外線吸収能、高い耐候性およびフレキシブル性を達成することが可能になる。
【0037】
(無機微粒子)
本願発明で用いる無機微粒子は、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タグステンおよびストロンチウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む酸化物であることが好ましく、セリウム、チタンおよび亜鉛のうち少なくとも1つ以上の元素を含む酸化物であることがより好ましい。
これらの無機微粒子は、その表面が、ケイ素、アルミニウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む化合物で覆われている、いわゆる、コアシェル型無機微粒子であってもよいし、コアシェル型無機微粒子でなくてもよいが、本願発明ではコアシェル型無機微粒子が好ましい。コアシェル型無機微粒子を採用することにより、粒子自体の湿熱耐性が向上し、更にバインダーの劣化を抑制できる。
本願発明で用いる無機微粒子の屈折率は1.5〜3.5であることが好ましく、1.7〜3.5であることがより好ましい。
【0038】
本願発明における無機微粒子の平均粒子径は、100nm以下が好ましく、5〜50nmがより好ましく、2〜30nmであることが好ましい。このような範囲とすることにより、分散により、高い透明性が得られると共に、耐光性がより向上する傾向にある。コアシェル型の場合は、シェル部分を含んだ平均粒子径をいう。
【0039】
コアシェル型無機微粒子の平均粒子径は、 シェル厚は、1.5〜20nmであることが好ましく、2〜10nmであることがより好ましく、2〜5nmであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、透明性を損なわずに、光触媒能および光溶解を抑制することが可能になる。
【0040】
本願発明における紫外線遮断層は、通常、コーティング剤を塗布し、乾燥することにより設けられる。コーティング剤中、無機微粒子は10重量%以上の割合で含まれることが好ましく、10〜30重量%の割合で含まれることがより好ましい。このような範囲とすることにより、透明性を損なわずに、高い紫外線吸収能力が得られる。
また、コーティング剤中、上記バインダーは、90重量%以下の割合で含まれることが好ましく、90〜60重量%の割合で含まれることがより好ましい。このような範囲とすることにより、コーティング剤と他の層との密着性がより高くなる傾向にある。
コーティング剤を塗布する層の厚さは特に定めるものではないが、好ましくは、1〜50μmであり、より好ましくは2〜20μmである。
【0041】
本願発明における無機微粒子は、コーティング剤中に、1種類のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
また上記バインダーの縮合反応を促進し、被膜を硬化させるために、硬化触媒を添加してもよく、このような触媒としては、アルキルチタン酸塩、オクチル酸錫およびジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレート等のカルボン酸の金属塩;ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミン塩;酢酸テトラメチルアンモニウム等のカルボン酸第4級アンモニウム塩;テトラエチルペンタミン等のアミン類;N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤;p−トルエンスルホン酸、フタル酸、塩酸等の酸類;アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウム化合物、水酸化カリウムなどのアルカリ触媒、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルモノクロロシラン等のハロゲン化シラン等があるが、これらの他にもバインダーの硬化反応に有効なものであれば特に制限されない。
また、硬化触媒の添加量は、バインダー成分100重量部に対して0.001〜20重量部であることが好ましい。より好ましくは0.005〜10重量部である。硬化触媒の添加量が0.001重量部未満であると常温で硬化しない場合があり、また硬化触媒の添加量が20重量部を超えると被膜の耐熱性や耐候性が悪くなる場合がある。
【0042】
本願発明におけるコアシェル型無機微粒子の調整方法は公知の方法に従って調整することができ、例えば、特開2004−59421号公報や特開2001−58821号公報に記載の方法にしたがって調整することができる。
また、本願発明において、コアシェル型無機微粒子をバインダー中に分散させる方法は、公知の方法を広く採用でき、サンドミルやボールミル、ペイントシェーカーなど一般的な混合装置を用いて行うことができる。またこの際に、バインダー成分と同じ材料で分散し、表面処理することで、コーティング液中でも分散安定性が得られ、かつ硬化した膜中でも均質に分散する。
【0043】
本願発明における紫外線遮断層は実質的に、バインダー、硬化触媒、無機微粒子のみからなることが好ましい。ここで、実質的とは、例えば、意図的に添加される成分としては含まないことをいい、不純物等の成分までも排除するものではないことを意味する。例えば、99重量%以上がこれらの成分で構成されることをいう。
【0044】
紫外線遮断層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜1500nmであり、好ましくは50〜1000nmであり、さらに好ましくは200〜500nmである。
紫外線遮断層の屈折率は、1.45〜2.5であることが好ましく、1.5〜2.0であることがより好ましい。
【0045】
5.接着層
本願発明において、フッ素樹脂フィルムは、通常、接着剤によって、隣接する層と接着させる。
本願発明における接着層は、接着剤を含めば、他は特に定めるものではなく、該層の98重量%以上が接着剤であることが好ましい。本願発明では、紫外線(UV)硬化型接着剤または熱硬化型接着剤を好ましく用いることができ、紫外線硬化型接着剤がより好ましい。接着剤の種類は特に定めるものではないが、UV硬化型接着剤としては、エポキシ系、アクリレート系、ウレタン系が好ましい例として挙げられ、ウレタン系がより好ましい。熱硬化型接着剤としては、エポキシ系、アクリレート系、ウレタン系が好ましい例として挙げられ、ウレタン系がより好ましい。
接着層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることが好ましい。
本願発明では、易接着層を設けてもよい。易接着層とは、プライマー層、アンダーコート層、下塗層などとも呼ばれる層の1種で、層間の界面状態の調整などの目的として設けられる層をいう。このような層を設けることにより、特に接着性の向上という利点がある。
【0046】
6.フッ素樹脂フィルム
本願発明におけるフッ素樹脂フィルムは、フッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムである。フッ素樹脂フィルムを構成するフッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
【0047】
本願発明のフッ素樹脂フィルムは、フッ素樹脂以外の成分を含んでいても良いが、その成分の50重量%以上が、フッ素系樹脂によって構成されることが好ましい。また、本願発明のフッ素樹脂フィルムは、実質的に微粒子を含まないこと態様とすることができる。ここで、実質的とは、例えば、意図的に添加される成分としては含まないことをいい、不純物等の成分までも排除するものではないことを意味する。例えば、99重量%以上がこれらの成分で構成されることをいう。本願発明では、このように、フッ素樹脂フィルムに微粒子を含めなくても、耐光性を高めることができるので、耐傷性が問題となる場合においても、好ましく用いることができる。
本願発明におけるフッ素樹脂フィルムは、厚さが、10μm〜1000μmの範囲であることが好ましく20μm〜500μmの範囲であることがより好ましい。
【0048】
(太陽電池)
本願発明の太陽電池素子は、太陽光を電気に変換するシステムをいう。その構造の一例を図2に示す。すなわち、太陽光が入射する側からフロントシート層7、充填接着樹脂層8、太陽電池素子要部9、充填接着樹脂層10、バックシート層11が基本構成になる。本願発明の太陽電池保護シートは、好ましくは、フロントシート層に用いられるが、バックシート層等に用いることも可能である。この太陽電池素子は、住宅の屋根に組み込まれたり、農池、牧場、排水や下水処理施設、火山や温泉地域、ビルや塀に設置されるものや電子部品に用いられるものもある。該太陽電池モジュールは採光型やシースルー型等と呼ばれる光を透過し窓や高速道路、鉄道等の防音壁に用いられるものもある。本願発明では、特にフレキシブルなタイプとすることができる。
【0049】
本願発明の太陽電池用保護シートが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本願発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本願発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本願発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本願発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0051】
(比較例1)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート上(帝人デュポン社製、テオネックスQ65FA)に下記に示した重合性化合物(合計14重量部)と重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907、1重量部)、2−ブタノン(185重量部)とからなる組成物をワイヤーバーにて塗布し、窒素100ppm雰囲気下、紫外線照射量0.5J/cm2で照射して硬化させ、有機層を作製した。有機層の膜厚は500nmであった。次に、有機層表面に膜厚が40nmとなるようにAl23を真空スパッタ(反応性スパッタリング)で製膜した。さらに、その上に、前記と同様にして有機層を設けてフィルム(A)を得た。
【0052】
重合性化合物の組成
以下に示す化合物A〜Dを以下に示す割合で用いた。
【0053】
化合物A:共栄社化学(株)製、ライトアクリレート1,9−ND−A:50質量%
【化6】

化合物B:ダイセルサイテック(株)製、TMPTA:30質量%
【化7】

化合物C:ダイセルサイテック(株)製、IRR=214K:10質量%
【化8】

化合物D:日本化薬(株)製、KAYARAD、PM−21:10質量%
【化9】

【0054】
上記フィルム(A)のAl23層を設けた側の表面に膜厚50μmのフッ素系樹脂フィルムであるエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム(ダイキン製 "ネオフロンETFEフィルム (EF-0050)" )を、ウレタン系接着剤を介して積層して、サンプル101を得た。
【0055】
(比較例2)
比較例1において、ウレタン系接着剤にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、TINUVIN328)を25重量%の割合で添加した以外は、比較例1と同様にしてサンプル102を得た。
【0056】
(比較例3)
ウレタン系接着剤中にコアシェル型酸化亜鉛粒子(堺化学製、Nanofine、粒子径:24nm、コア:粒子径20nmのZnO、シェル組成:SiO2/Al23、シェル厚:2nm)を添加した以外は、比較例1と同様にしてサンプル103を得た。
【0057】
(比較例4)
ウレタン系接着剤中にCeO2微粒子(多木化学製ニードラールU−15)を添加した以外は、比較例1と同様にしてサンプル104を得た。
【0058】
(実施例1)
(バインダー組成物の調整)
シロキサン系バインダーとしてアルコキシシリコーンオリゴマー(信越化学工業株式会社製、X−40−925 0)100重量部、チタン系硬化触媒(信越化学工業株式会社製、D−20)5重量部、ブタノール100重量部を混合して調整した。
【0059】
(コアシェル型酸化亜鉛粒子含有ブタノール分散液の調整)
コアシェル型酸化亜鉛粒子(堺化学製、Nanofine、平均粒子径:24nm、コア:平均粒子径20nmのZnO、シェル組成:SiO2/Al23、シェル厚:2nm)10重量部にブタノール100重量部、X−40−9250を50重量部を添加して、遊星型ボールミルにて分散することにより、コアシェル型酸化亜鉛粒子含有ブタノール分散液を得た。
【0060】
(コーティング剤の調整)
コーティング剤中に、コアシェル型酸化亜鉛粒子組成物のコアシェル型酸化亜鉛粒子の含量が、20重量%となるように、バインダー組成物にコアシェル型酸化亜鉛粒子含有ブタノール分散液を添加し、攪拌してコーティング剤を調整した。
【0061】
(塗布)
比較例1と同様にしてフィルム(A)を作成した後、フィルム(A)上に、上記コーティング剤をワーヤーバーコートで乾燥膜厚が5μmとなるように塗布し、室温で6時間乾燥させて、紫外線者断層を形成し、フィルム(B)を得た。
上記フィルム(B)の上記コーティング剤を塗布した表面に、膜厚50μmのフッ素系樹脂フィルムであるエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム(ダイキン製 "ネオフロンETFEフィルム (EF-0050)" )を、ウレタン系接着剤を介して積層して、サンプル105を得た。
【0062】
(実施例2)
(CeO2微粒子含有ブタノール分散液の調整)
CeO2微粒子(多木化学製ニードラールU−15)をブタノール溶媒に溶媒置換を行った。得られた分散液10重量部にブタノール100重量部と50重量部のX−40−9250を添加して、遊星型ボールミルにて分散することにより、CeO2微粒子含有ブタノール分散液を得た。
実施例1において、コアシェル型酸化亜鉛粒子含有ブタノール分散液を上記で調整したCeO2微粒子含有ブタノール分散液に変えた他は同様にしてサンプル106を得た。
【0063】
(実施例3)
実施例1の(バインダー組成物の調整)においてシロキサン系バインダーX−40−9250の代わりに、X−40−9250を80重量部とKR−500(信越化学工業株式会社製)を20重量部とからなる混合物を用い、他は同様に行って、サンプル107を得た。
【0064】
(実施例4)
実施例1の(バインダー組成物の調整)においてシロキサン系バインダーX−40−9250の代わりに、X−40−9250を80重量部、X−40−9225(信越化学工業株式会社製)を10重量部およびKR−500を10重量部からなる混合物を用い、他は同様に行って、サンプル108を得た。
【0065】
(実施例5)
接着剤をアクリル系接着剤に変更した以外は実施例1と同様にしてサンプル109を得た。
【0066】
(比較例5)
SiO2微粒子(日産化学製、スノーテック20)をブタノール溶媒に溶媒置換を行いSiO2微粒子のブタノール分散液を得た。得られたSiO2ブタノール分散液10重量部にブタノール100重量部と50重量部のX−40−9250を添加して、遊星型ボールミルにて分散することにより、SiO2微粒子含有ブタノール分散液を得た。
実施例1において、コアシェル型酸化亜鉛粒子含有ブタノール分散液を上記SiO2ブタノール分散液に変更した以外は同様にしてサンプル110を得た。
【0067】
(比較例6)
コーティング剤中のコアシェル型酸化亜鉛粒子組成物のコアシェル型酸化亜鉛粒子の添加を行わない以外は、実施例1と同様にしてサンプル111を得た。
【0068】
(比較例7)
ウレタン系接着剤中にコアシェル型酸化亜鉛粒子(堺化学製、Nanofine、粒子径:24nm、コア:粒子径20nmのZnO、シェル組成:SiO2/Al23、シェル厚:2nm)を添加した以外は、比較例5と同様にしてサンプル112を得た。
【0069】
得られたサンプルについて、以下の評価を行った。
【0070】
[バリア性能]
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁に記載の方法を用いて水蒸気透過率(g/m2/day)を測定した。このときの温度は40℃、相対湿度は90%とした。得られた結果を以下のように評価し、結果を下記表に示した。
(評価)
× :0.005g/m2/day以上
○ :0.001g/m2/day以上0.005g/m2/day未満
◎ :0.001g/m2/day未満
【0071】
[耐光性]
メタリングバーチカルウェザーメーター(スガ試験機製 MV3000)を用いて0.53kW/m2(波長:300〜400nm)、ブラックパネル温度63℃、槽内湿度50%で2000時間、試験用サンプルに対して紫外線暴露試験を実施した。紫外線照射前後のサンプルのUV−visを日立製の分光光度計(U-3200)で測定し、330nmの波長でのAbs.を測定し、照射前後のAbs.の比をT(abs.)とした。得られた結果は、以下のように評価し、結果を下記表に示した。
T(Abs.)=紫外線照射後Abs.(330nm)/紫外線照射前Abs.(330nm)
(評価)
× : T(Abs.) > 25
△ : 25 ≧ T(Abs.) ≧ 13
○ : 13 ≧ T(Abs.) ≧ 6
◎ : 6 > T(Abs.)
【0072】
[密着性評価]
保護フィルムの密着性評価は、JIS K5400に準拠した碁盤目試験により行なった。保護フィルムの表面にそれぞれカッターナイフで膜面に対して90°の切込みを1mm間隔で入れ、1mm間隔の碁盤目を100個作製した。この上に2cm幅のマイラーテープ[日東電工製、ポリエステルテープ(No.31B)]を貼り付け、テープ剥離試験機を使用して貼り付けたテープをはがした。保護フィルム上の100個の碁盤目のうち剥離せずに残存したマスの数(n)をカウントした。
密着性評価に関しては、サンプル作成直後の評価、およびメタリングバーチカルウェザーメーター(スガ試験機製 MV3000)を用いて0.53kW/m2(波長:300〜400nm)、ブラックパネル温度63℃、槽内湿度50%で2000時間、試験用サンプルに対して紫外線暴露試験を実施した後の評価を行った。結果を下記表に示す。
残存数N=n/100
(評価)
× : N < 0.2
△ : 0.2 ≦ N ≦ 0.5
○ : 0.51 ≦ N ≦ 0.8
◎ : 0.81 < N
【0073】
[全光線透過率]
JIS K7361−1に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH 5000)を用いて、全光線透過率の測定を行った。
【0074】
[屈折率]
可視分光エリプソメーター(HORIBA製)を用いて、各層の屈折率を導出し、接着層の屈折率と隣接する紫外線遮蔽層の屈折率との差を計算し、接着層の屈折率naと隣接するUV遮蔽層の屈折率nuとの差 Δn=nu−naを求めた。Δnを下記のように定義して表1にまとめた。
Δn<−0.1 : −−
Δn=0〜−0.1 : −
Δn=0〜+0.1 : +
Δn>+0.1 : ++
【0075】
【表1】

【0076】
(実施例5)太陽電池の作成
エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂フィルムを接着剤として用いて、上記実施例の構成のサンプル105〜108をフロントシートとして用い、特開2009−99973の実施例1に記載のCIS系の薄膜太陽電池のCIS膜の表面に貼り合わせ、太陽電池セルを作成した。太陽電池として作動することを確認した。
【符号の説明】
【0077】
1 プラスチックフィルム
2 有機層
3 無機層
4 紫外線遮断層
5 接着層
6 フッ素樹脂フィルム
7 フロントシート層
8 充填接着樹脂層
9 太陽電池素子要部
10 充填接着樹脂層
11 バックシート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの上に、無機層と、有機層と、紫外線遮断層と、フッ素樹脂フィルムとを有し、紫外線遮断層は、平均組成式が下記式(1)で表される化合物を含むバインダー中に無機微粒子が分散された層であり、かつ、紫外線遮断層の屈折率が、紫外線遮断層に隣接する層であって、フッ素樹脂フィルムが設けられている側の層の屈折率よりも高く、さらに、フッ素樹脂フィルムが該紫外線遮断層が設けられている側の最表層であることを特徴とする、太陽電池用保護シート。
式(1)
1mSi(OR2n(4-m-n/2)
(式中、R1はメチル基、エチル基およびフェニル基から選択される基であり、R1として、2種類以上の基が含まれていてもよく、R2は炭素数1〜8のアルキル基であり、R2として、2種類以上のアルキル基が含まれていてもよい。0.2≦m≦2であり、nは0.01≦n≦3であり、かつ、m+n<4である。)
【請求項2】
前記無機微粒子が、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タグステンおよびストロンチウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む酸化物である、請求項1に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項3】
プラスチックフィルムの一方の面上に、無機層、有機層、紫外線遮断層およびフッ素樹脂フィルムが設けられている、請求項1または2に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項4】
前記紫外線遮断層とフッ素樹脂フィルムとが接着層によって貼りあわされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項5】
前記無機微粒子が、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タグステンおよびストロンチウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む無機微粒子の表面をケイ素およびアルミニウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む化合物で覆われている無機微粒子である、請求項1、3または4に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項6】
無機層が、珪素およびアルミの少なくとも1種と、酸素および窒素の少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項7】
前記無機微粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項8】
前記無機微粒子が、セリウムおよび亜鉛のうち少なくとも1つ以上の元素を含む無機微粒子、または、これらの無機微粒子表面をケイ素、アルミニウムのうち少なくとも1つ以上の元素を含む化合物で覆われている無機微粒子である、請求項1、3、4、6、7いずれか1項に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項9】
フッ素樹脂フィルムの厚さが、10μm〜1000μmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項10】
有機層が、(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化してなる層である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項11】
全光線透過率が85%以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項12】
前記接着層がウレタン系接着剤を含む、請求項4〜10のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項13】
プラスチックフィルムがポリエステル樹脂フィルムである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項14】
フロントシート用である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートを有する太陽電池素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−23148(P2012−23148A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158987(P2010−158987)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】